児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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大阪府子どもを性犯罪から守る条例の解釈及び運用について(依命通達)

 相談を受けたのでもらってきました。
「例えば、小学校のクラブ活動中に指導顧問の教師が児童の裸体を撮影するために当該児童に対し衣服を脱ぐように要求することは、監督保護者にあるまじき行為であり、当該教師は「直ちに危害の発生を防止することができない状態にある」13歳未満の者に対して当該行為を行った者として第8条第2号に掲げる行為に該当し、同条の規定に違反する。」というのですが、強制わいせつ罪(176条後段)未遂だと思います。刑法犯とかとの関係は検討されてないようです。

大阪府子どもを性犯罪から守る条例
(不安を与える行為の禁止)
第八条 何人も、親権者、未成年後見人、学校等の職員その他の者で現にその監督保護をするもの(以下「監督保護者」という。)が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある十三歳未満の者に対し、挨拶、防犯に関する活動等の社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き、次に掲げる行為をしてはならない。
一 甘言又は虚言を用いて惑わし、又は欺くような言動をすること。
二 義務のない行為を行うことを要求すること。
(威迫する行為等の禁止)
第九条 何人も、その監督保護者が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある十三歳未満の者に対し、社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き、次に掲げる行為をしてはならない。
一 いいがかりをつけ、又はすごむこと。
二 身体、衣服等を捕らえ、又はつきまとうこと。
(禁止行為に係る通報)
第十条 前二条に規定する行為に該当すると認められる行為を発見した者は、監督保護者に連絡し、又は警察官に通報するよう努めるものとする。
2 前項の規定による連絡を受けた監督保護者は、前二条に規定する行為に該当すると認められる行為が発生した旨を警察官に通報するよう努めるものとする。

大阪府子どもを性犯罪から守る条例の解釈及び逼用について(依命通達)
大阪府子どもを性犯罪から守る条例(平成24年大阪府条例第2号)の解釈及び運用については、平成26年1月1日から次によることとしたので、その趣旨に沿って適正な運用に努められたい。
第1 定義(第2条関係)
第2号ニの「自己の性的好奇心を満たす目的で犯した罪」とは、例えば、公然わいせつ(刑法(明治40年法律第45号)第174条の罪)、窃盗(刑法第235条の罪)、痴漢等の卑わいな行為(大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和37年条例第44号)第6条の罪)等、性的な好奇心又は性的欲求を満たす目的で行われる全ての罪がこれに当たる。
第2 不安を与える行為の禁止(第8条関係)
1 この条は、適当な監督保護者が直ちに危害の発生を防止することができない状態にある13歳未満の者に対する性犯罪の前段階と考えられる行為を禁止することを規定したものである。
2 「何人も」 とは、「全ての自然人は」という意味であり、性別、年齢及び国籍を間わない。
3 「その他の者」とは、例えば、学習塾等の指導員、ボーイスカウト等の社会教育として行われる組織的な教育活動の監督者、指導者、引率者等がこれに当たる。
4 「現にその監督保護をするもの」とは、13歳未満の者を現に監督保護をしている状態にある者をしづ。例えば、小学校の教員等の職に就いている者は、当該小学校の授業中等においては、現にその監督保護をすることを職務としているため、当該授業中等に関しては、現に監督保護をしている状態であることから、「現にその監督保護をするもの」 に当たるが、放課後、休校日等に関しては、現に監督保護をしている状態ではないことから、「現に監督保護をするもの」には当たらない。つまり、監督保護者とは、監督保護の権能及び責務を有し、第ー次的に危害の発生を防止すべき立場にある者をいう。
5 「直ちに危害の発生を防止することができない状態」とは、監督保護者が13歳未満の者を監護できない状態、注意を払えない状態等をしづ。例えば、監督保護をするべき者が身近にいない13歳未満の者だけで登下校している状態等がこれに当たる。また、監督保護者が近くにいる場合であっても、直ちに危害の発生を防止することができないような状態であれば、これに当たる。例えば、監督保護者が便所に入っている場合において、便所の前で待つ13歳未満の者はこのような状態にあるといえる。
なお、監督保護者であっても、第8条各号に掲げる行為をした場合は、「現にその監督保護をするもの」 とは認められず、同条の規定に違反する。例えば、小学校のクラブ活動中に指導顧問の教師が児童の裸体を撮影するために当該児童に対し衣服を脱ぐように要求することは、監督保護者にあるまじき行為であり、当該教師は「直ちに危害の発生を防止することができない状態にある」13歳未満の者に対して当該行為を行った者として第8条第2号に掲げる行為に該当し、同条の規定に違反する。
6 「13歳未満の者」 とは、 13歳未満であれば性別を問わないが、
7 「挨拶、防犯に関する活動等の社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き」とは、「社会通念上正当な理由なく」という意味である。例えば、.........................場合は、正当な理由があるとはいえない。
8 「挨拶、防犯に関する活動等」については、子どもの健全育成活動等の理由で行われており、仮にこれら正当な挨拶等が第三者から見て外形的に第8条各号に該当する疑いがある場合であっても、これらは、正当行為に基づき行われている趣旨から、本条違反とならないことを例示を挙げて明確にしたものである。ただし、例示された防犯活動等の理由
があれば、いかなる行為を行ってもよいということにはならない。
9 「社会通念上」とは、日常生活を営む上で一般的に受け入れられている常識及び見解のことであり、常識的に考えればという観点に立ち、その理由が正当であるかどうかを判断することとなる。
10 「挨拶、防犯に関する活動等の社会通念上正当な理由があると認められる場合」 を除く趣旨は、社会通念上正当な理由があると認められる場合までもが本条違反として問擬されることのないようにするためである。例えば、・・・・・「義務のない行為を行うとことを要求すること」に該当する余地もあるが、の観点から「社会通念上正当な理由がある」と認められるため、本条の規定には違反しない。
11 第8条各号に掲げる行為は、その行為の場所を問わない。例えば、友人宅に遊びに行った13歳未満の者に対し、同宅内で家人が衣服を脱ぐように要求する行為は、第8条第2号に掲げる行為に該当し、同条の規定に違反する。
12 第1号関係
(1) 「甘言」とは、相手の気を引くような言葉をしづ。
(2) 「虚言」とは、事実に反することを内容とする言葉をいう。
なお、虚言の内容に関しては、違法な内容であることに限定されない。
(3) 「用いて」とは、用に当てて使うということであり、相手の気を引く内容又は事実に反する内容の言葉を使ってという意味である。
なお、甘言又は虚言に関しては、一律にその言葉だけをもって判断することは困難で、あるが、周囲の状況等から判断し、客観的に相手の気持ちを誘うような言葉であるかどうか、又は事実に反する言葉であるかどうかを判断すべきである。また、甘言又は虚言を発言する以外にも、紙に書いて見せる、携帯電話の画面を見せる等、その用途に従い使う場合も想定される。
(4) 「惑わし」とは、適正な判断を誤らせることをいう。ただし、惑わすことにより、実際に相手方が適正な判断を誤ることまでは必要としない
(5) 「欺く」 とは、錯誤に陥れることをいう。ただし、欺くことにより、実際に相手方が錯誤に陥れられたことまでは必要としない。
(6) 「ような言動」 とは、「惑わし」又は「欺く」行為に類する行動又は振る舞いをするということであり、客観的に判断し、「惑わし」 又は「欺く」行為と同一視されるようなことをいう。また、「惑わし、又は欺くような言動をすること」 としているのは、判断能力が発達途上にある13歳未満の者は、惑わされた若しくは欺かれたとの認識がない場合又は誤認する場合が想定されるため、客観的に、惑わし、又は欺く行為であるかどうかを判断する必要があるためである。
13 第2号関係
(1) 「義務のない行為を行うことを要求する」 とは、行為者において、何ら権利又は権能がなく、相手方に何ら義務がないのに、相手方に作為若しくは不作為又は容認を余儀なくさせることであり、従うべき理由がない行為を行うことについて求めることをいう。また、義務には、人が作為又は不作為を負うかで、作為義務と不作為義務に分類されることがあるが、本号の義務に関しては、作為義務であるか、不作為義務であるかは問わない。つまり、本来義務があるにも関わらず、これに応じないようにさせる不作為義務については、「義務のない行為」に該当する。
(2) 「要求する」とは、その結果の発生までを必要としないものの、客観的に要求とみなされるに足りるものであることを要する。ただし、相手方において、当該要求が義務のない行為であるかどうかを認識する必要はなく、これに従ったかどうかについても問わない。また、作為又は不作為について要求されているとの認識は必要である。
第3 威迫する行為等の禁止(第9条関係)
1 「社会通念上正当な理由があると認められる場合を除き」とは、前記第2の7と同じく「社会通念上正当な理由なく」という意味である。第8条では、13歳未満の者の適正な判断を誤らせ、又は錯誤に陥れるような言動について規制する一方で、子どもの安全確保又は健全育成のために行われる活動を推進するという意味合いも含んでおり、誰もが行い得る行為であることから、挨拶及び防犯活動という例を示しているものであるが、本条に関しては、粗暴性又は悪質性が高く日常で行われることがないとの想定から、例示の必要はないと判断されたものである。
2 第9条各号に掲げる行為は、その行為の場所を問わない。例えば友人宅に遊びに行った13歳未満の者に対し、同宅内で家人が衣服をつかんで、離さない行為は、第9条第2号に掲げる行為に該当し、同条の規定に違反する。
3 第1号関係
(1) 「いいがかりをつけ」 とは、全く根拠のないことをあるかのように言い繕い、又は事実を針小棒大に誇張して難癖をつけることであり、脅迫にまで至らない程度のものをいう。
(2) 「すごむ」とは、相手をにらみつけ、又は相手に威圧を与えるような言葉又は動作のことであり、脅迫にまで至らない程度のものをいう。
4 第2号関係
(1) 「身体、衣服等を捕らえ」とは、身体又は身につけている衣服等を捕まえることであり、暴行に至らない程度のものをいう。
(2) 「衣服等」の「等」とは、身につけている衣服と同一視できるものをいい、例えば、カバン、乗車している自転車等がこれに当たる。
(3) 「つきまとう」とは、しつこく、相手方となる者の移動に伴って移動することをいい、立ち塞がるほど相手方に接近する必要はない。・・・といった形態をいう。