児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「無修正」わいせつ動画に出演したAV女優は幇助か?

 弁護士ドットコムからの依頼で寄稿しました。

 「わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持」というのは、平たく言えば、有償頒布(=販売)するためにわいせつDVDを持っているということで、「ほう助」というのは、実行行為以外の行為で正犯の実行行為を容易にさせることです(刑法62条1項)。
 わいせつなビデオに出演するということは、わいせつDVDの製造に加担することであり、その行為がないと販売できないので、一見するとわいせつDVDを有償頒布目的で所持するという行為を容易にするので所持罪の幇助として処罰されるとも言えそうです。
 しかし、刑法175条1項がわいせつ物を流布する行為について広く有償頒布・無償頒布・公然陳列を処罰することにしつつ、所持罪(同条2項)については、有償頒布目的の所持のみに限定していることや、わいせつなDVDの販売行為には、DVDの製造(撮影・編集を含む)・目的所持・運搬・輸出・輸入という一連の準備行為が当然に予想されるにもかかわらず(改正刑法草案247条参照)、刑法175条はその準備行為のうちの「目的所持行為」のみを処罰していることからは、刑法は表現の自由憲法21条)への配慮から、わいせつ物に関与する行為のうち処罰対象をかなり絞り込んでいると理解することができます。
 また、共犯としての処罰についても、頒布行為や公然陳列行為の相手方として不可欠な「購入者」「閲覧者」については共犯として処罰されることはないとされています(児童ポルノの購入者について福岡高裁那覇支判H17.3.1)。
 そういう意味で、出演者というのはわいせつビデオには不可欠な存在で間接的に有償頒布目的所持行為や有償頒布行為を容易にする行為ですが、処罰対象を絞っている刑法の趣旨からは処罰対象にはならないと考えます。

参考判例

       弁護士法違反、同教唆、恐喝、窃盗被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷昭和43年12月24日
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集22巻13号1625頁
       最高裁判所裁判集刑事169号839頁
       判例タイムズ230号256頁
       判例時報547号93頁
【評釈論文】 警察研究44巻10号122頁
       別冊ジュリスト27号104頁
       別冊ジュリスト33号252頁
       別冊ジュリスト57号204頁
       別冊ジュリスト82号188頁
       別冊ジュリスト111号198頁
       判例タイムズ234号89頁
       法曹時報21巻3号219頁

 しかしながら、所論にかんがみ、職権をもつて調査すると、第一審判決の認定判示した罪となるべき事実のうち、判示三の(1)および同四の事実は、いずれも、被告人らが、自己の法律事件の示談解決を、弁護士でない者に依頼し、その報酬を支払つたというものである(被告人Aについては、C株式会社のための事務管理として、管理者たる自己の法律事件の解決を依頼したものとみることができる。)。そして、第一審判決は、右事実につき、弁護士法違反の教唆の罪が成立するとし、原判決の判断もこれを是認しているのである。
 ところで、弁護士法七二条は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、一般の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを禁止し、これに違反した者を、同法七七条によつて処罰することにしているのであるが、同法は、自己の法律事件をみずから取り扱うことまで禁じているものとは解されないから、これは、当然、他人の法律事件を取り扱う場合のことを規定しているものと見るべきであり、同法七二条の規定は、法律事件の解決を依頼する者が存在し、この者が、弁護士でない者に報酬を与える行為もしくはこれを与えることを約束する行為を当然予想しているものということができ、この他人の関与行為なくしては、同罪は成立し得ないものと解すべきである。ところが、同法は、右のように報酬を与える等の行為をした者について、これを処罰する趣旨の規定をおいていないのである。このように、ある犯罪が成立するについて当然予想され、むしろそのために欠くことができない関与行為について、これを処罰する規定がない以上、これを、関与を受けた側の可罰的な行為の教唆もしくは幇助として処罰することは、原則として、法の意図しないところと解すべきである。
 そうすると、弁護士でない者に、自己の法律事件の示談解決を依頼し、これに、報酬を与えもしくは与えることを約束した者を、弁護士法七二条、七七条違反の罪の教唆犯として処罰することはできないものといわなければならない。しかるに、本件において、被告人らにつき、弁護士法違反教唆の罪の成立を認めた原判決には、法令の解釈適用をあやまつた違法があり、右違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。