児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

内山絢子「有害指定件数が増加したということは市場に流通する有害な流通物が増加していることである。にもかかわらず、性犯罪が減少しているということは、有害物の流通と犯罪とは統計的には関係ないということになろうか。」

 内山先生から直メールで教えてもらいました。

内山絢子「子どもの性的被害と法規制 被害者学研究23号
条例による規制と性犯罪
1 有害情報の規制

 性や暴力に関して、有害指定された件数と性犯罪との関連については、図2に示すとおりである。
 1988年以降急激に指定件数が増えているのは、前述のとおり、VTR等が含められるようになったためである。
 それ以前においても、有害指定件数が増加するにつれ、性犯罪が減少する傾向がみられる。
 規制がうまくいったために、性犯罪が減少したというのは一つの解釈ではあるが、その理由は考えにくい。
 そもそも、有害指定件数が増加したということは市場に流通する有害な流通物が増加していることである。
 にもかかわらず、性犯罪が減少しているということは、有害物の流通と犯罪とは統計的には関係ないということになろうか。
 この現象は日本のみならず、いくつかの国で観察されていることでもある。
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 また、一方で、性や暴力が模倣の対象であるという見方とは異なり、性的・暴力的な表現物の視聴により、その欲望が解消される(カタルシス効果)との見方も存在する。
 この見解に従えば、統計上の変化は合理的に説明できることになる。
模倣か、カタルシスか、この相反する2つの見方は心理学の世界でも結論が明確に示きれているわけではない。
 常識的には、さまざま情報に接している若者が、たまに有害情報に接することがあったとしても、直接的な影響を受けることは少ないかもしれないが、専らこうした情報にばかり接している若者に対しては、映像に描かれる仮想現実の世界と現実世界の区別がつきにくくなる、また、映像に描かれた女性蔑視等の価値観が強まったり、暴力が問題解決の唯一の手段・方法であると考えたりする傾向が強化されるといった形での影響はあるかもしれない。