児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 傍受・窃用・復号

 総務省に聞いたら、
  総務省で解説は出していない。
  出版社が出しているのを見て下さい。
とのことでしたので買ってきました。
情報通信振興会 電波法要説 24年3月
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023528049-00

電波法
(秘密の保護)
第五十九条  何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第四条第一項 又は第百六十四条第二項 の通信であるものを除く。第百九条並びに第百九条の二第二項及び第三項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。
第百九条  
1 無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、又は窃用した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2  無線通信の業務に従事する者がその業務に関し知り得た前項の秘密を漏らし、又は窃用したときは、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
・・・・・・・
電波法要説第5版h24 p236
この規定の遵守は、無線従事者等の通信実務担当者は勿論、免許人等の関係者をはじめ、国民全体に対して要求されるものである。また、この通信の秘密の保護の規定から外されるのは、法律に別段の定めがある場合であるが、これに該当するものとして、犯罪捜査の場合司法官憲による通信書類の押収等の規定がある。
保護の対象となる通信は、特定の相手方に対して行われる無線通信である。すなわち、送信者と受信者が特定されていて、その聞に特定性又は個別性が存する通信である。したがって、一般に公開性を有するラジオやテレビジョン放送については、秘密保護の対象とはならない。また、ここで電気通信事業法第4条第l項又は第164条第2項の通信の場合(注?)を除外しているが、これは電気通信事業者の電気通信業務の取扱に係る秘密の保護については同法に規定があるので、重複適用を避けるための措置である。
次に、秘密を侵すことになるものとして具体的に禁止している行為は、傍受して存在若しくは内容を漏らすこと、及び窃用することである。これらの意味については、概ね次のように解されている。

(1) 「傍受」とは、積極的意思をもって、自己に宛てられていない無線通信を受信することである。無線通信は、通常の場合無線設備のダイヤル操作によって何人で、も受信しうるものであるが、積極的意欲をもって受信すれば、その時点で傍受したものと解される
(2) 「存在」とは、その通信の個別性を識別しうる情報を含んだものである必要がある(具体的には、その周波数、電波の型式、入感時間、電信電話の別等)。また、「内容」とは、その通信が伝達しようとしている意思の認識である。
(3) 「漏らし」とは、他人に積極的に告げる場合のほか他人の知りうる状態に置くことである。
(4) 「窃用」とは、無線通信の秘密(存在又は内容)を発信者又は受信者の意思に反してそれを自己又は第三者の利益のために利用することである
(2) 暗号通信に係る罰則
平成16年の電波法改正で通信の秘密に関する罰則が追加された(法109条の2)。本条では新たに「暗号通信」という概念を設定し、「通信の当事者(当該通信を媒介する者であって、その内容を復元する権限を有するものを含む。)以外の者がその内容を復元できないようにするための措置が行われた無線通信」と定義した上で、「当該暗号通信の秘密を漏らし、又は窃用する目的で、その内容を復元」することを対象に、一般の場合と業務に従事する者の場合に分けて上記と同じ罰を規定している(ただし、未遂罪も罰することとしている。)。
近年無線LAN等の普及が進展する中で、それらによる通信のセキュリティを確保することがますます重要になってきており、いわゆるサイバー犯罪への対応の必要性を指摘する声が強まっているが、国際的にも「サイバー犯罪に関する条約」が策定されて我が国も署名し、現在発効に向けての取組みが行われている。同条約は、コンピューター・データの非公開送信の傍受を国内法上の犯罪と位置付けることを求めているが、現行の第109条では「秘密を漏らし、又は窃用した」段階で罰則が適用されるに過ぎず不十分で、あるため、その前段階の行為である暗号通信の内容復元自体を対象とする罰則を創設し、条約の趣旨を実現しようとするものである。
なお、本第109条の2と第59条の関係であるが、いずれも通信の秘密の保護を目的とする点では共通で、あるものの、暗号通信の復元それ自体は傍受、存在・内容の漏洩、窃用といった行為とは別のものであり、第109条の2に該当する行為があったとしてもそれだけで第59条違反になるものではない。したがって罰則は適用になっても無線局の運用停止等の行政処分の対象にはならないということも起こりうることになる。

普通乗用自動車を高速度で運転中、通信無線機を操作して警察無線を傍受し、進路前方の交通検問を知るとすぐに制限速度程度まで減速して右検問個所を通過した事件所為については、電波法109条1項の窃用の罪が成立する。
恐喝、銃砲刀剣類所持等取締法違反、暴力行為等処罰に関する法律違反、傷害、電波法違反被告事件
最高裁判所第1小法廷決定昭和55年11月29日
最高裁判所刑事判例集34巻6号480頁
最高裁判所裁判集刑事220号449頁
裁判所時報805号2頁
判例タイムズ430号77頁
判例時報986号25頁
警察研究53巻11号61頁
警察時報36巻3号117頁
法曹時報36巻10号241頁

       主   文

 本件上告を棄却する。

       理   由

 弁護人山本仁、同山本健三の上告趣意第一の一は、原判決の認定にそわない事実関係を前提とする判例違反の主張であり、同第一の二は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、所論のような趣旨の判断をしたものではないから、前提を欠き、同第二は、単なる法令違反の主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたらない。
 なお、電波法一〇九条一項にいう「窃用」とは、無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を発信者又は受信者の意思に反して利用することをいうと解すべきであり、本件について右規定の窃用の罪が成立するとした原判断は、結論において相当である。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文りとおり決定する。
  昭和五五年一一月二九日
    最高裁判所第一小法廷
        裁判長裁判官  本山 亨
           裁判官  団藤重光
           裁判官  藤崎萬里
           裁判官  中村治朗
           裁判官  谷口正孝

大阪高等裁判所判決昭和53年5月9日
最高裁判所刑事判例集34巻6号488頁
刑事裁判月報10巻4〜5号734頁
判例タイムズ369号439頁
判例時報906号103頁
研修368号67頁
判例評論252号188頁
    主   文

  本件控訴を棄却する。

       理   由

  本件控訴の趣意は、弁護人山本仁、同山本健三共同作成の控訴趣意書及びこれを補充する意見書記載のとおりであり、これに対する答弁は、大阪高等検察庁検察官事務取扱検事丸谷日出男作成の意見書記載のとおりであるから、これらを引用する。
 控訴趣意中、法令適用の誤りの主張について
 論旨は、原判示第三の電波法違反の事実につき、電波法五九条、一〇九条一項にいう「窃用」とは、自己が知りえた通信内容を発(受)信者の意思に反して不法目的に利用することをいうと解すべきところ、本件の場合、被告人は乗用車を運転中これに設備した通信無線機により交通取締の実施を知り、自車を制限速度に減速して検問個所を通過したのであり、これは通信を傍受し違法行為を適法行為に改め適法(正)な目的に利用したものであり、且つ制限速度を遵守した走行は本件通信の発(受)信者である取締当局の意思にも合致するものであるから、窃用に当らないと解すべきであるのに、被告人の所為を電波法一〇九条一項に違反するとした原判決には法令の解釈、適用を誤った違法がある、というのである。
 しかしながら、特定の相手方に対して行われる無線通信の秘密を保護しようとする電波法五九条、一〇九条一項の規定の趣旨・目的、また無線通信の種類内容は、ひとり本件で問題となっている警察無線のごとく犯罪の予防・捜査、警備活動その他警察責務の遂行に関する種類内容のものに限られず、周知のごとく多種多様な性質内容のものを包含するものであり、従ってこれを傍受し利用する行為も極めて多様である実状等にかんがみると、電波法五九条、一〇九条一項にいう窃用とは、自己が傍受によって知りえた無線通信の秘密を発受信者である本人の意思に反して自己又は第三者の利益(積極的な利益に限らず、不利益を免れることをも含む)のために利用することを意味するものと解するのが相当である。所論のごとく不法目的をもってする行為に限定して解釈することは、秘密保護の対象範囲を不当に狭く限定することになって妥当性を欠くばかりか、法文上も不法目的を要件とする文言がないこと、更には、同法一〇九条一項前段の秘密を漏らす行為と、後段の窃用する行為とはともに単なる傍受自体に止まらない形態でもってする秘密の侵害行為である点で共通の性質をもつが、同前段においては秘密を漏らす行為自体が処罰の対象とされていることとの比較権衡という観点などから勘案して到底採りえないものである。
 ところで、関係証拠によると、被告人は警察無線を傍受することにより交通取締りを免れ、或は暴力団同志の抗争事件発生時に相手方や警察の動静を知る目的で、昭和四九年六月中旬ころ自己所有の外国製乗用車に原判示の通信無線機一式を購入装置し、以後折にふれ右無線機により警察無線を傍受等していたが、同年七月一三日ころの夜、時速約七〇キロメートルで右乗用者を運転中右無線機を操作して大阪府警察本部通信指令室と泉南警察署パトカーとの間で交信された無線通信を傍受し、自車進路の原判示場所で同署員らにより交通検問が開始された事実を知るや、すぐに自車の速度を制限速度の時速五〇キロメートル位に減速しそのままのスピードで右検問個所を走行通過し去ったことが認められ、これによると、被告人は事柄の性質上秘密性が要求される警察無線を傍受することにより、これを自己の交通取締りを潜脱する行為に供し、交通法規違反による検挙という不利益を免れたものであって、かかる警察無線の利用行為が本人である取締当局の意思に反することは明らかであるから、右被告人の所為が電波法五九条、一〇九条一項にいう窃用に該当することは明らかである。なお所論は、右被告人の所為には違法性がなく、また期待可能性がなかった旨をも主張するのであるが、前認定のごとき意図で無線通信機を自車に装置し、これにより傍受した警察無線を窃用した本件違反行為の動機、態様等に照らすと、被告人の行為は何等違法性に欠けるところはなく、或は違反行為を犯すにつき期待可能性がなかったともいえない。
 被告人を電波法五九条、一〇九条一項違反の罪に問擬した原判決には、所論の法令の解釈、適用の誤りはない。論旨は理由がない。

建造物侵入、電波法違反被告
東京地方裁判所平成14年3月20日
   主   文
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は、いわゆる革マル派の構成員であるが、
第一 同派の構成員らと共謀の上、平成九年三月二日、千葉県浦安市gh丁目i番j号所在のFマンションG号室において、同室に設置した無線機を使用して警察無線通信を傍受した上、そのうちからいわゆる革労協主催の集会を巡る警備実施状況等を内包する警視庁通信指令本部と現場警備本部間の警察無線通信を選別し、同室に備付けのノート等に記録して整備するとともに、右傍受内容を東京都練馬区kl丁目m番n号所在のHビルI号室に在室する革マル派の構成員に速報し、右受報者をして同室に備付けのファイル帳に転記させて、同室に出入りする同派の構成員の閲覧に供し、又は同派の構成員からの問い合わせに即応し得る状態に置き、もって、無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、かつ、窃用し、
第二 同派の構成員らと共謀の上、平成九年一一月二七日午後三時過ぎころ、東京都府中市op丁目q番r号所在の関東医療少年院において、いわゆる神戸児童連続殺傷事件により関東医療少年院送致決定を受けて同少年院に収容されている少年との面会に訪れる両親と接触等をするため、あらかじめ同少年院の内部を調査する目的で、面会人の親族を装って、同少年院院長のJが看守する同少年院の正門から敷地内に立ち入って同少年院の庁舎内に侵入し、もって、正当な理由がないのに、人の看守する建造物に侵入し
たものである。
(証拠の標目)
(省略)
(事実認定の補足説明)
第三 電波法違反事件について(判示第一の事実)
一 弁護人は、判示第一の電波法違反の事実につき、証明不十分であるとして、被告人が無罪である旨主張し、また、被告人は、全く身に覚えがないと供述するほかは黙秘をしている。
二 そこで、検討すると、関係各証拠によれば、次のような事実が認められる。すなわち、
(1)警視庁公安部所属の警察官らが、平成一〇年四月九日から同月一〇日にかけて、革マル派のアジトである千葉県浦安市所在のFマンションG号室の捜索差押え及び検証を行ったところ、同室には、デジタル無線信号を解読する機能を備えた再生機と録音機が接続された多数の無線機が設置されていたこと、同無線機の周波数は、警視庁等の主に警察関係無線のものに設定されており、同室内には、警察無線を傍受して録音したデジタルオーディオテープのほか、大量のカセットテープやファイル帳等が置かれていたこと
(2)FマンションG号室で発見された「小島防衛ノート(契約更新・行事)No.1」と記載された水色ファイル帳(甲一八三)には、同室が昭和五四年ころから使用されており、「A」がその契約更新等に従事していた旨が記載されていること(なお、「小島」は、FマンションG号室を示す暗号であると認められる。)
(3)平成九年三月二日、革労協系の団体によって、警視庁L警察署管内のM区民館での集会及び警視庁N警察署管内のO公園までのデモ行進が行われ、L警察署警備課警備係勤務の巡査部長N4は、右集会等につき、同警察署現場警備本部の無線担当員として、その動向や現場警備本部の部隊活動状況等を警察無線を使用して警視庁通信指令本部に報告したこと、その際に使用していた周波数は、共通一系と呼ばれているものであったこと
(4)FマンションG号室で発見された「大衆運動 共一メモ・’97 3」と題するファイル帳(甲一八一)には、警察無線通信を傍受した内容が時系列順にメモ書きされていること、また、同室で発見された「大衆運動ファイル 97年」と題するファイル帳(甲一七八)、「まとめ’97・3〜4月」と題するグリーン色ファイル帳(甲一七九)及びノート(甲一八〇)には、それぞれ「硫黄春闘集会」等の標題で、右傍受した内容のうちN4巡査部長が警察無線を使用して報告した内容が、選別されてまとめられていること(なお、「硫黄」は、革労協を示す暗号であると認められる。)
(5)警視庁公安部所属の警察官らが、平成一〇年一月七日から同月八日にかけて、前記HビルI号室の捜索差押えを行った際に、同室一二畳洋間のロッカー内には、日付順に整理された多数の「連絡ノート」と題するファイル帳が置かれていたこと、それらの中の「連絡ノート 91・11/20〜」と題するファイル帳(甲一七五)の一二月二日付けの欄には、「A」からの連絡として、N3巡査部長の無線通信内容に合致する内容が記載されていること、また、同室で発見された「スコア1」と題するファイル帳(甲一七六)の一九九一年一二月二日付けのページには、「A」が他の革マル派の構成員とともにFマンションG号室に配置された旨が記載されていること(なお、革マル派のファイル帳の日付については、五年三か月遡って作成されており、右各記載は、平成九年三月二日付けのものであると認められる。)
(6)「A」は前記第二認定のとおり、被告人の革マル派内部における組織名であること
(7)FマンションG号室で発見された「小島における情報収集活動を理論化するためにⅠ」と題するパンフレット(甲一八二)には、同室における革マル派のメンバーが、警察無線通信の傍受により、警察の活動情報を収集して分析し、その内容をHビルI号室に報告することを任務とし、その目的は、革マル派の活動を警察の検挙から防衛し、さらに、集会や集団示威運動についての警察の警備実施状況等を知ることによって対立セクトの動向を探ることにあることなどが、暗号を用いて記載されていることなどの事実が認められる。
三 右認定の各事実によれば、革マル派においては、FマンションG号室で警察無線通信を傍受し、その内容をHビルI号室に報告することが組織的かつ継続的に行われていたことや、被告人が、平成九年三月二日、FマンションG号室において、同室に配置された他の革マル派の構成員とともに、N3巡査部長が行った警察無線通信を傍受し、その内容を選別してノート等に記録して整備し、さらに、HビルI号室の同派の構成員にその内容を速報し、右受報者をしてその内容を同室に備付けのファイル帳に転記させたことなどが認められる。
四 そこで、被告人らのこれらの行為が、電波法一〇九条一項に定める「無線通信の秘密を漏らし、又は窃用し」たことに当たるか否かを検討する。
1 無線通信の秘密について
 弁護人は、私人間の通信の秘密でない場合には、その保護の必要性を厳格に解釈すべきであるところ、本件無線通信は、警察無線であるから私人間のの通信ではなく、その内容も革労協系団体の公開されている集会及びデモの状況を内容とするものであって、秘密性のある通信には当たらない旨主張する。
 しかしながら、電波法一〇九条一項の文理上からも、同項で保護される無線通信の秘密は、これを私人間の無線通信に限定して解釈すべき根拠はなく、警察無線であっても、その存在及び内容に非公知性及び秘匿の必要性のある場合には、これに当たることが明らかである。そして、本件無線通信は、革労協系団体の集会及び集団示威運動に対する警察の警備実施状況や警備態勢等を内容とするものであるが、このような警察の警備実施状況等が非公知であることは明らかであり、それが公にされた場合には、警察活動に重大な支障を生じさせるおそれもあるのであるから、秘匿の必要性が存することも多言を要しないところである。したがって、本件無線通信の内容は、同項に定める「無線通信の秘密」に該当するというべきであって、弁護人の右主張は、理由がない。
2 秘密の漏洩及び窃用について
 電波法一〇九条一項に定める「窃用」とは、無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を発信者又は受信者の意思に反して利用することであって、当該行為がその利用意思を反映するものと客観的に認められる程度に外形的に明確になった段階で成立するものと解される。また、同項に定める「漏らす」とは、無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を第三者に漏らし、又は第三者が知り得る状態に置くことを指すものと解される。
 本件において、被告人らは、傍受した無線内容を選別し、FマンションG号室に備付けのノート等に記録して整備するとともに、右傍受内容をHビルI号室に在室する革マル派の構成員に速報し、右受報者をして同室に備付けの「連絡ノート」と題するファイル帳に転記させている。そして、同ファイル帳は、同室一二畳洋間のロッカー内に保管されていたのであるから、同室内に出入りする同派の構成員の閲覧に供する状態にあったと認められる。そして、被告人らが整備したファイル帳等の記載内容を見ると、連絡事項を時系列順に並べただけのもの(甲一七五、一八一)のほかに、特定の集会等ごとにその経過や警察の警備実施状況等を分かりやすく整理してまとめたもの(甲一七八)や、無線周波数別に通信内容を分かりやすく整理してまとめたもの(甲一八〇)などが存在するのであって、その情報整理の方法等に照らすと、被告人らがその整理した情報を利用する意図を有していたことは明らかである。さらに、FマンションG号室から発見されたパンフレット(甲一八二)の記載内容から、HビルI号室が、革マル派の各種情報を集積して組織防衛のために適切な指示を出す場所と認められることを合わせ考えると、右のようなファイル帳等の整理により、そこに記載された内容は、同派の構成員からの問い合わせに即応し得る状態に置かれたものと認められる。
 被告人らのこれらの行為は、法的に許容された無線傍受の範囲を超えて、警察の警備実施状況等に関する無線通信の秘密を利用する意思が外形的に明確になったものであって、右無線通信の発受信者であるN4巡査部長や警視庁通信指令本部の合理的な意思に反するものであることは明らかであり、また、第三者である革マル派の構成員が右無線通信の秘密を知り得る状態に置いたものということができる。したがって、被告人らの右一連の行為が、無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、かつ、窃用する行為に該当することは明らかというべきであり、被告人が、革マル派の構成員らと共謀の上、電波法一〇九条一項に違反する行為を行ったことは十分に認めることができ、弁護人の無罪の主張は、理由がない。