児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「報道によれば、講談社が写真集を発売中止にするなど写真の流通防止に努めたことが、立件見送りの一因だったという。しかし、今回の写真集は児童ポルノ法上、問題なかったのか。もし違法だったとしたら、なぜ立件されなかったのか。児童ポルノ法に詳しい奥村徹弁護士に聞いた。」という500文字以内の原稿依頼が来たので書きました。

 これを500字で書けるもんなら書いてみろ。
 素人の編集者が削ってくれるらしい

1 児童ポルノ罪の成否について
 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条2項2号は「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を児童ポルノ(いわゆる「2号ポルノ」)としています。
 「性器等」というのは、「性器、肛門又は乳首」をいい(同法2条2項)、「性器等を触る」というのは直接・間接を問いませんので、問題の写真では児童がタレントの乳首を触っていることが明らかです。
 「性欲を興奮させ又は刺激するもの」については、「女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である」と解されているところ(大阪高判H24.7.12)、写真集の場合は児童の姿態だけではなく写真集全体として判断されますので(大阪高判H14.9.12、京都地判H12.7.17)、上半身が裸の妙齢の女性の胸を触っていれば、性的興奮を覚える人も多いと思われますので、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件も充たします。
 結局、問題の写真は、2号ポルノに該当しますので、撮影・印刷・製本に関係した人は提供目的製造罪(同法7条5項 最高懲役5年)、販売に関係した人は児童ポルノ提供罪(7条4項 最高懲役5年)に問われる恐れがあります。提供罪の既遂時期については「当該児童ポルノ等を相手方に利用しうべき状態に置く一切の行為をいい,有償・無償を問わず,必ずしも相手方が現に受領することまでは必要がない」とされており(福岡高裁那覇支判H17.3.1)、今回は実際に一部が店頭に並んでいますので、提供罪も既遂になっていると思われます。

2 処分について
 児童ポルノの製造・販売事例については、故意に行われた場合でも、別途、性犯罪・福祉犯が立件されない場合には、執行猶予付きの懲役刑となるのが通常です。
 今回、警察が捜査を始めたものの立件に至らなかったのは、
① いわゆる裏写真集ではなく、大手出版社が適法に出版することを意図した写真集であって、一定の芸術性を備えていることから、表現の自由に配慮する必要があること(法3条)。
② 「乳首」が「性器」に含まれるという定義は一般的とは言いがたい上、「性器等」の定義が児童買春の定義(法2条2項)に置かれており、児童ポルノの定義としては見逃しやすい体裁になっていたこと
③ これまで検挙された2号ポルノの製造・販売事件は、児童と成人が性交等をしている際の接触行為のものが多く、それらとの比較では、本件は被害の程度が低いこと。
④ 出版社が警察の指摘を受けて、写真集の予告が掲載された週刊誌を店頭で回収して、販売済のものについても買い取るなどして徹底して回収して、被害を最小限にとどめるために最大限の努力をしたこと
が考慮されたからだと思います。

追記3/27
 カットされて掲載されたようです。

記事の掲載を開始させて頂きましたので、ご報告申し上げます。
http://www.bengo4.com/topics/273/
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130327-00000304-bengocom-soci

この度はお忙しい中ご寄稿くださり、本当にありがとうございました。
心より厚く御礼を申し上げます。
今後とも弁護士ドットコムを、どうぞよろしくお願い致します。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130327-00000304-bengocom-soci
AKB河西智美さん「写真集」 なぜ児童ポルノで立件されなかったのか?
弁護士ドットコム 3月27日(水)18時9分配信

児童ポルノ法は、児童を性的被害から守ることを目的としている

人気アイドルグループAKB48河西智美さんの写真集が「児童ポルノにあたるのではないか」と指摘されて、発売中止になった問題。新聞報道によると、警視庁は児童ポルノ法違反の疑いがあるとして、写真集の発売元である講談社を捜査していたが、立件を見送る方針を固めたという。

問題となったのは、河西さんの上半身裸の胸の乳首周辺を、白人の少年が両手で後ろから覆っている写真。講談社は、この写真も掲載された河西さんのソロ写真集を2月に発売する予定だったが、インターネット上で「児童ポルノにあたるのでは?」と指摘されて騒動になり、結局、発売中止に追い込まれた。

報道によれば、講談社が写真集を発売中止にするなど写真の流通防止に努めたことが、立件見送りの一因だったという。しかし、今回の写真集は児童ポルノ法上、問題なかったのか。もし違法だったとしたら、なぜ立件されなかったのか。児童ポルノ法に詳しい奥村徹弁護士に聞いた。

●今回の写真は「児童ポルノ」にあたるのか?

まず、そもそも児童ポルノ」とは、法律上、どういったものをさすのだろうか。この点について、奥村弁護士は次のように説明する。

児童ポルノ法2条2項2号では、『他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって、性欲を興奮させ又は刺激するもの』を『児童ポルノ』としています(いわゆる『2号ポルノ』)。

この定義の中の『性器等』というのは、『性器、肛門又は乳首』をいいます(同法2条2項)。そして、『性器等を触る』というのは直接・間接を問いませんので、問題の写真では児童がタレントの乳首、すなわち『性器等を触っていることが明らかです」

では、今回の写真は「性欲を興奮させ又は刺激するもの」にあたるのだろうか。

この点について、奥村弁護士は「上半身が裸の妙齢の女性の胸を触っていれば、性的興奮を覚える人も多いと思われますので、『性欲を興奮させ又は刺激するもの』という要件も充たします」と述べる。

すなわち、問題の写真は「2号ポルノ」に該当するということだ。したがって、製造や販売にかかわった者には次のような犯罪が成立する可能性があるという。

「撮影・印刷・製本に関係した人は提供目的製造罪(同法7条5項、最高懲役5年)、販売に関係した人は児童ポルノ提供罪(7条4項、最高懲役5年)に問われる恐れがあります。また今回は実際に写真集の一部が店頭に並んでいますので、提供罪も既遂になっていると思われます」

●なぜ、立件されなかったのか?

では、「児童ポルノ」にあたると考えられるにもかかわらず、なぜ立件されなかったのだろうか。

児童ポルノの製造・販売事例については、故意に行われた場合でも、別途、性犯罪・福祉犯が立件されない場合には、執行猶予付きの懲役刑となるのが通常です」

このように述べたうえで、奥村弁護士は、警察が捜査を始めたものの立件しなかった理由として、次の4点をあげた。

(1)いわゆる裏写真集ではなく、大手出版社が適法に出版することを意図した写真集であって、一定の芸術性を備えていることから、表現の自由に配慮する必要がある(児童ポルノ法3条)

(2)「乳首」が「性器」に含まれるという定義は一般的とは言いがたいうえ、「性器等」の定義が「児童買春」の定義のところ(児童ポルノ法2条2項)に書かれており、「児童ポルノ」の定義としては見逃しやすい体裁になっている

(3)これまで検挙された2号ポルノの製造・販売事件は、児童と成人が性交等をしている際の接触行為のものが多く、それらとの比較では、本件は被害の程度が低い

(4)出版社が警察の指摘を受けて、写真集の予告が掲載された週刊誌を店頭で回収して、販売済のものについても買い取るなどして徹底して回収して、被害を最小限にとどめるために最大限の努力をした」

奥村弁護士によると「立件が見送られたのは、このような点が考慮されたからだと思います」ということだ。

(弁護士ドットコム トピックス編集部)

【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会大阪弁護士会図書情報委員。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
所属事務所:奥村&田中法律事務所
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/