こういう被侵害法益なので金銭賠償はなじまないと考えています。
裁判所としては、保護処分が適切ということでしょうか。
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第2節不純異性交遊と売春
1 女子ぐ犯における性の問題
司法統計年報によれば, ぐ犯の態様の中で「不純異性交遊」の占める割合は全体のl割強であるが,そのほとんどが女子で「不純異性交遊」は女子固有の問題と言ってもよい。女子ぐ犯の態様は「家出」 と「不純異性交遊」に集中しており「家出」と分類されたものも多くは不純異性交遊を伴っているので,女子ぐ犯の大部分は性の問題を抱えていることになる。女子の場合,性的逸脱と同時進行で生活全般が荒れていくことが多いのである。
ところで性的逸脱とは何を指すのだろうか。性行動のどの範囲までが許容され,どこから「不純異性交遊」になるのかという明確な基準はない。性に対する考え方は時代と共に変化し未成年者の性というだけで問題視されることは少なくなってきているしまた性的放縦がすべて非行に結び付くわけでもない。行為の有無でなくその質を問うこと,つまり,個々のケースにおいて,少年の性行動の意味するものや,その背景となる問題について吟味することが必要である。単に性的に派手な行動をとっているというだけでぐ犯事由に該当するのではなく,それが「自己の徳性を害する」ような行動であり,かつ荒れた生活態度なとから犯罪行為にまで発展するおそれがあるとき初めてぐ犯性と結び付くわけである。
本来,性そのものは非難されるべきものでなく,犯罪に至る可能性がなければ,介入すべきでない個人の領域である。性そのものにいたずらに否定的なイメージをもたせたり,何かひどく悪いことでもしたように認識することは避けなければならない。非行に至る性と,非行には結び付かない性があるわけであり,その点をあいまいにして,少年の自己イメージを損なってしまうことのないよう,留意が必要であろう。・・・・・・・・・・・・・・
5 性的逸脱からの回復
性的逸脱から回復していく場合,その最も大きな要因は親子関係の改善である。家庭の中に安心できる居場所を見出すことができれば,少年は自然に不安定な生活を捨てて戻ってくる。ぐ犯事件として係属するときは,親子関係が非常に悪化していて,修復が難しいように見えることも多いが, しかし少年鑑別所収容などを契機に,互いに理解を深め,特に親の方が少年の表面的な行動だけでなく,行動によって少年が訴えようとしていたものを知る努力をすることによって,関係が良い方に向っていくことが期待できる。
少年が思春期に入ってから急激に対立,葛藤が生じたが,それ以前の親子の結び付きがしっかりしていたという場合には,比較的回復も容易である。例えば,京橋ケースでは,密着していた父娘関係が,少年の成長によってバランスを崩したのであるが,その前の段階で一体感,安心感が体験されており,母親不在の中でも父が母親的な愛情をもって接してきたために,少年は基本的な部分では安心し,父親に対する信頼感もあったと思われる。在宅試験観察中,自信を失っていた父親を調査官が支えるなどの努力によって,少年は安定に向っている。親子の情緒的な結び付きが強く,基本的なところで気持ちが安定していれば,自然の回復力を備えているものである。
逆に,外形的には整って見える家庭で,親の関心もあるように見えるケースでも,実際は子どもに対して冷やかで,親子の情緒的な結び付きが希薄であった場合,自然な回復力は乏しく,一度崩れ出すと歯止めがなくなる傾向がある。また,例えば,白石ケースのように家庭に落ち着くことができず,それ以外のよりどころも得られない場合,回復は非常に困難である。