児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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無期停学処分無効確認等請求事件(京都地裁h23.7.15)

 準強姦被疑事件については「本件女子学生は,本件事件当時,飲酒の影響もあり,その判断能力がある程度低下していたことがうかがわれないでもない。しかしながら,上記の本件送別会における本件女子学生の言動や,本件送別会終了後に自ら階段で5階へ上がったこと,及び本件事件の際の行為態様等からすると,本件事件当時,本件女子学生が酩酊していたとまではいえず,本件男子学生らとの性交及び淫行については,本件女子学生の明確な同意があったというべきである。そうすると,本件事件が集団準強姦事件であるということはできず,少なくとも本件男子学生らが一方的に本件女子学生の性的自由を侵害したとみるのは相当でない。」という認定になっています。
 「準強姦被害者」は当事者としては参加していないようです。

無期停学処分無効確認等請求事件
京都地方裁判所判決平成23年7月15日
       主   文

 1 被告大学が,平成21年3月31日付けで原告らに対して行った無期停学処分が,いずれも無効であることを確認する。
 2 別紙単位目録「原告」欄記載の各原告が,「科目名」欄記載の各授業科目について単位を修得したことを確認する。
 3 原告X4が,被告大学教育学部を平成21年3月25日に卒業したことを確認する。
 4 被告大学は,原告X4に対し,卒業証書及び卒業証明書を交付せよ。
 5 被告大学は,原告ら各自に対し,10万円及びこれに対する平成22年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 6 被告大学は,そのホームページから,別紙記事目録「番号」欄17ないし23及び25ないし28記載の各文言を削除せよ。
 7 原告らのその余の主位的請求をいずれも棄却する。
 8 訴訟費用は,これを4分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告大学の負担とする。
 9 この判決は,第5項に限り,仮に執行することができる。

       事実及び理由
第3 当裁判所の判断
 1 前提事実
   上記第2,2記載の基礎となる事実に加えて,証拠(甲11ないし16,34,36の1,37の1,38の1,39の1,40の1,42の1,56,61の1ないし61の9,75,94,乙1ないし3,8,11の2,11の8,11の15,13ないし15,25,証人E,証人F,証人G,証人C,証人B,原告X1,原告X2,原告X3,原告X4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
  (1) 本件事件当時,本件女子学生は,体育学科2回生の学生Tと交際し,同棲していた。
  (2) 本件送別会は,2月25日の午後7時ころから午後9時ころまで,本件居酒屋4階の大広間で開催され,本件男子学生ら,訴外学生3名及び本件女子学生を含め,体育学科の在学生約160名のうち約6割に当たる91名が参加していたが,学生Tはこれに参加していなかった。
  (3) 本件女子学生は,本件送別会の途中から,原告X3,原告X4及びCら,男子学生数名との間で,「彼氏が最近全然相手をしてくれないんですよ」「私は毎日したいんですけど,週2,3回しかやってくれないんで欲求たまりまくりです」「セックスには自信がある」「フェラチオが得意です」等と語って談笑し,原告X4に対して「めっちゃかっこいいと思います」「今度,フェラチオしましょうか」等と述べ,Cに対しても「憧れていたんですよ」等と述べて,Cの家に泊まりに行く旨を約束したほか,同人らを含む複数の男子学生に対して,キスをする,服の中に手を入れて乳首を触る,服の上から性器を触る等のわいせつ行為をしていた。
  (4) 本件送別会終了後,本件女子学生は,本件居酒屋4階の廊下で,原告X3,原告X4,B,C及び学生Kに対し,「毎日セックスがしたい」「欲求がたまりまくりなんです」等,誘惑する言葉を発し,これに対し,原告X3が「先輩にそんなこと言ったら知らんぞ」「本気にするぞ」等と告げたところ,本件女子学生は「別にいいんですけど」と答えた。さらに,原告X3が,「ほんまにいいのか」「それなら,5階が空いてるし,5階行くか」と述べたところ,本件女子学生は「行きます」と言い,前記5名の男子学生とともに,非常用階段で5階へ上がった。
  (5) 5階の大広間では,原告X3,C,B,原告X4の順に,本件女子学生と性交を行ったが,その際,本件女子学生は,男子学生の陰茎を握って自らの膣に誘導して挿入したり,仰向けに寝た男子学生に対して四つんばいになって口淫したりする等し,性交を嫌がるそぶりは見せなかった。
  (6) 原告X2及び原告X1は,本件送別会後,いずれも本件居酒屋の4階にいたところを学生Kに呼び止められ,「上でやばいことになってるで」等と言われて非常用階段で5階に上がり,本件女子学生があえぎ声をあげながら男子学生と性交しているところを目撃した。原告X2及び原告X1は,学生Aや原告X3らに「お前も中に入れよ」「何かしてこいよ」等とそそのかされ,大広間に入り,原告X4に口淫していた本件女子学生に対し,後ろから陰部を触ったが,これに対しても本件女子学生は拒絶しなかった。
  (7) その後,物音を聞きつけた本件居酒屋の店員が,大広間の引き戸を開けて入室し,原告X4と本件女子学生が性交していたのをみつけ,「何をしているんや。許されると思うなよ。警察に言うぞ」等と叫んだため,原告X4及び本件女子学生は,性交を中断し,下着を穿いて着衣を整えた。原告X4及び本件女子学生が前記店員からの叱責を受けていたところ,大広間にいた他の男子学生らは非常階段で1階へ降りて店外へ出たが,原告X3及びBは原告X4から携帯電話で呼び戻されて5階へ戻り,原告X4,原告X3,B及び本件女子学生が,前記店員及び本件居酒屋の店長に対して謝罪した。
  (8) その後,本件女子学生は,原告X4,原告X3及びBとともにエレベーターで1階へ降り,原告X4,原告X3及びBの3人が,本件女子学生をタクシーで学生Tの自宅まで送り届けた。
  (9) 本件女子学生は,2月27日から陸上競技部の合宿に参加していたが,そのときに,顧問の教員に対し,本件送別会後に,複数の男子学生に飲食店の上階へ連れて行かれ,性的暴行の被害にあった旨を訴えた。
  (10) 被告大学は,3月5日,ハラスメント防止委員会を開催し,教員3名(うち1名が女性)及び事務職員1名からなるハラスメント調査委員会(以下「本件調査委員会」という。)を立ち上げた。
  (11) 被告大学の女性教員が,3月5日,9日及び13日に,本件女子学生から事情聴取を行ったところ,本件女子学生は,本件送別会の途中から飲酒による酩酊状態になり,記憶が定かでないが,本件送別会終了後,エレベーター前で「行こうか」と声をかけられ,1階ではなく暗い部屋へ連れて行かれた,そこから本件居酒屋の店員が入室してくるまでの記憶がなく,周りに誰がいたか覚えていないが,店員が入室してきたときに,原告X4と原告X1の顔が見えた,原告X4,原告X3及びBにタクシーで学生Tの家まで送ってもらい,その3人が本件事件に居合わせたことがわかった等と説明していた。
  (12) 一方,本件調査委員会の男性教員らは,3月10日に原告X3,原告X4,B,C及び原告X1から,同月16日に原告X2,学生K,学生A及び学生Uから,それぞれ本件事件に関する事情を聴取したが,上記男子学生らの言い分は,概ね上記(3)ないし(8)記載の事実に沿うものであった。
  (13) 被告大学は,3月19日の教授会で,本件学生ら及び訴外学生3名の自宅謹慎と,原告X4,B,学生K及び学生Aの卒業保留を決定した。
  (14) 被告大学の男性教員は,3月24日に,当時4回生であった原告X3,原告X4,B,学生K及び学生Aから再度事情聴取し,3月31日の教授会で本件処分を決定した後,4月1日に,原告X1,原告X2,C及び学生Uから事情聴取した。その際の男子学生らの言い分も,上記(12)記載の事情聴取時と変わっておらず,本件女子学生に対して申し訳なく思うが,本件事件について本件女子学生の同意があったと認識しており,強姦又は準強姦に当たるとは思わないというものであった。
 2 本件処分の有効性(争点(1))
  (1) 大学の学生に対する懲戒処分は,教育及び研究の施設としての大学の内部規律を維持し,教育目的を達成するために認められる自律作用であって,懲戒権者たる学長が学生の行為に対して懲戒処分を発動するにあたり,その行為が懲戒に値するものであるかどうか,また,懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決するについては,当該行為の軽重のほか,本人の性格及び平素の行状,右行為の他の学生に与える影響,懲戒処分の本人及び他の学生に及ぼす訓戒的効果,右行為を不問に付した場合の一般的影響等諸般の要素を考慮する必要があり,これらの点の判断は,学内の事情に通暁し直接教育の衝にあたるものの合理的な裁量に任すのでなければ,適切な結果を期しがたいことは,明らかである。したがって,学生の行為に対し,懲戒処分を発動するかどうか,懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかを決定することは,その決定が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか,もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き,懲戒権者の裁量に任されている(最高裁昭和28年(オ)第525号同29年7月30日第三小法廷判決・民集8巻7号1463頁,同昭和28年(オ)第745号同29年7月30日第三小法廷判決・民集8巻7号1501頁参照)。
  (2)ア 上記1(3)ないし(8)記載の本件事件の経緯によれば,本件女子学生は,本件事件当時,飲酒の影響もあり,その判断能力がある程度低下していたことがうかがわれないでもない。しかしながら,上記の本件送別会における本件女子学生の言動や,本件送別会終了後に自ら階段で5階へ上がったこと,及び本件事件の際の行為態様等からすると,本件事件当時,本件女子学生が酩酊していたとまではいえず,本件男子学生らとの性交及び淫行については,本件女子学生の明確な同意があったというべきである。
     そうすると,本件事件が集団準強姦事件であるということはできず,少なくとも本件男子学生らが一方的に本件女子学生の性的自由を侵害したとみるのは相当でない。
   イ 次に,被告大学は,上記第3,3(1)(被告大学の主張)記載のとおり,被告大学は,本件事件における性交及びわいせつ行為について本件女子学生の同意があったか否かを問題にせず,本件男子学生らが自認する事実関係を前提にして本件処分を行ったと主張しているところ,証拠(甲76の1,76の2,77,乙7,9,15,証人H)によれば,3月31日の教授会において,決議に先立ち,D学長や,ハラスメント防止委員会委員長であるH副学長が,本件処分は刑事処分とは異なる教育的判断であること,警察権を持っていない大学の調査では,本件女子学生の同意の有無について確定的に判断できないこと等を説明していたことが認められ,これは上記被告大学の主張に沿うものである。
     そして,上記ア記載のように飲酒により判断能力がある程度低下していたものと推認される本件女子学生との間で,複数の男子学生が性交すれば,事後的に本件女子学生の性的羞恥心を著しく害する可能性があることは容易に想像できるし,飲食店内で集団による性交及びわいせつ行為をすることは社会的に不適切であったといえるから,本件男子学生らの行為は,道徳的に非難に値するのみならず,本件学則1条所定の被告大学の目的に照らし,学生の本分に反するものであったということができる。
     このような観点からすれば,本件処分は,懲戒処分としての合理性を有するといえなくもない。
   ウ しかし,上記第2,2(3)ウ,同(4)イ記載のとおり,本件処分による無期停学は,平成23年4月1日まで見直しの検討を行わないものとされ,その間,本件男子学生らは修学して単位を修得することができずに,将来の卒業及び就職に向けた活動が長期に渡って阻害されているにとどまらず,停学期間中も被告大学に対する授業料の支払という経済的負担を余儀なくされ,また,停学期間も本件学則30条所定の在学年限に含まれることから(本件学則46条4項)すると,これが長引けば卒業することが困難又は不可能となり,本件男子学生らは,退学処分にも匹敵する著しい不利益を受けることになる。
     他方で,証拠(甲95の2,乙25,証人G,証人H)によれば,被告大学のハラスメント防止委員会が,3月5日に本件調査委員会を立ち上げた際,本件女子学生の意思を最優先することを確認したこと,実際に本件女子学生の事情聴取に当たった教員も,本件女子学生の供述の信用性を疑う姿勢は全く持たなかったこと,上記平成23年4月1日は本件女子学生の卒業が見込まれる時期であったことが認められ,被告大学は,本件事件の責任は本件男子学生ら及び訴外学生3名にあって,本件女子学生にないことを前提に,本件処分の当初から,本件男子学生らに対して更生指導の名の下に被告大学から隔離することによって,本件女子学生に対する修学支援を徹底しようとする立場を固めていたということができる。また,証拠(甲76の1,76の2,77,乙7,15,証人H)によれば,3月31日の教授会の審議において,本件男子学生らを退学にするか無期停学にとどめるかという議論の中で,司法判断により本件男子学生らの言い分が排斥されて有罪判決が確定しなければ退学処分とすることは困難である旨の説明がなされたのに対し,本件男子学生らが無罪となった場合に本件処分の内容を軽くする方向での議論は全くなされていなかったことが認められ,このことからすると,教授会を構成する教員の多くは,本件男子学生らの言い分を考慮する必要性すら認識していなかったことがうかがわれる。
     被告大学は,本件女子学生との在学契約に基づき,本件女子学生の修学環境に配慮すべきであることは当然であるが,本件男子学生らに対しても,同様に修学環境に配慮する義務を負うものであるし,学校教育法11条,同法施行規則26条1項によれば,学生に対する懲戒処分には教育上の配慮が求められること,上記ア記載のとおり,本件事件が一方的に本件女子学生の性的自由を侵害したとみるのは相当でないことからすると,上記のように,被告大学が,本件処分に当たり,本件女子学生の保護を重視する一方で,本件男子学生らの言い分を考慮せず,本件男子学生らに対して長期に渡る著しく不利益な処分を課したことには,客観的合理性がなかったというべきである。
   エ 以上に加えて,本件事件前,本件男子学生らの平素の行状に,格別問題とされる事情があったとはいえないことをも考慮すると,本件処分は,社会通念上著しく妥当を欠くものであり,懲戒権者である学長に与えられた裁量権の範囲を逸脱するものであると認められるから,無効である。
 3 原告らの単位修得の有無(争点(2))
  (1) 証拠(甲38の1,39の1,A4の1,B4の1)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,それぞれ別紙単位目録の各「科目名」欄記載の授業科目を平成21年度後期に履修登録し,「評価」欄記載の評価を受けて,単位を修得したことが認められる。
    これに対し,被告大学は,上記第2,3(2)(被告大学の主張)イ記載のとおり,本件処分により原告らは平成20年度後期の科目を履修したとはいえないから,単位を修得していないと主張するが,上記2記載のとおり本件処分は無効であるから,上記認定は覆らない。
  (2) なお,上記第2,3(2)記載の当事者の主張から,本件では,本件処分の有効性についての判断が,原告らの単位修得の有無についての判断に直結するものとなっているところ,懲戒処分は一般市民法秩序と直接の関係を有し,その有効性は司法審査になじむものと考えられるから,原告らの単位修得の有無についても司法審査の対象となると解すべきである。
    最高裁昭和46年(行ツ)第52号同52年3月15日第三小法廷判決・民集31巻2号234頁は,授業科目の単位授与(認定)行為が,それ自体として司法審査の対象となるか否かを判断したものであり,上記のように懲戒処分の有効性を通じて単位修得の有無が問題となる本件とは事案を異にするため,上記最高裁判決は本件の判断に妥当しない。
 4 原告X4は被告大学を卒業したか(争点(3))
   証拠(甲45の1,45の2,46の1ないし46の4,56,75,D4,乙14,15,28)及び弁論の全趣旨によれば,原告X4は,本件学則19条1項所定の卒業要件を満たし,3月6日に,被告大学から,同月25日に卒業することを認定されたことが認められる。
   これに対し,被告大学は,本件処分を理由に原告X4の卒業を否認しているが,上記2記載のとおり本件処分は無効であるから,原告X4は3月25日に被告大学を卒業したというべきである。
   なお,卒業の認定の有無は,原告X4の社会的な資格等に重大な影響を与えるから,司法審査の対象となる。
 5 本件記事の掲載が原告らに対する不法行為に当たるか(争点(5))
  (1) 名誉毀損とは,人の社会的評価を低下させることであり,ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるかどうかは,当該記事についての一般の読者の普通の読み方を基準として判断すべきものであると解される(最高裁昭和29年(オ)第634号同31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。
    また,本件記事はいずれも被告大学のホームページ上に掲載され,ホームページ閲覧者に対する被告大学からの広報という体裁がとられているから,上記判断に当たっては,本件記事を全体としてみた意味内容を基準とすべきである。
  (2) 証拠(甲86)によれば,本件事件は,新聞,テレビ,ラジオ等の報道により,本件男子学生らの実名とともに公表され,広く社会の耳目を集めていたことが認められ,これと被告大学ホームページ上の本件記事の記載を併せてみれば,一般の読者の普通の読み方を基準とすれば,本件記事中の「本学学生6名」,「加害学生」,「男子学生」等の記載が,本件男子学生らを特定して示すことを読み取ることが可能であると解される。
    そして,証拠(甲6の1ないし6の3,43の2ないし43の7,44の1,44の2,59の2,59の3)によれば,本件記事は,本件男子学生らを本件事件の加害者,本件女子学生を本件事件の被害者として扱い,本件事件が本件女子学生の人権を踏みにじる卑劣きわまりないものと評価し,本件男子学生らに対して被告大学が懲戒処分を行った旨が記載されているから,一般の読者の普通の読み方を基準とすると,本件男子学生らが懲戒処分に値する非違行為を行ったという印象を与え,本件男子学生らの社会的評価を低下させるものということができる。
  (3) したがって,被告大学がホームページに本件記事を掲載したことは,原告らに対する不法行為となる。
 6 損害(争点(6))
   上記5(2)記載のとおり,本件記事は原告らの社会的評価を低下させるものであるが,本件記事の内容等,本件に現れた一切の事情に鑑み,本件記事による原告らの精神的苦痛に対する慰謝料は,原告ら各自につき10万円と認めるのが相当である。
 7 被告大学は本件文言の削除義務を負うか(争点(7))
   上記5記載のとおり,本件記事は原告らの社会的評価を低下させ,名誉を毀損するものであるから,被告大学は,本件文言のうち,現在も被告大学のホームページ上に掲載されている,別紙記事目録「番号」欄17ないし23及び25ないし28記載の各文言を削除する義務を負う。
 8 結論
   以上によれば,原告らの主位的請求は,本件処分の無効,原告らの単位修得の確認及び原告X4の卒業の各確認,原告X4に対する卒業証書及び卒業証明書の交付,原告ら各自に対する10万円の慰謝料及びこれに対する遅延損害金の支払,並びに本件記事の抹消を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,原告らの予備的請求は,上記本件処分の無効の確認が認容されることを解除条件とするものであるから判断の対象とせず,主文のとおり判決する。
    京都地方裁判所第1民事部
        裁判長裁判官  杉江佳治
           裁判官  小堀 悟
           裁判官  池上裕康