児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

熊澤孝一「真剣交際の主張がなされ,対価性が争われた児童買春, 児童ポルノ製造事件」捜査研究 第730号(2012年3月号)

 側聞しておりました。入れ知恵してないって。

第1 はじめに
本件は,被告人(当時36歳)が,インターネットの出会い系サイトで知り合った被害児童(当時14歳)に対し?携帯電話通話料金の支払いを対償として供与することを約束して,同児童に性交類似行為をしたという児童買春,
?同児童に,衣服の一部を着けず,乳首等を露出させる姿態をとらせた上,これらの姿態をビデオカメラで撮影してビデオテープに記録したという児童ポルノ製造の各事案であり当職が公判を担当したものである。
被告人は,公判において,被害児童とは結婚を前提に真剣に交際していたと弁解し,弁護人も,被告人の弁解に沿って,?については,携帯電話は,被害児童と連絡を取るために買い与えたものであって,性交類似行為の対価ではない, ? については,真剣に交際していた男女間の行為であって,可罰的違法性がないとして,両事件につき,無罪を主張した。
一般に児童買春事件では,被疑者と被害児童の間の性交等の性的行為が,l回限りで買春の対価も現金であるというような,性的行為と対価の関係が明白な事案が多いと思われるが,本件では,被告人と被害者との関係が,途中断絶していた期間はあるものの,約10か月間継続していたことや被告人が被害児童に携帯電話を渡すに際し性交類似行為の対価であることを口頭で明確にするようなことがなかったことなどから,対価性がやや希薄であることは否めない事案であった。
また,児童買春や児童ポルノ製造,育成条例違反の事件では,被疑者から真剣交際の弁解がなされることも少なくないが,本件では,被告人が真剣交際の弁解を行う上,これに沿うようにも思われるメールが存在するなどの事情が認められた。
このような事案ではあったものの,判決では,被告人の真剣交際の弁解が排斥されるとともに,性交類似行為と携帯電話通話料金の支払いとの対価関係が認められ,検察官主張どおりの有罪判決が得られたものであり,同種事案の処理に際し,参考になることもあろうかと思い,本件を紹介する次第である。
なお,?の児童ポルノ製造については,被告人が,別々の日に2回にわたり被害児童を撮影し,その姿態を同一のビデオテープに記録していたという事案であり,併合罪か包括ー罪かという罪数の問題も存するが,この点については,本稿では割愛するので,あらかじめご了承願いたい。
もとより,意見にわたる部分は当職の私見である。