第30講
インターネット犯罪の法益侵害性とその認識
首都大学東京法科大学院教授前田雅英
基本判例1 最決平成23年12月19日(裁判所Web)
他方、他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり、それを提供者において認識、認容しつつ当該ソフトの公開、提供をし、それを用いて著作権侵害が行われたというだけでは、直ちに著作権侵害の幇助行為には当たらないとする。すなわち、一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり、また、そのことを提供者においても認識、認容していることを要するというべきであるとし、現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識、認容しながら提供する場合や、ソフト入手者のうち例外的とはいえない範囲の者が著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合に提供し、実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り、帯助行為に当たるとした。そして、本件行為は、客観的に見て、例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高い状況の下での公開、提供行為であったと認定したのである。
著作権侵害のこの程度の蓋然性があれば、幇助犯の違法性を認めうるとした点は、重要である。・・・
基本判例2 最決平成20年3月4日(刑集62-3 -85)
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性交時に相手が特定していれば、売春に該当しないという形式的解釈は、やはり退けられるべきである。