児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

曽我部真裕「インターネット上での児童ポルノ流通対策における法的問題」情報処理学会研究報告

ブロッキングの論点が紹介されています
 発信が違法なら、情報受領も保護されないということです

http://www.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/select_signotes3.asp?category2=EIP&vol=2012-EIP-55&no=9&code=2012-EIP-055
研究報告「電子化知的財産・社会基盤(EIP)」Vol.2012-EIP-055
本稿は,2011 年に開始されたプロバイダ等による児童ポルノブロッキングの仕組みを概観し,この仕組みがもたらしうる,通信の秘密や表現の自由の侵害といった法的問題について検討する.

表現の自由
ここでは,表現の自由との関係について簡単に触れたい.これについては,関係者が複数あるのでまずそれを整理する.
児童ポルノサイトがブロッキングされてしまえば,当該画像の発信者が児童ポルノを発信できなくなるのであるから,児童ポルノの発信者の表現の自由が制約されることになる.次に,これに対応して,児童ポルノの閲覧者も当該情報にアクセスできなくなるため,知る権利(これも表現の自由の一環であると考えるのが定説である)が制約されることになる.
他方,DNS ブロッキングを前提とした場合,ドメイン単位でしかブロッキングができないため,ブロッキング対象である児童ポルノサイトと同じドメインで情報を発信している者は,たとえその者が発信している情報が全く適法なものであっても,巻き添え的にブロックされてしまうことになり,表現の自由の制約になる(オーバーブロッキング).また,この情報へのアクセスの遮断により,閲覧者の知る権利も妨げられることになる.
つまり,ブロッキングによって表現の自由が制約される者には,児童ポルノ発信者,児童ポルノ閲覧者,オーバーブロッキングされる適法情報発信者とその閲覧者といった類型がある.ブロッキングを行うプロバイダ等は,これらの者から民事責任を追及される可能性がある.
しかし,このうち,児童ポルノ発信者については,児童ポルノの発信自体は児童ポルノ規制法によって犯罪とされており,このような情報をブロックしても違法とは言えない.したがって,プロバイダが児童ポルノ発信者との関係で法的責任を負うことはない.同様に,児童ポルノ閲覧者との関係でもプロバイダの法的責任は生じないと考えられる.現行法では,児童ポルノ閲覧は犯罪とはされていないが,今見たように発信は犯罪であるから,これらの情報を閲覧することが法的に保護されているとは言えず,閲覧を遮断しても法的責任は生じないと考えられる.