児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ,強姦,強姦致傷,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事で懲役18年(東京地裁h23.9.6)

 判示第4は撮影型の強制わいせつ罪(176条後段)で、撮影行為がわいせつ行為であることを示しています。
 それなら、判示第4も強制わいせつ罪(176条後段)になりそうなんですが、そうすると、第2の強姦罪と包括一罪になってしまいます。

児童ポルノの単純所持は禁止されていませんから、「いずれも判示第3の児童ポルノ製造の犯罪行為を組成した物で,何人の所有も許さないものであるから」の部分に誤りがあります

強制わいせつ,強姦,強姦致傷,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
       主   文
 被告人を懲役18年に処する。
 未決勾留日数中360日をその刑に算入する。
 東京地方検察庁で保管中のSDカード4枚(平成23年東地領第179号符号1から4まで)を没収する。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は
第1 〔所在地省略〕被告人方において開講していた英会話サークルの生徒であるA〔生年月日省略〕が13歳未満の女子であることを知りながら,平成21年9月下旬ころ,前記被告人方において,A(当時9歳)と性交し,その際,同人に全治約1週間を要する処女膜損傷の傷害を負わせ[平成22年12月15日付け追起訴状記載公訴事実]
第2 Aが13歳未満の女子であることを知りながら,別表1記載のとおり,平成22年1月28日ころから同年3月31日ころまでの間,前後5回にわたり,いずれも前記被告人方において,A(いずれも当時10歳)と性交し[訴因変更後の平成22年8月17日付け追起訴状記載公訴事実及び訴因変更後の同年11月8日付け追起訴状記載公訴事実]
第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,別表2記載のとおり,平成22年1月28日ころから同年3月31日ころまでの間,前後5回にわたり,前記被告人方において,A(当時10歳)に,被告人と性交する姿態,被告人がAの陰部を触る姿態及び同人の陰部等を露出させる姿態をとらせ,その場面をビデオカメラで撮影し,その動画データ合計8点を同ビデオカメラに装着したSDカード合計4枚に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態並びに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し[平成22年12月20日付け追起訴状記載公訴事実]
第4 前記英会話サークルの生徒であるB〔生年月日省略〕が13歳未満であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,平成21年11月1日ころ,前記被告人方において,B(当時11歳)に対し,服を脱いでソファーに横になるように言い,同人を全裸で同所のソファーに仰向けにさせた上,その陰部を右手指で押し,その両胸を両手でなで回し,さらに股を開かせてその陰部などをポラロイドカメラで撮影し[平成22年4月30日付け起訴状記載公訴事実]
たものである。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は,刑法181条2項,177条後段に,判示第2の各所為は,いずれも同法177条後段に,判示第3の所為は,包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項,1項,2条3項1号,2号,3号に,判示第4の所為は,刑法176条後段に,それぞれ該当する。各所定刑中,判示第1の罪については有期懲役刑を,判示第3の罪については懲役刑を,それぞれ選択する。被告人には前記の前科があるので,判示各罪の刑について,いずれも刑法56条1項,57条により,それぞれ再犯の加重をする(ただし,判示第1及び第2の各罪については,いずれも同法14条2項の制限内で加重する。)。以上は,同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,刑の最も重い判示第1の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重をする。その刑期の範囲内で,被告人を懲役18年に処する。同法21条を適用して,未決勾留日数中360日をその刑に算入する。東京地方検察庁で保管中のSDカード4枚(平成23年東地領第179号符号1から4まで)は,いずれも判示第3の児童ポルノ製造の犯罪行為を組成した物で,何人の所有も許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用して,これらを没収する。訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して,被告人に負担させない。
(量刑の理由)
 本件は,英会話サークルの先生という立場を利用して,子供の性的知識の不十分さや判断力の未熟さにつけこんで行った卑劣な犯行である。被告人は,犯行の様子をポラロイドカメラやビデオカメラで撮影して記録し,収集していた。用意した下着を着用させたり,アイマスクを着けさせるなどして犯行に及んだほか,Aに対する犯行の際には,女性器にローションを塗ったり,バイブレーターを用いたりもしている。9歳から11歳と身体的にもまだ幼い子供を,もっぱら自分の性的欲求を満たすための道具として扱っており,非常に悪質な犯行である。暴行や脅迫が用いられていない点は,特に酌むべき事情とはいえない。
 また,本件犯行は,常習的な犯行の一環と認められる。
 被害児童らの受けた精神的,身体的な被害は大きい。Aは,処女膜損傷という傷害のほか,被害を受けたことによる心の傷により,健全な人格形成が阻害されるおそれがあり,少なくとも20歳ころまでは継続的な治療が必要な状態となっている。Bも,被告人に撮影された裸の写真のことが心配で,食事ができなくなり,体重が激減するなど,心に深い傷を負っている。信頼していた被告人に裏切られ,幼い娘の心身を傷つけられた両親らの精神的打撃も大きい。被害結果は重大である。
 以上によれば,犯情は非常に悪い。
 被告人は,一部の罪を認め,反省の言葉を述べているが,法廷での供述態度やその内容等に照らすと,真摯に反省しているとは到底いえない。被告人は,多数の前科を有し,これまで何度も服役を繰り返してきた。直近の前科は,モデル指導と称して,女性にわいせつな行為を行うなどした本件と同種のものである。その罪により懲役5年6月の刑の執行を受けたにもかかわらず,出所後半年もたたないうちに判示第1の犯行に及んでいる。更生するどころか犯罪性向が深化しているというほかない。被告人が高齢であることを考慮しても,長期間の服役はやむを得ないといえる。
 以上に述べたとおり,本件は,卑劣で,非常に悪質な犯行であり,結果も重大であるから,それに見合う刑罰を科す必要がある。そこで,主文のとおりの量刑をした。
(求刑 懲役17年,主文同旨の没収)
 平成23年9月6日
    東京地方裁判所刑事第17部
        裁判長裁判官  登石郁朗
           裁判官  蛭田円香
           裁判官  志田健太郎