児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ規制条例検討会議検討結果報告書(案)

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 情報公開で京都府からもらってきました。
 h23.2.22の配付資料としての案です。
 「重大な人権侵害」なのに「有償取得」に限定するのは理解できません。ネットで無償で流通するのが止まらない。
 セクスティングの処罰が入っていますが、3項製造罪になることを知らないようです。黙っておきましょう。
 児童ポルノ愛好家とか仕事で児童ポルノを扱う人の意見は一切聞きませんでした。

児童ポルノ規制条例検討会議
検討結果報告書(案)
平成23年2月


?はじめに
平成11年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年5月26日法律第52号。以下「法」という。)」が施行され、その後の改正を経て、現在、児童ポルノの製造・提供及び提供を目的とする所持等が禁止されているものの、依然多くの児童ポルノが流通している状況にある。
特にインターネットの普及に伴い、容易に児童ポルノの閲覧・入手が可能な状況にあり、児童ポルノの氾濫が、新たな児童ポルノの製造・提供を助長し、さらなる被害児童等を生み出す土壌となっているとともに、一旦インターネット上に流通したデータの回収は事実上不可能なことから、被害児童やその親しい者に対して将来にわたり耐え難い苦しみを与え続けることになってしまう。

このような事態を憂慮し、先般、“京都市PTA連絡協議会”及び“人づくり21世紀委員会”が協働して児童ポルノの規制強化等に関する街頭署名活動を実施したところ、3万筆を超える市民の署名が集まるなど「児童ポルノを絶対に、許さない」という気運の高まりも認められるところである。
こうした状況の中、京都府では、児童ポルノの流通・拡散を防ぎ、児童ポルノの被害から児童の人権を守ることを目指し、具体的な条例づくりに向けた検討が進められることとなった。

児童ポルノの規制の検討に当たっては、法的問題点も含め多面的に検討する必要があることから、学識経験者(憲法、刑法、人権、児童福祉、情報、弁護士、報道関係者、青少年育成関係者、教育関係者等で構成される「児童ポルノ規制条例検討会議」が、平成22年9月に設置されたところである。

本検討会議では、青少年関係団体やインターネット関係事業者からも意見聴取を行いながら、条例による児童ポルノの規制や被害児童のケアのあり方及び啓発活動の推進について、議論を重ねてきたところである。

本報告書は、京都府において、今後の条例策定及び施策実施に当たっての参考とされるよう、これまで6回にわたる検討結果を取りまとめたものである。

?条例検討の背景及び目的
児童ポルノは、児童の性的虐待の記録であり、児童に対する人権侵害である。
また一旦インターネットで流通すれば、その回収は事実上不可能であり、被害児童等の苦しみは、親しい者を巻き込み将来にわたって続くこととなる。
現在、児童ポルノの提供を目的とする所持等が法で禁止されているが、京都府を含め全国で児童ポルノ事犯が増加傾向にあり、極めて憂慮すべき状況にある。
また、京都は日本を代表する国際的な文化都市として、外国人観光客や修学旅行生をはじめ多くの人々が訪れる場所である。
京都の思いやりを基本としたこころ豊かな文化を守り、何よりも日本の歴史と文化の中心地としての責任を果たすためにも、率先して「児童ポルノを絶対に許さない」という決意を示していく必要がある。
こうした状況を踏まえ、条例は「児童ポルノによる子どもたちの権利侵害を決して許さない京都づくり」を基本理念とし、児童ポルノの被害から児童の人権を保護し、被害児童等の救済を図ることを目的とすることが適切である。
【参考?】児童ポルノ禁止法違反の検挙状況の推移(京都府警察本部提供資料)
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?条例に盛り込むべき内容
1条例の基本的な考え方

児童ポルノによる被害から子どもを守りたいという気持ちは、子どもを持つ親の共通の願いであり、児童ポルノの被害者・加害者を生まない社会の実現に向けて、条例は「児童ポルノによる子どもたちの権利侵害を決して許さない京都づくり」を基本理念とし、被害を受ける子どもたちの立場に立って、次に示す考え方を前提に条例を制定されたい。
? 「府民は、児童ポルノの取得・所持をしない」ことを原則とし、児童ポルノ根絶に向けて府民全体で取り組んでいく気運を醸成していくこと。
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児童ポルノの画像等が現存することによって、被写体となった児童が精神的苦痛を感じ、将来にわたって生活に支障を来すことがないよう、現存する児童ポルノの廃棄に向けた取組を進めること。
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児童ポルノによる新たな被害児童等を生じさせないよう、児童ポルノの製造・提供を助長するような誘因を断つために、個人の私生活上の自由に十分配慮しつつ、児童ポルノの取得及び提供目的以外の所持に対する実効的な規制を検討すること。
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児童ポルノ対策については、警察、学校及び民間団体等の関係機関との連携を強化し「啓発」「支援」及び「規制」を柱とした総合的な施策を展開していくこと。
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上記の基本理念・目的に照らし、条例による規制の対象は、実在の児童(児童の生死は問わない)を被写体とするものに限定すること。
2被害児童に対する支援

子どもの時に受けた性的被害は、その子どもの将来や人生のあり方に深刻なダメージを与えるものであり、児童ポルノの被害をなくしていくという観点においても、最優先事項として被害に遭った児童の支援を充実させることが重要である。
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児童ポルノ被害に関する相談については、被害者自身からなかなか言い出しにくい面があるので、身近な専門相談窓口を設置し、あらゆる機会をとらえて広く周知に努めるなど、気軽に相談しやすい環境をつくることが大切である。
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あわせて、相談に際して二次被害(被害後に周囲の言動によってさらに傷つけられてしまうこと)が生じることがないよう十分配慮するなど、安心して相談できる環境をつくることも大切である。

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また、子どもは家族の一員であり、被害児童の支援においては、保護者も 含めて家族に対するサポートができる体制も必要である。
【考えられる具体的な取組の例】

例えば、児童ポルノ等による性的虐待の被害に対応するため、児童相談所 に相談窓口を設置し、専門的な知識に基づく迅速かつ適切な支援(助言・指導・一時保護・施設入所など)が行えるようにするなど、相談体制の強化を検討されたい。

また、インターネット上の児童ポルノの被害は地域を越えるため、他府県で府内に居住する被害児童が発見された場合、またはその逆の場合においても、速やかに被害児童が居住する地域を所管する児童相談所に要保護通告がなされるよう、児童相談所同士の連携体制を強化することも大切である。

あわせて、保健所や市町村、警察、学校などの関係機関との相互の連携・ 協力のもと、児童相談所を中心に被害児童支援のためのネットワークを府域全体に拡げるとともに「社団法人京都犯罪被害者支援センター」や大学の、カウンセリングセンターなど民間支援団体との連携を強化し、個々のケースに応じたきめ細やかな支援ができる体制の構築について検討されたい。

児童ポルノの被害から子どもを守るための規制
(1)インターネット上の児童ポルノの閲覧に関する規制

インターネット上の児童ポルノの閲覧に関する規制については、その特性上、地域を越えるため地方自治体が単独で何か対策を講じることには限界があり、基本的には全国的な対応が必要な課題である。 こうした中、京都府では、公的施設に設置されたインターネット端末における児童ポルノの閲覧を制限する措置を講じるなど、一定の取組が進められているところである。また、携帯電話フィルタリングサービスの定着促進等を図るため「青少年の健全な育成に関する条例(昭和56年1月9日京都府条例第2号。、以下「青少年育成条例」という。)」の改正(平成23年4月施行予定)を行うなど、インターネット上の有害情報から青少年を守るための取組の推進が図られているところである。



現在、国においては、児童ポルノサイトの閲覧を防止する措置(いわゆるブロッキング)について、インターネット業界における自主的な導入に向けての環境整備が進んでいる。こうした状況に鑑み、府の取組としては、関係者の責務を条例に盛り込むことを検討されたい。

(2)児童ポルノの取得・所持の禁止

法において、提供を目的とする児童ポルノの所持等が禁止されているが、それ以外の所持等については禁止されていない状況にある。

児童ポルノを閲覧することによって、性犯罪等が誘発されるという因果関係は立証されていないが、実在の児童を被写体とする児童ポルノの流通・拡散が被写体である児童の人権を永続的に侵害することは明らかである。
また、需要があるから供給が生まれるとすれば、児童ポルノの製造・提供の誘因を断つためにも、現在、法規制のない取得・所持について条例で何らかの規制をすることには意味があると考える。



ただ、条例には地理的限界があり、実効性の面からみれば、本来は法律で全国的に規制していくことが最善であるとの意見があり、また、国会において児童ポルノの単純所持を禁止する法案が提出されているものの、未だ結論がでていない状況にある。

このような状況において、法律に先駆けて条例で規制を行う際には、国の動向に十分配慮しつつ慎重な検討が必要であるが、現に児童ポルノ被害を受けている児童が府内にも存在し、また、前述した条例の理念・目的に鑑みれば、条例で規制を設けることについて府民の多くから理解が得られるものと考える。



以上のような認識に基づき、慎重な議論を重ねた結果、児童ポルノの取得・所持について、以下に示すような基本的な方針に基づいて規制を行うことが可能ではないかと考える。

なお、児童ポルノの流通・拡散を防止するためには、電磁的記録についても規制の対象とすべきである。ただ、インターネット規制については基本的に全国的な対応が望ましいとの意見があるところであり、プロバイダ等のインターネット関係事業者に対しては、現在行われている児童ポルノ画像の削除などの取組を最大限活用して、その社会的責任を果たすよう協力を求めていくことが適切であると考える。

また、規制に対する違反者が18歳未満の児童であった場合には、児童の保護の趣旨に照らし、制裁を科すのは悪質な場合に限定すべきであり、指導による更生を基本とすべきであると考える。

【規制内容の検討】
?提供目的以外の取得・所持の禁止
児童ポルノの被害から児童の人権を守るため、条例により、正当な理由 なく児童ポルノを取得し、所持することを禁止する必要がある。
取得・所持を禁止するものについては、法第2条第3項第1号から第3号に規定する児童ポルノとする。

上記以外に、児童に対する性的虐待の防止という観点からは、例えば衣 服を着ている児童の顔や体に精液をかける行為が写った画像など、児童に対するわいせつ行為が写っているものであって性欲を興奮させ又は刺激するものについても、児童の人権を侵害するものとして規制の対象に追加する余地もあると考える。

ただ、その際には、法がこのような画像等の製造・提供を禁止の対象としていないこととの均衡を慎重に検討する必要がある。

なお、学術研究、医療行為、犯罪捜査、弁護活動など正当な業務のため に取得・所持する場合や、幼児期の成長記録として本人や家族が所持する場合など、正当な理由がある場合には禁止の対象外とする。


?廃棄命令
児童ポルノが現存することによって、被写体となった児童が永続的に精 神的苦痛を感じ、将来にわたって生活に支障を来すことがないよう、取得・所持が禁止される児童ポルノのうち、性的虐待の程度が高いと認められるものに対して、廃棄命令を出せるようにすることが考えられる。
具体的には、法第2条第3項第1号及び第2号に規定する児童ポルノに ついて、正当な理由なく所持している場合を廃棄命令の対象とすることが考えられる。

なお、法第2条第3項第3号に規定する児童ポルノについても廃棄命令の対象とすべきであるとの意見もあったが、その場合には、性的虐待の程度が高いと思われる「全裸及び性器露出」に限定するほか、規制対象が客観的に明確になるようにする必要がある。

また、条例の実効性を担保するため、廃棄命令に従わない場合には、制裁を科すことも可能と考えられる。


?直罰規定
児童ポルノの取得・所持に対して刑事罰を科す場合には、性的虐待とい う観点から違法性が高い画像等の取得・所持にその対象を限定する必要があるとともに、インターネットで本人の知らないうちに送りつけられる危険性なども危惧されることから、冤罪を防止し、不当に処罰が拡大されないように客観的な基準を設けることが重要である。

児童に対する極めて重大な性的虐待であることが明確なのは、13歳未 満の児童に対して強姦などの性的犯罪行為を構成する画像等であり、こうした画像等の製造を積極的に助長するような行為には、刑事罰を科すことが適当と考えられる。

具体的には、法第2条第3項第1号及び第2号に規定する児童ポルノの うち、13歳未満の児童が被写体となった画像等を正当な理由なく有償で取得することが、これに該当すると考えられる。

ただ、13歳未満の児童に対して物品や食事等と引き替えに児童ポルノ の提供を求める行為についても、児童の未成熟な判断能力につけ込む悪質な行為として考えられることなどから、必ずしも金銭を対価とする場合に限定することなく、法第2条第2項の「児童買春」の定義規定にならい、「対償を供与し、又はその供与の約束をして」取得した場合を刑事罰の対象とすることも、検討の余地があると考える。


?罰則の内容
制裁を科す場合には、地方自治法(昭和22年4月17日法律第67号)第14 条に規定する罰則の上限を超えないことは当然として、青少年育成条例第21条に規定する淫行及びわいせつ行為の禁止に対する罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)との均衡も考慮に入れた上で、制裁の内容については府において適正に判断されたい。