児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童の商業的性的搾取の新たな形態」についての我が国のステートメント 「児童の商業的性的搾取の形態と新たなシナリオ」

対外的に、「漫画、アニメ、ゲーム等ではしばしば児童を対象とした性描写」に対策取ると言っています。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/enzetsu/20/sei_1126.html
政府首席代表演説
CSEC IIIハイレベル政府間対話・我が国政府首席代表ステートメント
テーマ1.「児童の商業的性的搾取の形態と新たなシナリオ」
平成20年11月26日
於:本会議場

1.冒頭
 児童の性的搾取問題を重視する多数の国からの閣僚、首席代表と共に、この場に参加することを光栄に思います。

 児童買春・児童ポルノ等の児童の性的搾取は、言うまでもなく、児童の人権を著しくふみにじる行為です。各種人権の中でも、自分の力で自分の権利を守れない弱い立場にある児童に対する人権侵害は特に容認できるものではなく、国際社会全体として関心をはらっていく必要があります。第2回世界会議ホスト国として、我が国は児童の性的搾取問題に対し引き続き高い関心を有し、根絶のための取組を行っております。横浜コミットメントのフォローアップとして、2001年以降の我が国の取組をふまえ、児童の商業的性的搾取の形態と新たなシナリオにつきいくつか述べたいと思います。

 我が国は、児童の人権に高い関心を払う国ではありますが、同時に、IT技術の進歩やグローバル化による国境を越えての人権侵害といった新しいチャレンジにも直面する国であります。我が国の経験をこの場で共有することは、他国で起こりうる侵害を事前に予防するために極めて有意義と確信します。

2.IT技術の進展に伴う児童の商業的性的搾取
 IT技術の進歩とインターネット及び携帯電話の普及により、児童の商業的性的搾取問題が2001年当時には想像もしなかった形態を取り、また広範囲に浸透してきています。

 例えば、我が国にて発生した児童買春事件に関し、検挙件数の約半数が、パソコンや携帯を通じたインターネット上の出会い系サイトに起因しています。特に、我が国では、学童児童・生徒の携帯電話の保有率が高く、保護者の目の届かないところで有害情報に接する危険性が高いことも背景にあります。本年5月、「出会い系サイト規制法」が改正され、出会い系サイト事業者が、自己が行う出会い系サイトに大人が異性の児童を誘う書き込み等があることを知ったときは当該書き込みを削除することが義務づけられる等、出会い系サイトに起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護するための措置が強化されました。

 また、インターネット上に流れる児童ポルノは、国内外を問わず容易に拡散し、児童の尊厳を踏みにじり、生涯にわたる傷を残す凶器です。我が国は、インターネット上に流布する違法・有害情報への対策を強化しており、その一環として、2006年6月から警察庁の委託により運用を開始したインターネット・ホットラインセンターでは、一般のインターネット利用者からの違法情報、有害情報に関する通報を受け付け、警察への通報、プロバイダやウェブサイトの管理者等への削除依頼等を行っています。

3.グローバル化による児童の商業的性的搾取と国際協力
 グローバル化による人の移動の促進は、児童買春や児童の人身取引の問題も生じています。これらに対処する上では、各国の努力とともに、国際協力が不可欠となっています。我が国は、2002年より、東南アジアの捜査関係者等を招へいし、東南アジアにおける児童の商業的性的搾取等の現状や、被害児童の保護等を含む取組状況について意見交換を行い、相互理解を深め、捜査協力の拡充・強化に努めております。

4.児童買春・児童ポルノ禁止法
 我が国は、児童買春及び児童ポルノの製造を犯罪として処罰化するなど、児童を性的搾取及び性的虐待から守るため、1999年に児童買春・児童ポルノ禁止法を制定しました。同法には国外犯処罰規定も定められております。2004年には同法を改正し、児童買春や不特定多数人への児童ポルノ提供等の罪の法定刑を引き上げたほか、特定少数者に対する児童ポルノ提供行為を処罰化するなど処罰範囲を拡大しました。我が国の法執行機関では、同法を積極的に運用して、徹底した取締の強化に努めております。

 さらに、児童ポルノの撲滅にはその需要を絶つことが重要であるとの認識から、本年6月、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持についても犯罪化する法改正案が国会に提出され、現在、継続審議となっております。

5.今後の課題
 このように様々な取組を行っておりますが、同時に課題もあります。漫画、アニメ、ゲーム等ではしばしば児童を対象とした性描写が見られます。これは現実には存在しない、コンピューター等で作られた児童が対象ではありますが、児童を性の対象とする風潮を助長するという深刻な問題を生じさせるものであります。このような描写をどの様に規制するかが法規制上の論点となっています。また、インターネットに潜む危険から子どもたちを守るために、情報通信業界と協力し、官民が連携して対策を講じていく必要があります。

 今回のCSEC IIIは横浜会議に引き続き、各国から、数多くの児童の性的搾取問題に精通する専門家や、市民社会を含む様々なアクターが集っています。会場にお集まりの皆様との対話を通じて、国際社会が全体として、児童の性的搾取問題の解決に向け、大きく前進するための機会としたいと考えております。