児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

愛知県青少年保護育成条例(昭和36年愛知県条例第13号)違反の罪(いわゆる淫行処罰規定)により逮捕、勾留、公訴提起され、その後、無罪判決が確定した場合において同条例違反の被疑事実に基づく司法警察員の逮捕状請求及び逮捕状に基づく逮捕の違法性が肯定された事例(名古屋地裁H22.32.5損害賠償請求事件)

 捜査の過程が明らかになっています。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100405142636.pdf
名古屋地裁H22.3.25損害賠償請求事件
(2) 本件被疑事件及び本件被告事件の経緯
ア本件被疑事件の捜査の端緒等
(ア) A子は,平成18年8月28日,A子の母とともに愛知県瀬戸警察署(以下「瀬戸署」という。)に出頭し,本件性行為につき被害の申告をした(以下「本件申告」という。)。
瀬戸署では,本件申告について,A1警部補,A2警部補,A3巡査部長,A4巡査,A5巡査などが所属する瀬戸署生活安全課少年係が捜査を担当することとなった(以下,瀬戸署所属の司法警察員・司法巡査らを「本件警察官ら」という。)。
A5は,同日,A子から事情を聴取し,供述調書(甲22,50)を作成した。なお,A子は,被害届と題する文書は作成していない(証人A3)。
A3は,同月31日,A子の写真撮影を行い(甲25),また,原告の住民登録地に対する視察にかかる捜査報告書(書証として提出されていない書類(以下「未提出」と表示する。))を作成した。
(イ) また,本件警察官らは,平成18年9月2日,A子の案内により,本件ホテルなど現場の引き当たり捜査を行い,同月4日付けで被害現場等確認に関する捜査報告書(未提出)を作成した(甲27,51,証人A3)。
(ウ) A3は,平成18年9月5日,A子の母の事情聴取をし,供述調書(甲21,49)を作成した。
また,A2は,同月7日,A子から事情聴取をし,本件被疑事実に関する供述調書(甲23,51)及びA子の身上関係についての供述調書(未提出)を作成した(甲1,15)。
(エ) 本件警察官らは,本件被疑事件の裏付け捜査のため,平成18年9月12日,本件ホテルからジャーナル等の領置手続を行い(甲26),本件ホテルの部屋などの写真撮影を行った(甲29)。
A2は,犯行場所の特定に関する同日付けの捜査報告書を作成した(甲27)。
イ逮捕状の請求等
(ア) 本件警察官らの上記捜査に基づき瀬戸署警視(刑事訴訟法199条2項による指定を受けた司法警察員)A6は,平成18年9月21日,瀬戸簡易裁判所裁判官に対し,原告について,逮捕状請求書(甲39。以下「本件逮捕状請求書」という。)により逮捕状を請求した(以下「本件逮捕状請求」という。)。本件逮捕状請求書記載の「被疑事実の要旨」は,別紙1(甲39)のとおりである。

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3 本件申告に至る経緯等について
(1) 証拠(甲1,24,30ないし37,43,44,49ないし51,乙イ1,3,乙ロ1,証人A3,証人A7,原告本人)及び弁論の全趣旨によると,本件申告に至る経緯について,以下の事実が認められる。
ア原告は,本件性行為のあった平成18年7月24日夜,A子を家まで車で送っていった。同日,A子の母は,原告とA子との交際に不審を持ち,A子を問いただしたところ,A子は,原告との性行為の事実を認めた。
そのため,A子の母は,原告を呼び戻し,問いただすと,原告は,A子の母に対して謝罪し,性行為の事実を認めた。A子の母は,原告に対し,2度とA子に近づかないように求めた。その際,A子の母は,A子に対して暴力をふるい,A子の母の交際相手と共に原告に対しても暴力をふるい,原告に全治2週間の顔面打撲の傷害を負わせた。
イ原告は,A子との関係を絶つ旨の発言をしたが,A子の母及びその交際相手(以下「A子の母ら」という。)は,原告の態度に腹を立て,同日午後11時過ぎころ,原告とA子とともに,本件店舗に向かい,本件店舗の店長に抗議したところ,店長は,A子の母らの要求が,原告の勤務先に対し,暗に金銭の支払を要求するものであり,店長の一存で決められることではなかったため,一度上の人間と相談すると返答した。
原告の勤務先のマネージャーは,2〜3日後に,A子の家を訪れ,A子の母らに原告を異動させることなどを告げたが,金銭の支払についてはプライベートの問題として要求を拒絶した。
A子の母らは,同マネージャーの対応に納得せず,原告を連れて再度謝罪に来るよう要求した。同マネージャーは,約1週間後,原告を含め3名で訪問し,原告も謝罪をしたが,A子の母らは,そこでの原告や原告の勤務先の態度に誠意がみられないとして,A子の母らの主導により本件申告に至った。
(2) 以上によると,本件申告は,A子の母らが原告の勤務先から金銭の支払を受けることができなかったことを契機とする,A子の母らの主導によるものであると認められる。
そして,第2形態の性行為については,前記1(3)エのとおり,当該行為が当罰性のある行為か否か,具体的事実への適用について抑制的で慎重な姿勢が求められるべきものであり,本件申告に対しても,捜査機関としては,本件条例の青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為を防止し,もって青少年を保護し,その健全な育成に寄与するとの目的を達成するため必要な最小限度において本件条例を適用しなければならないのであって,国民の権利及び自由を不当に制限しないよう運用しなければならなかった(本件条例1条,2条)のであり,本件条例の目的とは別の目的のために利用されていないかどうかについても慎重な捜査が求められるところであり,本件申告に至る経緯に疑義があれば,これを明らかにするなど慎重な対応が求められたというべきである。