児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「被告人は平成21年7月18日、児童17と児童買春をした。」という「罪となるべき事実」

 弁護人からこういう判決が送られてきました。
 児童買春罪は、誰と約束・供与したのか、事前に約束・供与したのか、性交・性交類似行為・性器接触行為なのかによって、いろんなパターンがあります。

第2条(定義)
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

 これでは、どういう事実が児童買春罪に該当するのかを示していないから「罪となるべき事実」の記載としては不適法。

刑訴法第335条〔有罪の判決〕
1 有罪の言渡をするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならない。

 こういう時は起案の手引きです。高裁の判決書にも引用されることがあります。

司法研修所編「刑事判決書起案の手引」法曹会 平成17年版
第2  事実摘示の方法・程度一般
1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当該犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。
3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かつ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日時・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要であるo

検察官からは「あら探しに過ぎない」なんて言われますが、高裁もこういうことには神経質なことがあって、これで破棄されて法定通算されることもあるので、見逃せません。
 ここで破棄してもらえば、量刑やり直しですから。