児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

求刑を誤解 判決やり直しミス

 同じ事件で、
  求刑A 1年6月、B 1年6月なら、宣告刑A 1年2月実刑(求刑の78%) B 1年6月執行猶予
  求刑A 2年6月、B 2年6月なら、宣告刑A 2年実刑(求刑の80%) B 2年執行猶予
になるというのです。
 求刑の78〜80%で追従している感じです。

 求刑なんて、検察官の意見に過ぎないから、裁判所が証拠を調べて「1年2月実刑」と思えば、それを宣告すべきですね。
 検察官が文句有るなら、控訴すればいい。
 弁護人はいつも執行猶予を求刑してるのに、違うじゃないですか。途中でそんなこと指摘しても判決止まらないですよね。

http://www3.nhk.or.jp/news/k10013492771000.html
秋田地方裁判所で8日に開かれた窃盗事件の裁判で、裁判官が検察側の求刑を誤解したまま判決の主文を言い渡し、判決理由を読み上げている途中で検察官にまちがいを指摘され、あらためて主文を言い渡すミスがありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn/20090608/20090608-00000060-nnn-soci.html
 しかし、判決理由を読み上げている途中、求刑に対してあまりに刑が軽いことを不審に思った検察官が指摘。事件書類に記されていた求刑が、本来の懲役2年6か月ではなく1年6か月と誤っていたことが判明したため、馬場裁判官はあらためて2人に対し、それぞれ、懲役2年の実刑判決と、執行猶予つき懲役2年の有罪判決を言い渡した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090608-00000186-jij-soci
地裁によると、両被告への求刑はともに懲役2年6月だったが、裁判所の事件記録では懲役1年6月と誤っていた。馬場純夫裁判官はいったんは被告に懲役1年2月の実刑、被告に懲役1年6月、執行猶予4年の主文を言い渡したが、休廷を挟んで被告に懲役2年の実刑、被告に懲役2年、執行猶予4年を改めて言い渡した。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090608-00000584-san-soci
検察側が誤りを指摘したことで休廷し、再開後に馬場裁判官は懲役2年と、懲役2年、執行猶予4年とより重い判決を改めて言い渡した。
 馬場裁判官は再開時に「求刑年数を誤解していた。申し訳ない」と述べたという。
 同地裁は「事件記録には(求刑)懲役1年6月と記載されており、調査している」としている。

原田國男「量刑判断の実際〔第3版〕」p50
まず,求刑については,これが検察官の量刑に関する意見であり,我が国で伝統的に確立した訴訟慣行であって,それ自体合理的であることは否定できない。求刑廃止論はあり得ても,現実的ではない。裁判所にとっても刑の公平さの維持という点で,求刑は有益である。そして,求刑が法的な拘束力を裁判所に対してもたないことは,明らかであり,裁判所の量刑は,求刑を参考として行うものである。ただ,求刑を超える量刑は極めてまれである。その意味では,求刑は量刑の実際上の上限を形成するといってもよい。実際の量刑は,求刑よりも1ランクないし2ランク低いのが通例であろう。量刑は,求刑の八掛だから簡単だとうそぶく向きもあろうが,実際の量刑は,そのように簡単にはじき出されるものではなく,各種の情状を総合した結果なのである。

http://www.sakigake.jp/p/akita/national.jsp?kc=20090609d
同地裁によると、馬場裁判官は当初、窃盗の罪に問われた、被告(31)に懲役1年2月、被告(32)に懲役1年6月執行猶予4年を言い渡した。
 求刑は2人とも懲役2年6月。秋田地検によると、判決が求刑の半分以下となった場合、検察側が控訴するのが通例だという。判決が軽いことに疑問を抱いた検察官が判決理由読み上げの途中で、馬場裁判官に求刑が同2年6月だったことの確認を求めた。
 馬場裁判官は約50分の休廷を挟んで再開後、「求刑を誤解していた」と述べた上で、あらためて被告に懲役2年、被告に懲役2年執行猶予4年を言い渡した。さらに「被告2人に迷惑を掛けて申し訳ない」と謝罪した。

追記
 この裁判官の場合、執行猶予付きなのに刑期を短縮したことの方が異例ですね。あわててたのかも。

報道にみる馬場裁判官の宣告刑

裁判所 判決日 罪名 刑種 求刑 宣告刑 実刑・執行猶予  宣告刑/求刑
秋田地裁 H21.5.27 自動車運転過失致死傷 禁錮 48月 36月 実刑 75%
秋田地裁 H21.4.27 詐欺 懲役 42月 36月 実刑 86%
秋田地裁 H21.4.22 詐欺 懲役 48月 42月 実刑 88%
秋田地裁 H21.4.13 児童買春 懲役 18月 18月 執行猶予 100%
秋田地裁 H21.4.7 詐欺 懲役 42月 30月 実刑 71%
秋田地裁 H21.4.7 詐欺 懲役 24月 18月 実刑 75%
秋田地裁 H21.1.6 出資法 懲役 18月 18月 執行猶予 100%
秋田地裁 H20.12.24 詐欺 懲役 84月 48月 実刑 57%
秋田地裁 H20.12.11 収賄 懲役 12月 12月 執行猶予 100%
秋田地裁 H20.10.31 強制わいせつ 懲役 24月 24月 執行猶予 100%
秋田地裁 H20.10.27 詐欺 懲役 144月 144月 実刑 100%
秋田地裁 H20.10.27 廃棄物処理法 懲役 10月 10月 執行猶予 100%
秋田地裁 H20.10.17 傷害 懲役 60月 54月 実刑 90%
秋田地裁 H20.6.18 強制わいせつ 懲役 36月 36月 執行猶予 100%
秋田地裁 H20.5.30 業務上横領 懲役 48月 34月 実刑 71%
秋田地裁 H20.5.2 強制わいせつ 懲役 12月 12月 執行猶予 100%