児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

医業関連のわいせつ行為は医師免許取消。

 起訴後に行政処分が来ることを知った、執行猶予でも取消は重すぎるというのです。
 厚生労働省に処分事例を教えてもらえば、だいたい処分相場はわかります。
 ホントは、刑事訴訟の段階から、行政処分を意識した弁護を受けるのがベストです。

医師免許取消処分取消請求事件
名古屋地方裁判所判決平成20年2月28日
 (5)厚生労働大臣の本件処分の判断に裁量権の逸脱,濫用があったか否かについて検討する。
  ア 「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」と題する指針について
 医道審議会医道分科会は,平成14年12月13日,医師法7条2項等に規定する行政処分についての公正な規範を確立する趣旨から「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」と題する指針(甲49)を作成し,今後同分科会が行政処分に関する意見を決定するに当たっては,同指針を参考としつつ,医師等に求められる品位や適格性,事案の重大性,国民に与える影響等を勘案して審議していくこととされた。
 同指針は,医師,歯科医師に求められる職業倫理に反する行為についての基本的な考え方として,?医療提供上中心的な立場を担うべきことを期待される医師,歯科医師が,その業務を行うに当たって当然に負うべき義務を果たしていないことに起因する行為については,国民の医療に対する信用を失墜するものであり,厳正な対処が求められること,?医師や歯科医師が,医療を提供する機会を利用したり,医師,歯科医師としての身分を利用して行った行為についても,同様の考え方から処分の対象となること,?医師,歯科医師は,患者の生命・身体を直接預かる資格であることから,業務以外の場面においても,他人の生命・身体を軽んずる行為をした場合には,厳正な処分の対象となること,?我が国において医業,歯科医業が非営利の事業と位置付けられていることにかんがみ,医業,歯科医業を行うに当たり自己の利潤を不正に追求する行為をした場合については,厳正な処分の対象となるものであること,以上の点を明記している。
 さらに,事案別考え方として,わいせつ行為については,?国民の健康な生活を確保する任務を負う医師,歯科医師は,倫理上も相応なものが求められるものであり,わいせつ行為は,医師,歯科医師としての社会的信用を失墜させる行為であり,また,人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為であること,?行政処分の程度は,基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが,特に,診療の機会に医師,歯科医師としての立場を利用したわいせつ行為などは,国民の信頼を裏切る悪質な行為であり,重い処分とすること,以上の点を明記している。
 原告が行った本件各犯行は,医師としての立場を利用して,女性患者に対して診療行為を装って繰り返しわいせつ行為に及んだというものであって,被害者の人格を無視するものであることはもとより,医師としての信頼を著しく裏切る悪質な行為であり,その実質に照らしても,医道審議会医道分科会の指針に照らしても,重い処分が妥当するものというべきである。
  イ 原告は,医師免許取消しという本件処分は,他の医業停止処分にとどまった事案と比較して余りにも均衡を欠く旨主張する。
  (ア)そこで,近時の医師及び歯科医師の免許取消処分又は医業停止処分の概要について検討してみると,次のとおりである。
   a 平成14年度から平成17年度までの医師及び歯科医師のわいせつ行為を理由とする処分件数を見ると,別紙行政処分一覧表(わいせつ事案/過去5年)のとおり,平成14年度が14件(うち免許取消処分が4件),平成15年度が7件(同1件),平成16年度が10件(同2件),平成17年度が9件(同3件)であるが,診療中にわいせつ行為が行われた事案はすべて免許取消処分がされている(乙10)。
   b 本件処分と同日の平成19年2月28日にされた医師及び歯科医師の処分のうち,免許取消処分を受けた者は,原告のほか,a)殺人罪で懲役9年の刑に処せられた者,b)5名の女性を診療中に全裸にさせて写真撮影した準強制わいせつ罪で懲役2年8月の刑に処せられた者,c)精神安定剤を混入したアルコール飲料を飲ませて心神を喪失させた上で2名で姦淫した準強姦罪で懲役3年(執行猶予5年)の刑に処せられた者の合計4名である(甲48の番号10,29〜31)。
 同日行われた医師及び歯科医師の処分のうち,性的な行為を理由として医業停止処分を受けた者は,上記一覧表のとおり,児童買春(2名),青少年保護育成条例違反(1名),迷惑防止条例違反(3名),公然わいせつ(1名)であり,いずれも診療中に行われたものではない(甲48の番号32〜38)。
   c 平成18年8月2日にされた医師及び歯科医師の処分の中には,上記一覧表のとおり,診療室内でされた強制わいせつ罪で懲役1年8月,執行猶予3年の判決を受けた者に対して,医業停止処分(停止5年)がされた事案があるが,これは歯科助手の女性を被害者とする事案である(乙10)。
 以上のとおりであって,平成14年度から平成18年度までの医師及び歯科医師によるわいせつ行為の事案のうち,本件各犯行のように診療中に患者に対してわいせつ行為等が行われた事案については,すべて免許取消処分がされており,上記指針に沿った処分がされている。
  (イ)原告は,本件処分は他の処分事案と比較して均衡を欠いていると主張しているが,罰金以上の刑に処せられた医師に対する医師免許の取消しや医業停止処分等の決定については,当該刑事罰の対象となった行為の種類,性質,違法性の程度,動機,目的,影響のほか,当該医師の性格,処分歴,反省の程度等,諸般の事情を考慮して,厚生労働大臣の合理的な裁量判断に基づいてされるものであるから,他の処分事案との間で外形的に単純な比較をすることによっては,本件処分の違法性の有無を判断することはできない上,原告が指摘する他の処分事案と本件各犯行を,本件記録からうかがわれる事情を基に上記の観点に即して検討してみても,本件処分が他の処分事案と比較して著しく均衡を欠くものとは直ちに認められない。