児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者参加しても量刑は変わっていない(読売2009.05.11)

 被害者側も量刑相場がわからないので、具体的な求刑ができないのだと思います。

■大半占める交通事故
 読売新聞の集計によると、被害者参加が許可された裁判で、これまでに判決が言い渡されたのは少なくとも44件。このうち34件を交通死傷事故が占めた。制度の対象には殺人や強盗殺人事件も含まれているが、確認されておらず、傷害事件4件、性犯罪3件のほか、殺人未遂事件が1件あった。被告が起訴事実を認めている事件がほとんどだった。
 21件で被害者側が求刑の意見を述べているが、約半数は具体的な刑期を示さずに、「数か月でも刑務所に収容してほしい」などと実刑を求めた。
 しかし、実際の判決では、執行猶予が付いたケースが全体の半数を超えていた。そのほとんどは、検察官が求刑した刑期をそのまま採用したうえで執行猶予を付けるパターンで、実刑にこだわる被害者・遺族の思いは必ずしも満たされていないと言える。
 初犯では実刑になりにくい交通事故が大半を占めていることも一因だが、ある検察幹部は「裁判官は、過去の判例とのバランスを考慮している。厳罰化の傾向はうかがわれない」と話す。
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弁護側は判決までに、被害者と示談を成立させて有利な情状を得ようとする手法を取る場合が多いが、「示談が成立しにくくなった」という声も聞かれる。
 4月21日に東京地裁立川支部で判決が言い渡された強制わいせつ事件では、被害者が示談交渉を拒否し、同制度の利用を申請した。被害者側弁護士は「民事訴訟では、いつ賠償を受けられるか予測がつきにくいため、これまでは示談に応じざるを得ない場面もあった。制度の導入で、被告側の言い値に応じなくてもよくなった」と話した。

 被告人の資力を考えると、示談なら関係者の資力に期待できますが、民事訴訟になるとリスクがありますよね。
 また、訴訟外なら被害者の請求額で示談できていたものが、裁判所の認容額(請求額と同じか少ない)を払うということにもなるということもあり得ると思います。
 被害者側の弁護士はこういうデメリットも説明しておいてほしいところです。

 たとえば、刑事訴訟係属中に被告人(無資力)の関係者がかき集めた300万円を提示して、被害者が500万円提示して、一部弁済も拒否して、刑事事件が確定する。
 民事訴訟で550万円請求して、220万円認容。
 元被告人は無資力なので払えない。関係者に執行するわけにもいかない。刑事事件が確定しているから関係者に無心してまでして払おうという動機もない。
 被害者が得る賠償額はゼロになる。
 被害者に弁護士がついていてもこういう結果になることがあります。
 民事判決を受けてから「関係者が300万用意しているはずですよね。それから払って下さい」って請求される弁護士も実際にいますが、民事の被告にもなってないのに、義務ありありません。そもそも被告の代理人であって関係者の代理人ではない。
 こんなことってだいたいの民事紛争に共通の問題なので、普通の弁護士なら知ってるはずなんですが、時々知らない先生からご連絡を受けます。