児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「事案は教えられないが、強制わいせつ×罪の量刑を教えて下さい」という質問

 弁護士からもよく聞かれる質問ですが、それだけじゃ答えようがないですよ。「1罪ななら最高10年、2罪以上なら最高15年ですよ。」という処断刑期しかわかりません。
 強制わいせつ罪などという伝統的な刑法犯というのは、長年に渡りおびただしい裁判例があって、量刑も量刑要素も弁護人の主張も全部出尽くしているものですが、強制わいせつ罪の弁護人だったときに大阪高裁管内の強制わいせつ罪を含む判決書を5年分調べたんですが、
   強制わいせつ1罪=懲役n年
   強制わいせつ2罪=懲役2n年
   強制わいせつ3罪=懲役3n年
というような簡単なものではありません。
 だいたい、法定刑は1罪で6月〜10年の幅があるんですよ。
 行為態様にしても、暴行・脅迫の程度とか、着衣の上から触る→着衣の中に手を入れる→着衣を脱がせるというわいせつ行為の程度とかがあるし、親告罪だから示談とか被害感情の程度も重視されますよね。

第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 量刑を予想するには、事案を聞いて裁判例を並べておいて、似た事案をピックアップして、ある程度の幅をとって「その辺じゃないか」とコメントするしかありません。

 態様悪質な強制わいせつ数罪の事件で「示談すれば執行猶予だ」などという大甘な量刑予測を語って「示談して執行猶予にする」という方針で受任してしまって、示談して回ったのに一審で実刑判決を受けて「奥村先生、なんとか執行猶予になりませんか?」と言われることが時々ありますが、「この態様でこれだけの罪数になると、示談していても懲役n年〜懲役m年という実刑の裁判例しかないですよ。」と答えるしかありません。
 こうなると、弁護人が被告人から「『示談すれば執行猶予だ』って言ったじゃん!」などと突っ込まれるでしょう。被告人がそれだけのことをしたからそういう量刑になったのに。
 最初から「この態様でこれだけの罪数になると、示談していても懲役n年〜懲役m年という実刑の裁判例しかないですよ。」と言っておけば、そういうトラブルはありません。
 しかし、依頼する側としては、「示談すれば執行猶予だ」と言ってくれる弁護士に頼んでしまいますよね。
 だから、奥村が被告人やその関係者から相談を受けると、弁護士が間違っていたと言われるのが嫌なので、

 奥村が大阪高裁管内で過去5年間を調べた範囲では、この態様でこれだけの罪数になると、示談していても懲役n年〜懲役m年という実刑の裁判例しかないですよ。
 弁護士もたくさんいますから「執行猶予がつく」と言ってくれる弁護士もいると思うので、「執行猶予がつく」と言って欲しければ捜せばいると思います。弁護士名簿でしらみつぶしにあたるか、弁護士会で紹介してもらって下さい。
 でも、大阪高裁管内で過去5年間を調べた範囲では、この態様でこれだけの罪数になると、示談していても懲役n年〜懲役m年という実刑の裁判例しかないというのは事実です。

と言ってしまいます。営業トークとしては失格ですね。