弁護人としては、観念的競合とかかすがいだとか言ってなんでも科刑上一罪にしようとするわけですが、時には併合罪主張が有利なときもある。
厳密にいうと刑期についてはこうならないんですが、わかりやすく説明しますが、
被告人(勾留中)が
A事実(懲役2年相当)
B事実(懲役3年相当)
を実行して、実は併合罪なのに、
1/1 A事実起訴
2/1 B事実訴因変更請求
3/1 A+B事実で有罪判決。懲役5年未決算入60日。
となった場合、控訴して
併合罪だから訴因変更は違法・無効
と主張すれば、審判対象からB事実は落ちますから、懲役2年に減軽されますよね。反省深めたとか情状追加すれば、もうちょっと落ちる。
3/15 控訴
11/15 控訴審判決 原判決破棄 懲役2年。 原審の未決60日算入
原審の未決算入+法定通算が得られるとして、A事実について、刑期はあと1年ちょっと。
B事実については、多分、再起訴されますが、45条後段の併合罪ですが、不利益変更禁止が類推されるので、上限は懲役3年ですよね。これはやり直しだから早い。
とすると、併合罪の主張というのは、一見被告人に不利益な主張に見えますけど、この場合は未決勾留の法定通算の分だけ強制労働しなくていいので儲かりますよね。
そもそも、違法な訴訟手続をやり直して是正して刑期を決め直すというのは、根本的な被告人の利益。
滅多にないことですが、児童ポルノ罪関係では訴因変更が違法な実刑判決が散見されます。弁護人は罪数処理もチェックして欲しいということです。
第495条〔未決勾留日数の法定通算〕
上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
②上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一 検察官が上訴を申し立てたとき。
二 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
③前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
④上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。