児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「わいせつで輸入禁止」見直しか=メイプルソープ写真集−最高裁

 やっぱり警察の「わいせつ」と税関の「わいせつ」が違うのはおかしいですよね。
 奥村も児童ポルノの輸入について上告してますが、児童ポルノは国内外で違法なので、あまり関係ありません。
 最近はデータとして税関検査なしに国境を越えることができますから、税関の表現規制の実効性は乏しいと思います。

http://news.goo.ne.jp/article/jiji/life/jiji-13X790.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071113-00000105-jij-soci
「わいせつで輸入禁止」見直しか=メイプルソープ写真集−最高裁
 国内で出版された故ロバート・メイプルソープ氏の写真集について、海外からの持ち込みを禁じた東京税関の処分の是非が争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は13日、当事者双方の意見を聞く弁論を来年1月22日に開くことを決めた。写真集をわいせつと認め、処分を適法とした二審判決が見直される可能性が出てきた。
 一、二審判決によると、写真集は1994年に出版された。版元の社長が99年9月、米国出張の際に商品見本として持ち出したが、帰国時に成田空港の税関で持ち込みを禁じられ、国を相手に提訴した。
 一審東京地裁は2002年1月、「すでに国内で芸術的な書籍として流通していた」として禁制品に当たらないとし、輸入禁止処分取り消しと70万円の賠償支払いを命じた。 これに対し、二審東京高裁は03年3月、「男性の性器を露骨に写したわいせつな図画だ」と認定し、一審判決を取り消して請求を棄却した。 

輸入禁制品該当通知取消等請求事件
東京地方裁判所平成14年1月29日
(1) 原告は、税関検査の対象となる出版物は、外国で頒布、販売されたもののみであって、我が国で頒布、販売されていた出版物でいったん外国に持ち出された後に改めて我が国に持ち込まれるものは含まれないと主張する。
(2) そこで、関税法及び関税定率法の定めについて検討すると、前記第2・1のとおり、貨物を輸入しようとする者は、当該貨物について必要な税関検査を受け、その許可を得なければならないところ(関税法67条)、「輸入」とは、「外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては、保税地域を経て本邦に)引き取ること」をいうのであり(関税法2条1項1号)、「外国貨物」とは、「輸出の許可を受けた貨物及び外国から本邦に到着した貨物で輸入が許可される前のもの」(同項3号)であるから、税関検査が必要か否かは、結局、当該貨物の生産地が外国であるか我が国であるかには無関係に、当該貨物が外国から我が国に到着した貨物であるか否かによるのであり、我が国で生産されたからといって直ちに税関検査の対象にならないとはいえないというべきである。このことは、関税定率法21条1項が定める輸入禁制品には、風俗を害すべき書籍、図画等のほか、麻薬及び向精神薬等の規制薬物(同項1号)、けん銃等の銃器類(同項2号)、偽造貨幣等(同項3号)及び特許権等を侵害する物品(同項5号)が含まれており、これらはいずれも我が国で生産されたからといって、それらがいったん外国に持ち出された後に再度我が国に持ち込まれた場合にその流入を阻止することができないとすると極めて不当な結果となることからも裏付けられる。
(3) しかし、前記1・(1)で説示したとおり、税関検査により許可が得られなければ、当該貨物を輸入しようとする者は、以後当該貨物を適法に我が国に引き取ることができなくなるのであって、当該貨物が表現物である場合には、上記の限りにおいて、税関検査は、表現の自由に対する制約となるのであるから、表現の自由の重要性にかんがみると、関税定率法21条1項4号の適用範囲については、規定の趣旨を実現するのに妨げにならない限度において、できるだけ制限的に解釈されなければならない。また、前記1・(3)で説示したとおり、関税定率法21条1項4号の立法目的からして、4号物品該当性の判断に当たっては、当該表現物のわいせつ性の有無及び程度のみならず、当該表現物が我が国に流入することにより、我が国における健全な風俗にいかなる害悪をどの程度及ぼすかという観点も考慮すべきであり、たとえわいせつ性が認められ得るようなものであっても、それが我が国における健全な風俗に影響を与えないのであれば、当該表現物を規制する必要はないから、4号物品には該当しないというべきである。
  そして、我が国においては頒布、販売等がされず、初めて外国から我が国に持ち込まれた書籍等の表現物のわいせつ性が問題となる場合には、これが我が国に持ち込まれた後に、流通に置かれるか否か、どのような流通をすることになるか、それによって我が国における健全な風俗にどのような影響が生じるかの判断は、予測にとどまらざるを得ない要素が大きい点で困難性が認められ、その結果、前記1・(3)のとおり、例えば、輸入者が個人的鑑賞のためと申し立てるにとどまるときには、個人的鑑賞のみに供することが確実であると認められない限りは、当該輸入者の申し立てる主観的意図にかかわらず、当該表現物が4号物品に該当するとの判断をせざるを得ないこととなって、あたかも一律にわいせつ性の認められる表現物の輸入を規制しているかのような結果を招くことも無理からぬことである。これに対し、わいせつ性が問題となると思われる書籍等の表現物であっても、それが既に我が国において出版等がされ、流通に置かれていたものがいったん外国に持ち出され、その後我が国に持ち込まれる場合には、当該表現物の流通によって我が国における健全な風俗がいかなる影響を受けていたのかが現に生じた客観的な事実として存在し、特段の事情の変化がない限り、再びこれが持ち帰られたとしても、それによって生ずる事態は以前に生じたところと異なるものではないと考えられるから、税関長においては、現に生じた客観的事態を十分に吟味し、従前の当該表現物の流通により、我が国における健全な風俗が害されたと認められる場合にのみ、当該表現物の輸入を許さないことができると解すべきである。これをさらに具体的に述べると、当該表現物の流通につき、その形態が公然としたもので当然に捜査機関の目に触れるものであるにもかかわらず、わいせつ物としての取締りを受けてその流通が止んでいたというような事情もなく、継続して通常の流通に置かれていたのであれば、前記のとおり表現の自由の重要性に基づき制限的な解釈をすべきことに照らして、従前の我が国での通常の流通の事実により、我が国における健全な風俗を害していなかったものと推定すべきであって、従前、当該表現物の流通によって我が国における健全な風俗がいかなる影響を受けていたか、また、当該表現物が我が国に持ち帰られることによって、それが持ち出される前の状態にいかなる変化が生じるかを具体的に検討し、それらを総合的に判断した結果、従前の流通によって我が国における健全な風俗が害されたと具体的に認められるか、その後の事情変更等の結果、当該表現物を輸入した場合には我が国における健全な風俗を害するものと認められる場合に初めて、当該表現物は4号物品に該当するというべきである。
  この点に関し、被告らは、我が国で出版等がされ流通に置かれていた書籍等であっても、いったん外国に持ち出された後に我が国に持ち帰る場合には税関検査の対象となり、それにわいせつ性が認められれば、それが我が国にあった時点の状態や今回新たにどのような影響が生ずるかにかかわらず、一律に関税定率法21条1項4号に該当すると主張するが、被告らの主張は、関税法67条、同法2条1項1号及び3号の形式的な解釈を根拠とし、一律に関税定率法21条1項4号に該当するとの結論を導く点において、表現の自由の保障に対する配慮を欠くものであって採用することはできない。
(4) 前記第2・2・(1)及び(2)のとおり、本件写真集の原書は世界有数の出版社から刊行されたものであるところ(原書自体はamazon.com等のインターネット書店などにおいて我が国でも購入可能であることは、当裁判所に明らかな事実である。)、本件写真集は、平成6年11月1日に出版されてから本件通知処分がされた平成11年10月までの間の約5年間にわたって、900冊以上販売されているが、その間、全国紙や写真専門誌において芸術的観点からの紹介や批評がされており、その宣伝及び流通の形態は一般の健全な芸術的書籍と同様の形態で公然と行われ、国立国会図書館のような公的機関においても一般の閲覧に供されていたにもかかわらず、原告が本件写真集の販売行為に関して刑法175条のわいせつ物頒布罪等に処せられたことはなく、本件通知処分後も原告が警察から警告を受けたものの、過去の販売行為については何らの刑事手続も執られていないことが認められる。これらのことからすると、本件写真集は、単に官憲の目に止まらなかったために取締りを免れていたものではなく、それが専ら芸術的な書籍として流通し、健全な風俗への影響がないものとの評価が確立していたために取締りの対象とならなかったものと認めるのが相当である。そして、本件通知処分に至るまで特段の事情の変化も認められないところであり、原告は、本件写真集を刊行した会社の取締役であるから、これを再び我が国に持ち帰っても、従前同様芸術的な書籍として流通に置き、既に確立したと同様の評価を受けるものと認められるから、これによって我が国における健全な風俗が害されるとは認め難く、そうである以上、本件写真集は4号物品には該当しないというべきである。
(5) 以上によれば、本件通知処分は関税定率法21条1項4号の要件に該当しない本件写真集についてされたものであると認められるから、その余の点を判断するまでもなく違法な処分であって取り消されるべきであるというほかない。

輸入禁制品該当通知取消等請求控訴事件
東京高等裁判所平成15年3月27日
既に我が国において頒布,販売されているわいせつ表現物であっても,それがいったん外国に持ち出され改めて我が国に持ち込まれることによって,我が国の健全な性的風俗が害されるおそれが高まることは明らかであり,捜査機関の捜査能力には限界があることを考慮すれば,それまでわいせつ物頒布罪等の適用等によって対処されていないからといって,今後ともそのような対処がされることがないということはできない。
 したがって,我が国において既に頒布,販売されたわいせつ表現物については,それがいったん外国に持ち出された後に我が国に持ち込まれたとしても,これを税関検査の対象として輸入禁制品に該当するか否かを審査することは,税関検査の目的を逸脱するものではない