児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

発令なしに判事補が裁判 札幌高裁で手続きミス

 たまたま札幌高裁に事件が係属しているのですが、
  1/30弁論
  3/8判決
の事件には関与してないですよね。
 訴訟手続の法令違反とか主張してるんですが、法壇の裁判官の資格まで疑いませんでした。大丈夫?

http://www.asahi.com/national/update/0305/TKY200703050271.html
札幌高裁は5日、定められた最高裁の発令を受けずに約10日間、札幌地裁刑事部の判事補(34)に同高裁判事の職務を代行させていたと発表した。判事の場合は高裁の判断で職務代行を命じることができることから、同高裁は「うっかりしていた」と説明。今後、関係職員の処分も検討するという。
 同高裁は2月19日付で、誤って判事補の職務代行を発令。判事補は5日までに、(1)控訴審の第1回公判4件(2)判決言い渡し2件(3)保釈の許可か却下を決める抗告事件3件(4)勾留(こうりゅう)更新決定12件、の計21件にかかわった。
(1)については無効と判断して審理をやり直す。(2)については、言い渡しに立ち会っただけで判決内容には関与しておらず、必要があれば上告するなどの手続きをとるよう検察側や弁護人に説明した。(3)については関係者に連絡し、決定に不服があれば再度請求してもらい、(4)については別の判事を加えて改めて更新決定したという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070306-00000006-mai-soci
2日までにこの判事補がかかわったのは控訴審初公判4件、判決宣告2件など21件の審理や決定。関係する弁護人や札幌高検には既に事情を説明した。判決宣告2件の効力について法令上の規定がなく、検察、弁護側がそれぞれ無効と考える場合は各自上告するしかないという。

判事補の職権の特例等に関する法律
第1条〔判事補の職権の特例〕
判事補で裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第四十二条第一項各号に掲げる職の一又は二以上にあつてその年数を通算して五年以上になる者のうち、最高裁判所の指名する者は、当分の間、判事補としての職権の制限を受けないものとし、同法第二十九条第三項(同法第三十一条の五で準用する場合を含む。)及び第三十六条の規定の適用については、その属する地方裁判所又は家庭裁判所の判事の権限を有するものとする。
2 裁判所法第四十二条第二項から第四項までの規定は、前項の年数の計算に、これを準用する。
第1条の2〔高等裁判所の判事の職務の代行〕
最高裁判所は、当分の間、高等裁判所の裁判事務の取扱上特に必要があるときは、その高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所又は家庭裁判所の判事補で前条第一項の規定による指名を受けた者にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
2 前項の規定により判事補が高等裁判所の判事の職務を行う場合においては、判事補は、同時に二人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。


追記
最近は裁判官名も広報されていて、
http://www.courts.go.jp/sapporo-h/saiban/tanto/tanto.html
http://www.courts.go.jp/sapporo/saiban/tanto/tisai_tanto.html
を見ればわかります。
2/19更新。
奥村事件は、二宮さんを見かけたので、問題なし。

追記
 不幸にも判決を受けた被告人はどうするか?
 たいてい、量刑不当の控訴理由のみだと思うんですが、上告すれば、差し戻される可能性があって、未決の法定通算を受けるかもしれませんが、差し戻し後の控訴審で破棄されるかは、別問題ですよね。

第411条〔同前〕
上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

 原審審理に関与しなかつた判事が原審判決に関与した判決は著反正義だという判例があるので、原審審理に関与することが許されなかった判事補が関与した判決も著反正義だといえそうですよね。

最高裁S25.3.30
職権を以て調査するに、刑訴四三条一項により原判決の基礎となつた原審第一回公判に列席した裁判官は、裁判長判事杉浦重次、判事若山資雄及び同白木伸の三名であること記録上明白である。しかるに刑訴規則五四条、五五条による原裁判書を見るに、原判決をした裁判官は、裁判長判事杉浦重次、判事若山資雄、同影山正雄の三名である。
従つて、原審審理に関与しなかつた判事影山正雄が原審判決に関与したこととなるわけで、かくのごときは判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるものといわなければならない。
よつて、当法廷は、刑訴四一一条に従い原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認め、弁護人我妻源二郎の上告趣意に対し判断するまでもなく、原判決を破棄すべきものとし、同四一三条に則り主文のとおり判決する。

最高裁S28.4.17
 記録によれば、昭和二六年一月三〇日付公判調書には、原審において同日本件に関する公判が開廷され、裁判長判事富田仲次郎、判事棚木靱雄、判事網田覚一が列席して、本件の控訴審の審理がなされた旨の記載があり、その後審理の更新された形迹がないにかかわらず、原判決には裁判長判事富田仲次郎、棚木靱雄、判事入江菊之助の署名押印のあることは所論のとおりであるから、原判決には公判の審理に関与しない判事入江菊之助が判決に関与した違法あるものというの外なく、右の違法は、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとみとめるべきであるから、各弁護人の論旨について判断するまでもなく、刑訴四一一条、四一四条、四〇一条、四一三条に従い全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。