児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

京都地裁H18.12.13の法令適用

正犯弁護人も実名で登場すると聞いていたwinny幇助判決ですが、今ごろ入手できました。

 罪となるべき事実は、おおよそ
http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2007/01/on_winny_2c2d.html
にある。これが2人分ある。

(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも行為時においては刑法62条1項,平成18年法律第92号による改正前の著作権法119条1号,23条1項に,裁判時においては刑法62条1項,同改正後の著作権法119条1号,23条1項に該当する。
 判示の罪はいずれも従犯であるから,刑法63条,68条4号によりそれぞれ法律上の減軽をし,以上は併合罪であるから・・・,

 これは、正犯は単純一罪で、幇助行為は複数あると読めます。
 判例は「従犯の個数は、正犯の罪のそれに従って決定される。従犯が数個成立する場合に、それらが五四条一項にいう一個の行為によるものかどうかは、幇助行為自体についてみるべきである。(最決昭57.2.17)」というのでまず、正犯の罪数を決める。
 著作権侵害罪って、個人的法益ですから、正犯の送信可能化権侵害罪は著作権者の数だけ成立して、一個の行為であれば観念的競合、そうでなければ併合罪
 正犯の弁護人はそこも注意したので、ちゃんとそうなっておる。

京都地方裁判所平成16年11月30日
【参考文献】判例時報1879号153頁
(法令の適用)
 被告人の判示所為は各著作物ごとに著作権法一一九条一号、二三条一項に該当するところ、これは一個の行為が二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として犯情の重い邦題名「B」の著作物にかかる著作権侵害の罪の刑で処断することとし、

 送信可能化状態というのは一時点を捉えているので、1個の行為と評価された
 正犯は数罪で観念的競合。単純一罪と考えていたとすれば間違い。

 次に、本件では正犯はAB2名なので、幇助行為の個数を考える。
 幇助犯の実行行為は、

被告人(X)は、送受信用プログラムの機能を有するファイル共有ソフトWinnyを制作し、その改良を重ねながら、自己の開設した「Winny Web Site」及び「Winny2 Web Site」と称するホームページで継続して公開及び配布をしていた

であって、ABに直接手渡した・ABに個別にダウンロードさせたのではなく、一定期間継続的にwebサイトに陳列(送信可能化)していたのであるから、これこそ社会見解上一個の行為である。(児童ポルノ公然陳列幇助について名古屋地裁h19.1.10など)。

 結局、AB2個の著作権侵害罪に対する1個の幇助であるから、2個の幇助犯の観念的競合というのが正解である。

 氷室さん、児童ポルノ販売罪を包括一罪で書いた判決があるけど、いまでは大阪高裁でも併合罪ですよ。