児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

オンラインゲーム「リネージュⅡ」のサーバーをダウンさせる

 おそらくプロキシサーバーを多数おいて、中国からのアクセスを中継していたケース。
 罪名的には電子計算機損壊等業務妨害罪と電気通信事業法違反(無届)と推測。
 サーバーをダウンさせるとゲームできないのだから、どうしてそこまでするのかが疑問。
 高松地裁で正式裁判の事例、長崎と札幌では略式命令の事例がある。
 リネージュについては、裁判例が重なってきて、会社にも警察にもノウハウが確立された感じ。

http://www.sankei.co.jp/flash/flash.htm
ゲームに不正接
オンラインゲーム「リネージュⅡ」のサーバーをダウンさせる。中国人留学生を逮捕。熊本県警。

刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

電気通信事業法
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
四  電気通信事業 電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業(放送法 (昭和二十五年法律第百三十二号)第五十二条の十第一項 に規定する受託放送役務、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律 (昭和二十六年法律第百三十五号)第二条 に規定する有線ラジオ放送、有線放送電話に関する法律 (昭和三十二年法律第百五十二号)第二条第一項 に規定する有線放送電話役務、有線テレビジョン放送法 (昭和四十七年法律第百十四号)第二条第一項 に規定する有線テレビジョン放送及び同法第九条 の規定による有線テレビジョン放送施設の使用の承諾に係る事業を除く。)をいう。

(電気通信事業の届出)
第十六条  電気通信事業を営もうとする者(第九条の登録を受けるべき者を除く。)は、総務省令で定めるところにより、次の事項を記載した書類を添えて、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
一  氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二  業務区域
三  電気通信設備の概要(第四十四条第一項の事業用電気通信設備を設置する場合に限る。)
2  前項の届出をした者は、同項第一号の事項に変更があつたときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。
3  第一項の届出をした者は、同項第二号又は第三号の事項を変更しようとするときは、その旨を総務大臣に届け出なければならない。ただし、総務省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
第百八十五条  第十六条第一項の規定に違反して電気通信事業を営んだ者(第九条の登録を受けるべき者を除く。)は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


なお、サーバーの一時的ダウンについて、こういう意見を述べたことがある。

 一つ一つのアクセスは、ゲームサーバーへのアクセスとしては不適式なものではなく、ここに虚偽があるわけではない。
 従って、「虚偽の情報を与え」とはいえない。

 ゲームサーバーは障害を発生しながらも、ゲームサーバーとして機能しており、ゲームサーバーとしての機能しているのであるから使用目的に反する動作をしていない。
 従って、「使用目的に沿うべき動作をさせず」と評価すべきである。

 結局、被告人の行為には「虚偽の情報を与え」(刑法234条の2)に相当する行為はない。
 むしろ、被告人のサーバーを経由した大量アクセスが、その他のアクセスと相まってサーバーに障害を生じたのである。

 結局被告人の行為は同条にいう「その他の方法」により、「電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず」「業務を妨害した」と評価すべきである。

 なお、「その他の方法」については何らかの範囲に限定しないと、同罪が手段を限定する趣旨が失われるから、罪刑法定主義違反である。

 ダウンさせようと思ってやってるわけないですよね。ダウンすると、アイテム稼げないから。子亀・親亀、寄生虫・寄生宿主の関係で共倒れになる。
 でも、ダウンさせるくらいのアクセスを集中してやってるわけで、理解しがたいです。重過失くらいなんじゃないか。
 被告人質問で語らせると、通訳介するので、時間かかります。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20070126-OHT1T00163.htm
中国人留学生が人気ゲームに不正接続 人気オンラインゲーム「リネージュ2」に中国から不正に接続させてサーバーをダウンさせたとして、熊本県警組織犯罪対策課は26日、電子計算機損壊等業務妨害の疑いで、中国籍の留学生容疑者(23)を再逮捕した。
 調べでは、容疑者は昨年4月から5月にかけて、自宅に不正に設置したサーバー3台を通じ、リネージュ2に中国からアクセスさせ、運営会社の業務を妨害した疑い。
 不正サーバー経由で1度に数十人がゲームをしたことで動作障害が発生。運営会社はサーバーを3回切断しており、被害額は約1000万円という。
 日本で運営されるリネージュ2には国内のサーバーからしか接続できない仕組みになっている。容疑者は「(運営会社の)サーバーがダウンするとは思わなかった」と容疑を否認しているという。
 容疑者はゲーム上で得た「アイテム」をネットのオークションで販売したとして、入管難民法違反(資格外活動)の疑いで逮捕されている。容疑者はアイテムの販売で利益を上げ、約1億5000万円を中国に送金していたという。
(2007年1月26日13時25分 スポーツ報知)

 弁護方針としては、侵害された法益の主体に慰謝の措置。謝って回る。
 同じ手口で中国人が続々逮捕ということは、本国に元締めがいるような気がします。そっちも叩いてくれないと。

追記0129
 前例から推測すると、こんな感じの起訴状になるんですが、これだと、プロキシを入れたからダウンしたという因果関係になって、仮にプロキシが原因ではなく大量アクセスがダウンの原因(或いはプロキシ+大量アクセス)だとすると、因果関係が切れて公訴事実は認められなくなりますよね。国内から、プロキシ経由で実験してみればわかりますよね。
 罪の成立は認めるにしても、事実の記載としては被告人としては納得いかない訴因じゃないかと思います。
 余談ですがC国からのアクセスを禁止していると書いてありますが、罪の成否にどう関係があるんですかね?国内からやっても成立しますから。

公訴事実
被告人は,号室に,インターネットを経由して日本国外のゲームユーザからのゲームサーバコンピュータへの接続を同時に多数中継する機能を有するプロキシサーバ(代理サーバ)を多数設置していたものであるが,インターネットを利用したゲームの配信等の業務を営む会社が運営するオンラインゲーム「」の配信に動作阻害が生じて同会社の業務が妨害されることを知りながら,平成年月日ころから同日ころまでの間,上記号室において,同所に設置した上記プロキシサーバを利用して,日本国外からの接続が禁止されている上記会社が管理する電子計算機である上記ゲームサーバコンピュータに対し.上記プロキシサーバで中継することにより,その接続が禁止されているC国内の多数のゲームユーザからの通信を被告人が取得していた日本国内のIPアドレスを用いて同ゲームサーバコンピュータに接続させ,同ゲームサーバコンピュータをして被告人のみからの接続であるとの虚偽の情報を認識させて,同ゲームサーバコンピュータに上記プロキシサーバを介した上記C国国内のユーザとの通信で過度の処理をさせ.よって,同ゲームサーバコンピュータの情報処理速度を低下させて配信の遅延現象を生じさせるとともに,同ゲームサーバコンピュータから一般ユーザのパーソナルコンピュータに配信された上記「」の画面上に残像現象の動作阻害を生じさせるなどして同ゲームサーバコンピュータの使用目的に反する動作をさせ,もって,上記会社の業務を妨害した。