児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

没収は有体物単位で(大阪高裁H18.10.20)

最近、没収がもれなくつくようになったので、没収の範囲にも関心を持っています。

 違法画像の違法性はいいとして、媒体が大容量になると、その他のデータの救済も考えないとだめですよね。
 刑法(第三者没収臨時措置法)が法案通り成立したとして、有体物単位で没収されるわけで、その際第三者の権利はどうやって守るんでしょうか?

阪高裁H18.10.20
第7「控訴理由第7」の法令適用の誤り・量刑不当の主張について
所論は,原判決は,わいせつ図画と認定されたファイル以外も含めて,原判示の各媒体全体を没収しているが,わいせつ図画と認定されたファイルの容量は媒体全体のわずか0.3パーセントにすぎず,違法と認定されていないファイルや媒体本体まで没収するのは被告人の財産権を侵害するもので憲法29条に違反し,違法である,仮に適法であるとしても量刑不当である,というのである。
しかし,現行法上,没収は有体物を対象とするものであり,立法論は別として,解釈論としては,電子データであるファイルの没収を考えることはできないから,本件媒体を没収したことは何ら療法その他の法令に違反するものではなく,また,量刑不当でもない。所論は,一定の偽造文書等を例に挙げて,刑訴法の没収の執行方法として電子データの一部消去が可能である旨主張しているが,児童ポルノないしわいせつ図画である本件媒体については,取引の安全や社会生活上保護されるべき手続の安定性等を考慮する必要性はないのであるから,現行法の枠内において,あえて一部没収に相当するような没収方法を採る必要はなく,また,それが相当であるともいえない。
第8「控訴理由第8」の法令適用の誤りの主張について
所論は,要するに,原判決は,原判示の媒体について,公訴事実記載の平成年月日午前N時M分以降に記録された,違法とは認定されていないファイルをも含めて上記媒体の全体を没収しているが,これらのファイルは犯罪組成物件には該当しないのであるから,原判決は憲法29条に違反しており,法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,前述のとおり,没収の対象は有体物である媒体それ自体であって,電子データであるファイルではないから,所論は採用の限りでない。