いわゆるMAC判決(原田裁判長)なんですが、その部分は速報集には出ていません。
第三者のデータ没収違憲事件ですが、その部分は速報集には出ていません。
数個の児童ポルノ罪は併合罪だとしていますが、その部分は速報集には出ていません。
高等裁判所刑事裁判速報集平成15年83頁
本件MOがバックアップ用であるとしても,被告人は,必要が生じた場合には,そのデータを使用して,販売用のCD−Rを作成する意思を有していたのであり,電磁的ファイルの特質に照らすと,児童ポルノの画像データのファイルが蔵置されている媒体を所持することにより,容易にそのファイルをそのままの性質で他の媒体に複製して販売することができるから,法益侵害の実質的危険性は直接的で,かつ切迫したものといえる。もっとも,本件において,実際には,元のファイルをそのまま複製するのではなく,目をぼかす,サイズを縮小するなどの加工を経た画像ファイルを記録した媒体を販売に供しているが,ファイルサイズの縮小は,機械的に処理できるものであり,目のぼかしも容易な加工であり,児童ポルノと評価される部分は,ほぼそのまま複写されることになるから,MOのファイルは,相当な加工の過程を経て商品となる原材料のような性質のものではなく,販売用の児童ポルノと同質のものであり,MO自体は販売目的を有しなくても,販売目的の所持ということができるものと解すべきである。とりわけ,このことは,製造罪についてみれば明らかである。すなわち,児童の心身に有害な影響を直接与える行為は,児童ポルノの撮影行為であろうが,それによって得られるフィルムや画像ファイルなどの生のデータをそのまま販売するのではなく,これに加工を施した上で販売する意思であれば,撮影をしただけでは販売目的の製造は既遂とならず,販売用の加工を施して商品として完成させなければ製造罪には当たらないということになり,法の趣旨を損なう結果となる。したがって,ここでいう販売の目的には,後にそれに同質性を損なわない程度の加工を施した上で販売する目的を有するような場合も含むものと解するのが正当であり,所持罪についても同様に解される。