児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

事件・事故:援助交際エサに強盗、容疑で高校生男女を逮捕 /和歌山

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050430-00000178-mailo-l30
 被害者の児童買春罪の成否について考えてみましょう。

 児童買春罪の「実行行為=対償供与(又はその約束)+基づく性交等」ですから、先立つ「対償供与(又はその約束)」の時が実行の着手となりそうです。
 この点は、立法段階で全く検討されておらず、議員に聞いたら「議員立法でも、国会としての意思決定であるから、個々の議員が説明すべき問題ではない」と怒られました。共犯の成否とかで実務上問題になります。

 その「対償供与の約束」は、嘘でもいいんだそうです。

名古屋高等裁金沢支部H14.3.28
第1 控訴趣意中,事実の誤認の論旨(控訴理由第19)について
 所論は,原判決は,原判示第2,第3の1及び第4の各児童買春行為について,対償の供与の約束をしたことを認定したが,証拠によれば,被告人にはこのような高額な対償を支払う意思はなく,詐言であったことが明らかであるとし,このような場合には児童買春処罰法2粂2項にいう代償の供与の約束をしたことには当たらないから,同法4条の児童買春罪(以下,単に「児童買春罪」という。)は成立しないという。
 しかしながら,児童買春は,児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであることから規制の対象とされたものであるところ,対償の供与の約束が客観的に認められ,これにより性交等がされた場合にあっては,たとえ被告人ないしはその共犯者において現実にこれを供与する具体的な意思がなかったとしても,児童の心身に与える有害性や社会の風潮に及ぼす影響という点に変わりはない。しかも,規定の文言も「その供与の約束」とされていて被告人らの具体的意思如何によってその成否が左右されるものとして定められたものとは認め難い。対償の供与の約束が客観的に認められれば,「その供与の約束」という要件を満たすものというべきである。

http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/WebView2/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
◆H15. 9.18 大阪高裁 平成15(う)1 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
事件番号  :平成15(う)1
事件名   :児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判年月日 :H15. 9.18
裁判所名  :大阪高
部     :第1刑事部
結果    :破棄自判,上告
原審裁判所名:奈良地裁
①原判決は,対償の供与を約束したことを認定しているが,証拠によれば,被告人にはAに対して携帯電話機を買い与える意思はなく,詐言による約束であって,双方の真意に基づく約束とはいえず,また,携帯電話機本体の価格は通常無料であって,反対給付としての経済的利益には当たらないから,児童買春罪の成立を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり・・・というものである。
①については,
被告人は,捜査段階において,携帯電話機を買ってやる約束をしたが,被告人名義で契約するわけにもいかないし,時間もないので,携帯電話機の代わりに現金を交付するつもりであったとの供述をしており,その内心の意思いかんにかかわらず,被告人がAに対して携帯電話機を買い与える約束をして性交に応じさせたことは関係各証拠に照らして明らかであるから,対償の供与の約束があったというべきであり,また,仮に携帯電話機の本体価格が無料であったとしても,取得するには契約手数料等が必要である上,携帯電話機にはその通信回線利用の権利が伴っているから,経済的価値が認められることもいうまでもないところであって,原判決が対償の供与の約束があったと認定したことに誤りはない

 となると、被害者には、児童買春罪の未遂になるんでしょうか?未遂処罰規定はないんですが。
 奥村説としては、自殺幇助罪と同じように、性交等の時点まで着手をずらすべきと考えています。約束時説では広すぎる・早すぎるという感覚的なものです。