送信可能化権侵害罪・共犯・営業犯・利得有りで1年6月
顧客が把握できているのであれば、具体的に送信された回数もわかりそうなものですが、そういう対面捜査をやると、国外捜査になるんでしょうね。
検察官の論告では「本件が模倣され,同種犯行が今後多発する可能性もある。これを放置しておけば,文化的所産であるテレビ番組の質の低下,ひいては文化の発展が阻害される事態をも招来しかねない。」と述べられています。
くれぐれも模倣しないでください。
松山地裁H16.3.25
被告人を両名をそれぞれ懲役1年6月に処する。
被告人両名に対し,この裁判確定の日から4年間それぞれその刑の執行を猶予する。
訴訟費用。
罪となるべき事実の要旨
被告人両名は,共謀の上 著作権者の許諾を得ることなく,かつ,法定の除
外事由がないのに,別紙著作権者等一覧表記載のとおり
1 平成15年12月4日ころ, 当時の被告人A方において,Nほか4社が著作権を有する著作物である「コメディーお江戸でござる」他4点のテレビ番組の映像データを,パーソナルコンピューター5台に各記憶蔵置させて複製し
2 同月5日,上記被告人A方において,上記映像データを,インターネットに接続された自動公衆送信装置である番組配信用サーバコンピューターに各記憶蔵置させ,同日から同月9日までの間,同サーバコンピューターにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者に上記各著作物を自動公衆送信し得る状態にし、もって,それぞれ上記Nほか4社の著作権を侵害したものである。量刑の理由
本件は,被告人両名が共謀の上,著作権者であるテレビ局の許諾を受けないで,著作物であるテレビ番組5種を無断で複製し(判示1),それらをインターネット接続された番組配信用サーバコンピューターに各記憶蔵置させ,自動公衆送信し得る状態に置いた(判示2)という著作権法違反の事案である。
被告人らは,私設私書箱を利用して偽名でレンタルサーバ会社と契約し,摘発逃れのために違法ではないかのような偽の内容のホームページを作成する等の偽装工作を行う一方,平成15年3月初めころからインターネットでテレビ番組を有料で配信するサービスを開始し,株式会社Tから著作権法違反の疑いがあるとの警告を受けた後は,日本からのアクセスを拒否するように設定するなどし,株式会社Aの関係者が調査のためにメールを送信してきたことに気が付くや,急きょホームページアドレスを変更し,同人以外にはホームページアドレスの変更を,同人にはサービスを中止すろとのメールを出すなどの隠ぺい工作を行うなどして営業を継続し,本件各犯行に及んだものであり,その犯行態様は巧妙かつ執拗で悪質なものである。そして,被告人らは, 20万円余りの利益を現実に得るに至っている。被告人Aは,アメリカにいたころ,アメリカのビデオレンタル店では日本のテレビ番組のビデオテープの人気が高いことを知り,インターネットでテレビ番組を有料で送信すれば金儲けになると考え,被告人Bにおいても,自分のインターネットなどに関する技術,能力をもとにしてお金が手に入ると考え,本件各犯行に及んだものであり,その利欲に基づく動機に酌量の余地はない。そして,各著作権者は,被告人両名の厳罰を希望している。以上によれば,被告人両名の刑事責任は,相当に重いといわざるを得ない。
しかしながら,被告人両名は罪を素直に認めて反省し,二度と同じことはしないと述べていること,被告人Aの父及び被告人Bの交際相手が公判廷に情状証人として出頭し,今後は監督していきたいと述べていること,被告人両名には前科前歴がないこと,被告人Aについては保釈されるに至るまで,被告人Bについては現在まで相当期間の身柄拘束を経ていることなど,各被告人のために酌むべき事情もそれぞれ認められる。そこで,以上のような諸般の事情を総合考慮して,今回に限り,主文の各懲役刑を科した上で,それぞれその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
冒頭陳述
第1身上経歴等
第2犯行状況等
1被告人Aは,アメリカにいた平成14年末ころ,アメリカのビデオ店では日本のテレビ番組ビデオの人気が高いことを知り,インターネットを利用すればほとんどリアルタイムで番組を配信することができるので,放映後相当の時間が経過して市場に出回るビデオよりも人気が出て金もうけができると考えた。そこで,被告人Aは,かつての勤務先同僚である被告人Bがパソコンやインターネットに詳しかったことから,同人とともに国内で放映されるテレビ番組をパソコンに録画し,これをインターネットを利用して会員制で国内外に配信して金もうけしようと考え,同人を誘い込み,同人もこれを承諾した。役割分担は,主に,被告人Aが資金担当,同Bがパソコンやインターネット担当で,取り分は各3分の1ずつ,残り3分の1は経費等に充てる約束であった。
2 手口
3 手口
4 同年4月4日,被告人ら(WantTV)が自社番組をインターネット上で有料配信していることを知った関係者が,被告人らに,配信を中止するよう申し入れる警告メールを送ったことから,被告人両名は,相談の上同月24日,日本のテレビ局が取得していると思われる「co・jp」等のドメインにつき,WantTVのホームページにアクセスできないよう制限を設ける設定を行った。また,同年5月21日,Wan tTVの会員となった関係者から問合わせメールが届き,同メールが関係者からのものであることに気付いた被告人両名は,相談の上同月24日,「wantTVのホームページアドレスを変更した上,同関係者には営業を中止する旨うその通知をし,それ以外の会員には変更後のアドレスを通知することで営業を続行した。
5その後,キのレンタルサーバではダウンロードにかかる時間が長すぎる(1時間番組で数時間は必要)と会員から苦情が出るようになり,被告人両名は,被告人A方に光回線を配線してサーバを設置することとし,NTTのBフレッツサービスを申し込むなどして準備を進め, 同年10月16日,同被告人方に配信用のWebサーバコンピューターを設置し,テレビアンテナからテレビキャプチャボードを介してパソコンにテレビ番組データを記憶蔵置させて複製した上,同データを同パソコンとLAN回線で結ばれた同サーバに記憶蔵置させて自動公衆送信が可能な状態に置くようになり,自宅等の捜索を受ける同年12月9日までテレビ番組データの配信を続けた。犯行状況は公訴事実のとおりである。
6同年12月9日時点でのWantTVの会員数は39名(アメリカ,カナダ,シンガポール,香港,ニュージーランド,オーストラリア,日本に在住)で,同年3月から同年12月までの問,被告人両名が得た収益は, Gへの手数料を差し引いた約37万円(1ドル107円換算,手数料込みで約56万円)であった。当初の約束では,被告人両名の取り分は3分の1ずつであったが,当面の報酬として,被告人Aは,被告人Bに,同年4月及び5月は月15 万円,同年6月からは月12万円を渡していた。
第3その他情状
以上論告
第1事実関係本件公訴事実は,当公判廷において取調べ済みの関係各証拠により, その証明は十分である。
第2情状
1本件は,被告人両名が共謀の上,無断でテレビ番組5点の映像データを5台のパソコンに各記憶蔵置させて複製した上,これらを番組配信用サーバコンピューターに各記憶蔵置させ,これにアクセスしてきた不特定多数のインターネット利用者(会員)に上記テレビ番組を自動的に送信し得る状態にした著作権法違反(複製権及び自動公衆送信可能化権の侵害)の事案である。被告人両名は,各テレビ会社が多大な労力と多額の費用をかけて製作した番組を無断で会員に有料で配信することにより利益を得ようと企て,本件各犯行に及んだものであり,その利欲的,自己中心的な動機に酌量の余地はない。
2被告人両名は,自己らの犯行であることが発覚しないよう,香港のレンタルサーバ会社との問で,偽名と私設私書箱の住所を用いて契約を締結し, 宣伝用のホームページにはテレビキャプチャボードのレンタル事業である旨うその宣伝文句を掲載するなど用意周到に準備を重ねた上で営業を開始し,テレビ会社関係者から警告メールが届くとアクセス不能な設定にするなどの罪証隠滅工作を行いながら営業を継続して本件各犯行に及んでいるのであって,その犯行態様は極めて巧妙,かつ悪質である。また,本件各犯行は,平成15年2月ころから同年12月9日までの間,営利目的で継続的に行われていた同種犯行の一環であり,その間,被告人両名は数十万円の利益を得,特にデータの残うている同年8月24日から同年12月9 日までの間だけでも配信していたテレビ番組の動画ファイルは3,280 個,そのダウンロード回数は25万回にも上っているのであって,正に営業的犯行そのものであり,被告人両名の責任は極めて重い。
3パソコンやインターネットが普及した現在,情報伝達方法は多様化し,その速度は高速化しており,これらに関する知識を有する者がこれらを悪用すれば,その被害は瞬時に広汎に及ぶ。また,巷にはパソコン関係の機器や知識があふれており,ある程度の機器と知識を収得することは比較的容易であるので,本件が模倣され,同種犯行が今後多発する可能性もある。これを放置しておけば,文化的所産であるテレビ番組の質の低下,ひいては文化の発展が阻害される事態をも招来しかねない。したがって,一般予防の観点からも,被告人両名を厳しく処罰する必要がある。
求刑以上の諸事情を考慮し,相当法条を適用の上,被告人両名をに処するのを相当と思料する。