児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 著作権侵害罪

 「権利を侵害した者」という構成要件は、無限定過ぎるわけです。
 著作権者を殴ったら著作権侵害か、出版権者の出版行為を威力で妨害したら出版権侵害かという話から始めないと。
 それをまた幇助する人も出てくる。幇助もさらに無限定。

「侵害」の定義について

 著作権侵害罪は、正犯として侵害しようと、共犯として侵害しようと、故意の「侵害」に他ならないから、侵害に関与した者はすべて正犯となりうるという意味でも、共犯と正犯との区別もつかない無限定で広汎な罰則である。

 著作権法民事事件の裁判例を紹介する。民事では幇助犯も正犯となりうるという解釈が通用しているのである。
 民事の解釈が刑事法では通用しないことを顕著に示している。

【事件番号】大阪地方裁判所判決/平成14年(ワ)第9435号
【判決日付】平成15年2月13日
【判示事項】音楽著作権の管理等を目的とする原告の許諾を得ていない社交飲食店に対して通信カラオケ装置をリースしているリース業者が、著作権法一一二条一項の「著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に当たるとされた事例

 そもそも、「侵害した者」というだけでは、関係者のうち、どの範囲まで処罰対象となるのかが不明確である。弁護人が刑事事件でこのような主張をすれば、判決の確定が延びて、有罪判決による威嚇効果が遅れたから、弁護人にも著作権侵害行為があると言われそうである。
  侵害者=「被害」について条件関係を持つ者全て
というのでは、慎重に審理した裁判所も侵害罪に問われかねない。

 さらに、上記の点で、刑罰法規としての明確性も欠くから、罪刑法定主義憲法31条)違反でもある。
注釈特別刑法(第4巻)第7章P839 著作権法
注解特別刑法4巻「著作権法」板東久美子P42

 従来の著作権法の解釈論は専ら民事の不法行為の要件としての議論であって、刑事法の議論であるから、全く用をなさない。本件は刑事裁判であるから、当然、刑事法としての解釈が求められる。

 違憲判断を回避するためには、刑罰法規の補充性・罪刑法定主義表現の自由への配慮の見地から、

① 罰則が適用されるのは、明白な権利侵害がある場合に限ること(民事訴訟で専門部が扱うような微妙な場合は含まない。)
② 「侵害」の対象は、著作権法上明文をもって法定されている権利の本体が現実に侵害された場合に限ること(侵害の危険があるにとどまる場合は含まない。解釈上の権利は含まない。物権に限り、私人間の債権は含まない。)
③ 著作○○権の侵害行為とは、無権限で他人の著作物を○○する行為に限定すること。(「演奏権者を拘束して演奏を妨げる」「出版権者の印刷行為を妨害する」ような行為は著作権侵害ではないと宣言すること)
④ 正犯共犯を明確に区別すること

の点について、合憲限定解釈が必要である。

 実務上、著作権違反とされる行為は次の通りである。


 この表の趣旨は、「複製」を例に取ると、ある著作物を「複製」することについては、著作権法上「複製権」が法定されていて、119条における「侵害」とは、法定の除外事由がない無権限の「複製行為」であって、刑事告訴権は「複製権者」にあるという趣旨である。

 判例を検索しても、実際はそのように運用されているのであって、限定解釈しても実務上の支障はない。
 無権限で送信可能化されても、譲渡権侵害や貸与権侵害はないというだけの話である。