児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

誤認逮捕

 「あの人です」という被害者の目撃証言に頼るとこうなることがあります。
 客観証拠を集めろと号令がかかっているのですが、密室のパターンではどうしても被害者の供述に頼らざるを得ない面もあります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100505-00000003-jij-soci
誤認逮捕された男性は同容疑者ら知人のトルコ人男性3人とインターネットカフェに入り、それぞれ個室でインターネットを使っていた。男性は容疑を否認していたが、女性の話だけで1日に逮捕された。その後、女性が使っていた個室から同容疑者の指紋が発見されるなどしたという。
 男性らはロックフェスティバルのアルバイトのため、宮城県を訪れていた。
 佐藤則夫仙台南署副署長の話 大変申し訳ない。よく検証し、今後二度とこうしたことがないよう適正な捜査の徹底に努めたい。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100505-00000500-san-soci
男性は一貫して容疑を否認したが、女性の目撃情報に基づき逮捕された。その後の調べで、女性がいた個室に容疑者の指紋が付着していたことなどが分かり、男性が事件に関係なかったことが判明。男性は1日午前の逮捕から約90時間後の4日午後に釈放された。
 同署の佐藤則夫副署長は「女性の説明を過信してしまった。2度とこうしたことが起こらないよう、適正な捜査に努めたい」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100504-00000068-mai-soci
仙台南署によると、男性は容疑者の友人で、当時一緒にカフェを訪れていたが、一貫して容疑を否認していたという。被害女性がいたブースの扉に容疑者の指紋が残されていた一方、男性の指紋が検出されなかった点などから、誤認逮捕が判明。女性が容疑者を確認する際、男性を容疑者と間違えたことが原因といい、佐藤則夫副署長は「大変申し訳ない。このようなことがないよう適正な捜査の徹底に努めたい」と謝罪した。

警察庁のある幹部は「すべての児童ポルノを遮断するのが業者の社会的責任ではないのか。法解釈を議論する前に、被害者の人権を最優先すべきだ」といらだつ。

 まるで法律なんかなくてもやれと言わんばかりですが、法治国家で、警察も法律があるから存在している以上、法律で縛るしかないですよ。

 児童ポルノ法はもともと有体物の流通(輸入・輸出・運搬・所持。関税法にも予備とか未遂もある)には厳しいのに、データの流通には緩い法律になっています(提供罪しかなくて、媒介者には触れていない)。誰に遠慮したのだか。

 児童ポルノ罪というのは、個人的法益のみでは説明しきれず、かならずしも行為時に被害児童の存在(実在・生存)は要件になっていなくて、捜査上も、画像の中で実在していればいいとされていて、被害者の人数も数えないことにしているのに、ブロッキングの時には「被害者の人権を最優先」だと言うのです。
 「被害者の人権を最優先」というのであれば、児童ポルノ罪も殺人、傷害、名誉毀損罪と同様に、1人1罪・1行為1罪を徹底すべきですが、それでは取締ができないので、判例も「被害者の人権を最優先」をほどほどに緩めて運用していて、他方、被害児童の保護には予算をつけていないのだから、現実は「取締が最優先で、児童の保護はできたらやる」になっています。
 警察が「被害者の人権を最優先」でやり直すというのなら協力しますが、いまさら無理でしょ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100505-00000010-mai-soci
3月31日、政府の犯罪対策閣僚会議児童ポルノ排除対策ワーキンググループ(WG)初会合が非公開であり、9省庁の課長や業界関係者が集まった。関係者によると、警察庁は「(限定すると)実効性が乏しい」と主張、安心ネット側は「(限定しなければ)事業者は納得しない」などと反論したという。
 総務省はこの場では沈黙を守っていたが、原口一博総務相はその後、限定的な導入の可能性に言及した。省内には「通信の秘密」を重視する空気が根強くあるものの、幹部の一人は「『総務省児童ポルノを許すのか』との批判を浴びることだけは避けたい」と、複雑な胸の内を明かす。

一方、警察庁のある幹部は「すべての児童ポルノを遮断するのが業者の社会的責任ではないのか。法解釈を議論する前に、被害者の人権を最優先すべきだ」といらだつ。

 海外では欧米を中心にブロッキングが広がっている。背景には児童ポルノを厳罰化する国際的な流れがある。

 日本の児童ポルノ流通防止協議会によると、英国では大手通信業者「BT」が04年に開始した。同国にも「通信の遮断は事業者の義務に反するのではないか」との声はあったが、パソコンに児童ポルノの閲覧記録が残っているだけで罰せられるほど規制が厳しいことから、同社は法的リスクを認識しつつも違法行為の防止を重視したという。

 欧州にはドイツのように「検閲につながりかねない」との反対論もあるが、欧州連合(EU)の行政府・欧州委員会は3月、「EU域内からは児童ポルノサイトに接続できないようにする」との法案を提示。承認されれば、加盟国は法案に準拠した国内法の整備を求められることになる。

 アジアでも韓国が07年、プロバイダーにブロッキングを義務づけた。海外にサーバーを置くサイトに限っているが、児童ポルノ以外の違法情報も対象としている。


携帯サイトは国内にあるので、ブロッキングの問題ではなく、摘発すればいいだけ。というか、プロバイダの刑事責任を法定することで対応すべきではないか。(それは業界としては絶対に受け入れられないと思いますが。)

あどけない少女らが次々と男たちに性的暴行を受ける。福井県警が今年1月に摘発した携帯電話サイトによる児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)事件は、ネット上の違法・有害情報を受け付ける「インターネット・ホットラインセンター」(東京都港区)からの情報が端緒だった。
 この動画についてセンターに通報があったのは昨年7月で、ネット業者が削除依頼に応じたのは摘発の翌月。この半年間、被害児童らの虐待場面はネット上にさらされ、不特定多数の携帯電話にダウンロードされ続けた。捜査関係者は「ネット上の児童ポルノ捜査は証拠集めに時間がかかる」と打ち明ける。

 センターには09年、児童ポルノに関する通報が4486件寄せられた。だが、警察が立件できるのはごく一部に過ぎない。そこで画像の流通を一刻も早く防ぐ「切り札」と期待されるのがブロッキングだ。

については、外国の方が厳しいというのだから、そっちで摘発すればいいはずですよね。
 あっちで止めてくれなくて、日本警察も法律や態勢の問題で手出しできないものを、民間でやってくれというのですよ。

検察審査会で不起訴不当→無罪判決

 新聞記事検索から。
 最終的な結論まではわかりません。

  • 不起訴−検察審「不当」−起訴、元会社役員に無罪−札幌地裁、横領の意思なかった1993.04.12 北海道新聞

  • 女がバスにひかれた事故、死角認め運転手無罪 大阪地裁 【大阪】1991.03.21 朝日新聞社

園田寿「児童ポルノ禁止法7条3項違反の罪と児童福祉法34条1項6号違反の罪の罪数関係について[最高裁第一小法廷平成21.10.21決定]」甲南法務研究

 観念的競合説。
 学説は原田判決に習ってほとんど観念的競合説になりましたが、判例併合罪説。

論題 児童ポルノ禁止法7条3項違反の罪と児童福祉法34条1項6号違反の罪の罪数関係について[最高裁第一小法廷平成21.10.21決定]
著者 園田 寿(ソノダ ヒサシ)

請求記号 Z71-N334
雑誌名 甲南法務研究
Konan law forum
出版者・編者 甲南大学法科大学院
巻号・年月日 (6) [2010.3]
ページ 21〜27

ISSN 1880-0459
本文の言語コード jpn: 日本語
記事種別コード 8: 判例研究
記事登録ID 10618289
雑誌記事ID 817651600

きて、児童福祉法34条1項6号における「淫行」については、「性道徳上非難に値する性交またはこれに準ずべき性交類似行為」と解されており、具体的には、「児童の心身に与える有害性が直接かつ重大なもので、実質的にみて性交と同視しうる程度の性行為でなければならず、例えば、ヌードモデルやヌードショーの踊り子が、除部を露出したり、客に陰部を触れさせたりすることや、トルコ嬢として客に手淫を施す等の行為は、それだけでは本号にあたらない」と解されている14)。このような解釈に立てば、1号児童ポルノは、「淫行」そのものの描写であるが、2号児童ポルノと3号児童ポルノの内容は、(当該姿態が性交または性交類似行為でないため)「淫行」そのものの描写とはいえない。そうすると、3項製造罪の場合、法2条3項1号の「姿態をとらせ」た場合にのみ、3項製造罪の一部が淫行罪と重なることになるが、行為者が児童との性交の最中に、法2条3項2号と3号の「姿態をとらせ」た場合には、3項製造罪と淫行罪の重なり合いは否定されることになり、淫行の最中に被害児童のどの場面を撮影したかによって、観念的競合とされたり、あるいは併合罪とされたりすることになるおそれがある。この点においては、最高裁が、両行為は「一部重なる点はあるものの、両行為が通常伴う関係にあるとはいえない」とすることも理解できないわけではない。
しかし、再思すれば、淫行が「性道徳上非難に値する性交またはこれに準ずべき性交類似行為」だとしても、被害児童を全裸もしくは半裸にさせたり(法2条3項3号の姿態)、あるいは性器等を触ったの一部を着けさせなくした段階で、淫行罪の着手がある)。したがって、淫行の最中に、被害児童のどの場面を写したかによって罪数処理が異なるものではない。被害児童に対して性交あるいは性交類似行為を行わせた以上、それを撮影し(必ずしも性交ないし性交類似行為そのものが写っている必要はない)、媒体に描写して、児童ポルノを製造した場合には、淫行罪と3項製造罪とが成立し、両罪は観念的競合の関係に立つと考えられる。
また、判例によれば、犯罪行為の主要部分が重なり合うことによって一体性が強く認められるような場合は、刑法的観点から犯罪行為は一回であると考えられている。このような場合の典型例としては、数人に対して刃物を突きつけて一個の脅迫行為を行い、その場で数人から財物を強取した場合に、被害者ごとに成立する数個の強盗罪が観念的競合とされているケースがあげられると思う15)。つまり、「犯罪目的を達成するための手段とされる行為」と「犯罪目的を直接実現する行為」が構成要件的行為として規定されているような場合に、判例はそれぞれの行為が完全に重なり合わなくとも、これらの手段的行為ないしは目的実現行為と他の罪の実行行為とが重なり合う場合には観念的競合の成立を認めている。3項製造罪と淫行罪においても、3項製造罪における「姿態をとらせ」という行為は、児童ポルノの製造という犯罪目的を達成するための手段として実行行為の一部分と解されるのであり、また、上述のように、被害児童を全裸もしくは半裸にさせたり(法2条3項3号の姿態)、あるいは性器等を触ったり、触らせたりすること(法2条3項2号の姿態)は、淫行を実現するための実行行為の一部となりうる行為であるので、これらは観念的競合の関係に立つと解されるのである。確かに淫行そのものには児童ポルノの製造が必然的に伴うものではないが、児童に対して性的虐待を行い、それを記録するという点において児童ポルノの根源的な問題性を捉える以上、児童ポルノの製造行為(3項製造罪)は、児童に対する淫行ないしは淫行の一部を行うということを構成要件的に必要不可欠な条件としているのである。