最近、製造罪が多いので、製造罪の罪数の基準も決めておこうじゃないかというので、最高裁に考えてもらっています。
製造罪事件の弁護人は注意してください。
条例淫行(1回1罪)と製造罪が観念的競合になるとすると、製造行為の包括一罪でかすがいにするという構成も可能です。
原判決は同一被害児童に対して、12.2〜2.17にわたり合計6回行われた撮影行為を包括一罪とした。
フラッシュメモリ1個
へ撮影ごとに追加記録したのである。
本件の「フラッシュメモリー」というのは、携帯電話内蔵の記録媒体(取り外し不可能)を意味し、追加的に記録されたことは明らかである。
しかし製造罪の罪数については、撮影機会ごとに1罪とし(東京高裁H15.6.4)、あるいは、媒体ごとに1罪とする(名古屋高裁金沢支部h17.6.9)のが判例であって、それを被害児童ごとに別々の機会に行った撮影行為を1罪とするのは判例違反である。
東京高裁平成15年6月4日
2罪数関係の誤りをいう論旨について(控訴理由第8,第11,第13,第14)
所論は,④原判決は,児童ポルノ製造罪について撮影行為を基準に1回1罪としているが,弁護人の主張に対する判断では媒体を基準にして罪数を判断すべきであると判示しており,理由齟齬であり,また,MOに関しては1個しか製造していないから,撮影行為が何回に及んでも1個の製造罪であり,ビデオテープは12本製造されているから12罪であって,法令解釈の誤りがある(控訴理由第14)などという。
④については,一個の機会に撮影して製造した物は一罪と解するべきであるが,本件のMOについては,全く別の機会に製作されたファイルが追加記録されているのであるから,媒体は同一でも追加記録は別罪を構成するものというべきである。原判決の「弁藩人の主張に対する判断」の1は,画像データが同一でも別の媒体に複写すれば製造に当たる旨を説示したにすぎず,媒体が同一であれば一罪になる旨判示したものではなく,所論は原判決を正解しないものといわざるを得ない。
名古屋高裁金沢支部h17.6.9
第1控訴趣意中,訴訟手続の法令違反等の論旨について(控訴理由第7,第11ないし第13,第15,第17)
①所論は,原判示第2の2の児童ポルノ製造罪について,児童ポルノであるミニディスク3本,メモリースティック3本,ハードディスクの製造は,それぞれ別罪を構成し,併合罪であるが,公訴事実では一罪とされており,訴因の単一性を欠く,・・・
2しかしながら,まず,所論①の点は,法2条3項において,電磁的記録に係る記録媒体が児童ポルノであると規定されていることからすると,記録媒体毎に児童ポルノ製造罪が成立すると考えるべきである(なお,所論は,メモリースティック3本を用いてハードディスクを製造する場合には3罪が成立するとするが,罪数判断に当たっては,製造行為を基準にすべきではなく,製造された記録媒体を基準に考えるべきであるから,ハードディスクの製造1罪が成立するにすぎない。)。しかし,一個の機会に児童に姿態をとらせそれを撮影等したものを元にして,その後,複数の記録媒体の製造を行った場合には,被告人の犯意が継続していると解される以上,包括して一罪と解すべきであり,これと同旨の考えに基づく公訴事実は訴因不特定であるとはいえないし,これと同旨の罪数処理をした原判決に違法はない。
特に東京高裁平成15年6月4日は「 あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。
」と言い切ったのであるから、判例違反は明らかである。
東京高裁平成15年6月4日
2罪数関係の誤りをいう論旨について(控訴理由第8,第11,第13,第14)
所論は,①児童ポルノ罪は,個人的法益に対する罪であるから,被害児童毎に包括して一罪が成立し,製造・所持は販売を目的としているから,製造罪,所持罪,販売罪は牽違犯であり,これらはわいせつ図画販売罪・わいせつ図画販売目的所持罪と観念的競合になり,結局,一罪となるが,原判決は,併合罪処理をしており,罪数判断を誤っている(控訴理由第8),・・・などという。
まず,①の点は,児童ポルノ製造罪及び同所持罪は,販売等の目的をもってされるものであり,販売罪等と手段,結果という関係にあることが多いが,とりわけ,児童ポルノの製造は,それ自体が児童に対する性的搾取及び性的虐待であり,児童に対する侵害の程度が極めて大きいものがあるからこそ,わいせつ物の規制と異なり,製造過程に遡ってこれを規制するものである。この童法趣旨に照らせば,各罪はそれぞれ法益侵害の態様を異にし,それぞれ別個独立に処罰しようとするものであって,販売等の目的が共通であっても,その過程全体を牽連犯一罪として,あるいは児童毎に包括一罪として,既判力等の点で個別処罰を不可能とするような解釈はとるべきではない。