児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。(2015受験月報SA問題集)

次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。(2015受験月報SA問題集)
 だいたい奥村弁護士が関与した判例を昇任試験で警察官が暗記しているようです。ころころ変わるからな。

2015受験月報SA問題集警察研修社白表紙
次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。
(1) 刑法におけるわいせつの定義とは異なり、「徒に」ではなくても、「性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であれば、児童ポルノに当たる。
(2) 児童ポルノの対象となる児童が特定できなくても、証拠等により、裁判官に合理的な疑いを容れない程度の確実な心証を抱かせることで「児童が18歳に満たない者」であることを証明できる。
(3) バックアップ用の電磁的記録媒体も、そのデータから児童ポルノ・わいせつ物が製造・販売される場合には、「販売目的(提供目的、有償で頒布する目的)の所持」とされる。
(4) 児童に、児童買春・児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせて、携帯電話内蔵カメラで撮影し、そのデータを電磁的記録媒体に保存した場合、撮影と保存の行為それぞれが児童ポルノの「製造」に当たり、それらは併合罪とされる。
(5) インターネット・オークションに児童ポルノを出品して、落札者に当該児童ポルノを送付した場合には、「不特定の者に提供する目的」があるといえる。

◆解説
平成19年9月4日札幌高裁判決は、「…児童ポルノ製造においては、「撮影して写真を作成する』といった、社会通念的に一つの固まりとみられそうな行為であっても、その過程で児童ポルノに当たる物が順次作成されるごとに製造行為が観念でき、当初から意図されていた物が製造されるまでに複数の製造行為が連なっているとみられる場合が少なくない。そして、同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行ったような場合には、その全体として包括一罪となると解するのが相当である」とした(高刑速報平19~522)。
正解は(4) 誤り。
(1) 正しい。平成12年7月17日京都地裁判決は、「…性欲を興奮又は刺激せしめる点は必要であるが、しかし『徒に」興奮又は刺激しなくても処罰の対象とし、…」と判示し、さらに、「児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる『普通人の正常な性的蓋恥心を害し』という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人』又は『一般人』を基準として判断するのが相当である」とした(判タ1064.249)。
(2) 正しい。平成12年10月24日大阪高裁判決は、「…刑事訴訟法における証明は、医学等の自然科学における証明と異なり、裁判官に合理的な疑いを容れない程度に確実であるとの心証を抱かせれば足りるものである」と判示し、さらに「…児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、更に進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまで必要ない」とした(高判速報平12. 146)。
(3) 正しい。平成18年5月16日最高裁決定では、「被告人は、本件光磁気ディスク自体を販売する目的はなかったけれども、…必要が生じた場合には、本件光磁気ディスクに保存された画像データを使用し、…販売用のコンパクトディスクを作成し、これを販売する意思であったものである。…そうすると、本件光磁気ディスクの製造、所持は、法第7条第2項にいう『前項に掲げる行為の目的』のうちの児童ポルノを販売する目的で行われたものであり、その所持は、刑法第175条後段にいう「販売の目的』で行われたものということができる」とした(刑集60.5.413)。
(5) 正しい。平成20年3月4日最高裁決定では、「…被告人は、児童ポルノであるDVDをインターネットオークションに出品して不特定の者から入札を募り、入札期間の終了時点で最高値の入札者を自動的に落札者とし、その後当該落札者にあてて落札されたDVDを送付したものであって、…買受人の募集及び決定並びに買受人への送付という不特定の者に販売する一連の行為の一部であるから、被告人において不特定の者に提供する目的で児童ポルノを外国から輸出したものというを妨げない」とした(刑集623.85)。

女子中高生の自画撮り被害~インターネットで知り合った男性からの被害に着目して(犯罪社会学会)

 裸画像を送付した児童の特徴として、危険性認識低い・孤独感高い・容姿満足度合い低い・児童側も性的目的あるなどが指摘されていました。配付資料無し
 教育・啓発の必要性が指摘されていましたが、提供目的製造罪と提供罪は児童にも向けられていますから、それを無視して、教育・啓発しても永遠に力不足でしょう。

http://hansha.daishodai.ac.jp/meeting/program_46th.pdf
D2女子中高生の自画撮被害~インターネットで知り合った男性からの被害に着目して
○藤原佑貴(科学警察研究所
宮寺 貴之(科学警察研究所
久原 恵理子(科学警察研究所
 児童が自分の下着姿や裸の写真を撮影させられ、メール等で送らされる被害について、全国の一般の女子中高生及び被害児童に対して質問紙調査を実施した。本報告では、自画撮り被害の実態を報告するとともに、インターネットで知り合った男性とやりとりをした児童のうち、自画撮り写真を依頼されなかった児童、依頼されたが送付しなかった児童、依頼されて送付した児童の回答を比較検討し、被害防止に関して考察を行う。

横浜DeNAの投手を書類送検 女子高生にみだらな行為


 淫行より製造の方が重くて、
 青少年条例違反は逮捕されないことがある程度の罪名、、姿態をとらせて製造罪は逮捕される方が多い罪名です。
 併せて罰金50~80万になることが多いと思います。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

神奈川県青少年保護育成条例
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条 
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
第53条 第31条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191011-00000019-kana-base
横浜DeNAの投手を書類送検 女子高生にみだらな行為
10/11(金) 13:10配信カナロコ by 神奈川新聞
横浜DeNAの投手を書類送検 女子高生にみだらな行為
翔投手
 県警は11日、県青少年保護育成条例違反と児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の疑いで、プロ野球横浜DeNAベイスターズの投手(22)を書類送検した。
【写真で見る】ブルペンで力投を見せていた
 書類送検容疑は、昨年1月上旬、横浜市内のホテルで高校1年の女子生徒(16)にみだらな行為をし、スマートフォンでその様子を動画撮影した、としている。
 県警によると、女子生徒とは会員制交流サイト(SNS)で知り合ったといい、調べに対し「女子生徒が18歳未満であることを知りながらやった」と容疑を認めている。
 同投手は、茨城・霞ケ浦高から2015年のドラフト5位でDeNAに入団。17年にプロ初勝利を挙げた。今年7月に、今回の事案が発覚し、球団から無期限謹慎処分を受け、今季の1軍登板はなかった。DeNAはすでに同投手と来季の契約を結ばないことを通告している。
神奈川新聞社

同一児童に対する、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造を起訴するときには、二重起訴にならないように注意する

3/6逮捕  1/下旬のわいせつ行為
3/26再逮捕 9/30のわいせつ行為
5/24 公判1回目 9/30のわいせつ行為
6/25 公判2回目 11/下旬のわいせつ行為
7/30 公判3回目 わいせつ行為+その際の児童ポルノ製造
9/13 公判4回目 求刑3年6月
10/8 判決 2年6月


 被害者(8)が共通なので、製造罪は包括一罪になりますよね(判例)。
 強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪は観念的競合だというので(東京高裁 H30.1.30等)、かすがい効果で全部科刑上一罪になりますよね。
 処断刑期の上限は10年になるし、追起訴は二重起訴の違法がありますよね。

https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/690831.html
勤務校女児にわいせつ、元小学校臨時講師に実刑 静岡地裁判決
(2019/10/8 17:42)
 勤務していた小学校の女児にわいせつな行為をしたなどとして、強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた静岡県中部の元小学校臨時講師の男(24)=懲戒免職=に対し、静岡地裁は8日、懲役2年6月(求刑懲役3年6月)の実刑判決を言い渡した。
 林田海裁判官は判決理由で「被害児童に好意を抱き、独占したいとの思いで犯行に及んだ動機は身勝手で自己中心的。厳しい非難に値する」と指摘。「信頼を寄せられる立場の被告が、立場を悪用した常習的な犯行で大変悪質。被告の反省などを考慮しても刑の執行を猶予すべきとは言えない」と説明した。
 判決によると、男は2018年9月下旬から11月下旬にかけ、勤務校の女児に対し複数回にわたりわいせつな行為をし、その際に自身のスマートフォンで動画を撮影して児童ポルノを製造した。
 同地裁は男の氏名などを被害者の特定につながる事項と判断し、裁判は匿名で行った。

「「今日暇だから自撮りでも送ってよ」「むねとかね」「あーいいんだー」「まわっても」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,前記●●●において,前記Aにこれらを閲覧させ,同人の胸を撮影した画像の送信を要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,同人を怖がらせ,」という強要被告事件の罪となるべき事実(千葉地裁H31.2.22)

 
「よって,同日午後7時37分頃から同日午後7時59分頃までの間,3回にわたり,同人に,乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを同人の携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ3点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,」はわいせつ行為なので、これでは強制わいせつ罪と区別できません。理由不備じゃないですかね。




千葉地裁平成31年 2月22日強要未遂、強要、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
 上記の者に対する強要未遂,強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官栃倉信及び弁護人古川薫各出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 A(当時16歳)の性行為を撮影した動画を入手したと装って同人を脅迫し,被告人との性交等に応じさせようと考え,
 1 平成30年11月5日午後2時34分頃から同日午後8時8分頃までの間,千葉市〈以下省略〉a消防署b出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,アプリケーションソフト「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記Aが使用する携帯電話機に,「あなたの,はめどり見してもらったけど」「なら動画はまわるけど」「やってくれるなら動画消してあげる」「口でいかしてくれたら本番はないかもねー」「じゃー明日フェラ動画撮らせて」「ゆうこと聞けないなら回すからいいや」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,●●●において,前記Aにこれらを閲覧させ,被告人との性交及び前記Aが口淫する様子を動画撮影させることを要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,もって同人に義務のないことを行わせようとしたが,同人が同月6日に警察に届け出たため,その目的を遂げなかった。
 2 同月5日午後4時10分頃から同日午後7時54分頃までの間,前記a消防署b出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記Aが使用する携帯電話機に,「今日暇だから自撮りでも送ってよ」「むねとかね」「あーいいんだー」「まわっても」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,前記●●●において,前記Aにこれらを閲覧させ,同人の胸を撮影した画像の送信を要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,同人を怖がらせ,よって,同日午後7時37分頃から同日午後7時59分頃までの間,3回にわたり,同人に,乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを同人の携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ3点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,もって前記Aに義務のないことを行わせた。
 第2 前記Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後7時59分頃,前記●●●において,前記Aにその乳房を露出させる姿態をとらせ,これを同人の使用する携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ1点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,その頃,前記a消防署b出張所において,上記画像データを受信して同携帯電話機の記録装置に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である前記Aに係る児童ポルノを製造した。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 被告人の判示第1の1の所為は刑法223条3項,1項に,判示第1の2の所為は同項にそれぞれ該当するが,これらを包括して一罪として処断することとし,被告人の判示第2の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号に該当するところ,判示第2の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 被告人は,自己の性欲を満たすため,被害女児の性行為を撮影した動画を入手したと装い,当時16歳の被害女児に対し,被告人との性交に応じること,被害女児が口淫する様子を動画撮影させること,被害女児に乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを撮影した画像データを送信することなどを要求し,これらの要求に応じなければ,被害女児の性行為を撮影した動画を拡散させるなどのメッセージを伝えて脅迫し,上記画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させて保存し,児童ポルノを製造したものである。動機が自己中心的で身勝手極まりなく,態様も執拗で卑劣なものである。被害女児は,本件被害に遭い,多大な恐怖心や差恥心を抱くなどの精神的苦痛を被っており,将来にわたる精神的な悪影響も懸念されるところであって,被害結果を軽視することはできない。被害女児は,被告人側からの示談の申入れを拒絶し,被告人を厳重に処罰するよう求めているが,上記のような被害結果等に照らすと,その心情も十分に理解できるところである。そうすると,被告人の刑事責任については決して軽く見ることができない。
 もっとも,これまで前科がなく,21歳と若年の被告人が,素直に事実関係を認めて反省の態度と更生の意欲を示し,精神科クリニックに通院するなどして再犯防止に努めていること,被告人と同居している母親が,当公判廷に出廷し,被告人の監督を誓約したこと,本件が発覚したことで,自業自得とはいえ,被告人の名前等が広く報道され,消防士の職を懲戒免職されるなど,既に大きな社会的制裁を受けていることなど,被告人のために酌むべき事情もある。
 そこで,以上の事情を総合考慮した結果,被告人を主文のとおりの懲役刑に処してその刑事責任を明確にした上で,今回に限りその刑の執行を猶予して,被告人に社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
 (求刑 懲役2年)
 平成31年2月22日
 千葉地方裁判所刑事第3部
 (裁判官 髙橋正幸)

A(16)が、対償供与(約束)の時点では「18歳」、性交等の時点では「15歳」と自称した児童買春事件で、弁護人から対償供与(約束)実行行為説に基づき対償供与(約束)時点において児童という認識がないから児童買春罪不成立という主張がなされ、対償供与(約束)時点での未必の故意を認めた事案(棒地裁)

 弁護人は奥村です。 
 検察官は、対償供与(約束)は実行行為ではなく、誰が約束・供与したかを問わず、対償供与(約束)を前提にして児童と認識して性交等をすれば、児童買春罪になると主張していました。
 検察官の主張によれば、対償供与(約束)時点での年齢認識は問題にならない筈ですが、裁判所は、必要説に立って、未必的な認識があったという認定をしています。



対償供与(約束)実行行為説
okumuraosaka.hatenadiary.jp

女性による男児に対する強制性交(後段)は執行猶予(高松地裁h31.9.4)

 レアケースです。
 おっさんが小学生児童と「恋愛」だとしても、暴行脅迫がなかかったという評価になるだけで、それも177後段が予定するところだということで、重視されません。
 妊娠危険は女性、身体侵襲は女性とかいいだしたら、このケースにこの法定刑はそぐわないということになりますね。

https://www.ksb.co.jp/newsweb/index/14689
「お互いに恋愛感情…」 小6男児とわいせつ行為の23歳女に執行猶予付き判決 高松地方裁判所
当時小学6年生の男子児童とわいせつな行為などをした女に、高松地方裁判所は執行猶予付きの判決を言い渡しました。

 強制性交や児童買春・ポルノ禁止法違反などの罪で判決を受けたのは、23歳の女です。
 判決によると、女は今年1月高松市の自宅で13歳未満と知りながら、当時小学6年の男子児童とわいせつな行為をしました。また、去年12月には男子児童との性的な写真をスマートフォンで撮影しました。
 2人は、去年9月にスマートフォンのオンラインゲームを通じて知り合ったということです。

 4日の判決公判で高松地裁の三上孝浩裁判長は、「判断能力や性的知識が乏しいことにつけ込んで犯行に及んだことは悪質」と指摘しました。
 一方、「女と男子児童が『将来は結婚したい』旨のやりとりをするなど、お互いに恋愛感情を有していた。今後一切連絡しないなどの示談が成立している」として懲役5年の求刑に対して、懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。

男児と強制性交した女に有罪判決 /香川県
2019.09.05 朝日新聞
 小学生の男児と性行為をしたとして、強制性交などの罪に問われた被告に対し、高松地裁は4日、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。三上孝浩裁判長は「小学生の判断能力の乏しさにつけ込んだ犯行は悪質」と指摘した一方、「暴行や脅迫はなかった」などと述べた。
 判決によると、被告は今年1月、自宅で当時小学6年生だった福岡県内の男児(13)と性行為をした。
 強制性交罪は2017年の改正刑法で強姦(ごうかん)罪から名を変え、被害者が男性でも適用されるようになった。

児童買春罪につき、「行為はあったが、年齢は知らなかった」と容疑を否認している。事案

 実態としては、児童が「17」と表示していると、補導されたり、遊客が逃げたりするので、はっきりとは表示されてない事が多い。
 逮捕されてしまうと、嘘でも自白してしまうことが多い。

 ちゃんと弁解するなら、対償供与約束時点と性行為時点とに分けて、年齢知情を説明して下さい。
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/10/09/000000

https://www.nikkansports.com/general/news/201909020000370.html
逮捕容疑は5月27日、旭川市内のホテルで同市の無職少女(17)が18歳未満であることを知りながら、現金約1万5000円を渡す約束をして、少女といかがわしい行為をした疑い。署によると、「行為はあったが、年齢は知らなかった」と容疑を否認している。

2人はツイッターで知り合い、やりとりをしていた。少女は援助交際を募る内容の書き込みをしており、インターネット上の不適切な書き込みを注意するサイバー補導で少女から事情を聴き発覚した。(共同)

師弟関係の児童淫行罪で6/3起訴、7/18初公判結審(求刑4年)、8/28判決(2年6月実刑)(静岡地裁H31.8.28)

 あまり知られてませんが、師弟関係の児童淫行罪は6:4くらいで実刑の方が多いので、ちょっと争点作りながら罪体(余罪)を削って行かないと。

児童福祉法違反で元県立高教諭起訴-静岡地検
2019.07.05 静岡新聞
 静岡地検は4日までに、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で、元県立高教諭で30代の無職の男を静岡地裁に起訴した。
 起訴は6月3日付。起訴状などによると、男は高校教諭だった2018年12月ごろから19年3月ごろまでの間、10代の少女が18歳未満と知りながら複数回にわたり淫行させた上、携帯電話で動画を撮影し児童ポルノを製造したとされる。
 男は4月に県教委から懲戒免職処分を受け、5月に県警に逮捕された。地裁は匿名で公判を行うことを決めている。
・・・・
児童福祉法違反の元教諭に4年求刑 静岡地裁初公判
2019.07.18 静岡新聞
 勤務していた高校の生徒に淫行をさせるなどしたとして、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた元県立高教諭の30代の男=懲戒免職=の初公判が18日、静岡地裁(伊東顕裁判官)で開かれた。被告は起訴内容を認め、検察側が懲役4年を求刑、弁護側が執行猶予付き判決を求めて即日結審した。判決は8月28日。
 検察側は論告で「自ら生徒を誘い出し、自分の性欲を満たすために教員の立場を乱用した特に悪質な犯行」と指摘した。弁護側は「悪意はなかった」と酌量を求めた。
 起訴状などによると男は2018年12月ごろから19年3月ごろまでの間、勤務校の女子生徒が18歳未満と知りながら複数回淫行をさせた上、携帯電話で動画を撮影し児童ポルノを製造したとされる。
 公判は被害者が特定される可能性がある「被害者特定事項」として匿名で行われた。
・・・
元教諭に実刑判決 児童福祉法違反 「卑劣な犯行」 静岡地裁
2019.08.28 静岡新聞
 勤務していた高校の女子生徒に淫行をさせるなどしたとして、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた元県立高教諭の30代の男=懲戒免職=に対し、静岡地裁は28日、懲役2年6月(求刑懲役3年6月)の実刑を言い渡した。
 伊東顕裁判官は判決理由で「青少年の健全な成長を促すべき立場の教師が被害者の未熟さに付け込んだ身勝手で卑劣な犯行」と非難。「反省の態度などを考慮しても刑の執行を猶予すべきではない」と実刑の理由を述べた。
 判決によると、男は2018年12月ごろから19年3月ごろまでの間、勤務校の女子生徒が18歳未満と知りながら県内で複数回淫行をさせ、携帯電話で動画を撮影し児童ポルノを製造した。

 検察側は初公判で懲役4年を求刑したが、動画の所有権放棄などの手続きを踏まえ、判決に先立ち求刑を懲役3年6月に変更した。公判は、被告の氏名について被害者が特定される可能性のある「被害者特定事項」と判断し、匿名で行った。

静岡地方裁判所
令和01年08月28日
 被告人に対する児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官山根誠之、弁護人内田隼二各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役2年6月に処する。

理由
(犯罪事実)
第1 被告人は、●●●高等学校の教諭として、同校●●●部の顧問をしていたものであるが、同校の生徒であり、同部の部員である●●●(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、その立場を利用し、同児童が自己に好意を寄せていることに乗じ、
 1 平成30年12月11日午後4時55分頃から同日午後6時52分頃までの間に、静岡県●●●所在のホテル●●●において、同児童に自己を相手に性交させ、
 2 平成31年3月11日午後7時頃から同日午後7時43分頃までの間に、同県●●●所在の同校●●●において、同児童に自己を相手に性交させ、
 3 同月26日午後5時頃から同日午後5時15分頃までの間、同県●●●から北北東方向図測約177メートル先空き地に駐車中の自動車内において、同児童に自己を相手に性交させ、もって児童に淫行をさせる行為をした。
第2 被告人は、前記●●●(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第1の1の日時、場所において、同児童に、その乳房、陰部を露出した姿態、被告人の陰茎を口淫する姿態及び被告人と性交する姿態をとらせ、これを撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その動画データ1点をその携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
(証拠の標目) (カッコ内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)
 
(法令の適用)
  (1) 罰条
  (ア) 第1の行為 包括して、児童福祉法60条1項、34条1項6号
  (イ) 第2の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(2条3項1号、3号)、2項
  (2) 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
  (3) 併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、ただし書、10条(重い判示第1の罪の刑に加重)
(量刑の事情)判示事実全部について
  1 被告人の公判供述、検察官調書(乙12)、警察官調書(乙7、8)
  2 ●●●の検察官調書(甲3)、警察官調書(甲1、2、9)
  3 警察官作成の実況見分調書(甲10)、捜査報告書(甲11、12、18)
 判示第1の事実について
  1 被告人の検察官調書(乙6、11)、警察官調書(乙5、9、10)
  2 ●●●の警察官調書(甲13)
  3 警察官作成の捜査報告書(甲5、6、8)、実況見分調書(甲7、14)、電話聴取書(甲15)
判示第2の事実について
  1 警察官作成の実況見分調書(甲19)、捜査報告書(甲20、16)
(法令の適用)
  (1) 罰条
  (ア) 第1の行為 包括して、児童福祉法60条1項、34条1項6号
  (イ) 第2の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(2条3項1号、3号)、2項
  (2) 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
  (3) 併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、ただし書、10条(重い判示第1の罪の刑に加重)
 本件は、高校の教諭であった被告人が、顧問として指導していた部活動の部員で、当時17歳の被害者に対し、〈1〉自己を相手方として3回にわたり性交させて淫行した児童福祉法違反1件と、〈2〉その性行為等の場面を動画撮影して児童ポルノを作成した児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反1件の事案である。
 被告人は、悩みを抱えていた被害者をドライブに連れ出した際、被害者から「好きです。」などと告白され、被害者との交際を断れば、被害者の精神状態が悪化するなどと考え、交際を続け、本件各犯行に及んだというのであるが、仮にそのような事情があったとしても、妻子がいて被害者の好意に応じ難い立場である上、教諭として、また、部活動の顧問として、未成年者の健全な成長を促すべき立場にあるにもかかわらず本件犯行に及んだものであるから、本件は、被害児童を保護すべき立場の者が、逆に、被害児童の思慮分別の未熟さに付け込んだ身勝手で卑劣な犯行というべきであって、強い非難に値する。しかも、被告人が、判示のとおり児童ポルノの撮影に及んだほか、●●●あるいは、妻に被害者との関係が発覚した後もひそかに関係を続けるなどしていたことも考慮すると、被告人は、もっぱら自らの性欲を満たすため、被害者をもてあそんでいたといわざるを得ず、被害者の今後の成長に与える影響も憂慮される。被害者の家族が被告人の厳重処罰を求めるのも無理からぬものがある。
 そうすると、本件は、被害者を保護すべき立場の被告人が、被害者の情操を甚だしく害したという悪質な犯行というべきであって、以下のような被告人のために酌むべき事情を考慮しても、その刑の執行を猶予するのが相当であるとはいえない。
 すなわち、被告人が事実を認めて反省の態度を示していること、被害者の宥恕は得られなかったものの、賠償金として200万円を支払って示談したこと、当然のこととはいえ、●●●妻が情状証人として出廷し、被告人の更生を支援する旨証言していること、フォークリフトの免許を取るなど社会復帰を目指した取り組みを始めたことなど、被告人のために酌むべき事情も認められ、これらの事情を考慮すると、前記のとおり刑の執行を猶予するのは相当ではないものの、被告人を主文の刑に処するのが相当である。
(求刑-懲役3年6月)
刑事第1部
 (裁判官 伊東顕)

 脅迫による児童ポルノ要求行為(府青少年健全育成条例違反容疑)

 やっぱり送っちゃってる事案です。既遂・既遂で最後が未遂になってる。
 脅迫があると、威迫・困惑に該当しないことになります。
 脅して送らせたら強制わいせつ罪、脅して送信要求したら、強制わいせつ罪未遂。じゃないですか。

大阪府青少年健全育成条例
(青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第四十二条の二 何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春・児童ポルノ禁止法第二条第三項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録をいう。)の提供を求めてはならない。

(平三一条例七・追加)
第五十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
三 第四十二条の二の規定に違反した者であって、次のいずれかに該当するもの
イ 当該青少年に拒まれたにもかかわらず、当該提供を求めた者
ロ 当該青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は当該青少年に対し、対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該提供を求めた者
第六十一条 この条例の罰則は、青少年に対しては、適用しない。ただし、青少年が営む営業に関する罰則の適用については、この限りでない。

わいせつ動画要求:裸の自撮り 容疑で高校生書類送検 阿倍野署 /大阪
2019.08.24 毎日新聞
 阿倍野署は23日、女子高校生に自らのわいせつ動画を送るよう要求したとして、府内の男子高校生の少年(15)を府青少年健全育成条例違反などの疑いで書類送検した。

 4月の条例改正で、自身の裸の画像を送信するよう求める「自画撮り」要求などが罰則対象になった。府内での摘発は初めて。

 送検容疑は6月17~18日、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で、府内の女子高校生にわいせつな動画を送信するよう求めたとしている。「性的欲求を満たすためにやった」と容疑を認めている。

 同署によると、女子高校生は昨年12月、少年から「悪いうわさを学校に流す」と脅されて動画を送信。今年6月に再度、動画を要求されていたという。【野田樹】
・・・
わいせつ動画要求 15歳容疑で書類送検=大阪
2019.08.24 読売新聞
 女子高校生にわいせつな動画を送るよう要求したとして、阿倍野署は23日、府内に住む高校生の少年(15)を府青少年健全育成条例違反容疑などで書類送検した。4月施行の改正条例は18歳未満にわいせつな動画などの提供を求める行為を禁じており、適用は初めて。少年は「性欲を満たすためにやった」と容疑を認めているという。

 発表では、少年は6月、SNSを通じて府内の女子高校生に対し、18歳未満と知りながら、わいせつな動画を要求した疑い。

「意見に対する道の考え方 本規制は、13歳未満の青少年に自画撮り画像の提供を求める行為の内、強制わいせつ未遂に該当しない行為を規制するものであるため、国法との関係に問題はないと考えております。」

 北海道庁によると、13歳未満の青少年に対して裸画像を求めるのは、強制わいせつ罪(176条後段)未遂にならないそうです。


http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/dms/ss/pubcom_soan.pdf


素案
第2 改正の概要
児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止するための改正
(1)改正の理由
青少年がだまされたり、脅されたりして、自身の裸の画像をスマートフォン等で撮影させられた上、電子メールやSNS等で送信させられる、いわゆる「自画撮り被害」が増加していますが、現行法令では青少年に対して自画撮り画像を求める行為を禁止する規定がなく、青少年の画像提供を未然に防止することが十分にできていません。
このため、不当な手段等により青少年に対して自画撮り画像を求める行為を新たに罰則付きで規制するための改正を検討しています。
(2)改正の内容
青少年に対し、次のいずれかの不当な手段等により児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいいます。)の提供を求める行為を罰則付きで禁止します。
① 18歳未満の青少年に対して、
・拒まれたにも関わらず、更に求める。
・威迫して求める。
・欺いて求める。
・困惑させて求める。
・対償を供与し、若しくはその供与の約束をして求める。
② 13歳未満の青少年に対して求める。

奥村が送った意見
13歳未満の青少年に対して求める。行為を罰金で処罰することについて他人に裸体画像を撮影送信させる行為は強制わいせつ罪のわいせつ行為と評価されている
  裁判例
東京地裁H18.3.24
松山地裁西条支部H29.1.16
高松地裁丸亀支部H29.5.2
高松地裁H28.6.2
札幌地裁H29.8.15
岡山地裁H29.7.25
 札幌地裁H29.8.15は9歳児童に平穏に乳房陰部露出させる姿態とらせて撮影させた行為を強制わいせつ罪(176条後段)
 としている。脅迫はない。
 これが強制わいせつ罪(176条後段)だとすると、13歳未満の青少年に対して求める行為は強制わいせつ罪(176条後段)未遂(法定刑懲役6月~10年)であって、既に国法で厳重に対応されていることになる。
 この行為について青少年条例で罰金で処罰するというのは、条例の守備範囲を越えるし、懲役10年の刑を罰金にして軽く処罰することになって妥当性にも欠ける。

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/dms/ss/bosyuukekka.pdf
(別記第2号様式 道民意見提出手続の意見募集結果)
令和元年6月5日 ~ 令和元年7月5日
北海道青少年健全育成条例の一部を改正する条例(素案)についての意見募集結果
意 見 の 概 要
13 歳未満の青少年に自画撮り画像を求める行為は、強制わいせつ未遂に該当し、既に国法で厳重に対応されている。

意見に対する道の考え方※
本規制は、13 歳未満の青少年に自画撮り画像の提供を求める行為の内、強制わいせつ未遂に該当しない行為を規制するものであるため、国法との関係に問題はないと考えております。

追記 2019/09/05
パブコメ後に、常習要求罪が加えられました。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/339189
道は子どもにわいせつな画像や動画を撮影させて送信させる「自画撮り被害」防止に向け、送信要求を繰り返す常習者に対し、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科す規定を道青少年健全育成条例改正案に盛り込む方針を固めた。「自画撮り犯罪」に絡む常習行為を処罰する規定を設けるのは全国初。道は来年1月施行を目指し、9月10日からの道議会第3回定例会で方針を示す。
 条例改正案を巡っては、13歳未満の子どもにわいせつな画像を要求するだけで、13歳以上18歳未満については脅迫や見返りに現金を渡すなどの悪質な手口での要求に対し、それぞれ30万円以下の罰金を科す方針が既に明らかになっている。道はこれらの行為に関し、複数回行うなど「常習性がある」と判断した場合、さらに重い6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科す考え。厳しい規定を設けることで、犯罪抑止につなげる狙いだ。
 東京都や兵庫県など19都府県(3月末時点)は18歳未満に対する悪質な手口での要求に罰金や科料を科しているが、繰り返す行為を厳罰化した自治体はなかった。現行法では自画撮り画像の要求行為を規制する法律はない。

「これまでは児童買春・ポルノ禁止法に基づき、わいせつ画像が残っていないと検挙できなかったが、条例改正により提供を求める行為のみで摘発が可能になった。」というのは製造罪の既遂時期を誤解している。

 国法・条例の関係からは、製造罪が成立するときは条例の要求罪は成立しないという解釈を前提にしてると思うのですが、製造罪の既遂時期は、児童の裸が最初に媒体に記録された時なので、児童のカメラ(スマホ等)で撮影したときですから、児童が撮影している場合には、要求罪は成立しません。
 「これまでは児童買春・ポルノ禁止法に基づき、わいせつ画像が残っていないと検挙できなかったが、条例改正により提供を求める行為のみで摘発が可能になった。」というのが条例改正する警察の本音なんでしょうね。ちゃんと製造罪の立件を目指した方がいいですよ。

製造罪の既遂時期
sextingの場合「製造をしたのは、自分の写真を撮った児童ではなくポーズをとらせた者であるというように解されております。」という木村光江部会長の発言 - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

裸の「自画撮り」女子高生に要求 容疑の男 書類送検
2019.07.22 読売新聞
 女子高生に「自画撮り」した裸の画像を送るように要求したとして、福岡県警西署は22日、千葉県船橋市の会社員の男(51)を福岡県青少年健全育成条例違反容疑で福岡地検書類送検した。2月施行の改正条例では、中高生らにわいせつな画像の提供を求める行為を禁じる条項が新設されたが、適用は初めて。

 発表では、男は2月12日、ツイッターで知り合った福岡県内の女子高生(16)が18歳未満と知りながら、無料通話アプリで、「胸のアップを送って」「写メ(写真付きメール)売ってもらう感じです」などとメッセージを送り、児童ポルノの提供を求めた疑い。「間違いない」と容疑を認めている。

 男は裸の画像など十数点を受け取り、女子高生が指定する口座に4000円を振り込んだ。女子高生がツイッター上で「パパ活」を募集しているのを警察がサイバーパトロールで見つけて補導し、発覚した。
・・・
わいせつ画像要求:初摘発 千葉の容疑者書類送検 西署 /福岡
2019.07.23 毎日新聞
 18歳未満と知りながら女子高生にわいせつ画像を提供するよう求めたとして、西署は22日、千葉県船橋市の会社員の男(51)を福岡県青少年健全育成条例違反(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)容疑で福岡地検書類送検した。2月に同条例が改正されてから初の適用という。

 送検容疑は2月12日、インターネット上で知り合った福岡県内の女子高生(16)にわいせつな動画や画像を送信するよう求めたとしている。

 署員が2月、インターネット上の書き込みを見て、女子高生と接触して発覚した。会社員の男は4000円を振り込んで14点の画像を入手したが、既に削除していた。

 これまでは児童買春・ポルノ禁止法に基づき、わいせつ画像が残っていないと検挙できなかったが、条例改正により提供を求める行為のみで摘発が可能になった。【浅野孝仁】
〔福岡都市圏版〕

①児童Aを脅迫して性交求めた行為を強要未遂とし、②児童Aを脅迫して乳房露出画像を送らせた行為を強要罪とし、包括一罪とした事案(千葉地裁H31.2.22)

①は強制性交未遂、②は強制わいせつ罪とする裁判例もあるのに、軽い罪名で起訴されているので、実刑にはなりません。



強要未遂,強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
千葉地方裁判所判決平成31年2月22日
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 ■■■(当時16歳)の性行為を撮影した動画を入手したと装って同人を脅迫し,被告人との性交等に応じさせようと考え,
 1 平成30年11月5日午後2時34分頃から同日午後8時8分頃までの間,千葉市若葉区(以下略)千葉市□□消防署△△出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,アプリケーションソフト「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記■■が使用する携帯電話機に,「あなたの,はめどり見してもらったけど」「なら動画はまわるけど」「やってくれるなら動画消してあげる」「口でいかしてくれたら本番はないかもねー」「じゃー明日フェラ動画撮らせて」「ゆうこと聞けないなら回すからいいや」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,■■■において,前記■■にこれらを閲覧させ,被告人との性交及び前記■■が口淫する様子を動画撮影させることを要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,もって同人に義務のないことを行わせようとしたが,同人が同月6日に警察に届け出たため,その目的を遂げなかった。
 2 同月5日午後4時10分頃から同日午後7時54分頃までの間,前記千葉市□□消防署△△出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記■■が使用する携帯電話機に,「今日暇だから自撮りでも送ってよ」「むねとかね」「あーいいんだー」「まわっても」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,前記■■において,前記■■にこれらを閲覧させ,同人の胸を撮影した画像の送信を要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,同人を怖がらせ,よって,同日午後7時37分頃から同日午後7時59分頃までの間,3回にわたり,同人に,乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを同人の携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ3点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,もって前記■■に義務のないことを行わせた。
第2 前記■■が18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後7時59分頃,前記■■■において,前記■■にその乳房を露出させる姿態をとらせ,これを同人の使用する携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ1点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,その頃,前記千葉市□□消防署△△出張所において,上記画像データを受信して同携帯電話機の記録装置に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である前記■■に係る児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
 以下,括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。
判示事実全部について
・ 被告人の公判供述
・ 被告人の検察官調書(乙3)
・ ■■■の検察官調書(甲2-ただし,不同意部分を除く。)
・ 電話聴取書(甲3)
・ 写真撮影報告書(甲4,5,8)
・ 捜査報告書(甲7)
(法令の適用)
 被告人の判示第1の1の所為は刑法223条3項,1項に,判示第1の2の所為は同項にそれぞれ該当するが,これらを包括して一罪として処断することとし,被告人の判示第2の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号に該当するところ,判示第2の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
 被告人は,自己の性欲を満たすため,被害女児の性行為を撮影した動画を入手したと装い,当時16歳の被害女児に対し,被告人との性交に応じること,被害女児が口淫する様子を動画撮影させること,被害女児に乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを撮影した画像データを送信することなどを要求し,これらの要求に応じなければ,被害女児の性行為を撮影した動画を拡散させるなどのメッセージを伝えて脅迫し,上記画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させて保存し,児童ポルノを製造したものである。動機が自己中心的で身勝手極まりなく,態様も執拗で卑劣なものである。被害女児は本件被害に遭い,多大な恐怖心や羞恥心を抱くなどの精神的苦痛を被っており,将来にわたる精神的な悪影響も懸念されるところであって,被害結果を軽視することはできない。被害女児は,被告人側からの示談の申入れを拒絶し,被告人を厳重に処罰するよう求めているが,上記のような被害結果等に照らすと,その心情も十分に理解できるところである。そうすると,被告人の刑事責任については決して軽く見ることができない。
 もっとも,これまで前科がなく,21歳と若年の被告人が,素直に事実関係を認めて反省の態度と更生の意欲を示し,精神科クリニックに通院するなどして再犯防止に努めていること,被告人と同居している母親が,当公判廷に出廷し,被告人の監督を誓約したこと,本件が発覚したことで,自業自得とはいえ,被告人の名前等が広く報道され,消防士の職を懲戒免職されるなど,既に大きな社会的制裁を受けていることなど,被告人のために酌むべき事情もある。
 そこで,以上の事情を総合考慮した結果,被告人を主文のとおりの懲役刑に処してその刑事責任を明確にした上で,今回に限りその刑の執行を猶予して,被告人に社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
(求刑 懲役2年)
  平成31年2月22日
    千葉地方裁判所刑事第3部
           裁判官  高橋正幸

児童ポルノ等の提供を求める行為(福岡県青少年健全育成条例)により、千葉県の男性を検挙した事例

 児童の提供目的製造・提供罪の教唆みたいな感じになりますが、注文販売というのは予想される関与者であるのに国法では放任されている行為です。
 千葉県では規制されてないという点も強調してください。
 福岡県条例を千葉の人に押しつけるというのは無理でしょう。公布もされないのに。電話による卑わい行為の高裁判例がありますが、ネットにはそぐわない。
 結局、画像が送られている場合は、製造罪が成立して、要求罪は成立しない。

児童ポルノ提供を女子高校生に求める 容疑で千葉県の会社員男を書類送検 福岡西署
2019/7/22 12:30
西日本新聞
 福岡西署は22日、県青少年健全育成条例違反(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)の疑いで、千葉県船橋市に住む会社員の男(51)を書類送検した。送検容疑は、2月12日未明、自宅からスマートフォンを使って福岡県篠栗町在住の女子高校生(16)に「こちらは、関東だから会うというよりは振り込みとかの支援を考えています」「そちらの写メ売ってもらう感じです」などとメッセージを送信し、児童ポルノの提供を求めた疑い

裸の「自画撮り」女子高生に要求 容疑の男 書類送検
2019.07.22 読売新聞
 女子高生に「自画撮り」した裸の画像を送るように要求したとして、福岡県警西署は22日、千葉県船橋市の会社員の男(51)を福岡県青少年健全育成条例違反容疑で福岡地検書類送検した。2月施行の改正条例では、中高生らにわいせつな画像の提供を求める行為を禁じる条項が新設されたが、適用は初めて。
 発表では、男は2月12日、ツイッターで知り合った福岡県内の女子高生(16)が18歳未満と知りながら、無料通話アプリで、「胸のアップを送って」「写メ(写真付きメール)売ってもらう感じです」などとメッセージを送り、児童ポルノの提供を求めた疑い。「間違いない」と容疑を認めている。
 男は裸の画像など十数点を受け取り、女子高生が指定する口座に4000円を振り込んだ。女子高生がツイッター上で「パパ活」を募集しているのを警察がサイバーパトロールで見つけて補導し、発覚した。
読売新聞社

福岡県青少年健全育成条例の手引き平成31年3月
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)第31条の2 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。次号において同じ。)の提供を行うように求めること。
(2) 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
【要旨】本条は、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を当該青少年に不当に求める行為を禁止した規定である。
【解説】1 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等をいう。
したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
また、どのような表現が「児童ポルノ」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童ポルノ禁止法第2条第3項に該当する児童ポルノが提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要である。
2 「提供を行うように求める」とは、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
3 「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者が、当該青少年による拒否の意思が示され、それを認識しているにもかかわらずということをいう。
したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが児童ポルノ等の提供を行うように求めた者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
4 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。
「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しない。
なお、「威力」との差異に関し、公職選挙法第225条第1号の「威力」とは「人の意思を制圧するに足りる勢力」、同3号の「威迫」とは「人の不安を抱かせるに足りる行為」をいい、両者の違いは、人の意思を制圧するに足りる程度の行為であるかどうかにあるものと解すべき」であると判示している(昭和42年2月4日最高裁第2小法廷判決)。
5 「欺き」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることをいう。
真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
6 「困惑させ」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって自由な判断を制限することをいう。
相手方に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
7 「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
【罰則】
○ 30万円以下の罰金又は科料(第38条第4項)
【関係法令】○公職選挙法第225条○児童ポルノ禁止法第2条、第7条
【参考判例】昭和61年12月2日高松高裁判決(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例事件)本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA方に電話をして、同人の妻のBに対し「あんたが好きです。会ってほしい。」などと反覆して申向け、もって同女に著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38-84-年12月23日香川県条例50号) 10条、11条1項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であって、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接的かつ現実的に香川県に関わりを持ったものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。
なお、本件条例12条は本件’ 条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者のを直ちに限定することは相当でない。
た、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条存在、内容を了知することが不可能若しくは著しく困難なことから、行為に際し違の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性のは必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性識に欠くる所はなかったものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない。

福岡県
平成30年2月23日
自画撮りに関する青少年健全育成条例改正の検討事項について

10年齢の知情性について
本条例は、第38条第7項で、条例上の特定の罰則規定については、年齢の知情性がなくとも処罰可能とする規定を置いているが、本禁止規定は、第38条第7項の規定の対象外とすべきと考える。つまり、要求を行う者に、相手が青少年だという認識が無かったと認められる場合は、処罰できないこととなる。本規定は、「当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること」を禁止するものであり、相手方が青少年であると認識できるような事実が全くない場合には適用できない。~これは、「自画撮り被害」が相手を直接確認できないインターネット上のやりとりの中で行われることが想定され、やりとりの相手が青少年だと認識していない者にまで本規定を適用することは過剰な規制と考えられるためである。>

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年香川県条例第50号)違反被告事件
高松高等裁判所判決/昭和61年(う)第183号
昭和61年12月2日

【掲載誌】  高等裁判所刑事判例集39巻4号507頁
       高等裁判所刑事裁判速報集昭和61年296頁
       判例タイムズ631号244頁
【評釈論文】 警察学論集40巻7号145頁
       月刊法学教室81号104頁

       主   文

 原判決を破棄する。
 被告人を罰金一万円に処する。
 右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

       理   由

 本件控訴の趣意は、高松高等検察庁検察官大井恭二提出にかかる徳島池田区検察庁検察官松田達生作成名義の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人植木修一作成名義の答弁書に記載のとおりであるから、ここにこれらを引用する。
 検察官の所論は要するに、原判決は、被告人の本件所為につき香川県の条例を適用し処罰することはできないとして、被告人は無罪としたが、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈、適用の誤りがあるというものである。
 よつて検討するに、記録によれば、本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にある方に電話をして、同人の妻の子に対し「あんたが好きです。会つてほしい。」などと反覆して申向け、もつて同女に著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和三八年一二月二三日香川県条例五〇号)一〇条、一一条一項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であつて、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接的かつ現実的に香川県に関わりを持つたものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。なお、本件条例一二条は本件条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意を示しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者の範囲を直ちに限定することは相当でない。
 また、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条例の存在、内容を了知することが不可能若しくは著しく困難なことから、行為に際し違法性の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性の認識は必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性の認識に欠くる所はなかつたものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない。
 そうすると、本件につき本件条例が適用されないとした原判決には法令の適用の誤りがあり、これが判決に影響を及ほすことは明らかである。論旨は理由がある。
 よつて刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書を適用して当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は、正当な理由がないのに、昭和五九年二月ころから昭和六一年一月一七日までの間に数回にわたり、徳島県三好郡三加茂町加茂一、四三九番地の自宅から香川県仲多度郡多度津町沖ノ町一番一七号所在の長本英敏方に電話をかけ、同人の妻の長本勢津子(当初四三歳)に対し、「あんたが好きです。会つてほしい。」などと反覆して申向け、もつて同人に対し著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたものである。
(証拠の標目)(省略)
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和三八年一二月二三日香川県条例五〇号)一〇条に違反し、同一一条一項に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その所定金額の範囲内で被告人を罰金一万円に処し、右罰金を完納することができないときは刑法一八条により金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項本文を適用してその全部を被告人に負担させることとする。
 よつて主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 雑賀飛龍 裁判官 金子 與 裁判官 溝淵 勝)

吉田利広「いわゆる「投稿サイト」の管理者らについてわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の共謀共同正犯の成立を認めた事例(平成30年9月11日大阪高等裁判所判決(弁護人上告中) ・裁判所ウェブサイト登載)研修853号

 吉田検事が注5で挙げた文献で紹介されている判例は、全部弁護人奥村の事件です。
 奥村事件では、
  東京高裁H16.6.23は管理者の単独正犯説(共謀否定)
  東京高裁H30.2.6は東京高裁H16.6.23に従い管理者の単独正犯説(共謀否定)→上告中(第一小法廷)
となっていて、東京高裁H16.6.23に対する「被告人が直接児童ポルノの蔵置を他人に働きかけたのであればともかく,そのような直接的行為を認めることができない事案においては,児童ポルノ蔵置後の不作為を問題とすることが不可欠であり,他人により蔵置された児童ポルノを削除等する保障人的地位・作為義務をプロパイダに認めた理論的根拠が示されていないなどという批判がされている(山口・前掲「プロバイダの刑事責任」115頁)」という批判を、第一小法廷山口厚判事自身がどう処理するかが見物です。

第1 はじめに
インターネット上のウェブサイトで画像等の投稿を受け付け,不特定多数の者に閲覧させる, いわゆる「投稿サイト」が多数開設され, その中には,投稿されたわいせつ画像を有料会員に閲覧させることにより利益を得ているものもあり, 近時, このようなサイトを管理.運営する者の刑事責任が問題となっている○
本判決は,投稿サイトを管理運営する法人の実質的相談役等である被告人2名について, わいせつ動画の投稿者との共謀によるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成立を認めたものであり,事例判断ではあるものの,実務上参考となると思われることから,紹介する次第である。
なお,本判決には, わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成否のほか,公然わいせつ罪の成否及び証拠採用に関する訴訟手続の法令違反(注1)等の論点も含まれているが,本稿では,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の成否に関する部分に限って紹介する。
また,本稿中,意見にわたる部分は, もとより筆者の私見である。
・・・・・・・・・
第5おわりに
プロバイダの刑事責任については, 「違法コンテンツをプロバイダが自ら積極的に利用するために, たとえばアップロードを事実上,推奨するような状況の下で,蔵置された違法コンテンツをあえて放置したような場合において, きわめて例外的に」刑事責任が認められるとする見解が有力に主張されているが,作為犯なのか不作為犯なのか,正犯なのか共犯なのか,共犯として共同正犯なのか常助犯なのかなどという点が問題とされている(注5)。
そのような中で,投稿サイトを管理・運営する被告人らについて,投稿者(実行犯) との黙示の意思連絡によるわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の共謀共同正犯の成立を認めた本判決は注目すべきものであるが,同種事案について,今後の裁判所の判断を注視していく必要がある。
(注5)大コンメンタール刑法第三版9巻52頁参照。
また,参考文献として,例えば,山口厚「プロバイダの刑事責任」(情報ネットワーク法学会他編「インターネット上の誹誇中傷と責任」111頁以下),佐伯仁志「プロバイダの刑事責任」(堀部政男監修「プロバイダ責任制限法実務と理論」161頁以下)等がある。

コンメンタール刑法第三版9巻52頁
⑤のプロパイダの刑事責任については,正犯なのか共犯なのか,正犯だとして作為犯なのか不作為犯なのか,不作為犯だとして作為義務の根拠は何かなどという点が問題とされており, ["違法コンテンツをプロパイダが自ら積極的に利用するために,たとえばアップロードを事実上奨励するような状況の下で,蔵置された違法コンテンツをあえて放置したような場合において,きわめて例外的に」刑事責任が認められるとする見解が有力に主張されている(山口厚「プパイダの刑事責任」情報ネットワーク法学会・テレコムサービス協会編・インターネット上の誹誇中傷と責任124).
なお, ドイツではプロパイダの不作為犯としての刑法上の責任を認める見解が主張されており(只木誠「インタネットと名誉段煩」現刑8巻47頁),プロパイダに削除要求がなされたが,それをあえて放置した場合には,積極的な陳列と同視し得ることを理由に,わいせっ物公然陳列罪の成立を認める余地があるとするなど,上記有力説よりも広い範囲でプロバイダ、の刑事責任を認める余地があるとする学説もある(伊藤ら・各論〔島田421頁,只木・前掲49良).
横浜地裁、平成15年12月15日判決(奥村徹「プロハイタの刑事責任判例の考察」前記インターネット上の誹訪中傷と責任149良〕は,被告人は,サーパコンビュータの記憶装置であるディスクアレイにiP掲示板」と称するインターネット!-のホームページを開設し管理運営するものであるが,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が送信した児童ポルノである画像合計22画像分を記憶・蔵置させたままこれらを削除せず,もって,児童ポルノを公然と陳列したという公訴事実について, ["児童ポルノ公然陳列罪において不作為の態様による犯罪の成立を否定すべき理由はな」いとして不作為による児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めた.
 これに対する控訴審判決(東京高判平16・6・23. 奥村・前掲151頁以下ーなお,本判決については被告人が上告申立をしたが,最決平19・3・29公刊物本投載は,特段の理由を付することなく棄却している)は, I被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本件の犯罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信さぜて本件ディスグアレイに記憶・蔵置させながら, これを放十置して公然陳列したことである.そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーパーコンピュータによるみ;件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる.したがって,この陳列行為が作為犯であることも明らかである.。」「確かに,被告人が,本件児童ポノレノを削除するなど陳列行為を終了さぜる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解される
が,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される.Jなどと判示した上,作為義務の内容等が明示されていないとの控訴趣意に対しては, 「被告人の本件犯罪行為の主要なものは作為犯である上,所論のいう不作為についても,原判決は,被告人は,本件陳列行為の開始当初から,被告人に児童ポルノ画像の未必的な認識があったとしていて,この点を明確にしている.また,本件陳列の対象となっているのは,児童ポルノであって,犯罪行為を構成するものとしてすみやかに削除されるべきものであるから,削除義務の内容,根拠等も原判決の認定事実自体から明らかにされていると解することができる」などと判示した.
上記東京高裁判例に対しては, 被告人が直接児童ポルノの蔵置を他人に働きかけたのであればともかく,そのような直接的行為を認めることができない事案においては,児童ポルノ蔵置後の不作為を問題とすることが不可欠であり,他人により蔵置された児童ポルノを削除等する保障人的地位・作為義務をプロパイダに認めた理論的根拠が示されていないなどという批判がされている(山口・前掲「プロバイダの刑事責任」115頁).未だ判例・学説の蓄積が少ない論点であり,違法コンテンツに対する管理処分権限の有無や管理者の目的の有無等も検討した上,事案ごとに犯罪の成否を判断すべきであろう(本稿脱稿後,佐伯仁志「プロバイダの刑事責任」 プロバイダ責任制限法実務と理論施行10年の軌跡と展望別冊NBL141号161頁に接した).