2016年7月30日の児童淫行罪が2023年8月19日に逮捕される理由

2016年7月30日の児童淫行罪が2023年8月19日に逮捕される理由

 児童淫行罪の公訴時効は、行為当時は7年で、いまは、(18-児童の年齢)+12年に延長されている。

改正前刑事訴訟法第二五〇条[公訴時効の期間]
②時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
四 長期十五年未満の拘禁刑に当たる罪については七年
五 長期十年未満の拘禁刑に当たる罪については五年
↓↓
改正後の刑事訴訟法第二五〇条[公訴時効の期間]
③前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
三 刑法第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る。) 十二年
④前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。〔本条改正の施行は、令四法六七施行日〕
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(※令和5年5月30日衆議院において修正議決)
可決成立日 令和5年6月16日
公布日    令和5年6月23日(法律第66号)
官報掲載日 令和5年6月23日(号外第132号)
施行日    公布の日から起算して20日を経過した日。


 時効延長規定が適用されるのは、改正法の公布(r5.6.16=2023.6.16)時点で公訴時効(7年)に係っていない事件(刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律5条1項2項)。
 公訴時効の延長だけは、改正法附則2条1号により「公布の日」から施行されている。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律
第二条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。第二百五十条に次の二項を加える。
 前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる罪についての時効は、当該各号に定める期間を経過することによつて完成する。
三 刑法第百七十六条若しくは第百七十九条第一項の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は児童福祉法第六十条第一項の罪(自己を相手方として淫行をさせる行為に係るものに限る。) 十二年
 前二項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる罪について、その被害者が犯罪行為が終わつた時に十八歳未満である場合における時効は、当該各号に定める期間に当該犯罪行為が終わつた時から当該被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加算した期間を経過することによつて完成する。〔本条改正の施行は、令四法六七施行日〕


(公訴時効に関する経過措置)
第五条 
1第二条改正後刑事訴訟法第二百五十条第三項及び第四項の規定は、第二条の規定の施行の際既にその公訴の時効が完成している罪については、適用しない。
2 第二条改正後刑事訴訟法(施行日以後においては新刑事訴訟法)第二百五十条第三項及び第四項の規定は、刑法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百五十六号)附則第三条第二項の規定にかかわらず、第二条の規定の施行の際その公訴の時効が完成していない罪についても、適用する。
附 則 (令和五年六月二三日法律第六六号)
 (施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 一 第二条の規定並びに附則第四条第一項及び第五条の規定 公布の日

 ということで、2016年7月30日(平成28年)の事件は、2023年6月16日時点では7年経過していないので、時効は、(18-児童の年齢)+12年に延長されていることになる。

 児童淫行罪というのは、師弟・親族・契約関係に基く影響関係を利用する行為態様なので、児童淫行罪の成立要件を満たすかどうかがわからない。




https://news.yahoo.co.jp/articles/23e8e16b9624d67ea7f25e9acc718e2a465b729e
2016年当時18歳未満だった女性にビジネスホテルで淫行させた疑い 42歳の男を逮捕 男は容疑を否認 今年7月に女性からの告訴受け警察が捜査
8/19(火) 21:35配信
当時18歳未満だった女性に対し淫行させたとして、19日、男が逮捕されました。
児童福祉法違反の疑いで逮捕されたのは、島根県邑南町のパート従業員の男(42)です。
川本警察署によりますと、男は2016年7月30日午後8時ころから午後9時ころまでの間、岡山県倉敷市のビジネスホテルの客室内で、当時18歳未満だった女性(島根県西部居住・現在20代)に淫行させた疑いです。
今年7月24日、女性から告訴状が提出され、警察が所要の捜査を行い、容疑が固まったとして、8月19日午後6時19分、男を逮捕しました。
調べに対し男は「性行為をしていない」と、容疑を否認しているということです。
警察が引き続き事件の詳しい経緯など調べています。

強制わいせつ罪・不同意わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係

強制わいせつ罪・不同意わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係
 送信型が観念的競合とされるので、観念的競合説が増えていくものと思われます。
 量刑に影響はありませんが、再逮捕の可否、訴因変更の公訴事実の同一性とか、二重起訴の判断に影響があると思われます。

観念的競合 対面 仙台高裁 H21.3.3
併合罪 対面 広島高裁 H22.1.26
観念的競合 対面 仙台高裁 H22.3.4
観念的競合 対面 高松高裁 H22.9.7
併合罪 対面 東京高裁 H22.12.7
観念的競合 対面 広島高裁 H23.5.26
観念的競合 対面 広島高裁 H23.12.21
併合罪 対面 東京高裁 H24.11.1
観念的競合 対面 阪高 H25.6.21
併合罪 対面 高松高裁 H26.6.3
併合罪 対面 福岡高裁 H26.10.15
併合罪 対面 阪高 H28.10.26
併合罪 対面 阪高 H28.10.27
併合罪 対面 東京高裁 H30.1.30
観念的競合 対面 東京高裁 H30.1.30
併合罪 対面 仙台高裁 H30.2.8
観念的競合 対面 高松高裁 H30.6.7
併合罪 対面 東京高裁 H30.7.25
併合罪 対面 仙台高裁 R1.8.20
観念的競合 送信型 阪高 R3.7.14
観念的競合 送信型 阪高 R4.1.20
観念的競合 送信型 札幌高裁 R5.1.19
観念的競合 送信型 高松高裁 R7.2.13
観念的競合 対面 東京高裁 R7.6.18
観念的競合 送信型 東京高裁 R7.7.4

「児童ポルノの画像や動画をネット上で要求する行為は、児童買春・児童ポルノ禁止法(法第7条)違反に該当する可能性があり、違法です。処罰は要求の具体性や状況次第で、7年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される場合があります。」という弁護士ドットコムの回答

児童ポルノの画像や動画をネット上で要求する行為は、児童買春・児童ポルノ禁止法(法第7条)違反に該当する可能性があり、違法です。処罰は要求の具体性や状況次第で、7年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される場合があります。」という弁護士ドットコムの回答

 児童ポルノ法にそんな罪はありません

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
1 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
8第六項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。〔本条改正の施行は、令四法六八施行日〕

https://bbs.bengo4.com/questions/1454996/?_gl=1*tbmjsk*_ga*MjA5MjIyOTA5LjE3MjkyMjM0MzE.*_ga_YDWBQV5G0V*czE3NTUzMTA4MjkkbzgwOSRnMSR0MTc1NTMxMTQ0NSRqMzMkbDAkaDA

須賀 翔紀 弁護士
東京
港区
犯罪・刑事事件
児童ポルノの画像や動画をネット上で要求する行為は、児童買春・児童ポルノ禁止法(法第7条)違反に該当する可能性があり、違法です。処罰は要求の具体性や状況次第で、7年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される場合があります。

2025年08月16日 10時43分

「着替え中の児童の胸部をひそかに撮影した」というひそかに製造罪の罪となるべき事実(四国の某支部)

「着替え中の児童の胸部をひそかに撮影した」というひそかに製造罪の罪となるべき事実(某支部
 Bの付けている下着の胸部なら、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」ですけど、「Cの胸部」だと、着衣なのかどうかがわからないので、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」じゃないですよね。
 実刑判決なので、弁護人にもチェックしてほしいところです。

罪となるべき事実
正当理由なく
令和7年8月4日 午後7時30分ころ
更衣室においてB(10)及びC(11)がいずれも13歳未満の者と知りながら
ひそかに更衣室内に設置した小型カメラを使用して
同所で着替え中のBの付けている下着の胸部及び Cの胸部を撮影して
その動画データをカメラのマイクロSDに記録させた上
翌日日 午後7時31分ころ 被告人方において
同データをPCの内蔵記録装置に記録して保存して
もって、
13際未満の者を対象としてその性的姿態撮を撮影するとともに
Cについては、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である児童ポルノを製造した
法令適用
ア 性的姿態撮影罪
  性的姿態撮影法2条1項1号イ 4号 附則2条
イ 児童ポルノ製造
   7条5項 2項 2条3項3号
更正決定はマスク

性犯罪の再犯率は21%なのに、市民感覚では48%

性犯罪の再犯率は21%なのに、市民感覚では48%

https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00127.html
令和5年版『犯罪白書』(法務省、2023)の出所受刑者の5年以内再入率

令和5年版犯罪白書
5-3-8図 出所受刑者の出所事由別5年以内再入率(罪名別)より
5年以内再入率
1位 窃盗 41.60%
2位 覚醒剤 40.90%
3位 傷害・暴行 35.20%
4位 詐欺 22.00%
5位 性犯罪 21.00%
6位 強盗 15.60%
7位 放火 13.70%
8位 殺人 8.40%
全体 34.80%

出所受刑者の再犯率と一般市民の認識に乖離
https://www.searchmytrial.com/discrepancy-recidivism-released-inmates-public-perception/
調査では、参加者に7種の犯罪(殺人、強盗、放火、覚せい剤取締法違反〔薬物犯罪〕、強制性交・強制わいせつ致傷〔性犯罪〕、傷害・暴行〔暴力犯罪〕、窃盗〔財産犯罪〕)および犯罪全般の再犯率を推定させた。その際、犯罪白書の再入率の定義と同一になるよう平易に書き下し、公式統計の定義に則り、再犯は必ずしも同一罪名に限定されるものではなく、また、未遂事案も含まれることを明示して回答を求めた。推定再犯率は性別・年齢層別に算出され、令和5年版『犯罪白書』(法務省、2023)の出所受刑者の5年以内再入率の値と比較された。推定値は平均と95%信頼区間(CI)で示され、CIに公式値が含まれない場合は「乖離している」と判断した。

 最終的に381人(平均年齢44.85±13.83歳)から有効な回答を得た。性別ごとの調査結果では、男女ともに7種類の犯罪すべてにおいて参加者の推定再犯率が公式統計を上回った。特に性犯罪、強盗、薬物犯罪で乖離が顕著で、それぞれ27.35、23.11、18.54パーセントポイントの差が認められた(全体集団との比較)。年齢層別に見ると、40代・50代の推定再犯率は全般的に公式統計を上回った。特に50代における性犯罪の推定再犯率が54.62%と高く、公式統計の21.0%と比べて33.64パーセントポイントの大きな乖離が認められた

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0306624X251348606
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/0306624X251348606

送信させる不同意わいせつ罪(宇和島支部r7.5.13)

送信させる不同意わいせつ罪(宇和島支部r7.5.13)
わいせつ行為は「電話で、Aに対し、同人が陰茎を露出し、自慰行為をする状況を自ら動画撮影し、その動画データを被告人が使用する携帯電話機に送信するよう要求し、同日午後2時15分頃、■のA方において、同人に、前記要求に応じて、その陰茎を露出して自慰行為をする姿態をとらせ、これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で動画撮影させ、」で
 性的姿態撮影罪は「これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で動画撮影させ、」で着手&既遂
 ピンポイントしか重ならないが観念的競合。

《書 誌》
提供 TKC
【文献番号】 25622966
【文献種別】 判決/松山地方裁判所宇和島支部(第一審)令和 7年 5月13日
【事件名】 不同意性交等、不同意わいせつ、性的姿態等撮影被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 能宗美和 大山洸来 森本和真
       理   由
第4 A(当時23歳)に対し、同人が知的障害を有していることにより同意しない意思を全うすることが困難な状態にあることに乗じ、令和6年10月6日午後1時41分頃から同日午後2時12分頃までの間に、愛媛県南宇和郡α町δ××××番地×被告人方において、電話で、Aに対し、同人が陰茎を露出し、自慰行為をする状況を自ら動画撮影し、その動画データを被告人が使用する携帯電話機に送信するよう要求し、同日午後2時15分頃、■のA方において、同人に、前記要求に応じて、その陰茎を露出して自慰行為をする姿態をとらせ、これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で動画撮影させ、同日午後2時18分頃、その動画データ1点を同携帯電話機からアプリケーションソフト「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、もって同意しない意思を全うすることが困難な状態にあることに乗じて、わいせつな行為をするとともに対象性的姿態等を撮影した
ものである。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は刑法177条1項、176条1項2号、5号、6号(令和5年法律第66号附則3条前段により「有期拘禁刑」を「有期懲役」とする。)に、判示第2及び第3の各所為はいずれも包括して刑法177条1項、176条1項1号、2号(令和5年法律第66号附則3条前段により「有期拘禁刑」を「有期懲役」とする。)に、判示第4の所為のうち不同意わいせつの行為については刑法176条1項2号(令和5年法律第66号附則3条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)に、性的姿態等を撮影した行為については性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条1項2号、1号イ、ロ(同法附則2条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)にそれぞれ該当するが、
判示第4の各所為は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により1罪として重い不同意わいせつ罪の刑で処断することとし、
前記の前科があるので同法56条1項、57条により判示の各罪の刑についてそれぞれ再犯の加重(ただし判示第1ないし第3の各罪の刑については同法14条2項の制限内で)をし、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に同法14条2項の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役8年に処し、
同法21条を適用して未決勾留日数中50日をその刑に算入することとし、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
令和7年5月13日
松山地方裁判所宇和島支部
裁判長裁判官 能宗美和 裁判官 大山洸来
裁判官森本和真は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 能宗美和

盗撮画像のダウンロードについて「第3条第1項 何人も、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで、写真機等を用いて記録してはならない。」「第4条第1項何人も、正当な理由がなく、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで記録した電磁的記録等であって、当該承諾を得ずに取得されたものと知っているものを、その情を知って、取得してはならない。」という架空の条文を挙げるドットコムの弁護士

盗撮画像のダウンロードについて「第3条第1項 何人も、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで、写真機等を用いて記録してはならない。」「第4条第1項何人も、正当な理由がなく、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで記録した電磁的記録等であって、当該承諾を得ずに取得されたものと知っているものを、その情を知って、取得してはならない。」という条文を挙げるドットコムの弁護士

 記録罪を挙げるも間違っていて、ダウンロードの場合は、4条の目的保管罪が検討されて、所定の目的があるときだけ処罰されるんだけど、
 弁護士が挙げる法文がウソじゃん

ウソ法文
第3条第1項
何人も、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで、写真機等を用いて記録してはならない。
第4条第1項
何人も、正当な理由がなく、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで記録した電磁的記録等であって、当該承諾を得ずに取得されたものと知っているものを、その情を知って、取得してはならない。

https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067/20230713_000000000000000
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的影像記録提供等)
第三条 性的影像記録(前条第一項各号に掲げる行為若しくは第六条第一項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第一項第四号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第五条第一項第四号に掲げる行為により同項第一号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2 性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(性的影像記録保管)
第四条 前条の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。

https://www.bengo4.com/lawyer/mypage/bbs/1450511/

鈴木 祥平弁護士
ベストアンサー質問者がありがとう
【回答】
あなたの行為(インターネット掲示板からの盗撮画像のダウンロード)について、「性的姿態等撮影等処罰法」(令和6年7月1日施行)との関係が問題となります。


まず、「記録罪」(第3条第1項)は次のとおりです。


第3条第1項
何人も、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで、写真機等を用いて記録してはならない。


これは「自ら撮影した者」を処罰する規定ですので、あなたが自分で撮影していない限りは該当しません。


次に、「取得罪」(第4条第1項)の条文は以下のとおりです。

第4条第1項
何人も、正当な理由がなく、性的姿態である他人の姿態を、その承諾を得ないで記録した電磁的記録等であって、当該承諾を得ずに取得されたものと知っているものを、その情を知って、取得してはならない。


あなたがダウンロードした画像が「盗撮によって作成されたもの」であると認識していた場合には、「取得してはならない」に該当しうる行為となります。


ただし、この罪で実際に処罰されるためには以下の3点が要件となります:

1. 画像が「性的姿態」を明らかに含むこと(太もも露出のみではグレー)

2. 盗撮画像だと知っていたこと

3. 正当な理由なく取得したこと(報道目的等ではない)


さらに、処罰には「常習性」や「保存・使用目的」も重視される傾向にあります。今回、あなたは「すぐ削除した」と述べており、継続所持していない点や画像の露出程度からみても、現時点で捜査・処罰の対象となる可能性は非常に低いと考えられます。


ただし、こうした画像の取得行為は社会的非難を免れず、将来的な法解釈や運用の変化もあり得ますので、今後は一切関与しないよう強く注意すべきです。

2025年07月19日 17時05分

追記 2025年7月23日
こちらの投稿は削除されました。



追記 2025/08/01
同じ弁護士が、今度は架空の児童ポルノ法の法文を挙げています。

https://bbs.bengo4.com/questions/1452492/?_gl=1%2A30s1ho%2A_ga%2AMjA5MjIyOTA5LjE3MjkyMjM0MzE.%2A_ga_YDWBQV5G0V%2AczE3NTM5NDg5NzQkbzc2OCRnMSR0MTc1Mzk1MzgzMSRqMjgkbDAkaDA&fbclid=IwY2xjawL5M35leHRuA2FlbQIxMABicmlkETFMelR0bHlKVHBNQUZ3UVhhAR4I8VqUZy_jUgiMEucj76nqI2xRpTXsEv0mFaOQMnTZsk61p0iFYB1vdTtUng_aem_NGSoHyRbSbm-7RsY_lIpAg


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鈴木 祥平 弁護士
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犯罪・刑事事件
【質問1】赤ちゃんの沐浴シーン(性器が映っている)を「みてね」等の家族用アプリにアップする行為は、児童ポルノに該当するか?

結論として、児童ポルノ禁止法上の「児童ポルノ」には通常該当しません。同法2条3項は、18歳未満の児童の性器等が露骨に写されており、かつ「性的好奇心を満たす目的で撮影されたもの」を児童ポルノと定義しています。

あなたのケースのように、家庭内での育児の一環として自然な流れで撮影され、性的意図が全くないことが明白な場合、それが性的目的で制作されたものでない限り、児童ポルノに該当するとは考えにくいとされます。実務上も、育児記録や家族アルバムの範囲であれば、刑事責任を問われることは通常ありません。

ただし、仮に当該画像・動画がネット上に流出し、第三者によって悪用された場合には、意図に反して問題化する可能性があります。そのため、厳重なアクセス制限とセキュリティのあるサービスを使うことが極めて重要です。

【質問2】夫に共有する場合の注意点は?

夫婦間での共有は、児童ポルノ禁止法の処罰対象(所持・提供・公然陳列等)には該当しません。家族のプライベートな範囲であり、共有が性的目的でない限り違法性はないと解されます。

ただし、念のため以下の点に留意すべきです。
1. 使用目的があくまで私的な育児記録であることが明確であること
2. 他人に誤送信・拡散しないよう、クラウドサービスのアクセス権限を限定すること
3. 夫婦以外の第三者(例:祖父母、親戚)への共有は慎重に検討すること

2025年07月31日 18時19分

こういう法文はありません

児童ポルノ禁止法上の「児童ポルノ」には通常該当しません。同法2条3項は、18歳未満の児童の性器等が露骨に写されており、かつ「性的好奇心を満たす目的で撮影されたもの」を児童ポルノと定義しています。

 本当の法文では、児童ポルノの定義には、「性的好奇心を満たす目的で撮影されたもの」というのはありません。架空の法文を挙げています。

 さらに「「性欲を興奮させ又は刺激するもの」」は、一般人基準で判断されて、性器が描写されていると、通常は「性欲を興奮させ又は刺激するもの」として2条3項3号の児童ポルノに該当します。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第二条(定義)
 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

二重起訴が疑われる事例(浜松支部r7.5.9)

浜松支部r7.5.9は確定しているらしいが、TKCから公開されている判決をみても、
令和6年2月20日付起訴状第2で児童Aに対するr5.6.19のわいせつ行為が先に起訴されて、
令和6年3月28日付起訴状で児童Aに対するr5.6.19の児童ポルノ製造行為(撮影)が後に起訴されているようだが、
きょうび、強制わいせつ罪(176条後段)・準強制わいせつ罪と、児童ポルノ製造罪は観念的競合なので(東京高裁r7.7.4)、後の起訴は二重起訴になっている恐れがある。

刑訴法第三三八条[公訴棄却の判決]
 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
三 公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。

 絶対的控訴理由じゃないか。

第三七八条[絶対的控訴理由②]
 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
二 不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。
三 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。

提供 TKC
【文献番号】 25622964
【文献種別】 判決/静岡地方裁判所浜松支部(第一審)
【裁判年月日】 令和 7年 5月 9日
【事件名】 強制わいせつ、準強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 來司直美
【全文容量】 約21Kバイト(A4印刷:約14枚)
       理   由
以下における被害者及び児童ポルノの撮影対象児童等の呼称は別紙のとおりである。
(罪となるべき事実)
 被告人は、静岡県掛川市α×番地の×b医療センター小児科の医師であるところ、
第1【令和5年9月6日付起訴状、令和6年2月20日付起訴状第2】
 同センターの患者である別紙記載のAに対し、診療行為と装ってわいせつな行為をしようと考え
1 別表1記載のとおり、令和2年7月8日から令和4年5月16日までの間、22回にわたり、同センター2階小児科診察室において、「被害児童の年齢(当時)」欄記載のとおり、Aが13歳未満のものであることを知りながら、同人が診察及び治療であると誤信していることに乗じ、同人に対し、「わいせつ行為の態様」欄記載のとおり、胸部、陰部、あるいは陰部付近を露出させてその胸部を手で直接揉むなどし、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした
2 別表2記載のとおり、令和4年6月6日から令和5年6月19日までの間、13回にわたり、同センター2階小児科診察室において、同人が診察及び治療であると誤信して抗拒不能であることに乗じ、同人に対し、「わいせつ行為の態様」欄記載のとおり、胸部・陰部を露出させてその胸部を手で直接揉むなどし、もって、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
第2【令和5年9月26日付起訴状、令和6年1月19日付起訴状】
 同センターの患者である別紙記載のBに対し、診療行為と装ってわいせつな行為をしようと考え
1 平成31年3月22日午後5時59分頃から同日午後6時5分頃までの間、同センター2階小児科診察室において、同人(当時14歳)が診察及び治療であると誤信して抗拒不能であることに乗じ、同人をしてその着衣を脱がせて胸部を露出させ、さらに、同人に対し、同診察室ベッドに座らせてその両胸を手で直接触るなどし、もって、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
2 令和3年3月8日午後5時53分頃から同日午後6時9分頃までの間、同センター2階小児科診察室において、同人(当時16歳)が診察及び治療であると誤信して抗拒不能であることに乗じ、同人をしてその着衣を脱がせて全裸にさせて胸部等を露出させ、さらに、同人に対し、同診察室ベッドに座らせてその両胸を手で直接触るなどし、もって、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
第3【令和5年10月18日付起訴状、令和6年2月20日付起訴状第1】
 同センターの患者である別紙記載のCに対し、診療行為と装ってわいせつな行為をしようと考え
1 別表3記載のとおり、令和元年10月10日から令和3年7月30日までの間、9回にわたり、同センター2階小児科診察室において、同人が診察及び治療であると誤信して抗拒不能であることに乗じ、同人に対し、「わいせつ行為の態様」欄記載のとおり、胸部・陰部付近を露出させて、その胸部を手で直接揉むなどし、もって、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
2 令和4年7月28日午後6時49分頃から同日午後7時14分頃までの間、同センター2階小児科診察室において、同人(当時17歳)が診察及び治療であると誤信して抗拒不能であることに乗じ、同人をしてその着衣を脱がせて胸部を露出させるなどし、さらに、同人に対し、同診察室ベッドに座らせてその両胸を手で直接何度も揉むなどし、もって、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
第4【令和5年11月15日付起訴状】
 同センターの患者である別紙記載のDに対し、診療行為と装ってわいせつな行為をしようと考え、別表4記載のとおり、平成29年12月27日から令和4年12月16日までの間、5回にわたり、同センター2階小児科診察室において、同人が診察及び治療であると誤信して抗拒不能であることに乗じ、同人に対し、「わいせつ行為の態様」欄記載のとおり、胸部・陰部等を露出させてこれを手で直接弄ぶなどし、もって、同人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
第5【令和6年3月28日付起訴状】
1 同センターの患者であるAほか5名が、18歳に満たない児童であることを知りながら別表5記載のとおり、令和3年4月21日から令和5年6月19日までの間、39回にわたり、同センター2階小児科診察室において、被告人が同児童らの乳首を手で触る姿態及び同児童らの胸部等を露出させる姿態をとらせ、これを被告人が使用する撮影機能付き携帯電話機で動画撮影した上、その動画データ39点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録して保存し、もって、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
2 自己の性的好奇心を満たす目的で、同年7月29日、同県袋井市β××××番地の××被告人方において、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データ115点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台(令和6年領第634号符号3の1)及びマイクロSDカード1枚(同符号3の2)を所持した
ものである。


(法令の適用)
罰条
判示第1の1の各所為、いずれも令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
判示第1の2、第2の1・2、第3の1・2、第4の各所為 いずれも令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法178条1項、176条前段
判示第5の1の各所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号
判示第5の2の所為 同法7条1項前段、2条3項2号、3号
刑種の選択(判示第5の1、2) いずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第1別表1番号22の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数算入 刑法21条
没収 刑法19条1項2号、2項本文(静岡地方検察庁浜松支部で保管中の携帯電話機1台[令和6年領第634号符号3の1]及びmicroSDカード1枚[同符号3の2]は、判示第5の2の犯行の用に供した物で被告人以外の者に属しない。)
(量刑の理由)
令和7年5月9日
静岡地方裁判所浜松支部刑事部
裁判官 來司直美

罪数処理における「点と線」

罪数処理における「点と線」
「もともと自動車を運転する行為は,その形態が,通常,時間的継続と場所的移動を伴うものであるのに対し,その過程において人身事故を発生させる行為は,運転継続中における一時点一場所における事象であって,前記の自然的観察からするならば,両者は,酒に酔った状態で運転したことが事故を惹起した過失の内容をなすものかどうかにかかわりなく,社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを1個のものとみることはできない。(道路交通法違反、業務上過失致死被告事件最高大判昭和49年5月29日最高裁判所刑事判例集28巻4号114頁)
という言い回しがあって、併合罪だという、
点と線の関係では、併合罪というのが最高裁判例

捜査研究720号 最新判例解説 第3回
 前法務省刑事局付(長野地方裁判所判事補) 菅原 暁

児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせある罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
最高裁判所第一小法廷決定 平21.10.21 判例時報2082.160 判例タイムズ1326.134
 第4検討
 1 近時の判例の動向等
 児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係については,本決定前には,本件の第二審のようにこれを観念的競合の関係と解する裁判例があった一方で(注3),本決定とは若干事案が異なるものの,例えば,「『性交を行いながら撮影機材を持って写真あるいは動画を撮る行為』については,一見すると,上半身で撮影する行為と下半身で淫行する行為が同一人物によるものであることから,1個の行為のように見えるが,社会的評価においては,淫行行為と製造行為という別個の行為であるから,観念的競合になるとはいえないのである。ちなみに,撮影機材を近くに設置して自分が行う淫行行為を撮影することも可能なのであって,淫行行為と撮影行為という二つの行為が同時的にたまたま併存しているにすぎないとみるのが相当である。」(注4)と判示した裁判例のように,両罪は併合罪の関係にあるとするものも存在していたところであり,最近では,併合罪説に立つ高裁判断が多数を占めつつある状況にあったとされる(注5)。
 本決定は,このように裁判例が分かれていた児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について,近時の高裁判断と同様に併合罪と解することを明らかにしたものであり,その点で重要な意義を有する。
 2 観念的競合の判断基準
 ところで,刑法第54条第1項前段は,「1個の行為が2個以上の罪名に触れ(中略)るとき」を観念的競合として,「その最も重い刑により処断する。」と規定しているところ,児童をして淫行させながらその様子をデジタルビデオカメラで撮影する行為は,一見すると1個の行為のようにも思われる。そうすると,本決定がこれを「1個の行為」とは考えなかった理由は何なのか,複数の罪が観念的競合の関係にあるかどうかの判断基準が問題である。
 この点について判示しているのは,本決定が引用する最高裁昭和49年判決である。同判決は,酒酔い運転の事実と,運転中における酒酔いに基づくいわゆる運転中止義務違反を過失とする業務上過失致死の事実について,「法54条1項前段の規定は,1個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して数個の犯罪が競合する場合において,これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるところ,右規定にいう1個の行為とは,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価をうける場合をいうと解すべきである。」と判示した上,酒酔い運転の罪とその運転中に行われた業務上過失致死の罪との罪数関係について,「もともと自動車を運転する行為は,その形態が,通常,時間的継続と場所的移動を伴うものであるのに対し,その過程において人身事故を発生させる行為は,運転継続中における一時点一場所における事象であって,前記の自然的観察からするならば,両者は,酒に酔った状態で運転したことが事故を惹起した過失の内容をなすものかどうかにかかわりなく,社会的見解上別個のものと評価すべきであって,これを1個のものとみることはできない。」として,両罪は併合罪の関係にあると結論づけたものである。
 したがって,上記昭和49年判決によれば,「法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価をうける場合」に当たるかどうかにより,複数の罪が観念的競合の関係にあるかどうかが判断できるはずであるが,本件では,同じ基準によって,第二審が,「児童に淫行させる行為とその姿態を撮影する行為は,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で,行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価されるものである」として,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあると判断する一方,本決定は,これらの行為が「一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえる」として,両罪は併合罪の関係にあると判断している。
 このような結論の違いが生じたのは,本件の第二審が,児童に淫行させる行為と,これをデジタルビデオカメラで撮影する行為につき,本件犯行の際に,実際に行われた行為を前提として,時間的・場所的に重なり合っていることを重視したと思われるのに対し,本決定では,犯行の際の時間的・場所的な重なり合いだけでなく,両行為が通常伴う関係にあるかという点や両行為の性質等をも考慮したために生じたものではないかと考えられる。
 本決定のように,行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等を考慮して観念的競合の関係にあるかどうかを判断するとの考え方は,先に挙げた平成21年東京高裁判決における「淫行行為と撮影行為という二つの行為が同時的にたまたま併存しているにすぎない」との判示や,「児童ポルノ製造罪は,児童ポルノと評価されるものを撮影するなどして写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物として記録化すれば成立するのであって,撮影の対象として児童の淫行が必要というものではなく,したがって,製造行為に児童の淫行が常に随伴するというものではない。」とする他の裁判例(注6)において既に現れていた考え方と,その趣旨を同じくするものではないかと思われる。
 この意味で,本決定は,昭和49年判決の判断基準をあてはめる際の考慮要素を示した事例としての意義を有すると考えられる。
 3 関連する判例
 なお,昭和49年判決の基準をあてはめた重要な判例としては,本決定以前にも,最高裁判所昭和58年9月29日第一小法廷判決(刑集第37巻第7号1110頁) が存在する。同判決は,保税地域,税関空港等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に,外国から船舶又は航空機により覚醒剤を持ち込み,これを携帯していわゆる通関線を突破し又は突破しようとした場合に成立する覚せい剤取締法第13条,第41条の輸入罪と,関税法第111条の無許可輸入罪の罪数について,両罪の既遂時期が異なる(無許可輪入罪の実行の着手時期が,覚せい剤輸入罪の既遂後であると解した場合には,両罪の実行行為は時間的な重なり合いがない)にもかかわらず,これらが観念的競合の関係にあるとしたものである。
 本決定を踏まえて上記昭和58年判決の事案を考えてみても,「1個の行為」かどうかは,時間的・場所的な重なり合いだけでなく,行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等をも考慮して判断されていると評価することができ,本決定も,従来の判例を踏まえ,時間的・場所的な重なり合いがあっても,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあると判断したものと考えられる。
 第5 おわりに
 以上のほか,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪にそれぞれ該当する各行為について,両行為が通常伴う関係にあるかや,両行為の性質等を考慮して,これらが刑法第54条第1項前段の「1個の行為」に当たらないとした本決定の判断は,他の犯罪の罪数関係の判断にも影響を及ぼすものと思われる。
 例えば,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第4条の児童買春罪や,児童に対する強姦や強制わいせつ罪は,自己を相手方として児童に淫行させる罪と同様,その行為態様に児童との性交等を含むものであり,そうした性交等を行いながら,その行為をカメラで撮影するなどして,児童ポルノ製造罪に当たる行為をも行った場合,時間的・場所的に重なり合っているとしても,二つの行為が「通常伴う関係にある」とはいえず,両行為の性質等も異なるものと考えられるから,本決定の考え方によれば,観念的競合ではなく,併合罪と評価されるのではないかと思われる(注7)。
 また,本決定は,前記のとおり,昭和49年判決において示された観念的競合に関する判断基準をあてはめる際の考慮要素を示したものとして,意義を有すると考えられるが,本決定を踏まえても,その判断基準は,個別の事案における罪数関係を一義的に明らかにできるというものとは言い難い。したがって,実務上は,裁判例の集積のない罪数関係の判断は,行為の時間的・場所的な重なり合いのみにとらわれず,行為が通常伴う関係にあるかという点や行為の性質等をも考慮に入れた慎重な検討が必要となるであろう。
(すがわら あきら)

(注1)平成20年法律第71号による改正前の少年法第37条の規定は,同改正により削除されたため,現行法では,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪の関係にかかわらず,その管轄は地方裁判所にある。
 【平成20年法律第71号による改正前の少年法第37条
  (公の提起)
  第37条 次に掲げる成人の事件については,公訴は,家庭裁判所にこれを提起しなければならない。
   一~三 (略)
   四 児童福祉法第60条及び第62条第5号の罪
   五 (略)
  2 前項に掲げる罪とその他の罪が刑法(明治40年法律第45号)第54条第1項に規定する関係にある事件については,前項に掲げる罪の刑をもつて処断すべきときに限り,前項の規定を適用する。
 【平成20年法律第71号附則】
   (施行期日)
  1 この法律は,公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし,第5条の2第1項の改定規定(「この項及び第31条の2において」を削る部分に限る。)及び第9条の2の改正規定は,公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。[平成20年12月15日施行]
   (経過措置)
  2 この法律の施行の日前にこの法律による改正前の少年法第37条第1項の規定により公訴の提起があった成人の刑事事件については,この法律による改正後の少年法,裁判所法(昭和22年法律第59号)及び刑事訴訟法 (昭和23年法律第131号)の規定にかかわらず,なお従前の例による。沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(昭和46年法律第129号)第26条第4項の規定により家庭裁判所が権限を有する成人の刑事事件についても,同様とする。
(注2)第一審判決からは必ずしも明らかではないが,第二審判決によると,弁護人は,第一段階から管轄違いの主張をしていたようである。
(注3)東京高等裁判所平成17年12月26日判決(高等裁判所刑事裁判速報集平成17年247頁)には,「本件児童ポルノ製造罪のなかには,それ自体児童淫行罪に該当すると思われるものがある。(中略) 同罪と当該児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり」と判示した部分があり,児童に淫行させる罪と児童ポルノ製造罪とが観念的競合の関係にあるものと解しているようにも思われる。
(注4)東京高等裁判所平成21年10月14日判決(高等裁判所刑事裁判速報集平成21年136頁)
(注5)判夕1326号134頁掲載の本決定の解説
(注6)東京高等裁判所平成21年 (う) 第744号同21年7月6日判決 (公刊物未登載)
(注7)東京高等裁判所平成19年11月6日判決 (研修716号111頁参照) は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第4条の児童買春罪と,その機会に犯した同法第7条第2項の児童ポルノ製造罪とは併合罪の関係にあると判断しているが,その理由においては「児童買春罪のみを犯し,2項製造罪には及ばないことも,逆に,2項製造罪のみを犯し,児童買春には及ばないことも共に十分可能なのである。(中略) 『買春』と『製造』はむしろ異質な行為であって,行為者の動態としての一個性は認めがたいというべきであろう。」と判示しており,本決定と同様の判断手法を採っていると考えられる。なお,同判決は,児童買春罪と2項製造罪は,その実行行為が部分的にも重なり合う関係にないとした上で,「このことは,児童に対する強姦や強制わいせつの状況を撮影した場合に,強姦行為や強制わいせつ行為が2項製造罪の実行行為の一部とはいえないのと同様である。」とも,併せて判示している。
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16歳未満の者に対する映像送信要求罪が伴う場合の、不同意わいせつ罪(176条3項)の着手時期


高松高裁では、「このような事実関係の下において、本件の被告人のAに対する要求行為は、Aの性的自由の侵害を生じさせる客観的な危険性が認められるものであり、不同意わいせつ罪の実行行為に当たるとみることができる。」ということで、要求行為を不同意わいせつ罪(176条3項)の実行行為としています。

不同意わいせつ、16歳未満の者に対する映像送信要求、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、不同意性交等被告事件
松山地判令和6年9月24日D1-Law.com判例体系〔28330040〕

(罪となるべき事実)
 被告人は、A(当時14歳。氏名は別紙記載のとおり。)が16歳未満の者であり、かつ、自らが前記Aの生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら
第1 正当な理由がないのに、令和5年10月24日午後7時34分頃から同日午後7時41分頃までの間、愛媛県(以下略)被告人方において、前記Aに対し、自己が使用する携帯電話機のアプリケーションソフト「B」のメッセージ機能を利用し、「あそこの見せあいってできます?」「写真ですねー」などと記載したメッセージを送信し、その頃、同人にこれらを閲覧させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信することを要求し、同日午後10時24分頃、同人に、その陰茎を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、同日午後10時27分頃、その画像データ1点を同携帯電話機から前記「B」を利用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、同画像データ1点をC株式会社が管理する日本国内に設置されたサーバコンピュータ内に記録、保存させ、もって16歳未満の者に対し、わいせつな行為をし、13歳以上16歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影する行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。

(法令の適用)
罰条
  判示第1の所為 不同意わいせつの点 刑法176条3項、1項(令和5年法律第66号附則3条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)
  16歳未満の者に対する映像送信要求の点 刑法182条3項2号(令和5年法律第66号附則3条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)
  性的姿態等撮影の点 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号(1号イ)(同法附則2条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項(2条3項3号)
科刑上一罪の処理
  判示第1 刑法54条1項前段、10条(1個の行為が4個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)

高松高裁r7.2.13
第2 訴訟手続の法令違反の主張について
   論旨は、原判示第1の不同意わいせつ罪、性的姿態等撮影罪及び児童ポルノ製造罪と16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、併合罪の関係にあるにもかかわらず、検察官は16歳未満の者に対する映像送信要求罪についても1個の公訴事実として起訴したのであるから、原審裁判所としては訴因の特定を欠くものとして公訴棄却の判決をすべきであるのに、これを看過した原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるというのである。
   しかしながら、原判示第1の各罪について公訴を提起した令和6年2月15日付け起訴状記載の公訴事実第1は、前記各罪を構成する犯罪行為についてその犯行日時を明確にして他の犯罪事実と識別し得る程度に特定しており、訴因の特定を欠くものとはいえない。
   訴訟手続の法令違反に関する論旨は理由がない。
第3 法令適用の誤りの主張について
 1 原判示第1の事実について
   論旨は、原判示第1の所為のうち、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、その他の不同意わいせつ罪、性的姿態等撮影罪及び児童ポルノ製造罪と併合罪の関係にあるにもかかわらず、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり、仮に併合罪関係にはないとしても、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、不同意わいせつを目的にその手段として行われたものであり、不同意わいせつ罪と牽連犯の関係にあるから、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
   そこで検討すると、原判示第1の不同意わいせつ罪は、当時30歳の被告人が、SNS上に性交相手を募集する内容の投稿をしていた当時14歳のAに対し、ダイレクトメッセージを送って自らがその相手となることを持ち掛けて待合せ場所を決めるなどした後、Aの陰茎を露出して写真を撮影してその画像を被告人に送ることを要求するメッセージを送信し、Aにこれを了承させ、その約3時間後に、Aに陰茎を露出させてそれを撮影させ、画像データを被告人に送信させたことにより行われたものである。このように原判示第1は、刑法176条3項のわいせつな行為としてAの行為を利用したものであるが、被告人は、前記のような状況にあったAに対し、自らの勃起した陰茎の写真を送るなどしながらAにも勃起した陰茎の写真を撮影して送信するよう求めるなどの性的意味合いの強い具体的な要求をし、すぐさまAに了承させ、Aに要求どおりの行為をさせており、このような事実関係の下において、本件の被告人のAに対する要求行為は、Aの性的自由の侵害を生じさせる客観的な危険性が認められるものであり、不同意わいせつ罪の実行行為に当たるとみることができる。
   そうすると、原判示第1の不同意わいせつ罪における実行行為に当たる、Aに対し陰茎を露出した姿態をとってその写真を撮影して送信することを要求した被告人の行為と、16歳未満の者に対する映像送信要求罪の実行行為に当たる要求行為は、同時に行われ、重なり合うものであり、それぞれにおける被告人の動態は社会的見解上1個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁、最高裁平成19年(あ)第619号同21年10月21日第一小法廷決定・刑集63巻8号1070頁参照)、原判示第1の16歳未満の者に対する映像送信要求罪と、不同意わいせつ罪及びこれと観念的競合の関係にある他の2罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるというべきである。原判決第1の事実について法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。

 東京高裁の事例では、「陰茎を露出した姿態をとらせてその姿態を撮影させて被告人が使用する携帯電話機宛てに送信させ、被告人において閲覧するなどの利用が可能な状態に置いたものであることを指摘し、一連の行為がわいせつ行為に当たる。」という原判決を追認しているし、映像送信要求罪と、不同意わいせつ罪(176条3項)等とが牽連犯とされているので、要求時点では不同意わいせつ罪の着手を認めていません

東京地裁r06.11.29
第2
 被告人は、B(当時歳)が16歳未満の者であり、かつ、自らが B の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、正当な理由がないのに、令和6年月日午前7時18分頃、被告人方において、アプリケーションソフト「」のメッセージ機能を利用して、 B に対し、同人からの同人の陰茎が勃起してる旨のメッセージを受け、「見せなさい」と記載したメッセージを送信して、その頃、同人にこれを閲読させ、もって性的な部位を露出した姿態をとってその映像を送信するよう要求し、
同日午前7時18分頃から同日午前7時19分頃までの間に、内の同人方居室において、同人に陰茎を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する携帯電話機で撮影させた上、その静止画データ1点を同携帯電話機から前記「LINE」を利用して被告人が使用する携帯電話機に宛てて送信させ、その頃、当時の株式会社が日本国内に設置して管理している電磁的記録媒体であるサーバコンピュータ内に記録させて保存し、もってわいせつな行為をするとともに、性的姿態等を撮影し、衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造したものである。

(争点に対する判断)
2 弁護人の主張(1)について
  令和6年7月24日付け追起訴状の公訴事実には、罰条として記載された各法条の構成要件に該当する事実が、日時場所等を特定して具体的に記載されており、個々の訴因を特定するのに十分な記載があるといえる。弁護人は、検察官が併合罪関係にあり、単一性を欠く事実について1個の訴因として訴追しているとも主張するが、法令の解釈適用は裁判所の専権であり、公訴事実に含まれる訴因の罪数関係は、裁判所において判断すれば足りる事柄である。前記起訴状の公訴事実に係る訴因は特定されている以上、その公訴提起の手続に違法はない。したがって、弁護人の主張(1)は採用できない。

4 弁護人の主張(3)について
 (1) 同主張①について
   16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、16歳未満の者に対する性被害を未然に防止し、その性的自由の保護を徹底する観点から、16歳未満の者が性被害に遭わない環境にあること(性的保護状態)を保護法益としているもので、同罪と不同意わいせつ罪は、その保護法益を異にする。したがって、16歳未満の者に対する映像送信要求罪に該当する行為が行われ、引き続き、当該16歳未満の者に対する不同意わいせつ行為が行われた場合、両罪が成立するものと解するのが相当である。したがって、弁護人の主張(3)①は採用できない。
 (2) 同主張②について
   被告人は、自分とは別の場所にいる被害者に対し、被害者に陰茎を露出した姿態をとらせてその姿態を撮影させ、被害者にその画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させている。被害者に性的な姿態をとらせて撮影させる行為は性的な意味合いが強く、同行為がわいせつ行為に該当することは明らかであるが、そのようにして撮影された画像を、被告人の使用する携帯電話機に送信させ、被告人において性的対象として閲覧するなどの利用が可能な状態に置く行為は、被害者の性的自由に対する侵害の程度をより高める行為であり、同行為がわいせつ行為に該当することも明らかである。したがって、弁護人の主張(3)②は採用できないo
・・・

科刑上一罪の処理  
判示第2について、刑法54条1項前段、後段、10条(不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合であり、16歳未満の者に対する映像送信要求と、不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、手段結果の関係があるので、結局以上を一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)
           なお、弁護人は、被害者に、性的姿態を撮影した画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させる行為が、わいせつ行為には当たらないことを前提に、判示第2の各罪は併合罪の関係に立つ旨主張するが、同行為もわいせつ行為に当たることは、(争点に対する判断)4において説示したとおりである。そうすると、本件の不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノの製造には重なり合いが認められ、これらは、社会的見解上1個の行為といえるから、観念的競合の関係に立ち、これらの手段として行われた16歳未満の者に対する映像送信要求とは、牽連犯の関係に立つというべきである。

東京高裁r07.7.4
3原判示第2の事実に関する不法な公訴受理の主張について
論旨(弁護人)は、原判示第2に関し、原判決が、①映像送信要求、②不同意わいせつ、③性的姿態等撮影及び④児童ポルノ製造を一つの公訴事実として記載した起訴状による公訴を棄却しなかったことについて、各罪は、行為の重なり合いがないか一部が重なるにとどまるから併合罪の関係に立つとして、公訴事実は単一性を欠き、訴因が不特定であるから、公訴は棄却されるべきであり、それをしなかった原審は、不法に公訴を受理したものである、という。
しかし、原判示第2に係る令和6年7月24日付け追起訴状記載の公訴事実の記載を見るに、論旨と同趣旨の原審弁護人の主張に対する原判断のとおり、検察官が①から④までの各罪について罪となるべき事実としてそれぞれいかなる事実を主張しているかは、その日時、場所、方法等の記載により十分に特定されている。
したがって、その公訴提起の手続に違法があるとはいえず、原審が不法に公訴を受理したとはいえない。
・・・・
(2)論旨(弁護人)は、次に、原判決が原判示第2の不同意わいせつ罪及び性的姿態等撮影罪の成立を認めたことに関し、データを送信させ記録保存する行為はわいせつ行為ではなく性的姿態等撮影罪の成立範囲は、撮影に着手してから撮影するまでであって、記録保存までは含まないのに、原判決は、画像データを被告人が使用する携帯電話機宛てにLINEアプリを使用して送信させ、事業者のサーバコンピュータ内に記録させて保存した行為を含めて両罪の成立を認めており、法令適用の誤りがある、という。
このうち、不同意わいせつ罪については、原判決は、所論と同趣旨をいう原審弁護人の主張に対し、被告人は、別の場所にいる被害児童に対し、陰茎を露出した姿態をとらせてその姿態を撮影させて被告人が使用する携帯電話機宛てに送信させ、被告人において閲覧するなどの利用が可能な状態に置いたものであることを指摘し、一連の行為がわいせつ行為に当たる旨判示している。
行為者が、性的な部位を露出した姿態をとらせ、自身が所持するカメラ等の機器で撮影した場合、その画像は直ちに記録保存されて閲覧するなどの利用が可能となるのに対し、
㋐別の場所にいる者に撮影させた上で、
㋑その画像を送信させて事業者のサーバコンピュータ内に記録させて保存した
本件では、㋑の行為が加わることで被告人において閲覧鑑賞するなどの利用が可能な状態となったのであるから、その一連の行為全体が性的な意味合いを有し、被害児童に対するわいせつ行為に当たるとした原判決の判断は、相当である。
次に、性的姿態等撮影罪は、「撮影する行為」を対象とするものであるから、本件のように撮影対象者を利用して行う場合についても上記㋑の行為はその要素ではない。
原判決も、㋑の行為が性的姿態等撮影罪に該当する旨の判示をしたものではなく、被害児童に原判示の撮影をさせた行為が同罪に当たるとしたものと理解され、したがって、法令適用の誤りはない。

児童を使用する者の年齢年齢義務

 使用者は児童淫行罪、客は児童買春罪を問われます。
 使用者の年齢確認義務は厳しく、「自称する年令を軽信せず、児童の戸籍謄本または抄本などによつて生年月日を調査し、あるいは親元の照会をして年令を確かめるとか、一般に確実性のある調査確認の方法を一応尽すことが必要と考えられる。」とか言われています。

児童福祉法
第三十四条 
1何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫いん行をさせる行為
第六十条 
① 第三十四条第一項第六号の規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、十年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
④ 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、前三項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7556cd81791700cabfb67ec5418e0fcceb646b0e

去年9〜10月にかけて当時17歳だった少女の年齢を確認せずに雇い、豊島区のホテルで50代の客とみだらな行為をさせた疑いなどがもたれています。

 警視庁によりますと、少女は採用時の年齢確認で知人の学生証を提示していて、容疑者は「本当はだめだけど特別ね」と言い、面接した日からそのまま働かせていました。

判例
◎ (昭和30年10月18日東京高裁)
児童を接客婦として住み込ませようとする場合には、その周旋人はもとより、児童本人その親等も右周旋人の示唆等により、雇主に対し年令を偽り、満18歳以上であるように装うことは、世上一般的に行われ希有の事実でないのであるから、単に、児童の体格風貌等が18歳以上に見え、右の者等において18歳以上であると告げたからといつて、さらに戸籍抄本等につき正確な年令の調査をすることなく、その児童に淫行させた場合には、児童福祉法第34条1項6号の違反が成立し、同法第60条3項但書の児童の年令を知らないことについて過失のない場合には当らない。
◎ (昭和30年11月8日最高裁(小))
接客婦として児童を雇入れるにあたり、単に本人の供述または身体の外観的発育状況のみによつて、同女が満18歳以上に達しているものと判断し、さらに客観的な資料として戸籍抄本、食糧通帳もしくは父兄等について正確な調査を講じ、児童の年令を確認する措置をとつた形跡の認められない限り、児童を使用する者が児童の年令を知らなかつたことについて過失がないということはできない。
◎ (昭和33年9月3日東京高裁)
児童を雇入れるに際して、年令等について本人らにこれを尋ねただけで、本人の年令の自称を漫然と受入れ、同女に売淫させていた場合には、児童福祉法第60条3項但書にいう「過失がないとき」に当らない。
◎ (昭和34年12月10日長崎家裁
児童福祉法第60条3項但書にいう児童の年令を知らないことにつき、過失がないといえるためには、使用者が児童を雇入れる際、児童本人や仲介者などの自称する年令を軽信せず、児童の戸籍謄本または抄本などによつて生年月日を調査し、あるいは親元の照会をして年令を確かめるとか、一般に確実性のある調査確認の方法を一応尽すことが必要と考えられる。
◎ (昭和41年7月19日東京高裁)
社交クラブの経営者が若い婦女子を雇入れるにあたつては、本人若しくは周旋人の供述とか本人の身体の発育状態のみに頼ることなく、本人の戸籍を調べ、父兄に問合わせる等確実な調査方法を講じて本人の年令を確認すべき注意義務を負う。
◎ (昭和27年7月17日福岡高裁
児童福祉法第60条3項にいう児童の年令を知らないことについて過失がなかつた立証責任は、被告人側が負うべきものである
◎「過失のないとき」とは、具体的事案ごとに提出された客観的資料の種類、その提出の際の状況、及びその確認方法の有無、難易等を総合的に検討して、社会通念に照らし、通常可能な調査が適切に尽くされているといえるか否かによって決せられることになる(昭和46年11月大阪高裁)。

刑法・特別刑法の「性器」とは

 児童ポルノだと陰裂含む、刑法だと生殖器

熊谷支部r7.4.15
 4 弁護人の主張④(性器に接触しているか否か)について
   陰裂は、性器である左右の大陰唇の外端が向かい合う所であるから性器の一部と言いうるところ、陰裂が社会通念上強い性的意味合いを有すること、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、児童の権利を擁護するという児童買春、児童ポルノ処罰法の目的(同法1条)等にも照らせば、「性器」は陰裂の内側の器官に限るとする弁護人の主張は採用できず、陰裂自体も「性器」に当たると解するのが相当である。そして、判示第6、第7及び第9の各事実において弁護人が性器接触を争う画像データ(甲29・別表番号1、甲30・9頁、甲43・別表番号9)に描写された別紙A又は別紙Bの姿態は、被告人が別紙A又は別紙Bの陰裂の内側には触れていないものの、その左手が着衣を脱いで露出した別紙A又は別紙Bの陰裂部分に直接触れていると認められるから、判示第6及び第9の各事実には児童ポルノ製造罪が、判示第7事実には児童ポルノ公然陳列罪がそれぞれ成立する。
 5 弁護人の主張⑤(「陰部」、「性器」及び「胸部」の定義が不明確であるか否か)について
   同項2号の「性器」該当性は、具体的事案において一般人が社会通念に照らして判断可能であるから、「性器」の概念が刑罰法規として不明確で罪刑法定主義に違反する旨の弁護人の主張は採用できない。
   また、「陰部」に「性器」が含まれ、「胸部」に「乳首」が含まれることは社会通念上明らかであるから、判示第6、第9、第15、第17、第19、第21及び第23の各事実に罪となるべき事実の記載として欠けるところもない。

神戸地裁r07.3.12
(2) ②に対する判断(映像送信要求罪処罰規定の明確性)
「わいせつ」(刑法182条3項柱書) な行為にあたるか否かは、当該行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度等を総合考慮し、社会通念に照らして判断されるものであり、わいせつな行為の内容が不明確であるとはいえない。
「その他の姿態」(同項2号)は、同項の文言 (「膣又は肛門に身体の一部(中略) 性的な部位を露出した姿態」 (同項2号)、「当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。」 (同項柱書) ) や、 映像送信要求罪が性犯罪の前段階を処罰するため設けられたものであることに照らせば、一般人の理解において、当該姿態をとらせてその映像を送信すれば、重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じる場合、 つまり、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立するような場合に映像送信要求罪の適用を受けるものと判断できる。
そのため、 「その他の姿態」 が不明確であるとはいえない。

「性器」は、一般人であれば、その文言自体から、おおむね生殖器であると理解することができ、 不明確であるとはいえない。
したがって、 映像送信要求罪の規定は、明確性の原則に反せず、 憲法31条に違反しないから、 弁護人の主張は採用できない。

東京高裁r7.7.4
4原判示第2の事実に関する法令適用の誤りの主張について
(1)論旨(弁護人)は、原判決が原判示第2の性的姿態等撮影罪の成立を認めたことに関し、同罪の構成要件規定である性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影処罰法」という。)2条1項1号イは、「性器」の定義がなく、処罰範囲が定まらないため、刑罰法規としての明確性を欠いていて憲法31条に違反し、表現行為への過度に広範な規制として憲法21条にも違反するから、無効であるとして、同条項を適用して性的姿態等撮影罪の成立を認めた原判決には、法令適用の誤りがある、という。
しかし、同条項は、「性器」という語を、「人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臂部又は胸部をいう。
以下このイにおいて同じ。)‐又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」として、人の性的な部位を定義する中で用いているものであり、同部位に該当するか否かは、「性器」を定義する規定がなくとも一般人において十分読み取ることが可能であって、同条項が所論のように明確性を欠くとはいえず、憲法31条に違反するものではない。
また、これが表現行為に対する過度に広汎な規制であるともいえず、憲法21条に違反するものでもない。
・・・・・・・・・・


(4)論旨(弁護人)は、さらに、原判決が原判示第2の映像送信要求罪の成立を認めたことに関し、刑法1.82条3項柱書及び2号(以下「本条項」という。)は、3項柱書中の「わいせつ」並びに2号中の「性器」及び「その他の姿態」の各用語が不明確で、刑罰法規としての明確性を欠いていて憲法31条に違反し、表現行為である画像送信要求行為への過度に広汎な規制として憲法21条にも違反するから、無効であるとして、本条項を適用して映像送信要求罪の成立を認めた原判決には、法令適用の誤りがある、という。
・・・・・・・・
次に、「性器」について、本条項は、性的姿態撮影処罰法2条1項1号イと同様に、その語を「性的な部位」を定義する中で用いているものであり、明確性が問題となるのは、「性器」それ自体ではなく「性的な部位」であるところ、(1)におけると同様、これが所論のように明確性を欠くとはいえない。

監禁と不同意わいせつ致死を併合罪とした事例(旭川地裁r7.3.7)

 判示第1と第2は行為がかなり重なっているから観念的競合だよね。

第一七六条(不同意わいせつ)
1 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

裁判年月日 平成24年11月 1日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(う)1344号
事件名 監禁,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 控訴棄却 上訴等 確定 文献番号 2012WLJPCA11019004
 (2) 罪数関係について
   ア 監禁罪と強制わいせつ罪の罪数関係について
 所論は,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪について,いずれも,①性的意図をもって被害児童を監禁する行為は,被害児童の性的自由を害して被告人の性的欲求を満足させる行為であるから,監禁行為とわいせつ行為は一体の行為として評価され,観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても,監禁罪と強制わいせつ罪は手段と結果の関係にあるから牽連犯の関係にある旨主張する。
 そこで検討すると,被告人は,各被害児童に対し,いずれも,わいせつ行為をする目的で公衆トイレ内に誘い込んだ後,内鍵を施錠したり(原判示第4),ドアの前に立ちふさがるなどして(同第1),陰部を触る等のわいせつ行為をしたものであるが,わいせつ行為に及んでいること自体がドア前に立ちはだかることとなって監禁行為は継続しているし,わいせつ行為が終了した直後にその場から逃走して被害児童を解放している。そうすると,刑法176条後段に触れる行為と同法220条に触れる行為とはほとんど重なり合っているといえる上,社会的評価において,トイレのドアの前に立ちふさがるなどして脱出不能にする動態と,このような姿勢をとりながらわいせつな行為をする動態は,被害児童をトイレに閉じこめてわいせつな行為をするという単一の意思に基づく一体的な動態というべきであるから,原判示の各監禁罪と各強制わいせつ罪は,いずれも観念的競合の関係にあるものと解される。

■28331135

旭川地方裁判所
令和07年03月07日

 上記の者に対する監禁、殺人、不同意わいせつ致死被告事件について、当裁判所は、検察官平野賢及び同緒方陽子、国選弁護人多々納玲子(主任)及び同小室光子各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
主文
被告人を懲役23年に処する。
未決勾留日数中200日をその刑に算入する。

理由
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 B(以下「B」という。)が写った画像データを無断で使用した別紙記載の者(当時17歳。以下「A」という。)を監禁しようと考え、B、●●●(以下「X」という。)及び●●●(以下「Y」という。)と共謀の上、令和6年4月18日午後9時頃から同日午後11時37分頃までの間に、Aに対し、電話で、「どう落とし前つけんの、誰にけんか売ってんの。」などと語気鋭く言うなどした上、北海道C市(以下略)道の駅Cにおいて、Aを同所に停車中の軽四輪乗用自動車に乗り込ませ、同自動車を発進させて、同日午後11時37分頃から同月19日午前3時29分頃までの間、走行中の同自動車内でAの動静を監視するなどして同所からD市(以下略)E橋に至るまで同自動車を走行させるなどし、Aが同自動車内等から脱出することを著しく困難にし、もってAを不法に監禁し
第2 前記第1のとおりAを前記自動車に乗車させて北海道C市内から前記E橋に至るまで同自動車を走行させ、その間に、D市内のF店等において、Aに馬乗りになってその顔面を殴打するなどの暴行を加えるなどしてAを監禁したものであるが、Bと共謀の上、令和6年4月19日午前3時29分頃から同日午前3時48分頃までの間に、前記E橋付近において、Aに対し、Aが前記暴行を伴う一連の虐待に起因する心理的反応により同意しない意思を全うすることが困難な状態にあることに乗じ、その着衣を脱ぐよう命じてAを全裸にさせ、Aに土下座して謝罪させている状況を携帯電話機で動画撮影した上、前記E橋において、Aの腰部を蹴るなどの暴行を加え、Aを前記E橋の欄干に座らせて謝罪させている状況を携帯電話機で動画撮影するなどのわいせつな行為をし、その頃、同所において、殺意をもって、前記一連の暴行等により被告人及びBを極度に畏怖するなどしているAを前記欄干に再度座らせ、Aに対し、「落ちろ。」「死ねや。」などと言うなどしてAを前記E橋からその直下を流れるG川に落下させ、よって、同日頃、Aを溺水による窒息により死亡させて殺害した
ものである。

(法令の適用)
1 構成要件及び法定刑を示す規定
  被告人の判示第1の所為は刑法60条、220条に、判示第2の所為のうち、殺人の点は同法60条、199条に、不同意わいせつ致死の点は同法60条、181条1項、176条1項1号、7号にそれぞれ該当する。
2 科刑上一罪の処理
  判示第2の殺人と不同意わいせつ致死は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により1罪として重い殺人罪の刑で処断する。
3 刑種の選択
  判示第2の罪について有期懲役刑を選択する。
4 併合罪の処理
  刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をする。
5 宣告刑の決定
  以上の刑期の範囲内で被告人を懲役23年に処する。
6 未決勾留日数の算入
  刑法21条を適用して未決勾留日数中200日をその刑に算入する。
7 訴訟費用の不負担
  訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
(量刑の理由)
 本件は、被告人が、Bや少年X、少女Yと共謀して、女子高校生の被害者を呼び出して自動車に乗り込ませ、深夜から未明にかけて、被害者の居住する北海道C市内の道の駅からD市内の渓谷Hまで連行して監禁した後、Bと共謀して、Hの吊り橋E橋付近において、全裸にさせた被害者を動画撮影するなどのわいせつな行為をし、さらに、殺意をもって、吊り橋の欄干に座らせた被害者に対し、「落ちろ。」「死ねや。」と言うなどして、吊り橋の直下を流れるG川に落下させて溺死させた、監禁、殺人、不同意わいせつ致死の事案である。

交際中の中学生(12歳・13歳)の性行為について、避妊しなかった点、撮影保存の点を不法行為とした事例(東京地裁r7.2.28) (訴額605万円、認容額11万円)

交際中の中学生(12歳・13歳)の性行為について、避妊しなかった点、撮影保存の点を不法行為とした事例(東京地裁r7.2.28) (訴額605万円、認容額11万円)
 600万円って、レイプされた場合の認容額ですよね。12歳だからか

裁判年月日 令和 7年 2月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令6(ワ)15872号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2025WLJPCA02286007
主文

 1 被告未成年者は、原告に対し、11万1500円及びこれに対する令和6年6月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
 3 原告と被告未成年者との訴訟費用は、これを60分し、その1を被告未成年者の負担とし、その余を原告の負担とし、原告と被告父及び被告母との訴訟費用は全部原告の負担とする。
 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
 
 
事実及び理由
第1 請求
 被告らは、原告に対し、連帯して、605万1650円およびこれに対する令和6年6月27日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、被告未成年者が、未成年者である原告に対し、避妊具を用いることなく性交渉に及び、原告の膣内に射精し、また、原告の陰部の画像等を撮影していわゆる児童ポルノを製造し、これを所持したことで、原告が精神的苦痛を受けたなどとして、さらに、被告父及び被告母(以下、併せて「被告父母」という。)が、被告未成年者の上記各行為について、監督義務を怠ったとして、原告が、被告らに対し、民法709条に基づき、連帯して、慰謝料等合計605万1650円及びこれに対する不法行為の日の後であり、訴状送達の日の翌日である令和6年6月27日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
・・・・・
第3 争点に対する判断
 1 争点1(本件各行為の不法行為該当性)について
  (1) 本件行為①について
   ア まず、原告は、本件行為①に関し、被告未成年者が、いずれの性交渉に際しても、原告の膣内に射精をしていた旨主張する。
 しかしながら、前記第2の1(2)記載の令和6年2月19日頃に行われた性交渉の際を除き、被告未成年者が、原告と性交渉をした際に、その膣内に射精をしたと認めるに足りる的確な証拠はない。
   イ 次に、本件当時、原告と被告未成年者とが交際関係にあったこと、両者はいずれも同じ中学校に通い、同じ部活動に所属する同級生であったこと、両者の間で複数回性交渉が行われていたことは、前記第2の1(1)のとおりである。また、本件行為①について、一方的に被告未成年者が、原告に対し、これを強要し、原告がこれに応じざるを得なかったと認めるに足りる的確な証拠もない。それゆえ、本件行為①に関し、原告と被告未成年者との間に、主従関係や優劣関係は認められないというべきである。
 以上に加え、被告未成年者が避妊具を用いずに本件行為①に及んでいたことにつき、原告がこれを拒絶していたと認めるに足りる的確な証拠はないし、本件行為①が行われていた間に、原告が、上記学校や上記部活動を欠席したり、被告未成年者を遠ざけたりしたと認めるに足りる的確な証拠もない。かえって、前記第2の1(4)のとおり、原告は、自らウェブサイト上で経口避妊薬を購入し、服用しながら、なお被告未成年者との上記関係を継続していたものと認められる。これらの事情を併せ鑑みれば、原告も同意の上で、上記関係を継続していたものと認めるのが相当である。
 なお、前記第2の1(1)のとおり、原告は、本件当時13歳又は14歳であって、いわゆる性交同意年齢(16歳)に満たないが、そのことは被告未成年者も同様であって、交際関係にあり、主従関係や優劣関係も認められない性交同意年齢に達しない者同士の性交渉において、単純に一方を加害者、他方を被害者と断ずることもできないというべきである。
 それゆえ、本件行為①につき、被告未成年者が、原告と、避妊具を用いずに複数回にわたり性交渉に及んでいたこと自体をもって、直ちに不法行為に当たるとまでは認め難い。
   ウ 他方で、前記第2の1(2)のとおり、被告未成年者は、令和6年2月19日頃、原告と性交渉をした際、原告の同意なく、原告の膣内に射精をしたものと認められる。
 社会通念に照らしても、性交渉に際し、女性の膣内に射精すれば、受胎の可能性が格段に高まることや、未だ成熟していない13歳の女性が受胎した場合に、その心身や社会的地位等に悪影響が及びかねないことは、容易に認定し得るものである。
 それゆえ、被告未成年者の本件行為①のうち、原告の同意なく、その膣内に射精をしたとの点は、その性的自由及び性的自己決定権を侵害するものといわざるを得ず、不法行為に当たるというべきである。
  (2) 本件行為②について
 本件各データは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項1号及び同項3号の児童ポルノに当たるものというべきである。
 そして、このような児童ポルノの製造及び所持が、被写体となった児童の性的権利を侵害する違法な行為であることは、同法1条等に明記されているとおりである。
 よって、被告未成年者の本件行為②は不法行為に当たるというべきである。
 2 争点2(損害の発生の有無及びその数額)について
  (1) 本件行為①に関して
   ア 前記1(1)ウのとおり、被告未成年者の本件行為①のうち、同所記載の行為については不法行為に当たるところ、証拠(甲13)によれば、これにより、原告は、受胎したのではないかという一定の不安感を覚えたものと認められ、その結果、相応の精神的苦痛を被ったものと認められる。
 もっとも、同イのとおり、原告は、上記行為後も被告未成年者と複数回性交渉を重ねており、その間、上記行為に起因して、通っていた中学校や部活動を欠席した等の事情も認められない。また、前記第2の1(4)のとおり、結果として、原告が受胎した等の事実も認められない。
 以上の事情も併せ鑑みれば、上記行為により原告が被った上記精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は、5万円を超えないものというべきである。
   イ また、原告が、本件検査を受けたことも、上記行為と相当因果関係があるというべきであるから、本件検査に係る費用1500円も、上記行為により原告が被った損害として認めるのが相当である。
  (2) 本件行為②に関して
 前記1(2)のとおり、被告未成年者の本件行為②は不法行為に当たるところ、証拠(甲13)によれば、これにより、原告は、本件各データが流出するのではないかという一定の不安感を覚えたものと認められ、その結果、相応の精神的苦痛を被ったものと認められる。
 もっとも、前記第2の1(3)のとおり、令和6年4月16日に画像及び動画が撮影された際には、原告は、自らの携帯電話端末を被告未成年者に貸与し、同端末が使用されて上記撮影が行われており、その後も複数回、同様の撮影が行われている。また、前記(1)アのとおり、その間、原告が、上記行為に起因して通っていた中学校や部活動を欠席した等の事情も認められない。さらに、本件各データの一部が、被告未成年者の携帯電話端末から同人のノートパソコンに送信された事実は被告らも自認するところであるが、それ以外に、本件各データが外部に流出した等の事情を認めるに足りる的確な証拠はない。
 以上の事情を総合的に考慮すれば、被告未成年者の本件行為②により原告が被った上記精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は、5万円を超えないものというべきである。
  (3) 弁護士費用について
 本件の事案の性質及び訴訟活動の困難さに鑑みれば、原告が本件訴えを提起し、その訴訟活動をするに当たり、弁護士に委任することはやむを得ないところであり、その弁護士費用も前記1記載の各不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。
 そして、その弁護士費用は、前記(1)及び(2)の合計額の約1割に相当する1万円と認めるのが相当である。
 3 争点3(被告父母の責任の有無)について
 前記第2の1(1)のとおり、本件当時、被告未成年者は責任能力を有していたものと認められるところ、仮に未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは、監督義務者につき、民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当である(最高裁判所昭和49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁)。
 しかしながら、本件各証拠に照らしても、被告父母において、被告未成年者が、前記1の各不法行為に及ぶことを具体的に予見し得たといえるような事実関係は何ら認められない。それゆえ、そもそも、被告父母において、被告未成年者が上記各不法行為に及ぶことを予見し、これによる結果を回避するために何らかの措置を講ずべき義務があったとは認め難いから、被告父母に被告未成年者の上記各不法行為に結び付く監督義務違反があったとは認められないというべきである。
 なお、この点に関し、原告はるる主張するものの、いずれも上記判断を覆すに足りるものではなく、採用できない。
 よって、原告の被告父母に対する請求はいずれも認められない。
 4 小括
 以上の次第で、被告未成年者の本件各行為は、前記1の範囲で不法行為に該当し、これにより、原告は、前記2のとおり、合計11万1500円の損害を被ったものと認められるから、原告は、被告未成年者に対し、上記損害額及びこれに対する不法行為の日の後である令和6年6月27日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。
 他方、原告のその余の請求はいずれも理由がないというべきである。
 5 結語
 よって、原告の請求は、前記4の限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第18部
 (裁判官 古賀大督)
 
 
 (別紙)
 当事者目録
 原告 X
 同法定代理人親権者父
 同訴訟代理人弁護士 三上拓馬
 被告 Y1(以下「被告未成年者」という。)
 同法定代理人親権者父
 同法定代理人親権者母
 同
 被告 Y2(以下「被告父」という。)
 同
 被告 Y3(以下「被告母」という。)
 被告ら訴訟代理人弁護士 内藤潤
 以上

刑法182条3項2号の「その他の姿態」とは、「要求した映像送信行為が実現した場合に、膣又は肛門に物を挿入する姿態等の列挙された姿態に係る映像送信と同程度に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じるような姿態をいうものと解される」(東京高裁r7.7.4)

刑法182条3項2号の「その他の姿態」とは、「要求した映像送信行為が実現した場合に、膣又は肛門に物を挿入する姿態等の列挙された姿態に係る映像送信と同程度に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じるような姿態をいうものと解される」(東京高裁r7.7.4)

刑法
(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二前号に掲げるもののほか、
膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、
性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、
性的な部位を露出した姿態
その他の姿態
をとってその映像を送信すること。

(4)論旨(弁護人)は、さらに、原判決が原判示第2の映像送信要求罪の成立を認めたことに関し、刑法1.82条3項柱書及び2号(以下「本条項」という。)は、3項柱書中の「わいせつ」並びに2号中の「性器」及び「その他の姿態」の各用語が不明確で、刑罰法規としての明確性を欠いていて憲法31条に違反し、表現行為である画像送信要求行為への過度に広汎な規制として憲法21条にも違反するから、無効であるとして、本条項を適用して映像送信要求罪の成立を認めた原判決には、法令適用の誤りがある、という。
しかし、まず、本条項(3項柱書)中の「わいせつなもの」は、刑法176条の不同意わいせつ罪における「わいせつな行為」と同じ意味と解されるところ、同条の「わいせつな行為」の概念は、刑罰法規として必要な明確性を欠くものでなく(最高裁平成28年(あ)第1731号同29年11月29日大法廷判決。刑集71巻9号467頁、最高裁平成30年(あ)第1757号令和2年3月10日第三小法廷判決・刑集74巻3号303頁参照)、そのことは、本条項中の「わいせつなもの」についても同じである。
次に、「性器」について、本条項は、性的姿態撮影処罰法2条1項1号イと同様に、その語を「性的な部位」を定義する中で用いているものであり、明確性が問題となるのは、「性器」それ自体ではなく「性的な部位」であるところ、(1)におけると同様、これが所論のように明確性を欠くとはいえない。
そして、「その他の姿態」については、本条項は、複数の「姿態」の列挙に続けて「その他の姿態」と記し、16歳未満の者に対し、それらの姿態をとってその映像を送信することを要求した者を処罰する旨規定するものである。
そうした法文の記載からすると、「その他の姿態」とは、要求した映像送信行為が実現した場合に、膣又は肛門に物を挿入する姿態等の列挙された姿態に係る映像送信と同程度に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じるような姿態をいうものと解され、これが所論のように明確性を欠くとはいえない。
よって、本条項は憲法31条に違反するものではない。
また、本条項に該当する映像送信行為を処罰することが、表現行為に対する過度に広汎な規制であるというべき根拠はなく、憲法21条に違反するものでもない。