奈良公園のパンチラ画像がわいせつ電磁的記録になると解説している弁護士

奈良公園のパンチラ画像がわいせつ電磁的記録公然陳列罪になると解説している弁護士

 現時点では、パンツをはいている限りパンチラ画像はわいせつ図画にはならない。ミニスカート姿の人がしゃがむとパンツが見えるのはそういう服装であるために普通であって、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」ではないので、児童ポルノにもなりにくい

https://www.bengo4.com/c_1009/n_18922/
——公園で女性のスカートの中を撮影し、動画を投稿した場合、どのような罪に問われますか。
つぎに、このような動画をネットに投稿していることから、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法175条1項)が成立し、2年以下の拘禁刑か250万円以下の罰金もしくは科料、または拘禁刑と罰金の併科刑となります。
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投稿されたわいせつ画像や動画をめぐって、YouTubeなどのプラットフォームにおける不適切な管理の刑事責任が近年議論されています。
たとえば、プラットフォーム側において他人が送信した児童ポルノ画像をサーバ上に記憶・蔵置させたまま削除せず放置した事件について、不作為による児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めた裁判例などもあります(東京高裁平成16年6月23日)。
今回の奈良公園の事件では、児童ポルノではなくスカートの中の盗撮なので、厳密にはこの裁判例とは事情が異なりますが、理論的にはプラットフォーム側にも不作為によるわいせつ電磁的記録媒体陳列罪の成立が認められる可能性はあります。

 リベンジポルノ罪とか名誉毀損罪とかが検討されたが難しいので、そこでr5に性的影像記録公然陳列罪や提供罪を作ったという経緯になる。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
第三条(性的影像記録提供等)
 性的影像記録(前条第一項各号に掲げる行為若しくは第六条第一項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第一項第四号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第五条第一項第四号に掲げる行為により同項第一号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第四条(性的影像記録保管)
 前条の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。



この部分もFAQで、被疑者側からは「特定できなければ起訴できない」なんて希望的観測が多いところですが、自然人であることが証明できれば、「氏名不詳の被害者」として起訴されています

——撮影された被害者が誰か特定されていないことで、刑事処分にどのような影響が考えられますか。
迷惑防止条例や性的姿態撮影等処罰法違反は非親告罪なので、被害者による刑事告訴は不要です。
理論的には被害者がわからなくても、写真や動画、目撃者の証言などがあることで、行為当時に被害者が存在しており、盗撮の被害を受けた事実が立証できれば、起訴して有罪判決が言い渡される可能性も考えられます。
しかしながら、検察官は起訴するかどうかを判断する要素として、被害者側の処罰感情も重視します。
被害者不明では、処罰感情があるかどうかも確認できないということになります。
また裁判所からは事実関係をできるだけ細かく特定するように求められますから(刑事訴訟法256条3項)、被害者がどこの誰か不明であり、現在もどこにいるのか不明ということですと、検察官としてはなかなか起訴にしくいのではないかと思います。

高額の対価を示して裸画像を撮影送信させた場合、不同意わいせつ(2項)にならない理由

高額の対価を示して裸画像を撮影送信させた場合、不同意わいせつ(2項)にならない理由
 欺されたのか、大金に目がくらんだのかはわかりませんが、時々こういう事案はあって、警察に「欺された」と被害届がでることがあるようですが、警察検察は、不同意わいせつ罪(176条)には消極的です。

第一七六条(不同意わいせつ)
 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

 法務省の説明によれば、17歳が対価の約束をしている場合だと、裸を撮影送信するという行為の意味は理解していたと思われ、対価をもらえるという誤信があるとしても、「行為がわいせつなものではないとの誤信」がないので、不同意わいせつ罪(176条2項)は成立しないとされています。

法務省逐条説明
3 各条の第2項
性的行為が行われるに当たって、その相手方に何らかの錯誤が生じている類型については、同意の前提となる事実の認識を欠くものの、当該行為を行うこと自体について外形的には同意が存在するという特殊性があり、被害者が「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」にあったかどうかで犯罪の成否を区別することとした場合には、犯罪の成否をめぐる評価・判断のばらつきを生じさせることとなりかねないことから、第1項に含めるのではなく、別途規定することとするものである。
その上で、相手方に錯誤が生じている類型の中には、その錯誤があることによっておよそ自由意思決定が妨げられる性質のものと、そうでないものが混在するため、それらを区別せずに包括的な形で規定した場合には、強制わいせつ罪・強制性交等罪として処罰すべきとはいえないものが処罰対象に含まれることとなり、相当でない。
そこで、強制わいせつ罪及び強制性交等罪の保護法益である性的自由・性的自己決定権が侵害されたといえる場合、すなわち、自由意思決定が妨げられたと一般に評価できる錯誤のみが処罰対象となることを明確にする観点から、第2項においては、
○その誤信があれば、自由意思決定が妨げられたといえる類型、すなわち、
・行為がわいせつなものではないとの誤信がある場合(注6)
・行為をする者について人違いがある場合(注7)
を限定的に列挙し、
○「その他これらに類する行為により同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」又は「その他これらに類する事由によりその状態にあることに乗じて」との包括的要件を設けない
こととしている。
なお第176条第2項及び第177条第2項の行為はいずれも行為者が行い又は行おうとしているわいせつな行為又は性交等、すなわち、実行行為を指すものである。
(注6)行為がわいせつなものでないとの誤信があった場合には、被害者は「行為」には、同意しているものの、それが「性的」なものであるとすれば、そのような「性的行為」には同意していないのであるから、その意味で「性的行為をするかどうか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。
(注7)行為をする者について人違いがある場合には、被害者は、その相手方との性的行為には同意していないのであるから、その意味で「誰と性的行為をするか」についての自由意思決定があったとはいえず、その誤信を利用して性的行為を行った場合、一般に性的自由・性的自己決定権の侵害が存するといえる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025060200884&g=soc
女子高生に「200万円払う」 裸の写真送らせた疑い、男再逮捕―警視庁
時事通信 社会部2025年06月03日07時34分配信
 SNSで知り合った女子高校生(17)に「写真、動画送れば200万円」と伝え、裸の画像などを送らせたとして、警視庁世田谷署は2日までに、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で、容疑者を再逮捕した。「好みの女性の裸を見たかった」と容疑を認めている。
 再逮捕容疑は昨年10月5~8日、女子高生の下半身などを写した画像21枚と動画4本を送信させ、保存した疑い。
 同署によると、容疑者は昨年9月にインスタグラムで女子高生と知り合い、「写真50枚、動画35本の1セットで200万円以上払う」とメッセージを送信。画像などを送らせたが、現金は支払わなかった。
 女子高生から相談を受けた世田谷署が5月に容疑者宅を捜索。同容疑者が当時、部屋にいた別の女子高生とわいせつな行為をしたと認めたことなどから、同法違反容疑で逮捕した。
 押収したスマートフォンの解析で、再逮捕容疑の画像などが見つかった。

大阪高裁r3.7.14(高等裁判所刑事裁判速報集(令3)号403頁)は送信させ保存した行為をわいせつ行為とするものではない

阪高裁r3.7.14(高等裁判所刑事裁判速報集(令3)号403頁)は送信させ保存した行為をわいせつ行為とするものではない
 最近この大阪高裁判決を引用して、「送信させ・保存し」も猥褻行為だという検察官がいるんですが、間違っていますよ。
 大阪高裁事件の、強制わいせつ罪(176条後段)の訴因は「陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させ、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし」ということで、起訴されたのは撮影行為までです。高裁判決でも送信・保存まではわいせつ行為とされてないという判断になっています。

判例ID】 28302776
【裁判年月日等】 令和3年7月14日/大阪高等裁判所/第6刑事部/判決/令和3年(う)287号
【事件名】 強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【裁判結果】 控訴棄却
【参照法令】 刑法 176条
【出典】 高等裁判所刑事裁判速報集(令3)号403頁
【重要度】 1
28302776
大阪高等裁判所
令和3年(う)第287号
令和03年07月14日
控訴申立人 被告人

判決要旨
第1 事案の概要
 1 罪となるべき事実(要旨)
  被告人は、被害者が13歳未満であることを知りながら、〈1〉遠隔地にいた同人に対し、ダイレクトメッセージ機能を使用して、その陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し、その頃、被害者にそのような姿態をとらせていわゆる自撮りをさせた上、〈2〉その画像データをダイレクトメッセージ機能を使用して被告人のスマートフォンに送信させて、アプリケーションソフト運営法人が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させた。
 2 訴訟経過
  検察官は、〈1〉行為(本件行為)を強制わいせつ罪、〈1〉及び〈2〉行為を児童ポルノ製造罪として、別個の訴因で(併合罪として)起訴した。
  弁護人は、本件行為につき、被害者に裸体を自撮りさせただけでは、遠隔地にいる被告人が見ることはできず、性的侵襲は弱いので、「わいせつな行為」に該当しないか、該当するとしても強制わいせつ未遂罪が成立するにとどまる旨主張したが、原判決は、本件行為につき強制わいせつ罪の成立を認め、罪数につき、児童ポルノ製造罪と観念的競合の関係にあると判断した。
  これに対し、被告人が控訴し、原審同様強制わいせつ罪の成立を争ったが、控訴審判決はこれを排斥し、控訴を棄却した。
第2 控訴審判示
 1 刑法176条の「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、当該行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最大判平29・11・29・刑集71巻9号467ページ参照。)。
 2 これを踏まえて検討すると、本件行為は、当時9歳の女子児童である被害者に対してその陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し、被害者にそのような姿態をとらせてそれを撮影させたというものであり、撮影させた部位のうち、陰部(性器自体は写っていないものの、その周辺部である。)は性的要素が強く、乳房も性を象徴する典型的な部位である。また、衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は、裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって、単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし、続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も、自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を、さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり、それによって性的侵害性が強まるといえるから、「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる。
  本件では、被告人は遠隔地から被害者に指示しているから、直接被害者の姿態を目にしていないという点で、面前で行う場合と比べて被害者の性的自由を侵害する程度が小さいとはいえるものの、被害者に陰部等を露出した姿態をとらせ、これを撮影させた行為は、被害者に一定の性的行為を行わせ、かつ、その内容を第三者が知り得る状態に置く行為であり、被害者の身体を性的に利用する行為といえる。本件は、行為そのものから直ちに「わいせつな行為」とまで評価できないものの、一定の性的性質を備えていて、「わいせつな行為」に当たり得るものというべきである。なお、本件行為には被害者に撮影させた画像データを被告人に送信させたことや被告人が受信した画像データを閲覧したことは含まれていないが、被害者に陰部等を露出させた姿態をとらせてそれを撮影させたことによって、被告人を含む他人がその画像を見ることがあり得る状態に置かれており、性的侵害性は大きいといえるし、被告人は被害者に対して撮影した画像データを被告人に送信することも要求して撮影させており、被害者がこの要求に従って画像データを送信して被告人がこれを見ることになる具体的な危険性も認められるから、撮影させた画像データを被告人に送信させたこと等が含まれていないことが、「わいせつな行為」該当性を否定する事情とはならない。
 3 さらに、本件の具体的状況等についてみると、被告人は当時53歳の中年男性、被害者は当時9歳(小学3年生)であり、動画配信アプリケーションを通じて知り合い、ダイレクトメッセージ機能を使用してやり取りをしていた関係にすぎず、直接の面識はなく、本件行為は、被告人と被害者が性行為をしているかのようなメッセージのやり取りをしている状況においてなされたものである(例えば、被告人は、被害者に対し、陰部等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に、「マンジル、白いの出てくるからね」「おちんちんを、なめてごらん」「ぬれたおちんちんをまんこにこするね」というメッセージを、乳房等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に「もみながらなめるね」「おちんちんもこすってるぞ」といったメッセージを送信している。)。また、被告人にはかねてから年少の女児を対象とする性的嗜好があった。このような本件行為が行われた際の具体的状況等をも考慮すると、本件行為は性的な意味合いが相当強いものといえるから、「わいせつな行為」に当たるといえる。
 4 原判決は、被害者への身体的接触がなく、被告人が撮影時に被害者にとらせた姿態を見ていないという本件行為の特徴を指摘して本件行為そのものが持つ性的性質は不明確であるともいえるとした上で、撮影の対象となった部位が性を象徴する典型的な部位等であること、被告人と被害者の関係性や各属性、本件に至る経緯や本件の前後に被告人が送信したメッセージの内容、被告人が自己の性欲を満たす目的を有していたことなどを考慮すると、撮影時に被告人が被害者の姿態を見ていなかったことを踏まえても、本件行為の性的な意味合いの程度は相当に強いといえるから、「わいせつな行為」に当たると判断した。原判決は、身体的接触がなく、被害者の姿態を直接見ていない本件行為に「わいせつな行為」該当性を認め得るほど強い性的意味合いがあることについて、本件行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度それ自体を判定し、それに着目した説明が十分なされているか疑問があるが、おおむね前述したところと同趣旨の判断をしているものと解され、その結論に誤りはない。
第6刑事部
参考事項
1 前記最高裁判決で示された判断基準を、本件のような非接触型・非対面型わいせつ事案に当てはめて強制わいせつ罪の成立を認めた高裁判決はまれであり、その詳細な理由付けを含め、先例としての価値は大きい。
2 前記最高裁判決が「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分踏まえる」としたことの趣旨につき、同判例解説(214ページ)では、次のような判断の順序を示したものと説明されている。すなわち、
 (1) 行為そのものに、性的性質が有り、かつ、その性的性質の程度が強いために、直ちに「わいせつな行為」に該当すると判断できる行為か
 (2) 行為そのものに備わる性的性質が無いか、あっても極めて希薄であるために、およそ刑法176条による非難に値する程度に達しえないものとして、直ちに「わいせつな行為」に該当しないと判断できる行為か
 をまず判断し、次に、
 (3) 行為そのものが持つ性的性質が不明確であるために、行為の外形だけでは「わいせつな行為」該当性の判断がつかない類型においては、行為そのものが持つ性的性質の程度を踏まえた上で、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮する
というものである。
  また、前記最高裁判決のいう「当該行為が行われた際の具体的状況等」として考慮すべき判断要素として、前記判例解説(218ページ以下)では、以下の事情が挙げられている。
 (1) 行為者と被害者の関係性
 (2) 行為者及び被害者の各属性等(それぞれの性別・年齢・性的指向・文化的背景〔コミュニケーション手段に関する習慣等〕・宗教的背景等)
 (3) 行為に及ぶまでの経緯、行為者及び被害者の各言動、行為が行われた時間、場所、周囲の状況等
 (4) 行為に及んだ目的を含む行為者の主観的事情(外部的徴表として現れているもの)
  本控訴審判決は、同判例解説と同様の視点で当てはめがなされている。
3 訴因には「わいせつな行為」の概略しか記載しないが、行為の行われた具体的状況等をも加味して「わいせつな行為」該当性を評価すべき事案においては、「わいせつな行為」であることを基礎づける具体的事実を冒頭陳述で指摘する必要があるとともに、論告で、その具体的事実の評価について丁寧に論じる必要がある(前記判例解説226ページ参照)。
4 非接触型のわいせつ行為(例えば、脅迫により畏怖した被害者に自慰行為をさせて自撮りさせ、その画像を遠隔地にいる被告人に送信させる事案)を強要罪で起訴する例が見られることについて、(被告人に画像を送信しなくても)強制わいせつ罪が成立するのではないかとの指摘がなされていた(橋爪隆「非接触型のわいせつ行為について」研修860号)が、本件はこれを肯定した高裁判決として参考になる。

 起訴状をみると、強制わいせつ罪(176条後段)の訴因は「陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させ、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし」ということで、起訴されたのは撮影行為までです。

起 訴 状
令和2年8月27日
公 訴 事 実
 被告人は、甲(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら
第1 同人にわいせつな行為をしようと考え、令和2年3月5日午前9時54分頃から同日午前10時14分頃までの間、被告人方において、前記甲に対し、被告人が使用するスマートフォンから前記甲が使用するタブレット端末に、アプリケーションソフト「」にダイレクトメッセージ機能を使用して、陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影し、被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し、その頃、2回にわたり、内の前記甲方において、同人に、陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させ、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をし
第2 前記日時頃、前記甲方において、前記第1記載のとおり同人に陰部、乳房等を露出した姿態をとらせ、これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させた上、同画像データ2点を、前記「」のダイレクトメッセージ機能を使用して、同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ、その頃、同画像データ2点を、場所不詳に設置された「」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
たものである。
罪 名 及 び 罰 条
第1 強制わいせつ 刑法176条後段
第2 児童買春・児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反       同法7条4項、2条3項3号

 訴因変更があったが、製造罪についてのみ。

訴因変更請求書r3.1.18
被告人に対する強制わいせつ,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件につき,令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実第2の訴因を下記のとおり変更したく請求する。

同日付け起訴状記載の公訴事実第2のうち, 1行目から10行目を次のとおり変更する。
「前記日時頃,前記被告人方において,前記 に被告人が使用するスマートフォンから前記甲が使用するタブレット端末に,アプリケーションソフト「」のダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,その頃,前記甲方において,前記第1記載のとおり, 同人に陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ, これを同人が使用する前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を,前記「」のダイレクトメッセージ機能を使用して,同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ,その頃, 同画像データ2点を,場所不詳に設置された「」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ, もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し」
以 上

それら(公訴事実第2と第3)を、1審判決判示第3で観念的競合としていますが、わいせつ行為の範囲は変わっていません。

京都地裁令和3年2月3日
令和2年(わ)第810号,第873号 強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
理    由
(罪となるべき事実)
第3 被告人は,■■■■■(当時9歳,以下「A」ともいう。)が13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和2年3月5日午前9時54分頃から同日午前10時14分頃までの間,愛媛県今治市波方町養老甲836番地1所在の被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォンからAが使用するタブレット端末に,アプリケーションソフト「Twitter」のダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,その頃,2回にわたり,京都府内のA方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これをAが使用する前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を,前記「Twitter」のダイレクトメッセージ機能を使用して,同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ,その頃,同画像データ2点を,場所不詳に設置された「Twitter,Inc.」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。(訴因変更後の令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実)
(法令の適用)
1 罰  条
 判示第3の行為のうち
  強制わいせつの点  刑法176条後段
  児童ポルノ製造の点 包括して児童ポルノ法7条4項,2項,2条3項3号
2 科刑上一罪の処理
 判示第3について 刑法54条1項前段,10条(1罪として重い強制わいせつ罪の刑で処断)

3 刑種の選択
 判示第2別表2番号1,同番号2,同番号3ないし6,同番号7,同番号8ないし10,同番号11ないし14並びに同番号15及び16の各罪
   いずれも懲役刑
4 併合罪加重      刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1別表1番号6の罪の刑に加重)
5 未決勾留日数の算入  刑法21条
6 没収
 主文記載のスマートフォン本体1台(黒色手帳型カバー付)について
   刑法19条1項2号,2項本文(判示第1別表1番号6の犯行の用に供した物で被告人以外の者に属しない)
7 訴訟費用の不負担   刑事訴訟法181条1項ただし書
(判示第3の事実に関する争点に対する判断)
第1 強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪の成否
 1 弁護人の主張等
 弁護人は,判示第3の事実について,事実関係は争わないが,①被告人の行為は,Aに要求して,他人が見ていない状況でA自身に陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させたというものにすぎず,強制わいせつ罪の保護法益である性的自由の侵害の程度が極めて小さいといえるから,刑法176条後段の「わいせつな行為」に該当せず,強制わいせつ罪は成立しない,②判示の画像データ2点を判示のサーバコンピュータ内に記憶蔵置させたのはAであり,被告人の行為は介在していないから,児童ポルノ製造罪は成立しない旨主張するから,当裁判所が前記両罪がいずれも成立すると判断した理由を説明する。
 2 強制わいせつ罪の成否
 被告人は,判示第3のとおり,Aに要求し,2回にわたり,A方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これを撮影させているところ,被告人とAとの間には物理的(身体的)な接触がなく,しかも,被告人がその撮影時にAの前記姿態を見ていなかったことなどからすると,被告人の行為そのものが持つ性的性質は不明確であるともいえる。
 もっとも,本件において主な撮影対象となったのはAの露出した状態の陰部及び乳房という性器あるいは性を象徴する典型的な部位である上,その撮影にかかる判示の画像データ2点は被告人が使用するスマートフォンに送信されて判示のサーバコンピュータ内に記憶蔵置されているのであって,かかる事情は被告人の行為の性的意味合いをかなり大きく強めるものといえる。また,被告人は,動画配信アプリケーションを通じて年少の女児であるA(当時9歳)と知り合うと,自らを高校生と偽り,判示の「Twitter」のダイレクトメッセージ機能を使用するなどしてAとの間でやり取りをしていたにすぎず,Aとは直接の面識がなかったほか,かねてから年少の女児を対象とする性的傾向があったものであり,かかる被告人とAの関係性や各属性等も被告人の行為の性的意味合いをかなり強める事情といえる。そして,被告人は,前記ダイレクトメッセージ機能を使用して,Aに対し,頻繁に露骨な性的な内容を含むメッセージを送信して本件に及んでいるほか,本件前後にも露骨な性的な内容を含むメッセージを送信しており(例えば,Aに対し,陰部等の画像データを送信させた直後に「おちんちんを,なめてごらん」「ぬれたおちんちんをまんこにこするね」というメッセージを,乳房等の画像データを送信させた直後に「もみながらなめるね」「おちんちんもこすってるぞ」というメッセージをそれぞれ送信している。),かかる本件に至るまでの経緯や本件前後の被告人の言動等も被告人の行為の性的意味合いを相当に強める事情といえる。以上に加えて,被告人の行為は未成年者(とりわけ13歳未満の年少者)保護の見地からも当罰性が強いといえること,被告人が自己の性欲を満たす目的を有していたことなどにも照らすと,被告人が前記撮影時にAの前記姿態を見ていなかったことを踏まえても,被告人の行為は,性的な意味があり,その意味合いの程度は相当に強いといえるから,刑法176条後段の「わいせつな行為」に当たり,被告人については,強制わいせつ罪が成立するものと認められる(なお,前記の撮影行為自体はA自身が行っているものの,Aが当時9歳の年少者であったこと,被告人が,前記のとおり,Aに対して頻繁に露骨な性的な内容を含むメッセージを送信していたこと,前記の撮影行為が単純な内容動作であることなどに照らすと,Aは,前記の撮影行為の性的な意味を十分に理解していたとはいい難く,また,被告人の前記要求を拒否するのは難しかったといわざるを得ないから,被告人については,年少者であるAを利用して自己の犯罪行為を行ったものとして強制わいせつ罪の間接正犯が成立するものと認められる。)。
 これに対し,弁護人は,近時の裁判例では,被害者を脅迫して被害者自身に陰部等を露出した姿態をとらせて撮影等させた行為は強要罪として処断されるにとどまっており,判示第3について強制わいせつ罪が成立するとすることは,他の同種事案との均衡を著しく失し,憲法14条に抵触する旨主張する。しかしながら,弁護人が引用する裁判例(捜査報告書〔甲55〕の番号10ないし12)は,いずれも検察官が強要罪(同未遂罪)として公訴を提起したものであり,このような場合,公訴の提起を受けた裁判所は,訴因である強要罪(同未遂罪)の成否のみを審判の対象とすべきであり,それとは別に強制わいせつ罪(同未遂罪)の成否といった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきものではないから,前記裁判例が,強制わいせつ罪(同未遂罪)の成否について立ち入ることなく,検察官が起訴状の罪名で特定した強要罪(同未遂罪)の成否についてのみ認定・判断したことは当然というべきである。弁護人の主張は採用できない。
 3 児童ポルノ製造罪の成否
 前記2と同様に,前記の撮影行為に加えて,判示の画像データ2点を判示のサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させる行為自体はA自身が行っているものの,Aは,これらの行為の性的な意味を十分に理解していたとはいい難<,また,被告人の前記要求を拒否するのは難しかったといわざるを得ないから,被告人については,少なくとも年少者であるAを利用して自己の犯罪行為を行ったものとして児童ポルノ製造罪の間接正犯が成立するものと認められる。
第2 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係
 検察官は,判示第3の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係は併合罪である旨主張する。
 しかしながら,判示第3において,強制わいせつ罪の実行行為は,Aに要求し,2回にわたり,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させるというもの,児童ポルノ製造罪の実行行為は,Aに要求し,Aに前記姿態をとらせて撮影させた上,その画像データ2点を判示のサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させるというものであり,強制わいせつ罪の実行行為には児童ポルノ製造罪の実行行為ではない行為が含まれておらず,強制わいせつ罪の実行行為が児童ポルノ製造罪の実行行為の一部とほぼ完全に重なり合っているといえる。また,強制わいせつ罪の実行行為の本質的な部分は撮影行為,児童ポルノ製造罪の実行行為の本質的な部分は撮影(製造)行為であるといえ,前記両行為は,行為の性質が異質なものとまではいえず,単一の意思決定に基づくものともいい得る。この点,判示第3は,検察官が引用する最高裁平成21年10月21日第一小法廷決定(刑集63巻8号1070頁)(捜査報告書〔甲55〕の番号9)や弁護人が引用する東京高裁平成30年7月25日判決(報告書〔弁3〕の別紙2),あるいは東京高裁平成24年11月1日判決(高刑集65巻2号18頁)等とは事案の内容・性質を異にするといえる。
 そうすると,前記両行為は,自然的観察のもとで社会的見解上1個のものと評価できるから,前記両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるというべきである(なお,検察官が指摘する前記両罪の保護法益の相違については,前記両罪が包括一罪にならないことの根拠とはなり得るが,前記判断を左右するものではない。)。
(量刑の理由)
 令和3年2月3日
  京都地方裁判所第1刑事部
          裁判官 入子光臣

阪高裁令和3年7月4日宣告裁判所書記官
令和3年(う)第287号
判決
上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)違反被告事件について,令和3年2月3日k地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官太田玲子出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中90日を原判決の刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹(主任)作成の控訴趣意書及び弁護人園田寿作成の控訴趣意書に記載のとおりであり,論旨は,不告不理の原則違反,理由不備・理由齪嬬,法令適用の誤り,量刑不当である。
そこで記録を調査し,当審での事実取調べの結果をも併せて検討する(なお,以下の説示では,基本的に原判決と同様の呼称,略称を用いる。)。
第1 原判決の認定事実
原判決が認定した罪となるべき事実の要旨は,被告人が,
(1)当時10歳の女子児童Bが13歳未満であることを知りながら,平成30年5月12日頃から同年8月27日頃までの間,7回にわたり,甲市内に駐車中の自動車内において,Bに対し,その陰部及び乳首を指で触るなどした上,これをそれぞれ被告人が使用するスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をし(原判示第1,強制わいせつ。以下「第1事実」という。),
(2)Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,同年5月12日頃から同年8月27日頃までの間,16回にわたり,前記(1)記載の場所において,Bに,被告人がBの陰部及び乳首を指で触るなどの姿態をとらせ,これをそれぞれ前記(1)記載のスマートフォンで動画撮影し(動画撮影行為は(1)と同一のものである。),その動画データ16点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し,もって児童ポルノを製造し(原判示第2,児童ポルノ製造。以下「第2事実」という。),
(3)当時9歳の女子児童Aが13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和2年3月5日,甲市所在の被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォンからAが使用するタブレット端末に,アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,前記スマートフオンに送信するよう要求し,その頃,2回にわたり,k府内のA方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これを前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を前記ダイレクトメッセージ機能を使用して同タブレット端末から前記スマートフォンに送信させてこれを前記アプリケーションソフトを運営・管理する法人が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をするとともに,児童ポルノを製造した(原判示第3強制わいせつ及び児童ポルノ製造。以下「第3事実」という。),というものである。
2なお,前記(3)は,Aに対し,前記ダイレクトメッセージ機能を使用して,その陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させたという強制わいせつの事実(令和2年8月27日付け起訴状記載の公訴事実第1)と,同要求をし,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させた上,その画像データ2点を被告人のスマートフォンに送信させて前記サーバコンピュータ内に記憶・蔵置させたとい星う児童ポルノ製造の事実(同公訴事実第2・原審第3回公判期日において令和3年1月18日付け訴因変更請求書のとおり訴因変更許可決定)として別個の訴因で起訴され,検察官は併合罪の関係にあると主張したが,原判決が観念的競合の関係にあると判断したものである。
第2 当裁判所の判断
1 第3事実の不告不理原則違反の論旨について
所論は,第3事実について,強制わいせつの訴因にはAが撮影した画像データを被告人のスマートフォンに送信し,同画像データがサーバコンヒ°ユータ内に記憶・蔵置された事実が含まれていないのに,原判決がこれらの事実を含めて強制わいせつと認定した点は,不告不理の原則違反(訴因逸脱認定)であると主張する。
しかし,原判決が前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実をも刑法176条後段にいう「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとは認められない。
原判決の「罪となるべき事実」の記載は,観念的競合として1個の行為と評価されるAに対する強制わいせつとAに係る児童ポルノ製造の事実をまとめて記載したものと読むことは十分可能である。
そして,前記第1の2のとおり,原審は,別個の訴因として起訴された前記強制わいせつ及び児童ポルノ製造を観念的競合の関係にあると解したという経緯があり,また,原判決は,その(判示第3の事実に関する争点に対する判断)中の「第2強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係」(9頁)において,「強制わいせつ罪の実行行為は,Aに要求し,2回にわたり,Aに陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させるというもの」と明示しており,訴因外の事実である前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実をも「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとうかがわせる記載は見当たらない。
そうすると,原判決が,前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実を「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとはいえず,訴因逸脱認定などということはできない。
2第1事実及び第3事実の理由不備・法令適用の誤りの論旨について
所論は,原判決は刑法176条にいう「わいせつな行為」について定義を示せていないから,理由不備があり,また,同条は罪刑法定主義に反していて文面上無効であるにもかかわらず,原判決は第1事実及び第3事実について同条を適用したのであるから,法令適用の誤りがあると主張する。
しかし,法規には通常ある程度の解釈の余地が含まれるものである。
そして,「わいせつな行為」という言葉は一般的な社会通念に照らせばある程度の具体的なイメージを持つことができ,また,あえて別の言葉で定義付けすること自体困難である上,定義付けしても,それで,いわゆる規範的要件である「わいせつな行為」への該当性判断が直ちに容易になるとも思われない。
「わいせつな行為」に該当するか否かを安定的に判断するには,後記3(1)のとおり,どのような考慮要素をどのような判断基準で判断していくべきなのかという判断の仕方こそが重要であるといえ,定義付けが必須とはいえない。
刑法176条の「わいせつな行為」について定義を示せていないから原判決には理由不備があるとか,同条は罪刑法定主義に反していて文面上無効であるなどというのは,独自の見解であって採用の限りではなく,第1事実及び第3事実について理由不備や法令適用の誤りがあるとはいえない。
3第3事実の法令適用の誤り(「わいせつな行為」該当性)の論旨について
(1)

所論は,被告人が,Aに対し,アプリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して,その陰部及び乳房を露出した姿態をとって撮影してその画像データを被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせて撮影させたという本件行為は,遠隔地にいるAに裸体を撮影させたにとどまり,性的侵襲は弱く,性的意味合いは皆無か,極めて薄いから,「わいせつな行為」に該当しない,本件行為(被告人がAから同画像を受信し,閲覧した事実は含まれない。)だけでは被告人は性的興奮を得ていないから,「わいせつな行為」に該当せず,該当するとしても,強制わいせつ未遂罪が成立するにとどまると主張する。
しかし,まず,刑法176条の「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,当該行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最高裁平成29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照。)。
これを踏まえて検討すると,本件行為は,当時9歳の女子児童であるAに対してその陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させたというものであり,撮影させた部位のうち,陰部(性器自体は写っていないものの,その周辺部である。)は性的要素が強く,乳房も性を象徴する典型的な部位である。
また,衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は,裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって,単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし,続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も,自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を,さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり,それによって性的侵害性が強まるといえるから,「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる。

本件では,被告人は遠隔地からAに指示しているから,直接Aの姿態を目にしていないという点で,面前で行う場合と比べてAの性的自由を侵害する程度が小さいとはいえるものの,Aに陰部等を露出した姿態をとらせ,これを撮影させた行為は,Aに一定の性的行為を行わせ,かつ,その内容を第三者が知り得る状態に置く行為であり,Aの身体を性的に利用する行為といえる。
本件は,行為そのものから直ちに「わいせつな行為」とまで評価できないものの,一定の性的性質を備えていて,「わいせつな行為」に当たり得るものというべきである。
なお,本件行為にはAに撮影させた画像データを被告人に送信させたことや被告人が受信した画像データを閲覧したことは含まれていないが,Aに陰部等を露出させた姿態をとらせてそれを撮影させたことによって,被告人を含む他人がその画像を見ることがあり得る状態に置かれており,性的侵害性は大きいといえるし,被告人はAに対して撮影した画像データを被告人に送信することも要求して撮影させており,Aがこの要求に従って画像データを送信して被告人がこれを見ることになる具体的な危険性も認められるから,撮影させた画像データを被告人に送信させたこと等が含まれていないことが,「わいせつな行為」該当性を否定する事情とはならない。
さらに,本件の具体的状況等についてみると,被告人は当時53歳の中年男性,Aは当時9歳(小学3年生)であり,‘動画配信アプリケーシヨンを通じて知り合い,ダイレクトメッセージ機能を使用してやり取りをしていた関係にすぎず,直接の面識はなく,本件行為は,被告人とAが性行為をしているかのようなメッセージのやり取りをしている状況においてなされたものである(例えば,被告人は,Aに対し,陰部等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に,「マンジル,白いの出てくるからね」「おちんちんを,なめてごらん」「ぬれたおちんちんをまんこにこするね」というメッセージを,乳房等を露出した姿態の画像データを送信させた直後に「もみながらなめるね」「おちんちんもこすってるぞ」といったメッセージを送信している。)。
また,被告人にはかねてから年少の女児を対象とする性的嗜好があった。
このような本件行為が行われた際の具体的状況等をも考慮すると,本件行為は性的な意味合いが相当強いものといえるから,「わいせつな行為」に当たるといえる。

原判決は,Aへの身体的接触がなく,被告人が撮影時にAにとらせた姿態を見ていないという本件行為の特徴を指摘して本件行為そのものが持つ性的性質は不明確であるともいえるとした上で,撮影の対象となった部位が性を象徴する典型的な部位等であること,被告人とAの関係性や各属性,本件に至る経緯や本件の前後に被告人が送信したメッセージの内容,被告人が自己の性欲を満たす目的を有して』.いたことなどを考盧すると,撮影時に被告人がAの姿態を見ていなかったことを踏まえても,本件行為の性的な意味合いの程度は相当に強いといえるから,「わいせつな行為」に当たると判断した。
原判決は,身体的接触がなく,Aの姿態を直接見ていない本件行為に「わいせつな行為」該当性を認め得るほど強い性的意味合いがあることについて,本件行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度それ自体を判定し,それに着目した説明が十分なされているか疑問があるが,おおむね前述したところと同趣旨の判断をしているものと解され,その結論に誤りはない。
(2)
所論は,画像送信要求行為(必ずしも明らかでないが,年少者にその裸体等を撮影した上で送信するよう要求する行為を指すものと解する。)について,大阪府青少年健全育成条例が改定されて規制されるなど,独立の犯罪化の動きがあることは,画像送信要求行為を「わいせつな行為」と評価することが困難であるという現時点での社会的評価の表れであり,一つの立法事実であると考えられるなどとも主張する。
しかし,所論が指摘する大阪府青少年健全育成条例は,青少年に係る児童ポルノの提供を求めることを禁止し,その違反のうち,当該青少年に拒まれたにもかかわらず,提供を求めた場合と,威迫等の方法により提供を求めた場合に限って罰則(罰金)を設けたものであり(同条例42条の2,56条3号),例えば,青少年に現に自己の裸体等を撮影させることは要件とされていないし,より未熟な13歳未満の青少年との関係でも,当該青少年に拒まれたという事情や威迫等の方法により提供を求めたという事情がなければ処罰の対象とはならないのであり,スマートフォン等を使用して裸体等を撮影して送信するよう要求し(被害者が14歳以上の場合は暴行・脅迫を手段として),現に被害者に裸体等を撮影させる行為を強制わいせつ罪として罰することとは,刑罰の対象となる行為や目的,刑の重さの点で大きく異なる。
そうすると,青少年に自己に係る児童ポルノの提供を求める行為について条例で罰則を設ける動きがあることは,本件行為が「わいせつな行為」に当たるという解釈を妨げる事情とはいえない。
4 第1事実及び第2事実の法令適用の誤り(罪数),の論旨について
所論は,第1事実の各強制わいせつ罪及び第2事実の各児童ポルノ製造罪(児童ポルノ法7条4項のもの。以下同じ。)の関係について,同一機会の犯行に係る強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪は,重なり合うものであり,社会的見解上1個の行為と評価すべきであるから,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるのに,同法45条前段の併合罪の関係にあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
しかし,本件のように児童の陰部等を触るなどのわいせつな行為をするとともに,その行為等を撮影して児童ポルノを製造した場合,わいせつな行為と児童ポルノを製造した行為とは,かなりの部分で重なり合っていることもあるが,通常伴う関係にあるとはいえない上,強制わいせつ罪では児童の陰部を触るなどのわいせつな行為を行ったという側面から犯罪とされているのに対し,児童ポルノ製造罪ではそのような児童の姿態を撮影して記録・保存する行為を行ったという側面から犯罪とされているのであって,それぞれの行為は社会的評価としても別個のものといえる。
原判決は,これと同様の理由で,第1事実の各強制わいせつ罪と,それと同一機会における第2事実の各児童ポルノ製造罪をいずれも併合罪の関係にあるとしたものと解され,原判決の法令適用に誤りはなく,論旨は理由がない。
5 理由齟齬の論旨について
所論は,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の関係について,原判決が,第1及び第2事実の両罪を併合罪の関係にあるとしながら,第3事実の両罪を観念的競合とした点に理由齟齬があると主張する。
しかし,原判決は,第1及び第2事実の両罪と,第3事実の両罪とでは,強制わいせつ行為の内容・性質が大きく異なることなどを理由に,両罪の関係について異なる判断をしたものと解されるから,理由に齪鋸があるとはいえない。
6量刑不当の論旨について
令和3年7月14日
大阪高等裁判所第6刑事部

高額の対償を供与すると欺して性交等しても不同意性交罪(177条2項)は適用されないし、欺して裸画像を撮影送信させても、不同意わいせつ罪(176条2項)は適用されない。

高額の対償を供与すると欺して性交等しても不同意性交罪(2項)は適用されないし、欺して裸画層を撮影送信させても、不同意わいせつ罪(2項)は適用されない。

 欺した場合は、176条2項とか177条2項が検討されるわけですが、お金を払うと欺した場合には適用されません。

第一七六条(不同意わいせつ)
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

第一七七条(不同意性交等)
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

 性行為にあたっては、いろいろ不実の事実が告げられるじゃないですか。「独身だ」「俺は金持ちだ」「結婚しよう」「金払う」「避妊する」とか。
 それは「相手方の職業、資力や婚姻関係の有無という属性に関する誤信があるにすぎないことから、いずれも、「行為をする者について人述い」している場合には該当しない。
このように、改正後の刑法第176条第2項及び第177条第2項において、行為の相手方の社会的地位等といった属性について誤信があるにすぎない場合を処罰の対象としていないのは、このような誤信は、言わば、性的行為をする動機に関する誤信であり、現時点において、そのような誤信があることのみをもって処罰対象とすべきであるとまでは必ずしもいえないと考えられることによるものである。」とされています。


 欺した児童買春については、高裁判例があって、性行為については真摯な承諾がある・有効な対償供与約束があるという認定になっています。

名古屋高等裁判所金沢支部平成14年3月28日(公刊物未掲載)
第1 控訴趣意中,事実の誤認の論旨(控訴理由第19)について
 所論は,原判決は,原判示第2,第3の1及び第4の各児童買春行為について,対償の供与の約束をしたことを認定したが,証拠によれば,被告人にはこのような高額な対償を支払う意思はなく,詐言であったことが明らかであるとし,このような場合には児童買春処罰法2粂2項にいう代償の供与の約束をしたことには当たらないから,同法4条の児童買春罪(以下,単に「児童買春罪」という。)は成立しないという。
 しかしながら,児童買春は,児童買春の相手方となった児童の心身に有害な影響を与えるのみならず,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長に重大な影響を与えるものであることから規制の対象とされたものであるところ,対償の供与の約束が客観的に認められ,これにより性交等がされた場合にあっては,たとえ被告人ないしはその共犯者において現実にこれを供与する具体的な意思がなかったとしても,児童の心身に与える有害性や社会の風潮に及ぼす影響という点に変わりはない。しかも,規定の文言も「その供与の約束」とされていて被告人らの具体的意思如何によってその成否が左右されるものとして定められたものとは認め難い。対償の供与の約束が客観的に認められれば,「その供与の約束」という要件を満たすものというべきである。関係証拠によれば,原判示第2,第3の1及び第4のいずれにおいてもそのような「対償の供与の約束」があったと認められる。所論は採用できない(なお,所論は,形式的な「対償の供与の約束」でよいというのであれば,準強姦罪で問うべき事案が児童買春罪で処理されるおそれがあるとも主張するが,準強姦罪は「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,若しくは抗拒不能にさせて姦淫した」ことが要件とされているのに対し,児童買春罪では対償を供与することによって性交等する関係にあることが必要であって,両者は明らかにその構成要件を異にするから,所論を採用することはできない。)。
第2 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の論旨(控訴理由第4及び第23)について
1 所論は,原判示第2ないし第4の各行為は,被害者らの真摯な承諾なく抗拒不能の状態でされたもので,強姦,準強姦,強制わいせつ,準強制わいせつ罪に当たるとし,いずれについても被害者らの告訴はなく,親告罪たる強姦罪等の一部起訴は許されないから,本件起訴は違法であって訴訟手続の法令違反があるという(控訴理由第23)。
 しかしながら,児童買春罪や児童買春処罰法7条2項の児童ポルノ製造罪(以下,単に「児童ポルノ製造罪」という。)は親告罪ではなく,しかも強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず,原判示第2ないし第4が強姦罪等の一部起訴であるとはいえないから,告訴欠如の如何を論ずるまでもなく(最高裁昭和28年12月16日大法廷判決・刑集7巻12号2550貢参照),所論は失当である。なお,被告人の捜査段階及び原審公判の供述,共犯者の捜査段階の供述並びに被害者らの各供述によると,被告人らが被害者らに対して,畏怖させるような脅迫言辞を申し向けたことは認められない上,被害者らが性交等に及ぶ際あるいはその後の被告人らとのやりとりをみると,被害者らが恐怖心もあって買春に応じたと述べる部分もあるものの,他方で,買春行為の後,明日は行かないから,1日目の分だけお金を払って欲しい旨の電子メールを被告人に送信したり(原判示第2),これだけ恥ずかしい思いをしたのだからお金はもらって当然と思い,振込みでなく現金で欲しい旨申し出,受取りのため被告人が説明した場所に赴いたり(同第3の1),2度にわたって性交等に応じ,しかも2度目の際被告人に名刺を要求してこれを受け取り,記載してあった電話番号に電話をかけたり(同第4)していることなどが認められ,これら言動からすると,所論指摘の点を踏まえても,被害者らは対償の供与の約束により買春行為に応じたものと認めるのが相当であり,各被害者が抗拒不能の状況にあったということはできない。

法務省刑事局付梶美紗「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要(1)

(エ) 「行為がわいせつなものではないとの誤信」及び「行為をする者について人違い」(改正後の刑法第176条第2項及び第177条第2項)の意義
「行為がわいせつなものではないとの誤信」とは、現に行われようとしている行為(実行行為)が、わいせつなものではないとの錯誤があることを意味するものであり、例えば、
○真実はわいせつな行為であるのに、医療行為であると誤信している場合
などがこれに該当する。
「行為をする者について人違い」とは、行為者の同一性について錯誤があることを意味するものであり、例えば、
○真実は夫とは別の人物であるのに、暗闇の中で、行為者を夫と勘違いした場合などがこれに該当する。
これに対し、行為者の同一性は正しく認識した上で、その属性に関する誤信をしているにすぎない場合には、「人違い」には該当しない(注10)

(注10) 例えば、
○真実は無職であるのに金持ちの社長であると偽られ、そのように誤信した場合
○真実は既婚者であるのに、未婚者であると偽られ、そのように誤信した場合
については、相手方の職業、資力や婚姻関係の有無という属性に関する誤信があるにすぎないことから、いずれも、「行為をする者について人述い」している場合には該当しない。
このように、改正後の刑法第176条第2項及び第177条第2項において、行為の相手方の社会的地位等といった属性について誤信があるにすぎない場合を処罰の対象としていないのは、このような誤信は、言わば、性的行為をする動機に関する誤信であり、現時点において、そのような誤信があることのみをもって処罰対象とすべきであるとまでは必ずしもいえないと考えられることによるものである。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2025060200884&g=soc
再逮捕容疑は昨年10月5~8日、女子高生の下半身などを写した画像21枚と動画4本を送信させ、保存した疑い。
 同署によると、容疑者は昨年9月にインスタグラムで女子高生と知り合い、「写真50枚、動画35本の1セットで200万円以上払う」とメッセージを送信。画像などを送らせたが、現金は支払わなかった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/eea10a77908eddd1f662df12e2a262152eb4646b
17歳の女子高校生に「2500万円渡すから会おうよ」などと約束して自宅に誘い出し、みだらな行為をした疑いがもたれています。
 警視庁によりますと容疑者は少女とSNSで知り合い、裸の写真を送らせるなどしていたほか、約束した金銭は支払っていませんでした。

鳥取県青少年健全育成条例の「生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体」は、児童ポルノ法の「児童ポルノ」ではない。

鳥取県青少年条例の「生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体」は、児童ポルノ法の「児童ポルノ」ではない。

 国も法律の定義は

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
(定義)
第二条 
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

とされています。
 この2条3項

3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。

について、条例10条では

9 この章以下において「児童ポルノ等」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいい、生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体を含む。

として拡張しようとするものです。
 解釈ではなく拡張だと思います。

 条例10条9項の「青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)」」も含めるというのは

東京地裁h28.3.15
児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には,実在の児童とCGで描かれた児童とが同一である(同一性を有する)と判断でき,そのような意味で同一と判断できるCGの画像データに係る記録媒体については,同法2条3項にいう「児童ポルノ」あるいは同法7条4項後段の「電磁的記録」として処罰の対象となると解すべきである。
 そして,このことは,当該CGが,実在の児童を直接見ながら描かれたのでなく,実在の児童を写した写真を基に描かれた場合であっても,それが同写真(写真撮影時には,架空の児童でなく被写体の児童が存在していることが前提である。)を忠実に描き,上記の意味において同写真と同一と判断できる場合についても,同様と解すべきである。
・・・・・
東京高裁h29.10.,24
しかし,必ずしも,被写体となった児童と全く同一の姿態,ポーズをとらなくても,当該児童を描写したといえる程度に,被写体とそれを基に描いた画像等が同一であると認められる場合には,その児童の権利侵害が生じ得るのであるから,処罰の対象とすることは,何ら法の趣旨に反するものではないというべきである
・・・・
最決r02.1.27
原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,昭和57年から同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した上,不特定又は多数の者に提供する目的で,本件各CGを含むファイルをハードディスクに記憶,蔵置させているところ(以下,被告人の上記行為を「本件行為」という。),本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。
 上記事実関係によれば,被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。

という判決文を参考にして起案されたと思われますが、この判決は、別途児童のヌード写真集があって、裸の写真があって、胸とか陰部とかも写真がある場合に、
  実在の児童を写した写真を基に描かれた場合
で、
  同写真を忠実に描いた場合
というわけですから、胸とか陰部も写真のまま描かれたものです。
国法は、条例のいうように「青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)」として、顔だけから、乳房陰部を想像で描いたものも含むという解釈ではありません。

https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1378851/kaiseigozenbun.pdf
鳥取県青少年条例
第10条
9 この章以下において「児童ポルノ等」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいい、生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体を含む。
・・・
児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第18条の2 何人も、正当な理由がなく、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めてはならない。 (児童ポルノ等の作成、製造及び提供の禁止)
第18条の3 何人も、児童ポルノ等の作成又は製造(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる作成又は製造を含む。)をしてはならない。 2 何人も、SNSの利用その他の手段により児童ポルノ等の提供(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる提供を含む。)をしてはならない。

裁判年月日  平成28年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(特わ)1027号
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  有罪(懲役1年及び罰金300万円、執行猶予3年(求刑 懲役2年及び罰金100万円))  上訴等  控訴<破棄自判>  文献番号  2016WLJPCA03156003

第3  本件16点の画像データが記録されたハードディスクが児童ポルノ法2条3項の「電磁的記録に係る記録媒体」として児童ポルノに当たり得るか否か(本件公訴事実第1),また,本件CGの画像データが同法7条4項後段の「電磁的記録」(本件公訴事実第2)に当たり得るか否か
 1  本件CGが児童ポルノ法2条3項3号の要件該当性を満たすものか否かは後に検討するが,そもそも写真ではなく,本件16点の画像データに係る記録媒体であっても同法2条3項の「児童ポルノ」に当たるか否か,また,本件CGの画像データが同法7条4項後段の「電磁的記録」に当たるか否か,そして,それが,実在の児童を直接見ながら描かれたものではなく,写真を基に描かれたものであってもそれらに当たり得るか否かを検討する。
 2  児童ポルノ法は,18歳未満の者である「児童」に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み,あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ,児童買春,児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに,これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより,児童の権利を擁護することを目的としている(同法1条)。そして,同法7条は,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を及ぼし続けるだけではなく,このような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な影響を与えるため,児童ポルノを製造,提供するなどの行為を処罰するものである。こうした目的や趣旨に照らせば,「適用に当たっては,国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」(同法3条)ものの,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したと認められる物については,CGの画像データに係る記録媒体であっても同法2条3項にいう「児童ポルノ」に当たり得,また,同画像データは同法7条4項後段の「電磁的記録」に当たり得るというべきである(なお,実在の児童を描写した絵であっても,同法2条3項柱書の「その他の物」として児童ポルノに当たり得るというべきである。)。そして,このような児童ポルノ法の目的や同法7条の趣旨に照らせば,同法2条3項柱書及び同法7条の「児童の姿態」とは実在の児童の姿態をいい,実在しない児童の姿態は含まないものと解すべきであるが,被写体の全体的な構図,CGの作成経緯や動機,作成方法等を踏まえつつ,特に,被写体の顔立ちや,性器等(性器,肛門又は乳首),胸部又は臀部といった児童の権利擁護の観点からしても重要な部位において,当該CGに記録された姿態が,一般人からみて,架空の児童の姿態ではなく,実在の児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には,実在の児童とCGで描かれた児童とが同一である(同一性を有する)と判断でき,そのような意味で同一と判断できるCGの画像データに係る記録媒体については,同法2条3項にいう「児童ポルノ」あるいは同法7条4項後段の「電磁的記録」として処罰の対象となると解すべきである。
 そして,このことは,当該CGが,実在の児童を直接見ながら描かれたのでなく,実在の児童を写した写真を基に描かれた場合であっても,それが同写真(写真撮影時には,架空の児童でなく被写体の児童が存在していることが前提である。)を忠実に描き,上記の意味において同写真と同一と判断できる場合についても,同様と解すべきである。
 この点,弁護人は,①児童ポルノ法の「製造」とは,実在する児童が被写体となって,実際にポーズをとらせて写真,その他の物に直接記録することをいい,機械的な複写の場合を除いては,実在の児童を被写体として直接描写するものでない限り,同法2条3項にいう「児童ポルノ」あるいは同法7条4項後段の「電磁的記録」に該当しない,②児童ポルノ法7条3項は,実在する児童が被写体となり,実際にポーズ等をとったものを描写することを予定しており,同条5項も,同条3項と同じく製造罪に関する条項であるが,両者で「製造」を区別するべき合理的な理由はなく,同条5項においても,実在する児童が被写体となって,実際に撮ったポーズを写真その他の物に直接記録することを意味すると主張する。
 しかしながら,実在の児童の姿態を撮影した写真を基に描かれた場合であっても,出来上がった画像が,一般人からみて実在の児童の姿態を描写したものと認められ,それがさらに不特定多数の者に提供されるなどして拡散する危険がある限り,前記児童ポルノ法の目的や同法7条の趣旨からそれを規制する必要があることは,実在の児童の姿態を直接見て描写する場合と異なるものとは解されない。このことは,児童ポルノ法は,児童ポルノを「児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」と定義しており(同法2条3項),実在する児童の姿態を直接見て描写したものであることを要件としていないことや,同法7条3項と異なり,同条4項に掲げる行為の目的が存在することを要件としている同条5項においては,「製造」についてその方法を具体的に定めておらず,その手段は限定されていないこととも整合すると解される。
 前記弁護人の主張は採用できない。

裁判年月日  平成29年 1月24日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(う)872号
事件名  児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  破棄自判・一部無罪、一部有罪(罰金30万円(求刑 懲役2年及び罰金100万円))  上訴等  上告 
文献番号  2017WLJPCA01246001

   ア  児童の実在性について
 (ア) 所論は,原判決が,「一般人からみて,架空の児童の姿態ではなく,実在の児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には,実在の児童とCGで描かれた児童とが同一である(同一性を有する)と判断でき」ると説示した点をとらえて,一般人が,実在の児童の姿態を忠実に描写したと認識しさえすれば,実在しない児童の姿態を描写した場合についても処罰の対象となる趣旨であるとして,この点を種々論難する。
 そもそも,原判決は,前記のとおり,児童が実在することを要するとの前提に立った上,本件CGについて,被写体となった児童が実在するか否かを,各CGの元となった素材画像の写真の出典等について検討した上で判断し,実在性が認められたものについてのみ,児童ポルノに該当すると判断したのであるから,実在しない児童の姿態を描写した場合も処罰の対象となるという判断をしたとの所論は,前提を欠くものである。
 さらに,原判決が上記のように説示した趣旨は,その実際の判断過程に即してみると,素材画像の被写体となった児童の実在性が認められた場合に,当該CGの画像等が,その実在する児童を描写したといえるかどうか,すなわち,被写体となった実在の児童とそれを基に作成されたCG画像等が,同一性を有するかどうかを判断するに当たって,一般人の認識という基準を用いたものと解される。このように,通常の判断能力をもつ一般人が,社会通念に照らして実在する児童と同一であると認識できる場合には,当該描写行為等が処罰の対象となることを認識できるから,このような基準を採用したからといって,刑罰法規の明確性を害するものではない。そうすると,原判決の前記説示は,いささか表現が不明確ではあるものの,その判断に誤りはない。所論は,原判決を正解しないものであって,採用の限りでない。
 (イ) 所論は,「児童の姿態」とは,実在する児童が被写体となって,実際にとった姿態に限られると主張し,一般人がどう認識しようが,実在しない児童の姿態を処罰の対象とすることは法の趣旨を逸脱するものであると主張する。しかし,必ずしも,被写体となった児童と全く同一の姿態,ポーズをとらなくても,当該児童を描写したといえる程度に,被写体とそれを基に描いた画像等が同一であると認められる場合には,その児童の権利侵害が生じ得るのであるから,処罰の対象とすることは,何ら法の趣旨に反するものではないというべきである(児童ポルノ法の趣旨については,後に検討する。)。
 なお,この点に関して,所論は,当審で取り調べたA4氏の意見書(当審弁1。以下「A4意見書」という。)を引用し,写真を参考にした絵画表現は,機械による複写とは異なり,独立した新たな創作物であるから,手描きの作品を機械による複製と同視することは,罪刑法定主義に反するとも主張する。そもそも,被告人の本件CGの作成方法については,原判決が認定するとおり,一から手描きで描いたものではなく,パソコンのソフトを利用して素材画像をなぞるなどして作成されたものであると認められ,純粋な手描きによる絵画とは異なるものであるが,この点を措くとしても,一般に,写真による複写の場合であっても,現在の技術を前提とすれば,データを容易に加工することが可能であり,他方,手描きによる場合であっても,被写体を忠実に描写することも可能であることからすれば,必ずしも,描写の方法いかんによって児童ポルノの製造に当たるか否かを区別する合理的な理由はないというべきである。描写の方法がいかなるものであれ,上記のとおり,実在する児童を描写したといえる程度に同一性の認められる画像や絵画が製造された場合には,その児童の権利侵害が生じ得るのであるから,そのような行為が児童ポルノ法による処罰対象となることは,同法の趣旨に照らしても明らかである。ちなみに,児童ポルノに絵画が含まれ得ることは,児童ポルノ法の立法段階においても前提とされていたことである。
 所論は採用できない。

裁判年月日  令和 2年 1月27日  裁判所名  最高裁第一小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平29(あ)242号
事件名  児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  棄却  文献番号  2020WLJPCA01279001


要旨
◆児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義
◆児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否

判例タイムズ社(要旨)】
◆1.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)2条3項にいう「児童ポルノ」の意義
◆2.児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの)7条5項の児童ポルノ製造罪の成立と児童ポルノに描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることの要否

 
裁判経過
控訴審 平成29年 1月24日 東京高裁 判決 平28(う)872号 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
第一審 平成28年 3月15日 東京地裁 判決 平25(特わ)1027号 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件

 
出典
刑集 74巻1号119頁
裁時 1740号3頁
裁判所ウェブサイト
判タ 1487号166頁 
判時 2497号102頁
 
評釈
村田一広・曹時 74巻9号212頁 
村田一広・ジュリ 1563号104頁 
仲道祐樹・ジュリ臨増 1557号126頁(令2重判解) 
鎮目征樹・論究ジュリ 38号234頁 
松本麗・研修 870号13頁
前田雅英・WLJ判例コラム 194号(2020WLJCC006)   
Westlaw Japan・新判例解説 1248号(2020WLJCC133)   
永井善之・法セ増(新判例解説Watch) 27号177頁
岡野誠樹・法セ増(新判例解説Watch) 27号13頁
玉本将之・警察学論集 73巻7号180頁
横山亞希子・警察公論 75巻9号86頁
菊地一樹・刑事法ジャーナル 65号119頁
上田正基・神奈川法学 54巻3号43頁
 
参照条文
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項(平26法79改正前)
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項(平26法79改正前)
 



裁判年月日  令和 2年 1月27日  裁判所名  最高裁第一小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平29(あ)242号
事件名  児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  棄却  文献番号  2020WLJPCA01279001


 
主文

 本件上告を棄却する。
 

 
理由

 弁護人山口貴士ほかの上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み,職権で判断する。
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの。以下「児童ポルノ法」という。)2条1項は,「児童」とは,18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。
 原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,昭和57年から同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した上,不特定又は多数の者に提供する目的で,本件各CGを含むファイルをハードディスクに記憶,蔵置させているところ(以下,被告人の上記行為を「本件行為」という。),本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。
 上記事実関係によれば,被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。
 所論は,児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,児童ポルノの製造時において,当該児童ポルノに描写されている人物が18歳未満の実在の者であることを要する旨をいう。しかしながら,同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しないというべきである。所論は理由がない。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官山口厚の補足意見がある。
 裁判官山口厚の補足意見は,次のとおりである。
 私は,法廷意見に全面的に賛同するものであるが,補足して意見を述べておきたい。
 児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには,視覚により認識することができる方法で描写されたものが,実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化された性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。児童ポルノ法は,このような利益を現実に侵害する児童ポルノの製造行為を処罰の対象とすること等を通じて,児童の権利の擁護を図ろうとするものである。
 (裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口厚)
 

https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20250602/4040020472.html
ことし4月に施行された鳥取県の改正・青少年健全育成条例では、県内の子どもの顔写真をAIの技術でわいせつな画像や動画に加工したものを「児童ポルノ」と規定し、作成や他人への提供を禁止しています。

県では条例の違反者に対する罰則として刑事罰を導入できるか検討していましたが、検察庁はこれに否定的な見解を伝えたということです。

これを受けて鳥取県は、刑事罰の導入を断念したうえで、行政罰を盛り込んだ条例の改正案を2日、県で開かれた会議で示しました。

それによりますと違反者には5万円以下の過料を科すとしています。

そのうえで、画像や動画の廃棄や削除を命じることにしていて、これに従わない場合は、追加で5万円以下の過料を科すほか、違反者の氏名を公表するということです。

平井知事は「子どもたちの人生が傷つけられないことに価値をおきたい。県として責任を持って取り組む意志を条例で明確化したい」と述べました。

追記 2025/06/13
検察協議の経緯を見ると、
鳥取県は罰金30万円の罰則を付けたかったようですが、検察庁が反対したので、見送られています。

令和7年6月議会上程案
児童ポルノ等の作成、製造及び提供の禁止)
第18条の3 何人も、児童ポルノ等の作成又は製造(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる作成又は製造を含む。)をしてはならない。
児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第18条の2 何人も、正当な理由がなく、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。)の提供を求めてはならない。2 何人も、SNSの利用その他の手段により児童ポルノ等の提供(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる提供を含む。)をしてはならない。

第26条 略
2~4 略
5 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、30 万円以下の罰金に処する。
(1)~(3) 略
(4) 第18条の2及び第18条の3の規定に違反したとき

第202500049485号
令和7年5月15日
鳥取地方検察庁検事正 様
鳥取県総務部長
罰則規定を含む条例の一部改正について(協議)
このことについて鳥取県青少年健全育成条例(昭和55年鳥取県条例第34号)を一部改正したいと考えています。
ついては、別添資料を送付しますので、令和7年5月22日(木)までに御意見をお聞かせください。

鳥地検企発第53号  
令和7年5月28日  
鳥取県総務部長 殿
鳥取地方検察庁検事正 福居幸一   
罰則規定を含む条例の一部改正について(回答)
 本月15日付け第202500049485号をもって協議依頼のあった「罰則規定を含む条例の一部改正について」について、下記のとおり回答します。

 本件条例第26条第5項第4号は、明確性及び現行法との適合性につき疑義がある同第18条の3の規定に違反した者を罰則の対象とするものであることから、適用することは困難であると思料する

令和7年6月議会上程案
児童ポルノ等の作成、製造及び提供の禁止)
第18条の3 何人も、児童ポルノ等の作成又は製造(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる作成又は製造を含む。)をしてはならない。
児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第18条の2 何人も、正当な理由がなく、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。)の提供を求めてはならない。
2 何人も、SNSの利用その他の手段により児童ポルノ等の提供(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる提供を含む。)をしてはならない。

第26条 略
2~4 略
5 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、30 万円以下の罰金に処する。
(1)~(3) 略
(4) 第18条の2及び第18条の3の規定に違反したとき

不同意性交致傷で求刑9年宣告10年(東京地裁r6.7.24)

不同意性交致傷で求刑9年宣告10年(東京地裁r6.7.24)


 DBで検索した痕跡がありますが、「本件犯行は同種事案(路上類型、性交の点未遂、凶器等あり、傷害の程度2週間以内、被害者の年齢13歳以上)の中でも重い部類に属すると評価するのが相当な事案であり、特に上記のとおりの被告人に対する責任非難の大きさに照らすと、検察官の求刑はやや軽いと言わざるを得ない。」で、9年じゃなく10年が出てくるんですかねえ




判年月日  令和 6年 7月24日  裁判所名  東京地裁 
事件番号  令6(合わ)74号
事件名 
文献番号  2024WLJPCA07246002
出典Westlaw Japan
上記の者に対する不同意性交等致傷被告事件について、当裁判所は、検察官小沼智及び同小方もも並びに国選弁護人W1(主任)及び同W2各出席の上審理し、次のとおり判決する。  
主文
 被告人を懲役10年に処する。
 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は、通行中の女性を同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせて性交等をしようと考え、令和6年2月26日午後8時15分頃、東京都墨田区〈以下省略〉先○○緑地土手上の路上において、別紙記載のA(当時15歳)に対し、いきなりその背後から抱き付き、その口を手で塞いで同人を同土手の斜面に押し倒した上、「殺すぞ。」などと言ってその首元にカッターナイフを突き付け、頭部付近を殴るなどの暴行、脅迫を加えたことにより同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、同所において、同人の胸を着衣の上から手でもみ、同人と性交等をしようとしたが、通行人の存在に気付いてその場から逃走したため、その目的を遂げず、その際、前記暴行により、同人に全治まで約2週間を要する頭部打撲割創等の傷害を負わせた。
 (累犯前科)
 被告人は、平成28年12月26日山形地方裁判所強姦罪により懲役6年に処せられ、令和4年10月15日その刑の執行を受け終わったものであって、この事実は検察事務官作成の前科調書(職1)によって認める。
 (法令の適用)
 (量刑の理由)
 被告人は、強姦未遂と強姦の同種前科2犯を有するところ、直近の刑の執行終了後僅か1年4か月余りで本件犯行に及んだばかりか、これまでの経験を踏まえてゴム手袋等を準備して犯行に臨んでいる。2度の服役での学びを反省と更生の機会にするどころか、出所後ほどなくして、若い女性と無理やり性交するという欲求を満たすべく犯行の手口をエスカレートさせていったという本件の経緯は、同種事案の中でも悪質性が際立っている点といえ、被告人については強い非難が妥当する。犯行態様も、被害者の後を付けて周囲に人気がなくなるのを待って本件犯行に及び、逃れようと激しく抵抗する被害者を所持していたカッターナイフで殴打したり押さえつけたりするなどというものであり、被告人の強い犯意もうかがえる。気丈に抵抗し続けた本件の被害者だからこそ、着衣の上から胸をもまれるわいせつ被害にとどまったものの、性交被害にまで至る現実的な危険性が認められる態様である。そうすると、性交の点が未遂にとどまり、傷害結果そのものが比較的軽いことを踏まえても、本件は、被害者の性的自由や身体の安全を大きな危険に晒し、恐怖等の多大な精神的苦痛を与えて高校生になる前の被害者の人生を一変させる重大な犯行というべきである。実際に、被害者やその母は心情の意見陳述において自らの置かれた苦しい立場や心境を述べており、当然ながら被告人の厳罰を求めている。
 以上にみた犯情からすると、本件犯行は同種事案(路上類型、性交の点未遂、凶器等あり、傷害の程度2週間以内、被害者の年齢13歳以上)の中でも重い部類に属すると評価するのが相当な事案であり、特に上記のとおりの被告人に対する責任非難の大きさに照らすと、検察官の求刑はやや軽いと言わざるを得ない。
 そうすると、被告人が犯行を認めて被害者に対する謝罪や反省の弁を述べていること、更生支援計画に従う旨約束していることなど被告人に有利な一般情状を考慮に入れ、検察官の求刑も踏まえて慎重に検討しても、本件犯行に対する責任としては判示の期間の実刑が相当であると判断した。
 よって、主文のとおり判決する。
 (求刑―懲役9年、弁護人科刑意見―懲役6年)
 令和6年7月26日
 東京地方裁判所刑事第15部
 (裁判長裁判官 香川徹也 裁判官 四宮知彦 裁判官 橋詰沙羅)

小学校教師であった被告人が、勤務先の小学校の女子児童に対して行った、強制わいせつ1件、窃盗1件並びに盗撮による児童ポルノ製造5件及び建造物侵入、迷惑防止条例違反1件の各犯行につき、懲役4年を求刑された事案において保護観察付き執行猶予になった事例(横浜地裁R5.12.6)

小学校教師であった被告人が、勤務先の小学校の女子児童に対して行った、強制わいせつ1件、窃盗1件並びに盗撮による児童ポルノ製造5件及び建造物侵入、迷惑防止条例違反1件の各犯行につき、懲役4年を求刑された事案において保護観察付き執行猶予になった事例(横浜地裁R5.12.6)
 盗撮の被害児童数は100人近いと思いますが、それは盗撮1回1罪になっています。
 私的な精神鑑定をやって、心神耗弱を主張したのが、量刑理由に効いています。

【文献番号】25596585
横浜地方裁判所令和4年(わ)第687号、令和4年(わ)第1028号
令和5年12月6日第1刑事部判決
       判   決

職業 会社員 a 昭和59年○○月○○日生
 上記の者に対する強制わいせつ、建造物侵入、栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官地引彩乃並びに弁護人小松圭介(主任)、奥村徹及び彦坂幸伸出席の上審理し、次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
その猶予の期間中保護観察に付する。
訴訟費用は被告人の負担とする。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 別紙記載の小学校において、下記の同校の女子生徒が18歳に満たない児童であることを知りながら、
1 平成31年4月17日午前9時頃から同日午前11時25分頃までの間に、ひそかに、同校保健室内に小型カメラを設置して健康診断のため露出した女子生徒71名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同日午後11時47分頃から同日午後11時50分頃までの間に、同市α区β××××番地××の当時の被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するノートパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
2 令和2年10月6日午前10時15分頃から同日午前11時25分頃までの間に、ひそかに、同校なかよしルーム内に小型カメラを設置して着替えのため露出した女子生徒6名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同月7日午前零時27分頃から同日午前零時28分頃までの間、前記被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
3 同月13日午前8時30分頃から同日午前11時35分頃までの間に、ひそかに、同校教室内に小型カメラを設置して着替えのために露出した女子生徒3名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、令和3年7月30日午後8時56分頃から同日午後8時58分頃までの間、前記被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
4 同年4月22日午前9時頃から同日午前11時25分頃までの間に,ひそかに、同校保健室内に小型カメラ2台を設置して健康診断のため露出した女子生徒23名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラ2台にそれぞれ装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同年7月30日午後9時6分頃、前記被告人方において、前記各マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
5 令和3年10月28日午前9時頃から同日午前10時20分頃までの間に、ひそかに、同校保健室内に小型カメラを設置して内科検診のため露出した女子生徒48名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同日午後9時59分頃から同日午後10時頃までの間、前記被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するノートパソコンの内蔵記録装置に記録して保存し、
もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造し
第2 別紙記載のC(当時11歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同年9月22日午前10時40分頃から同日午後0時10分頃までの間に、同校2階図工準備室において、同人に対し、背後から同人の両脇を両手で抱えて持ち上げた際、着衣の上から両手で同人の両胸をもみ、もって13歳未満の女子に対し、わいせつな行為をし
第3 同年10月7日午前9時18分頃、同校6年2組教室内において、別紙記載のA及びB所有のパンツ2枚(時価合計約300円相当)を窃取し
第4 女児の裸体を盗撮する目的で、同月31日午後6時頃から同日午後6時50分頃までの間に、株式会社b代表取締役cが看守する栃木県日光市γ××××番地同旅館別館d荘女性用大浴場脱衣室内に侵入した上、みだりに、その頃、同所において、同脱衣室内に動画撮影状態にした小型カメラ2台を設置し、もって公衆が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態の他人の身体を撮影する目的で、写真機等を設置し
たものである。
法令の適用
第1の1ないし5
いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条5項、同条2項、2条3項3号
第2
令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
第3
各被害品ごとに刑法235条
第4
建造物侵入の点 刑法130条前段
カメラの設置の点 栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例9条1項、3条2項
科刑上一罪の処理
第3 刑法54条1項前段、10条(犯情の軽重を決することができないので、一罪として窃盗の刑で処断)
第4 刑法54条1項後段、10条(重い建造物侵入の刑で処断)
刑種の選択
第1の1ないし5、第3、第4
いずれも懲役刑
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い第2の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項本文
(弁護人の主張に対する判断)
4〔3〕心神耗弱の主張について
(1)弁護人は、被告人がADHD、パラフィリア(小児性愛障害、窃視障害)に罹患し、行動制御能力が著しく減弱した状態で本件各犯行に及んだから、心神耗弱であると主張する。
(2)被告人を診察したi医師(以下「i医師」という。)は、被告人はADHD、パラフィリア(小児性愛障害、窃視障害)に罹患しており、ADHDは、不注意と集中力の障害と、多動性、衝動性が主な症状であって、パラフィリアはこの衝動性のコントロールと関連があるところ、被告人の場合は、不注意と集中力の障害が主であるものの、仕事の忙しさ等のストレスで衝動性が亢進されたことが本件各犯行に影響したなどと証言している。
(3)i医師は、精神科医として十分な知識と経験を有しており、被告人が、ADHDやパラフィリアに罹患し治療を行うことが好ましい状態にあることが認められる。
 もっとも、i医師は、被告人の精神障害の本件各犯行への影響ではなく、病名を診断することを依頼され、これを主眼に診察し、本件各犯行の内容は詳細に聴取していないとし、ADHDによる衝動性が本件各犯行にどの程度影響したかなどまでは証言していない。
 そもそも、i医師の証言によっても、被告人のADHDの症状は不注意と集中力の障害が主である上、本件各犯行態様をみても、被告人は女子児童に性的興味を抱いていたものの、判示第2の強制わいせつでは、図工準備室にCと二人きりになったタイミングで、自然な流れを装って高い場所を見る必要があるなどとCを抱きかかえ判示の犯行に及び、他の教師に声を掛けられると図工準備室にいた理由をごまかすなどしてその後は犯行を継続せず、判示第3の窃盗、判示第1及び第4の盗撮でも、女子児童が着替え等で裸になったり下着を教室内に置いておくという、学校内で頻繁に起こる状況の中から、各犯行が可能なタイミングを見計らって犯行に及んでいるのである。
 以上からすると、被告人がADHDやパラフィリアに罹患しており、その影響が否定できないとしても、本件各犯行への影響は大きくなく、完全責任能力の状態であったと認められる。
(量刑の理由)
 本件は、小学校教師であった被告人が、勤務先の小学校の女子児童に対して行った、強制わいせつ1件、窃盗1件並びに盗撮による児童ポルノ製造5件及び建造物侵入、迷惑防止条例違反1件の事件である。
 強制わいせつの事件についてみると、被告人は、授業中に画材を探す被害者と図工準備室で二人きりとなり、自然な流れを装って後ろから抱きかかえて両胸を揉み、また、窃盗や盗撮の事件についても、授業等のスケジュールを踏まえ、教室等への出入りが不自然とならないタイミングを見計らって行ったもので、いずれの犯行も教師という立場に乗じて行ったものである。服の上からとはいえ胸を揉まれたり、パンツを持ち出されたり、着替え等を盗撮されたという被害内容自体をみても、被害児童の受けた精神的苦痛やその影響が懸念されるが、ましてや、児童を保護する立場にある教師による犯行であることを考慮すると、その影響は一層懸念される。
 したがって、被告人の責任は重いといわざるを得ないが、被告人が反省の弁を述べ、既に児童に関わる仕事からは離れていること、前科のないこと、被告人の罹患するADHDの本件各犯行への影響について否定まではできず、被告人が治療を受け続けると述べていることなどを考慮し、最長の執行猶予期間とその間の保護観察を付した上で、執行猶予付きの判決をすることとした。
(求刑 懲役4年)
令和5年12月20日
横浜地方裁判所第1刑事部
裁判官 小泉満理子

被害者8歳・9歳の場合は、監護者性交・監護者わいせつか?

 起訴段階では、おそらく不同意性交罪(177条3項)・不同意わいせつ罪(176条3項)が適用されると思います。立証が楽だからです。
 なお、監護者わいせつ・不同意わいせつと児童ポルノ製造罪とは観念的競合という裁判例があります。

法務省大臣官房審議官加藤俊治「性犯罪に対処するための刑法改正の概要」ひろばH29.8
(4)本罪と他罪との罪数関係については、法制審議会あるいは国会における審議の過程において必ずしも詳細な議論がなされていないところであるが、私見においては、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪は、準強制わいせつ罪及び準強制性交等罪が存在することを前提に、既存の罰則では処罰できない事案に対応するために設けられたものであるから、準強制わいせつ罪又は準強制性交等罪が成立する場合には、重ねて監護者わいせつ罪又は監護者性交等罪は成立しない(いわゆる補充関係にある)ものと考えている。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E5%85%83%E4%BA%A4%E9%9A%9B%E7%9B%B8%E6%89%8B%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AB%E6%80%A7%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E6%92%AE%E5%BD%B1%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%8B-%E7%9B%A3%E8%AD%B7%E8%80%85%E6%80%A7%E4%BA%A4%E7%BD%AA%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AE%E7%96%91%E3%81%84%E3%81%A7%E7%94%B7%E9%80%AE%E6%8D%95/ar-AA1Fjper?ocid=BingNewsVerp
元交際相手の子どもに性的な行為をしたとして、兵庫県高砂市の38歳の男と、元交際相手の30代の女が逮捕されていたことが23日、分かりました。

監護者性交と監護者わいせつ、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されたのは、高砂市の会社員の男(38)と、男と去年まで交際していた30代の女の2人です。

2人は交際解消後の今年4月、男の自宅で女の娘(9)と息子(8)に性的な行為やわいせつな行為をし、それらの様子を一部、撮影していた疑いが持たれています。

監護者性交罪と監護者わいせつ罪は、親など18歳未満の子供を監護する立場にある者が、影響力を使って子供に性的な行為やわいせつな行為をすることを罰するものです。

警察によりますと、女は、男との交際を解消したあとも、子どもと一緒に男の自宅を訪れていたとみられます。警察の調べに対し、男は監護者性交罪と監護者わいせつ罪の内容を理解していなかったという趣旨の話をし、女は容疑を認めているということです

不同意わいせつ・強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪とを観念的競合にする裁判例94選

撮影行為はわいせつ行為なので、児童ポルノ製造行為と不同意わいせつ行為は完全にダブル関係にあるのですが、罪質が違うとか言って併合罪にされることが多かったわけですが、刑法改正で性的姿態撮影罪ができてから、一気に観念的競合に傾きました。

高松高裁r7.2.13
第3 法令適用の誤りの主張について
 1 原判示第1の事実について
   論旨は、原判示第1の所為のうち、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、その他の不同意わいせつ罪、性的姿態等撮影罪及び児童ポルノ製造罪と併合罪の関係にあるにもかかわらず、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり、仮に併合罪関係にはないとしても、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、不同意わいせつを目的にその手段として行われたものであり、不同意わいせつ罪と牽連犯の関係にあるから、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
   そこで検討すると、原判示第1の不同意わいせつ罪は、当時30歳の被告人が、SNS上に性交相手を募集する内容の投稿をしていた当時14歳のAに対し、ダイレクトメッセージを送って自らがその相手となることを持ち掛けて待合せ場所を決めるなどした後、Aの陰茎を露出して写真を撮影してその画像を被告人に送ることを要求するメッセージを送信し、Aにこれを了承させ、その約3時間後に、Aに陰茎を露出させてそれを撮影させ、画像データを被告人に送信させたことにより行われたものである。このように原判示第1は、刑法176条3項のわいせつな行為としてAの行為を利用したものであるが、被告人は、前記のような状況にあったAに対し、自らの勃起した陰茎の写真を送るなどしながらAにも勃起した陰茎の写真を撮影して送信するよう求めるなどの性的意味合いの強い具体的な要求をし、すぐさまAに了承させ、Aに要求どおりの行為をさせており、このような事実関係の下において、本件の被告人のAに対する要求行為は、Aの性的自由の侵害を生じさせる客観的な危険性が認められるものであり、不同意わいせつ罪の実行行為に当たるとみることができる。
   そうすると、原判示第1の不同意わいせつ罪における実行行為に当たる、Aに対し陰茎を露出した姿態をとってその写真を撮影して送信することを要求した被告人の行為と、16歳未満の者に対する映像送信要求罪の実行行為に当たる要求行為は、同時に行われ、重なり合うものであり、それぞれにおける被告人の動態は社会的見解上1個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁、最高裁平成19年(あ)第619号同21年10月21日第一小法廷決定・刑集63巻8号1070頁参照)、原判示第1の16歳未満の者に対する映像送信要求罪と、不同意わいせつ罪及びこれと観念的競合の関係にある他の2罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるというべきである。原判決第1の事実について法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。

 しかし、児童淫行罪と製造罪を併合罪にした最決H21.10.21の解説では、「両行為の性質」も考慮して併合罪になるとされているので、判例が安易に観念的競合説になるとは思えません。

判例タイムズ1326号134頁 最高裁判所第1小法廷 平成19年(あ)第619号 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成21年10月21日
匿名解説
4 刑法54条1項前段の観念的競合の要件である「一個の行為」に関しては,最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234頁が,「一個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいう」としているが,具体的な当てはめについては,必ずしも容易でなかった面もあったように思われる。数個の罪名に触れる行為が完全に重なっていれば,これを「一個の行為」と解すベきことについては異論はないであろうし,行為の重なり合いが「一個の行為」性の判断において重要な要素であることも間違いないと思われる。しかし,上記大法廷判決に関しても,行為の重なり合いは「一個の行為」であるための必須の要件とは解されていなかったと指摘されていたのであり(本吉邦夫・昭49最判解説(刑)113頁,金築誠志・昭58最判解説(刑)322頁等参照),同判例における酒酔い運転と業務上過失致死のように,継続犯とその一時点で成立する他の罪については,行為に重なり合いがあるともいえるものの,「一個の行為」ではないとされるのが通常である。また,最一小判昭58.9.29刑集37巻7号1110頁,判タ509号88頁においては,覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪について,それぞれの実行行為は重ならないと考えられるのに,「一個の行為」であることを認めている(同様の関係は,戸別訪問の罪とその機会に行われた各種違法選挙運動の罪が観念的競合とされていることについても存在するとの指摘もある。)。
  本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており,行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で,
「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
「両行為の性質等」
を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており,「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり,一事不再理効の及ぶ範囲等を考えても,併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。



1 名古屋 地裁 一宮 H17.10.13
2 東京 地裁 H18.3.24
3 東京 地裁 H19.2.1
4 東京 地裁 H19.6.21
5 横浜 地裁 H19.8.3
6 長野 地裁 H19.10.30
7 札幌 地裁 H19.11.7
8 東京 地裁 H19.12.3
9 高松 地裁 H19.12.10
10 山口 地裁 H20.1.22
11 福島 地裁 白河 H20.10.15
12 那覇 地裁 H20.10.27
13 金沢 地裁 H20.12.12
14 金沢 地裁 H21.1.20
15 那覇 地裁 H21.1.28
16 山口 地裁 H21.2.4
17 佐賀 地裁 唐津 H21.2.12
18 仙台 高裁 H21.3.3
19 那覇 地裁 沖縄 H21.5.20
20 千葉 地裁 H21.9.9
21 札幌 地裁 H21.9.18
22 名古屋 高裁 H22.3.4
23 松山 地裁 H22.3.30
24 那覇 地裁 沖縄 H22.5.13
25 さいたま 地裁 川越 H22.5.31
26 横浜 地裁 H22.7.30
27 福岡 地裁 飯塚 H22.8.5
28 高松 高裁 H22.9.7
29 高知 地裁 H22.9.14
30 水戸 地裁 H22.10.6
31 さいたま 地裁 越谷 H22.11.24
32 松山 地裁 大洲 H22.11.26
33 名古屋 地裁 H23.1.7
34 広島 地裁 H23.1.19
35 広島 高裁 H23.5.26
36 高松 地裁 H23.7.11
37 広島 高裁 H23.12.21
38 秋田 地裁 H23.12.26
39 横浜 地裁 川崎 H24.1.19
40 福岡 地裁 H24.3.2
41 横浜 地裁 H24.7.23
42 福岡 地裁 H24.11.9
43 松山 地裁 H25.3.6
44 横浜 地裁 H25.4.30
45 大阪 高裁 H25.6.21
46 横浜 地裁 H25.6.27
47 福島 地裁 いわき H26.1.15
48 松山 地裁 H26.1.22
49 福岡 地裁 H26.5.12
50 神戸 地裁 尼崎 H26.7.29
51 神戸 地裁 尼崎 H26.7.30
52 横浜 地裁 H26.9.1
53 津 地裁 H26.10.14
54 名古屋 地裁 H27.2.3
55 岡山 地裁 H27.2.16
56 長野 地裁 飯田 H27.6.19
57 横浜 地裁 H27.7.15
58 広島 地裁 福山 H27.10.14
59 千葉 地裁 松戸 H28.1.13
60 高松 地裁 H28.6.2
61 横浜 地裁 H28.7.20
62 名古屋 地裁 岡崎 H28.12.20
63 東京 地裁 H29.7.14
64 名古屋 地裁 一宮 H29.12.5
65 東京 高裁 H30.1.30
66 高松 高裁 H30.6.7
67 広島 地裁 H30.7.19
68 広島 地裁 H30.8.10
69 さいたま 地裁 R2.1.22
70 福岡 地裁 R2.3.3
71 大阪 地裁 堺 R2.6.19
72 京都 地裁 R3.2.3
73 福岡 地裁 R3.5.19
74 千葉 地裁 R3.5.28 監護者わいせつ
75 神戸 地裁 尼崎 R3.7.5
76 大阪 高裁 R3.7.14
77 大阪 高裁 R4.1.20
78 東京 地裁 R4.8.30
79 札幌 地裁 R4.9.14
80 札幌 高裁 R5.1.19
81 静岡 地裁 沼津 R5.2.3
82 大分 地裁 R5.2.20
83 奈良 地裁 葛城 R5.3.13
84 さいたま 地裁 川越 R5.3.20
86 大津 地裁 R5.10.26
87 名古屋 地裁 R5.12.7
88 名古屋 地裁 岡崎 R6.1.30 監護者わいせつ
89 水戸 地裁 土浦 R6.5.1
90 水戸 地裁 土浦 R6.7.4
91 札幌 地裁 R6.8.1
92 松山 地裁 R6.9.24
93 岡山 地裁 R6.9.25
94 高松 高裁 R7.2.13

児童に裸の画像を送らせた場合の罪数処理

カンネンキョウ、ケンレンハン、

松山地裁R6.9.24*1
 判示第1の所為  
不同意わいせつの点 刑法176条3項、1項(令和5年法律第66号附則3条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)
16歳未満の者に対する映像送信要求の点 刑法182条3項2号(令和5年法律第66号附則3条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)
性的姿態等撮影の点 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号(1号イ)(同法附則2条前段により「拘禁刑」を「懲役」とする。)
          
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項(2条3項3号)
科刑上一罪の処理
  判示第1    刑法54条1項前段、10条(1個の行為が4個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)

東京地裁r6.10.5*2の判示第4の7
 第4の7の罪
  刑法54条1項前段、10条(16歳未満の者に対する映像送信要求と不同意わいせつと性的姿態等撮影と児童ポルノ製造は、1個の行為が4個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断する。)

さいたま地裁熊谷支部R6.5.14*3
科刑上一罪の処理
判示第2 刑法54条1項前段後段10条(映像送信要求と不同意わいせつは手段結果の関係があり、不同意わいせつと性的姿態撮影罪は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、結局、以上を1罪として最も重い不同意わいせつの刑で処断)

岡山地裁R6.9.25*4
法令適用
1 刑法182条3項2号 r5法律66号附則3条、
176条3項 1項
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律違反2条1項4号 1号ロ 令和5年法律66号附則3条
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反 7条4項 2項 第2条3項3号
2 刑法54条1項前段 10条 (観念的競合説)
3 刑法45条前段 47条本文 10条
4 刑法25条1項
5 刑訴法181条1項但書

高松高裁R07.2.13
第3 法令適用の誤りの主張について
 1 原判示第1の事実について
   論旨は、原判示第1の所為のうち、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、その他の不同意わいせつ罪、性的姿態等撮影罪及び児童ポルノ製造罪と併合罪の関係にあるにもかかわらず、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり、仮に併合罪関係にはないとしても、16歳未満の者に対する映像送信要求罪は、不同意わいせつを目的にその手段として行われたものであり、不同意わいせつ罪と牽連犯の関係にあるから、観念的競合の関係にあるとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
   そこで検討すると、原判示第1の不同意わいせつ罪は、当時30歳の被告人が、SNS上に性交相手を募集する内容の投稿をしていた当時14歳のAに対し、ダイレクトメッセージを送って自らがその相手となることを持ち掛けて待合せ場所を決めるなどした後、Aの陰茎を露出して写真を撮影してその画像を被告人に送ることを要求するメッセージを送信し、Aにこれを了承させ、その約3時間後に、Aに陰茎を露出させてそれを撮影させ、画像データを被告人に送信させたことにより行われたものである。このように原判示第1は、刑法176条3項のわいせつな行為としてAの行為を利用したものであるが、被告人は、前記のような状況にあったAに対し、自らの勃起した陰茎の写真を送るなどしながらAにも勃起した陰茎の写真を撮影して送信するよう求めるなどの性的意味合いの強い具体的な要求をし、すぐさまAに了承させ、Aに要求どおりの行為をさせており、このような事実関係の下において、本件の被告人のAに対する要求行為は、Aの性的自由の侵害を生じさせる客観的な危険性が認められるものであり、不同意わいせつ罪の実行行為に当たるとみることができる。
   そうすると、原判示第1の不同意わいせつ罪における実行行為に当たる、Aに対し陰茎を露出した姿態をとってその写真を撮影して送信することを要求した被告人の行為と、16歳未満の者に対する映像送信要求罪の実行行為に当たる要求行為は、同時に行われ、重なり合うものであり、それぞれにおける被告人の動態は社会的見解上1個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁、最高裁平成19年(あ)第619号同21年10月21日第一小法廷決定・刑集63巻8号1070頁参照)、原判示第1の16歳未満の者に対する映像送信要求罪と、不同意わいせつ罪及びこれと観念的競合の関係にある他の2罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるというべきである。原判決第1の事実について法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。

神戸地裁r07.3.12
科刑上一罪の処理
犯罪事実第1の各罪 刑法54条1項前段、後段、10条(映像送信要求、不同意わいせつ及び性的姿態等撮影は、 1個の行為が3個の罪名に触れる場合であり、不同意わいせつと児童ポルノ製造との間には手段結果の関係があるので、結局以上を1罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)

津地裁r6.3.4*5
罰条
 判示第2
  16歳未満の者に対する映像送信要求の点
  刑法182条3項2号、令和5年法律第66号附則3条
  不同意わいせつの点
  刑法176条3項、1項、令和5年法律第66号附則3条
科刑上一罪の処理
 判示第2 刑法54条1項後段、10条(1罪として重い不同意わいせつ罪の刑で処断)

東京地裁r6.11.29
科刑上一罪の処理  
判示第2について、刑法54条1項前段、後段、10条(不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合であり、16歳未満の者に対する映像送信要求と、不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノ製造は、手段結果の関係があるので、結局以上を一罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)
なお、弁護人は、被害者に、性的姿態を撮影した画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させる行為が、わいせつ行為には当たらないことを前提に、判示第2の各罪は併合罪の関係に立つ旨主張するが、同行為もわいせつ行為に当たることは、(争点に対する判断)4において説示したとおりである。そうすると、本件の不同意わいせつ、性的姿態等撮影及び児童ポルノの製造には重なり合いが認められ、これらは、社会的見解上1個の行為といえるから、観念的競合の関係に立ち、これらの手段として行われた16歳未満の者に対する映像送信要求とは、牽連犯の関係に立つというべきである。

1回の建造物侵入で数人の用便中姿態を撮影した行為を科刑上一罪とした事例(かすがい現象)(神戸地裁r07.3.19)

1回の建造物侵入で数人の用便中姿態を撮影した行為を科刑上一罪とした事例(かすがい現象)(神戸地裁r07.3.19)

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【文献番号】 25622566
【文献種別】 判決/神戸地方裁判所(第一審)
【裁判年月日】 令和 7年 3月19日
【事件番号】 令和6年(わ)第440号
令和6年(わ)第619号
令和6年(わ)第964号
令和6年(わ)第1121号
令和6年(わ)第1259号
【事件名】 建造物侵入、性的姿態等撮影、窃盗、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 西村彩子
【全文容量】 約16Kバイト(A4印刷:約11枚)
罪となるべき事実
第11 用便中の女性の姿態を盗撮する目的で、令和6年3月18日午前10時45分頃、cビル防災センター長dが看守する神戸市β区δ×丁目×番×号cビル3階女子トイレに、その出入口から侵入し、正当な理由がないのに、ひそかに、同女子トイレ個室内の棚下に動画撮影機能付き小型カメラを設置し、同カメラを使用して、
1 同日午前10時54分頃、同個室内で用便中の別紙1記載のAの性器等を動画撮影し
2 同日午前11時44分頃、同個室内で用便中の別紙1記載のBの臀部等を動画撮影し
3 同日午前11時46分頃、同個室内で用便中の別紙1記載のCの臀部等を動画撮影し
4 同日午前10時48分頃から同日午後0時26分頃までの間に、同個室内で用便中の氏名不詳の女性10名の性器等を動画撮影した。(訴因変更後の令和6年5月17日付け起訴状記載に係る公訴事実)
第12 更衣中の女性の姿態を撮影する目的で、令和6年5月3日頃、前記第9記載の校長が看守する前記第9記載の屋内体育館内に、合鍵を使用して体育準備室の外側扉から侵入し、正当な理由がないのに、ひそかに、同体育館1階女子更衣室の床上などにハンガー型カメラを設置し、同ハンガー型カメラを使用して、
1 令和6年5月3日午前7時58分頃、同更衣室内で更衣中の別紙1記載のFが身に着けているブラジャーの胸部を覆っている部分を動画撮影し
2 同日午後4時21分頃、同更衣室内で更衣中の別紙1記載のGが身に着けているブラジャーの胸部を覆っている部分を動画撮影し
3 その頃、同更衣室内で更衣中の別紙1記載のHが身に着けているブラジャーの胸部を覆っている部分を動画撮影し
4 同日午後6時37分頃、同更衣室内で更衣中の別紙1記載のIが身に着けているブラジャーの胸部を覆っている部分を動画撮影し
5 同日午後6時42分頃、同更衣室内で更衣中の別紙1記載のJが身に着けているブラジャーの胸部を覆っている部分を動画撮影し
6 同日午後6時47分頃、同更衣室内で更衣中の別紙1記載のKが身に着けているブラジャーの胸部を覆っている部分を動画撮影した。(令和6年11月19日付け起訴状第2に係る公訴事実)
【法令の適用】
罰条
第11及び第12の各行為のうち
各建造物侵入の点 いずれも刑法130条前段
各性的姿態等撮影の点 いずれも被害者ごとに性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項1号イ、令和5年法律第67号附則2条
科刑上一罪の処理
第11及び第12の各罪につき
いずれも刑法54条1項後段、10条により結局以上を一罪とし、被害者ごとに犯情が異ならないのでいずれかを特定せず重い性的姿態等撮影罪の刑で処断
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い第7の罪の刑に法定の加重
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
【量刑の理由】
(検察官 中原京輔、国選弁護人 持田俊介、各出席)
令和7年3月19日
神戸地方裁判所第2刑事部
裁判官 西村彩子

侵入型性犯罪の二重起訴に注意

侵入型性犯罪の二重起訴に注意
 東京高裁r05.10.12は、住居侵入罪と4項製造罪は牽連犯になって、同じ機会の侵入性犯罪(不同意性交・不同意わいせつ)は、侵入罪をかすがいとして、科刑上一罪になるという。
 とすると、令和7年5月17日発生の住居侵入不同意わいせつ事件を先に起訴して、その際の児童ポルノ製造行為を追起訴すると、後の起訴は二重起訴になります。訴因変更で追加してください。

刑訴法第三三八条[公訴棄却の判決]
 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
三 公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。

さいたま地裁川越支部R5.3.20
第2[令和年月日付追起訴状、同年月日付訴因等変更]
 正当な理由がないのに、令和7年5月17日午前3時頃、B方に、無施錠の1階掃き出し窓を開けて侵入し、その頃、同所において、就寝中のBが13歳未満の者であることを知りながら、同人に対し、着衣の上からその乳房や陰部を手で触るなどし、もって、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をするとともに、その様子を左手に持った動画撮影機能付き携帯電話機で動画として撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した

(法令の適用)
罰 条
 判示第2、3の所為
  各住居侵入の点 刑法130条前段
  各強制わいせつの点 刑法176条後段
  各児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2条3項3号
 判示第4の所為 刑法130条前段
 判示第5の所為
  住居侵入の点 刑法130条前段
  強制わいせつの点 刑法176条後段
科刑上一罪の処理
 判示第2、3 刑法54条1項後段、10条(各住居侵入と、各強制わいせつ及び各児童ポルノ製造との間には、それぞれ手段結果の関係があるので、いずれも刑の最も重い強制わいせつ罪の刑で処断)
・・・・・・・・・・・・

参考
当初訴因
公訴事実
被告人は、正当な理由がないのに、令和7年5月17日午前3時頃、B方に、無施錠の1階掃き出し窓を開けて侵入し、その頃、同所において、就寝中の児童Bが13歳未満の者であることを知りながら、同人に対し、着衣の上からその乳房や陰部を手で触るなどし、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をしたものである。
罪名及び罰条
住居侵入、強制わいせつ刑法130条前段、176条後段

東京高裁r05.10.12
  (2) 住居侵入と児童ポルノ製造の関係について
    所論は、
①特に児童ポルノ法7条4項(特定の姿態をとらせての製造)の罪については客観的に住居侵入罪との牽連性が認められない、
②本件における侵入行為は、児童ポルノ製造行為を目的としていない、
判例上、児童ポルノに関する罪は、他の罪とは牽連犯にならないとされている、
④住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯と認めた判例がないのに対し、これを否定した裁判例が複数ある、
⑤牽連犯の成立を認めると、一事不再理効の範囲が広がりすぎる、
などというものである。
    そこで検討するに、児童の現在する住居等に侵入した上で、同所において、児童に性欲を興奮させる等の姿態をとらせて撮影等をするという犯罪類型は現実に存在しており、その場合、罪質上、住居侵入が児童ポルノ製造の手段として不可欠な関係が認められる。そして、被告人は、第4事件については元々幼児の裸体を撮影する目的で住居に侵入した旨自認するほか、第3事件も概ね共通する態様で敢行しており、特異な事情が事後的に生じるなどして撮影に至ったわけではないから、いずれの事件についても住居侵入を手段として児童ポルノ製造の犯行を行ったものということができる。そうすると、本件各事件の事実関係の下では、これらの事件について住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の間に牽連性があるとした原判決の判断に誤りはない。
    以上によれば、弁護人の前記①及び②の主張は採用できない。
前記③について、所論指摘の事例は、児童ポルノ製造罪につき住居侵入以外の罪との関係で個別に牽連犯の成否を検討したもので、児童ポルノ製造罪がどのような罪とも一律に牽連犯にならない旨を判示したものでないことは明白である。
前記④について、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の罪数について明示的な判断をした最高裁判例がないことは前記(1)と同様である。また、下級審では、結論として両罪を牽連犯としなかった事例があることは認められるが、牽連犯の成否は前述のとおり個別の事情をも勘案して決すべきところ、前記各事例における詳細な事実関係は明らかでないから、両者の関係を併合罪とした前記下級審の罪数処理が本件の場合に必ずしも妥当するということはできないし、もとよりそれらの判断が何らかの拘束力を有するものでもない。
    以上のとおり、前記各所論はいずれも理由がない。
  (3) いわゆるかすがい現象について
    前記(1)でみたとおり、第2(1)及び(2)事件の住居侵入罪と準強制わいせつ罪及び強制わいせつ未遂罪をそれぞれ牽連犯とした原判決の判断に誤りはない。そして、第2(1)及び(2)事件の準強制わいせつ罪及び強制わいせつ未遂罪が併合罪の関係であるとしても、同一の住居侵入罪を介して全体が科刑上一罪となるとした原判決の判断にも誤りは認められない。
    また、前記(2)で説示したとおり、第3、第4事件において住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯とした原判決の判断にも誤りはなく、強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪が併合罪の関係にあるとしても、同一の住居侵入罪を介して各々の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を含む全体を科刑上一罪とした原判決の判断に誤りはない。
    所論は、①かすがい現象を認めると、新たな犯罪が加わるのに全体が科刑上一罪となる結果として処断刑が引き下げられるという不合理な事態が生じる、②児童ポルノ法7条4項の罪は、撮影者による事後の複製行為まで処罰範囲とするため、例えば、住居侵入をした上で強制わいせつと児童ポルノの製造(撮影行為)に及び、後に当該児童ポルノを複製して、このうちの複製行為のみで処罰された場合、かすがい現象により一罪となる強制わいせつが後から発覚しても起訴できないことになるなど、一事不再理効が予想外に広がり得る、などというものである。
    しかし、前記①については、原審における求刑や宣告刑等をみても、第2ないし第4事件が全体として科刑上一罪とされたことにより、かすがい現象を認めなかった場合に比べてそれぞれの処断刑の上限が下がったとはいえるが、そのことによる支障が生じたことは全くうかがわれない。また、かすがい現象で所論指摘の不均衡が生じる面がある点は否定できないにせよ、これを採用しない場合は、同一の行為について法的評価を異にしたり(併合罪の関係にある複数の行為のうち、一つについてのみ住居侵入罪との牽連関係を認める場合)、一つの住居侵入行為を複数回評価したり(併合罪の関係にある複数の行為について、いずれも一つの住居侵入罪と牽連関係を認める場合)といった別の問題に直面するから、かすがい現象がおよそ不合理で、採用の限りではないとまではいえない。
    次に、前記②については、やはり本件において所論のいうような問題が顕在化しているわけではない上に、強制わいせつ時点の撮影行為と、その後に時間を隔てて行われる複製行為とが必ずしも包括一罪と評価されるとは限らないから、所論の指摘する不合理性は、ただちにかすがい現象を否定すべき理由とはならない。
    所論はいずれも理由がない。
  (4) 小括
    以上によれば、原判決の罪数処理が格別不合理であるとは認められず、法令適用の誤りの論旨は理由がない。

被告が独身であると偽って原告と性交渉をしたことにより原告の貞操権を侵害し、また、被告が原告との間で避妊に応じることなく性交渉を行い、その結果、原告が妊娠したにもかかわらず、既に離婚していたのに婚姻していると虚偽の事実を告げて認知を拒否し、その後も調停手続等において不誠実な対応に終始したことにより、精神的損害を受けたなどと主張(大阪地裁r6.7.19)

被告が独身であると偽って原告と性交渉をしたことにより原告の貞操権を侵害し、また、被告が原告との間で避妊に応じることなく性交渉を行い、その結果、原告が妊娠したにもかかわらず、既に離婚していたのに婚姻していると虚偽の事実を告げて認知を拒否し、その後も調停手続等において不誠実な対応に終始したことにより、精神的損害を受けたなどと主張(大阪地裁r6.7.19)

判決文
■28323078
大阪地方裁判所
令和4年(ワ)第4872号
令和06年07月19日
東京都(以下略)
原告 X
同訴訟代理人弁護士 向井大輔
(住所略)
被告 Y
主文
1 被告は、原告に対し、74万1417円及びうち60万円に対する令和3年12月28日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを5分し、うち3を原告の、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実および理由
事実及び理由
第1 請求
  被告は、原告に対し、173万1417円及びうち150万円に対する令和3年12月28日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
 1 事案の概要
  本件は、原告が、被告が独身であると偽って原告と性交渉をしたことにより原告の貞操権を侵害し、また、被告が原告との間で避妊に応じることなく性交渉を行い、その結果、原告が妊娠したにもかかわらず、既に離婚していたのに婚姻していると虚偽の事実を告げて認知を拒否し、その後も調停手続等において不誠実な対応に終始したことにより、精神的損害を受けたなどと主張し、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、医療費、慰謝料及び弁護士費用の合計173万1417円及びうち150万円(慰謝料)に対する認知を拒絶した日である令和3年12月28日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 2 争点及びこれに対する当事者の主張
  本件の争点は、〈1〉不法行為該当性、〈2〉損害の有無及び額であり、これらの争点に係る当事者の主張は以下のとおりである。
  (1) 争点〈1〉(不法行為該当性)について
・・・・・・・・・・・
当裁判所の判断
第3 当裁判所の判断
 1 認定事実
  当事者間に争いのない事実、後掲の証拠(枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
  (1) 当事者等
  ア 原告は、平成7年(以下略)生まれの女性である。
  イ 被告は、平成7年(以下略)生まれの男性であり、平成29年12月24日に訴外女性と婚姻し、令和3年10月25日に離婚した。
  ウ 原告と被告は、中学2年生の時に同級生として知り合い、高校1年生の時に1か月程交際していたことがある。
  (上記アからウまでにつき、甲5、8、13、原告本人)
  (2) 1度目の妊娠に至る経緯
  ア 原告と被告は、高校卒業後、しばらく会うことがなかった。原告は、令和2年頃、被告に対し、Bでメッセージを送り、その後はAでやりとりをするようになった。
  イ 原告と被告は、令和2年2月頃、食事に行き、その後ラブホテルで性交渉を行った。この際、原告は被告に対し、備え付けの避妊具により避妊するように頼んだが、被告はこれを無視して避妊行為を行わなかった。なお、再会した際、被告は原告に対し、自分は独身であると告げており、原告は被告が独身であると信じていた。
  ウ 原告は、上記イの性交渉の結果妊娠し、被告に対して認知を求めたが、被告は認知を拒否した。その後原告は流産し、その手術費用等に8万1417円を支出した。
  (上記アからウまでにつき、甲6、13、乙1、原告本人、弁論の全趣旨)
  (3) 2度目の妊娠に至る経緯
  ア 原告は、令和3年9月9日、被告に対してAでメッセージを送り、被告から「近々あう?」と問われて「会いたいかも!」と応じた。原告と被告は、同年11月20日に会い、ラブホテルに行き性交渉を行った。この際、原告は、被告に対し、避妊するように頼んだが、被告はこれを無視して避妊行為を行わなかった。
  イ 原告は、上記アの性交渉の結果、2度目の妊娠をし、令和3年12月15日に産婦人科で診断を受けた。
  ウ 原告は、令和3年12月28日、被告に対し、Aで「今日産婦人科行ったら妊娠してた」、「認知はしてくれる?」とメッセージを送ったところ、被告は、既に離婚していたにもかかわらず、「俺、結婚してるから認知は難しそう!!」と返答した。原告は、被告に対し、「妻子居るの知らなかったから強制認知と慰謝料と養育費を請求しようと思ってる」などと伝えた。
  (上記アからウまでにつき、甲1、2、5、原告本人)
  (4) その後の経緯
  ア 原告は、代理人弁護士に依頼し、被告に対し、胎児の認知を求めると共に養育費及び慰謝料を請求する内容の令和4年3月7日付け「御通知」を送付し、上記通知は同月8日に被告に到達したが、被告はこれに応答しなかった。
  イ 原告は、令和4年(以下略)、長女C(以下「C」という。)を出産した。
  ウ 原告は、Cの法定代理人として、令和4年9月16日、被告を相手方に認知調停手続を申し立てたが、被告はこれに無断で欠席した。その後の認知請求事件(大阪家庭裁判所令和5年(家ホ)第119号)において、DNA鑑定が行われ、令和5年7月18日、被告とCとの間には、生物学的な父子関係が存在すると極めて強く推定できる旨の鑑定結果が出された(総合父権肯定確率99.999993%)。
  (上記アからウまでにつき、甲3、8、12、原告本人)
 2 争点〈1〉(不法行為該当性)について
  (1) 原告は、独身であるとの被告の虚偽の言葉を信じて、性交渉を持ったものであり、独身であるか否かは、性交渉に応じるか否かを決める要素の一つであることからすれば、被告が独身であると偽ったことは不適切かつ不誠実な行為であることは明らかであるものの、原告と被告が婚姻を前提とした交際関係にはなく、このことをもって直ちに不法行為であるとまでは評価できない。
  (2) 他方で、被告は、令和2年の際も、令和3年11月の際も、原告が避妊を求めたにもかかわらず、その要求を無視し、ラブホテルに備え付けの避妊具により、容易に避妊行為を行うことができたにもかかわらず、あえてこれを行わなかったものである。原告は平成7年生まれの女性であり、この当時、妊娠の可能性があったところ、妊娠した場合の身体的・精神的負担は大きく、その負担は女性のみに生じることにかんがみれば、女性が性交渉自体に同意をしているとしても、男性が女性側から避妊を求められながらこれに応じずに性交渉を続行することは、女性の性的な自己決定権を侵害し、違法との評価を免れない。
  (3) 被告は、原告から被告の子が欲しいと要求され、一切の責任をとらないことの了解を得ていたなどと主張するが、2度目の妊娠の際、原告が被告に対して妊娠を告げて「認知はしてくれる?」とメッセージを送ったところ、被告は、結婚しているとの虚偽の事実を告げて認知を拒んでいることからすれば、上記被告の主張は直ちに信用できないものである。かえって、妊娠告知をされた後の、原告の身体的・精神的な負担や不安感を一切顧みない被告の態度や、認知調停手続や訴訟手続等における誠意のない対応に照らすと、被告は、原告が被告への好意から強く抵抗しないことを逆手にとり、自己の性的欲望を満足させるためにあえて避妊行為を行わなかったと考えるのが相当である。
  (4) 以上からすれば、被告が避妊を拒絶して、1回目及び2回目の妊娠に至る性交渉を行ったことは、いずれも原告の性的な自己決定権を侵害し、不法行為に該当する。なお、その後の認知の拒絶等の対応は、それ自体を何らかの権利の侵害と評価することは困難であるものの、慰謝料の点で考慮する。
 3 争点〈2〉(損害の有無及び額)について
  (1) 流産の手術費用 8万1417円
  被告が、原告の求めに応じて適切な避妊行為をしていれば、原告は1度目の妊娠をすることはなかったことからすれば、原告が1度目の妊娠の際に支出した流産手術費用8万1417円は、原告の損害として認められる。
  (2) 慰謝料 60万円
  被告が、原告の避妊の求めを無視して、避妊行為を行うことなく性交渉をしたこと、これにより原告は2度妊娠したこと、原告が被告に妊娠を告げた後も虚偽の事実を告げて認知を拒絶し、その後も「自己責任」などと主張して一切の責任を放棄する不誠実な対応に終始していることなど、本件にあらわれた一切の事情を総合すると、原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は60万円とするのが相当である。
  (3) 弁護士費用 6万円
  原告が本件訴訟の提起及び追行を弁護士に委任したことは当裁判所に顕著であり、認容した慰謝料の額、本件事案の内容等に鑑みれば、被告の不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は6万円が相当と認められる。
  (4) 合計 74万1417円
第4 結論
  よって、原告の請求は、被告に対し、74万1417円及びうち60万円(慰謝料)に対する令和3年12月28日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

第24民事部

 (裁判官 仲井葉月)
審級関連
第一審
【損害賠償請求事件】大阪地判令和6年7月19日D1-Law.com判例体系〔28323078〕

犯人が作出してない裸体を撮影する行為は被害者に知覚がない場合わいせつ行為ではない。

山中敬一強制わいせつの罪の保護法益について研修817号
第2類型の行為は,接触を伴わない,人間の知覚.感覚(主として視覚)を通じて性的刺激を惹起する行為である。この類型の行為が完成するためには,被害者の「知覚・感覚」に作用することを要する。したがって,原則として, 1)被害者に知覚能力があることが必要である。知覚能力がある状態であっても,被害者が知らないうちに裸の姿を覗き見られていたといった場合は,それのみでは被害者の性的不可侵性の侵害はない。2) 13歳未満の者に対しても,(乳幼児は除いて)わいせつ行為の意味を理解することができる年齢であれば,このグループのわいせつ行為は可能である。3)植物状態に陥った者ないし就寝中の者については,抗拒不能に乗じるだけでは,性的不可侵性の侵害とはいえないであろう。1)の被害者に知覚能力がある場合,および3)の「ない」場合に共通するのは,現に「わいせつ」という知覚がないときは, ここにいうわいせつ行為とは言えないのが原則である(注30)が,加害者が被害者の性的不可侵な領域の侵害可能状態を創出してそれを利用した場合には,例外的に,それらの行為を一体として「わいせつ行為」と評価することができるということである。したがって,例えば,適法.違法を問わず,女性を裸にさせておいて気づかれずにビデオでそれを撮影する場合がこれにあたる。つまり,抗拒不能の状態に「乗じた」わいせつ行為は, これらの類型においては,被害者の性的領域の露出等の惹起に加害者が関与することが必要と解すべきである。
(注30) したがって,裸の姿をたんに覗き見る行為ないし裸の姿をひそかに写真に撮ることは, ここにいうわいせつ行為にはあたらない。

嘉門優法益論増補版
ただし、裁判例において、被害者が気づかないうちにその性的な姿態を盗撮する行為が、準強制わいせつ罪に当たるとされた裁判例は見当たらない238.このことから、裁判例において、必ずしも、「被撮影者の性的な行動や姿態の撮影=わいせつな行為」と評価されてきたわけではないと解される。しかも、撮影行為がわいせつな行為に当たるとされた裁判例の事案を見ても、服を脱がせる行為や性的姿態を取らせる行為の強制が先行しており、撮影行為はそれらの先行行為と一体的に評価されて、強制わいせつ罪が成立した事案ばかりである239.
本法成立以前は、撮影行為を強制わいせつ罪として評価せざるを得なかった側面もあったかもしれないが、なぜ、そのような撮影行為がわいせつな行為と言えるのかについて、必ずしも検討が深められてきたとは言い難い状況にあった240.
今次、新たに性的姿態等撮影罪が創設された以上、性的姿態等の撮影行為には本法の撮影罪が成立すると解するべきであって、本法2条3項は適用すべきではない。これまでの裁判例と同様に、撮影に先行して、被害者に性的な行動や姿態を強いるなどの行為がある場合に限って、撮影行為は、不同意わいせつ罪として包括的に一罪として評価すれば足りると考える。


そこで名古屋高裁r7みたいな判示がでるんだ

《書 誌》
提供 TKC
【文献番号】 25622430
【文献種別】 判決/名古屋高等裁判所控訴審
【裁判年月日】 令和 7年 2月26日
【事件番号】 令和6年(う)第295号
【事件名】 強制性交等(変更後の訴因 強制性交等致傷)、強制わいせつ、わいせつ誘拐、逮捕監禁、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、準強制わいせつ被告事件
【審級関係】 第一審 25621142
名古屋地方裁判所 令和5年(わ)第645号
令和 6年 9月27日 判決
【裁判結果】 棄却
【裁判官】 山田耕司 大村泰平 入江恭子
【全文容量】 約19Kバイト(A4印刷:約11枚)
第4 原判示第2の罪に関する法令適用の誤りの主張について
 1 弁護人の主張
 論旨は、以下のように主張し、原判示第2の1と同2を併合罪とした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある旨主張する。
  (1) 原判決は、①わいせつ誘拐罪と強制わいせつ罪・強制性交等未遂罪は牽連犯、②逮捕監禁罪と強制わいせつ罪・強制性交等未遂罪は観念的競合としながら、③わいせつ誘拐罪と児童ポルノ製造罪は併合罪、逮捕監禁罪と児童ポルノ製造罪は併合罪としている。
  (2) しかし③につき、わいせつ誘拐罪と児童ポルノ製造罪は牽連犯であるから、結局、原判示第2の1と同2は科刑上一罪となる。
 2 当裁判所の判断
  (1) まず、原判決は、原判示第2の1の事実について、Cに対するわいせつ誘拐罪と逮捕監禁罪、Dに対するわいせつ誘拐罪と監禁罪、Cに対する強制性交等未遂罪とDに対する強制わいせつ罪を、それぞれ観念的競合とし、Cに対するわいせつ誘拐罪と強制性交等未遂罪、Dに対するわいせつ誘拐罪と強制わいせつ罪を牽連犯としたものであって、この点で前記1(1)の②の理解は誤りである。
  (2) 前記1(2)の点については、わいせつ誘拐罪と児童ポルノ製造罪との間に、社会通念上、類型的に一体の犯罪といえるほどの牽連性があるとはいえないから、両者は併合罪と解すべきである。なお、所論は、他人を裸にして写真を撮る行為が刑法176条にいうわいせつな行為に当たることを根拠として挙げるが、それは、写真を撮られていることを被害者が認識している場合を前提とするものと考えられ、本件のようにひそかに撮影する場合が、わいせつ誘拐罪との間で社会通念上の牽連性があるとまではいえない。
 したがって、原判決の罪数判断に誤りはなく、所論は採用できない。

裁判年月日  平成30年 1月30日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(う)1687号
事件名  保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件
裁判結果  控訴棄却  文献番号  2018WLJPCA01306002
第3  弁護人の法令適用の誤りの主張について
 1  低年齢児に対する強制わいせつ罪,強制わいせつ致傷罪及びわいせつ目的誘拐罪(以下,単に「強制わいせつ罪等」ともいう。)の成否について
   (1)  論旨は,6歳未満の児童に対して強制わいせつ罪等は成立しないのに,強制わいせつ罪等の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
   (2)  刑法は,強制わいせつ罪等の対象について年齢の下限を設けておらず,むしろ13歳未満の児童に対しては保護を厚くしており,法文上,6歳未満の児童も強制わいせつ罪の対象となることは明らかである。
 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
 しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。
 その余の主張を含め,所論は理由がなく,いずれも採用できない。

 性犯罪犯人が撮影した児童が性器露出している画像は「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か?

 性犯罪犯人が撮影した児童が性器露出している画像は「性欲を興奮させ又は刺激するもの」か?
 最近、性器露出画像だと「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とされることが多いのですが、

東京地裁r6.11.29
男湯の男児について
また、被告人が撮影した画像等は、いずれも殊更に性器が露出された男児の姿態であり、それ自体として、見る者にそのような男児の姿態を盗撮したものであることを想起させるものであることからすれば、性欲を興奮・刺激するものであることは明らかである。弁護人の主張(4)は採用できない。


東京高裁r070704
(2)論旨(弁護人)は、男湯やその脱衣所に男児が裸でいる光景は自然な姿で、社会通念上許容されたものであるから、本法2条3項3号所定の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たらないとして、原判決が、原判示第4の撮影行為により記録保存された動画及び静止画のデータが同号所定の児童ポルノに当たると判 ○ G ① 断し、児童ポルノ製造罪の成立を認めたことには法令適用の誤りがある、という。
しかし、原判決がおおむね指摘するとおり、被告人が撮影した動画及び静止画は、いずれも衣服の全部又は一部を着けず、殊更に性器が露出された男児の姿態を撮影しているものであり、その姿が浴場や脱衣所において自然なことであるとしても、その姿態を盗撮して動画や静止画のデータとされたものは、性欲を興奮させ、刺激するものである。
原判決に所論の法令適用の誤りはない。

高裁判例をよく読むと、性器露出だけでは「性欲を興奮させ又は刺激するもの」にはなりません。

 東京高裁h30.1.30は「具体的には、トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童を拘束している画像、上半身裸の男児の目や口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像で性器が映っていないもの、児童が突っ立っている画像を挙げ、これらの画像を撮影した行為について児童ポルノ製造罪を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、というのである。~論旨は理由がない」と判示するので、あたかも「トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童が突っ立っている画像」が3号ポルノとされているように読めますが、東京高裁が「原判決は、公訴事実に含まれる各画像を個別に検討し、一部の画像を性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないとするなど、児童ポルノの該当性を慎重に判断しており、所論指摘の画像の撮影行為をいずれも児童ポルノに該当するとした原判決の判断は不合理ではない。」として追認した1審判決(横浜地裁h28.7.20)で「甲228号証及び甲230号証の各画像中、一部の画像(甲228号証添付資料12の写真1ないし17、甲230号証添付資料2の写真1ないし5、同資料7の写真6ないし10、同資料10の写真1、2、同資料11の写真3、同資料15の写真1、2、8ないし13及び15)については、被害児童が衣服の全部又は一部を着けない状態にはあるものの、通常の沐浴をしている情景としか見られないなど、性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないと判断したため、これらの画像については児童ポルノ製造罪は成立しない。」として無罪になった画像は、結構たくさんあって(17+5+5+2+1+9=39画像)、「沐浴画像」だけではなく「トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童が突っ立っている画像」なんですよ。東京高裁はそれらは児童ポルノではないとしつつ「トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童を拘束している画像、上半身裸の男児の目や口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像で性器が映っていないもの、児童が突っ立っている画像」は児童ポルノだというのです。
 

■28260882
東京高等裁判所
平成28年(う)第1687号
平成30年01月30日
 上記の者に対する保護責任者遺棄致傷、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐、強制わいせつ)、殺人、強制わいせつ致傷被告事件について、平成28年7月20日横浜地方裁判所が言い渡した判決に対し、検察官及び被告人から各控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官星景子出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
※ 以下、AからIまでは、それぞれ別紙記載の被害者の氏名を表す。
第1 本件各控訴の趣意及び各答弁
 検察官の本件控訴の趣意は検察官作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は主任弁護人小松圭介ら作成の答弁書に、被告人の本件控訴の趣意は同主任弁護人ら作成の控訴趣意書、弁護人奥村徹作成の控訴趣意書、訂正申立書、平成29年9月12日付け及び同年10月3日付け各控訴趣意補充書に、これに対する答弁は検察官作成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりである。
 検察官の論旨は、量刑不当の主張であり、弁護人の論旨は、事実誤認、法令適用の誤り、訴訟手続の法令違反、量刑不当の主張である。
・・・・・・・・・
 (2) 論旨は、また、原判決が児童ポルノと認めた画像の中には、一般人の性欲を興奮又は刺激させないものが含まれているとして、具体的には、トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童を拘束している画像、上半身裸の男児の目や口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像で性器が映っていないもの、児童が突っ立っている画像を挙げ、これらの画像を撮影した行為について児童ポルノ製造罪を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、というのである。
 しかし、原判決は、公訴事実に含まれる各画像を個別に検討し、一部の画像を性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないとするなど、児童ポルノの該当性を慎重に判断しており、所論指摘の画像の撮影行為をいずれも児童ポルノに該当するとした原判決の判断は不合理ではない。トイレに座る画像、一部着衣してあどけなく座る画像、児童が突っ立っている画像であって、児童に殊更扇情的な姿態をとらせたものではなくても、性器を殊更露出させたものであれば、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。また、全裸で両手を縛った画像や性器をひもで緊縛するなどして児童を拘束している画像や、上半身裸の男児の目、口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像も、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。所論は、少年アイドルの上半身裸の写真や小学生の水泳の写真と同視でき、児童ポルノに該当しないとも主張するが、それらは、画像から読み取れる姿態、場面、周囲の状況、構図等を総合的に考慮して判断するならば、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとはいえないと評価されるにすぎない。なお、保護者が陰茎をつまんで撮影した写真は、児童ポルノに該当するが、その製造、所持の目的が、子供の成長の記録のためであるなどして、性的好奇心を満たす目的等に欠ける場合には、犯罪を構成しないと評価されるだけである。

■28243152
横浜地方裁判所
平成28年07月20日
第8 児童ポルノ製造事件について
  甲228号証及び甲230号証の各画像中、一部の画像(甲228号証添付資料12の写真1ないし17、甲230号証添付資料2の写真1ないし5、同資料7の写真6ないし10、同資料10の写真1、2、同資料11の写真3、同資料15の写真1、2、8ないし13及び15)については、被害児童が衣服の全部又は一部を着けない状態にはあるものの、通常の沐浴をしている情景としか見られないなど、性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないと判断したため、これらの画像については児童ポルノ製造罪は成立しない。