児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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数日間隔がある数回の児童ポルノ製造行為を製造罪の包括一罪とした高裁判例

数日間隔がある数回の製造行為を製造罪の包括一罪とした高裁判例
 理由は、
児童淫行罪と同様に(1回ごとの権利侵害ではなく)児童の福祉という継続的・包括的な利益を害するという理解
一個の犯意に基づく反復的行為であること
と思われる。

①東京高裁h171226*1(静岡地裁浜松支部h17.7.15*2)

破棄自判部分
 (法令の適用)
 被告人の判示別紙一覧表番号一ないし六の各所為は、包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律七条三項、一項、二条三項一号ないし三号に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、原審における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

②札幌高裁h19.3.8*3(家裁小樽支部h18.10.2*4)
児童淫行罪と製造罪は併合罪だという判例になっている最決h21.10.21の控訴審判決。
控訴審でも数回の製造罪を包括一罪とした原判決の罪数処理は維持されている。

 判決速報でも製造罪は包括一罪とされている。

児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 札幌高等裁判所判決/平成18年(う)第339号
【判決日付】 平成19年3月8日
高等裁判所刑事裁判速報集平成19年504頁
       理   由
2 児童ポルノの種類・個数の特定に関する控訴趣意について(控訴理由第9)
  論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪の訴因は,児童ポルノの種類・個数を特定する必要があるにもかかわらず,本件起訴状の公訴事実には「ミニデジタルビデオカセットに描写し」と記載されているのみであり,各撮影行為により何個の児童ポルノが製造されたか,どの児童ポルノが製造されたのかが明らかでなく,本件公訴は訴因不特定の違法があるのに,公訴を棄却せず実体判断をし,また,製造された児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,という。
  しかし,本件児童ポルノ製造罪は,被告人が同一児童に対し反復継続したものであるから,包括一罪と評価され,その場合には,訴因を特定するために製造された児童ポルノの個数を明示することは必要でなく,行為の始期及び終期,行為の回数,児童の氏名・年齢,児童ポルノの種類及び描写媒体の種類を明示すれば訴因は特定されていると解されるから,本件起訴に訴因不特定の違法はなく,また,原判決が児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない点も違法とは認められない。なお,製造された児童ポルノの個数やビデオカセットテープは証拠上明らかにされている。
  その他,児童ポルノ製造罪は製造された児童ポルノの記録媒体毎に成立すると考えるべきであるとの点を含め,所論がるる主張する点を考慮検討しても,論旨は理由がない。

 調査官解説でも、製造罪は包括一罪とされている。最決h21.10.21も包括一罪であることを前提にしている。
刑事篇平成21年度463頁 平成19年(あ)第619号児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件平成21年10月21日 三浦透


③東京高裁h28.12.21

速報番号3589号
児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
東京高等裁判所第1刑事部
平成28年12月21日
1審 千葉地方裁判所
○判示事項
児童ポルノ製造罪において,同一被害児童に対する27日間, 14回にわたる撮影等の行為を包括一罪とした事例
○裁判要旨
児童ポルノ製造罪の罪数判断においては,被害児童の撮影機会の同一性のみを基準とすることは相当ではなく,被害児童の異同,製造日時,場所,工程及び犯意等にも着目すべきであり,被告人が同一又は一連の機会に,単一又は継続した意思により被害児童に係る児童ポルノを製造したときは,構成要件を充足する行為が多数回にわたっていても,被害児童が同一である以上,包括して一罪を構成するというべきである。
被告人は,自慰行為に用いるために, 27日間にわたり,被害児童に係る児童ポルノを撮影し, これを同一の記録媒体に集積していたもので,単一又は継続した意思により14回の各犯行に及んだとみられるから, これらは包括一罪となる。
○裁判理由
原判決は,原判示第2の平成28年3月21日午後3時31分頃から同年4月16日午後10時40分頃までの計14回の各児童ポルノ製造の所為はそれぞれ(ただし,そのうち同月2日における11回の犯行,同月16日における2回の犯行は,いずれも同一の機会における犯行であるから各包括して)児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項, 2条3項1号, 3号に該当する旨判示している。
この点,同法7条4項の児童ポルノ製造罪を処罰する趣旨は, 当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取又は虐待であり,かつ,流通の危険性を創出する点で非難に値することに基づくものであることに照らすと,同法2条3項所定の姿態を被害児童にとらせて撮影した機会の同一性のみを罪数判断の基準とすることは相当ではなく,被害児童の異同のほか,製造日時,場所,工程(電磁的記録や記録媒体の同一性等)及び犯意等にも着目すべきであり,被告人が, 同一又は一連の機会に,単一又は継続した意思により当該児童に係る児童ポルノを製造したときは,構成要件を充足する行為が多数回にわたっていても,被害児童が同一である以上,包括的に観察して一罪を構成するというべきである。被告人は, 自慰行為に用いるために, 27日間にわたり,被害児童に係る児童ポルノを撮影し, これを同一の記録媒体に集積していたもので,単一又は継続した意思により原判示第2の犯行に及んだとみられるから,原判示第2の所為は包括して同法7条4項, 2項(2条3項1号, 3号)に該当し,併合罪の処理に当たっても,刑法47条ただし書の制限内で重い原判示第1の罪の刑に法定の加重をすべきであり, これと異なる原判決の法令の適用には誤りがある。
しかしながら,原判決の宣告刑は,正当な処断刑の範囲内にあり,かつ原判示第2の撮影の機会ごとに併合罪とされたが故に殊更重く量刑された事情はなく本件事案の内容等に照らし,その量刑が重きに過ぎるとも認められないから,前記の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

④大阪高裁H28.6.9

2)児童ポルノ製造罪相互の罪数関係(上記②について)
 児童ポルノ製造罪は,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を規制し,児童一般を保護するとともに,個々の児童が児童ポルノの対象とされることから保護することを目的とするものであるから,同じ児童を対象に,同様の目的で行われた,一連の児童ポルノ製造行為は,包括一罪の関係に立つと解するのが相当である。
 そして,原判示第2の1の児童ポルノ製造は平成年月12日に被害児童の自宅において,被告人が被害児童の陰茎を手指で触る姿態及び同児童に陰茎を露出させる姿態をとらせて動画撮影するなどしたもの,同第2の2の児童ポルノ製造は同年月16日に同じ場所において上記児童に対して上記同様の方法で行われたもので,いずれも,同児童に対する好意に基づき,同児童の陰茎等を撮影したいという性的欲求を満たすことを目的とするものであるから,少なくとも両行為は,包括一罪の関係に立つと見るべきである。したがって,これを併合罪とした原判決の法令の適用は誤っているものといわざるを得ない。
・・・
 しかし,原判示第1別表11の行為は,原判示第2の1,2の被害児童と同じ児童を対象として,同児童に対する好意等という前同様の目的で行われたもので,撮影が行われた日時も近接しているから,原判示第1別表11が陰茎を露出して放尿する姿態をひそかに撮影したものであり,同第2の1,2がいずれも陰茎を露出させて被告人が手指で触る姿態をとらせて撮影したものであるという行為態様・犯罪類型の相違を踏まえても,包括して評価するのが相当であり,結局,原判示第1別表11の行為,同第2の1,2の各行為は,包括して児童ポルノ法7条4項,5項の児童ポルノ製造罪を構成すると見るのが相当である。
 また,原判示第1別表1,3の行為,同2,6の行為,同4,5,8ないし10の行為,同7,12の行為は,いずれも,被害児童の陰茎等を撮影したいという性的欲求に基づき,それぞれ,同じ児童を対象に,同児童らがトイレに行くのに付き添った際にその様子をひそかに撮影等したというものであるから,それぞれ,別個の包括一罪を構成すると見るのが相当である。
 以上のとおり,原判決のこの点に関する法令の適用には,所論指摘のものを含め,誤りがあるといわざるを得ない。


名古屋高裁h22.10.26*5(判決速報763号)

第1法令適用の誤りの論旨について
1原判示第1,第2,第4及び第5の各罪の罪数について論旨は,①原判示第2及び第5(2個の3項児童ポルノ製造罪は包括一罪であり,同第1の強姦罪と同第2の3項児童ポルノ製造罪,同第4の強姦罪と同第5の3項児童ポルノ製造罪とは,それぞれ混合包括一罪又は観念的競合であるから,かすがい現象により,同第1,第2,第4及び第5は科刑上一罪であるのに,これらの罪を併合罪であるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,原審記録を調査して検討する。
原判示第1,第2,第4及び第5の各事実の要旨は次のとおりである。
すなわち,被告人は,平成年5月2日,被告人方において,被害児童が13歳未満の女子であることを知りながら,被害児童を姦淫し(原判示第1),その際,被害児童に性交に係る姿態等をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影し,電磁的記録に係る記録媒体であるsdに記録させて描写し,もって児童ポルノを製造し(同第2),平成年4月1日,被告人方において、被害児童が13歳未満の女子であることを知りながら,被害児童を姦淫し(同第4),その際,被害児童に性交に係る姿態等をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影し,電磁的記録に係る記録媒体であるsdに記録させて描写し,もって児童ポルノを製造した(同第5),というものである。
原判決は,その(法令の適用)において,原判示第1及び第4の各行為がそれぞれ刑法177条後段に,同第2及び第5の各行為がそれぞれ児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)7条3項,2条3項に該当するとした。
被告人は,平成年ころ,被害児童に声をかけ・・・被害児童を裸にしてビデオ撮影したり,女性器等を触ったりするなど性的行為を繰り返すようになり,平成年5月2日から平成年5月18日までの間,・・・などと告げて,被告人方において,約20回から30回にわたり,被害児童を姦淫し,そのうち18回については,その状況をビデオ撮影することを繰り返す中で,原判示第1,第2,第4及び第5の各犯行に及んだものである。
このような犯行状況に照らすと,原判示第2及び第5の児童ポルノ製造の犯行は,犯行の時期が約11か月離れているとはいえ,いずれも,同一の被害児童に対し,悪魔を追い払うためなどと言って性交等に応じさせ,その状況をビデオ撮影することを繰り返す中での犯行であり,その罪数については,包括して一罪であると評価するのが相当である。
他方,原判示第1及び第4の強姦の各犯行は,姦淫行為を内容とするものであり,同第2及び第5の児童買春法7条3項に当たる児童ポルノ製造(以下「3項児童ポルノ製造」という。)の各犯行は,児童に性交に係る姿態等をとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に描写する行為を内容とするものであって,それぞれにおける行為者の動態は社会見解上別個のものであるから,原判示第1と第2,同第4と第5は,それぞれの行為に重なる部分があるとはいえ,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,また,それぞれ別の観点から法益を保護するものであるから,包括して一罪として処罰することで足りるものでもない。
そうすると,原判示第2及び第5の各3項児童ポルノ製造罪を併合罪とした原判決には法令適用に誤りがあるが,本件においては,これを前提として形成された処断刑は,これらを包括一罪とした場合の処断刑と同じであるから,この誤りは判決に影響を及ぼさないというべきである。

⑥大阪高裁h18.9.21*6
数回にわたる製造行為を包括一罪としている。

論旨は,原審裁判所は,平成17年5月13日付け起訴状記載の訴因につき,検察官からの同年9月13日付け訴因変更請求書に基づく訴因の変更を許可したが,変更前の訴因と変更後のそれとの間には公訴事実の同一性がないから,上記訴因変更の許可は違法であり,かつ,その違法が判決に影響を及ぼすことも明らかである,というのである。
そこで,記録を調査して検討するに,上記変更前の訴因は,要旨,「平成17年1月23日ころから同年2月1日ころまでの間,3回にわたり,自宅において,DVDレコーダー等を用いて,18歳に満たないDを相手方とする性交に係る姿態等を撮影した画像データを記録させたDVD合計4枚を作成し,もって,児童ポルノを製造した」というものであるのに対し,上記変更後の訴因は,要旨,「同年1月23日ころから同年3月3日ころまでの間,12回にわたり,自宅ほか1か所において,DVDレコーダー等を用いて,上記画像データを記録させたDVD合計45枚及びビデオテープ6本を作成し,もって,児童ポルノを製造した」したというものである(なお,変更後の訴因は,変更前の訴因全部を含むものである。)ところ,関係証拠によれば,被告人は,業として児童ポルノを含むいわゆる裏ビデオの製造・販売を反復継続して行っており,上記各訴因はいずれもその一環であることに照らせば,これらはいずれも包括一罪として評価するのが相当である。そうすると,変更前の訴因と変更後のそれとの間には,いわゆる公訴事実の単一性が認められるから,訴因変更を行うことにつき何らの問題はなく,原審裁判所の上記措置にも何ら違法は認められないというべきである。
この論旨も理由がない。

不同意わいせつと、姿態をとらせて製造罪と性的姿態撮影罪は観念的競合(札幌地裁r6.8.1)

不同意わいせつと、姿態をとらせて製造罪と性的姿態撮影罪は観念的競合(札幌地裁r6.8.1)
 強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪とは併合罪でしたよね。
 性的姿態撮影罪がご飯粒の糊みたいに作用するんですかね。

札幌地方裁判所令和6年8月1日刑事第3部判決強制わいせつ、不同意性交等、北海道青少年健全育成条例違反、不同意わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【文献番号】25620828
札幌地方裁判所令和6年(わ)第52号、令和6年(わ)第119号、令和6年(わ)第233号
令和6年8月1日刑事第3部判決
(犯罪事実)
 被告人は、
第4 正当な理由がないのに、別の知人の息子であるD(当時6歳)が13歳未満の者であることを知りながら、令和6年1月4日午前8時34分頃から同日午前8時42分頃までの間、別紙記載1の居室において、Dに対し、被告人がDの露出された陰茎を直接指で触る姿態をとらせ、これを被告人が使用する撮影機能付きスマートフォンで動画撮影した上、その動画データ1点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録させて保存し、もってわいせつな行為をし、Dの性的姿態等を撮影するとともに、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第5 自己の性的好奇心を満たす目的で、同月22日、前記被告人方において、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データ39点及び画像データ104点を記録した、児童ポルノであるスマートフォン1台を所持した。
(法令の適用)
罰条
判示第4の所為
不同意わいせつの点 刑法176条3項、1項(令和5年法律第66号附則3条前段により拘禁刑とあるのは懲役刑として適用)
性的姿態等撮影の点 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項4号、1号イ(同法附則2条により拘禁刑とあるのは懲役刑として適用)
児童ポルノ製造の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号
科刑上一罪の処理
判示第4の各罪 刑法54条1項前段、10条(1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるから、1罪として最も重い不同意わいせつ罪の刑で処断)
刑種の選択
令和6年8月 日
札幌地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官 ■■■■ 裁判官 ■■■■ 裁判官 ■■■■


 控訴するなら、公訴棄却の主張。
 訴因の単一性を欠くという主張はこうなる。不利益主張ではないという主張まで入れておく。
 最決h21以降の高裁判決がこぞって
①行為の重なり合いの程度
②「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
③「両行為の性質等」
一事不再理効の及ぶ範囲
を理由にして併合罪としているので、①~④を主張して、高裁判決を紹介していけば説得力がでるだろう。

 訴訟手続の法令違反~強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造罪(7条3項)は併合罪だから、1個の行為として起訴した公訴事実は単一性を欠き、訴因不特定により、公訴棄却とすべきであった。 11
1 原判決は、3項製造罪と強制わいせつ罪(176条後段)を観念的競合とした。 11
2 わいせつ行為と製造行為の重なり合い 11
3 陰部露出させる行為は強制わいせつ罪(176条後段)の実行行為である「わいせつ行為」であり、他方、提供目的製造罪の実行行為ではないから、両罪は完全に重ならないこと(法令適用の誤り) 13
4 検察官の意見(書)も誤っていること 18
最高裁判例解説刑事篇平成29年度162頁 平成28年(あ)第1731号児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件平成29年11月29日 向井香津子 19
5 一個の行為(54条1項)とは 23
(1)重なり合いの度合いについて、判例は完全一致を求めている。 23
大法廷s49.5.29**5 23
最高裁判例解説刑事篇昭和49年度77頁 昭和46年(あ)第1590号業務上過失傷害、道路交通法違反被告事件昭和49年5月29日 高木典雄 25
(2)行為の個数の評価対象は、構成要件に該当する事実ではなく、生の事実である 28
最高裁判例解説刑事篇昭和49年度107頁 昭和47年(あ)第1896号道路交通法違反、業務上過失致死被告事件昭和49年5月29日 本吉邦夫 28
(3)小括 30
6 最決h21.10.21の罪数判断(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)は、強制わいせつ罪にも及ぶ 31
最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号 33
菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁 33
7 併合罪とする高裁判例が理由とする点を弁護人の主張として集約しておく 35
(1)行為の重なり合いが乏しいこと 35
(2) 通常随伴しないこと 39
(3) 行為の性質が異なるから2個の行為である 40
(4) 一事不再理効が広がりすぎる。 43
8 裁判官研究会の論稿は併合罪。 43
東京高裁h22.12.7*7(横浜地裁h22.7.30*8) 47
福岡高裁h26,10.15*9(福岡地裁h26.6.2*10 共犯:福岡地裁h26.5.12*11 48
9 併合罪とした高裁判例判例違反) 48
①東京高裁H22.12.7*34(横浜地裁h22.7.30*35) 67
福岡高裁h26.10.15*36(福岡地裁h26.6.2*37) 68
③大阪高裁h28.10.27(提供目的製造罪) 68
最高裁大法廷h29.11.29 70
11 「併合罪であるから、1個の行為として記載した公訴事実は、単一性を欠いて訴因不特定により、無効である。公訴棄却になる」という主張は不利益主張ではないこと 76
(1) 公訴の適法性の要素である、「訴因の単一性」の判断には、罪数処理を判断する必要があること 76
(2) 文献 79
①刑事控訴審の理論と実務第2版 P103 79
②大コンメンタール刑訴法3版P24(担当原田國男) 80
③佐藤文哉・最高裁判所判例解説 刑事篇(昭和53年度) 304頁 82
(3)判例では、併合罪主張も主張として被告人に実質的に有利になる場合には不利益主張とはならない。 83
①不利益主張とは 83
② 本件でも併合罪主張による結果は被告人の利益であること 84
③ 被告人控訴事件について併合罪であることを前提理由として、破棄した最高裁判例 85
④ 併合罪主張を不利益主張としない高裁判例 91
⑤不利益主張となった事例は主張として被告人に有利になっていない 92
(4) 児童ポルノ関係で併合罪の主張が不利益主張だとされたことはないこと 95
最高裁判所判例解説刑事篇平成21年度201頁 平成20年(あ)第1703号児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件平成21年7月7日 鹿野伸二 95
最高裁判所判例刑事篇平成21年度463頁 平成19年(あ)第619号児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件平成21年10月21日 三浦透 96
(5) 原判決も不利益主張としていない。 98
(6) 訴因が単一性を欠く場合、差し戻して検察官に釈明させる必要があるという判例 99
12  まとめ 99

6 最決h21.10.21の罪数判断(児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪とは併合罪)は、強制わいせつ罪にも及ぶ
 最決h21.10.21は、児童淫行罪と姿態をとらせて製造罪の関係とを併合罪とした判例である。

最決h21.10.21*1
所論は,上記両罪は併合罪の関係にあるから,児童ポルノ法違反の事実については,平成20年法律第71号による改正前の少年法37条によれば,上記家庭裁判所支部は管轄を有しない旨主張する。
そこで,検討するに,児童福祉法34条1項6号違反の罪は,児童に淫行をさせる行為をしたことを構成要件とするものであり,他方,児童ポルノ法7条3項の罪は,児童に同法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ,これを写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造したことを構成要件とするものである。本件のように被害児童に性交又は性交類似行為をさせて撮影することをもって児童ポルノを製造した場合においては,被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,
一部重なる点はあるものの,
両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,
両行為の性質等にかんがみると,
それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから(最高裁昭和47年(あ)第1896号同49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁参照),両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。
・・・・・・・
判例タイムズ1326号134頁 最高裁判所第1小法廷 平成19年(あ)第619号 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件 平成21年10月21日
匿名解説
4 刑法54条1項前段の観念的競合の要件である「一個の行為」に関しては,最大判昭49.5.29刑集28巻4号114頁,判タ309号234頁が,「一個の行為とは,法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで,行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいう」としているが,具体的な当てはめについては,必ずしも容易でなかった面もあったように思われる。数個の罪名に触れる行為が完全に重なっていれば,これを「一個の行為」と解すベきことについては異論はないであろうし,行為の重なり合いが「一個の行為」性の判断において重要な要素であることも間違いないと思われる。しかし,上記大法廷判決に関しても,行為の重なり合いは「一個の行為」であるための必須の要件とは解されていなかったと指摘されていたのであり(本吉邦夫・昭49最判解説(刑)113頁,金築誠志・昭58最判解説(刑)322頁等参照),同判例における酒酔い運転と業務上過失致死のように,継続犯とその一時点で成立する他の罪については,行為に重なり合いがあるともいえるものの,「一個の行為」ではないとされるのが通常である。また,最一小判昭58.9.29刑集37巻7号1110頁,判タ509号88頁においては,覚せい剤取締法上の輸入罪と関税法上の無許可輸入罪について,それぞれの実行行為は重ならないと考えられるのに,「一個の行為」であることを認めている(同様の関係は,戸別訪問の罪とその機会に行われた各種違法選挙運動の罪が観念的競合とされていることについても存在するとの指摘もある。)。
  本件で問題となった3項製造罪については,「姿態をとらせ」の要件の意義をどう理解するかによって,同罪と児童淫行罪等との行為の重なり合いの判断も異なってくる可能性もあるが,本決定は,「被告人の児童福祉法34条1項6号に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの」としており,行為の重なり合いがあること自体は認めている(本決定が「姿態をとらせ」を構成要件として規定された行為ととらえていることは明らかである。)。その上で,
「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
「両行為の性質等」
を挙げて,結論として両罪は併合罪であるとの判断をしており,「一個の行為」であるかの判断における考慮要素として,興味深い判示であるように思われる。実際に生じ得る事例を考えてみても,前記最三小決平成18年によれば複製行為についても3項製造罪を構成し得ることになるから,児童淫行罪等と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠けることがあり,一事不再理効の及ぶ範囲等を考えても,併合罪説の方が妥当な結論を導くことができるように思われる。
・・・・・・・・・
最高裁判例解説刑事篇平成21年度496頁 平成19年(あ)第619号

菅原暁 最新・判例解説(第3回)児童福祉法第34条第1項第6号違反の児童に淫行をさせる罪と,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条第3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例[最高裁判所第一小法廷平成21.10.21決定] 捜査研究720号78頁
・・・・

 同最決の解説も考慮すると、同最決は観念的競合となる要素として
行為の重なり合いの程度
「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
「両行為の性質等」
一事不再理効の及ぶ範囲

を挙げており、これは観念的競合の判例最判s49)の解釈であるから、その判旨は、類推なんかではなく、当然に強制わいせつ罪(176条後段)との関係にも及ぶ。
 後述するように
①行為の重なり合いの程度
②「両行為が通常伴う関係にあるといえないこと」や,
③「両行為の性質等」
一事不再理効の及ぶ範囲
の各点は、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪とを併合罪とする高裁判決の理由付けに頻出しており、実際にも最決h21.10.21が観念的競合か併合罪かの重要な要素となっている。

コスプレ盗撮行為に関して、「性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられることから、一律に撮影対象から除外することとしている」(法務省逐条説明)

コスプレ盗撮行為に関して、「性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられることから、一律に撮影対象から除外することとしている」(法務省逐条説明)

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
第二条(性的姿態等撮影)
 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

法務省逐条説明
第2条(性的姿態等撮影)
【説明】
1 趣旨
本条は、人の意思に反して性的な姿態を撮影する行為がなされれば、当該性的な姿態が記録されて固定化されるため、性的な姿態が当該姿態をとった時以外の機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、これを処罰するものである。
2 撮影対象
本条の罪の撮影対象については、撮影された場合に自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での性的自由・性的自己決定権が侵害されるものとして、「性的姿態等」、すなわち、
○ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)や、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
○ わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
としている。
他方、性的姿態等のうち、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものについては、
○ 衣服を着けるなどしていれば見られないにもかかわらず、あえて自ら露出し又はとったものである以上、当該撮影対象者が、保護法益を放棄している場合があると考えられること
○ 性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられること
から、一律に撮影対象から除外することとしている(注1)。
(注1)本条第1項第4号に掲げる撮影行為については、性的な姿態の撮影行為に応じるかどうかについて有効に自由な意思決定をする能力が備わっていないと考えられる若年者を対象とするものであり、撮影対象者による保護法益の放棄を観念することができず、こうした者を対象とする撮影行為は、その者の自由な意思決定に基づくものとはいえず、保護法益を侵害すると考えられることから、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものも撮影対象から除外しないこととしている。

浅沼雄介検事「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」警察学論集77巻1号

イ露出等による撮影対象からの除外
(ア)撮影行為の対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら性的な姿態を露出するなどした場合については、保護法益を放棄したと評価できると考えられる。
そこで、本項第1号から第3号までにおいては、「性的姿態等」から「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」を除いた「対象性的姿態等」が処罰対象となる撮影行為の客体とされている。
これに対し、16歳未満の者は(そのうち13歳以上16歳未満の者については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者との関係では)、性的な姿態の撮影行為に応じるかどうかについて有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠け、保護法益の放棄ができないことから、本項第4号の撮影行為については、撮影対象者が日ら露出するなどしたものも含め、「性的姿態等」が処罰対象となる撮影行為の客体とされている。
(イ)「人が通常衣服を着けている場所」とは、人が衣服を着けているのが通常である場所を意味し、例えば、公道、公園、デパートの売場、電車の車両内などがこれに該当し得る。

(ウ)「自ら露出し又はとっている」とは、殊更注意を払わなくても目に触れ得る状況に自らしていることを意味し、例えば、
○ 人が通常衣服を着けている場所である公園において、タオルで体を覆うなどし、できる限り人目に触れないように着替えているような場合の「下着」については、殊更注意を払わなくても目に触れ得る状況に自らしているとはいえないため、「自ら露出し…ている」に該当せず、これを撮影する行為は処罰対象となり得る一方、
○ 人が通常衣服を着けている場所である公園において、人目から隠れようとしないで着替えているような場合の「下着」については、殊更注意を払わなくても目に触れ得る状況に自らしているため、「自ら露出し…ている」に該当し、これを撮影する行為は処罰対象とならないこととなり得る
と考えられる。
(エ)撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において性的な姿態を自ら露出するなどしたとしても、不特定又は多数の者の目に触れる状況にないと認識していた場合、例えば、
○ 更衣室が手狭であったため、誰もいない会議室において着替えた際に性的な部位を自ら露出したものの、撮影対象者としては、会議室内における着替えであるため、不特定又は多数の者の目に触れる状況にないと考えていたにもかかわらず、ひそかに入ってきた撮影行為者が撮影行為に及んだ場合
には、保護法益を放棄しているとはいい難く、このような場合を処罰対象から除外することは相当でないことから、本項においては、露出等による撮影対象からの除外の要件として、性的姿態等を「不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら」露出するなどしたことを要することとされた。

住居侵入罪と性的姿態撮影罪は牽連犯(山形地裁r6.5.27)

住居侵入罪と性的姿態撮影罪は牽連犯(山形地裁r6.5.27)
 古来、侵入して盗撮するという行為態様はあると思うが、通常手段結果と言えるのかは疑問。
 実刑事案の場合は、訴因不特定とか言ってみて。

■28322277
山形地方裁判所
令和06年05月27日
第4 被告人は、正当な理由がないのに、令和5年9月28日午後9時18分頃から同日午後9時28分頃までの間に、前記b方南側敷地内に南側アルミフェンスを乗り越えて侵入し、同日午後9時28分頃から同日午後9時35分頃までの間、同所において、ひそかに、b方南西側掃き出し窓から、動画撮影状態にしたスマートフォンをb方室内に差し向け、衣服を身に着けていない状態のBの胸部等を動画撮影した。
(法令の適用)
罰条
 判示第4の所為のうち
  住居侵入の点 刑法130条前段
  性的姿態等撮影の点 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項1号イ(令和5年法律第67号附則2条)
科刑上一罪の処理
 判示第4の罪 刑法54条1項後段、10条(一罪として重い性的姿態等撮影罪の刑で処断)

乳房に触れる行為がわいせつ行為(刑法176条)と評価されるにはある程度の強度執拗性が求められる話

乳房に触れる行為がわいせつ行為(刑法176条)と評価されるにはある程度の強度執拗性が求められる話

https://www.bengo4.com/c_1009/n_17901/
「わいせつ」については、最高裁大法廷判決(平成29年11月29日)以降、明確な定義がありませんが、「客観的に性的な意味合いがある行為で、ある程度の強度があるもの」と理解されているようです。
着衣の上から乳房に触る行為についても、行為態様によっては、わいせつ行為と評価される可能性がありますが、法定刑の重さなどから、ある程度の強度や執拗さが要求されます。「単に触れるだけでは足りず、着衣の上からでも弄んだといえるような態様であることが必要」(条解刑法第4版523頁)と説明されています。
今回のケースは、画像で見る限りは、軽く触れている程度であり、わいせつ行為としての強度や執拗さに欠ける感じがします

大法廷h29.11.29が「同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。」「当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから,その他の事情を考慮するまでもなく,性的な意味の強い行為として,客観的にわいせつな行為であることが明らかであり,強制わいせつ罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の結論は相当である」というのでね。

判例番号】 L07210085
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/平成28年(あ)第1731号
【判決日付】 平成29年11月29日
【判示事項】 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
【判決要旨】 刑法(平成29年法律第72号による改正前のもの)176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが,行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではない。
【参照条文】 刑法(平29法72号改正前)176
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集71巻9号467頁
       裁判所時報1688号245頁
       判例タイムズ1452号57頁
       判例時報2383号115頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察公論73巻8号88頁
       論究ジュリスト25号113頁
       論究ジュリスト28号188頁
       ジュリスト1517号78頁
       ジュリスト1518号156頁
       別冊ジュリスト251号30頁
       上智法学論集62巻1~2号177頁
       捜査研究66巻12号2頁
       法学教室449号129頁
       法学教室450号51頁
       法学セミナー63巻2号123頁
       法曹時報72巻1号172頁
       判例時報2440号132頁
       法学新報127巻1号197頁
       法律時報91巻13号264頁

       主   文

 本件上告を棄却する。
 当審における未決勾留日数中280日を本刑に算入する。

       理   由

 1 弁護人松木俊明,同園田寿の各上告趣意,同奥村徹の上告趣意のうち最高裁昭和43年(あ)第95号同45年1月29日第一小法廷判決・刑集24巻1号1頁(以下「昭和45年判例」という。)を引用して判例違反,法令違反をいう点について
 (1) 第1審判決判示第1の1の犯罪事実の要旨は,「被告人は,被害者が13歳未満の女子であることを知りながら,被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。」というものである。
 原判決は,自己の性欲を刺激興奮させ,満足させる意図はなく,金銭目的であったという被告人の弁解が排斥できず,被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした第1審判決の事実認定を是認した上で,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして,昭和45年判例を現時点において維持するのは相当でないと説示し,上記第1の1の犯罪事実を認定した第1審判決を是認した。
 (2) 所論は,原判決が,平成29年法律第72号による改正前の刑法176条(以下単に「刑法176条」という。)の解釈適用を誤り,強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和45年判例と相反する判断をしたと主張するので,この点について,検討する。
 (3) 昭和45年判例は,被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで,脅迫により畏怖している被害者を裸体にさせて写真撮影をしたとの事実につき,平成7年法律第91号による改正前の刑法176条前段の強制わいせつ罪に当たるとした第1審判決を是認した原判決に対する上告事件において,「刑法176条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し,婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても,これが専らその婦女に報復し,または,これを侮辱し,虐待する目的に出たときは,強要罪その他の罪を構成するのは格別,強制わいせつの罪は成立しないものというべきである」と判示し,「性欲を刺戟興奮させ,または満足させる等の性的意図がなくても強制わいせつ罪が成立するとした第1審判決および原判決は,ともに刑法176条の解釈適用を誤ったものである」として,原判決を破棄したものである。
 (4) しかしながら,昭和45年判例の示した上記解釈は維持し難いというべきである。
 ア 現行刑法が制定されてから現在に至るまで,法文上強制わいせつ罪の成立要件として性的意図といった故意以外の行為者の主観的事情を求める趣旨の文言が規定されたことはなく,強制わいせつ罪について,行為者自身の性欲を刺激興奮させたか否かは何ら同罪の成立に影響を及ぼすものではないとの有力な見解も従前から主張されていた。これに対し,昭和45年判例は,強制わいせつ罪の成立に性的意図を要するとし,性的意図がない場合には,強要罪等の成立があり得る旨判示しているところ,性的意図の有無によって,強制わいせつ罪(当時の法定刑は6月以上7年以下の懲役)が成立するか,法定刑の軽い強要罪(法定刑は3年以下の懲役)等が成立するにとどまるかの結論を異にすべき理由を明らかにしていない。また,同判例は,強制わいせつ罪の加重類型と解される強姦罪の成立には故意以外の行為者の主観的事情を要しないと一貫して解されてきたこととの整合性に関する説明も特段付していない。
 元来,性的な被害に係る犯罪規定あるいはその解釈には,社会の受け止め方を踏まえなければ,処罰対象を適切に決することができないという特質があると考えられる。諸外国においても,昭和45年(1970年)以降,性的な被害に係る犯罪規定の改正が各国の実情に応じて行われており,我が国の昭和45年当時の学説に影響を与えていたと指摘されることがあるドイツにおいても,累次の法改正により,既に構成要件の基本部分が改められるなどしている。こうした立法の動きは,性的な被害に係る犯罪規定がその時代の各国における性的な被害の実態とそれに対する社会の意識の変化に対応していることを示すものといえる。
 これらのことからすると,昭和45年判例は,その当時の社会の受け止め方などを考慮しつつ,強制わいせつ罪の処罰範囲を画するものとして,同罪の成立要件として,行為の性質及び内容にかかわらず,犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを一律に求めたものと理解できるが,その解釈を確として揺るぎないものとみることはできない。
 イ そして,「刑法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第156号)は,性的な被害に係る犯罪に対する国民の規範意識に合致させるため,強制わいせつ罪の法定刑を6月以上7年以下の懲役から6月以上10年以下の懲役に引き上げ,強姦罪の法定刑を2年以上の有期懲役から3年以上の有期懲役に引き上げるなどし,「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)は,性的な被害に係る犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処を可能とするため,それまで強制わいせつ罪による処罰対象とされてきた行為の一部を強姦罪とされてきた行為と併せ,男女いずれもが,その行為の客体あるいは主体となり得るとされる強制性交等罪を新設するとともに,その法定刑を5年以上の有期懲役に引き上げたほか,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設するなどしている。これらの法改正が,性的な被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映したものであることは明らかである。
 ウ 以上を踏まえると,今日では,強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであって,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は,その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず,もはや維持し難い。
 (5) もっとも,刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。
 そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。
 (6) そこで,本件についてみると,第1審判決判示第1の1の行為は,当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから,その他の事情を考慮するまでもなく,性的な意味の強い行為として,客観的にわいせつな行為であることが明らかであり,強制わいせつ罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の結論は相当である

向井香津子「最高裁判例解説 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」 法曹時報第72巻第1号
(イ)性的な意味合いの強さの程度
 次に,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが「わいせつな行為」に該当するとは考えられない点にも留意が必要である。
 例えば,性的関心をもって手に触れるとか,性的関心に基づいて衣服を着けた者を撮影するといった行為も,性的な意味を帯びると考えられるが,この程度の行為まで「わいせつな行為」として,強制わいせつ罪の処罰対象に含むことは、同罪の法定刑の重さ(特に法定刑の下限が懲役6月と定められている点が重要である。)に照らして妥当性を欠くと思われる。
 すなわち,強制わいせつ罪(刑法176条前段,後段),準強制わいせつ罪(178条1項),監護者わいせつ罪(平成29年改正で新設された179条1項)は,それぞれに規定(以下これらの規定を併せて「刑法176条等」という。)されている各態様(i暴行又は脅迫を用いる,ii13歳未満の者を相手とする,iii人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ,又は心神を喪失させ,もしくは抗拒不能にさせる,iv18歳未満の者に対し,監護者であることの影響力があることに乗じる。)によって「わいせつな行為」をした者を,これらの各規定によって重く処罰しているのであるから,性的な意味がある行為の中でも,このような各態様によって,その行為を行うことが,保護法益(性的自由を中核とする性に関わる個人的法益)に対する重い侵害となるような行為,すなわち,性的な意味合いの強さが刑法176条等による非難に相応する程度に達している行為に限定されるべきと考えられる(前掲橋爪31頁,前掲佐藤63頁,前掲刑事比較法研究グループ153頁等参照)。
 本判決が「同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない」と判示しているのは,このことを明らかにしたものと思われる。
(ウ)判断基準
 したがって,ある行為が「わいせつな行為」に該当するというためには,
 ①性的な意味があるか否か
 ②性的な意味合いの強さが刑法176条等による非難に相応する程度に達しているか否か
を判断しなければならないと考えられるが,これらをどのような基準で判断すべきなのかが,更に問題となる。
 これらの判断について,当該被害者が実際に当罰性の高い性的意味を感じたか否かによるべきでないことは当然であり,他方で,昭和45年判例の解釈を採用しない以上,行為者自身の性欲等を基準にすべきものでないことも明らかといえる。結局,その判断は,社会通念に照らして客観的に判断されるべきと考えられる。(注13)
 また,性的な被害に係る犯罪に対する社会の受け止め方は,前述のとおり時代によって変わり得るものであることからすれば,社会通念に照らして判断する際には,その時代の社会の受け止め方をも考慮しておく必要がある。もっとも,犯罪規定の解釈においては,法的安定性が求められることも当然であるから,社会の受け止め方の変化を考慮する際には,慎重な姿勢も必要であり,従前の判例・裁判例の積み重ねを十分斟酌する必要があろう。(注14)
 本判決が,「いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる」と判示しているのは,このようなことを明らかにしたものと思われる。

(注13)樋口亮介「性犯罪の主要事実確定基準としての刑法解釈」法律時報88巻11号89頁〔2016年〕は,性的という評価は社会の価値観に依存する以上,量刑の数値化同様,事例判断を積み重ねて平均的判断を形成していく他ない問題である,と指摘する。
(注14)犯罪規定解釈には法的安定性も要求されることからすれば,謙抑的な解釈をせざるを得ない結果として,社会の意識の変化と法解釈の変更の間に,若干のタイムラグが生じることはやむを得ないように思われる。

(エ)具体的判断方法
 そこで,「わいせつな行為」該当性の具体的判断方法を更に考えてみると,まずは,行為そのものが持つ性的性質の有無,程度に着目して,
 ①性的な意味があるかどうか
 ②性的な意味合いの強さがどの程度か
を検討すべきであって,それだけでは「わいせつな行為」該当性の判断がつかない場合には,次の段階として,行為そのものが持つ性的性質の程度を踏まえつつ,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも加えて判断していくことになろう。

薄井真由子判事「強制わいせつ罪における「性的意図」」植村立郎「刑事事実認定重要判決50選_上_《第3版》」2020立花書房
 ウ その他の性的部位への直接の接触行為
 性器,肛門,口腔以外の性的部位としては,胸と臀部があげられることが多い。胸と臀部は性を象徴する典型的な部位といえるから、被害者の胸や臀部を直接触ったり揉んだりする行為,あるいは行為者の胸や臀部を直接被害者に触らせる行為は,瞬間的な接触や狭い範囲の接触でなければ,性的性質が強く,①の場合に当たるのではないかと思われる 12)。もっとも,接触の具体的態様を考慮することにはなろう。
 なお,男性や児童の胸が女性の胸と性的性質が同じかどうかは議論のあるところだが,強制性交等罪において男女の別がなくなり,今日では性的な被害については男性や児童も女性と同じであると一般的に受け止められていることからすれば,男性や児童の胸の性的性質について女性の胸と区別する解釈は基本的に採り得ないものである 13)。

条解刑法4版p523
(イ) 具体的行為
わいせつな行為の具体例としては, 陰部に手を触れたり,手指で弄んだり, 自己の陰部を押し当てることや,女性の乳房を弄ぶことなどである.
陰部や乳房を着衣の上から触れた場合については,単に触れるだけでは足りず,着衣の上からでも弄んだといえるような態様であることが必要であるから,厚手の着衣の上からという場合は, 薄手の着衣の上からという場合より, 強い態様のものであることを要しよう(薄手の着衣の上からの場合につき肯定した例として, 名古屋高金沢支判昭36.5.2下集35=6-399)。なお,乳房が未発達な女児に対する場合であっても,社会通念上‘性的感情の侵害があるといえるから, わいせつ性は肯定されるが,全く発達していない幼児や男性の場合には否定されよう(大コンメ3版(9)68)
......
これに対し,単なる抱擁は, わいせつ行為とはいえない。女性の臂部を撫でる行為については,厚手の着衣の上から撫でてもわいせつといえないが(痴漢行為として条例違反となり得ることにつき,本条注8(キ)参照),下着の上から撫でたような場合にはわいせつ性を肯定し得るであろう(東京高判平13・9・18東時52-1=12-54, 名古屋高判平15.6.2
判時1834-161)。

「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて」「衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れる」行為(東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項1号)

 東京都の条例なので、東京都の解説書が参考になります。

https://www.bengo4.com/c_1009/n_17901/
●故意ならば「迷惑防止条例違反」になるおそれも
——他の罪はどうでしょうか
次に、東京都内での行為ということで、いわゆる「卑わいな行為」(東京都迷惑防止条例5条1項1号)が検討されます。東京都の迷惑防止条例は次のような規定になっています。
第5条 1 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1)公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

 いわゆる「卑わいな言動」ですが、今の東京都条例は「卑わいな言動」という用語を使いません。

東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項1号
第5条
1 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。

古い解説

東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の実務と解説h07警視庁
「婦女」とは、成年、未成年を問わない。
しかし、本項の婦女は卑わい行為の客体であるから、その行為を卑わいなものとして感じ、かつ、しゅう恥または不安を覚えうる能力を有するものであることを要する。「婦女に対し」とは、行為の対象が婦女であることを要する意味であるが、その婦女が行為の内容を理解できない者、例えば幼女等であっても、それを解しうる能力のある他の婦女が存在し、かつ、当該行為を認識しうる状態にあれば、「婦女に対し」なされたものと解される。
したがって、著しくしゅう恥しまたは、不安を覚えるべき婦女は、必ずしも行為の直接対象となった婦女に限らず、間接的な対象者も著しくしゅう恥し、または不安を覚えるような場合は、ここでいう「婦女に対し」に当たる。
「著しく」の程度は具体的にどの程度と明示することは非常に困難であるが、一般の人が考えて「ひどい」と思われる程度のものであれば足りる。
「しゅう恥させ」とは、性的はじらいを感知させるということである。
「不安」とは、卑わいな言動によって、身体に対する危険を覚えさせ、あるいは心理的圧感を与えることをいう。
なお、この不安を覚えさせる行為は、客観的に不安を覚えさせるに足るものであることを要する
「卑わいな言動」とは、いやらしくみだらな言語、動作で、普通人の性的しゅう恥心を害し、嫌悪感を催させ、又は不安を覚えさせるに足る言語、又は動作をいう。

最近の解説

条例解説(h24)警視庁
2解説
改正前の条例は、「公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動」として卑わいな言動を規制していたが、改正条例は、これを3態様に分類して規定するものである。
それぞれの態様は、第1号が身体に触れる行為、第2号が盗撮、第3号が第1号と第2号以外の卑わいな言動である。
規制場所は、第2号の盗撮のみ拡大となり、第1号と第3号は、改正前の条例と同様で「公共の場所又は公共の乗物」である。
(1)柱書き関係
改正条例は、卑わいな言動を3態様に分類しているものの、いずれも「人を著しく差恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」であることが要件である。
「正当な理由なく」とは、健全な社会常識から判断して認められる行為が規制の対象外であることを明確にするために規定したもので、住居侵入罪における「正当な理由がないのに」と同義である。
正当な理由に当たるかどうかは、具体的事案に即して社会通念により決せられる。
※「正当な理由」の具体例
第1号は、恋人同士が抱き合う行為や救急隊等の傷病人に対する救護措置等、
第2号は、温泉番組の撮影や入浴シーンの映画撮影等がこれに当たる。
(2)第1号関係
本号は、人の身体に触れる行為(いわゆる痴漢行為)を規制するもので、規制場所は、公共の場所又は公共の乗物である。
アその他の身に着ける物
「その他の身に着ける物」とは、膝掛け、肩掛け、スカーフ、海水浴などの時に羽織るバスタオル等、衣服とはいえないものの、使用方法によっては身体と密着するもののことをいう(鞄、眼鏡等はこれに当たらない。)。
これらの上から身体に触れる場合は、衣服の上から触れるのと同一視できるため、第1号違反に当たる。
イ身体
「身体」とは、胸部、臀部、下腹部、大腿部等が一般的であるが、人を著しく差恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為である限り、身体の部位に関わらずこれに当たる。
ウ触れる
「触れる」とは、手で触れるのが一般的であるが、人を著しく差恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で触れる限り、手以外の部位で触れる場合もこれに当たる。
したがって、服を着た状態で自己の陰部を相手の啓部等に押し当てる行為もこれに含まれる。
なお、傘の柄等を使用して相手の身体に触れる場合については、本項第3号の「卑わいな言動」に該当するか否かを問擬する。

「児童の陰茎を手淫する姿態」「被害児童の陰茎に被告人の陰茎をこすりつけて同児童に自慰行為をさせ、被告人が同児童の陰茎を左手で手淫し、さらに、同児童に被告人を相手に口腔性交させる姿態」は3号ポルノか(さいたま地裁r6.6.7)

 確定したそうですが、

判示第2
別表1
1 R4.4.29 児童の陰茎を手淫する姿態
2 r5.1.8  被害児童の陰茎に被告人の陰茎をこすりつけて同児童に自慰行為をさせ、被告人が同児童の陰茎を左手で手淫し、さらに、同児童に被告人を相手に口腔性交させる姿態
判示第2別表1番号1の所為
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号
判示第2別表1番号2の所為
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号

ということだと、
3号ポルノ(衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの)に該当する事実が記載されていません。
 「全裸で」とか「露出した陰茎を」とか認定しないと理由不備。
 しかも性交類似行為(1号)についても、児童の陰茎を手淫する姿態は2号で、口腔性交は1号で、で統一感がない。
 




さいたま地方裁判所令和6年6月7日性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、埼玉県青少年健全育成条例違反、児童福祉法違反被告事件
【文献番号】25620646
性的姿態等撮影、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、埼玉県青少年健全育成条例違反、児童福祉法違反被告事件
さいたま地方裁判所令和6年6月7日第4刑事部判決
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第2 Cが18歳に満たない児童であることを知りながら、別表1記載のとおり、令和4年4月29日午後5時30分頃から令和5年5月7日午後8時30分頃までの間、3回にわたり、■(省略)■所在の甲音楽室1準備室ほか2か所において、C(当時14歳又は15歳)に対し、別表1「姿態の内容」欄記載の姿態をとらせ、これらの姿態を動画撮影機能付きスマートフォンで動画撮影して動画データとした上、令和4年4月29日午後5時30分頃から令和5年10月16日までの間に、姿態に係る動画データ5点及び姿態に係る動画データを再生してスマートフォンの画面に表示させ、スマートフォンスクリーンショット機能を用いて作成した姿態に係る静止画データ8点を、オンラインストレージサービス「OneDrive」を利用し、被告人が使用するパーソナルコンピュータに内蔵されたハードディスクに移動させて記録して保存し、もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
1 罰条
判示第2別表1番号1の所為
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号
判示第2別表1番号2の所為
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号
判示第2別表1番号3の所為
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号
令和6年6月7日
さいたま地方裁判所第4刑事部
裁判官 中川卓久
別表1
1 R4.4.29 児童の陰茎を手淫する姿態
2 r5.1.8  被害児童の陰茎に被告人の陰茎をこすりつけて同児童に自慰行為をさせ、被告人が同児童の陰茎を左手で手淫し、さらに、同児童に被告人を相手に口腔性交させる姿態
3 r5.5.7 被害児童と口腔性交する姿態

性的姿態撮影罪2件で懲役8月実刑(大分地裁r6.5.1)


「平成29年9月12日及び令和元年5月28日に、スカート内に携帯電話機あるいは被告人の手を差し入れるなどした事実について罰金刑に処された後、令和3年12月23日には13歳未満の者に対するわいせつ行為に及んだ事実及びワンピース内にタブレット端末を差し入れ、下着を撮影した事実で懲役2年・4年間執行猶予(保護観察付き)の判決を言い渡されている。その執行猶予期間中」だと実刑になる。
 迷惑条例に比べてそう重くない


D1-Law.com判例体系
■28322494
大分地方裁判所
令和06年05月01日
 上記の者に対する性的姿態等撮影被告事件について、当裁判所は、検察官小弓場赳夫及び弁護人小野貴久出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役8月に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、正当な理由がないのに
第1 A(当時6歳)が13歳に満たない者であることを知りながら、令和6年2月10日午後3時55分頃、大分県(以下略)C店において、同人が履いていたスカート内に撮影機能付きスマートフォンを差し入れ、同スマートフォンで同人が身に着けているショーツの臀部を覆っている部分を撮影し
第2 B(当時7歳)が13歳に満たない者であることを知りながら、同日午後4時14分頃、前記(省略)Dにおいて、同人が履いていたスカート内に撮影機能付きスマートフォンを差し入れ、同スマートフォンで同人が身に着けているショーツの臀部を覆っている部分を撮影し
たものである。
(証拠の標目)括弧内の甲乙の数字は、証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。
(法令の適用)
1 罰条
  第1、第2 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律附則2条による同法2条1項4号、同1号イ
2 刑種の選択
  第1、第2 懲役刑を選択
3 併合罪の処理
  刑法45条前段、47条本文、10条(犯情が被害者ごとに異ならないのでその一つを選ぶことをしない。)
4 未決勾留日数の算入
  刑法21条
5 訴訟費用
  刑事訴訟法181条1項本文(負担)
(量刑の理由)
 被告人は、本件犯行現場において女児を物色し、ターゲットとなった各被害者を発見すると、その容貌を撮影するなどしながら後を付け、女児が親族から離れて一人になった隙を狙って本件各犯行に及んだものであり、その犯行態様は、警戒心の低い女児を狙った卑劣で手慣れたものといえ、悪質である。また、本件各犯行は、各被害者が本件各犯行の意味を理解するようになった際には、各被害者に性的羞恥心や嫌悪感を抱かせ、苦痛を感じさせるものであることは容易に想像され、その被害の結果も大きいといえる。さらに、被告人は、女児であれば警戒心が低く、犯行の発覚を防ぐことができると考え、自己の性的欲求を満たす目的で本件各犯行に及んでおり、その身勝手な意思決定は強い非難に値する。加えて、被告人は、平成29年9月12日及び令和元年5月28日に、スカート内に携帯電話機あるいは被告人の手を差し入れるなどした事実について罰金刑に処された後、令和3年12月23日には13歳未満の者に対するわいせつ行為に及んだ事実及びワンピース内にタブレット端末を差し入れ、下着を撮影した事実で懲役2年・4年間執行猶予(保護観察付き)の判決を言い渡されている。その執行猶予期間中であるにもかかわらず、被告人が本件各犯行に及んでいることからすれば、その常習性は明らかであり、再犯の可能性も高い。
 以上の基本的な評価を前提に、被告人が捜査段階から一貫して本件各犯行を認めており、公判廷においても謝罪や反省の言葉を述べるとともに、今後は自分の間違った考えを精査し、罪としっかり向き合う旨の反省文を作成していること、被告人の父が被告人の監督を再度誓っていることなどを考慮して、主文のとおりの刑を科すのが相当と判断した。
(求刑 懲役1年2月)
刑事部
 (裁判官 北島聖也)

「例えば行為を行なった場所が東京都であれば、故意、過失がなく『18歳以上と信じるのが通常』とされれば、罪は成立しないこともあります」という弁護士のコメントは誤り。

「例えば行為を行なった場所が東京都であれば、故意、過失がなく『18歳以上と信じるのが通常』とされれば、罪は成立しないこともあります」という弁護士のコメントは誤り。

 他の自治体は違うのだが、東京都内の淫行についていえば、

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十八条 第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない

という法文で、淫行の罰則は24条の3だが、過失処罰で列挙されている罰条には、「24条の3」がないので、淫行処罰規定は故意犯とされている。つまり、偽身分証などで青少年と知らなかったのであれば、過失があったとしても、淫行で処罰されることはない。「例えば行為を行なった場所が東京都であれば、故意、過失がなく『18歳以上と信じるのが通常』とされれば、罪は成立しないこともあります」ということはない。東京都内の行為は、青少年と知らなければ処罰されない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4dfc193fdc6ef7c08bb89730717cb999a50fd945
つまり、伊藤自身は相手が“成人女性”と認識して関係をもったというわけだが、こうしたケースでも伊藤に落ち度はあるのか。現在、サッカー選手・伊東純也氏の性加害疑惑で伊東氏側の弁護を担当するなど、男女関係のトラブルに詳しい加藤博太郎弁護士に聞いてみた。
「未成年との性交とは、相手の年齢が18歳未満であることを指しますが、まず、未成年とされる相手の年齢が、16歳未満かそれ以上かで大きく状況が変わります。相手の女性が16歳未満で、男性が5歳以上年上であれば、同意の有無を問わず、刑法第百七十七条不同意性交等罪で懲役5年以上が課せられます。相手が16歳以上18歳未満の場合、自治体によって、過失の有無で罪に問われるかが変わるので一概には言えませんが、例えば行為を行なった場所が東京都であれば、故意、過失がなく『18歳以上と信じるのが通常』とされれば、罪は成立しないこともあります」

“身分証の確認”という行為自体が…
 ランジャタイ伊藤の場合、相手の年齢が16歳未満であれば完全にアウトだが、相手が16歳か17歳で、「18歳以上と信じるのが通常」とされればセーフとなるということか。では、偽造されていたとはいえ、身分証で18歳以上であることを確認した今回のケースでは、伊藤に故意、過失はないと判断されるのだろうか。

「いえ。当時のやりとりの詳細はわかりませんが、身分証を確認するという行為自体、伊藤さんが相手の年齢に疑いをもっていると客観的に見ることができます。相手が未成年かもしれないけど行為に及ぶことは“未必の故意”に該当します。つまり、故意や過失があったと判断されても仕方がありません。未必の故意は、刑事裁判において重要な要素で、例えば殺意はないけど、包丁を相手の胸に刺せば“殺すつもりはなくても、相手が死んでもいいと思って刺した”という心理に未必の故意があったとして、傷害致死ではなく殺人罪が成立する場合もあります」

年令を偽った未成年者との性的行為

未成年者が成年者を自称していた場合の淫行については、
 東京都では禁止はされているが(18条の6)、過失は処罰されていない(28条に18条の6、24条の3が挙げられていない)。
 埼玉県では過失の場合も処罰されて、「過失がないとき」とは、単に青少年に年齢や生年月日を確認しただけ、又は身体の外部的発育状況等から判断しただけでは足り ず、学生証、運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の保護者 に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を講じて青少年の年齢を確認している場合をいう」と説明されている
という具合なので、行為地を示さないと検討できません。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。
(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第二十八条 第九条第一項、第十条第一項、第十一条、第十三条第一項、第十三条の二第一項、第十五条第一項若しくは第二項、第十五条の二第一項若しくは第二項、第十五条の三、第十五条の四第二項又は第十六条第一項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第二十四条の四、第二十五条又は第二十六条第一号、第二号若しくは第四号から第六号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
(平一六条例四三・一部改正)

https://grapecom.jp/information/news/itougohoukoku/
関係者各位、ファンの皆様へ
弊社所属タレント ○○××につきまして、以下の通りご報告いたします。
この度、××が未成年の女性と関係を持ったことが発覚いたしました。
詳細な調査の結果、××自身はその相手に年齢を偽られており、確認した身分証明書も偽造であったため未成年であることを知らずに行動していたことも判明いたしました。
年齢に関しての誤信があったものの、自身の置かれている立場に対する自覚と責任に著しく欠けておりましたことを弊社として重く受け止め、芸能活動の休止もやむを得ないものと判断するに至りました。
関係者各位、ファンの皆様には、多大なるご迷惑とご心配をお掛けすることを深くお詫び申し上げます。
××も今回の事態を重く受け止め、深く反省しております。今後は再発防止のため、××に対する指導を徹底するとともに、精神的なケアとサポートを行ってまいります。
活動再開の時期については、状況を慎重に見極めた上で判断し、改めてご報告させていただきます。

各地の青少年条例における年齢確認義務の内容 57
①両親が示した戸籍謄本も疑えとするもの~香川県・埼玉県 57
②戸籍・住民票まで調査すべきとするもの~山形・福島・愛知・愛媛 60
ア 大阪高裁s46を引用して、この程度の年齢確認義務があると説明する~山形・福島・愛知・愛媛 60
イ 大阪高裁s46には言及しないが、戸籍・住民票まで調査する義務があるという自治体~群馬・埼玉・静岡・香川・沖縄 62
ウ その他公信力のある証明書での確認を求めるもの~宮城・茨城千葉・新潟・石川・兵庫・鳥取・鹿児島 66
③必ずしも証明書までは必要なく、干支や生年月日尋ねれば足りるとするもの~北海道・・岩手・秋田・富山・岐阜・滋賀・京都・奈良・和歌山・島根・岡山・広島・愛媛・高知・福岡・宮崎 69
④通常人ならば青少年でないかと疑いを持つようなときに、相手方に年齢を問う程度のものであり、身分証明書運転免許証等による年齢調査義務まで求めたものではないとするもの~山口県 75
山口県青少年健全育成条例の解説 令和元年7月 75
⑤ 過失犯を処罰しないもの(東京都) 76
⑥ 具体的内容が不明のもの~栃木・徳島・佐賀・熊本・大分 76

自治体の解説も厳しい内容だが、挙げられている判例は、児童福祉法違反や風営法違反の使用者の注意義務のものなので、使用者による青少年条例違反の場合には類推可能だが、非使用者の一回性の淫行には適用できないだろう

埼玉県の解説r3
用語の 説明
「過失がないとき」とは、単に青少年に年齢や生年月日を確認しただけ、又は身体の外部的発育状況等から判断しただけでは足り ず、学生証、運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の保護者 に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を講じて青少年の年齢を確認している場合をいう。
関係する判例( 「過失がないとき」
○ 昭和 34 年5月 11 日最高栽判決(児童福祉法違反)
児童又はその両親が児童本人の氏名を偽り、他人の戸籍抄本をあたかも本人のごとく装って提出した場合、他人の戸籍抄本をあたかも児童本人のものであるかの使用することも職業の特殊性から当然あり得ることが容易に想像できるから、一方的な陳述だけで たやすく軽信することなく、他の信頼すべき客観的資料に基づいて調査をなすべきである。この調査を怠っている場合、児童福祉法第 60 条第3項但し書きにいう年齢を知らないことにつき過失がない場合に該
当しない。
○昭和 38 年4月 13 日東京家裁判決(風適法違反)
風俗営業者は、 全て の場合に戸籍謄本等を提出させたり、戸籍の照会をなすべき義務まで負うものではないが、応募者全員に対し住民票その他氏名、年齢等を通常明らかにし得る資料の提出を求めるか、 全て の場合に、単にその氏名、年齢等を述べさせ若しくは記載させ、又はその容姿を 観察するだけでなく、進んでその出生地、いわゆる「えと」年、その他、親兄弟や学校関係等について適宜の質問を発して事実の有無を確かめるとかの方法を講ずべきであり、すくなくとも本人の言うところ等に多少でも疑問があれば、右のような方法の外、進んで戸籍の照会を行う等客観的に通常可能な方法をとって事実を確かめ、その年齢を確認すべき法的な注意義務を有するものと解する。
・・・
香川県の解説
2) 「過失がないとき」とは、社会通念上、通常可能な年齢確認が適切に行われているか否かで判断され、例えば、相手方となる青少年に年齢や生年月日、干支等を聞いたり、身分証明書の提出を求める等客観的に妥当な確認措置がとられたにもかかわらず、その青少年が年齢を偽ったり、虚偽の証明書を提出する等行為者に過失がないと認められる場合をいう。
【参考判例】(昭和34年5月11日最高裁判決、要旨)
児童を接客婦として雇い入れる雇主は、児童、両親がその実家で差し出した他人の戸籍抄本が児童本人のものか否かを確かめるべきであり、そのために、単に児童、両親の一方的陳述だけで軽信することなく、他の客観的資料に基づいて調査をなすべきである。

1回の住居侵入で数個の不同意わいせつ(致傷)罪を犯しても、科刑上一罪(かすがい現象)

 牽連犯自体に批判があり、かすがい現象にも批判があるので、東京高裁に聞いてみたところ、令和になっても、牽連犯・かすがい現象が確認されました。

https://www.uhb.jp/news/single.html?id=44542
共同住宅の2階の部屋に侵入し包丁を見せるなどして10代の姉妹にわいせつな行為をした他、姉にケガを負わせた

の事案のように、
①住居侵入+Aに対する不同意わいせつ致傷
②住居侵入+Bに対する不同意わいせつ
という場合、①②併せて科刑上一罪になります。(かすがい現象)

 準強制わいせつ罪は住居侵入罪と牽連犯として科刑上一罪の関係 東京高裁h11.7.26(原審川越支部
 住居侵入+強制わいせつ罪(176条後段)が牽連犯 東京高裁r5.10.12(原審川越支部
 

東京高裁r5.10.12
第4 法令適用の誤りの論旨について
 1 論旨
  (1) 住居侵入罪と強制わいせつ罪の関係について
    住居侵入罪と強制わいせつ罪との間に牽連関係は認められないから、原判決が、第1ないし第4、第6事件において、各々の住居侵入罪と強制わいせつ罪につき牽連犯が成立するとしたことは、法令の適用を誤っている。
  (2) 住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の関係について
    住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の間も牽連関係は認められないから、原判決が、第3、第4事件において、各々の住居侵入罪と児童ポルノ製造罪につき牽連犯が成立するとしたことは、法令の適用を誤っている。
  (3) いわゆるかすがい現象について
    かすがい現象によって処断刑が軽くなる罪数処理は違法であり、原判決が、第2事件において、科刑上一罪としたことは法令の適用を誤っている。
    また、仮に住居侵入罪と強制わいせつ罪、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪との間で牽連犯が成立するとしても、同様の理由から、原判決が、第3、第4事件において、科刑上一罪の処理をしたことは、法令の適用を誤っている。
 2 当裁判所の判断
  (1) 住居侵入罪と強制わいせつ罪の関係について
    所論の指摘は多岐にわたるが、その主な論拠は、①両罪に客観的牽連性が認められない、②牽連犯の規定そのものに合理性が乏しく廃止論が根強い上、かすがい現象で処罰範囲が限定されることになる解釈は、性犯罪の厳罰化が要請される現在の価値観では維持できないはずである、③住居侵入罪と強制わいせつ罪を牽連犯とする最高裁判例はなく、住居侵入罪と強制性交等罪を牽連犯としている判例も現在では合理性を欠いている、④特に第3事件では、「正当な理由がないのに」侵入したという認定に留まり、住居侵入罪と強制わいせつ罪の間の牽連性が示されていない、⑤両罪の被害者が異なる、などというものである。
    そこで検討するに、いわゆる科刑上一罪(刑法54条1項)の実質的根拠は、社会通念上一体の事実と評価できる数個の犯罪につき、それに対する刑罰の適用を1回に留めることが刑罰適用上の合目的要請等の観点から相当であるという点にあり、複数個の行為の間に牽連関係があるといえるためには、罪質上、通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があることに加えて、具体的な場面においてもかかる関係が認められることが必要になるというべきである。
    これを本件についてみると、住居に侵入して居住者に対し強制わいせつに及ぶ犯罪類型があるから、性質上、住居侵入が強制わいせつの手段として通常用いられる関係があるということができる。そして、被告人は、第1ないし第4、第6事件において、各々の住居侵入に続けて侵入先で強制わいせつ又は準強制わいせつに及んでおり(ただし、第2(2)事件については未遂)、各事件において、実際にも住居侵入を手段として強制わいせつ等の結果を生じた(又は生じさせようとした)ことが明らかである。そうすると、本件各事件の事実関係の下では、これらの事件について住居侵入罪と強制わいせつ罪(又は同未遂罪)又は準強制わいせつ罪の間に牽連性があるとした原判決の判断に誤りはない。
    弁護人は、前記①の論拠として、強制わいせつ罪は強制性交等罪と比べて屋内で行われる割合が圧倒的に少ないから、侵入罪との牽連関係が低い旨主張するが、屋外で実行する形態の強制わいせつ罪が相応の比率に上るとしても、侵入先の屋内でこれを行う犯罪類型が存在することが否定されるわけではなく、所論は採用し難い。前記②について、牽連犯の成立範囲を限定的に解すべきかどうかはともかく、両罪に牽連性があるとの判断が誤りとはいえないことは前記のとおりであるし、かすがい現象で不都合が生じ得るとしても、そのことが直ちに牽連犯の成立を否定する理由にはならないというべきである。前記③について、住居侵入罪と強制わいせつ罪を牽連犯と判示した最高裁判例がないことは所論が指摘するとおりであるが、他方で、下級審の裁判例は多数に上り、また、最高裁判所が罪数処理の誤りを理由に破棄した例は見当たらないから、原判決が判例やその趣旨に違反するということはできない。前記④について、理由齟齬及び理由不備の項で説示したとおり、罪数に関する判断は「罪となるべき事実」の記載ではなく「法令の適用」の中で示すものであるし、罪となるべき事実の記載として、「正当な理由がないのに」以上に具体的な目的を示すことが常に必要とされるわけでもない。また、「正当な理由がない」という中には、「わいせつ行為をする目的」も含まれると解することも可能である。そして、原判決は、第3事件の法令の適用中で両罪が牽連犯になることを明らかにしている上、実態としても、被告人がわいせつ目的で住居へ侵入した旨を自認し、現に原判示のとおり、侵入した住居内で強制わいせつ行為に及んだことからすると、牽連性を認めたことに誤りはない。前記⑤について、被害者の同一性が牽連犯の成立要件となるわけではないから、所論の根拠にならない。
    以上のとおり、前記各所論はいずれも理由がない。
  (2) 住居侵入と児童ポルノ製造の関係について
    所論は、①特に児童ポルノ法7条4項(特定の姿態をとらせての製造)の罪については客観的に住居侵入罪との牽連性が認められない、②本件における侵入行為は、児童ポルノ製造行為を目的としていない、③判例上、児童ポルノに関する罪は、他の罪とは牽連犯にならないとされている、④住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯と認めた判例がないのに対し、これを否定した裁判例が複数ある、⑤牽連犯の成立を認めると、一事不再理効の範囲が広がりすぎる、などというものである。
    そこで検討するに、児童の現在する住居等に侵入した上で、同所において、児童に性欲を興奮させる等の姿態をとらせて撮影等をするという犯罪類型は現実に存在しており、その場合、罪質上、住居侵入が児童ポルノ製造の手段として不可欠な関係が認められる。そして、被告人は、第4事件については元々幼児の裸体を撮影する目的で住居に侵入した旨自認するほか、第3事件も概ね共通する態様で敢行しており、特異な事情が事後的に生じるなどして撮影に至ったわけではないから、いずれの事件についても住居侵入を手段として児童ポルノ製造の犯行を行ったものということができる。そうすると、本件各事件の事実関係の下では、これらの事件について住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の間に牽連性があるとした原判決の判断に誤りはない。
    以上によれば、弁護人の前記①及び②の主張は採用できない。前記③について、所論指摘の事例は、児童ポルノ製造罪につき住居侵入以外の罪との関係で個別に牽連犯の成否を検討したもので、児童ポルノ製造罪がどのような罪とも一律に牽連犯にならない旨を判示したものでないことは明白である。前記④について、住居侵入罪と児童ポルノ製造罪の罪数について明示的な判断をした最高裁判例がないことは前記(1)と同様である。また、下級審では、結論として両罪を牽連犯としなかった事例があることは認められるが、牽連犯の成否は前述のとおり個別の事情をも勘案して決すべきところ、前記各事例における詳細な事実関係は明らかでないから、両者の関係を併合罪とした前記下級審の罪数処理が本件の場合に必ずしも妥当するということはできないし、もとよりそれらの判断が何らかの拘束力を有するものでもない。
    以上のとおり、前記各所論はいずれも理由がない。
  (3) いわゆるかすがい現象について
    前記(1)でみたとおり、第2(1)及び(2)事件の住居侵入罪と準強制わいせつ罪及び強制わいせつ未遂罪をそれぞれ牽連犯とした原判決の判断に誤りはない。そして、第2(1)及び(2)事件の準強制わいせつ罪及び強制わいせつ未遂罪が併合罪の関係であるとしても、同一の住居侵入罪を介して全体が科刑上一罪となるとした原判決の判断にも誤りは認められない。
    また、前記(2)で説示したとおり、第3、第4事件において住居侵入罪と児童ポルノ製造罪を牽連犯とした原判決の判断にも誤りはなく、強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪が併合罪の関係にあるとしても、同一の住居侵入罪を介して各々の強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を含む全体を科刑上一罪とした原判決の判断に誤りはない。
    所論は、①かすがい現象を認めると、新たな犯罪が加わるのに全体が科刑上一罪となる結果として処断刑が引き下げられるという不合理な事態が生じる、②児童ポルノ法7条4項の罪は、撮影者による事後の複製行為まで処罰範囲とするため、例えば、住居侵入をした上で強制わいせつと児童ポルノの製造(撮影行為)に及び、後に当該児童ポルノを複製して、このうちの複製行為のみで処罰された場合、かすがい現象により一罪となる強制わいせつが後から発覚しても起訴できないことになるなど、一事不再理効が予想外に広がり得る、などというものである。
    しかし、前記①については、原審における求刑や宣告刑等をみても、第2ないし第4事件が全体として科刑上一罪とされたことにより、かすがい現象を認めなかった場合に比べてそれぞれの処断刑の上限が下がったとはいえるが、そのことによる支障が生じたことは全くうかがわれない。また、かすがい現象で所論指摘の不均衡が生じる面がある点は否定できないにせよ、これを採用しない場合は、同一の行為について法的評価を異にしたり(併合罪の関係にある複数の行為のうち、一つについてのみ住居侵入罪との牽連関係を認める場合)、一つの住居侵入行為を複数回評価したり(併合罪の関係にある複数の行為について、いずれも一つの住居侵入罪と牽連関係を認める場合)といった別の問題に直面するから、かすがい現象がおよそ不合理で、採用の限りではないとまではいえない。
    次に、前記②については、やはり本件において所論のいうような問題が顕在化しているわけではない上に、強制わいせつ時点の撮影行為と、その後に時間を隔てて行われる複製行為とが必ずしも包括一罪と評価されるとは限らないから、所論の指摘する不合理性は、ただちにかすがい現象を否定すべき理由とはならない。
    所論はいずれも理由がない。
  (4) 小括
    以上によれば、原判決の罪数処理が格別不合理であるとは認められず、法令適用の誤りの論旨は理由がない。

性的姿態等撮影罪と不同意わいせつ罪・監護者わいせつ罪は観念的競合?併合罪?

「3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。」の解説なんだけど、同一機会の撮影行為と不同意わいせつ行為があったとして、科刑上一罪説だと、一事不再理効が働くから、先に撮影罪が確定してしまうと、あとから不同意わいせつ罪は起訴できなくなるから、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用は不可能だよね。一事不再理効を排除するという解説もないし。
 併合罪説じゃないと、「刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用」の可能性が問題になることはないよね。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2前項の罪の未遂は、罰する。
3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。
・・・・・・
法務省逐条説明
5 第3項
本項は、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合について、性的姿態等撮影罪の成立により強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪の成否が影響を受けるものではないことにつき疑義が生じないようにするため、刑法第176条第1項及び第179条第1項の適用を妨げない旨の確認規定を設けるものである(注4 。)

(注4)罪数関係については、個別の事案ごとに、具体的な事実関係も踏まえて判断されるべき事柄であるが、一般論としては、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合、性的姿態等撮影罪は、性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での被害者の性的自由・性的自己決定権を保護法益として設けるものであり、また、侵害の態様も性的な姿態の影像を記録して固定化するというものであることからすると性的な行為を行うかどうかの自由が問題となる強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪との法益侵害の同一性があるとはいえないことから、強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪と性的姿態等撮影罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個であれば、観念的競合(一個でなければ併合罪)となる。

映像送信要求罪と、不同意わいせつとの関係

 映像送信要求罪と、不同意わいせつとの関係
 法曹時報の解説は、観念的競合になることもあるし、牽連犯になることもあるし、併合罪になることもあるというので、決まらない。

 さらに、法曹時報(注13)の事案は、いずれも、「撮影させ」までが強制わいせつ罪(176条後段)として起訴されて有罪になった事案で「送信させ」は強制わいせつ罪(176条後段)では起訴されていないから、送信要求行為とわいせつ行為との牽連関係は疑わしい。

阪高裁r3.7.14
1 第3事実の不告不理原則違反の論旨について
所論は,第3事実について,強制わいせつの訴因にはAが撮影した画像データを被告人のスマートフォンに送信し,同画像データがサーバコンヒ°ユータ内に記憶・蔵置された事実が含まれていないのに,原判決がこれらの事実を含めて強制わいせつと認定した点は,不告不理の原則違反(訴因逸脱認定)であると主張する。
しかし,原判決が前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実をも刑法176条後段にいう「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとは認められない。
原判決の「罪となるべき事実」の記載は,観念的競合として1個の行為と評価されるAに対する強制わいせつとAに係る児童ポルノ製造の事実をまとめて記載したものと読むことは十分可能である。
そして,前記第1の2のとおり,原審は,別個の訴因として起訴された前記強制わいせつ及び児童ポルノ製造を観念的競合の関係にあると解したという経緯があり,また,原判決は,その(判示第3の事実に関する争点に対する判断)中の「第2強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係」(9頁)において,「強制わいせつ罪の実行行為は,Aに要求し,2回にわたり,Aに陰部,乳房等を露出した姿態をとらせて撮影させるというもの」と明示しており,訴因外の事実である前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実をも「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとうかがわせる記載は見当たらない。
そうすると,原判決が,前記画像データの送信,記憶・蔵置の事実を「わいせつな行為」と評価されるべき行為に含めているとはいえず,訴因逸脱認定などということはできない。

東京地裁r4.3.10
罪となるべき事実
被告人は
第1 別紙b9が13歳未満の者と知りながら
同人にわいせつ行為しようと企て
/13ころから/31頃までの間、
■■■■■■■■■■■■■■■■又はその周辺において
アプリケーションソフト○及び○を使用して
12歳の女児児童を装い
bに対して 乳房・陰部露出して自慰行為する様子を動画で撮影して被告人が使用する携帯電話機に送信してほしい旨のメッセージを繰り返し送信して、
別表1の通り、/15~/31までの間
12回に渡り
■■■■■■■■■■■■■■■■方において、
bに衣服を脱がせて乳房陰部等を露出させ陰部を指で触れる姿態をとらせ、
これを同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ
もって13未満の者にわいせつ行為をした

(十六歳未満の者に対する面会要求等)
刑法第百八十二条 
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律について法曹時報 第76巻01号
p114
3 客体
本条の客体となる若年者は、第176条第3項及び第177条第3項の客体と同じく、16歳未満の者とされたが、その理由は次のとおりである。
すなわち、
○ 本条第3項は、不同意わいせつ罪に当たり得る「性的な姿態をとらせてその映像を送信させる行為」の前段階で、その要求をすることを処罰することとするものであり、仮に客体となる若年者に16歳以上の者を含めることとした場合には、16歳以上の者に関しては、行為者がその目論見どおりに「性的な姿態をとらせてその映像を送信させる行為」に及んでも、それだけでは犯罪とならないにもかかわらず、その前段階の送信要求行為については処罰することになる

p117
7 第3項
本項の罪の実行行為は、16歳未満の者に対し、本項第1号又は第2号に掲げるいずれかの性的な姿態をとってその映像を送信することを要求することである。
本項は、16歳未満の者が性被害に遭わない環境にあるという性的保護状態を保護法益とし、離隔した状態で行われる性犯罪を未然に防止するためのものであることに鑑みると、本項において要求行為の対象とすべき行為は、当該行為が実現した場合に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が(注12)生じるものとすることが相当であると考えられる。
そこで、本項においては、実務において、離隔した状態で行われた行為に強制わいせつ罪(改正後の不同意わいせつ罪)の成立が認められている(注13)「わいせつな行為」を参考にして、
○ 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信する行為
○ 膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信する行為(注14)を要求する行為が処罰対象とされた。
なお、本項は、その要求の対象となる行為について、「姿態をとって」と規定しており、16歳未満の者に性的な姿態をとらせることを要件としているため、16歳未満の者に性的姿態をとらせることなく、16歳未満の者があらかじめ持っていた性的画像を送信するように要求する行為は、本項の処罰対象とならない。
本項における各文言の意義等については、以下のとおりである。
(1)「要求」
本項の「要求」は、本項各号に掲げる行為を求める意思表示を意味する。
(2)「映像」
本項の「映像」には、静止映像のほか、動画も含まれる。
(3)第1号(「性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること」の要求行為)
「性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること」の要求行為とは、対象者に対して、他人との間で性交、肛門性交又は口腔性交をしてその姿態の映像を送信するように要求する行為をいう。
(4)第2号
ア「膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される姿態をとってその姿態の映像を送信すること」の要求行為
「膣又は肛門に身体の一部又は物を挿入し又は挿入される婆態をとってその姿態の映像を送信すること」の要求行為とは、
○ 対象者の膣又は肛門に自身の手指や性具等を挿入してその映像を送信するように要求する行為
○ 対象者の膣又は肛門に他人の手指や性具等が挿入される姿態をとってその映像を送信するように要求する行為
○ 他人の膣又は肛門に対象者の手指や性具等を挿入してその姿態の映像を送信するように要求する行為
をいう。
イ「性的な部位を触り又は触られる姿態をとってその映像を送信すること」の要求行為
「性的な部位を触り又は触られる姿態をとってその映像を送信すること」の要求行為とは、
○ 対象者が自己の性的な部位を触る姿態をとってその姿態の映像を送信するように要求する行為
○ 対象者がその性的な部位を他人に触られる姿態をとってその姿態の映像を送信するように要求する行為
○ 対象者が他人の性的な部位を触る姿態をとってその姿態の映像を送信するように要求する行為
をいう。
ウ「その他の姿態」
「その他の姿態」としては、例えば、対象者が他人の性的な部位をなめ又は自身の性的な部位をなめられる姿態が考えられる。
エ「当該行為をさせることがわ↓、せつなものであるものに限る」
本項第2号に掲げる行為については、「当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る」こととされている。
同号の「性的な部位を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること」を要求する場合としては、例えば、
○ 親が、胸部を強く打ちつけた旨訴える16歳未満の者に対し、ビデオ通話で胸部を見せるように要求する場合や、
○ 医帥が、リモート診察において、胸部に皮膚疾患を有している16歳未満の者に対し、患部を映すように要求する場合
なども考え得るが、これらの行為は、具体的な状況に照らして行為に性的な意味合いがなく、処罰対象とすべきではないと考えられる。
そこで、このような行為を構成要件の段階で処罰対象から除外する趣旨で、同号に掲げる行為については、「当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る」こととされた。
本項の要求行為の対象となる行為は、当該行為が実現した場合に重大な性的自由・性的自己決定権の侵害が生じるもの、すなわち不同意わいせつ罪が成立するものという観点から規定されたものであり、同
号の「わいせつなもの」とは、不同意わいせつ罪における「わいせつな行為」を意味する。
9罪数
(2)他罪との関係
イ本条第3項の罪に当たる行為が行われ、これに基づいて被害者に性的な姿態をとらせてその映像を送信させた行為が不同意わいせつ罪に該当する場合、同項の罪は、性的自由・性的自己決定権を保護法益とする不同意わいせつ罪の予備罪としてではなく、性的保護状態を保護法益とするものとして設けるものであり、保護法益が同一とはいえず、二つの法益侵害が存することから、同項の罪と不同意わいせつ罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の「で行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合には観念的競合となるが(注17)(注18)、そのように評価されない限り、同項の罪と不同意わいせつ罪は、罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという関係があることから、具体的に行為者がそのような関係において両罪を実行したのであれば、牽連犯になると考えられる(注19)。
(注13) 例えば、次のような裁判例がある。
○アブリケーションソフトのダイレクトメッセージ機能を使用して、遠隔地にいた被害者(当時9歳)に対し、陰部、乳房等を露出した姿態をとって撮影し被告人に送信するよう要求して、被害者に、その陰部及び乳房を露出した姿態をとらせて撮影させた行為の「わいせつな行為」該当性が争われた京案において、「撮影させた部位のうち、陰部(性器自体は写っていないものの、その周辺部である。)は性的要素が強く、乳房も性を象徴する典型的な部位である。また、衣服を脱がせる行為(又は衣服を着けない姿態をとらせる行為)は、裸になることを受忍させてその身体を性的な対象として行為者の利用できる状態に置くものであって、単独でも「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものであるし、続いてそうした衣服を着けない姿態を撮影する行為も、自ら性的な対象として利用できる状態に置かせた裸体を、さらに記録化することによってまさに性的な対象として利用するものであり、それによって性的侵害性が強まるといえるから、「わいせつな行為」に当たり得るほどの強い性的意味合いを有し得るものといえる。」と判示して、強制わいせつ罪の成立を認めたもの(大阪高判令和3年7月14日高等裁判所刑事裁判速報集令和3年403頁)
○被害者(当時11歳)に対し、乳房や陰部を露出して自慰行為をする様子を動画で撮影して被告人が使用する携帯電話機に送信するように要求し、被害者に衣服を脱がせ乳房、陰部等を露出させ陰部に指を挿入した姿態等をとらせた事案において、強制わいせつ罪の成立を認めたもの(東京地判令和4年3月10日公刊物未登載)
P127
(注18) 本条第3項の罪の実行行為は、16歳未満の者に対して性的な姿態をとってその映像を送信するように「要求する行為」であり、その結果として行われる不同意わいせつ罪の実行行為は、16歳未満の者に対して「性的な姿態をとらせてその映像を送信させる行為」であるから、前者の行為と後者の行為は同一ではないものの、「姿態をとらせて送信させる」行為には、それを要求する行為が内在的に含まれる(前提になっている)と考えるとすると、両罪の実行行為は、要求する行為の限度で重なり合う関係にあることになる。
そして、このように行為の一部のみが重なり合うにとどまる場合であっても、例えば、
○行為者が16歳未満の者に対して性的な姿態をとってその映像を送信するように要求し、16歳未満の者が直ちにこれに応じたため、要求する行為とわいせつ行為がほぼ同時的に行われるような事例
○行為者が16歳未満の者に対して性的な姿態をとってその映像を送信するように要求し、16歳未満の者がこれに応じようとするなどして、不同意わいせつ罪の実行に着手したとは認められるものの、結果的に既遂にまでは至らなかった事例
では、これらの行為が刑法第54条の「一個の行為」と評価され、観念的競合と評価される余地もあり得ると考えられる。
(注19) なお、例えば、本条第3項の罪に当たる行為が行われ、これに基づいて被害者に性的な姿態をとらせてその映像を送信させた後、同被害者に対し、同映像を脅迫等の手段として用いてわいせつな行為が行われた場合であって、同項の罪とその後のわいせつな行為の間に手段・結果の関係が認められないときには、併合罪となると考えられる。

不同意性交罪と不同意わいせつ罪の包括一罪(新潟地裁r6.3.14)

不同意性交罪と不同意わいせつ罪の包括一罪(新潟地裁r6.3.14)
判示第2の「手に持ったスマートフォンを使用し、その陰部付近に陰茎が押し当てられ、その膣内に手指を挿入して性交等がされている間の同人の姿態などを動画撮影し」というのもわいせつ行為そのものだから、第1の不同意わいせつ罪とは1個のわいせつ行為だから、第1+第2で包括一罪ですよね。処断刑期が5年以上に落ちる。

 不同意わいせつ罪との関係については、わざわざ2条3項を設けてある。児童ポルノ製造罪と強制わいせつ罪との関係について判例が混乱しているからだろう。

(性的姿態等撮影)
第二条 
3 前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない

逐条説明
5 第3項
本項は、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合について、性的姿態等撮影罪の
成立により強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪の成否が影響を受けるものではないことにつき疑義が生じないようにするため、刑法第176条第1項及び第179条第1項の適用を妨げない旨の確認規定を設けるものである(注4)

(注4)罪数関係については、個別の事案ごとに、具体的な事実関係も踏まえて判断される
べき事柄であるが、一般論としては、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合、
○ 性的姿態等撮影罪は、性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での被害者の性的自由・性的自己決定権を保護法益として設けるものであり、また、侵害の態様も性的な姿態の影像を記録して固定化するというものであることからすると、性的な行為を行うかどうかの自由が問題となる強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪との法益侵害の同一性があるとはいえない
ことから、強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪と性的姿態等撮影罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個であれば、観念的競合(一個でなければ併合罪)となる。

lexDB
【文献番号】25620275

新潟地方裁判所令和5年(わ)第342号
令和6年3月14日刑事部判決
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 令和5年10月6日午後10時22分頃から同日午後10時32分頃までの間、新潟市α区β×××番地×b株式会社c駅先駐車場から同区γ×丁目×番×号先路上までを走行中のタクシー内において、別紙秘匿目録記載1のA(当時■歳)に対し、同人が大量のアルコール飲料を飲んだ影響により同意しない意思を形成することが困難な状態にあることに乗じて、その唇に接吻し、着衣の上からその胸を手でなで回し、ズボンの中に手を差し入れて、その陰部付近を触るなどし、さらに、同日午後11時20分頃から同日午後11時35分頃までの間、同区γ△丁目△番△△号d店駐車場から同目録記載2先路上までの間を走行中のタクシー内において、同人に対し、同人が前記状態にあることに乗じて、着衣に手を差し入れて、その胸部付近を触り、ズボンの中に手を差入れて、その陰部付近を触るなどのわいせつな行為をし、同日午後11時47分頃から同月7日午前0時6分頃までの間、同目録記載3のA方において、同人に対し、同人が前記状態にあることに乗じて、その陰部付近に陰茎を押し当てるなどのわいせつな行為をした上、その膣内に手指を挿入して性交等をし、
第2 同月6日午後11時47分頃から同月7日午前0時6分頃までの間、前記A方において、Aに対し、同人が前記状態にあることに乗じて、手に持ったスマートフォンを使用し、その陰部付近に陰茎が押し当てられ、その膣内に手指を挿入して性交等がされている間の同人の姿態などを動画撮影し
たものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条 判示第1の所為につき
包括して刑法177条1項(176条1項3号)(令和5年法律第66号附則3条により有期拘禁刑とあるのを有期懲役として適用)
判示第2の所為につき
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項2号(刑法176条1項3号)(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律附則2条により拘禁刑とあるのを懲役として適用)
刑種の選択 判示第2の罪について
懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
(量刑の理由)
 本件は、幹部警察官である被告人が、女性警察官が泥酔状態にあることに乗じて不同意性交等をした事案である。
(求刑 懲役7年)
令和6年3月19日
新潟地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小林謙介 裁判官 岡田真生 裁判官 池田弘

援助交際型不同意性交罪(熊本地裁R6.5.16)酌量減軽 求刑5年6月

援助交際型不同意性交罪(熊本地裁R6.5.16)酌量減軽

lex/db
【文献番号】25620280

熊本地方裁判所令和5年(わ)第602号
令和6年5月16日刑事部判決

       主   文

被告人を懲役3年と処する。
未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
       理   由

(犯罪事実)
 被告人は、被害者(当時14歳。氏名は別紙のとおり。)が16歳未満の者であり、かつ、自らが被害者の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であることを知りながら、令和5年7月30日午後2時10分頃から同日午後4時34分頃までの間に、熊本県人吉市α××××番地×所在のホテルB×××号室において、被害者に対し、現金5万円の対償を供与して、同人と性交し、もって児童買春をするとともに、16未満の者に対し、性交等をした。
(法令の適用)
罰条 不同意性交等の点 刑法177条3項、同条1項、令和5年法律第66号附則3条
児童買春の点 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条、2条2項1号
科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段、10条(1罪として重い不同意性交等罪の刑で処断)
酌量減軽 刑法66条、71条、68条3号
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 被告人は、SNSを用い、「パパ活」と称して、対価を得て性交に応じることを含め、その相手を募集していた被害者に接触し、本件犯行に及んだ。被告人は、SNS上の記載や被害者とのやり取りを経て被害者が中学3年生であると認識したのに、性交が自己に及ぼす影響を理解し、これに対処する能力が未だ十分に備わっているとはいい難い被害者の未熟さに乗じ、対償を供与してまで性交に及んだのであって、その責任は重く、実刑を選択することも考えられる。
 しかしながら、本件は、上記のとおり、被害者からの働き掛けに被告人が応じたという側面があり、刑の執行を猶予することが許されないとまではいい難い。そして、被告人には前科前歴が見当たらないこと,被告人は公判廷において罪を認めて反省の弁を述べ、被害者側から受入れられていないながらも被害弁償の意向を示しており、そのための十分な資力があることなど、被告人のために酌むべき事情も認められる。
 そこで、被告人に対しては、酌量減軽をし、主文のとおりの刑を科して刑事責任の重さを明らかにした上で刑の執行を猶予することとした。 
 よって、主文のとおり判決する。
(求刑:懲役5年6月)
令和6年5月22日
熊本地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 中田幹人 裁判官 賀嶋敦 裁判官 新田紗紀