児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合とする裁判例 令和5年4月12日現在

相変わらず観念的競合の判決が出ています。


1 名古屋 地裁 一宮 H17.10.13
2 東京 地裁 H18.3.24
3 東京 地裁 H19.2.1
4 東京 地裁 H19.6.21
5 横浜 地裁 H19.8.3
6 長野 地裁 H19.10.30
7 札幌 地裁 H19.11.7
8 東京 地裁 H19.12.3
9 高松 地裁 H19.12.10
10 山口 地裁 H20.1.22
11 福島 地裁 白河 H20.10.15
12 那覇 地裁 H20.10.27
13 金沢 地裁 H20.12.12
14 金沢 地裁 H21.1.20
15 那覇 地裁 H21.1.28
16 山口 地裁 H21.2.4
17 佐賀 地裁 唐津 H21.2.12
18 仙台 高裁 H21.3.3
19 那覇 地裁 沖縄 H21.5.20
20 千葉 地裁 H21.9.9
21 札幌 地裁 H21.9.18
22 名古屋 高裁 H22.3.4
23 松山 地裁 H22.3.30
24 那覇 地裁 沖縄 H22.5.13
25 さいたま 地裁 川越 H22.5.31
26 横浜 地裁 H22.7.30
27 福岡 地裁 飯塚 H22.8.5
28 高松 高裁 H22.9.7
29 高知 地裁 H22.9.14
30 水戸 地裁 H22.10.6
31 さいたま 地裁 越谷 H22.11.24
32 松山 地裁 大洲 H22.11.26
33 名古屋 地裁 H23.1.7
34 広島 地裁 H23.1.19
35 広島 高裁 H23.5.26
36 高松 地裁 H23.7.11
37 広島 高裁 H23.12.21
38 秋田 地裁 H23.12.26
39 横浜 地裁 川崎 H24.1.19
40 福岡 地裁 H24.3.2
41 横浜 地裁 H24.7.23
42 福岡 地裁 H24.11.9
43 松山 地裁 H25.3.6
44 横浜 地裁 H25.4.30
45 大阪 高裁 H25.6.21
46 横浜 地裁 H25.6.27
47 福島 地裁 いわき H26.1.15
48 松山 地裁 H26.1.22
49 福岡 地裁 H26.5.12
50 神戸 地裁 尼崎 H26.7.29
51 神戸 地裁 尼崎 H26.7.30
52 横浜 地裁 H26.9.1
53 津 地裁 H26.10.14
54 名古屋 地裁 H27.2.3
55 岡山 地裁 H27.2.16
56 長野 地裁 飯田 H27.6.19
57 横浜 地裁 H27.7.15
58 広島 地裁 福山 H27.10.14
59 千葉 地裁 松戸 H28.1.13
60 高松 地裁 H28.6.2
61 横浜 地裁 H28.7.20
62 名古屋 地裁 岡崎 H28.12.20
63 東京 地裁 H29.7.14
64 名古屋 地裁 一宮 H29.12.5
65 東京 高裁 H30.1.30
66 高松 高裁 H30.6.7
67 広島 地裁 H30.7.19
68 広島 地裁 H30.8.10
69 福岡 地裁 R2.3.3
70 京都 地裁 R3.2.3
71 福岡 地裁 R3.5.19
72 千葉 地裁 R3.5.28
73 神戸 地裁 尼崎 R3.7.5
74 大阪 高裁 R3.7.14
75 大阪 高裁 R4.1.20
76 東京 地裁 R4.8.30
77 札幌 地裁 R4.9.14
78 札幌 高裁 R5.1.19
79 大分 地裁 R5.2.20
80 奈良 地裁 葛城 R5.3.13
81 さいたま 地裁 川越 R5.3.20
82 東京 高裁 R5.3.30

「10代後半の少女に児童ポルノを要求して製造した」場合には、要求罪(青少年条例違反)は成立しないだろう。

 立法趣旨は共通で、製造罪が成立する場合には要求罪は吸収されてしまうでしょう。

富山県青少年健全育成条例
(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第15条の3 何人も、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ及び同項各号のいずれかに掲げる姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第18条の4において同じ。)その他の記録をいう。第24条第3項第11号において同じ。)の提供を行うように求めてはならない。

(平31条例11・追加)
第24条 
3 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(11) 第15条の3の規定に違反して、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた者であつて、次のいずれかに該当するもの

ア 当該青少年に拒まれたにもかかわらず、当該提供を行うように求めた者

イ 当該青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は当該青少年に対し、対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該提供を行うように求めた者



【解説】
本条は、スマートフォンなどの急激な普及や、インターネット利用の低年齢化が進み、判断能力の未成熟な青少年が多くネット上で活動し始めたことを背景に、SNSに代表されるコミュニティサイトなどを通じて知り合った相手に、青少年自身の裸や下着姿を撮影させられた上、メールなどで送らされる被害、いわゆる「自画撮り被害」が社会問題視したことから、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を求める行為を禁止するものである。これは、恋愛関係にある場合や冗談などであっても、児童ポルノなどのやりとりにより、インターネット上への画像の流出やリベンジポルノに繋がり、青少年を将来に渡って苦しめる要因となる危険性を否定できないためである。
また、本条の規定に違反して、青少年に対し、不当な方法により当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うよう求めた者は、30円万以下の罰金に処せられる。(→第24条
(罰則)第3項第11号参照)
これは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条の規定により、児童ポルノの電磁的記録の所持、保管、提供、製造などが禁止されており、自画撮り被害が生じた場合、加害者には製造罪が適用されるケースが多いが、未遂罪の規定がなく、自画撮り被害につながる働きかけ行為自体を処罰する規定がないことや、自画撮り被害につながる働きかけ行為自体が刑法第222条(脅迫罪)や、第223条(強要罪)の未遂に該当すれば罰せられるが、加害者が青少年の判断能力の未熟さにつけこむ方法で働きかけを行う場合、働きかけ行為自体がこれらに該当しないことが多いことから、その自画撮り被害につながる働きかけ行為自体を罰することで、青少年の画像提供の未然防止などを図るものである。
1 適用範囲
本規定は、刑法の属地主義により、構成要件該当事実の一部が富山県内で発生した場合に適用される。すなわち、要求を行う者又は要求を受ける者(青少年)のいずれかが富山県内に所在する場合に適用される。(関係判例参照)

https://www3.nhk.or.jp/lnews/k/nagano/20230411/1010026192.html
男性巡査が児童買春・ポルノ禁止法違反などの容疑で書類送検

長野県警の男性巡査が10代後半の少女の児童ポルノを製造したなどとして児童買春・ポルノ禁止法違反などの疑いで書類送検されていたことがわかりました。
この巡査は減給の懲戒処分を受け、依願退職しました。

警察によりますと、県内の警察署に勤務していた20代の男性巡査は、去年5月ごろから8月ごろまでの間に、18歳未満と知りながら10代後半の少女に児童ポルノを要求して製造したとして先月23日に児童買春・ポルノ禁止法違反と富山県青少年健全育成条例違反の疑いで書類送検されました。
巡査は書類送検された日に減給10パーセント、3か月の懲戒処分を受け、その日に依願退職したということです。

故意の青少年淫行罪で起訴されて、予備的に過失の青少年淫行罪を追加して無罪になった原判決が、検察官控訴されて、故意の青少年淫行罪を認定された事例

故意の青少年淫行罪で起訴されて、予備的に過失の青少年淫行罪を追加して無罪になった原判決が、検察官控訴されて、故意の青少年淫行罪を認定された事例

 過失処罰規定の問題点を挙げて論破できたと思ったんだけどな

《書 誌》
提供 TKC
【文献番号】 25594585
【文献種別】 判決/青森地方裁判所八戸支部(第一審)
【裁判年月日】 令和 4年 2月 2日
【事件番号】 令和3年(わ)第25号
【事件名】 青森県青少年健全育成条例違反(予備的訴因青森県青少年健全育成条例違反)被告事件
【審級関係】 控訴審 25594586
仙台高等裁判所 令和4年(う)第40号
令和 4年12月15日 判決
【裁判結果】 無罪
【上訴等】 控訴
【裁判官】 細包寛敏
【全文容量】 約7Kバイト(A4印刷:約5枚)

提供 TKC
【文献番号】 25594586
【文献種別】 判決/仙台高等裁判所控訴審
【裁判年月日】 令和 4年12月15日
【事件番号】 令和4年(う)第40号
【事件名】 青森県青少年健全育成条例違反(予備的訴因青森県青少年健全育成条例違反)被告事件
【審級関係】 第一審 25594585
青森地方裁判所八戸支部 令和3年(わ)第25号
令和 4年 2月 2日 判決
【裁判結果】 原判決破棄、有罪
【裁判官】 深沢茂之 梶直穂 鏡味薫
【全文容量】 約16Kバイト(A4印刷:約9枚)

不同意わいせつ罪等(解説が来れば補充予定)

https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00198.html
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律
(刑法の一部改正)
第一条刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
目次中「強制性交等」を「不同意性交等」に改める。
第三条第五号中「第百七十六条」の下に「、第百七十七条及び第百七十九条」を加え、「強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等」を「不同意わいせつ、不同意性交等」に、「強制わいせつ等致死傷)及び」を「不同意わいせつ等致死傷)並びに」に改め、同条第十四号中「強盗・強制性交等」を「強盗・不同意性交等」に改める。
第三条の二第一号中「第百七十六条」の下に「、第百七十七条及び第百七十九条」を加え、「強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等」を「不同意わいせつ、不同意性交等」に、「強制わいせつ等致死傷」を「不同意わいせつ等致死傷」に改め、同条第六号中「強盗・強制性交等」を「強盗・不同意性交等」に改める。
第二編第二十二章の章名中「強制性交等」を「不同意性交等」に改める。
第百七十六条から第百七十八条までを次のように改める。
(不同意わいせつ)
第百七十六条
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚が愕くさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。(不同意性交等)
第百七十七条前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、こ肛う門性交、口く腔う性交又はち膣つ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。第百七十八条削除
第百七十九条第一項中「第百七十六条」を「第百七十六条第一項」に改め、同条第二項中「第百七十七条」を「第百七十七条第一項」に改める。
第百八十条中「から前条まで」を「、第百七十七条及び前条」に改める。
第百八十一条の見出しを「(不同意わいせつ等致死傷)」に改め、同条第一項中「、第百七十八条第一項」を削り、同条第二項中「、第百七十八条第二項」を削る。第百八十三条を削り、第百八十二条を第百八十三条とし、第百八十一条の次に次の一条を加える。(十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
2前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
3十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
第二百四十一条の見出し中「強盗・強制性交等」を「強盗・不同意性交等」に改め、同条第一項中「強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)」を「第百七十七条の罪」に、「又は強制性交等」を「又は同条」に改める。

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律

https://www.moj.go.jp/content/001392302.pdf

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
目次
第一章総則(第一条)
第二章性的な姿態を撮影する行為等の処罰(第二条第七条)
第三章性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収(第八条)
第四章押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等
第一節通則(第九条)
第二節消去等の措置(第十条・第十一条)
第三節消去等の手続(第十二条第二十一条)
第四節消去等の実施等(第二十二条第二十五条)第五節不服申立て等(第二十六条第三十四条)第六節消去等に係る裁判手続の特例(第三十五条第三十八条)
第七節雑則(第三十九条第四十二条)
第八節罰則(第四十三条第四十五条)
附則
第一章総則
第一条この法律は、性的な姿態を撮影する行為、これにより生成された記録を提供する行為等を処罰するとともに、性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とし、あわせて、押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置をすることによって、性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止することを目的とする。
第二章性的な姿態を撮影する行為等の処罰
(性的姿態等撮影)
第二条次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分ロイに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
四正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2前項の罪の未遂は、罰する。
3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。
(性的影像記録提供等)
第三条性的影像記録(前条第一項各号に掲げる行為若しくは第六条第一項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第一項第四号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第五条第一項第四号に掲げる行為により同項第一号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(性的影像記録保管)
第四条前条の行為をする目的で、性的影像記録を保管した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。
(性的姿態等影像送信)
第五条不特定又は多数の者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一正当な理由がないのに、送信されることの情を知らない者の対象性的姿態等の影像(性的影像記録に係るものを除く。次号及び第三号において同じ。)の影像送信(電気通信回線を通じて、影像を送ることをいう。以下同じ。)をする行為
二刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等の影像の影像送信をする行為
三行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは不特定若しくは多数の者に送信されないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等の影像の影像送信をする行為
四正当な理由がないのに、十三歳未満の者の性的姿態等の影像(性的影像記録に係るものを除く。以下この号において同じ。)の影像送信をし、又は十三歳以上十六歳未満の者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、当該十三歳以上十六歳未満の者の性的姿態等の影像の影像送信をする行為-
2情を知って、不特定又は多数の者に対し、前項各号のいずれかに掲げる行為により影像送信をされた影-像の影像送信をした者も、同項と同様とする。
3前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。
(性的姿態等影像記録)
第六条情を知って、前条第一項各号のいずれかに掲げる行為により影像送信をされた影像を記録した者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
2前項の罪の未遂は、罰する。
(国外犯)
第七条第二条から前条までの罪は、刑法第三条の例に従う。

第三章性的な姿態を撮影する行為により生じた物を複写した物等の没収
第八条次に掲げる物は、没収することができる。
一第二条第一項又は第六条第一項の罪の犯罪行為により生じた物を複写した物
二私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成二十六年法律第百二十六号)第三条第一項から第三項までの罪の犯罪行為を組成し、若しくは当該犯罪行為の用に供した私事性的画像記録(同法第二条第一項に規定する私事性的画像記録をいう。次条第一項第二号及び第十条第一項第一号ロにおいて同じ。)が記録されている物若しくはこれを複写した物又は当該犯罪行為を組成し、若しくは当該犯罪行為の用に供した私事性的画像記録物(同法第二条第二項に規定する私事性的画像記録物をいう。第十条第一項第一号ロにおいて同じ。)を複写した物
2前項の規定による没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人
以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って保有するに至ったものであるときは、これを没収することができる。

自己性的目的所持罪・単純所持罪(7条1項)の取締方針

自己性的目的所持罪・単純所持罪(7条1項)の取締方針
 児ポ対ニュースなどから。

自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の取締り方針
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第79号。以下「改正法j という。)により新設された「自己の性的好奇心を満たす目的」による児童ポルノ所持罪(第7条第1項)(以下「自己性的目的所持罪」 という。) の罰則が、本年7月15日から適用開始となります。
自己性的目的所持罪については、改正法案を審議した参議院法務委員会において、「児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと」、「第7条第1項の罪の適用に当たっては、同項には捜査権の濫用を防止する趣旨も含まれていることを十分に踏まえて対応すること」に政府は格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされたことから、以下の方針に基づく適正な取締り及び関係部署への指示を徹底願います

1 基本方針
自己性的目的所持罪の取締りは、以下の基本方針に基づき行うこととする。
○児童を性的搾取・性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用
 児童ポルノ禁止法第3条(適用上の注意)は、「この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。」と規定している。また、参議院法務委員会でも、この規定と同趣旨の附帯決議がなされていることから、この基本原則に則り自己性的目的所持罪の罰則の適用に当たること。
○製造・提供罪等、より重い罰則の適用
児童ポルノの製造、提供、公然陳列等の事案については、自己性的目的所持罪ではなく、より重い本来の罰則を適用することを原則とする。

○客観的・外形的証拠に基づいた適正な取締りの徹底
自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づき所持するに至った」ことを、できるだけ客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、被疑者の供述を裏付ける客観的・外形的証拠(所持態様・分量・内容、通信ログ・内容等)を確保すること。

警察庁少年課に対する事前協議の徹底
既述のとおり、自己性的目的所持罪については、参議院法務委員会において、捜査権の濫用を防止することについて格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされるなど、本罪の適用は慎重に行わなければならない。こうしたことから、警察として全国的に斉一な取締りが実施されるよう、全ての事案について、平成26年6月25日付け少年課長通達「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に基づく取締りの報告について」に基づき、確実に警察庁少年課(福祉犯第三係)に事前報告を行い、協議すること

2 重点検挙対象事犯
児童を性的搾取・性的虐待から守るとしづ児童ポルノ禁止法の目的及び参議院法務委員会附帯決議を踏まえ、「児童に対する新たな性的搾取文は性的虐待の防止」又は「供給者側の犯行の抑止」に繋がる以下の事案を「重点検挙対象事犯」とする。
なお、以下に示す重点検挙対象事犯は、重点となる対象を示したものであり、重点対象であることの立証(を求めるものではない。また、重点検挙対象事犯に該当しない事案であっても、悪質なものについては、検挙対象となり得る(下記{自己性的目的所持罪取締り方針概念図】参照)。



※児童に対する新たな性的搾取又は性的虐待の防止
○年齢児童ポルノ愛好者の検挙
低年齢児童ポルノ愛好者による所持事犯
児童ポルノの製造を助長させる悪質な需要者の検挙
他人を煽るなどして,他人をして,新たに児童ポルノを製造させ,入手した事犯

※供給者側の犯行(複製・提供等)の抑止抑止
○常習的な児童ポルノ所持者の検挙
改正児童ポルノ禁止法施行日(H26.7.15)以降反復して有償で児童ポルノを入手している事犯


3 任意廃棄を含む注意警告の措置めるべき事案
○自己の性的好奇心を満たす目的が,所持の態様分量,所持している対象の内容等の客観的状況から推認できない場合は, 自己性的目的所持罪で検挙することなく,任意廃棄を含む注意・警告の措置に留める。
○どのような事案を警告等の措置に留めるべきかは,事案ごとに少年育成課と警察庁少年課との協議において判断する。


4自己性的目的所持罪での現行犯逮捕
自己性的目的所持罪は,客観的・外形的証拠により立証することが必要とされているため,現行犯逮捕できる場合は極めて限定的である。
ただし,逮捕時に以下の全ての要件を満たしている場合には, 例外的に現行犯逮捕も可能と解される。
なお,現行犯逮捕した場合は,少年育成課に速報すること。
①被疑者が自己性的目的所持罪を犯したことが明白
○「児童ポルノ該当性」が明白一児童ポルノ画像の被写体が特定され,又は医師の鑑定により児童と認定されている(警察官による予備年齢鑑定は行わない)。
○「自己の性的好奇心を満たす目的」が明白ー自己の性的好奇心を満たす目的が,客観的証拠(児童ポルノの内容,所持量、所持態様、閲覧履歴等)により明白
○「自ら所持するに至った者」であることが明白一自ら所持するに至った者であることが,客観的証拠により明白(ダウンロード・購入履歴等から,入手先・時期が特定されている。所持態様から,自ら所持する意思が明らか。)
②証拠隠滅・逃亡のおそれがある
被疑者が現に証拠隠滅や逃亡の素振りを見せたり,他の共犯者と通謀したり,犯行を否認している場合など,直ちに逮捕しなければ,証拠隠滅・逃亡のおそれがある。

着エロの児童ポルノ提供事件で、神奈川県警は提供犯を2022.5に逮捕して、2022.6には購入者約200人を特定して、購入者2名を単純所持で送検して、その後「昨年9~12月」に捜索して所持を現認した16人を送検したらしい。

 着エロの児童ポルノ提供事件で、神奈川県警は提供犯を2022.5に逮捕して、2022.6には購入者約200人を特定して、購入者2名を単純所持で送検して、その後「昨年9~12月」に捜索して所持を現認した16人を送検したらしい。
 なんか捜索されて「横須賀警察署に呼ばれた」という相談が多かったよ。
 捜索の時点で所持していなければ普通送検されないし、刑事処分にならない。
 

児童ポルノ販売、容疑者3人逮捕 1人は否認 /神奈川県
2022.05.12 朝日新聞
少年捜査課によると、3人は昨年7~9月、DVD販売サイトから購入を申し込んだ男性会社員(37)ら6人に、児童ポルノのDVD4枚などを1枚200~300円で販売した疑いがある。7年間で12万種類のDVDを販売し、約1億5千万円を売り上げたという。
 児童ポルノは2015~16年に県警が摘発したポルノ製造会社が販売していたもの。3人はどこからか入手し、大阪市西成区のマンションで複製を繰り返したという。昨年春、県警に情報提供があり、同10月に家宅捜索をして5万枚のDVDを押収。県警は購入者からも事情を聴いている。

児童ポルノを所持した疑い 男2人書類送検 /神奈川県
2022.06.03 朝日新聞
 小中学生の少女のわいせつな動画を所持したとして、県警は2日、横浜市磯子区の会社員(45)と東京都葛飾区の会社員(54)の男2人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(所持)容疑で書類送検し、発表した。2人は容疑を認めているという。
 県警は大阪の児童ポルノ販売業者を同法違反(提供)容疑で摘発。捜査の過程で購入者約200人の住所と名前が書かれたリストを押収。今後、所持容疑で順次調べるという。
 少年捜査課によると、2人の送検容疑は昨年8月と11月、それぞれの自宅で、9~10歳児の小学生が極小の水着をつけてブリッジをしたり、12歳の中学1年生が両足を開脚したりするDVDを1枚ずつ所持したというもの。ネットで申し込み、1枚300円で購入。郵送で受けとったという。(土居恭子、村上潤治)

児童ポルノ所持、16人を書類送検 容疑、全員が認める 横須賀署 /神奈川県
2023.03.10 朝日新聞
 児童ポルノ動画を所持したとして横須賀署は9日までに栃木県の地方公務員(27)ら16人の男を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(自己性的目的所持)容疑で書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。製造業者は度々摘発されるが違法販売は後を絶たず、県警は全国の購入者を立件することで児童ポルノ愛好家らに警鐘を鳴らした形だ。
 書類送検されたのは秋田、埼玉、福岡など10都府県の27~60歳の会社員ら。2015~16年製造の極端に小さな布を着けた少女の映像を昨年9~12月に所持した疑いがある。全員容疑を認めているという。
 DVDは「着エロ」と呼ばれるセミヌードで、内容を知らされず出演させられた少女もいた。県警は大阪市で21年に複製・販売した男3人を昨年、同法違反(提供)容疑などで逮捕し、購入者を特定した。

単純所持罪容疑で捜索差押を受けて、単純所持罪+準強制わいせつ罪・準強制性交で起訴された事例

単純所持罪容疑で捜索差押を受けて、単純所持罪+準強制わいせつ罪・準強制性交で起訴された事例
というより、R2.9ころのわいせつ事件が疑われたので、r4.6.1に単純所持罪容疑で捜索したんだろうなあ。画像がないと立証難しい。

準強制わいせつ、準強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
津地方裁判所
令和4年12月15日刑事部判決
       理   由
【罪となるべき事実】
 被告人は、
第1 障害者福祉施設に勤務していたものであるが、同施設の利用者であるA及びB(各氏名は別紙記載のとおり。以下同じ。)が知的障害のため心神喪失の状態であることに乗じて
1 Aにわいせつな行為をしようと考え、令和2年9月10日頃、京都府内又はその周辺において、A(当時29歳)に対し、その下半身の着衣を脱がせた上、Aの陰部を手で触るなどし、もってAの心神喪失状態に乗じて、わいせつな行為をし
2 Bと口腔性交をしようと考え、別表記載のとおり、同年9月19日頃から令和3年6月5日頃までの間、5回にわたり、同府内のグループホーム(名称及び場所は別紙記載のとおり。以下同じ。)ほか2か所において、B(当時17歳ないし18歳)に自己の陰茎を口淫させ、もってBの心神喪失状態に乗じて口腔性交をし
第2 自己の性的好奇心を満たす目的で、令和4年6月1日、京都府京田辺市α××番地の×被告人方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台及びハードディスク2台を所持した。
【法令の適用】
罰条
判示第1の1の行為 刑法178条1項、176条前段
判示第1の2の別表1ないし5の各行為
いずれも刑法178条2項、177条前段
判示第2の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段、2条3項3号
刑種の選択 判示第2の罪につき、懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第1の2の準強制性交等罪の刑(判示第1の2の別表記載の各犯行に犯情の軽重の差は認められないので特定しない)に法定の加重)
未決勾留日数算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない)
 なお、弁護人は、準強制わいせつ及び準強制性交等の各犯行について、被告人に自首が成立すると主張している。
 しかしながら、被告人の取調べを担当した捜査官は、「児童ポルノ所持の嫌疑で被告人方の捜索差押えを行った際、被告人の携帯電話機から女性の裸の写真を発見し、被告人に確認したところ、被告人はその女性はAであると述べた。任意同行の上、児童ポルノ所持の嫌疑で取調べ中、別の捜査官が同携帯電話機に口腔性交の画像等があることを発見したため、被告人に確認したところ、被告人は、Bに口腔性交をさせたことは認めたが、Bの同意があると思っていたと弁解した。Bに対する準強制性交等の嫌疑で被告人を逮捕した後、携帯電話機のデータからAに対する判示第1の1のわいせつ行為の画像を発見し、被告人に確認したところ、被告人は覚えていないなどと述べた。」旨証言しているところ、同証言内容は、本件発覚の経緯として自然で、その内容に不合理な点は見当たらないし、被告人の捜査段階における供述経過とも整合しており、十分信用することができる。 
 他方、被告人は、警察署に任意同行された後、児童ポルノ所持の嫌疑で取調べを受けている途中で、Aの裸の画像を撮ったり、Bに口腔性交させてそれを撮影したりしたことを警察官に申告したなどと供述している。しかし、被告人の供述する申告経緯はいささか唐突の感を免れない上、逮捕当初、Bに対する準強制性交等の罪責を否認する趣旨の供述をしていたこと(乙16)も踏まえると、Bに対する口腔性交を自ら申告したという被告人供述は信用できない。
 そして、信用できる上記捜査官供述によれば、上記いずれの犯行についても、捜査機関に発覚する前に犯罪事実を自ら申告したとは認められず、弁護人の上記主張は採用できない。
【量刑の理由】
 本件は、障害者福祉施設に勤務していた被告人が、同施設の女性利用者2名に対し、同利用者らが知的障害のため心神喪失状態であることに乗じて、利用者1名に対しては合計5回にわたり口腔性交をし、もう1名の利用者に対しては、わいせつな行為をしたという準強制性交等及び準強制わいせつと、児童ポルノ所持からなる事案である。
令和4年12月15日
津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 畑山靖 裁判官 大嶋真理子 裁判官 中野彩華

「女子中学生の裸をSNSのビデオ通話機能を使ってタブレットに表示し、ひそかに保存する行為」をひそかに製造罪で罰金(鳥取簡裁r5.3.2)にしたような報道

「女子中学生の裸をSNSのビデオ通話機能を使ってタブレットに表示し、ひそかに保存する行為」をひそかに製造罪で罰金(鳥取簡裁r5.3.2)にしたような報道
 
 逮捕罪名はひそかに製造罪でしたが、姿態をとらせて製造罪しか成立しません。
 

https://www3.nhk.or.jp/lnews/tottori/20230302/4040014445.html
この教諭はおととし11月と12月、ビデオ通話を使って連絡を取った女子中学生に服を脱がせ、その様子を撮影し、画像や動画を保存したとして、児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されました。
この教諭は2日、鳥取区検察庁から児童ポルノ禁止法違反の罪で略式起訴され、鳥取簡易裁判所から罰金50万円の略式命令を受けました。

小学校教諭を児童ポルノ製造疑いで再逮捕、容疑否認 /鳥取県
2022.12.09 朝日新聞
 署によると、容疑者は昨年11月14日、18歳未満と知りながら、女子中学生の裸をSNSのビデオ通話機能を使ってタブレットに表示し、ひそかに保存するなどした疑いがある。中学生とは面識があったという。
・・・・
小学教諭を再逮捕 児童ポルノ製造容疑=鳥取
2022.12.08  読売新聞
 琴浦大山署は7日、容疑者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで再逮捕した。
 発表では、容疑者は昨年11月、SNSのビデオ通話機能を利用して、女子中学生に裸体を露出した姿にさせ、ひそかにタブレット端末の画像データを保存し、同年12月にもSNSを通じて同じ女子中学生に裸体を露出した姿にさせ、ひそかに画面を携帯電話で動画撮影した疑い。
・・・・
小学校の教諭 鑑定留置終了 わいせつ疑いなど=鳥取
2023.02.25  読売新聞
地検は24日、女子中学生の体を触るわいせつな行為をしたなどとして、強制わいせつ容疑と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で送検された容疑者の鑑定留置が同日終了したと明らかにした。
鑑定結果を踏まえ、勾留期限の3月2日までに刑事処分を判断する。

被告人が児童に性器接触等して姿態を取らせて撮影した行為を、ひそかに製造罪とした事例(奈良地裁R4.10.20)

被告人が児童に性器接触等して姿態を取らせて撮影した行為を、ひそかに製造罪とした事例(奈良地裁R4.10.20)
 確定したのを確認しています。
 犯人が姿態をとらせた場合はひそかに製造罪は適用されないという大阪高裁R5.1.24(奈良地裁r04.7.14)を前提にすると、ひそかに製造罪は全滅(法令適用の誤り+訴訟手続の法令違反)と思われます。
 大阪高裁R5の控訴趣意書はr4.10.1に提出されていて、それがこの問題を公式に指摘した最初の書面になります。奈良の検察官は訴因変更で修正する機会がありました。

阪高裁r05.1.24
同法7条5項の規定する児童ポルノのひそかに製造行為とは、隠しカメラの設置など描写の対象となる児童に知られることがないような態様による盗撮の手段で児童ポルノを製造する行為を指すと解されるが、同項が「前2項に規定するもののほか」と規定していることや同条項の改正経緯に照らせば、児童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても、行為者が姿態をとらせた場合には、姿態をとらせ製造罪(同条4項)が成立し、ひそかに製造罪(同条5項)は適用されないと解される。

判例番号】 L07751098
       準強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 奈良地方裁判所判決/令和4年(わ)第9号、令和4年(わ)第42号、令和4年(わ)第95号、令和4年(わ)第134号、令和4年(わ)第166号
【判決日付】 令和4年10月20日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 被告人を懲役2年8月に処する。
 未決勾留日数中190日をその刑に算入する。

       理   由

 【罪となるべき事実】
 被告人は、
第1 A(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月6日、奈良市(住所省略)被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第2 B(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月12日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第3 C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年3月31日、前記被告人方において、ひそかに、同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を、被告人がスマートフォンで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録・保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第4 D(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和2年8月18日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第5 E(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年4月4日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第6 F(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年4月29日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第7 G(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年7月29日、前記被告人方において、ひそかに、スマートフォンを用いて同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を動画として撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録して保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第8 H(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年11月14日、前記被告人方において、ひそかに、同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を、被告人がスマートフォンで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録・保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
第9 スイミングスクールの元教え子であるI(当時17歳)に対し、アロママッサージを装ってわいせつな行為をしようと考え、令和3年12月29日午後2時3分頃から同日午後3時38分頃までの間、前記被告人方において、前記Iがアロママッサージを受けるものと誤信して抗拒不能にあるのに乗じ、パンツの上からその陰茎を触るなどした上、さらに、被告人からわいせつな行為をされたことに気付き困惑、狼狽等により引き続き抗拒不能に陥っていた前記Iに対し、パンツをずらして露出させた同人の陰茎を手指で触るなどし、もってわいせつな行為をした
第10 前記I(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、令和3年12月29日、前記被告人方において、ひそかに、同児童の陰部等を露出した姿態及び被告人が同児童の陰部を直接手で触る姿態を、被告人がスマートフォンで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、その動画データをパーソナルコンピュータに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスクに記録・保存し、もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した
ものである。
 【量刑の理由】
(求刑 懲役4年)
  令和4年10月20日
    奈良地方裁判所刑事部
           裁判官  石川理紗

追記 2023/03/02
 刑事確定訴訟記録法で閲覧して法令適用を確認しました。
 7条2項を挙げないと、法定刑が決まりません。

(証拠の標目)
 省略
(法令の適用)
罰条
 判示第1ないし第4、第6ないし第8、第10の行為、いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項2号、3号 (※7条2項が欠けている)
判示第5の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2条3項3号(※7条2項が欠けている)
刑種の選択
 判示第1ないし第8、第10の行為、いずれも懲役刑
併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、10条(最も重い判示第9の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項但し書き

性犯罪・福祉犯罪について一部執行猶予とした事例

 常習事案で見かけるようになりました。
量刑理由は

なお、本件事案の性質、被告人の同種事案の犯罪性向、被告人の現時点での更正意欲に関する言動などに照らすと、施設内処遇の終了後、社会内においても相当程度の期間公的な機関の指導監督の下で生活することが再犯防止に資するものと考えられ、被告人に対しては、施設内処遇に引き続き社会内処遇を行うことが必要かつ相当であると認められるから、保護観察に付した上で刑の一部の執行を猶予することが相当であると判断した

になりますので、これにみあう情状立証が必要になります。


裁判所 審級 支部 判決日 罪名
静岡 地裁 沼津 H28.10.19 強制わいせつ罪
神戸 地裁 H29.11.2 児童淫行罪・児童ポルノ製造罪
福岡 地裁 H29.11.24 児童ポルノ・公然わいせつ
名古屋 地裁 H30.5.29 強制わいせつ罪
宇都宮 地裁 H30.6.27 迷惑条例違反・児童ポルノ
名古屋 地裁 H30.12.25 準強制わいせつ罪・窃視罪
仙台 地裁 古川 H31.3.20 青少年条例違反・児童ポルノ製造
静岡 地裁 沼津 H31.4.16 強制わいせつ罪・児童ポルノ製造罪・窃盗罪
前橋 地裁 高崎 R1.5.29 強制わいせつ罪・器物損壊
福島 地裁 R1.8.15 強制わいせつ罪
山形 地裁 R1.10.21 準強制わいせつ罪・窃視罪
東京 地裁 R2.7.13 強制わいせつ罪
福岡 地裁 小倉 R2.8.27 児童買春罪・児童ポルノ製造罪
東京 地裁 R2.11.30 準強制わいせつ罪・窃視罪
静岡 地裁 浜松 R2.12.17 強制わいせつ罪
東京 地裁 R3.3.11 強制わいせつ罪

1/2のわいせつ目的誘拐で1/24に逮捕して、1/上旬の青少年条例違反(淫行・わいせつ)+児童ポルノ製造で2/13に再逮捕した事例(静岡県警)

1/2のわいせつ目的誘拐で1/24に逮捕して、1/上旬の青少年条例違反(淫行・わいせつ)+児童ポルノ製造で2/13に再逮捕した事例(静岡県警)
 わいせつ目的誘拐の「わいせつ」というのは、青少年淫行罪・わいせつ罪だと思われますが、

  わいせつ誘拐と青少年条例違反は牽連犯
  わいせつ誘拐と製造罪は牽連犯
  青少年条例違反と製造罪は観念的競合
という裁判例があるから、科刑上一罪の再逮捕になりますね。




https://news.yahoo.co.jp/articles/d253bd845bc4958dc2c948ffb3ecefc5fd27c991
SNSで知り合った女子中学生を静岡県から愛媛県まで連れ去ったか わいせつ目的誘拐の疑いで25歳男を逮捕 静岡県
1/25(水) 10:32配信
静岡朝日テレビ
 静岡県東部地区に住む女子中学生を、わいせつ目的で愛媛県内まで誘拐したとして、25歳の男が逮捕されました。
 わいせつ目的誘拐の疑いで逮捕された愛媛県八幡浜市の25歳の会社員の男は1月2日から3日にかけて、静岡県東部地区に住む女子中学生をわいせつ目的で誘拐し、愛媛県内まで車で連れ去った疑いが持たれています。
 2日、女子中学生の家族から「子どもが帰ってこない」と警察に相談があり、事件が発覚しました。その後、女子中学生は警察に保護されました。
 警察によりますと、2人はSNSで知り合い、会うのはこの日が初めてだったということです。
 警察は、男の認否を明らかにせず、動機などを調べています。

わいせつ目的で女子中学生を誘拐したとして逮捕した愛媛県の男・みだらな行為をしたうえスマホで撮影したとして再逮捕 静岡・富士警察署
https://news.yahoo.co.jp/articles/359829e34835d9e6f95aa1fefc73ce6db3a19c37

静岡県東部地区に住む女子中学生をわいせつ目的で誘拐したとして逮捕された愛媛県の25歳の男が、みだらな行為をしたなどとして再逮捕されました。

 静岡県青少年環境整備条例違反と児童ポルノ禁止法違反の疑いで再逮捕されたのは、愛媛県八幡浜市の会社員の男(25)です。

 男は1月上旬、静岡市内で県東部の女子中学生に対し18歳未満と知りながらみだらな行為をしたうえ、スマートフォンで撮影した疑いが持たれています。

 警察によりますと1月2日、女子中学生の家族から「子どもが帰って来ない」と警察に相談があり、事件が発覚。

 男は女子中学生をわいせつ目的で誘拐し、愛媛県まで車で連れ去ったとして逮捕されていました。

 警察は男が容疑を認めているかどうか明らかにしていませんが、2人はSNSで知り合ったということで、警察が詳しい経緯を調べています。

弟による実姉に対する強制わいせつ(那覇地裁R04.10.14)

量刑としては普通。

那覇地方裁判所令和04年10月14日
検察官 和田采女
主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予し、被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。

罪となるべき事実の要旨
  起訴状に記載された公訴事実と同一であるから、これを引用する。
適用した罰条
  刑法176条前段、25条1項、25条の2第1項前段、刑事訴訟法181条1項ただし書
量刑の理由
  被告人は、実家の風呂場で、帰省中の実妹の抵抗を排してその陰部を触ったものであり、性的自由の侵害の程度が大きい。しかも、被告人が認めるところを前提にしても、本件は一回きりの過ちとは到底いえず、実妹に対する根深い性的関心が顕れた事案といわざるを得ない。被告人は、以上のような犯情に見合った処罰を免れない。
  その上で、その他の情状について検討すると、被告人は公訴事実を認めて同人なりに反省の弁を述べており、母も助力を誓約している。また、犯罪歴も見当たらない。これらの事情を考慮して、刑の執行を猶予する。なお、対人関係に安定性を欠き、性犯罪被害者の心情理解が不十分である被告人については、性犯罪防止プログラムを含む専門家指導が必要かつ相当と考えられるため、猶予の期間中、被告人を保護観察に付する。
(求刑 懲役1月6月)
刑事第1部
 (裁判官 小野裕信)
令和4年検第11133号
  起訴状
  令和4年8月15日
 那覇地方裁判所 殿
  那覇地方検察庁
  検察官検事 和田采女
 下記被告事件につき公訴を提起する。
   記
 本籍 ●●●
 住居 ●●●
 職業 会社員
  勾留中求令状 ●●●
  平成5年(以下略)生
  公訴事実
 被告人は、実妹である●●●に強いてわいせつな行為をしようと考え、令和4年7月25日午前8時3分頃、●●●被告人方風呂場において、同女(当時22歳)に対し、その両腕を両手でつかんで揉み合いの末転倒させる暴行を加えた上、左手で同女の陰部を直接触り、もって強いてわいせつな行為をしたものである。
  罪名及び罰条
  強制わいせつ 刑法第176条前段

女性に痴漢行為を行う内容の動画の拡散は、リベンジポルノ公表罪にあたる恐れがある。

 着衣の上からでも、性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう)を触ると、2号リベンジポルノになるので、公表罪になる恐れがあります。
 俗に「リベンジポルノ罪」と言われますが、リベンジ性は要件になっていないので、盗撮画像の公表にも適用されており、注意が必要です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ce3f0df2c618e0413b9f84cb083e0eac817c8114
中には「痴漢動画を公開することは被害女性のセカンドレイプにあたるのでは」との懸念もあるが、そういった可能性はあるのだろうか。

「被害者が痴漢に遭ったことを知られたくない場合、公開の仕方によっては精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求される可能性はあります。被害者の顔にモザイクをかけるなど、個人を特定されないような配慮をした方がトラブルにはなりにくいです」

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
第二条(定義)
 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
第三条(私事性的画像記録提供等)
 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。

よくわかるリベンジポルノ防止法 立花書房
「他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」(2条1項2号)とは、どのようなものですか。刑法上の「わいせつ」とどう違うのですか。
1 「他人が人の性器等を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態」とは、
①他人が撮影対象者の性器等を触る行為、又は
②撮影対象者が他人の性器等を触る行為
に係る「人」すなわち撮影対象者の「姿態」のことをいいます。
なお、「性器等」とは、児童ポルノ禁止法と同じく、性器、肛門又は乳首のことをいいます(同法2条2項参照)。
2 ただし、2条1項2号の「人の姿態」は、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」でなければなりません。
この「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は、児童ポルノ禁止法にもみられる要件であり(同法2条3項2号)、刑法のわいせつ物頒布等の罪(刑法175条)における「わいせつ」に必ずしも該当しないものも含んでいます。
すなわち、わいせつ物頒布等の罪における「わいせつ」については、判例上「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と解されていますが、リベンジポルノ防止法では、「性欲を興奮又は刺激するもの」であることのみを要件としています。
これは、わいせつ物頒布等の罪が、国内における性的秩序・道徳・風俗という社会的法益を保護法益とするのに対し、本法は、私事性的画像記録の流通自体が、個人の性的名誉及び性的プライバシーに対する重大な侵害行為であることに着目した規制であることから、刑法の「わいせつ」概念よりも広く「性欲を興奮させ又は刺激する」との要件で足りることとしたものです。
3 「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は、具体的事案に即して一般人を基準として判断されます。したがって、上記①.②に述べた人の姿態であることが視覚により認識することができる画像のデータ等の記録であれば、性器等自体が直接撮影されていないもの、又はその部分にぼかしが施されているものでも、私事性的画像記録に当たり得ます。

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公表罪(3条1項、2項)の要件である「第三者が撮影対象者を特定することができる方法」とはどのような意味ですか。
1 公表罪は、「第三者が撮影対象者を特定することができる方法」(「第三者特定性」要件)で行われた場合にのみ成立します。本罪の保護法益である性的プライバシーは、撮影対象者や撮影者等の当事者以外の第三者に公表される場合に重大な侵害が認められる一方で、第三者がみて、誰の性的画像記録であるか分からない場合には、性的プライバシーの侵害の程度は格段に小さいと考えられるため、刑事罰の対象とはしないこととしたものです。
2 「第三者」とは、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者をいいます(2条’項)。
3 「特定することができる方法」とは、撮影対象者の容貌や身体的特徴、背景として写っている部屋の状況など、公表された画像自体から撮影対象者を特定することができる場合のほか、画像公表の際に撮影対象者を特定する文言を添える方法も含まれます。
4 この第三者特定性の要件は、広く一般人にとって、撮影対象者が誰か特定可能であることを要求する趣旨ではなく、一定の範囲の第三者、例えば撮影対象者の配偶者・家族、友人など撮影対象者に近い者だけが撮影対象者を特定することができる場合も含まれます。身近な人に対する関係でも個人の性的プライバシーは保護されなければならないからです(ただし、犯罪成立のためには、別に「公表」その他の要件を満たす必要があります。)。

犯人が姿態をとらせた場合はひそかに製造罪は適用されないという大阪高裁R5.1.24を前提にすると、罪名を誤っていると思われる事例(東京地裁R4.8.30等)

https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2023/01/28/224155
 たくさんあって、東京高裁も間違っていると思われます。

 東京地裁R4.8.30の「ひそかに」とされているのは、被告人が児童に姿態を取らせているのが、公訴事実上明らかなので、ひそかに製造罪ではない。

D1-Law
東京地方裁判所
令和04年08月30日
 上記の者に対する強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ被告事件について、当裁判所は、検察官aa及び私選弁護人ab各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(本件の秘匿情報等は別紙「呼称一覧」のとおりであり、判決中の表記は別紙の呼称による。)
(罪となるべき事実)
 被告人は、

第4 Dが13歳未満の者であることを知りながら、
 7 前記1ないし6記載の日時場所において、Dに対し、被告人がDの陰茎を手で触るなどの姿態及び被告人がDの陰茎を口腔内に入れるなどの姿態をとらせ、これをデジタル機器で動画撮影した動画データ4点並びにひそかに被告人がDの陰茎を手で触るなどの姿態及び被告人がDの陰茎を口腔内に入れるなどの姿態を動画撮影した動画データ6点を、平成30年12月17日午後5時35分頃から同日午後5時37分頃までの間、東京都(以下略)ae201号室当時の被告人方において、パーソナルコンピューターに接続された外付けハードディスク(令和4年東地領第108号符号1)に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、又は他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第11
 2 前記1記載の日時場所において、Kに対し、ひそかに被告人がKの陰茎を手で触るなどの姿態をデジタル機器で動画撮影し、その頃から同年8月24日午後11時18分頃までの間に、山梨県内、東京都内又はその周辺において、その動画データ2点を同デジタル機器に装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る児童ポルノを製造し、
第15
 3 同年10月23日午後6時46分頃、前記O方において、同人(当時9歳)に対し、ひそかに同人が全裸で四つん這いになり、陰茎が露出した姿態をデジタル機器で動画撮影し、その頃から同月24日午前2時28分頃までの間に、東京都内又はその周辺において、その動画データ1点を同デジタル機器に装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る児童ポルノを製造し、
第16 Pが13歳未満の者であることを知りながら、
 3 前記1及び2記載の日時場所において、Pに対し、被告人がPの陰茎を手で弄ぶなどの姿態をとらせ、これを前記スマートフォンで動画撮影した動画データ1点及びひそかに被告人がPの陰茎を口腔内に入れるなどの姿態を同スマートフォンで動画撮影した動画データ4点を、同月22日午後1時6分頃までの間に、東京都内又はその周辺において、同スマートフォンに装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、又は他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
 4 同年11月7日午後10時25分頃から同日午後10時40分頃までの間、前記P方において、同人(当時6歳)に対し、その陰茎を被告人の口腔内に入れるなどし、ひそかにPの陰茎を露出させる姿態、被告人がPの陰茎を手で弄ぶなどの姿態及び被告人がPの陰茎を口腔内に入れるなどの姿態を前記スマートフォンで動画撮影し、その動画データ5点を同スマートフォンに装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって13歳未満の者に対し、口腔性交をするとともに、児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの、又は衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第17
 2 前記1記載の日時場所において、Qに対し、ひそかに被告人がQの陰茎を口腔内に入れるなどの姿態をデジタル機器で動画撮影し、その頃から同年11月16日午前0時2分頃までの間に、東京都内又はその周辺において、その動画データ1点を同デジタル機器に装着された前記マイクロSDカードに記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る児童ポルノを製造し、
刑事第1部
 (裁判長裁判官 古玉正紀 裁判官 水越壮夫 裁判官 竹内瑞希


 他に判例DBに収録されているものは東京地裁R2.3.2の判示第2
>>
東京地裁R2.3.2
第2(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 前記第1の1及び2の日時場所において,2回にわたり,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し,撮影した動画データを自己が使用するパーソナルコンピュータに接続したUSBメモリ1個(令和元年東地領第4006号符号1)に記録して編集した上で保存し,もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより児童ポルノを製造し,