児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

監護者わいせつ罪で一審で実刑判決となったが、高額の慰謝料等を行い、控訴審で執行猶予となった事例(東京高裁R3.3.12)を下敷きにして、同様の情状弁護をしたら、実刑判決が破棄されて、執行猶予になった。(大阪高裁)

 監護者わいせつ罪は福祉犯罪的要素があって、量刑理由で悪影響懸念とか言われることもありますが、基本は性的自由なので、金銭賠償すると、減軽されます。
 こういう裁判例を紹介しておけば良いだろう。
 監護者わいせつ罪で一審で実刑判決となったが、高額の慰謝料等を行い、控訴審で執行猶予となった事例がある。
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横浜地裁 支部R2*1(懲役1年6月実刑
東京高裁R3.3.12 *2(原判決破棄 懲役1年6月執行猶予4年)
量刑不当の控訴理由について
当審における事実取調の結果によれば、被告人は、原判決後に、本件犯行の被害に関して1000万円の慰謝料を支払うことで、被害者と示談して、それとは別に母親との離婚や被害者との離縁に伴い、被害者に慰謝料1000万円 財産分与として914万円を支払う協議を成立させて、これらの金銭を現実に支払った。原判決後 精神科治療に実際に取り組んでおり、反省を深めつつある
これらの事情を併せて考えると、現時点においては被告人を実刑に処した原判決の量刑は重きに失するにいたり、執行猶予を付すのが相当となった

性犯罪民事 強制わいせつ罪(176条後段)3回で330万円認容(立川支部r04.10.19)

性犯罪民事 強制わいせつ罪(176条後段)3回で330万円認容(立川支部r04.10.19)
 報道された事案の判決を貰ってきました。

https://digital.asahi.com/articles/ASQBM5WN0QBMUTIL01N.html
東京都稲城市立小学校の3年生だった時に担任教諭からわいせつな行為をされ、精神的な苦痛を受けたとして、児童と両親が同市に550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、東京地裁立川支部であった。西森政一裁判長はわいせつ行為を認定し、市に330万円の支払いを命じた。
 判決によると、担任の男性教諭は2018~19年、休み時間や放課後に教室で3回にわたり、児童の下着の中に手を入れるなどして下半身を触った。児童は19年にPTSD心的外傷後ストレス障害)と診断された。

立川支部r04.10.19
主文
1被告は、原告に対し、330万円及びこれに対する平成31年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その2を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
第2事案の概要等
1 事案の概要
本件は、被告が設置する小学校(以下「本件小学校」という。)に在籍していた原告が、本件小学校に教諭として勤務していた補助参加人から平成30年9月頃、平成31年1月中旬頃及び同月22日の3回にわたってわいせつ行為を受けて心的外傷後ストレス障害となるなど精神的損害を被った旨を主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金550万円及びこれに対する不法行為の日(3回目のわいせつ行為が行われた日)である平成31年1月22頂から支払済みまで民法所定の年5分(平成29年法律第44号による改正前の民法404条所定の利率。以下同じ。)の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

児童を脅迫するなどして裸画像を撮影・送信等させた場合の、強制わいせつ罪とされた範囲と、児童ポルノ製造罪との罪数処理

 大法廷h29.11.29以降は、わいせつの認定は

  ①性的意味合い

  ②性的意味合いの強度

  ③社会通念
で判断されるので、
①②の認定に、裸体画像が犯人に届いていること(送信させ)を求める傾向があります。
 しかし、東京高裁があるので強制わいせつ罪となるのは、「撮影させ」まで。
 児童ポルノ製造がある場合には、そっちで「送信させ」「受信し」を認定して、観念的競合にしておけばごまかせると考えられているようです。

 罪数処理は、併合罪が圧倒的ですが、高裁レベルでは観念的競合に戻ってきてるようです。


            児童ポルノ製造を伴う場合の罪数処理
  東京 地裁   H18.3.24 撮影送信させ受信して 観念的競合
  大分 地裁   H23.5.11 撮影送信させ 併合罪
  東京 地裁   H27.12.15 撮影送信させ 併合罪
  高松 地裁   H28.6.2 撮影送信させ 併合罪
  横浜 地裁   H28.11.10 撮影送信させ  
  松山 地裁 西条 H29.1.16 撮影送信させ  
  高松 地裁 丸亀 H29.5.2 撮影させ  
             
判例DB 岡山 地裁   H29.7.25 撮影送信させ 併合罪
  札幌 地裁   H29.8.15 撮影させ 併合罪
  札幌 地裁   H30.3.8 撮影させ 併合罪
  東京 地裁   H31.1.31 撮影させ 併合罪
判例DB 長崎 地裁   R1.9.17 生中継で送信させ  
  高松 地裁 丸亀 R2.9.18 撮影させ 併合罪
  熊本 地裁   R3.1.13 撮影させ 併合罪
  京都 地裁   R3.1.21 撮影させ 観念的競合
  京都 地裁   R3.1.21 撮影させ 併合罪
  京都 地裁   R3.2.3 撮影させ 併合罪
判決速報 大阪 高裁   R3.7.14 撮影させ 観念的競合
  京都 地裁   R3.7.28 撮影させ 併合罪
  大阪 高裁   R4.1.20 撮影させ 観念的競合
  東京 地裁   R4.3.10 撮影させ 併合罪
  札幌 地裁   R4.9.14 撮影させ 観念的競合
             

 

長崎地方裁判所
平成30年(わ)第248号/平成31年(わ)第12号
令和01年09月17日
理由
以下、匿名表記した被害者氏名は別紙のとおりである。
(犯罪事実)
第1 被告人は、A(当時16歳)から入手した同人の画像データ等を利用して強いてわいせつな行為をしようと考え、平成30年10月26日午後10時6分頃から同月27日午前2時21分頃までの間に、D市内又はその周辺において、自己の携帯電話機及びタブレットから、同人が使用する携帯電話機に、アプリケーションソフト「E」の通話機能及びビデオ通話機能を利用して通信し、D市内にいた同人に対し、「写真を援助交際サイトに載せる。」「学校や家の近くに何人かの人が来る。」「連れていかれたことがある。」などと脅迫し、もしこの要求に応じなければAの自由や名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨畏怖させ、その反抗を著しく困難にし、ビデオ通話機能を通じて、同人に胸や陰部を露出した姿態及び陰部を指で触るなどした姿態をとるよう指示し、同人にそれをさせた上、その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。
第2 被告人は、平成30年12月2日、D市(以下略)「ホテルF」(省略)号室において、C(当時15歳)が18歳に満たない少年であることを知りながら、もっぱら自己の性的欲望を満足させる目的で同人と性交し、もって少年に対し、みだらな性行為をした。
(証拠の標目)(各証拠書類等に付記した番号は、検察官請求の証拠番号である。)
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は、被告人が、Aに写真を援助交際サイトに載せる旨などを言った事実はあるが、Bの代わりに交渉役として登場したAにBに対する怒りをぶつけたに過ぎず、Aにわいせつ行為をする目的で発したものではない旨主張し、被告人も、「最初は怒りに任せていろいろ言っていたと思うが、その後はAと仲良くなれたという感じだった。」などと弁護人の主張に沿う供述をしているが、裁判所は前記のとおりに認定をしたので、補足して説明をする。
2 Aの公判供述について
 (1) Aは、概ね以下のとおりに述べている。
  「被告人と電話で話を始めた時、被告人は怒っているように見えて、『Bの写真を援助交際サイトに載せる。』『援助交際サイトに載せると、何人かの人が来て、連れていかれたこともある。』という話をした。その後、落ち着いて雑談をするようになったが、被告人が怖かった。被告人から自分の写真を送るよう言われたので、3枚送った。自分の写真を送った直後に、被告人からそれを援助交際サイトに載せる旨言われたことはない。」
  「被告人との電話を早く切りたかったので終わらせようとしたが、被告人から『終わらせたら載せる。』と言われた。被告人からビデオ通話に応じるように言われ、応じないと『じゃ、切るね。』と言われた。被告人から胸を見せるよう言われたときは断っていたが、『もう切るから。』と言われたので見せた。陰部を見せた際に言われた言葉は覚えていないが拒否した覚えはある。勝手に通話を終了すると、写真を拡散されると思っていた。」
 (2) Aの公判供述の信用性について
  Aの公判供述は、その内容に覚えていない部分が多いなどあいまいな部分があることは否定できないものの、Aが虚偽の供述をしていることを窺わせるような不自然、不合理な点はない。供述内容があいまいな点については、Aの証人尋問が実施されたのは既に本件から9か月近く経過した時点であったことを考えると、時間の経過による記憶の劣化があったとしても何ら不自然ではないから、そのことが直ちにその供述内容の信用性に影響を及ぼすようなものではない。また、被告人がAが自己の要求に応じないと、連絡を絶つ旨をAに申し向けてAを困惑させ、自己の要求に従わせるという手法は、本件以後にEアプリで被告人がAに対し会うことを求める際の手口と全く同じであり、前記の供述内容は、本件より後のAと被告人のEアプリを通じた会話内容に非常に整合している。
  次に、前記のとおり時間の経過によりAの記憶が劣化していることは否めないことから、Aの記憶が変容し事実と異なる供述をしている可能性について検討すると、本件の出来事は日常的な出来事ではなく、当時16歳のAにとって非常に衝撃的な出来事であったと考えられるから、前記公判供述のような出来事がなかったにもかかわらずあるものと記憶が変容するということはおよそ考え難いし、他の事実と混同するようなこともない。前記のとおりの客観的事実関係との整合性も考え合わせると、Aの供述内容にはあいまいな部分こそあるものの、その述べている限りの内容については記憶違いにより事実と異なる供述をしている可能性はないといえる。
 (3) 弁護人の主張について
  弁護人は、〈1〉Aは、被告人が写真を援助交際サイトに載せると言っているのを直接聞いておらず、Bから聞いたに過ぎないということを前提として、Aの供述は、Bから聞いた印象だけで被告人から脅されたと言っているに過ぎない旨、〈2〉Aは、被告人に顔写真を送った理由について「怖かった。」と述べているが、被告人のBに対する怒りがおさまった後、雑談をしている際に写真を送付しているのであるから「怖かった。」というのは信用性に乏しい旨主張している。しかし、〈1〉の点については、Aは「ビデオ通話をする前に、写真を援助交際サイトに載せる旨言われた。」旨明確に答える(A証人尋問調書203項)など、被告人がAに対し写真を援助交際サイトに載せる旨を言ったことを明言しているのであるから、弁護人の主張はその前提を欠くものである。また、〈2〉の点についても、前記(1)のとおり、Aは、被告人と電話で会話を始めた時点で、被告人がAに対し「Bの写真を援助交際サイトに載せる。」「援助交際サイトに載せると、何人かの人が来て、連れていかれたこともある。」旨述べているのであり、当時16歳で社会経験も乏しいAの立場になれば、見も知らない被告人がそのようなことを語り、自身の親友であるBが同様の事態になるかもしれないというだけで、被告人に対し恐怖を感じるのは自然なことである。被告人とAが雑談を始め、被告人の会話内容が落ち着いてきていたのだとしても、Aが被告人に対し恐怖感を持っていたというのは非常に自然であり、この点の弁護人の主張も理由がない。
3 被告人供述について
  被告人は、「Bに対しては腹を立てていたが、Aがいい子そうだったので仲良くなりたいと思い、その旨をAに言うと『いいですよ。』と言ったので、雑談を始めた。その後、会って食事をするという話になったが、会うのをやめるという話になったので、Aの胸を見せてくれるという約束でビデオ通話をするようになり、ビデオ通話の中でAの胸や陰部の画像を送信してもらった。」旨述べている。
  しかし、被告人の公判供述の内容は、明らかに被害者の供述内容に整合しないし、本件より後のAと被告人のEアプリを通じた会話内容にも整合しない。また、当初、Bに対し腹を立て、Bの代わりに話をするようになったAに対しても30分くらいその怒りを示すなどしていたのに、被告人がAに仲良くなりたいというとそれをAがいきなり受け入れるというのは、被告人とAがそれまで全く面識がなかったことを考えるとあまりに唐突過ぎ、不自然である。また、被告人が述べるところによれば、Aが被告人と会うことを渋ったために会うのをやめてビデオ通話をすることになったというのであるが、被告人と会うことを渋ったAがビデオ通話に応じるようになった合理的な説明ができていないし、被告人と会うことを渋ったというAが、特に被告人がAを脅すこともなく、Aに金銭的な対価を示したわけでもないのに、これまで全く面識もない被告人に胸を見せる前提でビデオ通話に応じるというのもおよそ信じ難い。
  以上のとおりであるから、被告人の公判供述は信用できない。
4 結論
  関係証拠により認められる事実及び信用できるAの公判供述により認定できる事実によれば、判示の事実は優に認定できる。なお、弁護人は、「写真を援助交際サイトに載せる。」などという文言を言っていたとしても、被害者に対しわいせつ行為をする目的で発せられたものではない旨主張するが、一連の経過に照らせば、「写真を援助交際サイトに載せる。」などと言って、Aの恐怖をあおる理由はAに本件のようなわいせつ画像の送信を含む何らかの自己の性欲を満たす行為を求める以外に考えられないのであり、被告人が電話でAに対して、「Bの写真を援助交際サイトに載せる。」旨述べた時点から、被告人にはそのように述べることによりAを困惑させて何らかの自己の性欲を満たす行為を求める目的があったと推認でき、この時点が実行の着手といえる。
2 証拠
(法令の適用)
 罰条
  被告人の判示第1の行為は刑法176条前段に該当する。
  被告人の判示第2の行為は長崎県少年保護育成条例22条1項1号、16条1項に該当する。
 刑種の選択
  判示第2の罪につき、所定刑中懲役刑を選択する。
 累犯加重
  前記の各前科があるので刑法56条1項、57条により判示各罪の刑につきいずれも再犯の加重をする。
 併合罪の処理
  判示各罪は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をする。
 宣告刑の決定
  以上のとおり加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6か月に処する。
 未決勾留日数の算入
  刑法21条を適用して未決勾留日数中190日をその刑に算入する。
 訴訟費用の処理
  訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
(量刑の理由)
刑事部
 (裁判官 小松本卓)

 

 

 

 

 

 

裁判年月日 平成29年 7月25日 裁判所名 岡山地裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 A関係
 1(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったA(当時11歳。以下「A」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年9月13日頃から同月21日頃までの間に,大阪市〈以下省略〉被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5)からAが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,Aが「C」を名乗る被告人を怒らせた旨及び「あなたが天誅リストに載っています。」「学校や家にあることないこと言われる。」「実際に学校にも来られる。」「その結果,学校に行けなくなる。」等のメッセージを送信し,さらに「C」を名乗り,「今頃きてなにいってんねんな」「天罰な」「後悔すればいいわ」「おまえがエッチ以外は何でもするって言ったんやろ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンに送信するよう要求し,同年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,●●●内のA方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成26年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,A方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を使用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,

 

 3(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第3)
 第1の1の犯行によりAが反抗困難な状態であることに乗じ,更にAに強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年10月4日頃から同月8日頃までの間に,被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3)からAが使用するスマートフォンに「LINE」を通じて,「C」を名乗り,「いいわけばっかりやな」「ないならもう終わりな」「でいつなん?いい加減にしろよ」等のメッセージを送信して更に脅迫した上,同月18日午後4時35分頃から同日午後5時15分頃までの間に,大阪市〈以下省略〉b駐車場に駐車中の自動車内において,Aに対し,その乳房及び陰部を舐め,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって,強いてわいせつな行為をし,
 4(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第4)
 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成26年10月18日午後4時35分頃から同日午後5時15分頃までの間に,第1の3の自動車内において,Aに,被告人の陰茎を口淫するなどの姿態をとらせ,ビデオカメラでその姿態を動画撮影した上,同月21日午前3時58分頃から同日午前4時1分頃までの間に,2回にわたり,被告人方において,その動画データ2点を同所に設置したパーソナルコンピュータ(平成29年岡地領第188号符号18)にマイクロSDカードを介して記録・蔵置し,もって,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識できる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
 5(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第5)
 第1の1,3の各犯行によりAが反抗困難な状態にあることに乗じ,更にAに強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年10月19日頃から同月31日頃までの間に,被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3)からAが使用するスマートフォンに「LINE」を通じて,「C」を名乗り,「次いつ会える?」「なるべく早くで」「先週の約束から今週になったのにそれは話しが違う」等のメッセージを送信して更に脅迫した上,同年11月2日午後0時45分頃から同日午後1時5分頃までの間に,前記b駐車場に駐車中の自動車内及び大阪市〈以下省略〉c駐車場に駐車中の自動車内において,Aに対し,その乳房を舐め,陰部を触わり,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって,強いてわいせつな行為をし,
 6(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第6)
 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成26年11月2日午後0時45分頃から同日午後1時5分頃までの間に,前記b駐車場に駐車中の自動車内及びc駐車場に駐車中の自動車内において,Aに被告人の陰茎を口淫するなどの姿態をとらせ,ビデオカメラでその姿態を動画撮影した上,同日午後4時13分頃,被告人方において,その動画データ1点を同所に設置したパーソナルコンピュータ(平成29年岡地領第188号符号18)にマイクロSDカードを介して記録・蔵置し,もって,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識できる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第2 D関係
 1(平成28年11月2日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったD(当時●●●歳ないし●●●歳。以下「D」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年11月17日頃から同月19日頃までの間,被告人方において,Dに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,10)からDが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「C」を名乗る第三者を装い,「E」を名乗る被告人がDの個人情報をインターネット上で漏洩させている旨及び「情報収集したら2ちゃんでスレッド立てられて,知らない人から何人も写メ撮られてたりして」「●●●の行動24時間2ちゃんで晒されることになると思う」等のメッセージを送信し,さらに,「E」を名乗り,「何いまごろきてんねん」「しね」「なら俺が言う写メ撮るか?」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンでその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,同月18日頃から同年12月11日頃までの間に,57回にわたり,●●●内のD方において,Dに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Dが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表2記載のとおり,57回にわたり,その画像データ合計55点及び動画データ合計2点をDが使用するスマートフォン端末から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年11月2日付け追起訴状記載の公訴事実第2)
 Dが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成26年11月18日頃から同年12月11日頃までの間に,57回にわたり,D方において,Dに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Dが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表2記載のとおり,57回にわたり,その画像データ合計55点及び動画データ合計2点をDが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,同年11月19日頃から同年12月15日頃までの間に,被告人方において,同画像データ合計55点及び動画データ合計2点を被告人が使用するスマートフォンで受信した上,さらに被告人が使用するパーソナルコンピュータから「LINE」に接続して同画像データ及び動画データをダウンロードしてそのパーソナルコンピュータ(平成29年岡地領第188号符号18)に記録・蔵置し,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第3 F関係
 1(平成29年2月1日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったF(当時●●●歳。以下「F」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年2月19日頃から同月28日頃までの間に,被告人方において,Fに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5,11,12)からFが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「G」等を名乗る第三者を装い,Fが「C」を名乗る被告人を怒らせた旨及び「あなたの個人情報が天誅リストに載っている。」「許してもらわなければ24時間監視されて,あなたの写真が2ちゃんねるに載せられる。」「学校にばれて退学になったり,家に住めなくなる。」「何があっても21時までに許してもらわないと一生後悔します。」等のメッセージを送信し,さらに,「C」を名乗り,「今頃なんやねん」「とりあえず顔出して胸出して撮って」「もうお前終わりだな」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンでその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,同月20日頃から同月28日頃までの間に,17回にわたり,●●●内のF方において,Fに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Fが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表3記載のとおり,6回にわたり,その画像データ合計17点をFが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成29年2月1日付け追起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Fが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成27年2月20日頃から同月28日頃までの間に,17回にわたり,F方において,Fに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Fが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表3記載のとおり,6回にわたり,その画像データ合計17点をFが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第4 H関係
 1(平成28年12月8日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったH(当時●●●歳。以下「H」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年6月29日,被告人方において,Hに対し,被告人が使用するスマートフォンからHが使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号10)にアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「I」を名乗る第三者を装い,Hが「E」を名乗る被告人を怒らせた旨及び「天誅リストに載っています。」「Eって人は2ちゃんねるとかニコ生であなたの情報収集します。」「必死に謝れば許して頂けると思います。」「でないと、あなたの嫌がらせイベントが始まります。」「私なんか、家とか学校にイタズラされて,万引きしてるとか、援助交際してるとか何十人も言われて,停学になりました。」等のメッセージを送信し,さらに,「E」を名乗り,「いまさらなんやねん」「小学生ちゃうねんからごめんなさいでゆるすわけないやろ」「なら顔出して胸だして写メとって」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンでその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,4回にわたり,●●●内のH方において,Hに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Hが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,同日午後11時56分頃,その画像データ合計4点をHが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年12月8日付け追起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Hが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成27年6月29日,4回にわたり,H方において,Hに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Hが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,同日午後11時56分頃,その画像データ合計4点をHが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第5 J関係
 1(平成28年10月17日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったJ(当時●●●歳。以下「J」という)が13歳未満であることを知りながら,Jに強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年9月6日,被告人方において,Jに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5,10)からLが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,「C」及び「E」を名乗る被告人がJの個人情報をインターネット上で漏洩させている旨及び「このままだと学校や家とかに知らない人が大勢あなたの写メ撮って,スレッドにあなたの行動24時間写メ付きで書き込んでストーカーのイベントするからね」等のメッセージを送信し,さらに,「E」を名乗り,「どっちにしろ詐欺師やろおまえ」「小学生ちゃうねんからご免なさいでゆるすわけないやろ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンでその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,平成27年9月7日頃から平成28年1月10日頃までの間に,38回にわたり,●●●内のJ方において,Jに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Jが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表4記載のとおり,24回にわたり,その画像データ合計38点をJが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,13歳未満の女子に強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年10月17日付け追起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Jが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成27年9月7日頃から平成28年1月10日頃までの間に,38回にわたり,J方において,Jに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Lが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表4記載のとおり,24回にわたり,その画像データ合計38点をJが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第6 K関係
 1(平成29年2月1日付け追起訴状記載の公訴事実第3)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったK(当時●●●歳。以下「K」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年9月29日頃から同月30日頃までの間に,被告人方において,Kに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号5,10)からKが使用するタブレット端末にアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,「E」を名乗る被告人がKに対し嫌がらせをしようとしている旨及び「天誅リストに晒されてますよ」「Eって人知ってますか?」「もし知り合いなら嫌がらせのイベントされてましたよ」「あいつ2ちゃんねるとかニコ生で情報収集して、情報収集したらスレッド立てて、何十人知らない人が写メ撮ってきて、写メ付きでずっと行動を書き込むストーカーのイベントするんです。」等のメッセージを送信し,さらに,「E」を名乗り,「お前詐欺師やろ」「いまさらなんやねん」「なら今から顔出して胸出して全身の写メとって」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,タブレット端末でその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,35回にわたり,●●●内のK方において,Kに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Kが使用するタブレット端末付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表5記載のとおり,26回にわたり,その画像データ合計35点をFが使用するタブレット端末から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成29年2月1日付け追起訴状記載の公訴事実第4(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Kが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成27年9月29日頃から同月30日頃までの間に,35回にわたり,K方において,Kに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Kが使用するタブレット端末付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表5記載のとおり,26回にわたり,その画像データ合計35点をKが使用するタブレット端末から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第7 L関係
 1(平成28年9月21日付け追起訴状記載の公訴事実第1及び第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったL(当時●●●歳。以下「L」という)が13歳未満であることを知りながら,Lに強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年10月28日,被告人方において,Lに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5)からLが使用するタブレット端末にアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,「C」を名乗る被告人がLの個人情報をインターネット上で漏洩させている旨及び「無視するならしらないよ」「街中の人が付け狙い,家に押しかけたり,いたずら電話がかかってきて,引っ越しを繰り返さなければならなくなる」等のメッセージを送信し,さらに,「C」を名乗り,「今頃なんやねん」「こうかいしろ」「小学生ちゃうねんからごめんなさいで許すわけないやろ」「なら胸出して顔出して写メとれ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,タブレット端末でその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,
  (1)同日午後8時9分頃から同日午後10時33分頃までの間に,21回にわたり,●●●内のL方において,Lに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Lが使用するタブレット端末付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表6記載のとおり,9回にわたり,その画像データ合計21点をLが使用するタブレット端末から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,
  (2)同日午後10時36分頃から同日午後10時45分頃までの間に,被告人方において,被告人が使用するパーソナルコンピュータとLが使用するタブレット端末を「LINE」のビデオ通話機能により接続した状態で,ビデオ通話機能を使用し,同タブレット端末付属のカメラの前で衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開いた姿態をとるよう要求し,その頃,L方において,Lに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Lが使用するタブレット端末から被告人が使用するパーソナルコンピュータにビデオ通話機能を使用して動画配信させ,
 もって,13歳未満の女子に強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年9月21日付け追起訴状記載の公訴事実第3及び第4(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Lが18歳に満たない児童であることを知りながら,
  (1)平成27年10月28日午後8時9分頃から同日午後10時33分頃までの間に,21回にわたり,L方において,Lに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Lが使用するタブレット端末付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表6記載のとおり,9回にわたり,その画像データ合計21点をLが使用するタブレット端末から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,
  (2)同日午後10時36分頃から同日午後10時45分頃までの間に,L方において,Lに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Lが使用するタブレット端末から「LINE」のビデオ通話機能を使用して,被告人が使用するパーソナルコンピュータに動画配信させ,その頃,被告人方において,ビデオキャプチャーソフトの録画機能を利用して動画データ1点を作成し,被告人が使用するパーソナルコンピュータ(平成29年岡地領第188号符号18)に記録・蔵置し,
 もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第8 M関係
 1(平成29年2月1日付け追起訴状記載の公訴事実第5及び第6(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったM(当時●●●歳。以下「M」という)が13歳未満であることを知りながら,Mに強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年2月9日頃から同月14日頃までの間に,被告人方において,Mに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号10,11)からMが使用する携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod」にアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「N」を名乗る第三者を装い,「E」を名乗る被告人がMの個人情報を漏洩させている旨及び「天誅リストにさらされてるよ」「あいつ2ちゃんねるとかニコニコとかで情報収集するの」「情報収集したらスレッド立てて嫌がらせのイベントするよ」「ただストーカーのイベントされるよ」「知らない人が多勢学校や家とかに待ち伏せして写真撮る」「何時何分になにしたとか晒されるの」等のメッセージを送信し,さらに,「E」を名乗り,「お前なにうそついてんねん」「嘘つきだれがゆるすねん」「なら胸出して顔かくさんといて写メ撮ってみろ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,Mが使用する「iPod」でその姿態を撮影して被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,
  (1)同月9日頃から同月14日頃までの間に,38回にわたり,●●●内のM方において,Mに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Mが使用する「iPod」付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表7記載のとおり,19回にわたり,その画像データ合計38点をMが使用する「iPod」から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,
  (2)同月14日,被告人方において,Mに,被告人が使用するパーソナルコンピュータとMが使用する「iPod」を「LINE」のビデオ通話機能により接続した状態で,ビデオ通話機能を使用し,「iPod」付属のカメラの前で衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸でその陰部を指で開くなどした姿態をとるよう要求し,同月15日午後8時13分頃から同日午後8時23分頃までの間に,2回にわたり,M方において,Mに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Mが使用する「iPod」から被告人が使用するパーソナルコンピュータにビデオ通話機能を使用して動画配信させ,
 もって,13歳未満の女子に強いてわいせつな行為をし,
 2(平成29年2月1日付け追起訴状記載の公訴事実第7及び第8(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Mが18歳に満たない児童であることを知りながら,
  (1)平成28年2月9日頃から同月14日頃までの間に,38回にわたり,M方において,Mに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Mが使用する「iPod」付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表7記載のとおり,19回にわたり,その画像データ合計38点をMが使用する「iPod」から被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,
  (2)同月15日午後8時13分頃から同日午後8時23分頃までの間に,M方において,Mに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Mが使用する「iPod」から「LINE」のビデオ通話機能を使用して,被告人が使用するパーソナルコンピュータに動画配信させ,その頃,被告人方において,ビデオキャプチャーソフトの録画機能を利用して動画データ2点を作成し,被告人が使用するパーソナルコンピュータ(平成29年岡地領第188号符号18)に記録・蔵置し,
 もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
第9 O関係(平成28年8月5日付け起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 O(当時●●●歳。以下「O」という)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成28年2月7日午前6時35分頃,●●●内のO方において,Oにその乳房を露出させる姿態をとらせ,これをOのスマートフォン又は携帯電話機付属のカメラにより静止画として撮影させた上,同画像データ1点を,Oのスマートフォンから被告人使用のスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号10)にアプリケーションソフト「LINE」を利用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条 第1の1,3,5,第2の1,第3の1,第4の1,第6の1の各所為
 いずれも刑法176条前段(第1の3,5を除き,包括して)
 第1の2,第2の2,第3の2,第4の2,第5の2,第6の2,第7の2,第8の2,第9の各所為
 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ処罰法」という)7条4項,2項,2条3項3号(第9を除き,包括して)
 第1の4,6の各所為
 いずれも児童ポルノ処罰法7条4項,2項,2条3項1号(第1の4は包括して)
 第5の1,第7の1,第8の1の各所為
 いずれも包括して刑法176条
 第10の各所為
 別表番号ごとに,いずれも児童ポルノ処罰法7条6項後段,前段,2条3項3号
 第11の所為
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織犯罪処罰法」という)10条1項前段
 刑種の選択 第1ないし第9につき,いずれも懲役刑
 第10,第11につき,いずれも懲役刑及び罰金刑
 併合罪の処理 刑法45条前段
 懲役刑につき,刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第1の5の罪の刑に加重)
 罰金刑につき,刑法48条1項,2項
 未決勾留日数の算入 刑法21条(懲役刑に算入)
 労役場留置 刑法18条
 没収 刑法19条1項2号,2項本文(平成29年岡地領第188号符号3,5は第1の1の,符号10は第2の1の,符号11,12は第3の1の,符号18は第1の4の,いずれも犯行供用物件)
 追徴 組織犯罪処罰法16条1項本文(第11の罪に係る同法13条1項5号の犯罪収益等に該当するが,既に費消して没収できない)
 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
 (強制わいせつ罪の成否と児童ポルノ製造罪との罪数関係)
第1 弁護人の主張
 弁護人及び被告人は,①被害女児が自らの陰部等を撮影して被告人に送信してきた,いわゆる自撮り行為(第1の1,第2の1,第3の1,第4の1,第5の1,第6の1,第7の1(1),第8の1(1))は,わいせつ行為には当たらず,強制わいせつ罪は成立しない,②仮に強制わいせつ罪が成立するとしても,その他の強制わいせつ罪(第1の3,5,第7の1(2),第8の1(2))も含め,各児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり,一罪であると主張する。
第2 強制わいせつ罪の成否
 1 関係証拠によると,被告人は,インターネット上で知り合った11歳ないし14歳の被害女児に,第三者を装って天誅リストに載っているから被告人に謝った方がいいなどと言うとともに,謝ってきた被害女児にごめんなさいで許すわけがない,胸と顔を出した写メを送れなどと言って脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,被害女児の自宅において,衣服を脱いで乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,被害女児のスマートフォン等付属のカメラでその姿態を撮影させ,その画像データや動画データを被告人が使用するスマートフォンに送信させるなどしたことが認められる。
 2 一般に,被害者を裸にして写真を撮影する行為は,被害者に直接触れていなくとも,わいせつ行為に当たると解されているところ,本件において,被害女児らは,被告人の要求に従い,衣服を脱いで乳房や陰部等を露出したり陰部を指で開いたりする姿態をとり,それをスマートフォン等で自ら撮影して被告人に送信しているのであって,被害女児は被告人と全く面識がないこと,被害女児が撮影して送信した写真や動画は容易に複製や頒布が可能な拡散可能性の高いデータであったことなども考慮すると,被害女児らの性的羞恥心は著しく害されているといえ,被害女児らの性的な自由の侵害という点からみて,撮影者が被告人であるか被害者であるかに質的な違いは見出し難い。
 確かに,女性が密室において一人で自らの陰部等を撮影する行為が,直ちにわいせつ行為といえるかには疑問もある。しかし,本件において,被害女児らは,被告人から衣服を脱いで乳房や陰部等を露出したり陰部を指で開いたりしている写真等を自ら撮影して被告人に送信するよう要求されて,その要求どおりに撮影しているのであって,被害女児らが自らの陰部等を撮影した行為は,被告人に送信することのみを目的として行われたものである。
 また,本件においてわいせつ行為に当たるか否かが問題となっているのは,被害女児らのいわゆる自撮り行為のみではなく,自撮り行為により撮影した写真や動画を被告人のスマートフォンに送信したことまでを含めた一連の行為であって,その一連の行為は被告人も予定していたものであり,被告人は自撮り行為が行われた状況をリアルタイムで認識していないとはいえ,自撮り行為により撮影された写真や動画を予定どおり自撮り行為後間もなく認識している。
 弁護人は,このような行為がわいせつ行為に当たるとすると,子どもが自発的に撮った写真を率先して送信したのでない限り,ほぼ全ての児童ポルノ製造行為が強制わいせつ行為となると指摘するが,強制わいせつ罪の成立には,被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行脅迫が立証される必要があることなどに照らすと,その指摘は当たらない。
 また,弁護人は,同様の事案において強要罪児童ポルノ製造罪の成立を認めた裁判例(東京高判平成28年2月19日判例タイムズ1432号134頁)の存在を指摘するが,強制わいせつ罪ではなく強要罪として起訴された事案における判断であり,本件とは事案が異なる。
 3 以上によると,本件においては,被害女児らが陰部等を自ら撮影して被告人に送信するなどした行為はわいせつ行為に当たるというべきであり,強制わいせつ罪が成立する。
第3 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数
 本件において罪数が問題となっている強制わいせつ罪は,被告人が,被害女児を脅迫してその反抗を著しく困難にした上,被害女児に自らの陰部等を撮影させて被告人に送信させたり,被害女児に被告人の陰茎を口淫させたり,ビデオ通話機能で接続した状態で被害女児に陰部等を露出させて動画配信させたりしたというものである。他方,児童ポルノ製造罪は,被告人が,被害女児に陰部等を撮影させた写真を送信させてそれをa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させたり,被害女児が被告人の陰茎を口淫するなどの姿態を動画で撮影して被告人のパーソナルコンピュータに記録・蔵置したり,ビデオ通話機能で接続した状態で被害女児に陰部等を露出させた動画配信を録画機能を利用して被告人のパーソナルコンピュータに記録・蔵置したりしたというものである。
 これらに照らすと,本件のような場合,強制わいせつ罪の行為と児童ポルノ製造の行為とは,一部重なり合う部分があり,特に,被害女児に陰部等を自ら撮影の上送信させて児童ポルノを製造した場合には,相当部分が重なり合うともいえる。しかし,本件強制わいせつ行為の中核部分は,脅迫により反抗が著しく困難な状態となった被害女児に,陰部等を撮影させて送信させたり,口淫させたり,陰部等を露出させて動画配信させたりしたわいせつ行為にある一方,本件児童ポルノ製造行為の中核部分は,それらをコンピュータに保存・蔵置した製造行為にあるのであって,前記の両行為が,通常伴う関係にあるとはいえず,また,行為に同時性があるとしても,社会的事実として強い一体性・同質性までは認められない。
 そうすると,本件において,強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,社会的見解上別個のものといえるから,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあるというべきである。
 (量刑の理由)
 岡山地方裁判所第1刑事部
 (裁判官 後藤有己)

 

 

児童に触って撮った場合の、強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪が併合罪になるという高裁判例の理由付け

 観念的競合にした判決を論難することになったので、集計しています。

 法的性格が違うとかいわれるんですが、罪名が違うので当たり前ですよね

 観念的競合の高裁判決は7つくらいあって、送信型強制わいせつ罪だと2件全部観念的競合です。 判例違反の上告理由たつんじゃないか。

 

広島高裁 H22.1.26 判例秘書【判例番号】L06520085 そこで,検討すると,(1)については,本件においては,被告人は,被害児童にその陰部を露出させる姿態をとらせるなどしてその姿態をデジタルビデオカメラで撮影しながら,被害児童の陰部を手指で弄び,舐め回すなどし,画像データをデジタルビデオカメラ内に設置されたDVD-RWに記憶させた上,その後,その画像データをパーソナルコンピュータ内蔵のハードディスクに記憶・蔵置させ,児童ポルノであるハードディスク1台を製造しているのであり,原判示第1のわいせつ行為と原判示第2の3項製造行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや,両行為の性質等にかんがみると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,同法45条前段の併合罪の関係にあるというべきである。なお,弁護人は,事実取調べの結果に基づく弁論において,被害児童に陰部を露出させる姿態をとらせ,これを撮影する行為は,わいせつ行為であるとともに,3項製造罪の実行行為でもあり,とりわけ,撮影行為がなければ,その点の強制わいせつ罪も成立せず,3項製造罪も成立しないという表裏一体・不可分一体の関係にあり,1個の行為といわざるを得ず,また,社会的見解上1個か否かの判断において,3項製造罪の「姿態をとらせ」という行為も考慮に入れるのであれば,原判示第2の「上記のとおり,その陰部を露出させる姿態をとらせ」という3項製造罪に該当する事実も,原判示第1の「同女の陰部を手指で弄び,舐め回すなどし」という強制わいせつ罪の事実と重なり合うと評価されるべきことになり,この部分についても社会的見解上1個の行為と評価すべきであると主張する。しかし,被害児童に陰部を露出させる姿態をとらせてこれをデジタルビデオカメラで撮影する行為は,刑法176条後段に触れる行為であるとともに,児童ポルノ法7条3項に触れる行為でもあるが,社会的見解上,わいせつ行為に伴い,これを撮影するのが通常であるとはいえないことに加え,本件において,被告人は,原判示第1のとおり,被害児童の陰部を手指で弄び,舐め回すなどのわいせつ行為にも及んでいるところ,これらの行為は原判示第2の3項製造罪の実行行為ではなく,他方,原判示第2の児童ポルノであるハードディスク1台を製造した行為が,原判示第1のわいせつ行為と社会的,自然的事象として同一のものでないことも明らかであることからすると,両者が観念的競合の関係に立つということはできず,両者を併合罪として処理した原判決に法令適用の誤りはなく,もとより理由不備の違法もない。
東京高裁 H22.12.7 公刊物未掲載 3 なお、原判示第1の強制わいせつ罪と3項製造罪の罪数関係について、原判決は、「法令の適用」の項において、「デジタルカメラで撮影した画像が瞬時に電磁的記録媒体であるSDカードに記録・保存されることにも照らせば、下着姿を引き下げ、陰部を露出させる姿態をとらせて、その姿態をデジタルカメラで撮影するという本件わいせつ行為が本件児童ポルノの製造行為とほぼ完全に重なり合っていると認められ、1個の行為が2個の罪名に触れる場合に当たる」と説示して、刑法54条1項前段の観念的競合になるとする。
 しかし、強制わいせつ罪は、わいせつ行為をしたことを構成要件要素とするのに対し、3項製造罪は、児童に児童ポルノに該当するような姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより児童ポルノを製造したことを構成要件要素とするものである。わいせつ行為に伴ってこれを撮影するのが通常であるとはいえないし、撮影に当たってわいせつ行為が必ず必要というわけでもないのであって(児童ポルノには、その定義上、刑法のわいせつには該当しないものも含みうるから、児童ポルノに該当するような姿態をとらせることが常にわいせつ行為に該当するわけではない。)、両行為は通常伴う関係にあるとはいえない。また、両行為の性質を見ても、わいせつ行為は、その場の行為で終了するのに対し、児童ポルノ製造は、その後の編集、現像等のいわば第二次、第三次製造も製造罪を構成し、行為者に犯意の継続性があれば包括一罪と解されるのであって(最3小決平成18年2月20日・刑集60巻2号216頁参照)、時間的、行為的な広がりを有する性質の行為である。これらの点にかんがみると、強制わいせつ罪と3項製造罪は、たまたま行為が重なるように見えても、それぞれにおける行為者の動態は社会見解上別個のものというべきであり、両罪は、刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく、同法45条前段の併合罪の関係にあると解するのが相当である(最1小決平成21年10月21日・刑集63巻8号1070頁参照)。
 そうすると、原判決には、原判示第1の強制わいせつ罪と3項製造罪との関係を観念的競合に当たるとし、両罪についての併合罪処理等を行っていない点で法令適用の誤りが認められる。しかし、正当な処断刑の範囲は6月以上30年以下の懲役であるところ、
東京高裁 H24.11.1  高刑集65巻2号18頁
別冊ジュリスト平成25年重要判例p168
 イ 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
     所論は,原判示の各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪について,いずれも,①被告人が,被害児童に陰部を露出させる姿態等をとらせ,これらを撮影した行為は,撮影行為も含めて全体として,児童ポルノ法7条3項に触れる行為であるとともに刑法176条後段にも触れる行為であり,行為の全部が重なり合う上,わいせつ行為として同質であるから観念的競合の関係にある,②仮に,観念的競合の関係にはないとしても包括一罪である旨主張する。
     そこでまず①の点について検討すると,その事実の概要は,被告人が,13歳未満の被害児童に対し,そのパンティ等を下ろして陰部を手指で触り,舐めるなどした上,自己の陰茎を握らせるなどする(以下,これらの行為を「直接的なわいせつ行為」という。)際に,性的欲求又はその関心を満足させるために,これらの姿態をとらせてその一部(原判示第2,第3の場合)又はそのほとんど(原判示第5,第6の場合)を携帯電話で撮影して児童ポルノを製造したというものである。
     確かに,所論のいうとおり,一般に上記撮影行為自体も刑法176条後段の強制わいせつ罪を構成すると解されている上,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為が児童ポルノ法7条3項の構成要件的行為であることからすると,本件において,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とは重なり合いがあるといえる。しかし,本件では,被告人は,撮影行為自体を手段としてわいせつ行為を遂げようとしたものではないから,撮影行為の重なり合いを重視するのは適当でない。また,直接的なわいせつ行為の姿態をとらせる行為は,上記のとおり構成要件的行為ではあるが,児童ポルノ製造罪の構成要件的行為の中核は撮影行為(製造行為)にあるのであって,同罪の処罰範囲を限定する趣旨で「姿態をとらせ」という要件が構成要件に規定されたことに鑑みると,そのような姿態をとらせる行為をとらえて,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為とが行為の主要な部分において重なり合うといえるかはなお検討の余地がある。
     そして,直接的なわいせつ行為と,これを撮影,記録する行為は,共に被告人の性的欲求又はその関心を満足させるという点では共通するものの,社会的評価においては,前者はわいせつ行為そのものであるのに対し,後者が本来意味するところは撮影行為により児童ポルノを製造することにあるから,各行為の意味合いは全く異なるし,それぞれ別個の意思の発現としての行為であるというべきである。そうすると,両行為が被告人によって同時に行われていても,それぞれが性質を異にする行為であって,社会的に一体の行為とみるのは相当でない。
     また,児童ポルノ製造罪は,複製行為も犯罪を構成し得る(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁)ため,時間的に広がりを持って行われることが想定されるのに対し,強制わいせつ罪は,通常,一時点において行われるものであるから,刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為が同時性を甚だしく欠く場合が想定される。したがって,両罪が観念的競合の関係にあるとすると,例えば,複製行為による児童ポルノ製造罪の有罪判決が確定したときに,撮影の際に犯した強制わいせつ罪に一事不再理効が及ぶ事態など,妥当性を欠く事態が十分生じ得る。一方で,こうした事態を避けるため,両罪について,複製行為がない場合は観念的競合の関係にあるが,複製行為が行われれば併合罪の関係にあるとすることは,複製行為の性質上,必ずしもその有無が明らかになるとは限らない上,同じ撮影行為であるにもかかわらず,後日なされた複製行為の有無により撮影行為自体の評価が変わることになり,相当な解釈とは言い難い。
     以上のとおり,本件において,被告人の刑法176条後段に触れる行為と児童ポルノ法7条3項に触れる行為は,その行為の重なり合いについて上記のような問題がある上,社会的評価において,直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為は,別個の意思に基づく相当性質の異なる行為であり,一罪として扱うことを妥当とするだけの社会的一体性は認められず,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
     次に,②の点については,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の保護法益の相違や,上記のとおり両行為の性質が相当異なることなどからすると,包括一罪にはならないというべきである。
高松高裁 H26.6.3 公刊物未掲載 2 原判示第8の罪数について
 論旨は,原判示第8の1の強制わいせつ致傷罪と同2の児童ポルノ製造罪の罪数については,観念的競合とすべきであるのに,これを併合罪とした原判決には,法令適用の誤りがあり,これが判決に影響を及ぼすことは明らかである,というものである。
 しかし,原判決がこれを併合罪であると判断したのは正当である。所論は,原判示第8の1におけるわいせつ行為は,胸部を露出させてその状況を撮影する行為に限られるから,強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為との実行行為は重なり合っている,また,原判決は,強制わいせつ致傷罪の関係では,わいせつ行為と逃げるための暴行行為とを一体の行為とみて単純一罪とし,一個の行為とみているのであるから,児童ポルノ製造罪との関係でも一個の行為とみるべきである,というのである。
 そこで検討するに,前記のとおり,原判示第8の1のわいせつ行為には,被害者の胸部を露出させた上で撮影する行為だけでなく,着衣の上から胸や陰部を触るという行為も含まれるのであり,強制わいせつ致傷罪と児童ポルノ製造罪とは,その行為の一部に重なる点があるに過ぎない。また,胸部を露出させてその状況を撮影し,さらに着衣の上から胸や陰部を触るなどのわいせつ行為をし,逃げるために暴行を加えて傷害を負わせたという一連の行為について,原判決が強制わいせつ致傷一罪を構成すると評価したのは正当であり,構成要件的観点からは一体として強制わいせつ致傷一罪を構成するが,その観点を捨象した自然的観察の下においては,そのうちの一部の行為が児童ポルノ製造罪に触れる関係にあるというに過ぎず,それぞれにおける被告人の動態は社会的見解上別個のものといえるのであり,両罪を併合罪とした原判決の判断は正当である。所論は採用できず,論旨は理由がない。
福岡高裁 H26.10.15 公刊物未掲載 ②については,本件の各強制わいせつ罪におけるわいせつ行為の概要は,被告人「が,単独で,又は共犯者と共謀の上,被害児童が13歳未満であることを知りながら,被害児童に対し,その衣服を脱がせて陰部等を露出する姿態をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影した,というものであるのに対し,各3項製造罪における製造行為の概要は,被告人が,単独で,又は共犯者と共謀の上,被害児童が13歳未満であることを知りながら,被害児童に対し,その衣服を脱がせて陰部等を露出する姿態をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,その画像データを同携帯電話機に内蔵された記録装置に記録させた,というものであり,両行為には同時性ないし重なり合いが認められる。
しかしながらわいせつ行為と児童ポルノの製造行為とは,共に性的欲求ないし関心を満足させるという点では共通する面があるものの,それぞれの行為の性質が相当に異なっているから,本件において各構成要件該当行為として摘示された事実に限ってみたときに,たまたま,上記のような同時性ないし重なり合いが認められるとしても,その聞に社会的事実としての強い一体性があるとはいえず,そうすると,本件における被告人の動態を社会的見解上1個のものと評価することはできないから上記の両罪は,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
阪高 H28.10.26 公刊物未掲載 4第7,第8,第10,第12及び第13の各1と各2における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,上記の各1のそれぞれの強制わいせつ罪と,各2のそれらに対応する各児童ポルノ製造罪に該当する行為とは,不可分一体の関係にあり,同一の機会に行われた社会的見解上1個の行為であるから,観念的競合若しくは包括一罪となるのに,それぞれ併合罪であるとした原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
確かに,原判示第7,第8,第10,第12及び第13の各1と,それらのそれぞれの2の行為のうち,直接接触して姿態を取らせる行為や撮影 する行為は,強制わいせつ罪の実行行為でありつつ児童ポルノ製造罪の実行行為でもあって,構成要件的に重なり合いがあるといえる。
しかしながら,本件において,社会的な評価における中核となるものは,前者がわいせつ行為そのものであるのに対し,後者は児童ポルノを製造することにある。
中核となるべき行為が異なり,重なる部分がそれぞれの罪において持つ意味合いも異なるし,また,別個の意思が発現されたものとみることができる。
そうすると,両行為が被告人によって同時に行われても,両罪の中核的行為が異なる以上,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で社会的一体性は認められず,その動態が社会的見解上一個のものとの評価を受けるとみるのは相当ではない。
また包括一罪でもない。
なお,この両罪を一罪として扱うと,一事不再理効の範囲が拡大し過ぎるという不都合も生じ得る。
結局,原判示第7,第8,第10,第12及び第13の各1の罪とそれぞれに対応する2の各罪とは併合罪になると解すべきである。
したがって,原判決に法令適用の誤りはない。
阪高 H28.10.27 最高裁判所刑事判例集71巻9号524頁
高等裁判所刑事判例集69巻2号1頁
      
第4 法令適用の誤りをいう論旨(控訴趣意書の控訴理由第4)について
 1 論旨は,原判示第1の1の強制わいせつ罪と原判示第1の2の提供目的児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあると認められ,あるいは包括一罪として処理されるべきであるのに,両罪を併合罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
 2 そこで検討するに,原判示第1の1の強制わいせつ罪及び原判示第1の2の提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為の内容は,既に説示したとおりであるから,両行為には同時性が認められる。また,本件提供目的児童ポルノ製造罪における撮影行為は,本件強制わいせつ罪の訴因に含まれていないとはいえ,強制わいせつ罪のわいせつな行為と評価され得るものであるから,その意味では両行為には一部重なり合いもみられる。
 しかしながら,強制わいせつ罪における行為者の動態(第三者の目に見えるような身体の動静)は,被害者に対して本件において行われたようなわいせつな行為を行うことであるのに対し,児童ポルノ製造罪における行為者の動態は,児童ポルノ法2条3項各号に該当する児童の姿態を撮影,記録して児童ポルノを製造することであるから,両行為は,その性質が相当異なっており,社会的事実として強い一体性があるとはいえない。また,児童ポルノの複製行為も児童ポルノ製造罪を構成し得ることからすると,児童ポルノ製造罪が時間的な広がりをもって行われて,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠ける場合も想定される。さらに,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪とでは,それぞれを構成する行為が必然的あるいは通常伴う関係にあるとはいえず,それぞれ別個の意思の発現によって犯される罪であるとみることができる。以上によれば,行為の同時性や一部重なり合いの存在を考慮しても,強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪における行為者の動態は社会的見解上,別個のものと評価すべきであって,これを一個のものとみることはできない。
 本件強制わいせつ罪と本件提供目的児童ポルノ製造罪についても,上記のように考えるのが相当であるから,両罪は観念的競合の関係にはなく,もとより罪質上,包括して一罪と評価すべきものともいえず,結局,両罪は併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 所論は,強制わいせつ罪のわいせつな行為には撮影行為が含まれることから,本件では行為の重なり合いがある上,被告人に性的意図はなく,金を得るという動機で一連の行為に及んだものであるから,別個の意思の発現とはいえず,行為の一体性が明らかであり,一個の犯意に包摂された一個の行為である,などと主張する。
 しかしながら,本件において,わいせつな行為の中核をなすものは,被告人が被害女児に被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害女児の陰部を触るなどした行為であるのに対し,児童ポルノを製造した行為の中核をなすものは,前記のような被害女児の姿態を撮影,記録した行為である。そうすると,本件強制わいせつ罪と本件提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為は,別個の行為とみるのが相当である。また,被告人が性的意図ではなく金を得るという動機で一連の行為に及んだことは,所論指摘のとおりである。しかしながら,そもそも強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪との罪数関係について,強制わいせつ罪における性的意図の有無により別異に解することは相当でない上,被告人には性的意図が認められないとはいえ,被告人は,被害女児の性的自由を客観的に侵害する行為を行う意思と,被害女児を描写した児童ポルノを製造する行為を行う意思を併存的に持ち,各意思を実現させるため,別個の意思の発現として性質が相当異なる各行為に及んだものと評価することができる。所論は採用の限りではない。
 その他,この点に関して縷々主張する所論は,いずれも採用することができない。
 3 したがって,原判示第1の1の強制わいせつ罪と原判示第1の2の提供目的児童ポルノ製造罪を併合罪とした原判決に,判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りはない。この点の法令適用の誤りをいう論旨も理由がない。
東京高裁 H30.1.30 高等裁判所刑事裁判速報集平成30年80頁 3 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について
  (1) 論旨は,原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を併合罪としたり観念的競合としたりしており,罪数処理に関する理由齟齬がある,また,上記の両罪は,撮影による強制わいせつと児童ポルノ製造の行為に係るものであり,もともと1個の行為に2個の罪名を付けているだけであるから,いずれも観念的競合とすべきであるのに,併合罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
  (2) 原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ(致傷)罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について,以下のように判断している。
   ア 観念的競合としたもの
    ・原判示第7の強制わいせつ致傷の行為と児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
    ・原判示第9から第11までの各強制わいせつの行為と各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
   イ 併合罪としたもの
    ・原判示第2の1の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号2)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
    ・原判示第2の2,4の各強制わいせつの行為と同第2の3,5の各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
    ・原判示第3の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号3)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
    ・原判示第4の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号4)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
    ・原判示第5の1,3,5の各強制わいせつの行為と同第5の2,4,6の各児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
    ・原判示第6の強制わいせつの行為と同第1(別表1番号7)の児童ポルノ製造(撮影,保存)の行為
  (3) 原判決は,上記罪数判断の理由を明示していないものの,基本的には,被害児童に姿態をとらせてデジタルカメラまたはスマートフォン(付属のカメラを含む。)等で撮影した行為が強制わいせつ(致傷)罪に該当する場合に,撮影すると同時に又は撮影した頃に当該撮影機器内蔵の又は同機器に装着した電磁的記録媒体に保存した行為(この保存行為を「一次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には,これらを観念的競合とし(原判示第7,第9から第11まで),一次保存をした画像を更に電磁的記録媒体であるノートパソコンのハードディスク内に保存した行為(この保存行為を「二次保存」という。)を児童ポルノ製造罪とする場合には,併合罪としているものと解される(なお,原判決が併合罪としたもののうち,原判示第2の1,第5の3,5,第6の各強制わいせつ行為では,被害児童に対し緊縛する暴行を加えており,これらについては,このことも根拠として併合罪とし,観念的競合としたもののうち,原判示第7の強制わいせつ行為では,被害児童に対し暴行を加えているが,その暴行態様は,緊縛を含まず,おむつを引き下げて陰茎を露出させた上,その包皮をむくなどしたというものであって,姿態をとらせる行為と重なり合う程度が高いとみたとも考えられ,原判決は,罪数判断に当たり,強制わいせつの態様(暴行の有無,内容)をも併せ考慮していると考えられる。)。いずれにせよ,わいせつな姿態をとらせて撮影することによる強制わいせつ行為と当該撮影及びその画像データの撮影機器に内蔵又は付属された記録媒体への保存行為を内容とする児童ポルノ製造行為は,ほぼ同時に行われ,行為も重なり合うから,自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るが,撮影画像データを撮影機器とは異なる記録媒体であるパソコンに複製して保存する二次保存が日時を異にして行われた場合には,両行為が同時に行われたとはいえず,重なり合わない部分も含まれること,そもそも強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,前者が被害者の性的自由を害することを内容とするのに対し,後者が被害者のわいせつな姿態を記録することによりその心身の成長を害することを主たる内容とするものであって,基本的に併合罪の関係にあることに照らすと,画像の複製行為を含む児童ポルノ製造行為を強制わいせつとは別罪になるとすることは合理性を有する。原判決の罪数判断は,合理性のある基準を適用した一貫したものとみることができ,理由齟齬はなく,具体的な行為に応じて観念的競合又は併合罪とした判断自体も不合理なものとはいえない。
 所論はいずれも採用できず,論旨は理由がない。
仙台高裁 H30.2.8 lex/db【文献番号】25549608 3 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,要するに,〔1〕同一の被害児童に対する2ないし3回の強制わいせつ罪を併合罪とする原判決は誤っており,包括一罪と解すべきである,〔2〕同一の被害児童に対する2ないし3回の児童ポルノ製造罪を併合罪とする原判決は誤っており,包括一罪と解すべきである,〔3〕同一機会に行われた強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を併合罪とする原判決は誤っており,観念的競合と解すべきである,したがって,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,〔1〕及び〔2〕については,被害児童が同じとはいえ,犯行日は短くても20日以上,長いと10か月以上も時期が離れていて機会を完全に異にしており,異なる機会ごとに新たな犯意が形成されたとみるべきものであるから,一罪として1回の処罰によるべき事案とはいえないのであって,包括一罪として評価するのは相当ではない。なお,〔2〕について,所論が指摘する裁判例は事案を異にし本件には適切ではない。〔3〕については,同一の被害児童に対する強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえないことや両行為の性質等に鑑みると,それぞれにおける行為者の動態は社会的見解上別個のものといえるから,併合罪の関係に立つと解するのが相当である(最高裁平成21年10月21日決定参照)。
東京高裁 H30.7.25 lex/db 文献番号】25561382  第1 法令適用の誤りの主張について
 その骨子は,原判示第1の各強制わいせつと原判示第2の各児童ポルノ製造は,重なり合うものであり,社会的見解上1個の行為と評価すべきであるから,刑法54条1項前段の観念的競合の関係に立つのに,刑法45条前段の併合罪の関係にあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというものである。
 しかし,本件のように幼児の陰部を触るなどのわいせつな行為をするとともに,その行為等を撮影して児童ポルノを製造した場合,わいせつな行為と児童ポルノを製造した行為とは,かなりの部分で重なり合っていることもあるが,通常伴う関係にあるとはいえない上,強制わいせつ罪では幼児の陰部を触るなどのわいせつな行為を行ったという側面から犯罪とされているのに対し,児童ポルノ製造罪ではそのような幼児の姿態を撮影して記録・保存する行為を行ったという側面から犯罪とされているのであって,それぞれの行為は社会的評価としても別個のものといえる。同趣旨の判断をして,原判示第1の各強制わいせつ罪とそれらの各犯行に対応する原判示第2の各児童ポルノ製造罪について,いずれも併合罪とした原判決の法令適用に誤りはない。
仙台高裁 R1.8.20 判例秘書【判例番号】L07420418号

2 法令適用の誤りの論旨について
 論旨は,要するに,原判決は,第3の強制わいせつ行為(平成29年4月8日,被害者Aに対するもの)と第4の児童ポルノ製造行為(同一日時場所,Aの姿態を撮影,保存したもの)との関係について,観念的競合による一罪ではなく,数罪であるとした。第5・第6,第7・第8,第9・第10,第11・第12,第13・第14,第15・第16,第17・第18,第21・第22,第23・第24,第25・第26の各関係についても同様である。強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,それぞれ行為の全部が完全に重なっており,いずれも観念的競合の関係にあると解すべきであるから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。 
 そこで検討すると,被害児の陰部等を手指で弄び,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどのわいせつ行為とそれらの行為等に係る被害児の姿態をスマホ等で撮影して保存する行為について,両者が同一の機会に行われ,時間と場所が重なり合うことがあったとしても,両者は通常伴う関係にあるとはいえないし,それぞれの行為の意味合いは相当異なり,社会通念上別個のものというべきであるから,両者は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 本件において,上記各罪の関係について,いずれも併合罪であるとした原判決の法令の適用は正当であり,論旨は理由がない。

 

「男子全員が上半身裸」という運動会写真の児童ポルノ性

「男子全員が上半身裸」という運動会写真の児童ポルノ

 福岡地裁h260602では、福岡県警が「被害児童(男)がTシャツをめくりあげ、乳首をあらわにしている画像」を「明らかに性欲を興奮させ又は刺激するものに該当するものであり、前記静止画データについては実在する18歳未満の児童の衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものであることから、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第2条第3項第3号に規定された3号児童ポルノと認めた。」として3号ポルノで立件したことがありますよね。
 控訴審では検察官が「それは起訴していない」と釈明してましたが、検察官請求証拠上では、児童ポルノとされていました。
 興奮する人が少しいれば、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の認定も可能です。

乳首は重要だという裁判例もあります。
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/20150627/1435304062


https://news.yahoo.co.jp/pickup/6441594
男子全員が上半身裸で体操、厳しい応援指導…高校生が投稿「やめてほしい」
10/14(金) 10:17配信
西日本新聞
投稿が寄せられた福岡県内の高校の運動会。男子生徒が上半身裸で体操する種目がある
 「上半身裸で体操させられる」「応援団から厳しい指導を受ける」。福岡県内の高校の運動会を巡り、現役高校生から「伝統の種目や演目が時代遅れに感じる。嫌な生徒も多いので、やめてほしい」との投稿が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。学校を取材すると、生徒間でも意見が割れていた。見直しか、それとも伝統重視か-。

【写真】「時代遅れに感じる」上半身裸で体操する運動会

 福岡県北部にある公立高校の運動会では、男子全員が上半身裸になって体操する種目がある。

リベンジポルノの発信者情報開示(東京地裁R04.12.17)

 権利侵害としてはプライバシー権が主張されるようです。

 プロバイダーも、撮影・投稿された事情・意図が分からないので、一歩引いた表現になっています。

  イ 被告の主張
  原告の風貌と類似するという判断には主観的な要素が大きく影響することからすると、本件動画の被写体と原告との同定可能性の判断は、慎重に判断されるべきである。
  また、本件動画の内容からすると、原告と撮影者は、いわゆる性風俗嬢と客の関係にあるものと考えられ、原告は、本件動画の撮影に同意し、何の恥じらいの素振りも見せずに撮影に応じていることからすると、金銭対価の提供を受けて、本件動画の撮影に応じたものと強く推認される。そうすると、原告は、本件動画の公開について、包括的に同意をしていたか、少なくとも本件動画が公開され得ることを十分に想定していたというべきであるから、本件投稿が、原告のプライバシー権を侵害するものではないと解する余地がある。


 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律には、発信者情報開示の特則はありません。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
第四条(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例)
 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第三条第二項及び第四条(第一号に係る部分に限る。)の場合のほか、特定電気通信役務提供者(同法第二条第三号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。第一号及び第二号において同じ。)は、特定電気通信(同法第二条第一号に規定する特定電気通信をいう。第一号において同じ。)による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者(同法第二条第四号に規定する発信者をいう。第二号及び第三号において同じ。)に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれにも該当するときは、賠償の責めに任じない。
一 特定電気通信による情報であって私事性的画像記録に係るものの流通によって自己の名誉又は私生活の平穏(以下この号において「名誉等」という。)を侵害されたとする者(撮影対象者(当該撮影対象者が死亡している場合にあっては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)に限る。)から、当該名誉等を侵害したとする情報(以下この号及び次号において「私事性的画像侵害情報」という。)、名誉等が侵害された旨、名誉等が侵害されたとする理由及び当該私事性的画像侵害情報が私事性的画像記録に係るものである旨(同号において「私事性的画像侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し私事性的画像侵害情報の送信を防止する措置(以下この条及び次条において「私事性的画像侵害情報送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があったとき。
二 当該特定電気通信役務提供者が、当該私事性的画像侵害情報の発信者に対し当該私事性的画像侵害情報等を示して当該私事性的画像侵害情報送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会したとき。
三 当該発信者が当該照会を受けた日から二日を経過しても当該発信者から当該私事性的画像侵害情報送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。〔本条改正の施行は、令三法二七施行日〕

東京地方裁判所
令和3年(ワ)第22752号
令和03年12月17日
東京都(以下略)
原告 X
同訴訟代理人弁護士 中嶋俊明
東京都(以下略)
被告 ビッグローブ株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 髙橋利昌

主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
  主文同旨
第2 事案の概要
  本件は、インターネット上のサイトにおいて、氏名不詳者が投稿した別紙投稿記事目録記載の投稿により、原告のプライバシー権が侵害されたとして、原告が、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下、単に「法」という。)4条1項に基づき、上記投稿に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を求めた事案である。
 1 前提事実(以下の事実は、当事者間に争いがない事実であるか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実である。)
  (1) 被告は、電気通信事業を営む株式会社である(弁論の全趣旨)。
  (2) 訴外FC2インクが運営するインターネットサイトである「B」(以下「本件サイト」という。)において、氏名不詳者により、別紙投稿記事目録記載の「タイムスタンプ」欄記載の日に、「投稿内容」欄記載の投稿(以下「本件投稿」という。)がされた(甲1ないし4)。
  (3) 本件投稿は、インターネットを通じて不特定の誰もが自由に閲覧することが可能であり、法2条1号の「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」である「特定電気通信」に当たる。
  また、本件投稿が投稿の際に経由したリモートホストや電子通信設備一式は法2条2号の「特定電気通信の用に供される電気通信設備」である「特定電気通信設備」に該当する。
  そして、本件投稿は、被告を経由プロバイダとして投稿されており、被告は、上記「特定電気通信設備」を用いて本件投稿の投稿と閲覧を媒介し、又は特定電気通信設備をこれら他人の通信の用に供する者であり、法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に該当し、法4条1項の「当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」に該当する。(以上について甲1ないし5、弁論の全趣旨)
  (4) 被告は、本件投稿に用いられたIPアドレス及び投稿日時の記録により特定されるIPアドレスの使用に係る契約の契約者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレスの情報を有している(甲6、弁論の全趣旨)。
 2 争点
  (1) 権利侵害の明白性(争点1)
  (2) 正当な理由の有無(争点2)
 3 争点に関する当事者の主張
  (1) 争点1(権利侵害の明白性)
  ア 原告の主張
  本件投稿は、「(流出)Cで声掛けた色白の女の子を持ち帰ってそのまま生ハメ!少しムチっとした身体に色白ピンク乳首の子はいかがですか?」と題する動画(以下「本件動画」という。)を販売するものである。本件動画は、原告と第三者が性行為を行っているものであり、原告の容貌や身体にはモザイク処理がされていないことからすると、本件動画に映っている者が原告であることは、容易に識別することができる。
  また、本件投稿により販売されている本件動画は、密室における性行為であるから、不特定の第三者に開示されることが想定されているものではなく、私生活上の秘密に属するものであり、かつ、自己が欲しない他者には開示されたくない情報であることは、一般人の感受性を基準としても明らかである。したがって、本件動画を公開することは、原告のプライバシー権を侵害するものである。
  そして、本件投稿は、原告の同意なく、投稿者が不当に利益を得ようとして投稿されたものであるから、違法性阻却事由は存在せず、むしろ、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律が適用される犯罪行為であるというべきである。
  イ 被告の主張
  原告の風貌と類似するという判断には主観的な要素が大きく影響することからすると、本件動画の被写体と原告との同定可能性の判断は、慎重に判断されるべきである。
  また、本件動画の内容からすると、原告と撮影者は、いわゆる性風俗嬢と客の関係にあるものと考えられ、原告は、本件動画の撮影に同意し、何の恥じらいの素振りも見せずに撮影に応じていることからすると、金銭対価の提供を受けて、本件動画の撮影に応じたものと強く推認される。そうすると、原告は、本件動画の公開について、包括的に同意をしていたか、少なくとも本件動画が公開され得ることを十分に想定していたというべきであるから、本件投稿が、原告のプライバシー権を侵害するものではないと解する余地がある。
  (2) 争点2(正当な理由の有無)
  ア 原告の主張
  原告は、本件投稿を投稿した者に対し、損害賠償請求等を予定しており、発信者情報の開示を求める正当な理由がある。
  イ 被告の主張
  争う。

第3 当裁判所の判断
 1 争点1(権利侵害の明白性)について
  ア 前提事実、証拠(甲1、2、7)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿は、本件サイト上において、本件動画を販売するものであり、本件動画に映っている者の容貌や身体にはモザイク処理がされていないことからすると、原告を知る者からすると、本件動画に映っている者が原告であると認識することができるというべきであるから、本件投稿と原告との同定可能性を認めることができる。
  イ 本件投稿は、密室における原告と第三者との間の性行為を撮影した動画であるところ、このような動画の内容は、私生活上の秘密に属するもので、一般人の感受性を基準として公開を欲しないものであり、いまだ一般の人々に知られていない事柄であるといえるから、本件動画をインターネット上に公開する本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害するものであると認めるのが相当である。
  そして、本件投稿は、本件動画を販売するものであり、投稿者は営利を目的として投稿したものであるといえるが、本件投稿により本件動画を本件サイトに公開することについて、原告の同意があったことをうかがわせる証拠はなく、そのほか違法性を阻却すべき事由があったことをうかがわせる証拠もない。
  これに対し、被告は、前記第2の3(1)イのとおり、原告は、本件動画の公開について包括的に同意をしていたか、少なくとも本件動画が公開され得ることを十分に想定していたというべきである旨主張するが、本件サイトで本件動画を公開することにより、不特定多数の者が本件動画を閲覧等することができることになるのであるから、原告が本件動画を撮影することに同意していたとしても、そのことから本件サイトに公開することを同意し、あるいは公開され得ることを想定していたということはできず、原告の同意があったことをうかがわせる証拠がないことは、上記のとおりである。したがって、被告の上記主張は採用することができない。
  ウ 以上によれば、本件投稿は、原告のプライバシー権を侵害するものであると認められる。
 2 争点2(正当な理由の有無)
  弁論の全趣旨によれば、原告は、本件投稿をした者に対し、不法行為に基づく損害賠償等の請求をすること予定していることが認められるから、本件投稿に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報の開示を受けるべき正当な理由のあることが認められる。
第4 結論
  よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用については民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
民事第26部
 (裁判官 市野井哲也)
別紙(省略)

寝ている児童に、触るなどのわいせつ行為をして、その模様を撮影した場合は、ひそかに製造罪(7条5項)ではなく姿態をとらせて製造罪(同条4項)であるという論証(大阪高裁R5.1.24)

 ハメ撮りの盗撮も同じですが、「5前二項に規定するもののほか、ひそかに」という法文ですので、併行的に行われた性犯罪・福祉犯があれば、姿態をとらせていることになるので、姿態をとらせて製造罪になります。

大阪高等裁判所令和5年1月24日宣告
判決
上記の者に対する強制性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び
処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ処罰法」
という。)違反、強制わいせつ、準強制わいせつ被告事件について、令和4年7
月I4日奈良地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあ
ったので、当裁判所は、検察官和久本圭介出席の上審理し、次のとおり判決す
る。
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役年に処する。
原審における未決勾留日数中 日をその刑に算入する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人奥村徹作成の控訴趣意書に記載のとおりであるか
ら、これを引用するが、論旨は、理由麒顧、法令適用の誤り及び量刑不当であ
る。
そこで、記録を調査し、当審における事実の取調べの結果も併せて検討する。
第1事案の概要
第2理由齟齬・法令適用の誤りの控訴趣意について(控訴理由第2)
所論は、原判示第8、第10、第12、第16、第18、第20、第23の各児童ポルノ
造について、各公訴事実の記載自体から被告人が各児童にそれぞれの姿態をと
らせたことが明らかで、原判決も公訴事実どおりの事実を認定しているから、
これらに対しては、姿態をとらせ製造罪を規定する児童買春・児童ポルノ処罰
法7条4項のみが適用されるのに、ひそかに製造罪Iを規定する同法7条5項を適
用した原判決には法令適用の誤りがあり、また、姿態をとらせ製造罪の事実を
認定しながら同法7条5項を適用した点で理由麒顧があるというものである。
原審記録によれば、起訴状記載の公訴事実のうち、ひそかに製造罪として起訴
された各公訴事実(令和3年12月2日付け起訴状の公訴事実第2、令和4年2月16
日付け起訴状の公訴事実第2、第4、第6、第8、第10、第12)は、同一機会に行
われた各罪と合わせ考慮すると、就寝中のCの陰茎を露出させる姿態等(原判
示第8、第16)、睡眠中のDの陰茎を露出させる姿態等(同第10、第18)、就寝中
のEの陰茎を露出させる姿態等(同第12、第20)、就寝中のAの陰茎を露出させ
る姿態等(同第23)を、それぞれひそかに撮影して保存し児童ポルノを製造し
たとして公訴提起され、いずれも罰条として、児童買春・児童ポルノ処罰法7
条5項、2項が摘示されていること(なお、令和4年2月16日付け起訴状の公訴事
実第2、第4、第6、第8、第i0、第12については同法2条3項2号、3号を、令和3
年12月2日付け起訴状の公訴事実第2については同法2条3項1号、2号、J'3号
を、さらに摘示)、原審裁判所は、検察官に対しこの点について釈明を求める
などはしなかったこと、原判決は、これらの事実について公訴事実どおりに認
定し、起訴状の罰条と同じ法令を適用したことが認められる。
しかし、同法7条5項の規定する児童ポルノのひそかに製造行為とは、隠しカメ
ラの設置など描写の対象となる児童に知られることがないような態様による盗
撮の手段で児童ポルノを製造する行為を指すと解されるが、同項が「前2項に
規定するもののほか」と規定していることや同条項の改正経緯に照らせば、児
童が就寝中等の事情により撮影の事実を認識していなくても、行為者が姿態を
とらせた場合には、姿態をとらせ製造罪(同条4項)が成立し、ひそかに製造
罪(同条5項)は適用されないと解される。
したがって、検察官は、本来、上記各事実をいずれも姿態をとらせ製造罪とし
て起訴すべきところを、誤ってひそかに製造罪が成立すると解し、同一機会の
各事実と合わせると姿態をとらせたこととなる事実を記載しながら、「ひそか
に」との文言を付して公訴事実を構成し、罰条には児童買春・児童ポルノ処罰
法7条5項を上げた起訴状を提出し、原判決もその誤りを看過して、同様の事実
認定をした上で、上記のとおりの適条をしたことが明らかである。
このような原判決の判断は>判文自体から明らかな理由麒甑とまではL,いえな
いにせよ、法令の適用に誤りがある旨の所論の指摘は正しい。
さらに、検察官のみならず、被告人や原審弁護人も、上記各事実に関してひそ
かに製造罪としての責任を問われているとの誤信の下で原審公判に臨んでいた
ものとうかがえるから、第1審裁判所としては、関係証拠に照らして'認定でき
る事実に正しい適条をするだけではなく、検察官に釈明を求め、その回答如何
によっては訴因変更請求を促すなどして、被告人及び原審弁護人の防御に遺漏
がないよう手続を尽くすべきであったのに、原審はこうした手続を何ら行って
いない。
姿態をとらせ製造罪とひそかに製造罪とでは、法定刑は同じとはいえ、児童ポ
ルノ製造罪における「姿態をとらせ」あるいは「ひそかに」という要件は、処
罰根拠をなす重要部分に当たるから、この点について被告人や原審弁護人が誤
解をしたままでは十分な防御の機会が与えられたと評価できず、原審の釈明義
務違反は、判決に影響を及ぼすとみるべきである。
9以上から、原判決には、所論指摘の法令適用の誤り、さらには、訴訟手続の
法令違反があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は
理由がある。
第3自判原判決は、原判示第8、第10、第12、第l6、第18、第20、第2IJ);3の各
罪につき、その余の各罪と併合罪加重をし、1個の主文により判決を言い渡し
ているから、結局、原判決は全部破棄を免れない。
そこで、その余の論旨に対する判断を省略し、刑訴法397条1項、379条、380条
により原判決を破棄することとし、同法400条ただし書により、当審において
追加された予備的訴因により、当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 しかし、間違ってひそかに製造罪で起訴されて誰も気付かずに実刑になっている例もあるようです

裁判年月日  令和 2年 3月 2日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  令元(特わ)2383号・令元(特わ)2501号・令元(特わ)2825号・令元(特わ)3104号
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,児童福祉法違反被告事件
文献番号  2020WLJPCA03026004
 (罪となるべき事実)
 被告人は,●●●が運営する女子サッカーチーム●●●のコーチとして同チームに在籍する児童らに対してサッカーの指導等をしていたものであるが,
第1(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
 B(当時14歳ないし15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童が同チームに在籍していた当時はサッカーの指導等をし,同児童が同チームを退団した後も引き続き同児童の進路,学習等について助言をするなどしていた立場を利用して,
 1  平成30年4月7日午前10時頃から同日午後0時頃までの間に,東京都●●●事務所(以下「本件事務所」という。)内において,同児童に被告人を相手に性交させ,
 2  同年5月5日午後1時頃から同日午後4時頃までの間に,本件事務所内において,同児童に被告人を相手に性交させ,
 もって児童に淫行をさせる行為をし,
第2(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 前記第1の1及び2の日時場所において,2回にわたり,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し,撮影した動画データを自己が使用するパーソナルコンピュータに接続したUSBメモリ1個(令和元年東地領第4006号符号1)に記録して編集した上で保存し,もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより児童ポルノを製造し,


「5前二項に規定するもののほか、ひそかに」という法文だから、公訴事実中に、「被告人が性交する」「被告人が触る」というのが出てくることはないはずです。姿態をとらせたという事実を記載すると、姿態をとらせて製造罪になって、ひそかに製造罪にはならないので、理由齟齬・法令適用の誤りだと思います。

 強制わいせつ罪(176条後段)の隠し撮りは、ひそかに製造罪ではなく姿態をとらせて製造罪だという高裁判例もあります。

6 高裁判例・裁判例
(1) 法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。」という高裁判例(大阪高裁H28.10.26)
 あらかじめ室内にピデオカメラを設置して、わいせつ行為をしているところを盗撮した場合は、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪であるという判例(大阪高裁H28.10.26*36 神戸地裁姫路支部H28.5.20*37)がある。
阪高裁H28.10.26
平成28年(う)第666号
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
判決

原判決神戸地方裁判所姫路支部平成28年5月20日宣告
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。
いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

 しかし、原判決を維持しようとするので、争点は、
「それでも、ひそかに製造罪で起訴するのは、検察官の訴追裁量として許されるか」
「『被告人が児童と性交する姿態』という記載は、『姿態をとらせ』の記載があると言えるのか。訴因外事実の主張ではないか」
「5前二項に規定するもののほか」という法文は無意味か
になると思います。

控訴理由1 法令適用の誤り~「ひそかに」とは「提供等の目的がある場合と姿態をとらせた場合を除き、描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という定義づけられるところ、判示第2の製造行為は「姿態を取らせて」「あからさまに」カメラを構えているので「ひそかに」ではない。 9
1 坪井検事曰く「ひそかに」とは,「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」 9
2 3項・4項との関係で、「提供等の目的がある場合と姿態をとらせた場合を除く」「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という定義がふさわしい。 12
3 島戸検事曰く「○○項に規定するもののほか」という法文は、重複を避けるための技術的なものであるから、「ひそかに」の定義においても、目的がある場合や姿態をとらせた場合を除外する必要がある。 14
4 本件製造行為の態様 16
※弁護人の想像図。 17
※被告人の説明 18
5 「5前二項に規定するもののほか」という法文からは、提供目的がない場合には、まず、姿態をとらせている場合を、姿態をとらせて製造罪で起訴して、そうでない場合で、「提供等の目的がある場合と姿態をとらせた場合を除き、描写の対象となる児童に知られることのないような態様」の製造行為を、ひそかに製造罪で起訴すべきであるにもかかわらず、起訴検察官は、そういう正しい解釈を知らずに、被害児童が気付いていれば姿態をとらせて製造罪、知らなければひそかに製造罪で起訴していて、解釈を誤っていること。原審も同様の誤解をしていること 20
(1)7条の構成 20
(2)「5前二項に規定するもののほか」という法文からは、提供目的がない場合には、まず、姿態をとらせている場合を、姿態をとらせて製造罪で起訴して、そうでない場合で、「提供等の目的がある場合と姿態をとらせた場合を除き、描写の対象となる児童に知られることのないような態様」の製造行為を、ひそかに製造罪で起訴すべきであるにもかかわらず起訴検事は、こういう解釈を知らずに、就寝中は気付かないからひそかに製造罪、起きているときは気付くから姿態をとらせて製造という誤った解釈をして、製造罪を使い分けたことが明らかである。 21
①検察官は覚醒している場合は姿態をとらせて製造罪で起訴した。原審も姿態をとらせて製造罪とした。 22
②検察官は就寝・熟睡している場合はひそかに製造罪で起訴した。原審もひそかに製造罪を認定した。 24
6裁判例を見ると、準強制わいせつ罪・準強姦罪の機会に児童ポルノが製造された場合や、乳幼児の場合は、姿態をとらせて製造罪とされていて、ひそかに製造罪では処理されていないこと。 35
(1)酒・薬物・熟睡で抗拒不能に乗じて姦淫・わいせつ行為をして、明らかにカメラを構えてその場面を撮影する行為は姿態をとらせて製造罪とされる。 35
奈良地裁H29.11.27 35
福岡地裁H24.3.2*3 36
③沼津支部r3.6.14*4 36
④松戸支部H28.1.13*5 37
⑤大阪地裁r03.2.16*6 38
横浜地裁H30.5.22*7 39
⑦大津地裁h28.7.28*8 40
⑧ その他 40
(2)乳児に対するわいせつ行為に伴う製造行為も、姿態をとらせて製造罪である。 47
控訴理由第2 理由齟齬・法令適用の誤り~判示第2のひそかに製造罪は、姿態をとらせて製造罪の誤り 52
1 はじめに 52
2 法文~ひそかに製造罪(7条5項)と姿態をとらせて製造罪(7条4項)の関係 53
3 「5 前2項に規定するもののほか」という規定の趣旨・沿革 61
(1)概観 61
(2)姿態をとらせて製造罪の「前項に規定するもののほか」の趣旨 65
①児童が自発的に性交類似行為を始めた場合でも、「姿態をとらせ」と評価できるという。松江地裁出雲支部H29.9.1 68
②児童買春後に何も告げずに撮影した場合(山形地裁米沢支部H19.1.31*10) 69
③デジカメを首からさげて身体検査を盗撮した行為を、姿態をとらせて製造罪とした(富山地裁h24.10.11*11) 69
(3)ひそかに製造罪の「前2項に規定するもののほか」の趣旨 70
4 本件のように、ひそかに、姿態をとらせた場合 71
5 ひそかに製造罪で想定されている行為態様 71
(1)文献 71
①被害児童に対する直接の働きかけはないほか,衣服をつけない場所に来る不特定の被害児童を描写することも多い(武田判事ら) 71
② 女子トイレの汚物入れに仕掛けられたカメラによる盗撮(KOSUZO) 73
③盗撮により児童ポルノを製造する行為は,通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや,発覚しにくい方法で行っている点で巧妙である(坪井検事) 74
④児童が利用する脱衣場に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例(宇賀検事) 79
⑤盗撮による製造行為に処罰を拡大するという理解(栗原検事) 80
⑥犯罪事実記載例もトイレ盗撮 81
⑦「盗撮による」製造罪は、人が通常衣服を着けない場所で、かつ、専ら児童のみが利用する場所(小学校の児童用トイレ、更衣室等)で盗撮した場合が典型例である。 82
⑦「現行法が、いわゆる提供目的の所持に対する処罰、それと、あとは、児童に姿態をとらせて製造する場合の処罰があったわけですけれども、盗撮もだめだということで、処罰範囲を拡大する趣旨でつくらせていただいたものでございます。」「今回、新たに盗撮も処罰の範囲に入れるということで拡大をする趣旨でございます。」(国会会議録) 82
(2)裁判例も、トイレ・浴場・更衣室盗撮を想定していること 85
横浜地裁H30.5.22*12 覗き・トイレ盗撮・風呂場盗撮 85
②大津地裁h28.7.28*13 仕掛けカメラによるトイレ盗撮 86
神戸地裁H30.1.12*14 覗き・スマホによる着換え盗撮 86
福岡地裁h29.2.27*15 望遠カメラによる着替え盗撮 86
名古屋地裁h30.11.05*16 望遠カメラによる露天風呂盗撮 86
横浜地裁h29.7.19*17 偽装カメラによる風呂場盗撮 87
釧路地裁帯広支部r02.3.17*18  偽装カメラによる着替え盗撮 87
⑧函館地裁h30.4.17*19 偽装カメラによる検診盗撮 87
千葉地裁R01.11.13*20 偽装カメラによる着替え盗撮 87
那覇地裁沖縄支部r01.9.19*21 仕掛けカメラによる風呂場盗撮 87
奈良地裁r01.12.26*22  仕掛けカメラによる着替え盗撮 87
高知地裁r3.3.23*23  仕掛けカメラによる着替え盗撮 87
高松地裁R02.10.28*24 仕掛けカメラによる風呂場盗撮 87
奈良地裁r01.12.23*25 仕掛けカメラによる着替え盗撮 87
福岡地裁行橋支部r03.2.1*26 仕掛けカメラによる風呂場盗撮 87
高松地裁R02.10.28*27 仕掛けカメラによる風呂場盗撮 87
和歌山地裁R01.12.25*28 仕掛けカメラ 着替え盗撮 87
横浜地裁H29.12.20*29 仕掛けカメラ 風呂場盗撮 87
東京地裁R03.9.8*30 仕掛けカメラによるトイレ盗撮 87
徳島地裁r04.3.15*31 仕掛けカメラによる着替 87
和歌山地裁h31.3.12*32 仕掛けカメラによる着替え盗撮 87
さいたま地裁h28.10.25*33 仕掛けカメラによる着替え盗撮 87
名古屋地裁H28.10.4*34 仕掛けカメラによる着替え盗撮 87
名古屋地裁H30.6.15*35 仕掛けカメラによるトイレ盗撮 87
5 まさか「島戸さんがH16の論稿で『いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらない』と言ってるからひそかに製造罪だ」とか言わないよなあ。 89
①島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集 57巻8号 2004.8 は、平成16年の論稿である。 89
②島戸も「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。と解説していること 91
6 高裁判例・裁判例 92
(1) 法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。」という高裁判例(大阪高裁H28.10.26) 92
(2) 児童買春行為を盗撮した事案がひそかに製造罪で起訴されたが、姿態をとらせて製造罪を認定したもの(神戸地裁r01.6.28) 96
(3) 酒・薬物・熟睡で抗拒不能に乗じて準強制わいせつ罪・準強姦罪児童ポルノが製造された場合は、ひそかに製造罪であるとする裁判例 99
(4) 0歳・1歳という、カメラ・撮影を理解できない被害児童にわいせつ行為して撮影する場合は、姿態をとらせて製造罪である。 99
6 各ひそかに製造罪の公訴事実だけで、姿態をとらせて製造罪は成立する。訴因外事実の主張ではない。 99
①性交しながら撮影することは「性交する姿態をとらせている」ことであるという判例(札幌高裁H19.3.8)。 103
名古屋高裁h23.5.11*53(津地裁四日市支部*54) 104
名古屋高裁H24.7.13*55 (原審名古屋地裁h24.3.38*56) 105
福岡高裁H21.9.16*57(原審福岡地裁h21.3.18*58) 106
⑤東京高裁H17.12.26*59(静岡地裁浜松支部h17.7.15*60)は影響を失っていること 107
7 並行性犯罪の公訴事実を借りてくれば、各製造行為のときに姿態を取らせたことが明らかである。(前記名古屋高裁h23.5.11) 108
8 検察官も並行性犯罪の際の撮影行為だと主張立証していたこと 117
9 量刑理由でも、並行性犯罪の際の撮影行為だと認定していること 120
10 訴追裁量論・訴因制度論について 121
(1)訴追裁量 121
(2)本件の各製造罪は、児童が寝ている場合にはひそかに製造罪、起きている場合には姿態をとらせて製造罪(判示第2、第14)という法令適用を誤った訴追裁量であるから、擁護する必要はない。 125
①覚醒している場合は姿態をとらせて製造罪で起訴した 125
②就寝している場合はひそかに製造罪で起訴した 127
③7条の構成からすれば、まず、「提供等の目的はあるか」「姿態をとらせて」いるかを検討して、目的も無く姿態を取らせていない場合に、ひそかに製造罪を検討するはずである。 135
(3)姿態をとらせて製造行為をひそかに製造罪で起訴する訴追裁量はないこと 136
①「5前二項に規定するもののほか」という法文に反し違法であること 136
②姿態をとらせて製造行為をひそかに製造罪で起訴する必要がないこと 137
ア姿態をとらせて製造罪の立証 137
イ ひそかに製造罪の立証 141
ウ あえてひそかに製造罪を選択するような立証の難易差はないこと 144
(4)「児童売春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という法律はないこと 144
11 まとめ 146


追記2022/11/15
 この件の控訴趣意書600ページを提出したところ、高裁から「ちょっと来い」と呼び出されました

追記2022/11/17
 裁判所から検察官に訴因変更が促されました。

追記2022/11/25
 検察官から、予備的訴因追加請求書が出ました。ひそかに製造罪を姿態をとらせて製造罪に変更したいということです。

追記2022/12/08
 判決はR5.1.24予定

追記2023/01/24
 法令適用の誤りと訴訟手続の法令違反とで破棄され、姿態をとらせて製造罪に修正されました。

児童ポルノを同市内の自宅で保管したとして、同禁止法違反(保管)で起訴しちゃった事例(松江地検)

 名古屋高裁判例があって、自宅の児童ポルノについては保管ではなく所持ですから、保管罪は無罪になります。
 わいせつについては、有体物の場合が所持、データの場合が保管とされていますので要注意。名古屋高裁は反対。

判例番号】 L07420140
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
【事件番号】 名古屋高等裁判所判決/平成30年(う)第383号
【判決日付】 平成31年3月4日
【判示事項】 被告人が,共犯者と共謀の上の入浴中の女児5名の盗撮に係る児童ポルノ製造,及び不特定多数の者に提供有償頒布目的で児童ポルノ,わいせつ画像データに係る電磁的記録有償頒布目的保管などの罪に問われた事案の控訴審控訴審は,原判決の原判示第2は,検察官がわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管で処罰を求めず,児童ポルノ禁止法違反のみで処罰を求めた電磁的記録2点につき前者の罪も成立するとして,審判の請求を受けない事件について判決をしたもので破棄を免れないとし,新たに不特定多数の者に提供有償頒布目的で児童ポルノ,わいせつ画像データ計6点に係る電磁的記録に係る記録媒体の所持の事実を認定した上,弁護側の訴因不特定,事実誤認などの主張を退け,懲役2年,保護観察付き執行猶予4年に処する旨自判した事例
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集73巻5号150頁
       LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 原判決を破棄する。
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。
2 判示第2
 (1) 同事実(被告人弁護人も争わない)は児童ポルノ禁止法7条7項,刑法175条2項の「所持」罪該当(検察官はこれらの「保管」罪該当をいうけれども,被告人は電磁的記録に係る記録媒体を所持したから「所持」該当。「保管」不該当。訴因変更不要)

名古屋地裁h30.11.5
判示第2 不特定多数の者に有償で頒布提供する目的で,平成30年2月20日,前記被告人方において,記録媒体である外付けハードディスクに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであり,かつ,女児の性器を露骨に撮影したわいせつな画像データを記録した電磁的記録2点及び同児童ポルノであり,かつ女児の性器を露骨に撮影したわいせつな画像データを記録した電磁的記録4点を保管したものである。

控訴理由は、児童ポルノ法の解説の羅列です。奥村説はありません

控訴理由
2 児童ポルノ法における「保管」とはリモートストレージ等被告人の現実支配が及ばない支配状態をいうこと
(1)児童ポルノ法H16改正時の解説
 目的保管罪というのは、H16改正で設けられた罪名なので、当時の解説を見ておく。
 刑法のわいせつ図画罪とは特別関係であるから、刑法の解釈の影響を受けない。

①森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」p98
 議員立法だが、担当した議員の解説である。

電磁的記録の「保管」とは、当該電磁的記録を自己の実力支配内に置いておくことをいいます。具体的には、当該電磁的記録をコンピュータのレンタル・サーバに保存したり、自己が自由にダウンロードすることができるリモート(プロパイダーのメールボックスに入れられたメールを閲覧できる機能)の記録媒体に保存する行為がこれに当たります。
なお、自己の所持する記憶媒体に電磁的記録を保存している場合は、当該記憶媒体の「所持」 罪が成立するため、記録媒体を所持していないが、前記の方法により電磁的記録を保管している場合にのみ本罪が成立することになります。


②島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08 p95
 島戸さんは裁判官である。

ウ 後段で規定する行為
電磁的記録の「保管」とは、当該電磁的記録を自己の実力支配内に置いておくことをいう。具体的には、当該電磁的記録をコンビュータのレンタル・サーバに保存する行為がこれに当たる。
前記のとおり 、記録媒体に記録されている電磁的記録については、当該 自己の所有する記憶媒体に電磁的記録を保存している場合は、当該記憶媒体の「所持」罪が成立するため、記録媒体を所持していないが、電磁的記録を保管している場合にのみ本罪が成立することになる。

③大橋充直検事「検証ハイテク犯罪の捜査 第41回特集 児童買春・児童ポルノ禁止法の改正」捜査研究 第640号
 大橋さんは、弁護士登録された
(2)児童ポルノ法H26改正時の解説
 単純所持罪(7条1項)が設けられた際に、再度、所持と保管の区別が再確認され、周知されている。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
1 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。

警察庁少年課課長補佐友永光則警察公論2014年10月号p12

警察庁少年課課長補佐友永光則警察公論2014年10月号p12
イ「所持」及び「保管」の意義
児童ポルノの「所持」とは,有体物(写真, DVD,ハードディスク(記録媒体)等)である児童ポルノを,自己の事実上の支配下に置くことをいう。
これに対し電磁的記録の「保管」とは,電磁的記録を自己の実力支配内に置くことをいう。
具体的には,当該電磁的記録をコンピュータのレンタル・サーバに保存したり,自己が自由にダウンロードすることができるリモートの記録媒体に保存する行為が該当する。これに対し,自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合は,ハードディスク(有体物)の所持罪に該当する。


②江口寛章ら「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部改正」警察学論集第67巻第10号p97.
③坪井麻友美検事「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」捜査研究 第63巻第9号(2014年9月号)
 坪井検事は、現行法の目的所持罪と保管罪の区別についても、リモートが保管罪と説明している。

また、昨年6月頃、児童の裸を撮影した児童ポルノを同市内の自宅で保管したとして、同禁止法違反(保管)で追起訴した。16日付。
読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/0a78b1fab37f243fe635307efadc2b5087cb6038
このほかにも松江地検は、男が去年6月、児童の裸の動画データを保管したとして追起訴している。

送信させる強制わいせつ罪。「リモート強制わいせつ」というそうですが、東京高裁H28.2.19によれば強要罪になります。

 「リモート強制わいせつ」というそうですが、東京高裁H28.2.19によれば強要罪になります。
 東京高裁は、強要罪説。岡山支部1件、金沢支部2件、大阪高裁2件も強要罪説。強制わいせつ罪説は屁理屈として退けられています。
 大阪高裁に、令和になってから、強制わいせつ罪の判例が2件あります。強要罪説が屁理屈扱いされています。
 頭の固い検察官にあたると起訴罪名は強要罪に落ちます。
 わいせつの定義が失われているので、否定も肯定も説明が難しいですが、性的意図で撮影させたという立証が必要になるでしょう。

https://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20220916-OYTNT50232/
SNSで知り合った男性にスマホで下半身を見せるよう要求したとして、県警捜査1課などは16日、兵庫県明石市の大学生の男(20)を強制わいせつ未遂容疑で逮捕したと発表した。性的欲求を満たすため、遠隔でわいせつな行為を強要したり、画像を送らせたりするのは「リモート強制わいせつ」と呼ばれ、この件での県警の検挙は初めてとなる。
 発表によると、男は19歳の時、女性になりすましてSNSで知り合った県内の会社員男性(25)から下半身の画像を入手し、5月2~15日に男性のスマホにその画像を送信。「(ネットに)さらしていい?」などと脅し、男性の下半身をビデオ通話で見せるように要求した疑い。容疑を認めているという。
 わいせつな画像などを要求する行為に対し、県警は今回、強要などより罪の重い強制わいせつ容疑の適用に踏み切った。捜査1課は「(リモート強制わいせつについて)携帯などで相手の羞恥心を害する行為を強要したら罪に問われる。SNS上のやりとりは十分に気を付けて」と呼びかけている。


「被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。」という東京高裁の判例によれば、送信させてしまうとわいせつ行為にはなりません。


裁判年月日 平成28年 2月19日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 平27(う)1766号
事件名 強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果 控訴棄却 上訴等 上告 文献番号 2016WLJPCA02197003

要旨 / 新判例体系
強要罪と平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
裁判経過
第一審 平成27年 8月25日 新潟地裁高田支部 判決 平27(わ)35号
出典
東高刑時報 67巻1頁
判タ 1432号134頁 
参照条文
裁判官
藤井敏明、 福士利博、 山田裕文



理由

 弁護人奥村徹の控訴趣意は,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り及び量刑不当の主張であり,検察官の答弁は,控訴趣意にはいずれも理由がない,というものである。
 1 法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反の主張について
 論旨は,要するに,原判決が強要罪に該当するとして認定した事実は,それだけでも強制わいせつ罪を構成するから,強要罪が成立することはないにもかかわらず,これを強要罪であるとして刑法223条を適用して有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあり,また,原判決が平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条3項の罪(以下「3項製造罪」という。)に該当するとして認定した事実も,実質的には強制わいせつ罪に当たり,以上の実質的に強制わいせつ罪に該当する各事実について,告訴がないまま起訴することは,親告罪の趣旨を潜脱し,違法であるから,公訴棄却とすべきであるのに,実体判断を行った原審には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というものであると解される。
 (1)強要罪が成立しないとの主張について
 記録によれば,原判決は,公訴事実と同旨の事実を認定したが,その要旨は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女に対し,要求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネットアプリケーション「LINE」を使用して送信するよう要求し,畏怖した被害者にその撮影をさせた上,「LINE」を使用して画像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録し,もって被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造した,というものである。
 すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。
 弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
 しかしながら,①については,本件起訴状に記載された罪名及び罰条の記載が強制わいせつ罪を示すものでないことに加え,公訴事実に性的意図を示す記載もないことからすれば,本件において,強制わいせつ罪に該当する事実が起訴されていないのは明らかであるところ,原審においても,その限りで事実を認定しているのであるから,その認定に係る事実は,性的意図を含むものとはいえない。
 また,②については,量刑の理由は,犯罪事実の認定ではなく,弁護人の主張は失当である。
 そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
 以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
 (2)公訴棄却にすべきとの主張について
 以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
 また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえないし,実質的に同罪に当たるともいえない。
 以上のとおり,本件は,強要罪および3項製造罪に該当し,親告罪たる強制わいせつ罪には形式的にも実質的にも該当しない事実が起訴され,起訴された事実と同旨の事実が認定されたものであるところ,このような事実の起訴,実体判断に当たって,告訴を必要とすべき理由はなく,本件につき,公訴棄却にすべきであるとの弁護人の主張は,理由がない。
 (3)小括以上の次第で,法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反をいう論旨には,理由がない。
 2 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,原判決は,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとした上で,強要罪の犯情が重いとして同罪の刑で処断することとしたが,本件の脅迫は一時的で,害悪もすぐに止んでいるのに対し,3項製造罪は画像の流通の危険やそれに対する不安が長期に継続する悪質なもので,原判決の量刑理由でも,専ら児童ポルノ画像が重視されており,犯情は3項製造罪の方が重いから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,本件の強要罪に係る脅迫行為の執拗性やその手口の卑劣性などを考慮すれば,3項製造罪に比して強要罪の犯情が重いとした原審の判断に誤りはない。
 法令適用の誤りをいう論旨は,理由がない。
 なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがあるが,この誤りによる処断刑の相違の程度,原判決の量刑が懲役年,執行猶予付きにとどまることを踏まえれば,上記誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

 起訴罪名は強要未遂になりました

https://nordot.app/951069657636421632?c=39546741839462401
ビデオ通話で下半身見せるよう要求 「リモート」強要未遂罪で男子大学生起訴
スマートフォンのビデオ通話機能を使って下半身を写して見せるよう要求したとして、強制わいせつ未遂の疑いで逮捕された兵庫県明石市の男子大学生(20)について、大津地検は7日までに、強要未遂罪に罪名を変更して起訴した。

 起訴状などによると、男子大学生は5月上旬、SNS(交流サイト)で知り合った会社員男性(25)のスマホに、男性の下半身の画像を送り、さらに「(インターネット上に)さらしていい?」などのメッセージを送って、ビデオ通話機能で下半身を写して見せるよう要求した、としている。

「ひそかに」(軽犯罪法1条23号)の意義

 ひそかに製造罪の関係で、窃視罪の定義も調べています

軽犯罪法第一条[軽犯罪]
 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

大塚仁 特別刑法 軽犯罪法p117 法律学全集42 
「ひそかに」とは、のぞき見られる者に知られないようにの意である。第三者に知られると否とを問わない。「のぞき見る」とは、隙間などから、こっそり見ることをいう。遠距離から望遠鏡で見る行為をも含むであろう)。

俵谷 軽犯罪法解説s57 p147
「ひそかに」とは、見られないことについて利益を有する者の承諾ないし推定的承諾なしにという意味である。現に見られないことの利益を有する者又はそれ以外の第三者に知られているかどうかを問わない。例えば、公衆便所の壁の隙聞などからのぞき見すれば、その直前、用便中の者に対して、のぞき見る乙とを予告したとしても、その承諾を得ていない限り本号に該当する。また、不特定多数人の面前で行っても、見られる者の承諾なしに行えば、本号に該当する。例えば、公衆浴場内に入浴客として入り、カメラをタオルで隠して他の入浴客の裸体を撮影すれば、本号にあたると解する。

法務省刑事局 軽犯罪法101問 p156
「ひそかに」とは、見られないことについて利益を有する者の承諾ないし推定的承諾を得ずに、という意味である。見られる者以外の者に知られるか否かは関係なく、不特定多数人の面前で行った場合でもこれに当たる

伊藤栄樹・勝丸充啓 軽犯罪法新装第2版p169
2) 『ひそかに』
「ひそかに」とは,見られないことの利益を有する者に知られないようにすることをいう。見られる者以外の者に知られると否とを問わない。不特定多数の人の面前で、行っても,見られる者に知られないようにすれば,「ひそかに」のぞき見たことになる。見られる者の承諾があれば,「ひそかに」には当たらないことはいうまでもない。

井阪博 実務のための軽犯罪法解説p160
オ「ひそかに」とは,見られないことについて利益を有する者の承諾ないし推定的承諾なしにという意味である。現に見られないことの利益を有する者又はそれ以外の第三者に知られているかどうかを問わない。例えば,公衆便所の壁の隙間などからのぞき見すれば,その直前,用便中の者に対して, のぞき見ることを予告したとしても,その承諾を得ていない限り本号に該当する。また,不特定多数人の面前で行っても,見られる者の承諾なしに行えば,本号に該当する。例えば,公衆浴場内に入浴客として入り, カメラをタオルで隠して他の入浴客の裸体を撮影すれば,本号に当たると解する。なぜなら,公衆浴場に入る以上,他の入浴客から裸体を見られることは当然に承諾していると認められるが,撮影されることまで承諾しているとは認められないからである。

植松正 軽犯罪法講義s23 p137
「ひそかに」とは、その場所の見られないことの利益を有する者に見付からないようにしてこっそりと行うことである

弁当切りの実例


改正刑法が施行されるとこんなことはできません。
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2022/07/08/221001


 執行猶予が取消されると懲役15月になるところを、慎重に審理してもらって、5月になりました。
 どんな情状弁護をしても、こんなことはできないので、争点作って争いました。
 国選弁護人には断られたようです。


H31.2  懲役10月 執行猶予3年
R3.5. 再犯
R3.7 公判請求
R4.7 懲役5月(実刑

被害児童が眠っていて抵抗できないことにつけ込み,その陰茎を執拗に時間をかけてもてあそぶなどし,更にはその様子を動画で撮影したという行為につき、強制わいせつ罪(176条後段)と、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪を適用した事例(高松地裁r04.3.18)

被害児童が眠っていて抵抗できないことにつけ込み,その陰茎を執拗に時間をかけてもてあそぶなどし,更にはその様子を動画で撮影したという行為につき、強制わいせつ罪(176条後段)と、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪を適用した事例(高松地裁r04.3.18)
 「5前二項に規定するもののほか」という法文から、姿態をとらせているときは、ひそかに製造罪ではなく、姿態をとらせて製造罪。
 あからさまにスマホをかざしているので、「ひそかに」と言えないのではないか 

7条
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 なお「判示第2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号」では、処断刑期が出てこないので、2項も挙げる必要があるという高裁判決がある。

刑事判決起案の手引
294
(8)他の規定をも掲げなければ法定刑が判明しない場合 (310 ないし312参照)
「……判示所為は刑法 158 条 1項, 1 5 5 条 1 項に該当する…」
「……判示所為は刑法 238 条, 2 3 6 条 1項に該当する……」

310
(6) 他の規定をも掲げなければ法定刑が判明しない場合には,当該他の規定をも記載しなければならない(もっとも,いわゆる 2項強盗 2項詐欺 2 項恐喝については,それぞれ刑法236 条 2 項, 246 条 2 項,249 条 2 項と記載するだけで,各条の 1 項を示さないのが普通である)。

高松地裁r04.3.18
(罪となるべき事実)
 第1 被告人は,A(当時12歳。氏名は別紙のとおり。)が13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和3年●月●日午前8時16分頃から同日午前8時25分頃までの間,a県b市〈以下省略〉の被告人方において,Aのズボンの中に手を入れ,その陰茎を手指でもてあそぶなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。
 第2 被告人は,A(当時12歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午前8時25分頃,前記被告人方において,Aに,被告人がAの陰茎を手指でもてあそぶ姿態をとらせ,これを動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画記録1点を同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
 第3 
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の行為 刑法176条後段
 判示第2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項2号
 判示第3の行為 
 刑種の選択 判示第2及び第3の各罪について、いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の全部執行猶予 刑法25条1項
 保護観察 刑法25条の2第1項前段
 (量刑の理由)
 本件は,小学校の教師である被告人が元教え子である13歳未満の被害児童に対し,わいせつな行為をするとともに,その様子を動画で撮影して児童ポルノを製造し,更には,拒否している被害児童に対し,連続して電話をかけ,また,メッセージを送信して電話に出ることを要求するなどして,ストーカー行為をした事案である。強制わいせつ及び児童ポルノの製造につき,被害児童は,教師である被告人を信頼して,被告人の自宅に宿泊していたのに,被告人は,その信頼を裏切り,犯行に及んだ。その態様は,被害児童が眠っていて抵抗できないことにつけ込み,その陰茎を執拗に時間をかけてもてあそぶなどし,更にはその様子を動画で撮影したものであり,被害児童の人格を一切無視した卑劣で悪質なものである。
 高松地方裁判所丸亀支部
 (裁判官)

青少年条例の年齢知情条項が主張されたときの反論

「~~の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、~~の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」という条項については、国法上非使用者に年齢確認義務がないことから、法律違反ではないかと考えています。
 淫行処罰規定についていえば、児童買春罪が故意犯とされたときから、年齢知情条項の合理性が疑わしくなりました。
 各県の青少年条例の解説書を分析しましたが、どういう場合に年齢確認義務が発生するのかも明らかになりませんでした。

 検事の論稿でも、性交類似行為が許される熟女風俗店の遊客がサービスを受けるのに戸籍謄本を確認する義務があるのかという疑問が呈されています(結論としてそれは児童買春罪なので過失は処罰されません)


www.google.com

第1 県条例条は憲法94条に反して無効である。 5
1  5
2 国法上の年齢確認義務 7
(1)刑法の場合 7
(2)児童淫行罪の場合 8
①東京高裁h7.5.31*2 8
②東京高裁s40.1.19*3 8
③大阪高裁S31.2.21*4 8
(3)児童買春罪の場合 9
②東京高裁s40.1.19 10
3 18歳未満への性的行為の規制について、有償・無償を問わず、使用者には年齢確認義務を負わせ、非使用者には年齢確認義務を負わせないというのが国法である。 11
4 児童買春罪と青少年条例の関係についての検察官の論稿 14
①山川景逸「いわゆる児童買春等処罰法と青少年保護育成条例の関係について」研修635号*5 14
②栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号*6 14
③島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」 研修652号**7 15
④藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護 16
5 まとめ 19
第2 県条例は過失がないことの立証責任を被告人に負わせるものであって、第一項に故意犯を規定しながら、第二項で年齢を知らなかったとしても処罰を免れず、過失がなかったことを行為者が証明して、はじめて処罰を免れるとしているのであるが、法律によらずに挙証責任を転換する点は、憲法31条、94条に反する。 20
1 検察官の「無過失の挙証責任が、行為者にあると主張する」という主張 20
2 立証責任が転換されるのか、挙証責任が転換されるのかは法文からは出てこない。 21
山口県青少年健全育成条例の解説 令和元年7月 21
3 各地の青少年条例をみても、挙証責任・立証責任の説明がマチマチであること 22
4 青少年条例違反につき、刑事訴訟法の原則である挙証責任が転換される理由がない 51
①山川景逸「いわゆる児童買春等処罰法と青少年保護育成条例の関係について」研修635号(弁1) 53
②栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号(弁2) 53
③島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」 研修652号(弁03) 53
④藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護 55
5 まとめ 56
第3 過失の青少年淫行罪における年齢確認義務の内容・程度と発生する場合が定まらないこと(憲法31条違反) 57
1 はじめに 57
2 各地の青少年条例における年齢確認義務の内容 57
①両親が示した戸籍謄本も疑えとするもの~香川県・埼玉県 57
②戸籍・住民票まで調査すべきとするもの~山形・福島・愛知・愛媛 60
ア 大阪高裁s46を引用して、この程度の年齢確認義務があると説明する~山形・福島・愛知・愛媛 60
イ 大阪高裁s46には言及しないが、戸籍・住民票まで調査する義務があるという自治体~群馬・埼玉・静岡・香川・沖縄 62
ウ その他公信力のある証明書での確認を求めるもの~宮城・茨城千葉・新潟・石川・兵庫・鳥取・鹿児島 66
③必ずしも証明書までは必要なく、干支や生年月日尋ねれば足りるとするもの~北海道・・岩手・秋田・富山・岐阜・滋賀・京都・奈良・和歌山・島根・岡山・広島・愛媛・高知・福岡・宮崎 69
④通常人ならば青少年でないかと疑いを持つようなときに、相手方に年齢を問う程度のものであり、身分証明書運転免許証等による年齢調査義務まで求めたものではないとするもの~山口県 75
山口県青少年健全育成条例の解説 令和元年7月 75
⑤ 過失犯を処罰しないもの(東京都) 76
⑥ 具体的内容が不明のもの~栃木・徳島・佐賀・熊本・大分 76
3 検察官の主張も根拠不足である。 78
(1)保護法益の理解を誤っている 80
最高裁判所判例解説刑事篇昭和60年度201頁福岡県青少年保護育成条例違反被告事件昭和60年10月23日高橋省吾 81
②亀山継夫「児童に淫行をさせる罪(その二)」研修347号P59(弁5) 82
(2)年齢確認義務に関する国法の規定を青少年淫行罪に類推する根拠がないこと 84
3 検事の論稿でも否定的であること 85
①山川景逸「いわゆる児童買春等処罰法と青少年保護育成条例の関係について」研修635号 86
②栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号 86
③島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」 研修652号 87
④藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護 88
4 ネット上の性交類似行為・わいせつ行為 89
(1)送信型強制わいせつ罪・非接触型児童淫行罪 89
④札幌地裁h29.11.15*12 チャットによる児童淫行罪 91
(2)児童ポルノ要求罪 91
児童ポルノ要求行為について過失処罰条項を適用しない自治体 91
児童ポルノ要求行為に過失処罰条項を適用する自治体 92
児童ポルノ要求行為の過失処罰条項一覧 92
5 終わりに 118
第4 過失がないこと 120
1 注意義務違反発生の根拠と注意義務の内容が定まらない 120
2 容姿風貌から青少年を疑えという点 120
(1)検察官は容姿・風貌等から、青少年と疑えと主張する。 120
(2)顔貌容姿からの年齢推定はできないこと 123
(3)裸体からの年齢推定 127
宮沢りえ サンタフェ 127
(4)裁判所の実務では、生体の場合は骨・歯牙で判断する 129
3 被告人の職業から重い注意義務を課されているか 130
②東京高裁s40.1.19 131
4 原判決 132
5 まとめ 133
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児童を熟睡・薬物・酒類で抗拒不能にして行う裸体撮影行為・0歳児の裸体撮影行為は、ひそかに製造罪(7条5項)か・姿態をとらせて製造罪(7条4項)か

児童を知的障害・熟睡・薬物・酒類で抗拒不能にして行う裸体撮影行為・0歳児の裸体撮影行為は、ひそかに製造罪(7条5項)か・姿態をとらせて製造罪(7条4項)か

1 説例
 こういう判決

第1 a(当時12歳)が知的障害のため抗拒不能の状態であることに乗じ,Hにわいせつな行為をしようと考え,令和4年8月19日知的障害を有し,抗拒不能となっていたHに対し,その下半身の着衣を脱がせ,その陰部を手指で弄ぶなどし,もってaの抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
第2 前記日時場所において,前記aが18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し

 児童が熟睡・薬物・酒類で抗拒不能だったり・0歳児だったりした場合。

 模型で説明すると、被告人は手持ちのカメラ・スマホで、被害児童の視野の範囲内で撮影しているので、客観的な行為態様としては、一般人基準では、一見して、撮影していることが明らかである。児童が覚醒すれば、児童も気付く。




 しかし、児童は抗拒不能になっている・0歳児童なので、カメラを認識していない。そこまで考慮すれば「ひそかに」とも言えそうである。

2 「ひそかに」の意義
 坪井検事によれば、「ひそかに」とは,「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」 という意味と解説されている。
 念頭に置かれるのは、浴室・トイレ盗撮であって、「この要件は,児童を描写する行為の客観的態様についての要件であって,児童の承諾の有無を問題とする要件ではなく,また,当該児童が当該描写を認識しているか否かも問わない。」「描写の対象となる児童に知られることのないような態様」に当たるかどうかは,一般人を基準に判断することとなる。」というのであるから、カメラは児童からみて隠されていなければならない。

坪井麻友美「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」(法曹時報66巻11号29頁)
イ要件
(ア) 「ひそかに」「ひそかに」とは,「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という意味であり,児童が利用する脱衣所に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例である。
この要件は,児童を描写する行為の客観的態様についての要件であって,児童の承諾の有無を問題とする要件ではなく,また,当該児童が当該描写を認識しているか否かも問わない。

(注18)
「描写の対象となる児童に知られることのないような態様」に当たるかどうかは,一般人を基準に判断することとなる。客観的にこのような態様に当たる場合,通常,被写体となる児童は描写されていることを認識・承諾していない場合が多いと考えられるが,たまたま児童が隠しカメラの存在に気付き,盗撮されることを内心認容していた場合や,撮られる間際にカメラの存在に気付いた場合なども盗撮製造罪は成立し得る。
(注19) 「ひそかに」の他法令での用例としては,軽犯罪法の窃視の罪(問、法第1条第23号「正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」)があるところ,同法上の「ひそかに」は,「見られないことの利益を有する者に知られることなく」という意味であり,見られる者の認識(承諾)を問題とする文言と解されている(注釈特別刑法第7巻,風俗・軽犯罪編111頁)。軽犯罪法の窃視の罪の保護法益はプライパシー権であって被害者の承諾があれば法益侵害がないと考えられるのに対し,児童ポルノの盗撮製造罪の保護法益及び処罰の趣旨は上記のとおりであるから,両法における「ひそかに」の文言の意義は異なるものと解される。

法務省刑事局付坪井麻友美「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律jについて
第7条第5項の「ひそかに」とは,どのような意昧ですか。
「ひそかに」とは,「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という意味であり,児童が利用する脱衣所に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例です。
この要件は,児童を描写する行為の客観的態様についての要件であって,児童の承諾の有無を問題とする要件ではなく,また,当該児童が当該描写を認識しているか否かも問いません(たまたま児童が隠しカメラの存在に気付き,盗撮されることを内心認容していた場合や,撮られる間際にカメラの存在に気付いた場合等も,盗撮製造罪は成立し得ます。)。
本項の児童ポルノの製造罪の趣旨は, Q11で述べたとおり,かかる行為が児童の尊厳を害し,児童を性的行為の対象とする風潮が助長され,抽象的一般的な児童の人格権を害するなどの点にあり,その保護法益が児童のプライパシー権そのものではない上,本項が,児童ポルノを製造する行為のうち,盗撮によるものを特に処罰することとした理由が,盗撮が行為態様の点において違法性が高いと考えられたことによるものであるため,盗撮製造罪は,児童の承諾の有無にかかわらず成立するのです。
月刊警察2014. 10 No.373

 月刊警察には児童側の内心は考慮しないって書いてある。


3 本件製造行為の態様
 これでは児童が熟睡等でカメラを認識していなかったとしても、坪井検事によれば、「この要件は,児童を描写する行為の客観的態様についての要件であって,児童の承諾の有無を問題とする要件ではなく,また,当該児童が当該描写を認識しているか否かも問わない。」のであれば、結局、児童の内心とか心理状態は考慮されず、熟睡等でカメラを見てなかったとしても、そういう児童の認識があるか否かを問わないのであるから、「描写の対象となる児童に知られることのないような態様」にあたらない。

 こういう態様





4 酒・薬物・熟睡で抗拒不能となった準強制わいせつ罪・準強姦罪・準強制性交罪の機会に児童ポルノが製造された場合は、ひそかに製造罪では処理されていないこと。
 児童が気付いていない撮影行為の典型例である、酒・薬物・熟睡で抗拒不能に乗じて姦淫・わいせつ行為をして、明らかにカメラを構えてその場面を撮影する行為は、被害者が気付いていなくても、姿態をとらせて製造罪である。ひそかに製造罪とされた裁判例はない。

 これもこういう撮影態様。




※準強制わいせつ罪・準強姦の場合
福岡地裁H24.3.2
さいたま地裁H22.8.5
釧路地裁帯広H24.3.19
鹿児島地裁川内H23.1.19
大分地裁H28.1.8
名古屋地裁一宮H25.10.30
横浜地裁H26.9.30
高松地裁H28.2.24
広島地裁福山H28.5.25
奈良地裁H29.11.27
神戸地裁尼崎H29.2.27
福岡地裁R3.5.19
静岡地裁沼津R3.6.14
千葉地裁松戸H28.1.13
大阪地裁R3.2.16

判例DBにあるのを紹介しておく

静岡地裁沼津R3.6.14
lex/db
【文献番号】25590381
7 被告人が勤務していたデイサービス施設の利用者であるBが知的障害のため心神喪失の状態であることに乗じ,同人を誘拐してわいせつな行為をしようと考え,同年6月25日午後3時15分頃,前記静岡県立b特別支援学校において,同校教員に対し,わいせつ目的を隠して,前記デイサービス施設まで送迎するかのように装い,その旨誤信した前記教員から前記B(当時13歳)の引渡しを受け,同人を前記学校敷地内に駐車中の自動車に乗車させて同車を発進させ,同人を同県富士市β△△△△番地の△△所在のd公園トイレまで連れ去るなどして同人を自己の支配下に置き,もってわいせつ目的で同人を誘拐した上,同日午後3時19分頃から同日午後3時21分頃までの間,同トイレ内において,同人に対し,同人の衣服を脱がせ,胸部等を露出させ,その胸部を手で触るなどし,もって人の心神喪失に乗じてわいせつな行為をし
第8 前記Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後3時19分頃,前記第7記載のトイレ内において,同人に対し,被告人の両腕に前記Bの両足を乗せ,同人の股間を開かせて陰部を露出させるなどの姿態をとらせ,これを動画撮影機能付きデジタルカメラを使用して動画撮影し,その動画データ1点を同デジタルカメラに装着されたSDカードに記録して保存し,もって衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識できる方法により描写した児童ポルノを製造し"

千葉地裁松戸H28.1.13
lex/db
【文献番号】25542107
第29 前記同様に考え,同年9月13日午後9時頃から同日午後9時30分頃までの間,前記当時の被告人方において,前記同様に応募してきた■(当時16歳)に対し,血圧測定のために必要だと嘘を言って睡眠改善薬及びアルコール飲料を飲用させ,その薬理作用等により同人を眠らせて抗拒不能の状態にさせた上,その頃から同月14日午前11時頃までの間,同所において,眠っていた同人の着衣をめくって露出させた乳首をなめ,同人のショーツを脱がせて陰部をなめるなどし,その様子をビデオカメラで撮影し,もって同人を抗拒不能にさせてわいせつな行為をし,
第30 前記同様に考え,同月18日午後5時頃から同日午後7時頃までの間,前記当時の被告人方において,前記同様に応募してきた■(当時16歳)に対し,血圧測定のために必要だと嘘を言って睡眠導入剤及びアルコール飲料を飲用させ,その薬理作用等により同人を眠らせて抗拒不能の状態に陥らせたところ,同状態に乗じて同人を姦淫しようという気を起こし,その頃から同月19日午前6時頃までの間,同所において,同人と性交し,もって同人の抗拒不能に乗じて姦淫し,
第31 前記同様に考え,同月18日午後5時頃から同日午後9時頃までの間,前記当時の被告人方において,前記同様に応募してきた■(当時16歳)に対し,血圧測定のために必要だと嘘を言って睡眠導入剤及びアルコール飲料を飲用させ,その薬理作用等により同人を眠らせて抗拒不能の状態にさせた上,同人が18歳に満たない児童であることを知りながら,その頃から同月19日午前6時頃までの間,前記当時の被告人方において,布団上で眠っていた同人の着衣をずらして乳房を露出させる姿態をとらせた上,乳房を手指でもみ,その様子を持っていた撮影機能付き携帯電話機で撮影し,その動画データ1点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し,もって同人を抗拒不能にさせてわいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,

大阪 地裁 R3.2.16
westlaw
文献番号 2021WLJPCA02166006"
第4【令和3年2月5日付訴因変更請求書による変更後の平成30年1月30日付け起訴状記載の公訴事実第1】 出会い系アプリで知り合ったA3(当時14歳)を姦淫しようと考え,仕事を紹介するための面接をするとして,同人を大阪府泉佐野市〈以下省略〉所在のホテル「c」208号室に同行させ,同所において同人に飲酒させた後,平成27年8月28日午前4時54分頃から同日午前5時50分頃までの間,同所において,飲酒の影響でベッドに横たわっている同人に対し,同人が被告人から仕事の紹介を受け得るものと誤信しているのをいいこととして,「受かりたいんやろ」「もうちょっとやん」「50稼げんねんで」等と言い,被告人との性交を拒否すれば仕事を得ることができないものと誤信させ,さらに,その身体の上に覆い被さり,その足をつかみ,「怒ってんねん,俺は」「うっさいな,こらあぁぁ」「きれんでマジで」「俺がなんぼ削る思てんねん」等と言い,手のひらでその身体を叩くなどしてA3を畏怖させ,同人を抗拒不能に陥らせて同人を姦淫し,さらに,同日午前6時27分頃から同日午前8時33分頃までの間,飲酒の影響で同人が飲酒酩酊し睡眠中のため抗拒不能であるのに乗じ,更に同人を姦淫し,
第5【平成30年1月30日付け起訴状記載の公訴事実第2】 平成27年8月28日午前5時12分頃から同日午後0時36分頃までの間,前記第4記載の場所において,A3(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同人にその陰部等を露出させ,その陰部等を被告人が触り,被告人を相手とする性交等に係る各姿態をとらせ,撮影機能付きスマートフォン1台及びデジタルカメラ1台で撮影し,その静止画データ2点を上記スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体に,その動画データ7点及び静止画データ28点を上記デジタルカメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカードに,それぞれ記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,"

※0歳児の場合
横浜地裁H28.7.20
 控訴審で、ひそかに製造罪の誤りじゃないかって主張しとけばよかったかな。東京高裁で「法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。」「法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。」って判示してもらえば解決できたかも。

westlaw
文献番号 2016WLJPCA07206016
横浜地裁H28.7.20
第9 被告人は,G(以下「G」という。)が13歳未満の女子であることを知りながら,平成25年8月25日頃,東京都内又はその周辺において,G(当時1歳)に対し,全裸の状態で両脚を開かせて陰部を露出させるなどの姿態をとらせ,その姿態をデジタルカメラで撮影し,その静止画データ10点を同デジタルカメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカード(平成28年押第40号符号4)に記録して保存し,もって13歳未満の女子にわいせつな行為をするとともに,衣服の全部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。【平成26年5月20日付け追起訴第2の関係】
 第10 被告人は,H(以下「H」という。)が13歳未満の男子であることを知りながら,平成25年10月23日頃,埼玉県内,神奈川県内又はその周辺において,H(当時生後4か月)に対し,下半身裸の状態で陰茎を露出させる姿態をとらせ,その姿態をスマートフォン付属のカメラで撮影し,その頃,埼玉県内,神奈川県内又はその周辺において,その静止画データ6点を同スマートフォンに装着した電磁的記録媒体であるマイクロSDカード(平成28年押第40号符号2)に記録して保存し,もって13歳未満の男子にわいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。【平成26年10月24日付け追起訴第1の関係】"

5 隠しカメラ設置して、わいせつ行為して、撮影した場合は姿態をとらせて製造罪。
 机の下にカメラを設置して、強制わいせつ罪(176条後段)した事案があって、
 当初の訴因はひそかに製造罪

第1  強制わいせつ罪(176条後段)
第2 前記日時場所において,前記aが18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し

 裁判所が気付いて、姿態をとらせて製造罪に訴因変更させて、姿態をとらせて製造罪で有罪判決。
 起訴検察官の見解を借りて、被告人控訴でひそかに製造罪が正解じゃないかという控訴理由を入れておいたが、屁理屈扱いされた。

阪高裁H28.10.26
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
判決
検察官北英知
弁護人(主任),奥村徹(いずれも私選)
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。
いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

 これが現時点の判例

児童ポルノ公然陳列罪が来たら、包括一罪を主張する。

植村判決に遠慮してるけど高裁レベルでは併合罪になりつつあるかな。
 

(2)高裁判例
①東京高裁h16.6.23*1植村判決(一審 横浜地裁h15.12.15*2)
 数名の児童の姿態であって、数回の陳列行為がある事件である。1審は、児童ごとに1罪とした。

横浜地裁h15.12.15
(法令の適用)
1 罰条  被害者ごと(画像が複数ある被害者については,その複数は包括して)に,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条1項
2 科刑上一罪の処理  刑法54条1項前段,10条(一罪として,犯情の最も重い別紙一覧表番号1の被害者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反罪の刑で処断)

 控訴審(植村立郎裁判長)は、犯意も行為も複数あるにもかかわらず、被害児童1名1罪とした原判決を修正して、「被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎない」と明確に判示している。

東京高裁h16.6.23
2所論は,要するに,原判決は,被害児童ごとに法7条1項に違反する罪(児童ポルノ公然陳列罪)が成立し,結局これらは観念的競合の関係にあるとして,その罪数処理を行っているが,本罪については,被害児童の数にかかわらず一つの罪が成立するというのが従来の判例であるから,原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第16)。
 そこで,本件に即して検討すると,法7条1項は,児童ポルノを公然と陳列することを犯罪としているから,同罪の罪数も,陳列行為の数によって決せられるものと解するのが相当である。確かに,所論もいうように,児童個人の保護を図ることも法の立法趣旨に含まれているが,そうであるからといって,本罪が,児童個人に着目し,児童ごとに限定した形で児童ポルノの公然陳列行為を規制しているものと解すべき根拠は見当たらず,被害児童の数によって,犯罪の個数が異なってくると解するのは相当でない。
 そして,本件では,被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎないものと解される。したがって,この点に関する所論は正当であって,被害児童ごとに本罪が成立するとした原判決の法令解釈は誤りである。

犯意が異なろうが、被害者が異なろうが、サーバーが一個であれば、一罪だというのが従前の高裁判例である。

②大阪高裁h15.9.18*3 (一審 奈良地裁h14.11.26*4)
 3回のダウンロード販売を「販売罪」とした原判決を破棄して「公然陳列罪」にした際、包括一罪とした。

阪高裁h15.9.18
(法令の適用)
第1の所為 児童買春児童ポルノ禁止法4条
第2の所為 包括して同法7条1項
児童買春児童ポルノ禁止法2条3項の各号に重複して該当する画像データがあることは所論指摘のとおりであるものの,検察官においてそれらの重複するものについてはより法益侵害の程度の強い先順位の号数に該当する児童ポルノとして公訴事実に掲げていることは明らかであって,包括一罪とされる本件において,それぞれの画像データが上記各号の児童ポルノのいずれに該当するかを個々的に特定する必要もない

名古屋高裁h23.8.3*5(一審 津地裁h23.3.23*6)
 被害者数名の場合でも、包括一罪と判示されている。

名古屋高裁h23.8.3
4 控訴理由④について
 論旨は,本件各画像の被写体となっている児童は3名であるから,本件は児童ポルノ公然陳列罪3罪の併合罪とされるべきであるにもかかわらず,これらを混然と1罪とした本件起訴状は訴因の特定を欠くものであって,この不備を補正させることなく,また公訴を棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続には法令違反があり,さらに,本件を1罪とした原判決には法令適用の誤りがある,というのである。
 しかしながら,本件犯行は,児童3名が1名ずつ撮影された本件各画像(4点の画像のうち2点は同一の児童が撮影されたものと認められる。)のデータを,約5分間の間に,インターネットのサーバコンピュータに記憶,蔵置させた上,本件各画像の所在を特定する識別番号(URL)をインターネットの掲示板内に掲示して児童ポルノを公然と陳列したというものであり,本件各画像が上記掲示板内の「・ロリ画像①」と題する同一カテゴリ内に掲示されているなど,各陳列行為の間に密接な関係が認められることからすれば,各児童に係る児童ポルノ公然陳列罪の包括一罪であると解するのが相当である。
したがって,本件起訴状は訴因の特定を欠くものではないから,原審の訴訟手続の法令違反をいう論旨は理由がない。なお,原判決は本件を単純―罪と判断したものと解されるが,処断刑期の範囲が包括一罪と同一であるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはないというべきである。

上告理由第2 法令違反・判例違反~公然陳列罪の罪数 5
1審判決 5
原判決 5
2 提供罪においては児童ポルノ罪の保護法益や行為の反復性から包括一罪となる。 7
鳥取地裁H13.8.28*3(販売罪) 7
大阪地裁H13.2.21*4(販売罪) 7
福岡高裁那覇支部h17.3.1*5(提供罪) 8
阪高裁R2.10.27*7(提供罪) 8
3 わいせつ・児童ポルノ公然陳列罪の高裁判例・裁判例(包括一罪) 9
(1)最高裁H13.7.16(わいせつ) 9
(2)高裁判例 11
①東京高裁h16.6.23*8(一審 横浜地裁h15.12.15*9) 11
②大阪高裁h15.9.18*10 (一審 奈良地裁h14.11.26*11) 13
名古屋高裁h23.8.3*12(一審 津地裁h23.3.23*13) 13
(3)地裁裁判例 14
東京地裁h151023*14 14
⑤大阪地裁h210116*15 14
奈良地裁葛城支部h261112*16 14
横浜地裁h290516*17 14
⑧立川支部H280315*18 14
4 併合罪説 15
5 法令違反 18
6 包括一罪の判例違反 19
東京高裁h16.6.23(一審 横浜地裁h15.12.15) 20
阪高裁h15.9.18 21
名古屋高裁h23.8.3 21