児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

乱交パーティー形式の児童ポルノ・児童買春事件

 個々のパーティーごとに検挙されてる感じです。
 参加者の有害支配罪は疑問です。
 参加者からの、児童とは知らなかったという相談が幾つかきています。

 児童買春罪の年齢不知の主張については、
福岡高裁那覇支部h31.11.14(無罪)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/345210
の弁護人の主張を参考にしてください。

      児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 福岡高等裁判所那覇支部判決/平成30年(う)第44号
【判決日付】 平成30年11月14日
【判示事項】 被告人が、出会い系サイトで知り合った被害児童(当時16歳。以下「被害児童」という。)が18歳未満であることを知りながら、同児童に金銭供与の約束をして性交し、児童買春をしたという公訴事実につき、被告人は被害児童が18歳未満である可能性を認識していたとして罰金50万円に処した原判決の事実認定には、論理則、経験則等に違反する事実誤認があるとして原判決が破棄され、無罪が言い渡された事例
【参照条文】 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4
       児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2-2
       刑事訴訟法397-1
       刑事訴訟法382
       刑事訴訟法336
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文

 原判決を破棄する。
 被告人は無罪。

https://news.yahoo.co.jp/articles/de4b3679097b8302ad9a4d1d039e02d757ae7433
医師や僧侶が“乱交パーティー”ホテルで女子高生にわいせつ行為
8/9(火) 21:47配信
34歳の医師の男が、いわゆる乱交パーティーに参加して女子高校生にわいせつな行為をしたとして逮捕されました。また、同じパーティーに参加していた僧侶など7人も書類送検されました。
児童買春や児童福祉法違反などの疑いで逮捕された容疑者、34歳。2020年に東京・千代田区のホテルで、当時17歳の女子高校生にわいせつな行為をした疑いがもたれています。
都内の病院で医師として働く容疑者が参加したのは、いわゆる“乱交パーティー”です。主催者とされるのが、ことし5月に逮捕されている容疑者、31歳です。
多くの人を集めて犯行に及んだその手口とは…
警察によりますと、容疑者は容疑者がSNSに書き込んだ「複数人でのわいせつ行為」、「女子高校生参加」などをにおわせるパーティーの参加募集に応募。現金2万5000円を支払いパーティーに参加し、わいせつな行為に及んだといいます。
パーティーには他にも足利市に住む37歳の僧侶ら7人も参加していました。
容疑者と7人は共謀して行為の様子を携帯電話のカメラで撮影し、その動画は後日、容疑者が見ていたといいます。
容疑者は調べに対し、「18歳未満と知っていたらパーティーに参加していない」と容疑を否認。参加した僧侶ら7人は容疑を認めているということです。
一方で、主催者の容疑者は女子高校生に報酬を渡さず、集めた参加費のほとんどをホテル代にあてていたとみられています。
容疑者の主催した“乱交パーティー”では、これまでに20人以上が検挙されていて、警察は詳しい経緯を調べています。

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合だとした大阪高裁R4.1.20の控訴理由

 また主張するので、継ぎ足し継ぎ足しでこれに書き足して行きます。処断刑期が変わることがあります。

 これくらい書くと観念的競合になります。
 送信させる型強制わいせつ罪の大阪高裁R3.7.14も観念的競合になっています。
 送信させる型の場合、強制わいせつ罪になるのは、撮影までだとしても(東京高裁h28.2.10)、やっぱり、犯人が画像を見てないのにわいせつ行為と言いづらいので、製造罪を観念的競合でくっつけて、同一の行為内で犯人が画像を受け取ったことも認定しておきたということなんでしょうなあ。

控訴理由第○ 法令適用の誤り~判示第1と第2の行為は観念的競合 104
1 はじめに 104
2 刑法54条1項の「一個の行為」の意味 105
3 罪数判断は、訴因の比較により、訴因外の事実は考慮されない。 114
4 児童ポルノ製造罪が立件されない場合の撮影行為の法的評価=わいせつ行為 115
東京高裁H22.3.1 116
仙台高裁H21.3.3 裁判例59 117
阪高裁h28.10.27 裁判例60 117
5 わいせつ罪に加え児童ポルノ製造罪を立件した場合の罪数処理 118
千葉地裁R03.5.28 裁判例69 119
①仙台高裁H21.3.3(裁判例59) 119
名古屋高裁h22.3.4(裁判例60) 121
③高松高裁h22.9.7(裁判例62) 122
④広島高裁h23.5.26(裁判例61) 122
⑤大阪高裁H23.12.21(原判決 神戸地裁H23.3.18)裁判例63 123
⑥大阪高裁h25.6.21(裁判例65) 123
⑦東京高裁h30.1.30(横浜地裁H28.7.20)(裁判例66) 124
⑧高松高裁h30.6.7(高松地裁h30.6.7)(裁判例67) 126
⑨大阪高裁r3.7.14(裁判例50) 128
6 撮影送信させる型の強制わいせつ罪と製造罪を観念的競合にする裁判例 130
7 媒体への記録行為の評価~1個の行為を書き分けても1個である 130
仙台高裁H21.3.3 裁判例59 133
7 最決h21.10.21(裁判例68 児童淫行罪と児童ポルノ製造罪)の射程について 133
8 犯意について~撮影送信させ記録する行為と撮影させる犯意は1個であること 135
9 保護法益の差について 135
10 「一事不再理効の範囲が広くなる」とかいう否定説の理由について 135
11 「わいせつ行為に通常撮影は伴わない」とかいう否定説の理由について 137
12 まとめ 138

「ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し,」というひそかに製造罪(7条5項)の公訴事実・罪となるべき事実(東京地裁)

 公開されているDBでもみうけられます。
 被告人が児童と性交して、性交する姿態を取らせていることが明らかです。

裁判年月日 令和 2年 3月 2日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令元(特わ)2383号 ・ 令元(特わ)2501号 ・ 令元(特わ)2825号 ・ 令元(特わ)3104号
事件名 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,児童福祉法違反被告事件
裁判結果 有罪 文献番号 2020WLJPCA03026004

 (罪となるべき事実)
 被告人は,●●●が運営する女子サッカーチーム●●●のコーチとして同チームに在籍する児童らに対してサッカーの指導等をしていたものであるが,
第1(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
 B(当時14歳ないし15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童が同チームに在籍していた当時はサッカーの指導等をし,同児童が同チームを退団した後も引き続き同児童の進路,学習等について助言をするなどしていた立場を利用して,
 1 平成30年4月7日午前10時頃から同日午後0時頃までの間に,東京都●●●事務所(以下「本件事務所」という。)内において,同児童に被告人を相手に性交させ,
 2 同年5月5日午後1時頃から同日午後4時頃までの間に,本件事務所内において,同児童に被告人を相手に性交させ,
 もって児童に淫行をさせる行為をし,
第2(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 前記第1の1及び2の日時場所において,2回にわたり,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し,撮影した動画データを自己が使用するパーソナルコンピュータに接続したUSBメモリ1個(令和元年東地領第4006号符号1)に記録して編集した上で保存し,もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより児童ポルノを製造し,

某地裁判決
第1 A(3)が13歳に満たない児童であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和4年7月16日午前3時36分頃、■■■■■■■■■■■■■■■■において、就寝中の同人に対し、下着をずらした上、直接その陰茎を手指で触り、もって13歳未満の児童に対し、わいせつな行為をし
第2 前記第1記載の日時場所において、同人が18歳に満たない児童であることを知りながら、同人に対し、ひそかに、被告人が前記Aの陰茎を露出させる姿態、被告人が前記Aの陰茎を手指で触る姿態を被告人の動画撮影機能付き携帯電話機で動画として撮影し、その動画データ3点を同機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを、それぞれ視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した

 何回も言いますけど、5項製造罪の法文は「5前二項に規定するもののほか、ひそかに~」となっているので、姿態とらせていると、5項ではなく4項の製造罪になります。
 「前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態」という点で、判示第2の公訴事実・罪となるべき事実自体から(判示第1の事実でも姿態とらせていることが明らかです)、被告人が1号・2号の姿態を取らせていることがわかりますので、5項製造罪は成立しません。理由齟齬・法令適用の誤りで破棄されます。控訴後の未決勾留日数(数ヶ月)が刑期に算入されると思われます。

 ひそかに・姿態とらせて製造した場合、ひそかに製造罪で起訴する検察官の訴追裁量があるのかというと、証拠上、姿態とらせてが弱い場合はひそかに製造罪を選択する裁量もあるでしょうが、公訴事実に堂々と「前記児童が被告人と性交する姿態,被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態」と姿態とらせた事実を記載して、姿態を取らせたことを立証してしまうと、「5前二項に規定するもの」という構成要件に該当してしまうので、5項製造罪は適用できません。
 5項は盗撮行為についての特別規定だという主張も考えられますが、「法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。」として大阪高裁ではねられました。

阪高平成28年10月26日
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。
いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。
平成28年10月31日
大阪高等裁判所第2刑事部
裁判長裁判官後藤眞理子
裁判官 杉田友宏

 大阪高裁h28の原審では、裁判官が罪名間違いに気付いて訴因変更が行われています。裁判所が気付かなければならない。

当初訴因
第2 前記日時場所において,前記児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵のハードディスクに記録して保存し,もってひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し

訴因変更請求
公訴事実第2中,「ひそかに,被告人が同児童の性器等を露出させた上,それを触る行為を」とあるのを,いずれも「同児童の性器等を露出させる姿態及び被告人が同性器等を触る行為に係る姿態をとらせ,これらを」に改め,「ひそかに他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び」とあるのを,いずれも削除し,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の後に, いずれも「及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であっで性欲を興奮させ又は刺激するもの」を加える。

 神戸地裁r01.6.28は、判例dbに姿態をとらせて製造罪の裁判例として紹介されていますが、当初訴因は性交・性交類似行為のひそかに製造罪で、論告求刑の後の弁論で「姿態をとらせているから、ひそかに製造罪は成立しない。無罪」と弁護人に指摘されるまで裁判所も気付きませんでした。後日訴因変更がありました。

被告人は
A(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 令和4年7月16日午後5時28分頃から同日午後6時34分頃までの間大阪市北区西天満ホテル201号室において,同児童に対し,現金1万円の対償を供与する約束をして,同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をし
第2 前記日時,場所において,ひそかに,前記児童が被告人と性交する姿態及び被告人の陰茎を口淫する姿態等をスマートフォンで撮影し,その動画データを同スマートフォン内の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

 わいせつ行為はしているが、撮影目的で姿態を取らせたわけではないという屁理屈も封じられています。カメラの前で性交等すれば、性交等の姿態を取らせたという評価になります。

札幌高裁H19.3.8(最決H21.10.21の控訴審判決)
児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人が警察官に対し,「(ビデオに撮影した)これらの場面はセックスの一連の行為の一場面であります」と述べているように,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。

七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。





検察官の訴追裁量・訴因選択権を理由に許容しようとしても、
「ひそかに、被告人がA(3)の陰茎を露出させる姿態、被告人が前記Aの陰茎を手指で触る姿態を」というのは、「陰茎を露出させる姿態、被告人が前記Aの陰茎を手指で触る姿態をとらせた」という事実も記載されていて、立証もされているので、4項製造罪が成立することも明らかです。裁判所は、「5前二項に規定するもののほか、」という法文がある以上、5項は適用できず、5項製造罪は不成立として、訴因変更させて4項製造罪を認めるしかないでしょう。検察官の訴追裁量を重視するなら、5項製造罪で無罪にするしかないと思われます。
阪高平成28年10月26日
法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。

東京都内では「年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせない。」

東京都内では「年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせない。」
 緩い方です。
 淫行・わいせつ行為には適用されません。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 令和元年8月
第28条
第9条第1項、第10条第1項、第1 1条、第13条第1項、第13条の2第1項、第15条第1項若しくは第2項、第15条の2第1項若しくは第2項、第15条の3,第15条の4第2項又は第16条第1項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第24条の4,第25条又は第26条第1号、第2号若しくは第4号から第6号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
【解説】
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物買受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の買受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。

 最判s34.5.11を引き合いに出している埼玉・静岡・香川が最も厳しい注意義務を課していると思われます。

埼玉県青少年健全育成条例の解説R3
用語の 説明
「過失がないとき」とは、単に青少年に年齢や生年月日を確認しただけ、又は身体の外部的発育状況等から判断しただけでは足り ず、学生証、運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の保護者 に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を講じて青少年の年齢を確認している場合をいう。
関係する判例( 「過失がないとき」
○ 昭和 34 年5月 11 日最高栽判決(児童福祉法違反)児童又はその両親が児童本人の氏名を偽り、他人の戸籍抄本をあたかも本人のごとく装って提出した場合、他人の戸籍抄本をあたかも児童本人のものであるかの使用することも職業の特殊性から当然あり得ることが容易に想像できるから、一方的な陳述だけで たやすく軽信することなく、他の信頼すべき客観的資料に基づいて調査をなすべきである。この調査を怠っている
場合、児童福祉法第 60 条第3項但し書きにいう年齢を知らないことにつき過失がない場合に該当しない。

昭和 38 年4月 13 日東京家裁判決(風適法違反)
風俗営業者は、 全て の場合に戸籍謄本等を提出させたり、戸籍の照会をなすべき義務まで負うものではないが、応募者全員に対し住民票その他氏名、年齢等を通常明らかにし得る資料の提出を求めるか、 全て の場合に、単にその氏名、年齢等を述べさせ若しくは記載させ、又はその容姿を 観察するだけでなく、進んでその出生地、いわゆる「えと」年、その他、親兄弟や学校関係等について適宜の質問を発して事実の有無を確かめるとかの方法を講ずべきであり、すくなくとも本人の言うところ等に多少でも疑問があれば、右のような方法の外、進んで戸籍の照会を行う等客観的に通常可能な方法をとって事実を確かめ、その年齢を確認すべき法的な注意義務を有するものと解する。"

単に青少年に年齢や生年月日を確認しただけ、又は身体の外部的発育状況等から判断しただけでは足り ず、学生証、運転免許証等の公信力のある書面、又は当該青少年の保護者 に直接問い合わせるなど、その状況に応じて通常可能とされるあらゆる方法を講じて青少年の年齢を確認している場合

静岡県青少年のための良好な環境整備に関する条例の解説r04
8 第8項関係
本項は、第14条の2(淫行及びわいせつ行為の禁止)、第14条の3(入れ墨の禁止)、第14条の4(着用済み下着等の譲受け等の禁止)、第14条の5(児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)、第15条(場所の提供及び周旋の禁止)の各規定に違反する行為を行った者は、青少年の年齢を知らなかったことを理由として処罰を免れることができない旨を定めた規定である。
これらの行為は特に悪質な行為であり、このような行為が年齢の不知をもって処罰を免れることは、本条例の目的である青少年の健全育成に反するため、青少年の年齢を知らなかったことに過失のないときを除き、処罰の対象とするものである。
(1) 「過失のない」とは、通常可能な調査が尽くされていると言えるか否かによって判断される。具体的には、青少年に対して、年齢、生年月日を尋ねたり、本人の容姿、体格等の身体的発育状況によって満18歳以上であると信じたというだけでは足りず、戸籍謄本、運転免許証等の客観的な資料に基づいて、通常可能な調査方法を講じ、更には父兄に直接問い合わせる等、年齢確認に万全を期したものと認められない限り、過失がないとはいえない。
(2) 無過失であることの挙証責任は、違反する行為を行った者にあると解される。
。具体的には、青少年に対して、年齢、生年月日を尋ねたり、本人の容姿、体格等の身体的発育状況によって満18歳以上であると信じたというだけでは足りず、戸籍謄本、運転免許証等の客観的な資料に基づいて、通常可能な調査方法を講じ、更には父兄に直接問い合わせる等、年齢確認に万全を期したものと認められない限り、過失がないとはいえない。

香川県青少年保護育成条例の解説R2
「過失がないとき」とは、社会通念上、通常可能な年齢確認が適切に行われているか否かで判断され、例えば、相手方となる青少年に年齢や生年月日、干支等を聞いたり、身分証明書の提出を求める等客観的に妥当な確認措置がとられたにもかかわらず、その青少年が年齢を偽ったり、虚偽の証明耆を提出する等行為者に過失がないと認められる場合をいう。

例えば、相手方となる青少年に年齢や生年月日、干支等を聞いたり、身分証明書の提出を求める等客観的に妥当な確認措置がとられたにもかかわらず、その青少年が年齢を偽ったり、虚偽の証明耆を提出する等行為者に過失がないと認められる場合

【参考判例】(昭和34年5月11日最高裁判決、要旨)
児童を接客婦として雇い入れる雇主は、児童、「両親がその実家で差し出した他人の戸籍抄本が児菫本人のものか否かを確かめるべきであり、そのために、単に児童、両親の一方的陳述だけで軽信することなく、他の客観的資料に基づいて調査をなすべきである。"

青少年に対する淫行勧誘行為を、非行助長行為の禁止(青少年条例)として処罰した事例(某地裁)

 刑法の淫行勧誘ではカバーできないということかな。
 対価を示す児童買春罪の予備未遂とかも行けそうですね。

刑法第一八二条(淫行勧誘)
 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦かん淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

罪となるべき事実
令和4年7月11日
■■■■■■において、
A(15)が
18歳に満たない青少年であることを知りながら
Aに対して 3回
LINEで
 セックスさせて
 セックスしたい
 でないと動画回す
などとのメッセージを送信して Aに閲読させて 
もって、青少年に対して みだらな性行為を行うように勧誘した
法令適用
県青少年条例違反 22条3項1号 18条の2第1項 18条1号

県青少年保護育成条例の解説
(有害行為のための場所提供又は周旋の禁止)
第18条何人も、次に掲げる行為が青少年に対してなされ、又は青少年がこれらの行為を行うことを知って場所を提供し、又はその周旋をしてはならない。
⑴ みだらな性行為又はわいせつな行為
⑵ 薬品類等を不健全に使用する行為
大麻、麻薬又は覚せい剤の使用
⑷ とばく、飲酒又は喫煙
⑸ 入れ墨を施す行為
⑹ 暴行、脅迫又は恐喝


(非行助長行為の禁止)
第18条の2 何人も、青少年に対し、前条各号に規定する行為、道路交通法昭和35年法律第1 0 5号) 第6 8条( 共同危険行為等の禁止) に規定する行為若しくは家出を行うよう勧誘し、あおり、そそのかし、若しくは強制し、又はこれらの行為を行わせる目的をもって金品その他の財産上の利益若しくは便宜を供与してはならない。

〔要旨〕
本条は、青少年に非行若しくは共同危険行為、家出を行うことを勧誘したり、非行集団に加入すること等を勧誘、強制する等の非行助長行為を禁止することにより、青少年の保護又は非行集団化することを防止しようとする規定である。
〔解説〕
本条は、心身とも未熟で成長途上にある青少年に対する非行助長行為を禁止し、刑法その他の関係法令では規制し得ない反社会的行為から青少年を保護しようとするものである。
第1項
1 「何人」の意義については、第9条解説参照
2 「勧誘」とは、青少年に対し自己の欲するとおりのある種の行為を行うように勧めることをいう。
3 「あおり」とは、特定の行為を実行させる目的をもって、文書、図画、又は言動によって青少年に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ、又は既に生じている決意を助長させるように勢いのある刺激を与えることをいう。
4 「そそのかし」とは、青少年をして特定の行為を実行させる目的をもって、おだてたり甘言を用いて同人等にその実行の決意を生ぜしめるに足りる行為を行うことをいい、その実行行為にでる危険性がある限り、現に実行の決意を生じたかどうかを問わない。

師弟関係の児童淫行罪につき「同種事案の量刑傾向を参照すると、学校の教諭による教え子1名に対する同様の犯罪行為について、刑の執行が猶予されているものが複数見受けられる」という量刑理由(福岡地裁R4.1.31)

 どちらかといえば実刑の方が多い。
 児童淫行罪って売春・風俗関係が9割で、それが執行猶予になるので、師弟関係が6割実刑・親族関係が9割実刑になるのが知られていない。

児童福祉法違反被告事件福岡地判令和4年1月31日D1-Law.com判例体系〔28300572〕
被告人を懲役2年6月に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、合同会社Bの代表社員で、同社が経営する指定障害児通所支援事業所である放課後等デイサービス「C」において、自らも障害児の療育に携わっていたものであるが、同施設に通所していたA(その氏名は別紙記載のとおり)が18歳に満たない児童であることを知りながら、自己の立場を利用し、令和元年8月15日午後6時頃から同月16日午前11時頃までの間に、福岡県(以下略)の被告人方において、同児童(当時13歳)に自己を相手に性交させ、もって児童に淫行をさせる行為をしたものである。
(証拠の標目)
・被告人の公判供述、検察官調書(証拠等関係カード(乙)番号2)
・検証調書(証拠等関係カード(甲)番号1)、被害児童使用スマートフォンにかかる写真撮影報告書(写真フォルダ内画像)(同2)、捜査関係事項照会回答書(同3)、Aの検察官調書(同5。ただし、同意部分に限る。)
(法令の適用)
罰条 児童福祉法60条1項、34条1項6号
刑種の選択 懲役刑を選択
刑の全部の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
 判示施設は、児童福祉法に基づき、県知事の指定を受け、障害のある児童を通所させて支援していた。被告人は判示施設の実質的経営者であった。被害児童は、小学5年生の時から判示施設に通い、被告人に宿題を見てもらうなどしていた。被告人は、被害児童が中学1年生の時に、被害児童に迫ってキスをした上、遅くとも被害児童が中学2年生になった春頃から、被害児童と性交をするようになり、その年の夏に本件犯行に及んだ。被告人は、何年もの間、被害児童から「先生」と呼ばれる立場にあったことを利用し、妻子がいるにもかかわらず、「好きだ」「愛している」などと甘言を用いて働きかけ、被害児童をその気にさせ、被告人との性交を重ねさせる中で本件犯行に及んだものであって、法律的にも道義的にも厳しい非難を免れない。被害児童は、心を深く傷付けられ、今も苦しんでおり、被告人に対する厳重処罰を希望している。本件は、児童福祉法の理念をないがしろにするものであって、実刑を求める検察官の論告にも理由がないわけではない。
 しかしながら、同種事案の量刑傾向を参照すると、学校の教諭による教え子1名に対する同様の犯罪行為について、刑の執行が猶予されているものが複数見受けられる。そこで、これを踏まえて本件における実刑選択の適否を判断するに当たり、その他の事情を見ると、被告人が事実を認めて反省の態度を示したこと、受領を拒絶されたとはいえ、150万円の被害弁償の申し出をしており、私選弁護人が弁論で今後も示談に向けた話し合いを継続する旨述べたこと、被告人に前科はなく、被告人の妻がこれからも被告人を支える旨述べたこと、犯行後起訴前に判示施設の経営から退いたことなどの事情があり、本件が同種事案の中で特に悪質性が高いものとまでは認められない。
 以上によれば、被告人に対しては、主文の懲役刑を科して、被害児童の心身の健やかな成長及び発達を大きく損なった責任の所在を明らかにするとともに、その刑の執行を5年間猶予し、社会内において反省と被害弁償の努力を伴う更生の機会を与えるのが相当である。
 よって、主文のとおり判決する。
(求刑 懲役2年6月の実刑
(弁護人の意見 執行猶予付き判決)
第1刑事部
 (裁判官 柴田寿宏)

刑法改正によって弁当切りはできなくなります。関連する刑法はr7.6.1から施行されます。

 執行猶予中に別件を犯して公判を受けることになった場合、公判を慎重にすすめて執行猶予を経過させるという手法(弁当切り)がありましたが、新設された刑法27条2項によって、執行猶予が切れなくなりましたので、そういう手法は使えなくなります。

改正前
第二七条(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
1 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

R4改正後(施行日は公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日。)

第二七条(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
1 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
2 前項の規定にかかわらず、刑の全部の執行猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る。)について公訴の提起がされているときは、同項の刑の言渡しは、当該期間が経過した日から第四項又は第五項の規定によりこの項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間(以下この項及び次項において「効力継続期間」という。)、引き続きその効力を有するものとする。この場合においては、当該刑については、当該効力継続期間はその全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなす。
3 前項前段の規定にかかわらず、効力継続期間における次に掲げる規定の適用については、同項の刑の言渡しは、効力を失っているものとみなす。
一 第二十五条、第二十六条、第二十六条の二、次条第一項及び第三項、第二十七条の四(第三号に係る部分に限る。)並びに第三十四条の二の規定
二 人の資格に関する法令の規定
4 第二項前段の場合において、当該罪について拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、同項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、当該罪が同項前段の猶予の期間の経過後に犯した罪と併合罪として処断された場合において、犯情その他の情状を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。
5 第二項前段の場合において、当該罪について罰金に処せられたときは、同項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
6 前二項の規定により刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

弁当切りが封じられる理由は「執行猶予制度の趣旨は、執行猶予の言渡しの取消しによる心理的強制により改善更生、再犯防止を図ることにあるところ、犯罪の発生から判決が確定するまでに一定の期間を要することに照らすと、猶予の期間の満了が近づくにつれて、再犯に及んでも執行猶予の言渡しを取り消されない可能性が高まることとなり、執行猶予の趣旨、機能が全うできないことになりかねないところでございます。そもそも、先ほど申し上げた執行猶予制度の趣旨に鑑みれば、猶予されていた当初の刑を執行すべきかどうかを判断する上で重要なのは、再犯についての有罪判決が猶予の期間内に確定したことではなく、猶予の期間内に再犯に及んだことであると考えられます。そこで、今回の法改正では、刑の執行猶予期間の経過後にもその刑の執行ができるようにするものでありまして、これにより、猶予の全期間を通じて執行猶予の言渡しの取消しによる心理的強制により改善更生、再犯防止を図るという執行猶予制度の機能が十全に発揮されることになるものと期待しております。」と説明されています

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120815206X01720220610/248
248 東徹
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○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 先ほどの刑法の一部を改正する法律案、これは成立いたしましたけれども、実はちょっと確認したいことがまだ何点かありまして、三点ちょっと確認をさせていただきたいと思いますので、お願いをいたします。
 再度の執行猶予についてお伺いをさせていただきます。
 今回の法改正で、保護観察付きの執行猶予中に再び罪を犯した場合でもまた執行猶予を付けることが可能となりました。保護観察付きの執行猶予中の再犯者の割合、これは令和二年で二三・六%でありまして、保護観察が付いていない執行猶予を受けている者よりも再犯率が高いということなんですね。
 今回の改正によって再犯率の高い者に更に執行猶予を付けられるようにすれば、また新たな犯罪が生まれてしまうのではないかというふうな思いもありますが、この点はどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
249 川原隆司
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○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
 現行法上、保護観察付執行猶予中の再犯につきましては、再度の執行猶予を言い渡すことができず、いわゆる実刑に処さなければならないこととされております。その理由といたしましては、保護観察付執行猶予の仕組みが設けられた当時、裁判所の認定により、再犯のおそれがあり、適当な指導監督、補導援護を加える必要があるということで保護観察に付された者に、再び犯罪を犯した場合には重ねて執行猶予はできないこととするなどと説明されていたものと承知をしております。
 しかしながら、保護観察付執行猶予中に再犯に及ぶ事案には様々なものがございまして、再犯に及んだというだけで社会内処遇によることがおよそ不適当であるとは言えず、実刑に処するよりも改めて保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資する場合もあると考えられるところでございます。
 そこで、今回の法改正におきましては、実刑に処するよりも社会内処遇を継続する方が改善更生、再犯防止に資するという場合に限って、裁判所の判断により再度の保護観察付執行猶予を言い渡す余地を残す趣旨で、保護観察付執行猶予中の再犯についても再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができるようにするものでございます。
 その上で、今回の法改正におきましては、再度の保護観察付執行猶予を言い渡された者に対する保護観察につきましては、再犯に結び付いた要因の的確な把握に留意して実施しなければならず、保護観察所の長は、保護観察の開始に際し、再犯に結び付いた要因を的確に把握するため、少年鑑別所の長に対し、再保護観察付執行猶予者の鑑別を求めることとするなどの特則を設け、その改善更生、再犯防止に万全を期することとしているものでございます。
 したがいまして、保護観察付執行猶予中の再犯につき、再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができるようにしたからといって、実際に再度の保護観察付執行猶予を言い渡された者が再犯に及ぶおそれが更に増大するものとは考えていないところでございます。
250 東徹
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○東徹君 次、現在の仕組みでなんですけれども、単純な執行猶予中に再び罪を犯した場合に、更にこれ執行猶予が付けることができますね。二度目の執行猶予の際にまた罪を犯してしまった人の割合、これ法務省は何か把握していないというふうに聞いておるんです。二度目の執行猶予の制度が新たな犯罪を生んでいないのかどうか、これ検証するためにはこの数字というのは把握しておく必要があるんではないかと思いますが、いかがですか。
251 宮田祐良
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○政府参考人(宮田祐良君) お答え申し上げます。
 現在、保護観察付全部執行猶予者の成り行きを見るということで、再処分率、保護観察を終えた者の中で刑事処分に付された者、起訴猶予の処分も含みますけれども、そういった者の占める比率を再処分率ということで把握しておりまして、毎年把握しておりますものを毎年公表しているところでございます。
 今回新たな制度になりますと、保護観察付全部執行猶予中の者の再犯によって再度の保護観察付執行猶予も付されると、保護観察付全部執行猶予が二つ持つような新たなケースも生まれるということもございますので、施策の有効性を確認する観点から、どのようなデータを把握するかも含めまして、効果検証の在り方についてはしっかり検討していきたいと思います。
252 東徹
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○東徹君 そこは必要なんじゃないですかねというふうに思うんですね。
 単純な執行猶予中に再び罪を犯した場合にこれ執行猶予を付けることができる。二度目の執行猶予の際にまたこれ罪を犯してしまった人の割合、僕はやっぱりここもきちっとデータとして把握しておかないと、今回のことも含めてやっぱり議論しづらいなと、こう思ったので、これを聞かせていただいたということです。
 もう一点、法務省から事前にこれ確認したところでは、例えば窃盗などで保護観察付きの執行猶予中の者が自動車の運転中、過って人をはねてけがをさせてしまった場合、これ業務上過失傷害罪に問われる可能性がありますが、過失犯なのに執行猶予を付けられないのはどうしたものかと。まあ、判断があるというふうに聞いております。であるならば、過失犯だけに限定して二回目の執行猶予を付けるようにしたらどうなのかなと思うんですけれども、その点についてはいかがだったんでしょうか。
253 川原隆司
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○政府参考人(川原隆司君) 委員御指摘の改正は、保護観察付執行猶予中の再犯については実刑に処すべきものとされてきたことを踏まえた上で、保護観察付執行猶予中に再犯に及ぶ事案には様々なものがあり、実刑に処するよりも保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資する場合があることから、こうした場合に限り裁判所の判断により再度の保護観察付執行猶予を言い渡す余地を残そうとするものでございます。このような趣旨は、再犯が過失犯である場合だけでなく、故意犯である場合にも妥当し得ると考えられるところでございます。
 もとより、個別の事案ごとの裁判所の判断によることとなるところでございますが、例えば法制審議会の部会における議論では、故意犯である薬物使用の罪で保護観察付執行猶予中の者が薬物再乱用防止プログラムを熱心に受講し、薬物の使用を絶っていたものの、プログラム修了前に衝動的に薬物を使用してしまい、その直後に真摯に反省して自首した事案が挙げられているところ、このような事案において、保護観察付執行猶予を言い渡して社会内処遇を継続する方が罪を犯した者の改善更生、再犯防止に資すると判断される場合には裁判所が再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことを可能にすることが必要であると考えられるところでございます。そのため、本制度の対象犯罪を過失犯に限定することとはしていないところでございます。




https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120815206X01620220607/47
047 安江伸夫
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○安江伸夫君 大変参考になる御意見、ありがとうございました。
 済みません、今井参考人にもう一問御質問させていただきたいと思いますが、今回、再度の執行猶予についての適用範囲が長くなります。一年から二年にということであります。これは、例えば三年までという検討もあったかというふうに思いますけれども、今回二年という枠に落ち着いたその背景について御意見を賜ればと思います。
048 今井猛嘉
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参考人(今井猛嘉君) そこは、恐らく現状認識によるのだろうと思います。
 一年、二年、三年、そういう選択肢は紙の上ではできるのでございますけれども、再度の執行猶予というのはなかなか例外的なものでありますし、その際に、初度の執行猶予が守れなかった人々に対する対処としては、執行猶予の効果を期待してはいますけれども、そう簡単に認められるものなのかなという現状認識もあったところで二年になったのではないかと思います。
 ですから、これも広い意味ではデータベースの考慮の働いた結果だと理解しております。

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120815206X01520220602/18
018 清水真人
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○清水真人君 一番の目的は、しっかりと矯正処遇に生かしていくということでありますし、受刑者の立ち直りにつなげていくということであると思いますから、どのような形がベストなのかということについては速やかに判断をして検討を進めていただきたいということを要望したいと思います。
 続いて、執行猶予の拡充についてお伺いをいたします。
 ちょっと一点飛ばしまして、現行法上、執行猶予期間中に再犯を犯した場合について、その執行猶予期間中に罰金以上の有罪確定しなければ刑の言渡しの効力が失われるわけでありますが、改正案では、再犯した罪の有罪が確定するまでに先に犯した罪の執行猶予期間が終わっても、執行猶予期間中に公訴がされていれば、なされていれば効力継続期間となり、刑の言渡しについて効力が続くこととされているところでありますが、この改正によりどのような効果が生まれると期待をしているのか、お伺いいたします。
019 川原隆司
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○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
 現行法上、執行猶予の期間内に再犯に及んだことに基づいて執行猶予の言渡しを取り消すためには、猶予の期間内に有罪判決が確定することが必要とされております。
 もっとも、執行猶予制度の趣旨は、執行猶予の言渡しの取消しによる心理的強制により改善更生、再犯防止を図ることにあるところ、犯罪の発生から判決が確定するまでに一定の期間を要することに照らすと、猶予の期間の満了が近づくにつれて、再犯に及んでも執行猶予の言渡しを取り消されない可能性が高まることとなり、執行猶予の趣旨、機能が全うできないことになりかねないところでございます。
 そもそも、先ほど申し上げた執行猶予制度の趣旨に鑑みれば、猶予されていた当初の刑を執行すべきかどうかを判断する上で重要なのは、再犯についての有罪判決が猶予の期間内に確定したことではなく、猶予の期間内に再犯に及んだことであると考えられます。
 そこで、今回の法改正では、刑の執行猶予期間の経過後にもその刑の執行ができるようにするものでありまして、これにより、猶予の全期間を通じて執行猶予の言渡しの取消しによる心理的強制により改善更生、再犯防止を図るという執行猶予制度の機能が十全に発揮されることになるものと期待しております。




法制審議会の議論も少年法と並行して行われたので注目されませんでしたね

法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者 処遇関係)部会第1分科会第1回会議配布資料
https://www.moj.go.jp/content/001236213.pdf
執行猶予期間中の再犯について,執行猶予期間経過後であっても一定の
条件の下で取り消し得るものとすること


https://www.moj.go.jp/content/001243803.txt
法制審議会
少年法・刑事法
(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会
第1分科会第3回会議 議事録
○橋爪幹事 意見要旨4番の点について,若干思うところを申し上げたいと存じます。
  以前から何度も申し上げておりますけれども,執行猶予の取消しの問題につきましては,執行猶予期間中に再犯を犯したという事実が決定的でありまして,判決の確定の時期それ自体は,あまり意味があることではないと思います。具体的には執行猶予期間中に再犯を犯し,かつその事実について執行猶予期間中に公訴提起が行われた場合については,判決確定が執行猶予期間経過後であっても,執行猶予を取り消し得るような制度を設ける可能性については検討する必要があると考えております。
  もっとも,公訴提起が行われましても,判決確定までは無罪推定原則が及んでおりますので,無罪推定原則との関係で,公訴提起を要求する点については理論的な検討が必要であると個人的には考えておりまして,第1回の分科会でもその旨申し上げたところでございます。
  その点について,私なりに改めて考えてみたのですけれども,次のような理解からは,正当化が可能であるように思われますので,若干思うところを申し述べたいと存じます。
  飽くまでも執行猶予の取消しにおきましては,執行猶予期間中に再犯を犯したという事実,そして,その事実が執行猶予期間の経過の前後を問わず,刑事裁判において認定され,確定したという事実が決定的に重要であるように思われます。
  したがいまして,理論的には,執行猶予期間中に公訴の提起があったことは,本来要件とする必要がないはずです。しかしながら,この要件を外しますと,執行猶予期間中の再犯については,公訴時効が完成しない限り,いつになっても執行猶予が事後的に取り消される可能性が残ることになりますので,対象者の法的地位が極めて不安定になります。
  そこで,言わば政策的な観点から,時間的な限定を設定すべく,執行猶予期間中に公訴の提起があったことを要件とするという理解が考えられるように思われます。つまり,本来必要でないところを,政策的な観点,あえて申しますと,対象者に対する恩恵的な観点から要件を科すと考えますと,無罪推定原則との関係で抵触は生じないと考える余地があるように思います。








「刑の全部の執行猶予制度の在り方」についての意見要旨
https://www.moj.go.jp/content/001240191.pdf
4 執行猶予期間経過後の執行猶予の取消し
○ 執行猶予中の再犯について,再犯事件の判決確定が執行猶予期間経過後であっても,一定の条件の下で取り消し得るものとするべきではないか。
○ 執行猶予期間経過後に執行猶予を取り消し得るものとすることについて,理論面からの検討が必要。
○ 保護観察付き執行猶予を執行猶予期間経過後に取り消した場合には,経過した執行猶予期間分を考慮して早期に仮釈放を認める仕組みとするべきではないか。




法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第1分科会第4回会議配布資料
https://www.moj.go.jp/content/001246043.pdf
第4 猶予期間経過後の執行猶予の取消し
考えられる制度の概要
刑の全部の執行猶予の期間内に更に罪を犯した場合について,猶予期間経過後であっても,執行猶予の言渡しを取り消して刑を執行することができるものとする。
【検討課題】
○ 必要性
○ 要件
・ 他の罪について有罪判決が確定したこと
・ 猶予の期間内に公訴が提起されたこと
・ その他
○ 猶予期間経過の効果(刑法第27条)との関係
○ 執行猶予の取消しの在り方
・ 必要的取消しとするか裁量的取消しとするか
○ 併せて以下の仕組みを設けるか否か
・ 刑の一部の執行猶予(刑法第27条の2),仮釈放(刑法第28条)の期間内に更に罪を犯した場合,期間経過後であっても同様に刑を執行することができる仕組み
・ 猶予期間経過後に執行猶予を取り消した場合には,(経過した)猶予期間分を考慮して早期に仮釈放を行う仕組み


https://www.moj.go.jp/content/001251519.txt
法制審議会
少年法・刑事法
(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会
第1分科会第4回会議 議事録
 それでは次へいきまして,「第4 猶予期間経過後の執行猶予の取消し」について意見交換を行いたいと思います。
  この制度については,検討課題の項目数が多いので,まずは「必要性」と「要件」,「執行猶予期間経過後の効果との関係」について意見交換を行い,その後に残りの検討課題について意見交換を行いたいと思います。では,「必要性」と「要件」,「猶予期間経過の効果との関係」について御意見がある方は挙手をお願いいたします。
○加藤幹事 第4の検討課題のうち,「必要性」と「要件」の点について申し上げたいと思います。
  まず,考えられる制度の概要に書いてあるような仕組みの必要性としては,端的に執行猶予の期間内に罪を犯した場合に,裁判の確定時期によっては執行猶予が取り消せなくなるという事態を解消する必要があると考えられることによると思っています。
  また,次の要件については,これまでの分科会において御意見が述べられていましたように,再犯を理由とする執行猶予の取消しにおいて実質的に重要なのは,執行猶予の期間内に罪を犯したという事実であり,かつ,そのことが裁判において認定確定されたことなので,その有罪判決の確定が執行猶予期間経過後であっても執行猶予を取り消すものとすることが考えられることになろうと思われます。
  もっとも,執行猶予が取り消され得る状態が余りに長期にわたることによって執行猶予者の地位が著しく不安定となることは防止しなければなりませんので,政策的に執行猶予を取り消すための時的限界を画する条件を設ける必要があろうと思われます。
  そして,その再犯について猶予の期間内に公訴提起がなされることを要するものとすれば,そういった要請を満たすこともできると考えられますので,そのような要件を設けるのが相当ではないかと考えます。
○今井委員 ただいまの加藤幹事とほぼ同じ意見でございますが,「必要性」については重なりますので割愛させていただきまして,「要件」の点で,少し意見を申し上げたいと思います。
  今御指摘もありましたように,このような制度を作ることは必要だと思いますけれども,他方で対象となる方を,いつか執行猶予の言渡しが取り消されるのだろうかという不安定な状態に長期間置いておくことは相当ではないと思います。
  そこで考えられますのが,裁判所あるいは検察官の主導によりまして,このような結果を導くという制度なのであります。例えば裁判所が執行猶予を取り消すことができるという期間を制限するということは,理屈の上では考えられるわけですけれども,先ほど福島幹事からも一般的なお話があり,私も,執行猶予の当否等を考えるのは極めて個別の事案に即した判断であろうと思いますので,裁判所が執行猶予を取り消すことができる期間を一律に制限してしまうということは適切ではないと思われます。
  そもそも執行猶予の取消しは,裁判所の職権判断によるものではなく,検察官の請求に基づいて行われているものですから,検察官がそのような請求をできる期間を一定のものに限定することによって,対象者の方をいつまでも不安定な状態に置くことを回避するのが,現行法を踏まえた上での考えられる制度ではないかと思います。そのような形で検討されてはどうかと思うところでございます。
○橋爪幹事 私の方からは3点目ですが,猶予期間経過の効果の関係で1点申し上げたいと存じます。
  刑法第27条との関係が重要な問題になってくるかと存じます。刑法第27条によれば,執行猶予期間の経過によって,刑の言渡しは効力を失うことになっておりますので,猶予期間中に公訴が提起されても,有罪判決の確定に至らない場合については,猶予期間の経過をもって刑法第27条が適用されまして,刑の言渡しは効力を失います。このように,刑の言渡しが一旦効力を失ったにもかかわらず,その後,有罪判決の確定によって執行猶予を取り消すことが理論的に可能かということが問題になると思われます。
  この点につきましては,既に本分科会の第1回の会議で,改正刑法草案に係る法制審議会刑事法特別部会の議論におきまして二つの方向の議論があったことの御紹介があったかと存じます。すなわち,第1に執行猶予期間の満了によって,一旦刑の言渡しの効果は消滅するが,執行猶予の取消しによって,これが復活するという考え方。第2に,公訴提起によって執行猶予期間が延長されるという考え方でございました。この点につきまして,私なりに更に考えたことを申し上げたいと存じます。
  まず,後者の理解でございます。公訴提起によって猶予期間が延長するという理解でございますが,やはり公訴提起の段階においては,無罪推定が及ぶ以上,公訴提起を根拠として執行猶予期間の延長という不利益処分を科すことを正当化することは困難であると考えます。
  では,前者のように執行猶予期間経過後であっても,執行猶予の取消しによって刑の言渡しの効力が復活するという理解が可能でしょうか。これについては,一旦効力を失ったものが事後的に復活するという説明に若干の違和感はありますが,刑法第27条は執行猶予期間中に公訴提起された事件について,有罪判決が確定しないことを前提とした,言わば条件付き,留保付きの規定であると考えた上で,かつその旨の明文の規定を置くのであれば,一旦効力を失った刑が事後的に復活するという説明も可能であるようにも思います。もっとも個人的には次のような説明も可能であるように思いますので,問題提起としてこの機会に申し上げたいと存じます。
  言わば,刑法第27条の趣旨を限定する解釈です。すなわち刑法第27条は,刑の言渡しに伴う不利益の解消に向けられた規定,具体的には刑法第25条第1項第1号の該当性を否定し,また資格制限の効果を否定するための規定であって,有罪判決に基づく刑の執行可能性それ自体を全面的に排除する規定ではないという理解です。
  このような理解によれば,執行猶予期間が満了したとしても,それは執行猶予の取消しがない限りにおいては,刑が執行されることがないことを意味するにすぎないことから,事後的に有罪判決が確定した場合については,刑法第27条の規定にかかわらず執行猶予を取り消し,刑を執行することが可能になると思われます。すなわち,刑の執行を受けることがないという法的効果は,執行猶予期間の経過だけではなく,執行猶予の取消しがあり得ないという事態が確定した場合に,初めて生ずるという理解です。
  やや技巧的な印象もございますけれども,理論的にはこういった説明も十分に可能であると考える次第です。
  ただ,この場合には,刑法第27条の規定形式,内容について修正が必要ではないかという点も問題になるようにも思われますので,一つの考え方として,この機会にあえて申し上げる次第です。
○佐伯分科会長 「必要性」,「要件」,それから「猶予期間経過の効果との関係」について,ほかにはいかがでしょうか。
  それでは,今の三つの項目以外の検討課題について御意見がある方は挙手をお願いいたします。
○青木委員 そもそも,このような必要性がないとは言いませんけれども,こういう制度がいいのかどうかということに関しては,それこそかつての議論でもいろいろ問題があったところだろうと思いますので,それの良し悪しはちょっと置いておいての話なのですけれども,必要的取消しか裁量的取消しかという点に関してですけれども,そもそも再犯の場合に必要的取消しである必要があるのかというのも,本来は考えるべきところなのだろうと思います。平野先生が書かれている本などを読みましたところ,必ずしも猶予されていた刑の執行をしない法制もあるということが書かれておりまして,これでいいますと執行猶予中の再犯は刑務所,施設収容になるとしても,執行猶予は取り消さずにその部分に関して,例えば猶予期間が残っていた場合には,猶予の残期間がその刑期より長いときには出所後に施設外処遇をすることもできるのではないかというようなことを,平野先生が述べられているのです。
  それをそのままとることはどうなのかなと,理屈の上でもどうなのかなと思いますけれども,必ずしも必要的取消しと,そもそも期間経過後に限らず再犯の場合に必要的取消しとしないで,先ほどの申し上げたこととも絡むのですけれども,仮に取り消したとしても,全部実刑にして,その期間全部服役しなければならないという制度ではなくて,例えばその一部を免除するとか,あるいはその一部について執行猶予にするとか,それは今の一部執行猶予のように,施設収容の後に執行猶予するという意味ですけれども,そういう制度もこの際考えたらどうかということを,ちょっと平野先生の書かれたものを読んで思いました。
  と申しますのは,先ほども申し上げたのですけれども,そもそもの執行猶予制度というのは,施設収容による弊害をなくすという側面ももちろんあったわけで,ただそれがうまくいかないから施設に収容するということなのでしょうけれども,その収容期間が非常に長くなってしまうと,ますます社会復帰しにくくなるという側面があるわけです。
  そういうことを考えますと,再犯防止という観点で考えたとして,全部について実刑にして,取り消した上でもう一回刑務所に入れ直すと言うと変ですけれども,特に猶予期間経過後に確定するような件は,一定程度その猶予期間が経過しているのでしょうから,その上でさらにその実刑の刑期を務めさせて,なおかつその再犯についての刑期も務めるということになると,ある程度長期になってしまうということ。それと,先ほど申し上げました保護観察付き執行猶予だった場合には,実質的に不利益を受けているということなども考えて,早期に仮釈放を行うという以上に,一部免除するなり,先ほど申し上げましたように,一部執行猶予にするなりというような形で,それを理屈付けると,そういう形で取り消した後の効果をそういう形にするというようなことを考える必要もあるのではないかと思いました。
  そういうこととセットで,この猶予期間経過後の取消しもすると,取消しもできるという制度というのは検討する必要があるのではないかと思いました。
○今井委員 今の青木委員の御発言,大変興味深く伺ったのですが,私も平野先生の御趣旨を,全部理解しているわけではないのですが,現在は,当時と比べて,施設内処遇における処遇方法の科学性や客観性,つまり諸科学を使った処遇の方法がかなり違ってきていることを踏まえる必要があろうかと思います。青木委員の言われることは,理屈としては分かるのですけれども,仮に必要的取消しをして施設内処遇に戻したとしても,そこからまたそのような経緯を経た人であることを踏まえて個別な指導がなされるので,必ずしもそのような御説だけが妥当するのではないのでは,と思います。
  その上で,現行法の枠組みを踏まえますと,私はどうも必要的取消しの方が筋が合うのではないかと思います。どういうことかと申しますと,現行法では今青木委員からもお話がありましたように,猶予期間内に禁錮以上の刑に処せられた場合には,執行猶予が必要的に取り消されます。そして再犯を理由とする執行猶予の取消しにおいて,実質的に重要なのは,これまでも何度も議論されておりますし,合意があると思いますけれども,猶予期間内に罪を犯したという事実であるということを踏まえますと,再犯については有罪裁判の確定時期が猶予期間経過の前後いずれかによって,結論を異にするというのは合理的ではないように思います。
  実質的にも,先ほどその要件のところで議論がありましたけれども,猶予期間内の公訴提起を要件とする限りは,その後有罪判決が確定するまで長期間を要するわけではないと思われますので,執行猶予の取消しまでに執行猶予者を苛酷なあるいは不安定な状況に置くことは回避できるのではないかと思います。また,様々な刑事政策的な考慮を踏まえて裁量的取消しをするという制度を考えた場合ですけれども,執行猶予が取り消されるか否か,あらかじめ明らかではありませんし,猶予の期間内の再犯について,量刑を行う裁判所としても執行猶予が取り消されるかどうか,いずれを想定して量刑を行ってよいか,判断を迷われるのではないかなとも思われるところであります。
  そこで,私としては猶予期間満了間際に罪を犯した者については,裁判所が再犯の量刑を決める際の情状として考慮するということにして,他は現行の制度に合わせるのがよいのではないかと思うところです。
○青木委員 先ほどちょっと二つのことを一度に申し上げてしまったので,必要的取消しか裁量的取消しかというのは,今のお話はそれで分かりました。一方で,取り消したとした場合に例えばその刑を一部免除するとか,そういうことについては,また一方で今の話とは別に検討したらいいのではないかと思います。一部免除というのは完全にその部分がなくなってしまうわけですけれども,場合によったら,その後の議論に絡みますけれども,社会内処遇,ソフトランディングのために社会内処遇が必要だというようなことも考えますと,その部分,免除してしまうのではなくて,むしろ一部執行猶予にして,社会内処遇として付するというようなこともあり得るのではないかと思っております。
○加藤幹事 まず,今青木委員が補足してというか,付け加えておっしゃった点で,恐らく青木委員は最初に御発言になったときに,執行猶予の取消しの問題については,執行猶予期間経過後の問題だけではなくて,本来執行猶予を取り消す場合にどういう制度であるべきかというお考えからの御発言になったものだと受け取ったのではありますが,一方で第4のテーマとの関係で,執行猶予期間経過後に執行猶予を取り消すことになる場合と,執行猶予期間中に,その執行猶予を取り消すことになる場合で,その二つの間に執行猶予を取り消した場合の効果に違いを設ける必要があるかという観点で見ますと,そこを区別する合理性はないのではないか。恐らく今井委員も同趣旨のことをおっしゃっていたと思われますが,それはそのように考えるべきではないかと思われます。
  むしろ,執行猶予の期間を経過したことによって,同じく執行猶予期間中に再犯を犯しているにもかかわらず,取り消されるか取り消されないか,あるいはその取り消した後の効果に相違を設けるかどうかという点に,差を設ける合理性はないのではないかと考えるところでございます。
  それからもう一つ,検討課題の「○」の四つ目,「併せて以下の仕組みを設けるか否か」というところの最初の「・」ですが,再犯を理由とする執行猶予の取消しにおいて,実質的に重要なのは,その執行猶予の期間内に罪を犯して,かつ,そのことが裁判によって確定認定されたという事実であるということだということが,繰り返し指摘されています。実はそのことは,刑の全部の執行猶予であっても,刑の一部の執行猶予であっても同様なのではないかと考えられるところであります。
  また,再犯を理由とする仮釈放の取消しについても,実質的に重要なのは,仮釈放の期間内に罪を犯して,かつそのことが裁判によって認定確定されたということではないかと考えられます。
  そのように考えていきますと,一部執行猶予あるいは仮釈放についても,今ここで刑の全部執行猶予について議論されているのと同じ問題が生ずるのではないか。すなわち,その期間内について,さらに罪を犯した場合に全部執行猶予の場合と同様に,期間経過後であっても刑を執行することができる仕組みを設けるかどうかということについて,全部執行猶予の場合との共通点,相違点を踏まえて,どのように整理するのが合理的かということを今後議論する必要があるのではないかと考えます。
  今のところどうしたらよいかという結論めいたものについて意見が申し上げられる状態にないのでありますが,議論は必要なのではないかと考えている次第です。
○青木委員 また,補足なのですけれども,前に猶予期間経過後の執行猶予の取消しに関して全て経過した後だということになると,二重処罰というのがより言いやすくなる,言われやすくなるというような趣旨の発言をしたかと思いますけれども,それはそれであると思うのですが,先ほど申し上げました取り消した場合に,全てその部分を実刑として科すかどうかという問題に関しては,確かに猶予期間経過後の取消しなのか,どうなのかによって変わる必要もない話だと思いますので,検討できるとすれば,ある程度猶予期間を経過した後に取り消された場合に,その猶予期間をどう見るかとか,あるいは実刑期間が長くなってしまうことによる社会復帰が困難になるというようなことをどういうふうに見るかとか,そういう観点で,その取り消した場合に全部実刑しかあり得ないという制度の見直しというのは,執行猶予期間経過後の取消しに限らず検討した方がよい課題だと思っております。
○橋爪幹事 ただいまの青木委員の御指摘でございますけれども,確かに猶予期間のほとんどの期間を無事に過ごしていながら,最後の最後になって初めて再犯を犯したというケースにつきましては,本人が更生に向けて頑張ったことをある程度有利にしんしゃくする必要はあると思うのです。ただ,それは論点第1,第2で既に検討しましたように,再度の執行猶予を付するべきかという観点から検討が可能であるような印象を持ちました。
  さらに,先ほど今井委員の方から御指摘がございましたように,執行猶予期間中の再犯について実刑を科す場合については,執行猶予期間中の本人の改善更生に向けられた努力を,一定の限度では,量刑判断として有利にしんしゃくすることは十分に可能であるような気がいたしますので,特別な措置,仕組みを設けることにつきましては,いささか屋上屋を重ねるような感覚がございまして,やや消極的な印象を持ってございます。
○佐伯分科会長 ほかにはいかがでしょうか。






https://www.moj.go.jp/content/001246043.pdf
法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者 処遇関係)部会第1分科会第4回会議配布資料
第4 猶予期間経過後の執行猶予の取消し
考えられる制度の概要
刑の全部の執行猶予の期間内に更に罪を犯した場合について,猶予期間経過
後であっても,執行猶予の言渡しを取り消して刑を執行することができるもの
とする。
【検討課題】
○ 必要性
○ 要件
・ 他の罪について有罪判決が確定したこと
・ 猶予の期間内に公訴が提起されたこと
・ その他
○ 猶予期間経過の効果(刑法第27条)との関係
○ 執行猶予の取消しの在り方
・ 必要的取消しとするか裁量的取消しとするか
○ 併せて以下の仕組みを設けるか否か
・ 刑の一部の執行猶予(刑法第27条の2),仮釈放(刑法第28条)の期
間内に更に罪を犯した場合,期間経過後であっても同様に刑を執行すること
ができる仕組み
・ 猶予期間経過後に執行猶予を取り消した場合には,(経過した)猶予期間
分を考慮して早期に仮釈放を行う仕組み

弁当切りが困難になるという刑法はr7.6.1から施行されます。

令和5年11月10日政令第318号
    令和五年十一月十日
政令第三百十八号
刑法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令
内閣は、刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)附則第一項本文の規定に基づき、この政令を制定する。
刑法等の一部を改正する法律の施行期日は、令和七年六月一日とする。

刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)
(刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果)
第二十七条 刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
★新設★
2 前項の規定にかかわらず、刑の全部の執行猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る。)について公訴の提起がされているときは、同項の刑の言渡しは、当該期間が経過した日から第四項又は第五項の規定によりこの項後段の規定による刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまでの間(以下この項及び次項において「効力継続期間」という。)、引き続きその効力を有するものとする。この場合においては、当該刑については、当該効力継続期間はその全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなす。

薬物利用の準強制わいせつ罪の量刑相場について(高裁某支部)

 原審の執行猶予判決が検察官控訴で実刑になっています。

罪となるべき事実
被告人は、Aに対して睡眠作用を有する薬物を飲用させ抗拒不能に乗じてわいせつ行為しようと企て
被害者方において、 薬品名を含有する薬物混入した飲料のませて抗拒不能に乗じて 両乳房もんだ(準強制わいせつ罪)

高裁支部
薬物利用は意識を完全に喪失させる点で、わいせつ行為が実現される危険性が極めて高く 準強制わいせつ罪の中でも特に悪質性が高い類型である
行為は~~という点で性的自由を侵害する程度も相応に重い
執行猶予に相当する相応の事情が無い限り実刑にすべき事案
薬物利用の準強制わいせつ罪はh20~h30で18件あって明確な量刑傾向は見いだせないし、9件は実刑であった

どこが観念的競合になるのかなあ。。。京都府迷惑行為等防止条例違反等被告事件大津地判令和4年3月25日

どこが観念的競合になるのかなあ。。。京都府迷惑行為等防止条例違反等被告事件大津地判令和4年3月25日
 1回の撮影行為で2人写ってたとかかなあ。
 児童ポルノ画像が10個あったからかなあ。

第五四条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
1 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
2 第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。

事実および理由
罪となるべき事実の要旨
公訴事実
 被告人は、みだりに、別表記載のとおり、令和3年6月2日午後0時15分頃から同年11月13日午前8時49分頃までの間、4回にわたり、京都府●●●所在の●●●高等学校●●●更衣室において、同更衣室で着替え中の●●●(当時17歳)ほか3名に対し、あらかじめ同更衣室内に設置した動画撮影状態にした携帯電話機を使用してその姿態を動画撮影し、もって更衣室その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、他人を著しく羞恥させ、かつ他人に不安及び嫌悪を覚えさせるような方法で、当該状態にある他人の姿態を撮影したものである。
 
適用した罰条
 1 京都府迷惑行為等防止条例10条2項、3条3項1号
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段、2条3項3号
 2 刑法54条1項前段、10条
 3 刑法45条前段、47条本文、10条
 4 刑法25条1項
 5 刑事訴訟法181条1項本文

罪となるべき事実自体から、姿態をとらせて製造罪が成立するのに、ひそかに製造罪で有罪にしている事例(某地裁)

 報道された事案ですが、罪名が怪しいので判決を閲覧してきました。
 こういう法文の並びで5項が「5前二項に規定するもののほか、ひそかに・・・」となっている場合、5項製造罪(ひそかに製造罪)は、提供目的がなく、姿態をとらせていないことが要件になります。
 それなのに、「被告人が就寝中のaの陰部を手指で触るなどの姿態 及び 同人の陰部を露出させる姿態」と認定してしまうと、姿態をとらせていることになるので、ひそかに製造罪は成立しません。
 証拠を深く見ると、姿態をとらせているかもという場合は、検察官の訴追裁量としてひそかに製造罪というチョイスも許容される余地がありますが、公訴事実第1で性犯罪・福祉犯罪を起訴して、公訴事実第2で第1の機会の盗撮行為を起訴した場合には、公訴事実上姿態をとらせたことが明らかになるので、ひそかに製造罪は選択できません。「5前二項に規定するもののほか、ひそかに・・・」という法文からは、公訴事実上、姿態をとらせて+ひそかに製造した場合を、ひそかに製造罪で起訴する訴追裁量まではない。ひそかに製造罪で起訴されれば不成立とされなければならない。

 裁判所も、判示第1で性犯罪・福祉犯罪を認定して、判示第2で第1の機会の盗撮行為を認定した場合には、認定事実上姿態をとらせたことが明らかになるので、ひそかに製造罪は選択できません。「5前二項に規定するもののほか、ひそかに・・・」という法文からは、認定事実上、姿態をとらせて+ひそかに製造した場合を、ひそかに製造罪を適用することは許されません。公訴されれば、法令適用の誤りとか理由齟齬という恥ずかしい理由で破棄されると思われます。

 坪井検事もそう解説されていて、そういう高裁判例もあるんですが、そうなってない裁判例が多いので、大阪高裁では「法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって」とされた「ひそかに製造罪説」という立場もやっぱり成り立つのかなと調べています。

坪井麻友美「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報 第66巻11号
ウ他の製造罪との適用関係
本条項は「前2項に規定するもののほか」と規定しており,第7条第3項の提供目的製造罪と同条第4項の「姿態をとらせ」製造罪のいずれにも該当しない場合のみ,本条項の盗撮による児童ポルノ製造罪が成立する。

阪高裁H28.10.26
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
7条
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

第1
A(8)が、 13歳未満の者と知りながら
わいせつ行為しようと企て
令和4年7月6日 被告人方において
就寝中のaに対して
その下着の中に手指を差し入れて
その陰部を触り
もって13歳未満の者に対して強いてわいせつ行為をした

第2 
前記第1記載の日時場所において
A(8)が18歳に満たない児童であることを知りながらひそかに、被告人が就寝中のaの陰部を手指で触るなどの姿態 及び 同人の陰部を露出させる姿態を動画撮影機能付きスマートフォンで動画撮影して、
そのころ 同所において
その動画3点を同スマホ内の内蔵記録装置に記録させて保存し
もって、ひそかに 他人が児童の性器等を触る行為に掛かる児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録にかかる記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

便所に侵入して用便中の小学生を盗撮した事案で、ひそかに製造罪と迷惑条例違反(盗撮)の両罪を認めた事例(東京地裁R3.9.8)

便所に侵入して用便中の小学生を盗撮した事案で、ひそかに製造罪と迷惑条例違反(盗撮)の両罪を認めた事例(東京地裁R3.9.8)
 国法の重い罪があるんだから、条例(軽い)は適用されないのではないか。

建造物侵入,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反,児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,窃盗被告事件
東京地方裁判所判決令和3年9月8日
【判示事項】 小学校の教員である被告人が,小学校内において,女子児童の運動靴,体操服等を窃取し,女子便所内に侵入し,便所内に設置した小型カメラで,女子児童の臀部等を撮影して,マイクロSDカードに記録,保存して児童ポルノを製造するなどした事案。裁判所は。被告人の犯情は重く,刑事責任は厳しく追及されるべきであるが,窃盗にかかる女子児童側と示談をし,女子児童側からは被告人を許すとの意向が示されていること,盗撮に関し贖罪寄付をしていること,性依存症の克服に向けて医療機関に通院をし始めていること,教員の資格を失う見込みであることなどを考慮し,懲役1年6か月,執行猶予4年に処した事例

 【犯罪事実】
第3 被告人は,用便中の小学生女子児童の姿態を撮影する目的で,令和3年3月19日午後0時頃,本件小学校校長が看守する本件小学校3階西側女子便所内にその出入口から侵入した上,同日午後0時9分頃から同日午後0時38分頃までの間,同所において,同便所を18歳に満たない女子児童が利用することを知りながら,同便所を利用したいずれも本件小学校の女子児童であるA,B,C及びD(いずれも当時12歳)に対し,ひそかに,同便所内に設置していた動画撮影機能付き小型カメラを使用し,用便のため着衣を脱いだ前記4名の臀部等を動画撮影し,その動画データを同カメラに内蔵したマイクロSDカードに記録させて保存し,もって,便所における人の通常衣服で隠されている身体等を写真機その他の機器を用いて撮影し,正当な理由なく,人を著しく羞恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような行為をするとともに,ひそかに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造した。

 【法令の適用】
 被告人の判示第1及び第2の行為はいずれも刑法235条に,判示第3の行為のうち,建造物侵入の点は刑法130条前段に,被害者4名に対する盗撮の点は,いずれも公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例8条2項1号,5条1項2号イに,同被害者4名に対する児童ポルノ製造の点は,いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項,2項,2条3項3号に,判示第4の行為のうち,建造物侵入の点は刑法130条前段に,写真機等差向けの点は,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例8条1項2号,5条1項2号イにそれぞれ該当する。判示第3の建造物侵入と各盗撮及び各児童ポルノ製造の間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重い被害者Cに対する児童ポルノ製造罪の刑で処断する。判示第4の建造物侵入と写真機等差向けの間には手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により1罪として重い建造物侵入罪の刑で処断する。判示各罪の所定刑中いずれも懲役刑を選択する。以上は,刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をする。その刑期の範囲内で被告人を懲役1年6か月に処する。情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
(求刑 懲役1年6か月)
  令和3年9月8日
    東京地方裁判所刑事第7部
           裁判官  浅香竜太

「28日までに容疑者から児童ポルノのDVDを購入した男ら37人を検挙し、残りの男らについても捜査を進めています。という報道」

 17年経過していると、製造犯も刑期も終えていると思われます。

 この動画の提供事案はコンスタントに検挙されています。
 既に購入者の相談は来てますが、
 購入者については
①破棄しておけば刑事処分になりません。
②単純所持罪(7条1項)単体では逮捕はありません。
③捜索を回避する決定打はありませんが、弁護士に相談して、破棄したという警察相談をするとリスクは下がります。前歴も残りません。
④押収された場合、単純所持罪の刑事処分は起訴猶予~罰金20~30万円程度。タナー法の問題点を指摘してみてはどうか。
と回答しています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/1e1c1f6605f8516e3e522e9fc5cfac0508eb6f6f?page=2
17年前に摘発しても…“消せない”児童ポルノの実態 コピーDVD“販売”で男逮捕
6/28(火) 14:03配信
日テレNEWS
神奈川県警は28日、児童ポルノを販売したとして54歳の男を逮捕しました。男が販売していた児童ポルノについては、警察が17年前に製作者を逮捕して摘発したものでしたが、男はネットで入手しDVDにコピーして販売していましたといいます。製作者が逮捕されてもくり返しコピーされ、十数年後も消えることなく残るインターネット上の動画に警察も頭を悩ませています。

児童ポルノを販売したとして男を逮捕
児童ポルノ禁止法違反などの疑いで逮捕されたのは容疑者です。容疑者は2020年から去年にかけて、インターネットオークションで児童ポルノのDVDを販売した疑いが持たれています。

神奈川県警によりますと、容疑者はファイル共有ソフト児童ポルノの動画をダウンロードし、その動画を自宅のパソコンでDVDにコピーして販売していたということです。

去年までの1年間で300万円あまりを売り上げていたといいます。

■全国に広がる購入客 17道県の警察が共同捜査で次々検挙
容疑者の自宅の家宅捜索で押収したパソコンからは動画のデータが見つかったほか、この動画を購入した53人の客がいたことも判明しました。客の住所は、北は北海道から南は沖縄まで、29都道府県にまたがっていたということです。

さらなる児童ポルノの拡散を防止するために速やかに購入客からDVDを押収する必要がありましたが、当時は新型コロナウイルスが猛威を振るい、県境をまたいだ捜査員の出張も簡単にはできません。そこで神奈川県警は17道県の警察と共同捜査体制を構築。

28日までに容疑者から児童ポルノのDVDを購入した男ら37人を検挙し、残りの男らについても捜査を進めています。

■十数年前の児童ポルノが現在も流通する理由
イメージ

これほどまで多くの客が買い求めた児童ポルノとはどんなものだったのでしょうか。この児童ポルノは2004年頃に撮影されたもので、多数の児童が被害に遭ったものでした。

2004年から2005年にかけて神奈川県警のほか関西の警察を中心に合同捜査本部が立ち上げられて製作者が逮捕され、児童ポルノの動画も回収されていました。

しかし、製作者が逮捕されても、一度ネットにアップロードされた動画は、なかなか消えません。17年前に児童ポルノ動画の製作者が逮捕され動画が回収された後にもかかわらず、容疑者はファイル共有ソフトを通じてパソコンに児童ポルノの動画をダウンロードしていたということです。

そして、容疑者が児童ポルノのDVDをインターネットオークションに出品していることをサイバーパトロールしていた捜査員が発見したことで、事件が発覚しました。

■ネットから消えずに残り続ける実態
イメージ

入れ墨を完全に消すことはできないということにたとえた「デジタル・タトゥー」という比喩表現で呼ばれるように、インターネット上に公開された画像などは一度拡散されると、完全に回収したり削除したりすることは難しいといいます。

捜査幹部は「古い児童ポルノが出回ることが後を絶たない。今回摘発した児童ポルノは元々はビデオテープだったが、コピーをくり返されネットに出回ってしまった。一度でもネットにアップロードされると取り返しがつかないことになる」と話し、被害に遭った児童が将来にわたって苦しむことになる実態に頭を悩ませています。

容疑者は調べに対し容疑を認めていて「生活費の足しにしたかった」と話していて警察は詳しい事件の経緯を調べています。

AV新法(性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律)の審理経過

AV新法(性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律)の審理経
 こんだけしか情報ありません。

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g20805043.htm
衆議院トップページ >立法情報 >議案情報 >第208回国会 議案の一覧 >議案本文情報一覧 >●性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案

第二〇八回

衆第四三号

   性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条-第三条)

 第二章 出演契約等に関する特則

  第一節 締結に関する特則(第四条-第六条)

  第二節 履行等に関する特則(第七条-第九条)

  第三節 無効、取消し及び解除等に関する特則(第十条-第十四条)

  第四節 差止請求権(第十五条)

 第三章 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例(第十六条)

 第四章 相談体制の整備等(第十七条-第十九条)

 第五章 罰則(第二十条-第二十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることに鑑み、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずることが出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護するために不可欠であるとの認識の下に、性行為の強制の禁止並びに他の法令による契約の無効及び性行為その他の行為の禁止又は制限をいささかも変更するものではないとのこの法律の実施及び解釈の基本原則を明らかにした上で、出演契約の締結及び履行等に当たっての制作公表者等の義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める特則並びに特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)の特例を定めるとともに、出演者等のための相談体制の整備等について定め、もって出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「性行為」とは、性交若しくは性交類似行為又は他人が人の露出された性器等(性器又は肛門をいう。以下この項において同じ。)を触る行為若しくは人が自己若しくは他人の露出された性器等を触る行為をいう。

2 この法律において「性行為映像制作物」とは、性行為に係る人の姿態を撮影した映像並びにこれに関連する映像及び音声によって構成され、社会通念上一体の内容を有するものとして制作された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)又はこれに係る記録媒体であって、その全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するものをいう。

3 この法律において「性行為映像制作物への出演」とは、性行為映像制作物において性行為に係る姿態の撮影の対象となることをいう。

4 この法律において「出演者」とは、性行為映像制作物への出演をし、又はしようとする者をいう。

5 この法律において「制作公表」とは、撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これらの行為に関するあっせんを含む。)の一連の過程の全部又は一部を行うことをいう。

6 この法律において「出演契約」とは、出演者が、性行為映像制作物への出演をして、その性行為映像制作物の制作公表を行うことを承諾することを内容とする契約をいう。

7 この法律において「制作公表者」とは、性行為映像制作物の制作公表を行う者として、出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者をいう。

8 この法律において「制作公表従事者」とは、制作公表者以外の者であって、制作公表者との間の雇用、請負、委任その他の契約に基づき性行為映像制作物の制作公表に従事する者をいう。

 (実施及び解釈の基本原則)

第三条 制作公表者及び制作公表従事者は、その行う性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることを深く自覚して、出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護し、もってその性をめぐる個人の尊厳が重んぜられるようにしなければならない。

2 制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物に係る撮影に当たっては、出演者に対して性行為を強制してはならない。

3 この法律のいかなる規定も、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為を無効とする民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十条の規定その他の法令の規定により無効とされる契約を有効とするものと解釈してはならない。

4 制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物の制作公表に当たっては、この法律により刑法(明治四十年法律第四十五号)、売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)その他の法令において禁止され又は制限されている性行為その他の行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、出演者の権利及び自由を侵害することがないようにしなければならない。

   第二章 出演契約等に関する特則

    第一節 締結に関する特則

 (出演契約)

第四条 出演契約は、性行為映像制作物ごとに締結しなければならない。

2 出演契約は、書面又は電磁的記録でしなければ、その効力を生じない。

3 前項の出演契約に係る書面又は電磁的記録(以下「出演契約書等」という。)には、制作公表者及び出演者の氏名又は名称その他制作公表者及び出演者を特定するために必要な事項並びに当該出演契約の締結の日時及び場所のほか、次に掲げる事項(当該制作公表者に係る部分に関する事項に限る。)を記載し、又は記録しなければならない。

 一 当該出演者が性行為映像制作物への出演をすること。

 二 当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影を予定する日時及び場所

 三 前号の撮影の対象となる当該出演者の性行為に係る姿態の具体的内容

 四 前号の性行為に係る姿態の相手方を特定するために必要な事項

 五 当該性行為映像制作物の公表の具体的方法及び期間

 六 当該性行為映像制作物の公表を行う者が制作公表者以外の者であるときは、その旨及び当該公表を行う者の氏名又は名称その他当該公表を行う者を特定するために必要な事項

 七 当該出演者が受けるべき報酬の額及び支払の時期

 八 その他内閣府令で定める事項

 (出演契約に係る説明義務)

第五条 制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結しようとするときは、あらかじめ、その出演者に対し、前条第三項に規定する事項(同項各号に掲げる事項については、当該制作公表者に係る部分に関する事項に限る。次条及び第二十一条第二号において「出演契約事項」という。)について出演契約書等の案を示して説明するとともに、次に掲げる事項についてこれらの事項を記載し又は記録した書面又は電磁的記録(以下「説明書面等」という。)を交付し又は提供して説明しなければならない。

 一 第七条から第十六条までに規定する事項

 二 第十一条の取消権については追認をすることができる時から、第十二条第一項の解除権については出演者が当該解除権を行使することができることを知った時から、それぞれ、時効によって消滅するまで、五年間行使することができること。

 三 撮影された映像により出演者が特定される可能性があること。

 四 第十七条第一項の規定により国が整備した体制における同項に規定する相談に応じる機関(同条第二項の規定により都道府県が整備した体制における当該相談に応じる機関があるときは、当該機関を含む。)の名称及び連絡先

 五 その他内閣府令で定める事項

2 制作公表者は、前項の規定による説明を行うに当たっては、出演者がその内容を容易かつ正確に理解することができるよう、丁寧に、かつ、分かりやすく、これを行わなければならない。

3 制作公表者以外の者は、出演契約の内容又は第一項各号に掲げる事項に関し、出演者を誤認させるような説明その他の行為をしてはならない。

 (出演契約書等の交付等義務)

第六条 制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結したときは、速やかに、当該出演者に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し、又は提供しなければならない。

    第二節 履行等に関する特則

 (性行為映像制作物の撮影)

第七条 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影は、当該出演者が出演契約書等の交付若しくは提供を受けた日又は説明書面等の交付若しくは提供を受けた日のいずれか遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならない。

2 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影において、出演者は、出演契約において定められている性行為に係る姿態の撮影であっても、その全部又は一部を拒絶することができる。これによって制作公表者又は第三者に損害が生じたときであっても、当該出演者は、その賠償の責任を負わない。

3 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に当たっては、出演者の健康の保護(生殖機能の保護を含む。)その他の安全及び衛生並びに出演者が性行為に係る姿態の撮影を拒絶することができるようにすることその他その債務の履行の任意性が確保されるよう、特に配慮して必要な措置を講じなければならない。

4 いかなる名称によるかを問わず、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に密接に関連する出演者の撮影(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成二十六年法律第百二十六号)第二条第一項各号のいずれかに掲げる人の姿態の撮影に限る。)は、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなして前三項の規定を適用する。この場合において、前二項中「性行為に係る姿態」とあるのは、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律第二条第一項各号のいずれかに掲げる人の姿態」とする。

 (撮影された映像の確認)

第八条 制作公表者は、性行為映像制作物の公表が行われるまでの間に、出演者に対し、出演契約に基づいて撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うもの(当該制作公表者が当該公表に関する権原を有するものに限る。)を確認する機会を与えなければならない。

 (性行為映像制作物の公表の制限)

第九条 性行為映像制作物の公表は、当該性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した日から四月を経過した後でなければ、行ってはならない。

    第三節 無効、取消し及び解除等に関する特則

 (出演契約等の条項の無効)

第十条 性行為映像制作物を特定しないで、出演者に契約の相手方その他の者が指定する性行為映像制作物への出演をする義務を課す契約の条項は、無効とする。

2 次に掲げる出演契約の条項は、無効とする。

 一 出演者の債務不履行について損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項

 二 制作公表者の債務不履行により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与する条項

 三 制作公表者の債務の履行に際してされたその制作公表者の不法行為により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与する条項

 四 出演者の権利を制限し又はその義務を加重する条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して出演者の利益を一方的に害するものと認められるもの

 (出演契約の取消し)

第十一条 制作公表者が第五条第一項又は第六条の規定に違反したときは、出演者は、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる。制作公表従事者が第五条第三項の規定に違反したときも、同様とする。

 (出演契約の法定義務違反による解除)

第十二条 次に掲げるときは、出演者は、民法第五百四十一条の催告をすることなく、直ちにその出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の解除をすることができる。

 一 第七条第一項又は第三項の規定に違反して、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影(同条第四項の規定により出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなされる撮影を含む。)が行われたとき。

 二 第八条の規定に違反して、その出演者に対し、撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うものを確認する機会を与えることなく、性行為映像制作物の公表が行われたとき。

 三 第九条の規定に違反して、同条の期間を経過する前に性行為映像制作物の公表が行われたとき。

2 前項の解除があった場合においては、制作公表者は、当該解除に伴う損害賠償を請求することができない。

 (出演契約の任意解除等)

十三条 出演者は、任意に、書面又は電磁的記録により、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込みの撤回又は当該出演契約の解除(以下この条において「出演契約の任意解除等」という。)をすることができる。ただし、当該出演者に係る性行為映像制作物の公表が行われた日から一年を経過したとき(出演者が、制作公表者若しくは制作公表従事者が第五項の規定に違反して出演契約の任意解除等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことによりその告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は制作公表者若しくは制作公表従事者が第六項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによって当該期間を経過するまでにその出演契約の任意解除等をしなかった場合には、当該出演者が、当該制作公表者又は制作公表従事者が内閣府令で定めるところによりその出演契約の任意解除等をすることができる旨を記載して交付した書面を受領した日から一年を経過したとき)は、この限りでない。

2 出演契約の任意解除等は、出演契約の任意解除等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。

3 出演契約の任意解除等があった場合においては、制作公表者は、当該出演契約の任意解除等に伴う損害賠償を請求することができない。

4 前三項の規定に反する特約で出演者に不利なものは、無効とする。

5 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対し、出演契約の任意解除等に関する事項(第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない。

6 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者を威迫して困惑させてはならない。

 (解除の効果)

第十四条 出演契約が解除されたときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。

    第四節 差止請求権

第十五条 出演者は、出演契約に基づくことなく性行為映像制作物の制作公表が行われたとき又は出演契約の取消し若しくは解除をしたときは、当該性行為映像制作物の制作公表を行い又は行うおそれがある者に対し、当該制作公表の停止又は予防を請求することができる。

2 出演者は、前項の規定による請求をするに際し、その制作公表の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。

3 制作公表者は、出演者が第一項の規定による請求をしようとするときは、当該出演者に対し、その性行為映像制作物の制作公表を行い又は行うおそれがある者に関する情報の提供、当該者に対する制作公表の停止又は予防に関する通知その他必要な協力を行わなければならない。

   第三章 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例

第十六条 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第三条第二項及び第四条(第一号に係る部分に限る。)並びに私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律第四条の場合のほか、特定電気通信役務提供者(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第二条第三号の特定電気通信役務提供者をいう。第一号及び第二号において同じ。)は、特定電気通信(同法第二条第一号の特定電気通信をいう。第一号において同じ。)による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者(同法第二条第四号の発信者をいう。第二号及び第三号において同じ。)に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれにも該当するときは、賠償の責めに任じない。

 一 特定電気通信による情報であって性行為映像制作物に係るものの流通によって自己の権利を侵害されたとする者(当該性行為映像制作物の出演者に限る。)から、当該権利を侵害したとする情報(以下この号及び次号において「性行為映像制作物侵害情報」という。)、当該権利が侵害された旨、当該権利が侵害されたとする理由及び当該性行為映像制作物侵害情報が性行為映像制作物に係るものである旨(同号において「性行為映像制作物侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し性行為映像制作物侵害情報の送信を防止する措置(同号及び第三号において「性行為映像制作物侵害情報送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があったとき。

 二 当該特定電気通信役務提供者が、当該性行為映像制作物侵害情報の発信者に対し当該性行為映像制作物侵害情報等を示して当該性行為映像制作物侵害情報送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会したとき。

 三 当該発信者が当該照会を受けた日から二日を経過しても当該発信者から当該性行為映像制作物侵害情報送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

   第四章 相談体制の整備等

 (相談体制の整備)

第十七条 国は、性行為映像制作物への出演に係る勧誘、出演契約等の締結及びその履行等、性行為映像制作物の制作公表の各段階において、出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護し、もってその性をめぐる個人の尊厳が重んぜられるようにする観点から、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するとともに、その被害の背景にある貧困、性犯罪及び性暴力等の問題の根本的な解決に資するよう、出演者その他の者からの相談に応じ、その心身の状態及び生活の状況その他の事情を勘案して適切に対応するために必要な体制を整備するものとする。

2 都道府県は、その地域の実情を踏まえつつ、前項の国の体制の整備に準じた体制の整備をするよう努めるものとする。

 (その他の支援措置等)

第十八条 国及び地方公共団体は、前条に定めるもののほか、性行為映像制作物への出演に係る被害の背景にある貧困、性犯罪及び性暴力等の問題の根本的な解決に資するよう、社会福祉に関する施策、性犯罪及び性暴力の被害者への支援に関する施策その他の関連する施策との連携を図りつつ、出演者その他の者への支援その他必要な措置を講ずるものとする。

 (被害の発生を未然に防止するための教育及び啓発)

第十九条 国及び地方公共団体は、性行為映像制作物への出演に係る被害が一度発生した場合においてはその被害の回復を図ることが著しく困難となることに鑑み、学校をはじめ、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生を未然に防止するために必要な事項に関する国民の十分な理解と関心を深めるために必要な教育活動及び啓発活動の充実を図るものとする。

   第五章 罰則

第二十条 第十三条第五項又は第六項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第二十一条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 一 第五条第一項の規定に違反して、説明書面等を交付せず若しくは提供せず、又は同項各号に掲げる事項が記載され若しくは記録されていない説明書面等若しくは虚偽の記載若しくは記録のある説明書面等を交付し若しくは提供したとき。

 二 第六条の規定に違反して、出演契約書等を交付せず若しくは提供せず、又は出演契約事項が記載され若しくは記録されていない出演契約書等若しくは虚偽の記載若しくは記録のある出演契約書等を交付し若しくは提供したとき。

第二十二条 法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

 一 第二十条 一億円以下の罰金刑

 二 前条 同条の罰金刑

2 人格のない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその人格のない社団又は財団を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日の翌日から施行する。ただし、第五章の規定は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。

 (経過措置)

第二条 第二章(第十条第一項及び第四節を除く。)の規定は、この法律の施行前に締結された出演契約並びにこれに基づく出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影、その撮影された映像の確認及びその性行為映像制作物の公表については、適用しない。

2 第十条第一項の規定は、この法律の施行前に締結された契約については、適用しない。

第三条 この法律の施行の日から起算して二年を経過する日(次項において「二年経過日」という。)までの間にされた出演契約の出演者からの申込み若しくはその申込みに係る出演契約又はその間に締結された出演契約についての第十三条第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは、「二年」とする。

2 二年経過日の翌日から起算して一年を経過する日までの間にされた出演契約の出演者からの申込み若しくはその申込みに係る出演契約又はその間に締結された出演契約(前項の規定の適用があるものを除く。)についての第十三条第一項の規定の適用については、同項中「経過した」とあるのは、「経過し、かつ、この法律の施行の日から起算して四年六月を経過した」とする。

3 前二項の規定の適用がある場合における第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定の適用については、同号中「事項」とあるのは、「事項(附則第三条第一項又は第二項の規定により読み替えられた第十三条第一項に規定する事項を含む。)」とする。

 (検討)

第四条 この法律の規定については、この法律の施行後二年以内に、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

2 前項の検討に当たっては、性行為映像制作物の公表期間の制限及び無効とする出演契約等の条項の範囲その他の出演契約等に関する特則の在り方についても、検討を行うようにするものとする。

 (調整規定)

第五条 この法律の施行の日から特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和三年法律第二十七号)の施行の日の前日までの間における第十六条の規定の適用については、同条中「及び第四条」とあるのは、「及び第三条の二」とする。

 (刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律の一部改正)

第六条 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。

  第八十条に次の一号を加える。

  十七 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和四年法律第▼▼▼号)第二十条及び第二十一条


     理 由

 性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることに鑑み、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずることが出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護するために不可欠であるとの認識の下に、出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するため、性行為の強制の禁止並びに他の法令による契約の無効及び性行為その他の行為の禁止又は制限をいささかも変更するものではないとのこの法律の実施及び解釈の基本原則を明らかにした上で、出演契約の締結及び履行等に当たっての制作公表者等の義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める特則並びに特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の特例を定めるとともに、出演者等のための相談体制の整備等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DD5AEE.htm
議案名「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案」の審議経過情報
項目 内容
議案種類 衆法
議案提出回次 208
議案番号 43
議案件名 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案
議案提出者 内閣委員長
衆議院予備審査議案受理年月日
衆議院予備付託年月日/衆議院予備付託委員会 /
衆議院議案受理年月日 令和 4年 5月25日
衆議院付託年月日/衆議院付託委員会 / 審査省略
衆議院審査終了年月日/衆議院審査結果 /
衆議院審議終了年月日/衆議院審議結果 令和 4年 5月27日 / 可決
衆議院審議時会派態度 全会一致
衆議院審議時賛成会派 自由民主党; 立憲民主党・無所属; 日本維新の会; 公明党; 国民民主党・無所属クラブ; 日本共産党; 有志の会; れいわ新選組
衆議院審議時反対会派
参議院予備審査議案受理年月日 令和 4年 5月26日
参議院予備付託年月日/参議院予備付託委員会 /
参議院議案受理年月日 令和 4年 5月27日
参議院付託年月日/参議院付託委員会 令和 4年 6月13日 / 内閣
参議院審査終了年月日/参議院審査結果 令和 4年 6月14日 / 可決
参議院審議終了年月日/参議院審議結果 令和 4年 6月15日 / 可決

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/120804024X03520220527/0

000 会議録情報
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令和四年五月二十七日(金曜日)
    午後四時開議
 出席委員
   委員長 山口 俊一君
   理事 盛山 正仁君 理事 丹羽 秀樹君
   理事 伊東 良孝君 理事 佐々木 紀君
   理事 井野 俊郎君 理事 青柳陽一郎
   理事 井坂 信彦君 理事 遠藤  敬君
   理事 浜地 雅一君
      國場幸之助君    武井 俊輔君
      山田 賢司君    吉田はるみ君
      浅野  哲君    塩川 鉄也君
    …………………………………
   議長           細田 博之君
   副議長          海江田万里
   事務総長         岡田 憲治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 本日の本会議の議事等に関する件
     ――――◇―――――
001 山口俊一
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○山口委員長 これより会議を開きます。
 まず、本日予算委員会の審査を終了した令和四年度一般会計補正予算(第1号)及び令和四年度特別会計補正予算(特第1号)について、委員長から緊急上程の申出があります。
 両案は、本日の本会議において緊急上程するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
002 山口俊一
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○山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
003 山口俊一
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○山口委員長 次に、ただいま緊急上程するに決しました補正予算二案に対し、自由民主党の島尻安伊子君、立憲民主党・無所属の道下大樹君、日本維新の会阿部司君、国民民主党・無所属クラブの浅野哲君、日本共産党の宮本徹君から、それぞれ討論の通告があります。
 討論時間は、島尻安伊子君、道下大樹君、阿部司君は各々十分以内、浅野哲君、宮本徹君は各々五分以内とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
004 山口俊一
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○山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
005 山口俊一
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○山口委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。
006 岡田憲治
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○岡田事務総長 まず最初に、動議により、補正予算二案を緊急上程いたしまして、根本予算委員長の報告がございます。次いで両案に対しまして、五人の方々からそれぞれ討論が行われますが、順序は印刷物のとおりでございます。次いで両案を一括して採決いたしまして、立憲民主党、維新の会、共産党、有志の会及びれいわ新選組が反対でございます。
 次に、日程第一は委員長提出の議案でありますので、議長から委員会の審査を省略することをお諮りいたします。次いで上野内閣委員長の趣旨弁明がございまして、全会一致でございます。
 本日の議事は、以上でございます。
    ―――――――――――――
 一、緊急上程申出議案
   予算委員会 委員長 根本  匠君
  令和四年度一般会計補正予算(第1号)
  令和四年度特別会計補正予算(特第1号)
  反対 立民 維新 共産 有志 れ新
   討論通告
      反 対    道下 大樹君(立民)
      賛 成    島尻安伊子君(自民)
      反 対    阿部  司君(維新)
      賛 成    浅野  哲君(国民)
      反 対    宮本  徹君(共産)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十五号
  令和四年五月二十七日
    午後四時三十分開議
 第一 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案(内閣委員長提出)
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007 山口俊一
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○山口委員長 それでは、本日の本会議は、午後四時二十分予鈴、午後四時三十分から開会いたします。
    ―――――――――――――
008 山口俊一
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○山口委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二分散会

強制わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ,通常人の正常な性的しゅう恥心を害し,善良な性的道徳観念に反する行為をいうとされている(最大判昭32.3.13集11-3-997,名古屋高金沢支判昭36.5.2下刑集35.6399)。(令和4年 新版第2版記載例中心事件送致の手引)

強制わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ,通常人の正常な性的しゅう恥心を害し,善良な性的道徳観念に反する行為をいうとされている(最大判昭32.3.13集11-3-997,名古屋高金沢支判昭36.5.2下刑集35.6399)。(令和4年 新版第2版記載例中心事件送致の手引)

 そんな最高裁判例はありません。強制わいせつ罪のわいせつの定義はありません。大法廷h29.11.29の判例解説を読みましょう
 最大判昭32.3.13って175条の判例です。

裁判年月日 昭和32年 3月13日 裁判所名 最高裁大法廷 裁判区分 判決
事件番号 昭28(あ)1713号
事件名 猥褻文書販売被告事件 〔チャタレイ夫人事件最高裁判決〕
文献番号 1957WLJPCA03130005

新版第2版記載例中心事件送致の手引
令和4年5月10日新版第2版発行
著者吉田誠治
力 勾留の必要性
近時,裁判官は, ちかん事件の被疑者については, 同種前科があり常習的犯行と認められるものを除き,住居や職業が定まっていれば,否認していても勾留を認めない傾向にある。勾留を必要とする場合は, 逃亡,罪証隠滅通謀のおそれなどを具体的に指摘し,相応する証拠を整える必要がある。
(4) ちかん行為(迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪との区別)について
本条例の「人を著しく差恥させ,又は人に不安を覚えさせるような行為」(本条例5条1項1号のいわゆるちかん行為, 同項2号の盗撮及び同項3号の卑わいな言動) とは,都民の善良な風俗環境を害し,法的安全の意識を脅かすような卑わいな言動であって, わいせつな行為に達しないものがこれに当たり。 このような卑わいな言動に該当するかどうかは,健全な社会常識に基づいて, その言動自体のほか,対象となった相手方の年齢その際の周囲の状況等をも考盧して決定すべきものと解されている。例えば, スカートをまくり上げたり, スカートのファスナーを下ろす、 スカート内をのぞき見する、スカートの下からビデオカメラ等で下着等を撮影する行為等がこれに該当する。
一方,強制わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ,通常人の正常な性的しゅう恥心を害し,善良な性的道徳観念に反する行為をいうとされている(最大判昭32.3.13集11-3-997,名古屋高金沢支判昭365.2下刑集35.6399)。 また,強制わいせつ罪が成立するためには,暴行又は脅迫を手段としてわいせつ行為が行われることが要件とされているが, わいせつ行為自体が暴行と認められれば, 同罪が成立する。
電車内におけるちかん行為が,迷惑防止条例違反の違反行為に当たるのか,強制わいせつ罪の「わいせつ行為」に当たるのか, その基準は必ずしも明らかではなく,具体的な事件の状況下で,接触した部位や行為の内容等に応じて,過去の裁判例等を参考にして決するほかない。
一般的に言えば, 陰部に接触する行為については, スカートやズボンなど着衣の上から接触した場合は,迷惑防止条例の罪が適用され, 直接性器に接触した場合は強制わいせつ罪が適用されるといえる。その中間ともいうべき,スカートの中に手を差し入れて下着の上から陰部に接触した行為については,手や指で押しなでたり,動かしたりしてもてあそぶなどの執勘な態様であれば. 強制わいせつ罪が適用されるといえる

伝播可能性~「1対1のLINEやDMでは罪にならず…“侮辱罪”厳罰化」

伝播可能性~「1対1のLINEやDMでは罪にならず…“侮辱罪”厳罰化」

 虚偽風説罪の高裁判例によれば「特定少数人に対して虚偽の事実を告知した場合であっても,その者から順次その事実が不特定多数人に伝播される可能性があり,そのことを認識している限り,その者の人数の如何を問わず,同条の流布にあたると解すべきであるから,これと見解を異にする所論は採用できない」と言われそうです。

第二三一条(侮辱)
 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。


条解刑法なんてこれくらいの解説しかない。

条解刑法
第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても,公然と人を侮辱した者は,拘留又は科料に処する
1 ) 本条の趣旨
本条の保護法益については見解の対立がある。判例通説は侮辱罪の保護法益も名誉段損罪と同じく名誉であり,両罪は名誉を害する具体的事実を摘示するか否かという行為態様において異なると解する(大判大15・7・5集5303,大判昭8.2~22集12154, 名古屋高判昭26・3・17判特27-59)。
これに対して, 名誉感情など主観的名誉を侮辱罪の保護法益とする見解(主観的名誉説)が有力に主張されている(注釈(5)336)o
名誉毀損行為について事実の証明があって名誉段損罪により処罰されない場合,主観的名誉説によると侮辱罪が成立するが,両罪の保護法益を同一とする判例通説によると,侮辱罪も成立しない(大判大5・11・1録22-1644)。
2) 事実の不摘示
判例通説の立場からは, 「事実を摘示しなくても」という
文言は,事実の摘示がないことを意味するのに対して,主観的名誉説によれば,事実を摘示してなされる侮辱罪もあり得ることになる。事実の摘示については, 230条注3参照。
3) 公然
侮辱行為は公然と行われなければならない(230条注2参照)。判例 §§231注4)。5) ・232注l)~4)
通説は保護法益を人の名誉とすることから,被害者が侮辱行為のときにその場所に現在することを必要としない(大判大4.6.8新聞1024-31)。
4) 人
本罪の対象となる「人」の範囲について, 判例通説の立場からは,名誉設損罪の場合と同じであり(230条注4参照) ‘行為者以外の自然人及び法人その他の団体を含む(法人に対する侮辱罪が認められたものとして, 最決昭58・11・1集3791341)。死者は含まれないと解される。
5) 侮辱行為
侮辱とは,他人に対する軽蔑の表示である。軽蔑の表示の方法は特に限定されず,言語はもちろん, 図画動作等によっても可能である。侮辱罪は危険犯であり, 人に対する社会的評価等を害する危険を含んだ軽蔑の表示がされれば成立する。

公然性については、名誉毀損罪の項を参照

条解刑法 名誉毀損
2) 公然
不特定又は多数人が認識できる状態をいう(最判昭36・10・13集15-9-1586)。
不特定とは,特殊な関係によってその属する範囲が限定された場合ではないことをいい,誰でも見聞し得た場合をいう。限られた数名の者に対して摘示した場合であっても, その場所の通行, 出入りが自由であって, たまたまそこに居合わせたのが数名に過ぎないのであれば,不特定と解される(例えば,大判昭6・10・19集10462は、公衆数名が居合わせた裁判所の公衆控室で他人の悪事を口外した事案につき,公然性を肯定している。これに対し,最決昭34.2.19集13-2186は,被告訴人が検事と検察事務官のみが在室する取調室で告訴人に関する侮辱的発言をした事案につき,最決昭34.12.25集13-133360は, 自己の母と妻のみが居合わせた自宅の玄関内で他人を罵った事案につき, いずれも公然性を否定している)。
公然性が認められるためには,不特定又は多数の者が現実に摘示内容を認識することを必要とせず,認識できる状態に置かれれば足りる(大判大6.7.3録23-782)。
また,摘示の相手方は特定少数人であっても,伝播して間接的に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれる(最判昭34.5.7集13-5-641)。伝播可能性を理由に公然性を認めることについては, 直接の相手方の意思により犯罪の成否が左右されることの不当性や表現の自由に対する不当な抑制になるとして反対する見解があるが, その場合の故意の要素としては伝播の可能性について認識することが必要であろうし,行為態様(当該情報の性質内容。形式,相手方の立場等)からも伝播可能性が具体的に認められる場合に限定すれば‘ 犯罪の成立範囲が不当に拡大することはないであろう(高等学校教諭の名誉を段損する内容を記載した文書を教育委員会委員長校長,PTA会長宛てに各1通郵送した事案につき,相手方に守秘義務があることなどを理由として伝播可能性がないとしたものとして,東京高判昭58,4.27高集36-1-27)


 医師→警察→報道機関と拡がった場合の虚偽風説流布罪で高裁判例があります。

裁判年月日 平成14年 6月13日 裁判所名 大阪高裁 裁判区分 判決
事件番号 平14(う)52号
事件名 信用毀損、業務妨害、窃盗被告事件
文献番号 2002WLJPCA06139003

 以下,所論に即して検討する。
 1 【要旨1】「流布」について
 所論は,刑法233条の「流布」とは,不特定または多数人に虚偽の事実を伝播させることをいうところ,本件では,Bという特定人かつ1人の者に告げたものであるから,「流布」には該当しない旨主張する。確かに,同条の「流布」の意義は所論指摘のとおりであるけれども,特定少数人に対して虚偽の事実を告知した場合であっても,その者から順次その事実が不特定多数人に伝播される可能性があり,そのことを認識している限り,その者の人数の如何を問わず,同条の流布にあたると解すべきであるから,これと見解を異にする所論は採用できない。なお,所論は,このような場合にまで「流布」にあたると認めると,その意義が際限なく拡大され,罪刑法定主義に反すると主張するが,虚偽の事実の告知を受けた特定少数人からの伝播可能性については,単に伝播の抽象的な恐れがあるというのではなく,告知した者と告知を受けた者の関係,告知を受けた者の地位や立場,告知の状況等を総合して具体的にその可能性の有無を判断すべきものであるから,「流布」の意義は限定されているということができ,所論は失当である。
 また,所論は,原判決は被告人が申告した虚偽の事実がBから他の警察職員に伝わり,それが報道機関に伝播する可能性が存在することを前提にしているが,Bや他の警察職員には法律上守秘義務があり,原則として捜査に関する情報が報道機関に公開されることはないのであるから,およそこのような経路で伝播する可能性は客観的に存在しない旨主張する。確かに,Bや他の警察職員には地方公務員法刑事訴訟法等において守秘義務が課せられていることは所論が指摘するとおりである。しかしながら,警察は,個人の生命,身体及び財産の保護に任じ,犯罪の予防等に当たることをもってその責務としている(警察法2条1項)のであるから,被疑者の犯罪にかかる事実であっても,その犯罪の罪質,態様,結果,社会的影響,公表される事実の内容とその方法等に照らし,これを公表することが職責上許される場合があると解するのが相当である。これを本件についてみると,被告人が申告した事実は,上記のとおり,コンビニエンスストア「C」で購入した紙パック入りオレンジジュースに異物が混入していたというものであるところ,仮にこれが真実であったとするならば,公衆の生命,身体に危険を生じかねない重大事犯で,その犯行態様は不特定の者を無差別に狙ったものである上,被告人の検察官調書(検察官証拠請求番号乙10,11)及び警察官調書(同乙2),証人Bの原審公判廷における供述並びにDの警察官調書(同甲67,ただし,不同意部分を除く。)によれば,本件当時,飲食物に異物を混入するという被告人が告げた虚偽の内容と同様の事犯が現実に全国各地で多発していたことが認められるのであって,これらの事情に照らすと,Bから被告人の申告内容を伝えられた警察職員が,事件発生の日時,場所,被害者の氏名や被害状況,飲物の内容及びその鑑識結果はもとより,その飲物の購入場所等の情報をも報道機関に公表することは,類似の犯罪の再発を予防し,その被害を未然に防ぐため公衆に注意喚起する措置として許容されるものというべきであるから,所論は採用できない。
 更に,所論は,本件において報道機関の情報入手ルート等に関する証拠がなく,被告人のBに対する虚偽の申告と報道機関からの報道との間の因果関係が明らかでない上,そもそも報道機関は警察の広報機関ではなく,独自の判断で報道しているのであるから,被告人の上記申告と報道機関の発表との因果関係をおよそ認めることはできない旨主張する。しかしながら,司法警察員作成の報告書(同甲57号)によって認められる新聞記事の内容と,司法警察員作成の報告書(同58号)によって認められる警察による報道機関への発表内容に照らすと,上記新聞記事の内容が警察による報道機関への発表内容に基づくものであることは明らかであって,その因果関係を認めることができる。そして,報道機関が警察の広報機関ではなく,独自の判断で報道していることは所論が指摘するとおりであるが,上記のような罪質,態様,本件当時の社会状況等に照らすと,報道機関が警察発表に基づき上記事件を報道することは当然考えられるから,所論が指摘する報道機関の立場をもって,上記因果関係を認めることの妨げにはならないというべきであり,所論は採用できない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8e9cadb2ce06e13f3abe3c8ce411f82d43093087?page=2
菊地弁護士:
「この罪はとにかく古いんですね。時代に合わせたルールで対策を強化してほしいと思います。今の侮辱罪は公然とやらなければ罪になりません。例えばLINEやDMなど1対1のSNSなど公然ではないところでの誹謗中傷を侮辱罪でとうのは難しいのです。一方で1対1でも誹謗中傷でも大きな被害をもたらすというケースもありますので、それらも含めてどう対処していくのか。場合によってはまた法改正が必要なのか、今の時代にマッチした侮辱への対処というのが要求されているかと思います」