児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強制性交罪(177後段)につき、没入が争われた事例(宮崎地裁延岡R03.1.20)

 判示第2で動画の1号ポルノ製造が認定されていますが、そっちは争われてないようです。
 仙台高裁の凹凸判例が参考になるでしょう。
強姦罪の既遂時期につき,陰茎の先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態となっただけでは,未だ姦淫の既遂には至っていないとされた事例(仙台高裁h28.5.24) - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

■28291818
宮崎地方裁判所延岡支部
令和03年01月20日
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 (令和2年6月18日付け起訴状記載の公訴事実)
 ●●●(当時9歳。以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら、Aと性交しようと考え、令和元年12月27日午後0時14分過ぎ頃、●●●において、Aと性交した、
第2 (令和2年7月31日付け起訴状記載の公訴事実第1)
  Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、令和元年12月27日午後0時14分頃から同日午後0時26分頃までの間、前記第1の場所において、Aをして被告人と性交する姿態、被告人がAの陰部を舌で舐め、手の指で触る姿態等をとらせ、これを動画撮影機能付き携帯電話機で動画撮影し、その動画データ合計2点を同携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した、
(証拠の標目)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。)
判示全部の事実について
 ・ 被告人の公判供述
判示第1及び第2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙9、10)及び警察官調書(乙3、7、8)
 ・ Aの警察官調書(甲10)
 ・ 実況見分調書(甲1)
 ・ 捜査報告書(甲2~6、9)
 ・ 画像処理依頼書謄本(甲7)及び画像処理結果回答書(甲8)
判示第2の事実について
 ・ 被告人の検察官調書(乙19)
 ・ 捜索差押調書(甲28)
 ・ 宮崎地方検察庁延岡支部で保管中の携帯電話機(スマートフォンiPhone6)(同支部令和2年領第139号符号2、甲29)


(事実認定の補足説明)
1 被告人及び弁護人の主張
  被告人は、判示第1につき、Aと性交しておらず、性交の目的もなかったと主張し、弁護人も、強制性交等の罪は成立せず、強制わいせつ罪が問われるべきであると主張する。
2 性交の有無について
  前掲証拠によれば、被告人の陰茎の亀頭部分は、Aの陰部に約8mmから約19mmにわたって没入している(甲8)。そして、9歳女児の小陰唇から膣口までの奥行きは、成人男性の陰茎の亀頭よりも短く、男性の陰茎の亀頭が収まる空間は膣口以外にない(甲6)。そうすると、被告人の陰茎はAの膣口を越えて膣内に挿入されたものというべきであり、性交の事実が優に認められる。
  被告人は、陰茎の先端の感覚からすると、Aの膣内に陰茎が全く入っていない旨供述するが、これを採用することができないことは、前記認定説示のとおりである。また、被告人は、Aの膣口が広がることはないので膣内に入るとは考えられないとも弁解するが、9歳女児であっても、その膣口は軟部組織で十分な伸縮性があり、実際にも、被告人が指で膣口を容易に広げていることからすると(甲4~6)、採用することはできない。
3 強制性交等の故意について
  被告人は、約2分もの間、勃起した陰茎の亀頭部分をAの膣口に押し当て、その膣内に没入させるように繰り返し上下に動かし、Aに対して「痛い?」とか「気持ちいい?」などと申し向けて、陰部の感度を確認している(甲4)。そして、この間、被告人の陰茎の亀頭部分が膣内に挿入されたことは前記認定のとおりである。このような行為態様からすれば、性交の事実についての認識に欠けるところはないのであり、強制性交等の罪の故意を否定すべき事情はない。
  被告人は、Aの陰部の弾力を確かめたいとの思いから陰茎をAの陰部に押し当てたにすぎず、性交の意図はなかったなどと縷々主張するが、故意を否定すべき事情には該当しない。
  以上によれば、被告人にはAに対する強制性交等の故意があったと認められる。
4 結論
  よって、被告人に、判示第1のとおりAに対する強制性交等の罪が成立する。

「営利目的の児童ポルノ罪を重く処罰する法律がない」という弁護士のコメントについて

「営利目的の児童ポルノ罪を重く処罰する法律がない」「対価を没収していない」という弁護士のコメントについて

クローズアップ現代+「追跡・SNS性犯罪▽ネットで子どもを狙う卑劣な手口とは」
11/4(木) 午後10:00-午後10:30
配信期限 :11/11(木) 午後10:30 まで
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2021110426546?playlist_id=c62990e7-250f-4817-b8ed-8c3366df4c87

で、7条6項の提供罪について、弁護士の「営利目的であることに着目して特に重く処罰する法律が必要だと思っています。」というコメントが流れました。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 という法文も、刑法に比べると重いですよね。

参考
刑法第一七五条(わいせつ物頒布等)
 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 立法者・法務省はわいせつ図画罪(刑法175条)と同様に包括一罪と考えていたと思いますが、判例で修正されていて、提供罪+提供目的所持罪の場合も、数回の提供罪の場合も併合罪加重されます。

判例番号】 L06410056
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,わいせつ図画販売,わいせつ図画販売目的所持,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 最高裁判所第2小法廷決定/平成20年(あ)第1703号
【判決日付】 平成21年7月7日
【判決要旨】 1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にある。
       2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合,わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められるときには,全体が一罪となる。
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集63巻6号507頁
       裁判所時報1487号194頁
       判例タイムズ1311号87頁
       判例時報2062号160頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 論究ジュリスト3号225頁
       ジュリスト1404号122頁
       判例時報2130号165頁
       法曹時報64巻7号1928頁
       刑事法ジャーナル22号107頁

判例番号】 L07220307
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 東京高等裁判所判決/平成28年(う)第872号
【判決日付】 平成29年1月24日
【判決要旨】 1 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。
       2 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていたとしても,児童ポルノ製造罪は成立する。
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集74巻1号234頁
       高等裁判所刑事判例集70巻1号1頁
       高等裁判所刑事裁判速報集平成29年73頁
       東京高等裁判所判決時報刑事68巻1~12号28頁
       判例タイムズ1446号185頁
       判例時報2363号110頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 ジュリスト1518号169頁
       小樽商科大学商学討究70巻1号143頁
       法学新報125巻1~2号173頁
       立命館法学372号545頁
       刑事法ジャーナル56号149頁
  (3) 本件3画像の提供罪を一罪とした点
   (ア) 所論は,①被告人が「E」をアップロードした時期と,「E2」をアップロードした時期とでは,1年2か月が経過しており,含まれる画像も素材画像の写真の被写体も全く異なっている上,②3名の購入者のダウンロードの時期も1年ほど離れているのであるから,児童ポルノ提供罪については,「E」及び「E2」の各CG集ごと,及び,各購入者ごとに,それぞれ児童ポルノ提供罪が成立し,それらは全て併合罪の関係になるはずである,しかるに,原判決はこれを一罪と評価した上,①原判決が全てのCGについて児童ポルノに該当すると認めなかった「E」の提供については,無罪を言い渡すべきであるのに,これを言い渡さなかった点で,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,②購入者を追加する内容の訴因変更は,併合罪の関係にある以上,許可すべきでないのに,これを許可した原審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるという。
   (イ) まず,1名に対する児童ポルノの提供を3名に対する提供へと変更する訴因変更を許可した点について検討すると,そもそも,本件における児童ポルノ提供罪は,その構成要件上,不特定又は多数の者に提供することが予定されているから,購入者の追加は,公訴事実の同一性の範囲内であることが明らかであって,この点について訴因変更を許可した原審の訴訟手続に何ら法令違反はない。
   (ウ) 次に,提供罪の罪数について検討すると,記録によれば,被告人は,平成20年8月頃,CG集である「E」を完成させたこと,被告人は,Dに,同CG集の販売を委託し,そのデータを同社に送信して,同月28日以降,同CG集がインターネット上で販売されたこと,被告人は,「E」をアップロードした後,これを見たインターネットサイトの利用者から,他のモデルの画像のリクエストが多数寄せられたことなどから,その要望に応じて,平成21年11月頃,「E」と同様のCG集である「E2」を完成させたこと,被告人は,同CG集についても,「E」と同様に,Dに販売を委託したこと,同月27日以降,「E2」がインターネット上で販売されたことが認められる。
     これによれば,被告人は,「E」をアップロードした後,新たに犯意を生じて,上記アップロードの約1年3か月後に,「E2」をアップロードしたといえるから,前者の提供行為と後者の提供行為とは,別個の犯意に基づく,社会通念上別個の行為とみるべきであって,併合罪の関係に立つとみるのが相当である。そうすると,両者の関係が一罪に当たるとの前提に立ち,前者の提供行為について,児童ポルノに該当するものがなく,その提供に当たらないとしながら,主文で無罪を言い渡さなかった原判決には,法令の適用に誤りがあり,これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
     論旨は理由がある。
     よって,量刑不当の論旨について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。

 その結果、数回の提供行為は併合罪なので、
   懲役刑の上限は、懲役7年6月
   併科罰金刑の上限は、500万円×提供回数
となります。
 例えば、10回提供すると、
   懲役刑の上限は、懲役7年6月
   併科罰金刑の上限は、5000万円
 例えば、20回提供すると、
   懲役刑の上限は、懲役7年6月
   併科罰金刑の上限は、1億円
になります。
 わいせつ図画罪なら、10回頒布しても20回頒布しても科刑上一罪なので
   懲役刑の上限は、懲役2年
   併科罰金刑の上限は、250万円
になります。


対価没収については、刑法19条1項で没収可能ですが、

刑法第一九条(没収)
 次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物

 ダウンロード販売は、何百・何千回売っているので、売上も多額になりますが
 児童ポルノ提供罪は併合罪なので、1件有罪にして、1本の対価(1000円くらいか)没収、ということで、2件起訴しても2000円しか没収されません。

福祉犯の罰金30万円が払えないので正式裁判請求して18ヶ月確定を延ばした事例

福祉犯の罰金30万円が払えないので正式裁判請求して18ヶ月確定を延ばした事例
 仮納付命令が付いているので略式命令直後から検察庁からの請求が来ますが、正式裁判請求した時点で、検察庁からの取り立てが止みます。確定後に検察庁からの請求が再開します。
 その間に積み立てていけば無理なく払えるでしょう。

簡裁R02.5.15 略式命令30万円 仮納付命令付き
地裁R02.10.29 正式裁判罰金30万円 仮納付命令なし
高裁R03.04.02 控訴棄却仮納付命令なし
最高裁R03.12.1 上告棄却決定 仮納付命令なし

法医学の医師が「本件DVDの映像は,モザイク等がなく性器が鮮明に写されたものである。本件女性は,流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。」とした画像につき、児童ポルノ性を否定した高裁判例(東京高裁r02.11.12)

法医学の医師が「本件DVDの映像は,モザイク等がなく性器が鮮明に写されたものである。本件女性は,流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。」とした画像につき、児童ポルノ性を否定した高裁判例(東京高裁r02.11.12)

 CG事件の地裁・高裁判決の影響です。
「原判決の前記判断は,原審証拠及び論理則,経験則等に照らして不合理であって是認できない。すなわち,所論が指摘するとおり,本件医師が挙げる前記2①から⑥までの根拠は,いずれも本件女性が18歳以上かそれ未満かを区別するに足りるものではない。同①から⑥までの根拠のうち,多少なりとも意味がありそうなものは⑤及び⑥の性器や乳房の状態をいうものであるが,そこで指摘されていることは18歳以上の女性にも妥当し得る状態と思われるのに,それがなぜ18歳未満の女性と判断できるのかその根拠は説明されていない。本件医師は,前記警察官調書謄本において,女子乳房の発育段階の区分や外陰の発達度等も参考にしているとも供述しているが,同⑤及び⑥の根拠に関し,その観点からの説明はない(なお,前記警察官調書謄本についての原審弁護人の証拠意見は,「不同意。ただし信用性を争う。」というものであったが,本件医師に対する証人尋問は行われていない。)。本件医師が述べるとおり,子どもの成長には個人差が大きく,外見による年齢判断は困難であるというのであるから,本件女性が15歳から17歳程度と考えた合理的根拠を挙げる必要があるが,それはない。原判決は,本件医師の供述は18歳に達している可能性を排斥していると説示するが,合理的な根拠を示さなければ専門家の意見が正当であるかどうかは判断できない」


判例番号】 L07520565
       強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 東京高等裁判所判決
【判決日付】 令和2年11月12日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

第5 原判示第2(児童ポルノ所持)のうちDVD1枚に関する事実誤認ないし法令適用の誤りの論旨について
 1 論旨
 論旨は,原判示第2のDVD14枚のうちの1枚である本件DVDについて,写っている本件女性が18歳未満の児童ではない疑いがあるのに,本件DVDに児童ポルノ該当性を認定した原判決には事実誤認ないし法令適用の誤りがある,という。
 2 原判決の判断の概要
 原判決の判断の概要は,次のとおりである。
 本件DVDを含む複数のDVDに写っている女性の年齢判断をした本件医師は,警察官調書謄本(原審甲53)において,本件女性は,①流行のシャギーカット,②ほっぺたがポッチャリしており,③足は中くらいの太さであるが棒状で,④ませた顔でニキビがなく,⑤小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められ,⑥胸はAカップかBカップくらいある程度であるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度であると供述する。本件医師は,豊富な実務経験を有する専門家の立場から,具体的な事情を根拠に挙げて,同じく経験豊富な教授と共に総合的に判断したものであり,その正確性について十分信用できる。本件医師は,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外して18歳未満であると判断しているので,上記供述は18歳に達している可能性を排斥していると考えられる。したがって,本件女性の年齢は18歳未満であると認められ,他の証拠も併せ考慮すると,本件DVDは「児童ポルノ」に該当する。
 3 当裁判所の判断
 原判決の前記判断は,原審証拠及び論理則,経験則等に照らして不合理であって是認できない。すなわち,所論が指摘するとおり,本件医師が挙げる前記2①から⑥までの根拠は,いずれも本件女性が18歳以上かそれ未満かを区別するに足りるものではない。同①から⑥までの根拠のうち,多少なりとも意味がありそうなものは⑤及び⑥の性器や乳房の状態をいうものであるが,そこで指摘されていることは18歳以上の女性にも妥当し得る状態と思われるのに,それがなぜ18歳未満の女性と判断できるのかその根拠は説明されていない。本件医師は,前記警察官調書謄本において,女子乳房の発育段階の区分や外陰の発達度等も参考にしているとも供述しているが,同⑤及び⑥の根拠に関し,その観点からの説明はない(なお,前記警察官調書謄本についての原審弁護人の証拠意見は,「不同意。ただし信用性を争う。」というものであったが,本件医師に対する証人尋問は行われていない。)。本件医師が述べるとおり,子どもの成長には個人差が大きく,外見による年齢判断は困難であるというのであるから,本件女性が15歳から17歳程度と考えた合理的根拠を挙げる必要があるが,それはない。原判決は,本件医師の供述は18歳に達している可能性を排斥していると説示するが,合理的な根拠を示さなければ専門家の意見が正当であるかどうかは判断できない。
 そうすると,原判決には,本件医師の上記供述に関する信用性判断を誤った結果,本件女性が18歳未満であると認定して児童ポルノ該当性を肯定した事実誤認がある。
 もっとも,原判決が認定した原判示第2の事実は児童ポルノであるDVD14枚を所持したというものであり,この行為は包括一罪に当たるとしているところ,そのうちの本件DVD1枚の児童ポルノ該当性に誤認があるにすぎないから,この誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかとはいえず,結局,論旨は理由がない。


第6 原判示第2に関する事実誤認の論旨について
 1 論旨
 論旨は,被告人が各DVD(ただし,原判示第2のDVD14枚のうち本件DVD1枚を除いたものを指す。)を視聴していたのは平成18年頃までであって,原判示第2の平成30年7月18日当時は各DVDへの関心を失っていたから,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」はなかったのに,これがあるとした原判決の判断には事実誤認がある,というものである。
 2 原判決の判断の概要
 原判決は,概要,次のとおり説示して被告人に自己の性的好奇心を満たす目的があると認定した。
 被告人は,児童ポルノに該当する各DVDを同目的をもって入手したのであるから,特段の事情のない限り,その後の所持についても同目的があると推認するのが合理的である。被告人が10年以上各DVDを視聴していなかった可能性は否定できないが,各DVDは被告人方の書斎の本棚に保管されており,女子児童に性的興味を有していた被告人がその興味を満たすために各DVDを視聴しようと思えばいつでも視聴できたものである。そうすると,上記推認を妨げる事情は見当たらず,被告人は,平成30年7月当時,同目的で各DVDを所持していたと認められる。
 3 当裁判所の判断
 原判決の前記認定,判断は,原審証拠及び論理則,経験則等に照らして不合理なところはなく,当裁判所としても是認できる。
 所論は,平成26年に児童ポルノ法が改正されて児童ポルノの単純所持が処罰対象とされたが,その際の衆議院法務委員会の議論を踏まえると,被告人のように処罰対象ではなかった時期から児童ポルノを所持していた場合に,改正された児童ポルノ法が適用されるには,改めて積極的な利用の意思に基づいて新たな所持,保管が開始されたと認定できることが必要である,という。
 しかし,各DVDが平成26年の児童ポルノ法改正以前に購入されたものであっても,各DVDは正に被告人の性的好奇心を満たす目的で入手,所持したものであるという経緯に加え,前記のとおり,原判示第2の当時,被告人は,低学年の女子児童に対する性的興味を持っており,そうした性的興味を満たすような女子児童の性交場面等が記録された各DVD(13枚)をいつでも視聴できる自分の書斎の中の本棚にこれを継続して置いていたというのであるから,被告人が各DVDを保管していたのは自己の性的好奇心を満たす目的であると認められ,これと同旨の原判決の認定に誤りはない。所論の示す考え方は,上記改正より相当以前に購入した児童ポルノがどこに保管されているか分からなくなったが,上記改正後の引っ越し等の際にそれが出てきてそのまま保管していた場合などには,自己の性的好奇心を満たす目的が否定されることがあり得るという意味で処罰対象を適切に画しようとするものにすぎず,原判決の結論と矛盾するものではない。
 4 原判示第2に関する事実誤認の論旨は,理由がない。
第7 結論
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
  令和2年11月17日
    東京高等裁判所第6刑事部
        裁判長裁判官  大熊一之
           裁判官  浅香竜太
           裁判官  小野寺健

判例番号】 L07550315
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 静岡地方裁判所浜松支部判決
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
       理   由

 【罪となるべき事実】
第2 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年7月18日,浜松市浜北区(以下略)所在の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD14枚を所持した。
 3 ②判示第2の事実における(ア)DVD1枚の児童ポルノ該当性について
   弁護人は,判示第2の事実における各DVD(以下,単に「各DVD」という。)のうち,「△△」と印字されたラベルが貼られたケースに入っているもの(以下「本件DVD」という。)については,写っている女性(以下「本件女性」という。)が18歳未満ではない疑いがあるとして,児童ポルノ該当性を争うため,以下検討する。
  (1)本件DVDを含む複数のDVDに写っている女性の年齢判断をした,当時国立大学法人I大学の法医学講座の助教授であったG医師(以下「本件医師」という。)の供述の概要は,次のとおりである。
    私は,約13年間の法医実務経験を有しており,その間,法医解剖数約605件,行政解剖数約53件,検案数約281件を経験し,幼児から第二次性徴期である8歳くらいから18歳くらいまでの少女の解剖,検案も多数担当している。これらの経験や医学文献に基づき,女子の陰毛,乳房及び外陰の発育度並びに骨盤の増大度等を総合考慮し,約27年間の法医実務経験を有する同講座の教授と共に判断する。18歳未満の可能性が高いが,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外し,ほぼ18歳未満として間違いない者について,18歳未満と判断する。
    本件DVDの映像は,モザイク等がなく性器が鮮明に写されたものである。本件女性は,流行のシャギーカット,ほっぺたがポッチャリしており,足は中くらいの太さであるが棒状であること,ませた顔でニキビがないこと,小陰唇が発達し,外陰部の色素沈着が認められること,胸はAカップかBカップくらいである程度あるが平坦であり,乳首は小さめであることなどから,15歳から17歳程度と認められる。
  (2)以上の本件医師の供述は,豊富な実務経験を有する専門的な立場からの合理的なものとして信用できる。
    この点,弁護人は,本件医師の前記供述の信用性に関し,本件医師は,子供の成長には個人差が大きく,外見を観ての年齢判断は困難であり,まして,映像を観ての判断で正確性は劣らざるを得ないとの留保を付しており,年齢判断の正確性には限界があるほか,本件医師が本件女性の年齢判断の根拠とする事情は,いずれも,女性の成長度合いや体型に関する個人差として常識的に考えられる幅を考慮すれば,成人女性についても該当する可能性のあるものであると主張する。
    しかし,本件医師は,弁護人が指摘する留保を付しつつも,自身の経験等に基づいて判断するとしているのであって,この留保をもって,直ちに本件医師の年齢判断の正確性が否定されることにはならない。本件医師は,本件DVDの映像は性器が鮮明に写されたものであるとした上で,具体的な事情を根拠にあげて,本件女性の年齢判断をしているものである。確かに,本件医師が本件女性の年齢判断の根拠とする事情は,個別にみれば,いずれも成人女性についても該当する可能性のあるものではあるが,本件医師は,これらを総合考慮の上,自身の豊富な経験や文献に基づき,同じく豊富な経験を有する教授と共に,本件女性の年齢を15歳から17歳程度と判断しているのであって,その正確性については十分信用できる。
    したがって,弁護人の前記各主張は,本件医師の前記供述の信用性を揺るがすものとはいえない。
  (3)以上のとおり,信用できる本件医師の前記供述によれば,本件女性の年齢は,15歳から17歳程度と認められるとされている。この点について,弁護人は,15歳から17歳程度との表現からすれば,本件女性が18歳に達している可能性を排斥していない旨主張するが,本件医師は,18歳未満の可能性が高いが,18歳未満とは完全に言い切れない者を除外し,ほぼ18歳未満として間違いない者について,18歳未満と判断するとしているのであって,15歳から17歳程度との供述は,18歳に達している可能性を排斥しているものと考えるべきである。
  (4)したがって,本件女性の年齢は18歳未満であると認められ,他の証拠もあわせ鑑みれば,本件DVDは,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)2条3項にいう「児童ポルノ」に当たるといえる。
 4 ②判示第2の事実における(イ)自己の性的好奇心を満たす目的の有無について
   弁護人は,判示第2の行為日である平成30年7月18日時点において,被告人は,各DVDへの興味・関心を失っていたとして,各DVDの所持につき,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」を争うため,以下検討する。
  (1)関係証拠によれば,各DVDは,本件DVDを含め,児童ポルノ法2条3項にいう「児童ポルノ」に当たるといえ,また,被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,各DVDを入手したことが認められる。このように,自己の性的好奇心を満たす目的でポルノの所持を開始した場合,特段の事情がない限り,その後の所持についても,自己の性的好奇心を満たす目的であると推認するのが合理的である。
  (2)本件において,被告人が,平成30年7月18日を基準として,10年以上,各DVDを視聴していなかった可能性は否定されない。もっとも,各DVDは,被告人方の書斎の本棚に保管されていたのであり,被告人が視聴しようと思えばいつでも視聴できたものである。同書斎には,明らかに不要なものも保管されており,廃棄されていないからといって,直ちに被告人が各DVDへの興味・関心を有していたことにはならないものの,少なくとも,各DVDは,一見してポルノと分かる外観ではなく,廃棄することが困難であったといった事情は見当たらない。各DVDは,同日時点で存在する他のポルノに比べれば,画質等が劣るものであるが,性的好奇心が向けられるには十分なものである。そして,前記2で説示したとおり,被告人は,同日頃において,女子児童に性的興味を有していたと認められるところである。
    以上のとおり,被告人は,各DVDを視聴しようと思えば容易に視聴でき,かつ,それによって,自己の性的好奇心を満たすことができたものといえるのであって,前記特段の事情は認められない。結局,同日時点において被告人は各DVDへの興味・関心を失っていたとの弁護人の前記主張は,単に被告人が各DVDへの具体的な興味を失っていたとの主張に過ぎず,児童ポルノ法7条1項にいう「自己の性的好奇心を満たす目的」を否定するものではない。
  (3)したがって,被告人は,判示第2の行為日である平成30年7月18日時点において,自己の性的好奇心を満たす目的で,各DVDを所持していたと認められる。
 【法令の適用】
罰条
 判示第1の各行為 いずれも刑法176条後段
 判示第2の行為  包括して児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条1項前段,2条3項1号,2号,3号
刑種の選択
 判示第2の罪   懲役刑を選択
併合罪の処理    刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情が最も重い判示第1の1の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
刑の執行猶予    刑法25条1項
 【量刑の理由】
  令和2年2月21日
    静岡地方裁判所浜松支部刑事部
        裁判長裁判官  山田直之
           裁判官  横江麻里子
           裁判官  宮田裕平

単に自己の性的欲望を満足させるため性交罪(大阪府青少年健全育成条例違反)の否認事件(大阪地裁r03.6.1)

 「単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為」という構成要件なので、少しでも他の目的があれば、外れるんでしょうね。

大阪府青少年健全育成条例
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 
二 青少年に対し、威迫し、欺き、若しくは困惑させることその他の当該青少年の未成熟に乗じた不当な手段を用い、又は当該青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為又はわいせつな行為を行うこと。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,大阪府青少年健全育成条例違反被告事件
大阪地方裁判所判決令和3年6月1日
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 
第2 A(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,令和3年3月21日午前9時25分頃から同日午後6時49分頃までの間に,大阪市中央区(以下略)にあるホテル「△△」402号室において,単に自己の性的欲望を満足させるためAと性交し,もって当該青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為を行った。
(証拠の標目)
 なお,被告人は,判示第2の事実について,Aと性交したのは「自己の性的欲望を満足させるためだけではなかつた」などと供述するが,本件当時,Aは16歳の高校生であったのに対して,被告人は41歳の成人男性で,Aに対しては,自己の年齢を28歳と偽るなどしていたこと,被告人は,AとはLINEでやり取りしていたところ,初めて会った日にラブホテルに連れて行って性交していること,被告人は,Aの他に2名の女性と交際して肉体関係を持っていたことなどからすると,被告人は,単に自己の性的欲望を満足させるためAと性交したものと認められる。
(法令の適用)
 罰条
  判示第1の所為   児童ポルノ法7条4項,2項,2条3項3号
  判示第2の所為   大阪府青少年健全育成条例52条,39条2号
 刑種の選択
  判示各罪      いずれも懲役刑を選択
 併合罪の処理     刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入  刑法21条(30日)
 訴訟費用       刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
(求刑 懲役1年6月)
  令和3年6月3日
    大阪地方裁判所第15刑事部
           裁判官  松田道別

自己性的好奇心目的所持罪における児童ポルノの特定

法文そのままでは、具体性に欠けると思います。

 

 最高裁判所第1小法廷判決昭和24年2月10日
 旧刑訴第三六〇条第一項に依れば、所論のごとく、有罪の言渡を為すには、判決書において罪となるべき事実を判示することを要する。蓋し、その趣旨とするところは、法令を適用する事実上の根拠を明白ならしめるためである。
 そして罪となるべき事実とは、刑罰法令各本条における犯罪の構成要件に該当する具体的事実をいうものであるから、該事実を判決書に判示するには、その各本条の構成要件に該当すべき具体的事実を該構成要件に該当するか否かを判定するに足る程度に具体的に明白にし、かくしてその各本条を適用する事実上の根拠を確認し得られるようにするを以て足るものというべく、必ずしもそれ以上更にその構成要件の内容を一層精密に説示しなければならぬものではないといわねばならぬ。

 

 

刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

 

 






大阪地裁 R2.12.16 第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,自己の性的好奇心を満たす目的で,同年9月17日,大阪市〈以下省略〉所在の被告人方において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像及び映像データ9点を記録した電磁的記録媒体を内蔵するパーソナルコンピュータ1台(大阪地方検察庁令和元年領第10850号符号5)を所持し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
大阪地裁 R3.2.16 第19【平成30年3月28日付け訴因等変更請求書による変更後の平成29年12月27日付け起訴状記載の公訴事実第2の3】 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成29年4月14日,前記被告人方において,別表1記載のとおり,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録媒体に描写した児童ポルノである静止画データ83点及び動画データ42点を記録したハードディスク1台(大阪地方検察庁平成29年領第3202号符号25)を所持し,
高松地裁 R2.9.17 第4(令和2年6月26日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年3月24日,高松市〈以下省略〉の駐車場に駐車中の自動車内において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ4点及び静止画データ69点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持し
 たものである。
千葉地裁 R2.4.24 第3
2 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年6月16日,東京都江戸川区〈以下省略〉所在の被告人方において,Cの左乳房が露出された姿態が撮影された動画データ1点が記録・保存されたハードディスク1台を所持し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
静岡地裁浜松 R2.2.21 第2 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年7月18日,浜松市〈以下省略〉所在の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD14枚を所持した。
東京高裁 R2.11.12  
静岡地裁 H31.3.28 【罪となるべき事実】
 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年1月25日,静岡県●●●静岡県●●●警察署において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データ3点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台を所持したものである(平成30年5月7日付け起訴状記載の公訴事実)。
山形地裁 H31.3.12 第27【平成30年11月13日付け起訴状記載の公訴事実関係】
 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年5月8日,山形市〈以下省略〉所在の当時の本件会社の事務所兼被告人方において,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ7点(いずれもAに対する前記第1又は第2の事実の際に撮影されたもの)を記録した外付けハードディスク1台(山形地方検察庁平成30年領第252号符号4)を所持した。
大阪地裁堺支部 H30.3.19  第2 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成29年9月29日,堺市a区の被告人方において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものであって,いずれも視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ4点を記録及び蔵置した外付けハードディスク1台を所持した。
鹿児島地裁 H30.1.24 第2 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成29年11月12日,鹿児島市〈以下省略〉鹿児島中央警察署において,衣服の全部又は一部をつけない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ3点を記録したマイクロSDカード1枚を所持した。
大阪地裁 H3.2.17 第3 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年2月9日,大阪府寝屋川市(以下略)Gにおいて,児童による性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持した。
高松地裁 R2.10.28 第2 自己の性的好奇心を満たす目的で,同月27日,■■■の当時の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ3点を記録した携帯電話機1台を所持した。
仙台地裁 H30.9.7 第5 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年5月17日,前記第2記載の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD4枚を所持したものである。

「その首を両手で絞め,「脱げ」と語気鋭く申し向けるなどして,同人を全裸にさせた上,同人の後頭部を手で押さえつけながら,その口腔内に自己の陰茎を入れるなどし,さらに,同人の胸や陰部を直接手指で触ったり,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなど」という強制性交の罪となるべき事実(那覇地裁r03.5.24)

「その首を両手で絞め,「脱げ」と語気鋭く申し向けるなどして,同人を全裸にさせた上,同人の後頭部を手で押さえつけながら,その口腔内に自己の陰茎を入れるなどし,さらに,同人の胸や陰部を直接手指で触ったり,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなど」という強制性交の罪となるべき事実(那覇地裁r03.5.24)

「全体を包括して刑法177条1罪が成立すると判断した。」というのですが、起訴罪名は強制性交とわいせつ誘拐罪だけだから[同人の胸や陰部を直接手指で触ったり,]の部分は強制わいせつ罪で起訴されていない。 不告不理を検討した方がいい。
 強制性交未遂の場合、姦淫目的で手を引っ張っただけの未遂と、脱がせて裸にして陰茎押しつけて未遂とで量刑が大きく違うので、わいせつ行為が記載されるのですが、実は起訴されていない。

事件番号 令3(わ)73号
事件名 わいせつ略取誘拐,強制性交等被告事件
文献番号 2021WLJPCA05246002
 上記の者に対するわいせつ略取誘拐,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官井川貴文及び国選弁護人伊東幸太朗各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は,被害者(その氏名は別紙記載1のとおり。当時9歳)を略取誘拐して強制性交等をしようと考え,令和2年7月21日午後5時28分頃から同日午後5時46分頃までの間に,沖縄県内の路上(その所在地は別紙記載2のとおり)において,徒歩で通行中の同人に対し,道案内の依頼を装って声をかけ,同人にその旨誤信させ,その背後から同人が背負っていたランドセルを手で押し,同人を同所付近路上に駐車させた被告人使用の乗用車まで連行して同車後部座席に乗車させるとともに,被告人も同後部座席に乗り込んでドアを閉めて被害者を自己の支配下に置き,同人が13歳未満であることを知りながら,同車内において,その首を両手で絞め,「脱げ」と語気鋭く申し向けるなどして,同人を全裸にさせた上,同人の後頭部を手で押さえつけながら,その口腔内に自己の陰茎を入れるなどし,さらに,同人の胸や陰部を直接手指で触ったり,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどし,もってわいせつ目的で同人を略取誘拐した上,13歳未満の者に対し,口腔性交をした。
 (法令の適用)
 罰条
 判示所為中
 わいせつ略取誘拐の点 刑法225条
 強制性交等の点 包括して刑法177条
 (被告人は,13歳未満の被害者に対し,暴行脅迫を用いて口腔性交するという刑法177条に該当する行為をし,引き続き被害者の胸や陰部を直接手指で触ったり,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどの強制わいせつに該当する行為に及んでいるが,これらの行為は,前記刑法177条該当行為と接着した機会に同一犯意に基づいてされたと認められることなどから,全体を包括して刑法177条1罪が成立すると判断した。)
 科刑上一罪の処理 刑法54条1項後段,10条(わいせつ略取誘拐と強制性交等との間には手段結果の関係があるので,1罪として重い強制性交等罪の刑で処断)
 未決勾留日数算入 刑法21条
 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
 (量刑の理由)
 被告人は,被害者に虚言を弄しつつ,自らも被害者のランドセルを押すなどしてほぼ強制的に被害者を自動車内に連れ込んで逃げることの困難な状況下に置いた上,数秒間にわたって首を絞めるという相当程度強度の暴行を加えることで被害者の抵抗を封じ,全裸にさせた上で口腔性交等の行為に及んだ。
 (検察官の求刑・懲役7年)
 令和3年5月25日
 那覇地方裁判所刑事第1部
 (裁判長裁判官 大橋弘治 裁判官 君島直之 裁判官 山本隼人)

強制性交(177後段)2件で執行猶予(佐賀地裁R3.5.27)

 公務員。示談200万
 量刑DBの「部類」で量刑されますから、軽い部類の裁判例を集めて、軽い部類になるような情状立証をすることになりますね。

裁判年月日 令和 3年 5月27日 
裁判所名 佐賀地裁 裁判区分 判決
事件名 強制性交等被告事件
文献番号 2021WLJPCA05276008
主文
 被告人を懲役3年に処する。
 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,別紙記載の者(以下「A」という。)が13歳未満の者であることを知りながら,Aと性交しようと考え,以下の行為に及んだ。
 第1 令和3年1月5日午後10時2分頃から同月6日午前1時44分頃までの間,福岡県久留米市〈以下省略〉「aホテル」405号室において,Aと口腔性交及び性交した。
 第2 同月6日午後7時36分頃から同月7日午前9時56分頃までの間,福岡市〈以下省略〉bホテル501号室において,Aと口腔性交及び性交した。
 (証拠の標目)(括弧内の番号は検察官請求の証拠番号を示す。)
 判示事実全部について
 ・ 被告人の公判供述
 ・ 聴取結果報告書抄本(甲1)
 ・ 捜査報告書(甲2)
 判示第1の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙3)
 ・ 捜査報告書(甲5)
 判示第2の事実について
 ・ 被告人の警察官調書(乙4)
 ・ 捜査報告書(甲4)
 (法令の適用)
 罰条
 判示各行為について いずれも刑法177条後段
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
 酌量減軽 刑法66条,71条,68条3号
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 訴訟費用 刑訴法181条1項ただし書(不負担)
 (量刑の理由)
 被告人は,SNSを通じて当時小学6年生のAと知り合い,Aから一方的に好意を告げられて交際を開始した上,Aから積極的に性行為に誘われて,判示の性行為に及んだ。被告人は,当時刑務官として矯正教育に携わる立場にあったのに,Aの年齢や精神的未熟さを顧みることなく,誘われるまま,安易に性行為に及んだもので,結局は自己の性欲を満たすために犯行に及んだといわざるを得ず,そのいきさつに酌むべき事情は乏しい。犯行態様に粗暴な点は見られないものの,被告人は犯行に際し避妊をしておらず,Aの身体に妊娠等の重大な影響を与える危険性があった。本件がAの将来の健全な成長に悪影響を及ぼす可能性は高い。以上によれば,被告人の刑事責任は軽いものではないが,同種事案の中で重い部類に属するとまではいえない。
 その上で,被告人は,Aの母に対し200万円を支払って,示談を成立させている。これに加え,被告人に前科前歴がないこと,公判廷に至ってもAの精神的未熟さに対する認識が乏しい面がうかがえるものの,当初から事実を素直に認め,Aには二度と会わない旨述べて被告人なりに反省の態度を示していること,父が被告人を監督する旨誓約していることなどを考慮すると,被告人に対しては,酌量減軽をした上で,今回に限りその刑の執行を猶予するのが相当と判断した。
 (求刑・懲役5年)
 佐賀地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 今泉裕登 裁判官 西村彩子 裁判官 神尾元樹)

単純所持罪(7条1項)について「2衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点」という罪となるべき事実の記載方法


 判示第1の2の3郷ポルノの事実摘示は「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」という法2条3項3号の法文を丸写ししただけで、具体的な事実が記載されていないので理由不備ですよね。
 3号ポルノの児童は全裸か半裸ですから具体的には「乳房を露出する姿態」とか「陰部を露出する姿態」となるはずで、「衣服の全部又は一部を着けない」という記載になるはずがありません。

刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

判例番号】 L07451418
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ略取,強制わいせつ致死,殺人,死体遺棄,死体損壊,電汽車往来危険被告事件

【事件番号】 新潟地方裁判所判決
【判決日付】 令和元年12月4日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
       主   文

 被告人を無期懲役に処する。
 未決勾留日数中370日をその刑に算入する。

       理   由

(罪となるべき事実)
第1 被告人は,自分の性的好奇心を満たす目的で,平成29年11月27日,新潟県上越市(以下略)所在の新潟県上越警察署において,以下の各動画データを記録した児童ポルノである記録媒体を内蔵した携帯電話機1台を所持した。
 1 他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
 2 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点
第2 被告人は,下校中の■■■(当時7歳。以下「A」という。)に対して強いてわいせつな行為をしようと考え,平成30年5月7日午後3時20分頃,新潟市西区(以下略)付近路上(以下「略取現場」という。)において,その場所を歩行中のAの背後から軽自動車を運転して接近し,車の右前部をAに衝突させ,転倒したAを抱きかかえて車の後部座席に乗せ,その首を手で絞め付けてAを気絶させ,車をその場所から発進させてAを連れ去り,もってわいせつの目的でAを略取するとともにAの反抗を抑圧した。そして,その日の午後3時28分頃からその日の午後3時59分頃までの間に,同区(以下略)所在の「□□広場」(以下「広場」という。)駐車場に駐車中の車内において,Aが13歳未満であることを知りながら,Aのズボンとパンツを脱がせて,その膣内に手指を挿入するなどし,もって強いてわいせつな行為をした。さらに,その頃,その場所において,Aが意識を取り戻して声を上げたことから,Aを気絶させるため,Aが死ぬかもしれないと認識しながら,Aの首を手で絞め付けて圧迫し,よって,その頃,その場所において,Aを頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。
第3 被告人は,その日の午後10時25分頃,同区(以下略)付近のB株式会社新潟支社△△線内において,Aの死体を同線軌道上に置いて放置し,その日の午後10時30分頃,同社○×駅方面から同社×○駅方面に向けて走行してきた電車にAの死体を轢過させて,その頸部を離断させるなどし,もって死体を遺棄,損壊するとともに,電車の往来の危険を生じさせた。

長崎県少年保護育成条例16条2項の「少年に拒まれたにもかかわらず提供を行うように求める」行為=嫌だ、あげない、無理→該当する 何に使うの?、おかしいよ、ばかじやない→該当しない

長崎県少年保護育成条例16条2項の「少年に拒まれたにもかかわらず提供を行うように求める」行為=嫌だ、あげない、無理→該当する 何に使うの?、おかしいよ、ばかじやない→該当しない
 方言も混じるとわかりませんよね。
 なお、「送らないと会話の内容をバラす、どうなるかわからないぞ」というのは脅迫ですので威迫になりません。

「威迫」とは、脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為をいう。 
例:送らないと会話の内容をバラす、どうなるかわからないぞ

長崎県少年保護育成条例の解説h31
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第16条の2何人も、少年に対し、次に掲げる行為を行ってはならない。
(1)少年に拒まれたにもかかわらず、当該少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。以下同じ。)の提供を行うように求めること。
(2)少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
[要旨]
本条は、少年の健全な育成を阻害するおそれのある、いわゆる児童ポルノの自画撮り勧誘行為を禁止したものである。
解説]
1 この条は、スマートフオン等の普及に伴い、SNSに代表されるコミュニティサイト等を通じて知り合った相手に、少年が自身の裸や下着姿を撮影させられたうえ、メール等で送らされる事案が後を絶たないことを受け、平成31年の改正により新設されたものである。
2 「何人も」とは、第1条の2の解説と同様であるが、インターネットを利用して勧誘行為をする場合、他県居住者等も含まれるものと解される。
3勧誘行為は、インターネット等を通じて行われることがほとんどであるが、インターネットを通じて犯行が行われた場合、行為者が勧誘を行った場所のみならず、被害者となる少年が勧誘行為を受けた場所である結果発生地も犯罪地となる。
よって、コミュニティサイトやメールなどを利用して県外から県内の少年に提供を求める行為、県内から県外の少年に提供を求める行為についても規制の対象となる。
4 「当該少年に係る児童ポルノ等」とは、いわゆる「自画撮り画像」をいう。
児童ポルノ等」には、写真や電磁的記録に係る記録媒体のほか、メール等に添付する画像データも含まれる。
5本条の規定に違反して、当該少年に対し、不当な手段(「拒まれたにもかかわらず」、「欺き、威迫し又は困惑させる方法」及び「対償を供与し、又はその供与の約束をする方法」)により、当該少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた場合は、30万円以下の罰金に処せられる。
「拒まれたにもかかわらず」とは、児童ポルノ等の提供を拒絶していることをいう。
例:
嫌だ、あげない、無理→該当する
何に使うの?、おかしいよ、ばかじやない→該当しない

「欺く」とは、事実及び評価についての人の判断に誤りを生じさせる行為をいう。
例:
(同性や医師になりすまして)体の悩みの相談にのるから画像を送って
「威迫」とは、脅迫に至らない程度の人に不安を生ぜしめるような行為をいう。
例:
送らないと会話の内容をバラす、どうなるかわからないぞ
「困惑させる」とは、相手方を困らせて戸惑わせる(不安にさせる)ことをいう。
例:送ってくれないと死ぬ、好きなら送れると思うけど
「対償を供与し」とは、児童ポルノ等を提供することに対する反対給付としての経済的利益をいい、現金に限らず物品であってもよく、金銭の貸付や返済の猶予又は免除等も含まれ、金額の多寡も問わない。,
例:
画像をくれたらお金をあげる、ギフトカードのパスワードを送付する
6本条は、不当な手段を用いた要求行為を禁止していることから、恋愛関係にある場合のやり取りや冗談等による要求行為については、本条の規定を適用しない。
また、本条の規定に違反した者が少年である場合、罰則は適用しない。
罰則
本条違反: 30万円以下の罰金
本規定の対象は、インターネットによるやり取りが主となり、通常、被疑者と被害者が対面することがないため、第23条の規定の適用はない。

わいせつ電磁的記録有償頒布目的罪1罪の「懲役2年6月執行猶予5年罰金50万円」の判決は、懲役1年6月執行猶予4年罰金80万円)で確定


東京地裁r0301028 懲役2年6月、執行猶予5年、罰金50万円(井下田英樹裁判官)
東京高裁高裁r030609 懲役1年6月 執行猶予4年罰金80万円(藤井敏明裁判長)
最高裁決定r031011 上告棄却 
という経緯になります。
 懲役刑は執行猶予期間を自重自戒して過ごして貰えば執行猶予期間が短縮されても影響ないんですが、併科の罰金刑は実刑ですので、確定後すぐ検察官から取り立てられます。そこが増額になったのは、不利益変更の疑いがあります。

第一七五条(わいせつ物頒布等)
1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

求刑も判決も、間違って法定刑超え 是正のため高裁に控訴 東京地検・地裁
2021.02.10 朝日新聞
地検公判部によると、担当検事は法定刑の範囲内の求刑をすることで上
司の決裁を得ていたが、法廷で読み上げる資料を作成する際に書き間違えた。判決後の確認作業で別の職員が誤りに気づいたという。地検は「深く反省し、より一層の点検確認を行い、再発防止に努めたい」、確認を怠ってそのまま判決を出した東京地裁の後藤博所長は「このような事態が生じたことは遺憾である」とコメントした。

法定超え1審判決 破棄=東京
2021.06.11 読売新聞
 わいせつDVDを販売目的で所持した罪に問われ、1審・東京地裁で法定刑を超える違法な判決を受けた被告2人の控訴審判決が9日、東京高裁であった。藤井敏明裁判長は1審判決を破棄し、いずれも懲役1年6月、執行猶予4年などとする判決を言い渡した。

法定超え1審破棄 2審判決が確定へ=東京
2021.10.13 読売新聞
  わいせつDVDを販売目的で所持した罪に問われ、1審・東京地裁で法定刑を超える違法な判決を受けた男(70)について、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は11日付の決定で被告側の上告を棄却した。懲役1年6月、執行猶予4年、罰金80万円とした2審・東京高裁判決が確定する。
 男は、わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持罪で起訴された。1審で検察側が同罪の法定刑(2年以下の懲役など)を超える懲役2年6月などを誤って求刑。東京地裁もミスに気づかず、今年1月に、懲役2年6月、執行猶予5年、罰金50万円の判決を言い渡した。検察側、被告側の双方が控訴し、東京高裁が6月に1審判決を破棄していた。

追記 2022/01/18
主文を閲覧してきました。
裁判官名・検察官名は秘匿されました。

東京地裁r3.1.28
被告人aを懲役2年6月及び罰金80万円に、
被告人bを懲役2年6月及び罰金50万円に、それぞれ処する
この裁判確定の日から、被告人aに対して4年間 被告人bに対し5年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する

東京高裁R3.6.9
原判決を破棄する
被告人両名をそれぞれ懲役1年6月及び罰金80万円に処する、
この裁判確定の日から、被告人両名に対して4年間 それぞれその懲役刑の執行を猶予する

熊本地震の避難所(以下「本件避難所」という。)において,当時11歳の女子児童(以下「本件児童」という。)に対し本件児童が18歳未満であることを知りながら,その面前でわいせつな動画を見せたという熊本県少年保護育成条例違反の被疑事実(熊本地裁r3.3.3)

 わいせつな動画を見せるというのは「わいせつ行為」なんですかね?

裁判年月日 令和 3年 3月 3日 裁判所名 熊本地裁 裁判区分 判決
事件番号 令元(ワ)319号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2021WLJPCA03036003
住所〈省略〉 
原告 
X 
同訴訟代理人弁護士 
松本卓也 
立山晴大 
小松圭介 
熊本市〈以下省略〉 
被告 
熊本県 
同代表者知事 
A 
同訴訟代理人弁護士 
髙島剛一 
同指定代理人 
主文
 1 被告は,原告に対し,16万5000円及びこれに対する平成28年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを40分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,220万円及びこれに対する平成28年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
 1 事案の概要
 本件は,熊本県少年保護育成条例違反の被疑事実により熊本県警察に逮捕・勾留された原告が,その逮捕・勾留中に熊本県警察の警察官が取調べの際に黙秘権を告知しなかったほか,黙秘権侵害となる発言をし,弁護人との接見内容に関する質問を行ったこと等により原告の黙秘権及び弁護人との接見交通権が侵害された旨主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償金220万円及びこれに対する逮捕日である平成28年5月16日から支払済みまで民法(ただし,平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 2 前提事実(争いのない事実並びに各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
  (1) 当事者
   ア 原告は,平成8年生まれの男性であり,平成28年5月の逮捕・勾留当時19歳の会社員であった。(弁論の全趣旨)
   イ 被告は,熊本県警察を所管する地方公共団体である。(争いがない。)
  (2) 本件逮捕・勾留
 原告は,平成28年5月16日,同年4月に発生したいわゆる熊本地震の避難所(以下「本件避難所」という。)において,当時11歳の女子児童(以下「本件児童」という。)に対し本件児童が18歳未満であることを知りながら,その面前でわいせつな動画を見せたとして,熊本県少年保護育成条例違反の被疑事実(以下「本件被疑事実」という。)により通常逮捕され,熊本県警察本部留置施設に留置された。原告は,同月18日に熊本地方裁判の裁判官が行った勾留決定を経て,同月27日の勾留期間満了まで上記留置施設に勾留された。(争いがない。)
  (3) 原告の取調べ
 原告の逮捕・勾留中,原告の取調べは,熊本南警察署のB巡査部長(以下「B巡査部長」という。)が主に担当し,B巡査部長は,同月16日,同月18日,同月21日,同月22日及び同月24日の計5日にわたり,原告に対し本件被疑事実に関する取調べを行った。(争いがない。)
  (4) 原告による弁護人の選任
 原告は,逮捕当日の同月16日に当番弁護士となった松本卓也弁護士(本件訴訟代理人。以下「松本弁護士」という。)と面会し,その後母親を通じて松本弁護士を弁護人として選任した。
 松本弁護士は,同月18日,日本弁護士連合会作成の「被疑者ノート」(弁護人が接見の際に見ながら取調べ状況の説明を受けるとともに,後日返却を受け,弁護活動に役立てることを予定して,被疑者に差し入れ,記録を要請するもの。以下,単に「被疑者ノート」という。)を原告に差し入れた。(甲4,18)
  (5) 原告に対する処分
 原告は,同月27日,勾留期間が満了したことにより釈放され,熊本地方検察庁の検察官は,同日付けで,審判に付すべき事由を熊本県迷惑行為等防止条例違反に変更した上で,原告を熊本家庭裁判所に送致したが,熊本家庭裁判所は,同年10月11日,送致された事実(非行事実)が認められないことを理由として原告を保護処分に付さない旨の決定をした。(甲3)

熊本県少年保護育成条例の解説h31
(みだらな性行為及びわいせつ行為の禁止)
第13条
1何人も、少年に対し、みだらな性行為又はわいせつ行為をしてはならない。
2何人も、少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
ニーニ〔要旨〕
本条は、少年に対してみだらな性行為又はわいせつ行為をすること、又はこれらの行為を故意に教えたり、見せたりすることを禁止するものである。
解説
3第1項関係
(1) 「みだらな性行為」とは、「淫行」と同義語で、一般社会人からみて不純とされる性行為をいい、結婚を前提としない、単なる欲望を満たすためあるいは好奇心からのみ行う性行為がこれにあたり、性交のほか性交類似行為も含まれる。また、不純であるかどうかは、あくまでも社会通念上判断されるべきものである。
なお、17歳の女子高生と分かっていながら性交したとして、愛知県青少年保護育成条
例(淫行の禁止)違反の罪に問われた男性に対する無罪判決(平成19. 5. 23、名古屋簡裁判決)が出ていることから注意が必要である。同裁判は、被告である男性が「単に自己の性的欲望を満たすためだけの目的」で性行為に至ったのかが争われたもので、判決では、
「不倫」「結婚を前提にしない」というだけでは刑事罰の対象とはならず、「加害者と青少年との関係性、行為の手段方法、状況等の外形的なものを捉え、青少年の保護育成上危険があるか、加害者に法的秩序からみて実質的に不当性、違法性があるか等、これらを時代に応じて『社会通念』を基準にして判断すべき」
と述べた上で、

一定期間に映画を見に行くなどのデートを重ねたこと、女子高生も男性に対して好意を抱いており、合意や心的交流があったうえでのセックスだったことなどから、「淫行」に相当するというには相当な疑問が残るとして、男性を無罪としている。
また、同判決では、以下の①~④のような場合は、たとえ合意があっても青少年保護の観点から社会通念上非難に値する行為、つまり「淫行」としている。
①職務上支配関係下で行われる性行為
②家出中の蕾少年を誘った性行為
③一面識もないのに性交渉だけを目的に短時間のうちに青少年に会って性行為すること
④代|賞として金品などの利益提供やその約束のもとに行われる性行為
(2)性交類似行為とは、性交に類似した行為であり、少年にとって精神的又は身体的な観点から性交と同様の影響を及ぼすものを指す。すなわち、男女間の性交を模した、あるいは性交を連想させるような姿態での手淫、口淫行為や同性愛行為等がこれに当たる。(昭和51 . 4. 26大阪高裁判決、平成8. 3. 18長野家裁判決等)
(3) 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激、興薑させたり、その露骨な表現によって正常な普通一般社会人に、性的しゅうち嫌悪の情をおこさせ善良な性的道義感に反するものをいう。
しかし、現にしゅうち嫌悪の情をおこさせたことを必要としない。このような情をおこさせる性質の行為であればこれに当たる。
例えば、単に陰部に触れる行為、乳房を撫でる行為、接吻行為等がこれに当たる。
(4)本項の規定のうち児菫買舂、児菫ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成1 1年法律第52号)に該当するものについては、同法が適用される。

長野県で青少年淫行+児童ポルノ製造しても製造罪だけが起訴される理由

一般に、長野県・岡山県で、青少年と淫行して撮影すると
2019.11.15 長野県  児童ポルノ製造
2019.12.15 岡山県  児童ポルノ製造+岡山県青少年条例違反
という罪名選択になります

長野県子どもを性被害から守るための条例
(威迫等による性行為等の禁止)
第17条
1 何人も、子どもに対し、威迫し、欺き若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じて、性行為又はわいせつな行為を行ってはならない。

岡山県青少年健全育成条例
(淫行及びわいせつ行為の禁止)
第20条 何人も,青少年に対し淫行又はわいせつ行為をしてはならない。

 長野県は下記の判例の①のみを処罰することにして、岡山県は①②を処罰することにしているからです。

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、
②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

 長野県は①しか処罰していないので②の事例は把握していませんが、児童ポルノ製造罪の検挙事例をみると、②の淫行も行われていることがわかります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/60c7048ff19051ec3ae629715bcee5ff8bf913ee
発表によると、容疑者は2019年11月15日、長野県内のホテル客室で、相手が18歳未満と知りながら同県の女子中学生(当時14歳)へのわいせつな行為を写真撮影したほか、同年12月15日には岡山県内のホテル客室で、同様に同県の女子高校生(同17歳)にわいせつな行為をし、写真撮影した疑い。

強制わいせつ致傷無罪判決(千葉地裁r03.7.15)

 わいせつの定義もないのに「わいせつ行為とはいえない」と認定しています。

千葉地方裁判所
令和3年7月15日刑事第1部判決
       判   決
に対する,強制わいせつ致傷(変更後の訴因 同)
各被告事件について,当裁判所は,
検察官 大山輝幸 西山桃子
被告人A弁護人 夏井翔平(主任) 坂口靖
被告人B弁護人 小竹広子(主任) 海渡雄一
被告人C弁護人 竹花俊徳(主任) 大谷悠
各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人3名はいずれも無罪。
       理   由

【秘匿されている被害者関連情報については,別紙秘匿情報一覧のとおり】
第1 本件公訴事実
 本件公訴事実は,「被告人3名は,D(秘匿名,当時21歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,共謀の上,令和2年8月9日午後11時27分頃から同日午後11時36分頃までの間,千葉県茂原市内の同人方敷地内において,同人に対し,被告人Aが背後からDの左脇に左手を通して着衣の上から同人の左胸をなで回し【わいせつ行為〔1〕】,被告人BがDの顔を両手で押さえ付けてキスしようとし【わいせつ行為〔2〕】,更にわいせつな行為をするため,同所から上記D方北東側の隣家先路上までの間,被告人A及び同BがDの腕をそれぞれ抱きかかえて同人を後ろ向きに引きずるなどして移動させるなどし【引きずり行為】,その際,逃げようとしたDを前記路上及び同人方敷地内において転倒させて右手及び両膝等を地面に打ち付けさせ【転倒〔1〕,同〔2〕】,よって同人に全治約10日間を要する右手・右足・左膝擦過傷等の傷害を負わせた。」というものである(【】内は当裁判所の付けた略称である。)。
第2 本件の争点等
 各弁護人は,各わいせつ行為,引きずり行為,各転倒はいずれも存在せず,被告人らがDへの強制わいせつ行為を共謀した事実もないから,被告人3名はいずれも無罪である旨を主張しており,本件の争点は,事件性及び共謀の有無である。
 当裁判所は,D証言によって事件性を認めるには合理的な疑いが残り,共謀の有無を検討するまでもなく,被告人3名はいずれも無罪と判断した。

第5 D証言の信用性について
1 D証言の外部的事情に関する検討
(1)Dの属性等
 弁護人らが指摘するとおり,Dには,事実ではない話をする傾向が認められる。すなわち,関係者らとのメッセージのやりとりをみると,本件の約2週間前には,Aから保育士として就職したのかと尋ねられ,実際には全く異なる仕事をしているのにこれを肯定し,更に保育園の保護者に見られるのが嫌で自宅から離れた場所の保育園に就職したなどと書き送ったり(弁16-26~41),実際には,アウディ(ドイツ車のブランド名)に乗っていたわけでもないのに,Bに対し,「私のアウディで事故ろう」とメッセージを送ってドライブに誘ったり(弁16-80),本件前には,Aからの通話に応じられない理由として、そのような事実はないのに,精神的に参っている女友達から話を聞いている最中であるかのように振る舞ったり(弁16-140,186~188,222),本件後には,Eに対し,家を出たのは隣人から迷惑だといって呼ばれたからであると事実とは異なる説明をしたり(弁16-271,274)している。これらのメッセージの内容はいずれも,D自身が,事実とは異なることを認めているが,Dは,事実と異なるメッセージを送った理由について問い質されても,特に動揺したり,恥じ入ったりする様子はみられず,分からない,説明が面倒だからなどと,さも当然のごとく答えている。これらの証言態度から,Dが事実と異なる話をすることに関し,心理的抵抗感の少ない人物であることがみてとれる。
 このような属性をDが有していることは,被害内容と直接関係するものではないものの,証言の信用性について,慎重な検討を要する事情があるといわざるを得ない。 
(2)虚偽供述の動機
 検察官は,Dと被告人3名は,元同級生である地元の友人同士として,本件に至るまでは良好な関係を維持していたのであって,そのような関係の相手から性犯罪の被害を受けた事実を申告することは,一般的に大きな心理的負担を伴うから,地元の知人・友人のことを警察に申告するということ自体,その後の地域社会の中での関係を考えれば,ためらうのが普通で,相当な覚悟がなければできない,そのような負担を抱え込んでまで嘘の被害申告をしても何の得にもならない,と主張している。一般的な心理的負担に関しては,そのとおりである。
 しかしながら,Dは若年で社会経験に乏しく,当初EやD母に被害を告げた時点で,被告人3名が逮捕されて裁判員裁判にかけられるといった大事件になることまで予見できていたかは疑問がある。軽い気持ちで被害の話をEや母にしたところ,周囲が騒ぎ出し,引くに引けなくなることはあり得ることである。本件でも,Dは当初,自分から積極的に警察に申告しようとはしたわけではなく,両親やEの勧めにより,母に交番まで同伴されて被害申告している。
 一方で,事件があったとされる時間の前後に,Dは,Eと通話やメッセージのやり取りをしていたが,被告人3名がD宅前に来ていることや外に出て会うことは知らせていなかった。ところが,Fらと出会った際,上半身裸のAに肩を抱かれて歩いている姿をFに目撃され,何をやっているのかと呆れた様子で質問されれば,FがそのことをEに告げるのではないかとDが心配になったことは想像に難くない(Bによれば,D自身も,Bが別の女性と遊んでいるのを見たなどとBの交際相手に告げていたという。Cも似た経験をしている。)。Dが事件直後に,それまで疎遠だったFに急にコンタクトを取っている(弁16-427~)のもそれと符合する。Dは,当時,Eに頼んで交際を了承してもらってから1か月も経っておらず,Eとの信頼関係が盤石とは言い難い状況であったことから,自分が望んでそのような事態になったのではないとEに弁解しておきたいという気持ちが生じたとしても無理はない。本件直後,DがEに対し,「ねえ!怒った!?」「誤解される前にちゃんと自分の口から言いたかった」(弁16-321,322)とメッセージを送っていることは上記見方に符合する。その結果,Dは,そのような事態になったことについて,自分に責任はなく,被害者なのだということを強調したい余り,また,Eから心配されたい,気をひきたいという気持ちから,被告人らからされた行為を脚色して,被害を申告した可能性も否定できない。D証言によっても,DがAから肩を抱き寄せられたことはあるが,抱きしめられた事実はないのに,「泣きそ」「抱きしめられるし死にたい」(弁16-289,290)とのメッセージをDがEに送っていることは,上記見方に符合する。
 さらに,被告人3名の供述どおりだとしても,被告人らが深夜,上半身裸でD方を訪問し,Aは酒に酔った勢いでいきなりDの肩を抱くなどしたというのであって,Dが被告人3名から軽く扱われていると感じて,ショックを受けたり不快に思ったりした可能性もある。Dは,Fから,Cが「Dでてこねえし あいつだりい」とDの悪口を言っていると聞かされ,怒りを感じたことも認めている。これらの事情は,Dの虚偽供述に対する心理的抵抗をかなり下げた可能性がある。
 このようにDには虚偽供述の動機になり得る事情が複数想定されるから,検察官のように,うその被害申告をしても何の得にもならないなどということはできないのであり,Dの証言については,より慎重な検討が必要である。
2 D証言自体に関する検討
(1)証言内容の具体性・一貫性
 Dは,被告人らから受けた暴行及びわいせつ行為や2度の転倒について,その都度相応に具体的な説明をするものの,その内容は証言の中でも一貫しておらず,結局のところ被害態様があいまいであると言わざるを得ない。また,捜査段階でも多くの点で変遷があったことがうかがわれる。
 この点につき,検察官は,暴行やわいせつ行為があったという部分は一貫しており,細部や出来事の順番については記憶の混同,聞き方や表現の差異等によって変遷が生じてもおかしくないのであるから,D証言の核心部分についての信用性は損なわれない旨主張する。しかし,既に述べたように,D証言と被告人3名の各供述の違いが,背中に回した手の位置,顔と顔の距離など微妙なものであるときに,暴行やわいせつ行為があったという以外に明確で一貫している部分がないということは,軽微な問題とはいえない。以下,詳述する。
ア 各わいせつ行為の状況
(ア)被害の場所
 まず,D証言では,各わいせつ行為のタイミングや場所が特定できない。具体的には,検察官からの主尋問の際は,玄関を出た後被告人らとやりとりがあり,敷地外に出る直前に胸を触られるなどした,道路と敷地のぎりぎりの場所だったので,捜査段階では敷地外の路上と説明していた,というものであったのが,裁判所からの補充尋問では,玄関ポーチ上で胸を触られたかのような説明をしたり,胸を触られるなどした場所やタイミングは分からないと言ったりし,結局,検察官からの再々主尋問に対し,場所は混ざっていて分からない,玄関と敷地外のどちらに近いかも分からないと述べるに至った。さらに,Dの捜査段階における供述には,胸を揉まれるなどした場所について,自宅から離れた路上とするものから,自宅敷地内とするものまで混在しているというのであるから,Dの被害を受けた場所に関する記憶が不確かであることが一層うかがわれる。
(イ)被害時の態勢
 また,Dは,胸を触られた態勢について,最初に,D母と共に,交番で被害申告した際は,後ろから覆いかぶさるようにして触られたと述べていたようであるが(D母証言,Dは否認),弁護人から,その後の届出受理報告書で,Aに背後から両脇下から抱きかかえられ,左胸を触られたと述べていたのではないかと問われると,した記憶はないが警察官が勝手に作ったはずはないと答え,公判では,腰の後ろから回された手で左胸を揉まれた,と証言している。そのときにBがどこにいたかの供述もあいまいである。捜査段階では,自身の左側にいて,自分の左腕をつかまれていたと述べ,その旨の再現写真が撮られており,公判でもAの弁護人に対しては,そのように証言したが,その後,裁判所から改めて問われるとBは自分の右斜め前にいて,「大丈夫,こっちおいで」と言われたと述べる。
(ウ)被害態様
 胸の触り方についても,捜査段階では左胸をなで回された,と述べて,公訴事実もそのように記載されていたのに,公判では,最初は,手を動かしながら,揉むという動きがあった,数回揉まれたと証言し,食い違いを指摘されると,揉むも撫でまわすも同じだと,主張した。胸を触られた時間についても,捜査段階では20~30秒と述べていたのに,公判では5~10秒に短縮された。
(エ)まとめ
 結局,D証言は,最も重要なわいせつ行為の詳細について,被害に遭った場所,そのときの態勢や触り方が全く一義的に定まらない。
イ CのA及びBに対する発言を聞いた状況
 Dは,CがA及びBに,「抑えればいける」などと言ったのは,Aから胸を揉まれ,Bからキスされそうになった後,路上を引っ張られていた場面である,それを聞いて本気で抵抗したので転倒したと証言する。しかし,被害申告当初は,CがAとBが抑えればいけると言った後,Aから胸を揉まれ,Bにキスされそうになったと供述していたというのであるから,この点にも変遷が見られる。
ウ 引きずり行為及び転倒〔1〕の状況
 Dは,A及びBに引っぱられて転倒した,両名に両腕を捕まれて起き上がらされた後,短時間後ろ向きに引きずられたと証言するが,どのような体勢を経て後ろ向きになり,その後また前を向くことになったのか,そのとき,A及びBは手を放したのか,手をつかまれたままだったのか等,具体的なイメージを持つことが困難である。しかも,Dは,被害申告当初は,後ろ向きに引っ張られ又は引きずられたとの供述をしていなかったが,検察官による取調べの際には,後ろ向きに引きずられているときにFらと出会ったので,Fの姿は見えなかったと供述していたというのであって,供述の変遷が顕著である。F,H,Gのうち,出会ったときにDが後ろ向きであったと証言している者はいないことに鑑みると,他の証拠との不整合を指摘されて供述内容を変更したのではないかという疑いも払拭できない。
エ 転倒〔2〕の状況
 Dは,転倒〔2〕について,合流後,自宅建物に戻る際に,玄関ポーチ前の階段で転倒した,そのことは実況見分時に警察官に説明していたという。しかし,仮にDが2回転倒しているとなれば,傷害は1回目と2回目のどちらの際にできたものなのか,仮に特定できないとすれば,2回目の転倒時まで犯行が継続していると評価できるのか等,捜査機関としては詰めなければならない問題が多数あるから,Dが2回目の転倒について供述したのに,漫然と聞き流して証拠化しないという対応は考え難い。しかし,検察官が提出した証拠中に,当初からそのような説明をしていたことを裏付けるものはない(捜査段階の供述調書や実況見分調書にはその旨の供述又は説明がない。)。転倒〔2〕に関する証拠が作成されたのは,いずれも令和3年3月以降である。以上からすれば,Dが2回目の転倒について,いつ供述を始めたのか,疑問が残る。
オ まとめ
 以上のとおり,Dの証言は,被害態様や出来事の順序について,あいまいな部分や合理的に説明できない変遷が多く,具体性や一貫性を欠く。被害場所や被害態様も,受けた暴行やわいせつ行為の核心部分を構成し,変遷も著しいものであって,単なる質問の仕方や表現の違いとか,時間経過による記憶の後退に伴う自然な変遷とは質的に異なるものである。このことは,D証言の信用性に大きな疑問を抱かせる。
(2)客観的事実や他の証拠との整合性・自然性
ア Dの行動経過との整合性
 検察官は,D証言について,Fら4名との合流をきっかけにDが自宅建物に戻り,家の中に閉じこもったとの経緯と整合し,これを合理的に説明できる,という。
 確かに,Dの行動経過は,被害の存在とも整合するが,被害がなければ説明できないわけではない。例えば,Dが上半身裸のAからいきなり肩を組まれたことなどの被告人3名の言動に不快感を感じたり,Aの下心を感じ取り,わいせつ行為が目的だったのではないかと感じて,怒ったことが理由であった可能性がある。また,最初は行く気もなかったが,被告人3名が熱心に誘うので,バーベキューにちょっと顔を出そうかとようやく思い始めたところで,Fらが来てバーベキューは終了したことを知り,白けた気持ちになって出かけるのをやめた可能性もある。また,FらにAに肩を抱かれて歩いている様子を見られたことから,被告人らと遊びに行くとEに伝わるのではないかと心配になった可能性や,Fらと出会った頃に,Eから「ごめんね,Dちゃんがなにもかも1番好きだよ」(弁16-264)というメッセージが送られてきたために,Eに黙って被告人らの誘いに応じて出かけたことを後悔して帰宅を決意した可能性も考えられる。このように,Dの行動経過については,被害がなくても,様々な仮説が成り立ちうるのであり,検察官の主張は採用できない。
イ 傷害の存在
 検察官は,Dが実際にけがをした事実と整合しており,被害が真実でなければ,Dがなぜこのときこのようなけがをしたのか説明できないと主張する。
 しかし,D自身,傷害が転倒〔1〕と〔2〕のどちらによるものなのか分からないと述べている。転倒〔2〕はD自らのつまずきによるものであることに鑑みると,傷害の存在自体から被告人らの暴行を推認するには無理がある。
 まず,診断書に記載された傷害のうち,Dの腕,すね,膝付近に擦過傷等があることはDの傷を写した写真(甲37,8月11日撮影)によって,裏付けられており,そのとおりの傷害があったと認められ,これらは,Dの語る負傷状況と整合する。しかし,この程度の傷害は被害がなければ説明できないものとはいえない。
 次に,左膝から内股に伸びる線状の傷(甲37別紙1の1枚目)については,Dが述べる被害態様からはどのようにしてできた傷であるか発生機序が不明であり,動物による引っ掻き傷に見えなくもない。少なくとも路上で転んだ転倒〔1〕とは整合せず,転倒〔2〕で階段の角で擦ったとすれば整合しなくもない程度といえる。
 さらに,診断書上は,右足関節捻挫があるとされているが,写真を見る限り,Dの右足首の辺りには全く腫れが見当たらない。また,被害後に,Dが足を引きずっていたとか,痛そうにしていたとか,歩行に障害がある様子があったと証言している者は皆無である。擦過傷であればともかく,足首を捻挫しながらそのようなことがありうるのか,本当に他覚症状があったのか疑問がないとはいえない。
 このように見ると,Dの傷害内容については,一部は整合しても,一部は受傷機序と傷害が整合するといえるか疑問があるものもあり,D証言と完全に一致しているとはいえないのであり,被害がなければ傷害の存在を説明できないとは言い難い。
ウ Dが自宅建物を出た理由等
 Dは,本件当日,被告人らとともに遊びに行くつもりはなく,自宅建物から出たのはAが隣人に迷惑をかけていることを知って注意するためであり,母にもその旨伝えて家を出たと証言しているが,この点も他の証拠と合致しない。
(ア)隣人からの電話
 Dは,Aに注意をしようとした理由として,当初は,事件前に隣人から迷惑している旨の電話をもらったかのように話していたが,実際には,8月10日の朝に隣人から迷惑を受けたと母への電話があったので,それを同月9日の事件前の出来事と勘違いしていたと証言する。しかし,信用できるD母の証言によれば,Dから被害申告を受けた後,D母の方から,同月10日午後9時半頃に隣人に謝罪の電話をかけたというのであって,同月9日又は同月10日の朝にD又は母が隣人から電話をもらった事実はない。にもかかわらず,Dは,既に事件直後からEに対し,「隣の人に呼ばれたのね」「迷惑ですって」(弁16-271,274)というメッセージを送っており,明らかに事実でない報告をしている。Dがこのとき知っていた情報は,Cから送られた「Aねえさんち間違えて隣の家の車に寄りかかっててお兄さんにDさんちとなりですって言われたらしい笑」(同248)(Aが隣家の車をDの車と勘違いして寄りかかっていたところ,隣家からD宅は隣である旨指摘された)とのメッセージのみである。これをもって,隣人から苦情電話があったから外に出て注意する必要があったというのは,飛躍がある。
(イ)DがA,Cに送ったメッセージ
 Dは,最初からAの誘いは断っていた,電話ではっきりと断っていたのに,Aが来たという。しかし,Dは,8月9日午後10時48分頃から同日午後11時26分頃にかけて,被告人3名から,Dに対し,「もうついてる」(A,弁16-218),「いまそといるよ?」(C,同230),「早く来て笑」(C,同250),「俺ら3人だけ前いるけど来れなそうだったら戻るよ!」(B,同255)などのメッセージを受信すると,Aに対しては,「11時になったら出る」(同217)と,C及びBに対しても,「でます!」(同257)などとメッセージを送信し,反応がないと「きいてんのかよ」(同259)と送信し,Cに「まってるよ!」(同260)と言わせている。これらのメッセージについて,Dは,被告人らが自宅の前に本当にいるのかを確認するためのものだった旨一貫して証言する。しかしながら,被告人らが自宅前にいるかを知りたければ,D宅1階の居間の窓から自宅前の路上を見ることで確認することができる(現に,D母は,8月9日の深夜に上半身裸の男性2名が家の前の路上にいるところを居間の窓から目撃した旨供述している。)のであり,居場所を知るためにこれらを送ったというのは不自然である。どうしてもメッセージを通じて,被告人らが自宅の前にいるかどうか知りたいのであれば,端的に自宅の前にいるかどうかを尋ねるメッセージを送るのが自然である。「11時になったらでる」(同217)というDの説明に整合しないメッセージが,消していないのにいつの間にかDの携帯電話から消えていたというDの説明も不可解である。さらに言えば,仮に被告人3名に帰ってほしいのであれば,その前から電話ではっきりと断っていたというのであるから,家の前に被告人らがいるか確認するまでもなく,メッセージで帰宅を促すことも可能なはずである。
 むしろ,「まって」,「でます!」などというメッセージは,常識的には,まもなく自宅から出るので待っていてほしいという趣旨と解され,実際,Dが,同日午後10時47分頃から同日午後11時25分頃まで,Eと通話していた(弁16-215,258)ことも,Eとの通話が終わり次第,外出するつもりだったことをうかがわせる。
 Dの説明は,いかにも苦しい。
(ウ)外出する際のD母に対する説明
 また,信用できるD母の証言によれば,Dは,友達が来ているので外に行ってくると言って外出したというのであり,この点でもD証言は他の証拠と整合しない。
(エ)腕などを触られた後で再び自宅建物から出たこと
 Dは,最初に外出した直後に被告人らを注意したとも述べているが,仮に注意を終えたのであれば,犬を置いてから再び外出する必要もない。Dの言うとおり,外に出るなり腕などを無理やり触られている状況だとすれば,被告人3名を敷地外に出すために一人で外に出たという説明はいかにも不自然である。
(オ)まとめ
 DがAらを注意し,帰宅を促すために外出したという供述は,客観証拠や他の様々な証拠に合致せず,信用できない。Dの外出目的は,本件被害の有無と直結するものではないが,DがEから「なにをいいたかった!?」(弁16-324)と問われて,「出たのは謝りに行った事と帰ってきた事」(同330~332)と答えるなど,DのEに対する説明の核心部分と推測されることに照らすと,外出中に起きたとされる出来事についてもそれに合わせて話が変えられたのではないかという疑いに通じるものがある。
エ Fら4名と出会ったときの状況
 本件被害があったとされる時間は,被告人3名とDの4名しか居合わせなかったが,その直後にFら4名と合流した状況については,3名の証言が得られており,Dの供述がこれらと整合的なのかは重要である。
 このときの状況について,F,G及びHは,三者三様の証言をしており,そのいずれかが特に他の証言よりも信用できるとはいえないものの,三者の証言が一致している点は信用性が高いと考えられる(例えば,Fのみが,Dが大声で嫌がっていた旨証言したが,Fは後にD及びEと三者で何度も事件の話をしており,記憶が混同している可能性があって採用できない。)。そして,三者が一致しているのは,Fらが被告人3名及びDと出会ったとき,AがDの体に触れていたが,BとCはDに触れていなかったこと,DはFらの方を向いていたこと,そのときDがけがを負っていたとか何か被害に遭っている最中であるといった様子はなかったこと,その後もDが自宅に戻る際に異常を感じた者はいなかったことである。
 Fらと出会った場面に関するD証言は,1回目の転倒の後,両腕をA及びBにつかまれた状態で無理やり引っ張られていたときにFらと出会い,Fから声を掛けられたことでBは手を離したというものであるが,Dが証言する状況を前提とすると,二人がかりでDを引きずっていたというのであるから,Fらの印象に残るはずであり,Fらのうち誰もBがDの腕をつかんでいるところを目撃していないことと符合しない。
オ 被害後の被告人らへの対応
 Dは,被害を受けて自宅に逃げ帰ったという時間帯の後に,Cに対して「マミー怒ってるからまって」(弁16-298)と書き送ったり,Aから出てこないのかと聞かれて「でたよ!?」(同403)と返信したりしている。上記文面は,一般的には相手を引き留める趣旨で送られたものと読める内容であり,被害直後に被害者が加害者に対して送るメッセージ内容としては不自然である。Dは,上記メッセージについて,被告人らがもう帰ったかどうか確認する趣旨だったと説明するが,自宅を出る前のメッセージと同様に,そのような説明も不合理と評価せざるを得ない。
 なお,Dは,翌10日午後1時24分頃になってから,Cに対し,「勝手に私は友達だと思っていたからあの状況で助けてくれると思ったけど普通に『Bが抑えれば大丈夫だよ』とか『抱きかかえればいける』とか言ってるの見て正直なんかもうどうでもよくなって」(弁16-562)などと,AやBから助けず,かえって唆すような言動を取った上,謝罪もないことを責めるメッセージを送り,Cが「迷惑かけてごめん辛い思いさせてごめんなさいでも笑ってたから大丈夫なのかなって思っちゃった自分いた」(同566),「さすがにAのやつはやりすぎてたから」「やりすぎだよって言ったよ」(同567)と返信したが,更に怒りのメッセージを送った(同568,571,573)。これらのやり取りは,一見,被害があったことを前提としたやり取りにも見えるが,被告人らの供述によっても,Aが嫌がるDの肩を抱いたり,BがDの顔を持ち上げるなどの不適切な行動はあったことから,それを前提としたやり取りと解する余地がある。また,これらのメッセージがやり取りされた頃には,DはFからCがDの悪口を言っていたなどと聞き,Cに対する反感を既に持っていた時期である。Dが外出した理由も,「隣の家から電話きて」とDの作った話が前提となっている。よって,被害がなければ説明できないやり取りとはいえない。
3 まとめ
 以上の検討結果を総合すれば、D証言については,その属性や虚偽供述の動機となり得る事情の存在を踏まえ,具体的かつ慎重に信用性を検討する必要があるところ,本件被害における暴行及びわいせつ行為の核心部分について具体性・一貫性を欠き,また,被害前後の出来事に関する部分を含め,客観的事実や他の証拠と整合しない。したがって,D証言と符合する傷害結果が生じているとの検察官が指摘する事情を踏まえて検討しても,公訴事実記載のわいせつ行為の被害を受け,被告人らから後ろ向きに引きずられるなどしたために2度転倒して傷害を負った旨のD証言の信用性には疑問が残るといわざるを得ない。
・・・
第7 被告人らの行為の擬律判断
 以上のとおり,Dの本件公訴事実に係る証言の信用性には疑問があり,一方で被告人3名の弁解は概ね信用することができる。
 そして,信用できる被告人らの供述によれば,〔1〕AがDの肩を抱くなどしたこと,〔2〕BがDの両頬を持った状態で約30~40cmの距離で顔を覗き込んだこと,〔3〕AがDの肩を抱きながら移動し,BもDが歩き出すまで手を引いたという事実が認められる。しかし,Aの〔1〕〔3〕行為は,馴れ馴れしくDの意思を尊重しない不適切な行動ではあるが,強制わいせつ罪のわいせつ行為とはいえない。Bの〔2〕行為も,具体的状況やBの言動に照らし,キスしようとして行った行為であるとは認められず,〔3〕行為も含め,強制わいせつ罪を構成する暴行及びわいせつ行為とはいえない。そして,わいせつ行為や暴行があったとは認められない以上,被告人3名及びDがFら4名と出会った後,Dが自宅に戻った際に,仮にAがDの手を持ったまま同行したとしても,これが強制わいせつ罪を構成する行為とはいえないし,仮にDが玄関先で転倒し,その結果けがをしたとしても,強制わいせつ致傷罪の傷害結果には当たらない。
第8 結論
 よって,本件公訴事実については,犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により,被告人3名に対し,いずれも無罪の言渡しをする。
(検察官の求刑)被告人3名につき,各懲役3年
令和3年7月20日
千葉地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 岡部豪 裁判官 宮崎桃子 裁判官 野村詩穂

岸野康隆横浜家庭裁判所判事「ネット利用型性非行の法律的問題点と調査・審判における工夫・留意点」

 個人的法益重視になってきたな。

【事例1 】:少年Aは, 18歳に満たない児童である少年Bに対し, 同人の陰部や胸部が写った写真を撮影した上, その画像データをAに送信するよう依頼した。
Bは, これに応じ,服を脱いで全裸になり, その陰部や胸部が写った写真を自分のスマートフオンで撮影し, その画像データをSNSのメッセージ機能を使ってAに送信した。

【事例2】 : 18歳に満たない児童である少年Cは, SNS上の同人のアカウントのフォロワーを増やしたり, 「いいね」を多くもらったりしたいと考え, 同人の裸の写真を撮影した上これを同人のアカウントに掲載した。

3 【事例1 】について
(1) 実行行為の内容【事例1 】における実行行為の内容は,通常,①Aが, Bに陰部等を露出した姿態をとらせ→②Bが, その写真を自分のスマートフオンで撮影し→③Bが, SNSのメッセージ機能を使って画像データをAに送信する, という流れをたどることとなる。
なお, スマートフォンの設定状況等にもよるが,③の時点では,画像データはAのスマートフオンではなく, SNSを運営する会社が管理するサーバに蔵置されていることが多い。
その場合, Aが製造した児童ポルノは,そのサーバ上に蔵置された画像データということになる。
そこで, Aのスマートフォンに蔵置するために。
④Aにおいて,送信されてきた画像データを自分のスマートフォンに保存する作業を行うことも少なくない。
その場合, Aのスマートフォンに蔵置された画像データを製造された児童ポルノとしてとらえるのであれば,①から④までが実行行為となる。
(2) Aの単純製造罪の成否まず, Aについて単純製造罪の成否を検討すると, 一連の実行行為のうち, 主要な部分を行っているのはBであるから, これをAに帰責してよいのか,帰責する場合にはどのような理由によるのかが問題となる。
これを考える上では, AとBの関係性,両者の年齢,犯行に至る経緯等を踏まえて,具体的事例ごとに判断すべきである。
例えば, Aが脅迫を用いてBに無理やり自画撮り等を行わせたケースであれば, Aには間接正犯として単純製造罪の成立が認められることになろう)一方, Bが任意に自画撮り等を行ったケースについてみると,単純製造罪は, たとえ被写体児童が児童ポルノの製造に同意していたとしても成立するとされている)ここで問題となるのは, Bが自らの意思に基づいて自画撮り等を行っている以上, もはや間接正犯は成り立たず, AとBとの共同正犯を考えるべきなのではないかという点である(その反面Bの被害者としての立場を強調するとBを共同正犯とすることについても違和感がある。)。
間接正犯の成立をどの範囲で認めるのかという問題であり,具体的事例ごとの判断となると考えるが, Bが精神的に未熟で判断能力が十分とはいえず, AがこのようなBの精神的未熟さを認識した上で, Bに依頼して自画撮り等を行わせているような場合には, Aを間接正犯と評価すべき場合が多いのではないだろうかと
(3) Bの単純製造罪の成否
次に, Bについて検討する。
被写体児童であるBは,基本的には単純製造罪における被害者の立場にあるものであるが.例外的に,被写体児童が他者に対して執拗,積極的に自分の児童ポルノを作成させるよう働きかけたような場合には, Bに共犯が成立することは理論上考えられるとされている。
しかし, Bにおいて,執拗つ積極的に働きかけたようなことがあったとしても, それがBの精神的未熟さによるものである場合には,やはりBは被害者として扱うべきであろう。
また, Bを共同正犯と評価すべき場合が仮にあったとしても, それは, Bが自らの法益を処分する行為であるから,個人的法益に対する侵害は認めることができないそして,単純製造罪の保護法益に関する上記私見に基づく場合,個人的法益に対する侵害がない場合には単純製造罪は成立しないこととなるからBに単純製造罪は成立しないと考える
・・・
4 【事例2】について
Cについても. Bと同様自らの法益を処分する行為を行っており,個人的法益に対する侵害は認められない。しかし,上述した私見に基づく場合,公然陳列罪は,社会的法益に対する侵害があれば成立することとなるので, Cには公然陳列罪が成立すると考える。