児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態」を「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態」とした事例(大阪地裁R2.12.16)

「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態」を「児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態」とした事例(大阪地裁R2.12.16)
 刑法改正で混乱するんじゃないかと思ってました。
 児童ポルノ・児童買春法の関係では、口淫は性交類似行為であって、「性交=膣性交」ですから、「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態」というのは、「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」にはなりませんね。罪となるべき事実に「性交」に該当する具体的事実が記載されていないので、理由不備です。
 全ての刑罰法規で性交=口腔性交・肛門性交含むとされてしまうと、有償の性交類似行為が売春になってしまいます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

大阪地裁令和 2年12月16日 事件名 強制性交等、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ処罰法」という。)違反被告事件
主文
 被告人を懲役年に処する。
 未決勾留日数中340日をその刑に算入する。
 大阪地方検察庁で保管中のデスクトップ型パーソナルコンピューター(G-GEARと記載)1台(同庁令和元年領第10850号符号5)を没収する。
 
 
理由

 (関係者及び関係場所等の呼称は別紙記載のとおり)
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 帰宅途中の女児と口腔性交等をしようと考え,令和元年7月20日午後9時10分頃から同日午後9時45分頃までの間,住所〈省略〉所在のaマンション7階エレベーター付近において,A(当時11歳)に対し,その後方からいきなり左手で口を塞ぎ,右手で持った果物ナイフを同人に示して「騒ぐな。」と言うなどの暴行,脅迫を加えてその反抗を著しく困難にし,同マンション7階から8階に至る階段踊り場において,同人に衣服を脱がせてその乳房を手でもみ,その陰部を手指で弄ぶなどし,さらに,同人の口腔内に自己の陰茎を入れ,口腔性交をし,
 第2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記日時頃,前記階段踊り場において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ,それらの姿態を被告人のスマートフォンで動画及び静止画撮影し,その画像及び映像データ合計11点を同スマートフォンに挿入したマイクロSDカードに保存し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し,
 第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,自己の性的好奇心を満たす目的で,同年9月17日,大阪市〈以下省略〉所在の被告人方において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像及び映像データ9点を記録した電磁的記録媒体を内蔵するパーソナルコンピュータ1台(大阪地方検察庁令和元年領第10850号符号5)を所持し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
 (証拠の標目)
 (事実認定の補足説明)
 弁護人は,判示第2及び第3の各事実に関して,被告人は,被害者の画像等を意図的にスマートフォンのマイクロSDカードに保存しておらず,被害者の画像等を「自己の性的好奇心を満たす目的で」記憶媒体に保存して判示パーソナルコンピュータ(以下「本件PC」という。)を所持していないから,被告人にはそれぞれ児童ポルノ処罰法7条4項所定の児童ポルノ製造罪及び同条1項前段所定の児童ポルノ所持罪は成立しない旨主張し,被告人も,判示第3の事実に関して,本件PCのハードディスク内に,判示第2の犯行に際して撮影した画像及び映像データを保存した覚えはない旨供述する。
 しかし,当裁判所は,判示第2及び第3の各事実がいずれも認められると判断したので,以下,その理由を補足して説明する。
 1 判示第2の事実について
 関係各証拠によれば,被告人は,判示第1の強制性交等の犯行に際して,判示第2のAの姿態を被告人のスマートフォン(以下「本件スマホ」という。)で動画及び静止画撮影したことが認められるから,意図的にAの画像データ等を保存したと認められる。なお,Aの画像データ等は,本件スマホに内蔵された電磁的記録媒体ではなく,これに装着されたマイクロSDカード(以下「本件SD」という。)内に保存されているが,被告人は,本件スマホの購入時に本件SDを装着し,そのままの状態にしていたと認められるから,本件SD内にAの画像データ等が保存されることについても当然に認識していたものと認められる。
 そして,関係各証拠によれば,被告人は,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,Aに判示第2のとおりの姿態をとらせ,これを本件スマホで動画及び静止画撮影したことが認められるから,被告人に判示第2の児童ポルノ製造罪が成立することは明らかである(なお,児童ポルノ製造罪の成立に,「自己の性的好奇心を満たす目的」は不要である。)。
 2 判示第3の事実について
  (1) 関係各証拠によれば,次の各事実が認められる(以下,月日のみの記載はいずれも令和元年である。)。
   ア 本件SDには,本件SDが差し押さえられた9月17日の時点でAの画像データ等は保存されていなかったが,復元作業の結果,判示第2の犯行において撮影されたと思料される画像データが14点,動画データが5点復元された(判示第2の事実に係る児童ポルノのデータは,この一部に相当する。)。
   イ 判示第1及び第2の犯行があった日の夜である7月21日午前0時36分ないし37分頃,前記アの画像データ等の一部と対応する画像データ等9点(判示第3の事実に係る児童ポルノのデータ。以下「本件画像等」という。)が,本件PCのデスクトップ上に存在する「新しいフォルダー」に保存された。
 上記「新しいフォルダー」には,本件PCが差し押さえられた9月17日の時点で,本件画像等を含む画像データのファイル27個及び動画データのファイル2個が保存されていた。また,本件画像等が7月21日に保存された後,同月26日には本件画像等のうちの1点が「Windows Photo Editor」を用いて編集されており,同日及び同月27日には本件画像等とは別の画像データのファイルが同フォルダーに保存されていた(なお,捜査報告書(甲15)の添付資料は,本件画像等のうち画像データ7点が「新しいフォルダー」に2個ずつ重複して保存されているとの内容であるが,実際に保存されている画像の個数は,本件PCの解析結果(甲19)のとおり,それぞれ1個ずつであると認められる。)。
 本件PCが差し押さえられた9月17日の時点で,7月21日に「新しいフォルダー」に保存されたとして記録されているのは,本件画像等のみであった。
   ウ 前記アの本件SDから復元された画像データ等のうち,前記イの「新しいフォルダー」に保存されていないファイルには,階段等が撮影されておりAの姿態等が写っていないもの等が含まれていた。
  (2) 以上の事実を踏まえて,被告人が,本件画像等を児童ポルノ処罰法7条1項前段にいう「自己の意思に基づいて所持するに至った」かどうかを検討する。
 この点に関し,まず,本件スマホと本件PCとの自動同期機能等により,被告人の操作によらずに本件PCに本件画像等が保存された可能性について検討すると,前記(1)イのとおり,本件PCが差し押さえられた時点において,「新しいフォルダー」に保存されていたファイルは,僅かに画像データのファイル27個及び動画データのファイル2個のみであり,自動同期機能等により本件スマホのデータが保存されていたとするには,余りに数が少なく不自然である。本件画像等は,本件スマホと本件PCとの自動同期機能等により保存されたものではなく,被告人の操作によって,本件PCに保存されたものと認められる(なお,仮に自動同期機能等により,被告人の操作によらずに本件画像等が本件PCに保存されたとしても,本件画像等は,デスクトップ上の「新しいフォルダー」という目立つ部分に保存されていたのであるから,被告人が自動同期機能等の存在及び本件画像等の存在に気付かないことはおよそあり得ず,それでも本件画像等の保存を継続した被告人は,「自己の意思に基づいて所持するに至った」ものと認められる。)。
 そこで,上記被告人の操作について検討すると,前記(1)イのとおり,本件PCが差し押さえられた時点において,7月21日午前0時36分ないし37分頃に「新しいフォルダー」に保存されたデータとして残っていたのは,本件SDから復元された画像データ等の一部にしか対応しない本件画像等のみであったことからすれば,被告人は,①判示第2の犯行において撮影し,本件SDに保存されていた画像データ等のうち,Aの姿態等が写っていないものを除外するなど何らかの選別を本件スマホ上であらかじめ行って削除しておき,その上で本件画像等を本件PCに保存した,②本件PCにデータを保存する際に,本件SDに保存されていた画像データ等の中から,Aの姿態等が写っていないものを除外するなどして本件画像等を選び出し,これを本件PCに保存した,③本件画像等を含めて,他のデータとともに,何のデータか把握せずに本件PCに保存し,その後に本件画像等以外のデータを削除した,という3つの場合が考えられる。まず,上記①,②の場合については,被告人が意図して本件PC内に本件画像等を保存し,「自己の意思に基づいて所持するに至った」ものと優に認められる。また,上記③の場合についても,前記(1)イのとおり,7月21日に「新しいフォルダー」に保存されたデータは本件画像等しか残っておらず,その余のデータは被告人の操作によって削除されていたとしか考えられないほか,本件画像等の1つは保存後に編集されているのであるから,遅くともこれらの時点以降は,被告人は,本件画像等が同フォルダーに保存されていることを認識した上で本件画像等の保存を継続したということができ,本件画像等を「自己の意思に基づいて所持するに至った」ものと認められる。
 そして,本件画像等の内容に照らせば,被告人が本件画像等を保存した目的が性的好奇心を満たすことにあったことは優に認められるし,被告人はAが13歳未満の児童であることを知りながらAの姿態等を撮影して児童ポルノを製造したのであるから,本件画像等が児童ポルノに当たることについての故意も当然に認められ,被告人には判示第3の児童ポルノ所持罪が成立する。
  (3)ア これに対して,被告人は,要旨次のとおり供述する。すなわち,前記「新しいフォルダー」は,本件PC内のデータを削除する前に,一時的に保管しておくためのものである。判示第1及び第2の犯行の日の晩に,本件スマホの空き容量を増やすため,本件スマホを本件PCに接続し,本件スマホ内の画像等のデータを小さくサムネイル表示した状態で確認し,人が写っている画像等があれば,それ以外の画像等が多少含まれることになっても複数枚同時に選択して「新しいフォルダー」に移動し,それ以外の画像等は本件スマホから削除するという作業をした。この整理作業の結果,本件画像等が本件スマホから「新しいフォルダー」に移動されたものと思われるが,上記整理作業に際しては画像の内容を細かく見ておらず,本件画像等を意図的に保存したということはない。また,本件画像等が「新しいフォルダー」に保存されていることは,本件PCが差し押さえられるまで知らなかった。
   イ しかし,前記認定のとおり,本件画像等が「新しいフォルダー」に保存されたのは,被告人が判示第1及び第2の犯行に及び,Aを撮影するなどした約3時間後のことであるから,被告人が前記整理作業に際して,本件SDにAの画像データ等が保存されていることを忘れていたとは考え難い(被告人自身,整理作業の時点でAの画像データ等があることは覚えていた旨述べている。)。そして,被告人の述べる前記整理作業は,画像データ等を小さくサムネイル表示して行ったとはいうものの,当該画像等が人の写っているものか否か,その内容を視認した上で行ったとのことであるから,被告人は,自らが整理している画像等の中に本件画像等が含まれていることを当然認識していたはずであり,被告人の供述を前提にしても,本件画像等9点のいずれについても全く気が付かなかったという事態はおよそ想定し難い。
 また,前記のとおり,本件画像等の1つについては,「新しいフォルダー」に保存された後,編集されていたことが認められるのであり,本件画像等が同フォルダーに保存されていることを知らなかったとの被告人の供述は客観的証拠に反する。
 以上によれば,前記被告人供述は不合理であって信用することができない。
   ウ なお,弁護人は,本件画像等のほとんどは「新しいフォルダー」に保存された後アクセスされた形跡がないことを指摘し,上記保存は自己の性的好奇心を満たす目的によるものではない旨主張するが,弁護人指摘の事情は上記目的の認定を妨げるものではない。
 3 以上によれば,判示第2及び第3の各事実はいずれも認められる。
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の所為 刑法177条前段,後段
 判示第2の所為 児童ポルノ処罰法7条4項,2項,2条3項1号,3号
 判示第3の所為 児童ポルノ処罰法7条1項前段,2条3項1号,3号
 刑種の選択
 判示第2及び第3の各罪 懲役刑
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 没収 刑法19条1項1号,2項本文(主文掲記のデスクトップ型パーソナルコンピューター(G-GEARと記載)1台は,判示第3の児童ポルノ所持の罪の犯罪行為を組成した物で,被告人以外の者に属しない)
 なお,弁護人は,本件画像等を完全に消去すれば足り,上記パーソナルコンピューター全体の没収は許されない旨主張するが,弁護人の主張するような没収方法は現行法上予定されておらず,本件における没収の必要性等に照らせば上記パーソナルコンピューターの没収が罪刑の均衡を欠き許されないといった特段の事情も認められない。
 (量刑の理由)
 
 (求刑 懲役10年,主文掲記のデスクトップ型パーソナルコンピューター(G-GEARと記載)1台の没収)
 令和2年12月17日
 大阪地方裁判所第12刑事部
 (裁判長裁判官 増田啓祐 裁判官 中山知 裁判官 尾嶋翔一)
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ツイッター等で誘導されて陰部画像を送ったら、「警察に通報されたくなかったら、paypayかアマゾンギフトカードで5万送れ」と言われた。という相談

 きょう、4回電話がありました。

 見知らぬ人に陰部写真を送るのはわいせつ電磁的記録頒布罪です。
 相手方の金銭要求は恐喝罪です。お金は払わないことです。
 1回払っても止みません。しつこいときは、わいせつ電磁的記録頒布について、弁護士に相談して、自首とか警察相談を検討してください。

 恐喝やってる相手方が警察に通報することは考えられませんが、恐喝の捜査で、陰部画像を送った人が検挙されることはありえます。
 

監護者性交罪につき「本件当日のそのゲームのアクセスログによれば,3日午前8時52分から午前9時10分までの間,ゲーム操作を行っていたことが判明したのに、「平成30年8月3日午前8時30分頃から同日午前10時50分頃までの間に,当時の自宅において,Aと口腔性交及び性交をし」と原審が事実認定したなどと指摘された事例(仙台高裁r01.12.17)

監護者性交罪につき「本件当日のそのゲームのアクセスログによれば,3日午前8時52分から午前9時10分までの間,ゲーム操作を行っていたことが判明したのに、「平成30年8月3日午前8時30分頃から同日午前10時50分頃までの間に,当時の自宅において,Aと口腔性交及び性交をし」と原審が事実認定したなどと指摘された事例(仙台高裁r01.12.17)
 1対1の事件でも、スマホとかpcのアクセスログが残っていればアリバイ立証に使えそうです。

 差し戻し審 福島地裁r03.1.15 懲役6年
https://digital.asahi.com/articles/ASP1K3H5HP1GUGTB015.html
判決は娘の証言が事実と整合しないと認めつつ、その理由は娘が記憶があいまいなまま、証言の重要性を認識せずに供述したためと指摘。「原審を担当した検察官の不十分な訴訟活動」が原因であり、娘が意図的に虚偽の証言をしたわけではないとして、犯行に直接関係する娘の証言の信用性を認めた。

裁判年月日 令和元年12月17日 裁判所名 仙台高裁 裁判区分 判決
事件名 監護者性交等被告事件
 
 上記の者に対する監護者性交等被告事件について,平成31年3月28日福島地方裁判所郡山支部が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官加藤裕出席の上審理し,次のとおり判決する。 

主文

 原判決を破棄する。
 本件を福島地方裁判所に差し戻す。
 
 
理由

 第1 本件控訴の趣意は,弁護人F作成の控訴趣意書及び同補充書に,これに対する答弁は,検察官加藤裕作成の答弁書に,それぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。論旨は,事実誤認の主張である(以下,関係者の呼称は,原判決のそれに従う)。
 第2 原判決と弁護人の主張
  1 原判決の認定事実
 原判決は,罪となるべき事実として,「被告人は,実子であるA(当時16歳)と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護する者であるが,同人が18歳未満の者であることを知りながら,同人と性交等をしようと考え,平成30年8月3日午前8時30分頃から同日午前10時50分頃までの間に,当時の自宅において,Aと口腔性交及び性交をし,もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交等をした」と認定した。
  2 認定した過程の説明
 原判決は,事実認定の補足説明の項において,Aの証言内容を「平成30年8月3日の朝に自宅で目を覚ました後,前日の夜に被告人から「明日の午前中にな」と言われていたので,説教をされるのだと思って居間にいる被告人の下へ行った。すると,被告人から「一緒にお風呂に入るぞ」と言われ,それまでにも説教をされながら胸を触られたり,膣に指を入れられたりしたことがあったので,このときも自分が悪いことをしたことを理解させるために風呂で胸を触ったりするのだと思った。被告人と一緒に風呂に入ると,被告人の性器を洗わせられた上,自分の胸や性器を触れられるなどした。風呂から上がった後に被告人に呼ばれて居間に行くと,「服を脱げ」と言われたので服を脱ぎ,その後,被告人に言われるままに体勢を変えながら,口腔性交と膣性交をした。膣性交の最中,自分の何がいけなかったのかや,これからどうしていくのかを話さないと説教が長引くと思い,これらのことを話した。被告人は避妊具を付けていなかったが,途中で「もういい」と言って膣から性器を抜いた。被害に遭った時間は,今ははっきり覚えていないが,以前,午前8時30分頃と述べていたのであれば,今の記憶とも矛盾はしない」と要約した上で,その信用性について,「Aが本件被害を申告するまでの経過を見ると,Aは,本件前日,高校の部活動仲間のBに対し,LINEで,被告人から説教を受けるときに胸を揉まれるなどの性的被害に遭っていることを相談するメッセージを送信した。本件直後に,友人Cに対し,LINEで「ついにね」「やりましたよね」「おやと」「フェラもしましたさ」「なまですよ」とのメッセージを送信し,Cからの「中出し?」との返信に対し,「出してないね」「途中でやめました」「処女がおやってゆうね」「おわったよね」「いやもう男子が無理な希ガス」「彼氏なんて一生いらないわ」とのメッセージを送信した。本件後,部活動に行くと,部室にいたBを外に呼び出した。泣き出してしばらく話をすることができなかったが,「お父さんに入れられた」「服を脱げなどと言われ,これは教育の一環だなどと性的暴力をされた」などと告白した。本件当日夜,Bに対し,LINEで「家に入ったやん その時のこと蘇るやん まじでおかしくなるよね」「気持ち悪すぎて」とのメッセージを送信した。本件の2週間後に警察署を訪れて被害を申告し,その後,母親に被害を打ち明けた。以上のような本件被害申告の経過に照らすと,Aが意図的に虚偽の被害申告をしたのだとすると,それに先立って友人に被害を告白したのは,本件被害に思い悩む様子を装うことで申告内容の信用性を高めようとしたものと考えるほかない。しかし,16歳で高校生のAが,一人で複数の友人を巻き込みながら,そこまで周到な準備を重ねて虚偽の被害申告をしたと考えるのは非現実的で無理がある。Aが実際に申告したとおりの被害に遭って思い悩んでいたからこそ,被害申告に先立って複数の友人に相談したと考える方が自然で合理的である。Aが全て計算の上で意図的に虚偽の被害申告をしたのであれば,警察に行くようにというBの助言は好都合で,直ちに警察に被害申告することをためらう理由は全くないはずである。Aは,周りに迷惑をかけたくなかったし,卒業まで我慢すればいいと思ったので,すぐに警察には行かなかったが,最終的にこれ以上我慢できないと思って警察に行ったと述べて,被害申告が本件の2週間後になった理由を合理的に説明した。実の父親と性交等をしたことを友人等に知られれば自分の名誉等が大きく損なわれ,平穏な社会生活を送るのに支障が出る可能性が高い上,一家の生計の柱である被告人が刑事処分を受けることで自分の生活や進路選択にも重大な影響が生じかねないなど,A自身の不利益が余りに大きいことからも,虚偽の被害申告の可能性は考えにくい。関係証拠によれば,本件前夜にAと被告人が自宅で顔を合わせる機会がなかったと認められるから,本件前夜に被告人から「明日の午前中にな」と言われたというAの証言は,事実と異なる可能性がある。しかし,Aは,本件以前にも被告人から説教を受けた際にわいせつな行為をされたことがあったというのであって,被告人の前記発言があった場面や日時を勘違いしているなどの可能性が想定できる。Aが事実と異なる証言をしているからといって,本件被害を受けたとのAの証言の核心部分の信用性が揺らぐとはいえない。本件当時,Aの兄Dが在宅し自室にいた。Aは,迷惑をかけるという思いや恥ずかしさから助けを求めることができなかったという。Aの当時の心理状況に照らして納得できる。被告人は,これまでにDの在宅中に居間で妻と性行為をしてもDに気付かれたことがなかった。Dは,在宅時には,用事がない限り自室で過ごすことがほとんどであり,本件当時は,午前10時頃から午前11時頃に起床していた。被告人が,Dが在宅しているのを認識しながら,Aと性交等をしたとしても不自然とまではいえない。以上からすると,Aが意図的に虚偽の被害を述べている疑いはないといえるのであって,原判示の被害を受けたとのAの証言は信用できる。」と説示し,Aの証言に依拠して前記犯罪事実を認定した。
  3 論旨は,「原判決は,公訴事実記載の日時場所で被告人から性交等をされたとのAの証言を信用することができるとして,上記事実を認定したが,Aは意図的に虚偽の被害を述べている疑いがあり,その証言を信用することができないのであって,その他に公訴事実を立証する証拠はないのであるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認がある」というのである。
 第3 本件前夜に被告人から「明日の午前中にな」と言われたとの証言について
  1 所論は,「本件被害は,Aが本件前夜に被告人から「明日の午前中にな」と言われたことが契機となり,本件当日朝,目が覚めた後に居間にいる被告人の下に行ったことから始まっている。「明日の午前中にな」という発言がなければ,本件当日朝,Aが被告人の下へ行く必要はないことになる。本件前夜に,Aが被告人と顔を合わせる機会がなかったという事実は,Aの証言の核心部分の信用性を揺るがす」と主張する。
  2 前夜に被告人から翌日を指定されたことの意味
 Aは,原審において,「8月2日の夜,自宅で,被告人から「明日の午前中にな」と言われ,怒られるのだろうと思った。8月3日の朝,自室で午前8時過ぎに目を覚まし,居間の布団で寝ている被告人のところに行った。被告人から風呂に入ると言われて風呂に入った後,居間に戻って,本件被害を受けた」と供述した。
 Aの証言によれば,本件被害に遭ったのは,8月3日の朝,目が覚めてすぐに被告人のいる居間に行ったからであり,それは前日の8月2日の夜,被告人から「明日の午前中にな」と言われていたため,これに従って居間に行ったというのであるから,その被告人の発言は,被害者が本件被害に遭うに至った原因をなすものとして極めて重要な事実である。
 8月2日の夜の発言を聞いたという事実が存在しないとすると,8月3日の朝の本件被害の事実の存在が疑わしいものになるという関係にある。
  3 原審における主張と立証
   (1) 検察官は,公判前整理手続において,「被告人は,8月2日の夜,Aに「3日の午前中にな」と言った」ことを証明予定事実(平成30年10月19日付け)として掲げた。8月2日夜の被告人及びAの所在についての証拠としては,検察官は,甲4報告書(Aの所在(タイムライン))と甲20報告書(被告人の職場の出退勤)の証拠調べを請求しており,弁護人は一部同意し,裁判所は同意部分を採用した。検察官は,第1回公判期日における冒頭陳述では,8月2日の発言に言及せず,被告人が3日午前6時50分に夜勤の仕事を終えて帰宅し,午前8時過ぎにAに「一緒に風呂に入るぞ」と言って,犯行に及んだことを掲げた。
 弁護人は,第1回公判期日における冒頭陳述では,8月1日の夜と2日の夜,被告人にはAと会話をする機会がなく,犯行の端緒となる「3日の午前中にな」という発言が存在しないことを掲げた。
 第1回公判期日で,上記の甲4,20を含む書証が取り調べられ,引き続いてAとBの証人尋問がなされた。第2回公判期日で被告人質問が行われ,第3回公判期日で結審した。
 論告において,検察官は,8月2日の夜に「明日の午前中にな」と被告人に言われたというAの証言が信用できるとしつつ,甲4,20によれば,2日の夜に直接接触していないことがうかがわれるが,Aは,本件以前にも,被告人から説教を受けた際に胸を触られるなどの被害に遭っており,その際の出来事と混同したり,言われた日時を勘違いしたりしたとしても不自然ではない。仮に,前夜に言われていなかったとしても,本件当日にAが被告人と接触しなかったことになるものではなく,Aの証言の信用性を失わせるものではないと述べた。
 弁護人は,2日の夜,「3日の午前中にな」と言われたとの証言は,甲4,20の証拠から判明した「2日の夜には被告人とAとが自宅で顔を合わせる機会がなかった」との事実に整合せず,虚偽の証言であると述べた。
   (2) 甲4によれば,8月2日にAが帰宅したのは午後8時頃であった。甲20によれば,被告人が自宅を出たのは午後8時11分からさかのぼる数十分前ということになる。したがって,2日の夜,被告人とAが接触する機会はなかった。
   (3) Aの原審供述で,2日の夜に関する部分は次のとおりである。
 ア 検察官「3日の朝,目が覚めた後はどこに行きました」
 A 「居間の布団で寝ているお父さんのところに行きました」
 検察官「どうしてお父さんのところに行ったのかな」
 A 「前の日の夜に,「明日の午前中にな」って言われていたので,行きました」
 検察官「2日の夜にお父さんから「明日の午前中にな」って言われたとき,次の日の午前中に何があるのかなって思った」
 A 「お父さんに怒られるんだなって思いました」
 イ 弁護人「8月2日の夜ですが,あなたが帰宅したのは午後8時頃ということで間違いないですか」
 A 「覚えてないです」
 弁護人「お父さんから言われた「明日の午前中にな」という発言がなければ,あなたは3日の午前中にお父さんに謝りに行く必要はないですよね」
 A 「はい」
 ウ 裁判官「8月2日の夜に,お父さんから「明日の午前中にな」と言われたのは,どこで言われたか覚えていますか」
 A 「覚えてないです」
 裁判官「直接会って顔を合わせて言われたのか,それともほかの方法だったのか,覚えていますか」
 A 「直接会って言われました」
 裁判官「その場所が自宅だったのか,それ以外の場所だったのか,覚えていますか」
 A 「自宅だったと思います」
   (4) 以上によれば,Aが公判で「2日の夜に「明日の午前中にな」と言われた」と供述したのは,真実ではないことを供述したことになる。
  4 別の機会に聞いたこととの混同・勘違いについて
   (1) 検察官は,論告で,「Aは以前にもわいせつ被害に遭っており,その際の出来事と混同したり,言われた日時を勘違いしたりした可能性がある。この点で,Aの供述が真実でないとしても,3日朝に本件被害を受けたとのAの供述の信用性には影響しない」と主張した。
 原判決も,これを採り,Aが事実と異なる供述をした原因について,「本件以前にも説教を受けた際にわいせつな行為があったことからすると,被告人の「明日の午前中にな」との発言があった場面や日時を勘違いしている可能性が想定できる」とした上で,「この点で事実と異なる供述をしたからといって,本件について,意図的に虚偽の被害を述べているとの疑いを直ちに生じさせるものではない。この点の不整合をもって,本件被害のA供述の核心部分の信用性は揺らがない」とした。
   (2) 検察官や原判決がいう「発言を聞いた場面や日時の勘違い」というのは,8月2日より前に「夜,Aが被告人から「明日の午前中にな」と言われた(これに従って翌朝,被告人のところに行くと何らかのことをされることになる)」という事実があり,そのときの記憶と本件の記憶とが混同して,上記の公判供述として表現されたことを意味する。
   (3) 原審の審理では,証拠調手続に入る前の段階で,弁護人の指摘により,2日の夜の発言の存否・接触の機会の存否の点が争点化されていた。書証の取調べ(甲4,20)によって,2日夜に被告人とAとの接触の機会がないことが明らかになっていた。Aの証人尋問において,検察官が「3日の朝,どうして行ったのか」を質問したところ,Aが「前の日の夜,被告人から「明日の午前中にな」と言われた」と答えたにもかかわらず,甲4を用いるなどして,その記憶の真偽を確認することをせず,かえってその応答を前提にして尋問を続けた。弁護人は,2日夜の接触の機会がないことを意識した反対尋問を行い,裁判所の補充尋問でもその点の確認をしている。しかし,いずれの立場からも,他の機会との混同や勘違いではないかとの視点からの質問はない。
  5 被害申告後のAの供述
   (1) 当審では,原審でAの供述がなされるに至った経緯について,供述経過として,8月17日聴取(捜査復命書),8月24・29日取調べ(8月29日付け検察官調書)の結果を取り調べた。
 ア 8月17日の警察への被害申告時の供述内容
 「8月3日の数日前の夜中,私が自分の部屋で寝ていたら,お父さんが私に覆いかぶさるようにしてきたことで目を覚ました。いつものように説教されているのだと思った。お父さんは,私の胸を触ったり,自分の指を私の口の中に入れたりしてきた。お父さんは,私の体を触り終わって部屋を出て行くときに,「8月3日の午前中にな」と言ってきた。私は,その日にまた説教されるのだろうなと思った。お父さんは,そのとき「明日にな」とか,「明後日にな」という言い方ではなく,「8月3日にな」という言い方で言ってきた」
 イ 8月24日及び同月29日の検察官の取調べ時の供述内容
 「私は,8月3日の前の夜か,前の前の夜,つまり,8月1日か2日の夜に,お父さんから「3日の午前中にな」と言われた。私はそれを聞いて,私がまた何かやっちゃったんだ,8月3日にお父さんからいつものように怒られるんだと思った」
   (2) なお,甲4と20は9月3日に作成されており,ほどなくして検察官に送付され,検察官は2日の夜に接触の機会がないことを把握していたものと考えられる。
   (3) このように,Aの供述とこれに関連する証拠を得ていたのに,検察官が,証明予定事実記載書面で,発言を聞いたのを2日の夜に限定した理由はよく分からない。また,検察官はこれらの捜査段階の供述内容を把握していながら,Aの「2日の夜に発言を聞いた」との供述について,記憶の真偽を確認するための質問などはしていない。
 これらの捜査段階の供述と,公判供述とを比べると,内容が変化しつつ,発言を聞いた日が限定されていくのであって,時間の経過による記憶の減退として説明することは困難である。
  6 小括
 以上のとおり,この点に関してのAの公判供述の真偽を確認するために必要な審理を行うべきであったが,原審ではそれが尽くされていない。
 第4 本件当日午前8時30分頃から被害を受けたとの証言について
  1 所論は,「Aは,本件当日午前8時30分頃から被告人との性交等が始まったと証言した。しかし,被告人のスマホには,午前9時にゲームをしていたことを示す履歴が残っており,午前9時10分にも何らかの操作をした履歴が残っていた。これによれば,被告人は,Aと性交等を始めたものの,その途中で一時中断してゲームに興じるなどした後に性交等を再開したことになり,余りに不自然である。Aもそのようなことがあった旨を証言していない。本件被害を受けたとのAの証言は信用できない」と主張する。
  2 原審における主張と立証
 検察官は,証明予定事実記載書面に,「被告人は,3日午前6時50分夜勤を終え,帰宅した。午前8時過ぎ,謝罪してきたAに「一緒に風呂に入るぞ」と言い,犯行をした」と記載した(この点は,第1回公判期日での冒頭陳述でも同旨の主張をした)。
 弁護人は,予定主張記載書面に,「Aは,3日午前8時30分頃に帰宅し,朝食を作って食べ,テレビを見たり,携帯ゲームをした後,午前10時頃に就寝した」と記載した。
 前記の甲20によれば,被告人が夜勤を終えて職場を退勤したのが,午前6時50分であった。
 被告人は,被告人質問で,「職場を出たのが午前7時過ぎで,○○のゲームをしながら帰ってきたので,帰宅に約1時間30分かかり,午前8時30分過ぎに自宅に到着した。朝食を作り,居間で朝食を食べながら録画してあったビデオを見て,午前10時過ぎに寝た。Aとは顔を合わせていない」と供述した。
 弁護人は,弁論で,「当日午前8時4分出勤のために家を出たAの母が,被告人と顔を合わせていないことから,被告人が帰宅したのは午前8時4分以降である」とし,「Aが寝ている被告人のところに行ったというのは,被告人が帰宅後直ちに就寝したことになり,つじつまが合わない」と主張した。
  3 Aの原審供述で,3日朝,被告人のところに行った時刻に関する部分
   ア 検察官「3日の朝,目が覚めた後はどこに行きました」
 A 「居間の布団で寝ているお父さんのところに行きました」
 検察官「お父さんから膣に性器を入れられたりしたのは何時頃だったか」
 A 「記憶が曖昧で,はっきりは覚えてないです」
 検察官「私(検察官)に前に話してくれたときは,午前8時30分くらいだったと思うと話してくれた。今の記憶と矛盾するかな,しないかな」
 A 「してないです」
   イ 弁護人「供述調書では,午前8時過ぎに目が覚めたと供述しているが,その点間違いないですか」
   ウ A 「今は記憶が曖昧で,よく覚えてないです」
 検察官「3日の朝,時計を見ながら何時に起きたか確認してた」
 A 「したと思います」
 検察官「その点は,警察に行った時点ではっきり覚えていたかな」
 A 「・・・・」
 以上のとおり,検察官は,Aが時刻についてはっきり覚えていないと供述したのに対し,供述調書の記載を引用し,午前8時30分頃に誘導する質問をして肯定の答えを得た。再主尋問で,時刻について時計を見て確認したかという質問をして,「したと思う」との答えを得た。これは,被害に遭ったのが午前8時30分頃という記憶が正確なものであることを支える事情である。
  4 被告人のスマホ操作
 当日朝,被告人は,スマホで△△というゲームをやっていた。本件当日のそのゲームのアクセスログによれば,3日午前8時52分から午前9時10分までの間,ゲーム操作を行っていたことが判明した(平成30年10月1日付け株式会社aの回答書。郡山北警察署10月4日受理)。Aの証人尋問の時点で,検察官はこのことを当然把握していたはずである。
  5 検討
   (1) Aの供述する被害の態様は,「被告人が先に風呂に入る。Aも風呂に入る。性器を洗わせられたりする。被告人が風呂から出る。Aはドライヤーで髪を乾かす。被告人に呼ばれる。体勢を3回ほど変えながら,本件被害を受ける」というものである。
   (2) 被害に至るまでの経過で20分以上はかかっていると思われるし,被害自体も20分以上継続しているものと考えられる。犯行を終えてすぐにスマホゲームを始めたとしても,午前8時52分ということは考えにくい。そうすると,午前8時過ぎに被告人のところに行き,風呂に入った後,午前8時30分に被害が始まったという供述自体が,不合理なものである疑いが生じる。
   (3) 検察官は,「当日朝の時刻や時間についてのAの供述は,記憶や感覚に基づくものである。当日Aが家を出たのは午前10時50分なので(タイムラインによれば午前10時48分),その頃までには犯行が終わっていたというだけで,犯行が継続した時間は明らかではない。実際には,被告人のゲーム操作が終わった後の午前9時10分頃から犯行が始まったとしても不自然ではない」と主張する。
 しかし,その場合であっても,Aが体験したという供述を前提にする限り,風呂に入るという事実経過が存在したと考えざるを得ない。そうすると,犯行開始は午前9時30分頃になるはずであって,これはAの供述とかなりかけ離れた時間帯になる。
   (4) ちなみに,前記のAの検察官調書(8月29日付け)には,「3日は,午前8時過ぎに起きて,風呂に10~15分入り,5分くらい髪を乾かした。性交等の被害に遭ったのは午前8時半頃からだったと思う」との記載がある。前記の証人尋問における検察官や弁護人の質問は,この記載を踏まえたものであると考えられる。
  6 小括
 Aの記憶による午前8時30分から被害を受け始めたとの供述は,被告人のスマホ操作の事実との関係で,説明が困難になるのであって,その真偽を確認するための審理が必要であったが,これも尽くされていない。
 第5 結論
 以上によれば,その余の所論について判断するまでもなく,原判決は,Aの供述の信用性を判断するための重要な事情に関し審理を尽くさないまま,その信用性を認めて原判示の事実を認定したが,このような原判決には事実の誤認があり,これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,破棄を免れない。そこで,刑訴法397条1項,382条により原判決を破棄し,原裁判所において更に審理を尽くさせるため,同法400条本文により,本件を福島地方裁判所に差し戻すこととして,主文のとおり判決する。
 仙台高等裁判所第1刑事部
 (裁判長裁判官 秋山敬 裁判官 中島真一郎 裁判官 井筒径子

「2019年5月5日頃、県内の自宅周辺で、児童のわいせつな画像を自身のスマートフォンにダウンロードして所持した疑い。」という警察官の懲戒事案 岩手県警

 ダウンロード時期を特定されているとうことは、サーバーの捜査から発覚した可能性がありますね

https://news.ibc.co.jp/item_42697.html
おととし5月5日ごろ、児童のわいせつな画像を自分のスマートフォンにダウンロードして所持した疑いが持たれています。巡査部長は警察の調査に対して画像の所持を認め、「警察官としてやってはいけないことをした。反省している」と話したということです。
 県警は、先月17日付で巡査部長を戒告の懲戒処分としました。

 参考までにavMARKETの管理者の犯行日(買受捜査での買受日)

犯行日 令和元年(2019年)6月21日,名古屋地裁R2.10.22 r2.11.10
https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2021/02/10/050910

大法廷h29.11.29以降の、わいせつ行為の認定方法

わいせつ行為とわいせつでない行為の境界線が判りません。

 

阪高裁h28.10.27 (2) ところで,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され,同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである。その理由は,原判決も指摘するとおり,犯人の性欲を刺激興奮させ,または満足させるという性的意図の有無によって,被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられないし,このような犯人の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく,同罪の成立にこのような特別な主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しないと考えられるからである。
    そうすると,本件において,被告人の目的がいかなるものであったにせよ,被告人の行為が被害女児の性的自由を侵害する行為であることは明らかであり,被告人も自己の行為がそういう行為であることは十分に認識していたと認められるから,強制わいせつ罪が成立することは明白である。
    以上によれば,強制わいせつ罪の成立について犯人が性的意図を有する必要はないから,被告人に性的意図が認められないにしても,被告人には強制わいせつ罪が成立するとした原判決の判断及び法令解釈は相当というべきである。当裁判所も,刑法176条について,原審と同様の解釈をとるものであり,最高裁判例最高裁昭和45年1月29日第1小法廷判決・刑集24巻1号1頁)の判断基準を現時点において維持するのは相当ではないと考える。
大法廷h29.11.29 刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。
 そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。
東京高裁h30.1.30 一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。
福岡高裁h30.10.31 2 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,強制わいせつ罪(刑法176条前段)が成立するには,客観的に見て,その行為が,性欲を刺激,興奮又は満足させ,かつ,普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するものでなければならないのに,社会通念に照らし,それ自体性的な意味合いが強いことを根拠としてわいせつな行為であると認定した原判決には,同条の解釈について,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,同条にいうわいせつな行為に当たるか否かは,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断すると考えることができる(最高裁平成28年(あ)第1731号同29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照)。したがって,わいせつな行為であるというためには,所論が主張するような行為でなければならないと解する必要はなく,被害者の立場に立った一般人から見て,客体とされることにつき一定程度以上の性的羞恥心の対象となる行為をいうものと解することができ,これと同旨と理解することができる原判決の説示は正当である。
広島地裁H30.5.18 第2 判示第6のわいせつ行為該当性
 弁護人は,最高裁判所大法廷判決平成29年11月29日が,性的な行為を「絶対的わいせつ行為」と「相対的わいせつ行為」に二分し,前者については性的意図を不要としたが,それでは「徒に性欲を興奮又は刺激させ」るとの従来からのわいせつ行為の定義に該当しないこととなるから,わいせつ行為の再定義を裁判所が示せなければ強制わいせつ罪は成立しない等と主張するが,被告人がDの肛門に自己の陰茎を挿入し,あるいは自己の陰茎をDに口淫させるなどした本件強制わいせつ行為は,その態様から見て性的性質を有するものであることは明確であり,可罰的なわいせつ行為に該当することは明らかというべきである。
福岡高裁h31.3.15 2 法令適用の誤りの主張について
 論旨は,強制わいせつ罪(刑法176条前段)が成立するには,客観的に見て,その行為が,性欲を刺激,興奮又は満足させ,かつ,普通人の性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反するものでなければならないのに,社会通念に照らし,それ自体性的な意味合いが強いことを根拠としてわいせつな行為であると認定した原判決には,同条の解釈について,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,同条にいうわいせつな行為に当たるか否かは,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断すると考えることができる(最高裁平成28年(あ)第1731号同29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照)。したがって,わいせつな行為であるというためには,所論が主張するような行為でなければならないと解する必要はなく,被害者の立場に立った一般人から見て,客体とされることにつき一定程度以上の性的羞恥心の対象となる行為をいうものと解することができ,これと同旨と理解することができる原判決の説示は正当である。
 所論は,本件は,被害者の性的部位を着衣の上から触る場合であって,性的侵害性が比較的低いことから,通常は,迷惑防止条例における痴漢行為と分類されるべきであり,態様が執ようであり,弄んだといえるような場合に限って強制わいせつ罪が成立する,という。
 しかし,前記原判決の概要で引用したとおり,被告人Y2は,明らかに性交を模して股間付近を被害者の陰部付近に複数回接触させているのであり,単に着衣の上から性的部位を手で触る場合と同列に論じることは適当ではない。しかも,犯行が多数の同僚警察官が見ている宴席で行われているから,被害者の性的羞恥心を著しく害し,性的自由を大きく侵害する行為であるというべきである。性的侵害性が低いとは到底いえず,強制わいせつ罪が成立することは明らかである
大阪地裁h31.3.20 3 強制わいせつ罪は,被害者の性的自由を保護法益とする犯罪であるから,被害者に性的被害を与えることを意図して,性的被害を与える行為を行っている場合には,強制わいせつ罪が成立するというべきである。
 このような解釈は,本件犯行が行われた頃の法解釈としては昭和45年判例に沿うものではないが,その時点で法を適用するとしても強制わいせつ罪の成立を認めるべき事案といえるから,判例変更前の行為であることを理由に強制わいせつ罪の成立を争う主張は採用できない。
 なお,強制わいせつ罪の成立に性的意図が必要であるとする昭和45年判例は変更され,故意以外の行為者の性的意図は一律には強制わいせつ罪の成立要件とはされていないし(最高裁平成28年(あ)第1731号同29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照),平成29年の大法廷判決は平成27年に実行された性的意図のない強制わいせつ行為についての有罪判決を維持した事案であるから,その点からも,判例変更前の行為であることを理由に強制わいせつ罪の成立を争う主張は採用できない。
 4 本件において被告人は,Bに性的羞恥心を与えることを考えた上で,Bの陰茎を直接手で触ったと認められ,被告人が,被害者に性的被害を与えることを意図してこのような行為を行ったことも明らかであるから,このような被告人の行為については強制わいせつ罪が成立する。
札幌地裁r01.10.23 1) まず,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であるところ,性犯罪に対する近年の社会の一般的な受け止めも踏まえれば,どのような行為が刑法176条にいう「わいせつな行為」として処罰されるべきかについては,被告人の意図よりも,被害者の受けた行為がどのようなものであったかを重視して,規範的な評価として客観的に判断されるべきと考える。
 そして,その判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,当該行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最高裁平成29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照
r02.1.1 向井香津子「最高裁判例解説 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」 法曹時報第72巻第1号 (ウ)判断基準
 したがって,ある行為が「わいせつな行為」に該当するというためには,
 ①性的な意味があるか否か
 ②性的な意味合いの強さが刑法176条等による非難に相応する程度に達しているか否か
を判断しなければならないと考えられるが,これらをどのような基準で判断すべきなのかが,更に問題となる。
 これらの判断について,当該被害者が実際に当罰性の高い性的意味を感じたか否かによるべきでないことは当然であり,他方で,昭和45年判例の解釈を採用しない以上,行為者自身の性欲等を基準にすべきものでないことも明らかといえる。結局,その判断は,社会通念に照らして客観的に判断されるべきと考えられる。(注13)
 また,性的な被害に係る犯罪に対する社会の受け止め方は,前述のとおり時代によって変わり得るものであることからすれば,社会通念に照らして判断する際には,その時代の社会の受け止め方をも考慮しておく必要がある。もっとも,犯罪規定の解釈においては,法的安定性が求められることも当然であるから,社会の受け止め方の変化を考慮する際には,慎重な姿勢も必要であり,従前の判例・裁判例の積み重ねを十分斟酌する必要があろう。(注14)
静岡地裁浜松支部r02.2.21 2 ①判示第1の各事実における〈イ〉各行為のわいせつ行為該当性について
 被告人の判示第1の各行為は,A及びCに対しては,着衣の中に手を差し入れて太ももの前面の付け根ないしその下部付近を触る,Bに対しては,着衣の中に手を差し入れて太ももの後面の臀部付近を触るというものであり,いずれも,着衣の中に手を差し入れ,太ももの陰部や臀部に近い部分を触るというものであって,指導の間中触り続けたという執拗性に照らしても,行為そのものが持つ性的性質はいずれも大きいものである。
 弁護人は,被告人の各行為については,児童とスキンシップをとることや,児童の注意を惹くなど,教育的な意図によるものであり,具体的には,判示第1の1及び同3の各行為に関しては,「一人学びの時間」に個別指導をしている際,児童の集中を促すなどの目的で,児童の太ももに手を置いたり,叩いたり,揺すったりすることがあった,判示第1の2の行為に関しては,Bとの距離がちょっと遠いときに,Bの背中辺りに手を伸ばして触れたということはあり得たものであって,性的な意図を伴うものではなかった旨主張する。しかし,被告人の判示第1の各行為は,弁護人が前提とする態様とは異なるものであり,児童とのスキンシップ行為であるとか,児童の注意を惹くなどといった目的で行われる行為であるとは到底考えられないものであって,本件において,判示第1の各行為が教育的な意図によるものであると考えられるような事情はない。被告人としても,これらの行為が性的な意味を有するものであることは当然認識していたというべきである。
R02.3.10 薄井真由子 強制わいせつ罪における「性的意図」植村立郎「刑事事実認定重要判決50選_上_《第3版》」   イ 具体的判断方法 第2に,具体的判断方法としては,まず,
①行為そのものが持つ性的性質が明確で,直ちにわいせつな行為と評価できる行為と,
②当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為があるとした。
そして,②の行為については,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,
○アその行為に性的な意味があるといえるか否かや,
○イその性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断するものとした。
その上で,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があるというのである。 
エ その他の行為 性器あるいは性的部位への着衣の上からの接触や,接触を伴わず,被害者の性器あるいは性的部位を見たり撮影したりする行為については,直接の接触よりは性的侵襲度が低いといえるから,①の場合ではなく,②の場合として,行為が行われた際の具体的状況等を踏まえて「わいせつな行為」といえるかを判断するのが相当と解される。
津地裁r02.12.4 次に,被告人の行為が強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」に当たるといえるか否か(争点②)について検討するに,判示の一連の被告人の行為(特に,自己の股間を被害者の顔に押し付けようとする行為)が性的意味合いを有する行為であることは明白であり,医師である被告人と製薬会社のMRである被害者の関係性なども踏まえると,強制わいせつ罪としての処罰に値しないほど軽微な行為といえないことは明らかである。

13歳未満の児童をして裸体を撮影送信させた行為を強制わいせつ罪(176条後段)+児童ポルノ製造罪(7条4項)にした判決への控訴理由

 こういう限界事例になると、前例がないので、どう定義づけるかが問題になります。
 とりあえず完成させたので、高裁の反応を見て、次の事件でさらに加筆して加筆してという感じにな ります。

控訴理由第○ 理由不備・法令適用の誤り~わいせつ行為(176条後段)の定義ができないこと) 14
1 はじめに 14
2 判例上「わいせつ」が定義できていないこと 15
①わいせつの定義についてわいせつとは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」という判例最判s26.5.10 名古屋高裁金沢支部S36.5.2 東京高裁h22.3.1) 15
名古屋高裁金沢支部S36.5.2*2 15
イ東京高裁h13.9.18*3 15
ウ東京高裁h22.3.1*4 15
②性的自由侵害行為とする判例(大阪高裁H28.10.27 東京高裁h26.2.13 東京高裁h30.1.30) 15
阪高裁H28.10.27 15
イ東京高裁h26.2.13 16
ウ東京高裁h30.1.30*5 17
4 原判決も独自の定義を作出していること(理由不備) 21
5 憲法違反~裁判所がわいせつの定義を示せないときは、刑法176条は罪刑法定主義違反となる。 22

控訴理由第○ 法令適用の誤り~被害者をしてその裸体を「撮影させ」た行為はわいせつ行為(176条後段)にあたらない 25
1 はじめに 25
2 わいせつの定義がないので、馬渡解説*6・薄井論文*7に沿って検討してみる 25
(1)撮影させる行為の「性的な意味」の存否 25
甲3 画像 28
甲4 画像 28
(2)撮影させる行為の「性的意味合い」の程度 30
薄井論文 31
①木村光江「強制わいせつ罪における『性的意図』」判例時報 736号18頁。*10 32
②橋爪隆・研修860号3頁 32
③名古屋地岡崎支部h30.4.19*11 33
④大阪高裁H22.6.18*12(神戸地裁H21.12.10*13) 33
⑤大阪高裁r2.10.2*14(奈良地裁葛城支部R02.3.30*15) 34
(3)社会通念上の「撮影させる行為」の扱い=強要罪の裁判例 37

控訴理由第○ 法令適用の誤り~被害者をして撮影させる行為が「わいせつ行為」だとしても、送信・蔵置・受信行為まで及ぶとわいせつ行為とは評価できない 42
1 はじめに 42
2 撮影までならわいせつ行為となりうるのだが、送信・記録させる行為に及ぶとわいせつ行為とは評価できなくなるという判例(東京高裁h28.2.19 広島高裁岡山支部H22.12.15)。 43
東京高裁h28.2.19 (一審新潟地裁高田支部H27.8.25*58) 43
広島高裁岡山支部H22.12.15*59(一審判決 岡山地裁H22.8.13*60) 45

控訴理由第5 法令適用の誤り~判示第○と第○の行為は観念的競合 47
1 はじめに 47
2 刑法54条1項の「一個の行為」の意味 51
3 罪数判断は、訴因の比較により、訴因外の事実は考慮されない。 59
4 児童ポルノ製造罪が立件されない場合の撮影行為の法的評価=わいせつ行為 60
東京高裁H22.3.1 61
仙台高裁H21.3.3 62
阪高裁H23.5.20 63
5 わいせつ罪に加え児童ポルノ製造罪を立件した場合の罪数処理 63
①仙台高裁H21.3.3*71 65
名古屋高裁h22.3.4*72 66
③ 高松高裁h22.9.7*74 67
④ 広島高裁h23.5.26*75(訴因変更) 68
⑤ 大阪高裁H23.12.21*76(原判決 神戸地裁H23.3.18*77) 68
⑥ 大阪高裁h25.6.21*78 68
⑦東京高裁h30.1.30*79(横浜地裁H28.7.20*80) 69
6 媒体への記録行為の評価~1個の行為を書き分けても1個である 71
仙台高裁H21.3.3 74
7 最決h21.10.21*81(児童淫行罪と児童ポルノ製造罪)の射程について 74
名古屋高裁h22.3.4 75
高松高裁h22.9.7 76
阪高裁H23.12.21 76
東京高裁h30.1.30 77
8 犯意について~触る行為と撮影する犯意は1個であるこ 80
9 「一事不再理効の範囲が広くなる」とかいう否定説の理由について 82
10 「わいせつ行為に通常撮影は伴わない」とかいう否定説の理由について 84
13 強制わいせつ罪と製造罪の罪数問題は「単なる法令違反の主張」とされて、最高裁の判断は示されていないこと 87
最高裁大法廷H29.11.29 88
最決R02.3.10 89
最決H30.9.10 89

強盗の機会に被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考えその衣服を脱がせて同人の左乳首をなめた行為を強制わいせつ罪とした事例(松江地裁r02.5.30)

強盗の機会に被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考えその衣服を脱がせて同人の左乳首をなめた行為を強制わいせつ罪とした事例(松江地裁r02.5.30)
 被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考えたという弁解は通った

松江地裁令和元年 5月30日 
住居侵入、強盗、強制わいせつ被告事件
【罪となるべき事実】
 被告人は,現金を強取しようと考え,平成31年3月9日午後7時39分頃から同日午後8時21分頃までの間,松江市内の被害者方に,無施錠の玄関ドアから侵入し
 1 その頃,同所において,被害者(当時21歳)に対し,床に倒した上,その口を手でふさぎ,持っていたカッターナイフを同人の顔面付近に示すなどし,「黙れよ。」,「お金出せ。」などと言う暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して,同人所有の現金1万2000円を強取し
 2 前記暴行・脅迫により同人が反抗を抑圧されていたのに乗じて同人に強いてわいせつな行為をしようと考え,前記日時場所において,同人に対し,その衣服を脱がせて同人の左乳首をなめ,もって強いてわいせつな行為をした。
【量刑の理由】
 被告人は帰宅途中の被害者を認め,同人から金品を奪おうと考えて同人を尾行し,そのまま被害者の自室に押し入って判示第1の強盗行為を行って現金を奪い,引き続き,被害者に恥ずかしい思いをさせれば,羞恥心から警察への通報等を思い止まるだろう等と考え,被害者がおびえているのに乗じ,判示第2の強制わいせつ行為に及んだものである。
 このうち,強盗行為は,カッターナイフを被害者の顔近くに示すという暴行を伴っており,被害者が,殺されるかもしれないと強い危機感を抱いたのは当然である。被害者を追尾した上で犯行に及んでいる点は,強盗に向けた強固な意思の表れとして強く非難される。また,強制わいせつ行為は,被告人に性的意図がなかったとはいえ,いわば口封じの目的で行ったこと自体卑劣なことであるし,そのような被告人の内心は被害者の与り知らぬところであって,衣服を脱がされ乳首を舐められるという,明らかに性的意味合いを持つわいせつ行為を受けた被害者が,レイプされるかもしれないという強い恐怖と屈辱を感じたのももっともである。最も安心できるはずの自宅で,このような強盗被害や性的被害に遭うという肉体的,精神的被害を受け,被害者は事件後も恐怖心が癒えず,社会日常生活の上でも重大な不利益を被っている。
 以上によれば,住居侵入を伴う強盗,強制わいせつの事案の中において,暴行・脅迫の程度やわいせつの程度が重い部類に属するとまでは言えないが,被告人の刑事責任を軽く見ることもできず,被告人が反省の態度を示し,家族の協力を受け,一定の被害弁償の準備をし,慰謝に努めていく意向を示すことやしょく罪寄付をしたこと,異種罰金前科のほか前科がないことを考慮しても,酌量減軽すべきほどの情状はなく,主文程度の刑が相当であると判断した。
 以上
 (裁判官 本村曉宏)

キスという行為自体がもつ性的性質に加え,被告人とAの関係性や本件キスに至る具体的な状況をも考慮すると,性的な意味合いの乏しいスキンシップではなく,Aの性的自由を侵害する性的な意味合いの強い行為とみるべきであるから,刑法176条にいう「わいせつな行為」にあたる。札幌地裁R01.10.23

キスという行為自体がもつ性的性質に加え,被告人とAの関係性や本件キスに至る具体的な状況をも考慮すると,性的な意味合いの乏しいスキンシップではなく,Aの性的自由を侵害する性的な意味合いの強い行為とみるべきであるから,刑法176条にいう「わいせつな行為」にあたる。札幌地裁R01.10.23

 わいせつの定義はないのですが、性的意味合いがあるかとか強いかで決まるようです。

強制わいせつ被告事件
札幌地方裁判所判決令和元年10月23日

       主   文

 被告人を懲役1年に処する。
 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,札幌市内のミニバスケットボール少年団(以下「本件少年団」という。)女子チームの監督を務めていたものであるが,本件少年団に所属していた■■■(当時11歳,以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら,平成30年9月20日午後6時30分頃から同日午後7時頃までの間に,札幌市■■■被告人方玄関内において,謝罪のために同人方を訪れたAに対し,「チューして終わり」などと申し向け,Aをして,被告人の唇にキスをさせ,もって,13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)括弧内の記号は,証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。
・被告人の公判供述
・Aに対する当裁判所の尋問調書
・検証調書(甲4)
(争点に対する判断)
 弁護人は,被告人の行為は,刑法176条にいう「わいせつな行為」とはいえず,無罪である旨主張するので,以下,当裁判所の判断を示す(なお,速記録の頁数を〔 〕内に摘示した。)。
1 事実関係について
 (1) A及び被告人の供述によれば,本件キスは,次のような状況においてなされたと認められる。
  ア 被告人は,本件少年団女子チームの監督として女子団員らの指導に当たっていたところ,練習試合の際,Aら女子団員に指示したことが十分なされなかったとして,途中で帰宅し,その数日後の本件当日の練習にも顔を見せなかった。そこで,Aらは,被告人に謝罪して指導に復帰してもらおうと考え,被告人方を訪れ,最上級生の小学6年生であったA及び同級生の女子団員1名(以下「B」という。)が,被告人方玄関内に入り,被告人と話をした。
  イ その際,被告人が,玄関内にあった靴を手に取ってこれをかじるよう求めたところ,Bがこれに応じて靴をかじる動作をした。このことで3人が笑った後に他の小学5年生の女子団員らも玄関内に入ってきたところ,被告人は,Aらに対し,「チューして終わり」などと言い,かがんで姿勢を低くするとともに,目をつぶった。
  ウ A及びBが被告人の唇に順次キスをし,その他の女子団員らもつづいて被告人の唇にキスするなどした。
 (2) なお,Aは,キスを求めた被告人の具体的な発言(上記イ)について,被告人が全員キスしたら許してやるみたいなことを言ったと供述する(A供述〔9〕)。
   これに対し,被告人は,「チューして終わり」などと言ったが,全員キスしたら許してやるとは言っていないと供述する(被告人供述〔8~9〕)。
   この点に関するAの供述内容は,「全員キスしたら許してやるみたいなこと」というやや曖昧なものであり,被告人の「チューして終わり」などの発言について自分が受けた印象を記憶した可能性を否定しきれない。Aの母は,本件当日に被害申告を受けた際に,Aが被告人から全員キスしたら許してやると言われたなどと話した旨供述するが,そうであったとしても,自分が受けた印象を話した可能性を否定しきれないことに変わりはない。
   したがって,この点については,Aの供述を前提に本件キスの際の被告人の発言内容を認定することはできず,被告人の供述を前提とすることとした。
2 被告人の行為のわいせつ性について
 (1) まず,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であるところ,性犯罪に対する近年の社会の一般的な受け止めも踏まえれば,どのような行為が刑法176条にいう「わいせつな行為」として処罰されるべきかについては,被告人の意図よりも,被害者の受けた行為がどのようなものであったかを重視して,規範的な評価として客観的に判断されるべきと考える。
   そして,その判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,当該行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最高裁平成29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照)。
 (2) この点,唇と唇が触れ合うキス行為は,我が国の社会通念上,性的な意味合いが強いとみられることが多い一方,夫婦や恋人等の親しい間柄において性的な意味合いに乏しいスキンシップとして交わされる場合もあり,その行為自体から明確にわいせつな行為にあたるとまではいえない。そうすると,それを行った者の関係性やそれが行われた際の具体的状況等の事情も考慮した上で,「わいせつな行為」に該当するか否かを判断する必要がある。
 (3) まず,被告人とAの関係性をみるに,両名は,成人男性である指導者と,本件当時11歳という思春期に相当する教え子の少女という関係にすぎない。このような関係の者同士が,性的な意味合いに乏しいスキンシップとして唇と唇が触れ合うキスをすることは,我が国の社会においては通常想定されず,一般的には性的な意味合いが強いものとして受け止められるといえる。
 (4) そして,本件キスがなされた具体的な状況を見ると,この点,被告人及び弁護人は,冒頭手続において,被告人がAにキスをしたのではなく,Aからキスをされたものであると主張した(なお,検察官は,事前準備における釈明及び冒頭陳述において,被告人がAの唇にキスをしたとの公訴事実の記載は,被告人が,Aをして,被告人の唇にキスをさせたというものであると主張した)。
   そこで,検討すると,先に認定したとおり,被告人は「チューして終わり」などと言って姿勢を低くするなどしたものであり,客観的に見れば,自らAらに対して唇か頬にキスをすることを促す言動をしたことは明らかである。
   そして,被告人がそのような言動をしたのは,Aが被告人に謝罪して指導への復帰を求めるために被告人方を訪れた状況下であり,被告人とAとの間には監督と団員という上下関係が存在していたことやAが判断能力の未熟な年少者であること,さらには,これまでにも女子団員が被告人とキスをすることがあったことにも照らせば,Aらとしては,監督に練習に復帰してほしいなどとの思いから,被告人の意向に沿おうとする心情になる状況であったといえる。そのような状況にあったことは,本件キスの直前にBが被告人に言われるがままに靴をかじる動作をしたことからも明らかである。
   そうすると,Aは,勝手に被告人の唇にキスをしたものでなく,被告人の「チューして終わり」などのキスを促す言動があったからこそ,これに応じてキスをしたものと認められる。
   被告人は,時間も遅く収集を図ろうとし,場を和ます気持ちもあって,「チューして終わり」といっただけであり,また,女子団員らが飛び込んでくると思ったので,安全のために姿勢を低くして目をつぶったのであり,自分はスキンシップを求めただけで,キスを求めたわけではない旨供述する(被告人供述〔8~9,13~14,30~31,39~40,42~44,47〕)。しかし,先に述べた状況において,被告人が「チューして終わり」と言って姿勢を低くすれば,Aらが被告人の意向に沿ってその唇等にキスをするであろうことは当然予想できることであり,被告人自身も,程度はともかく,そのことは想定していた旨供述している(被告人供述[14,40,44])。
   そうすると,被告人は,Aらが被告人の意向に沿おうとする心情にある状況において,Aらが被告人の唇にキスをすることも想定した上で,「チューして終わり」などのキスを促す言動をし,Aがこれに応じて被告人の唇にキスをしたといえるから,このような被告人の行為は,被告人が,Aをして,被告人の唇にキスをさせたと評価されるべきものである。
 (5) そこで,以上の事情も踏まえて,わいせつ性を検討するに,被告人とAとは唇と唇とが触れ合うキスをすることが通常想定される関係ではなく,このようなキスをすることは通常は性的意味合いの強いものとみられる。その上,被告人の行為により,Aは,被告人との関係,Aの当時の心情や判断能力の未熟さから,Aから唇にキスをするように求められていると感じて,それに応じてしまったものであり,被告人の行為がなければ,Aが被告人の唇にキスをすることはなかったといえる。そうすると,このような被告人の行為は,児童への性犯罪に対する近年の社会の受け止めも考慮すれば,性的な意味合いに乏しいスキンシップとして許容されるものではなく,Aの性的自由を侵害する性的な意味合いの強いものというべきである。
 (6) なお,弁護人は,本件キスの際,その場の雰囲気が和やかであったこと,被告人はコミュニケーションを図るつもりで「チューして終わり」と言ったに過ぎず,唇へのキスを命じたわけではないこと,女子団員らは日常的に,被告人に対し,抱きつく,頬にキスをする,噛む,舐めるなどの行動をとっており,保護者らもそのことについて苦情を申し立てていなかったことからすると,被告人の行為は,刑法176条にいう「わいせつな行為」には当たらない旨主張する。
   しかし,先に述べたとおり,わいせつ性の判断においては,被害者がどのような行為をされたかという客観的な状況が重視されるべきであって,被告人の性的意図の有無や程度は考慮されるとしても自ずから限界がある。被告人の行為を客観的にみれば,指導者である被告人が,教え子であるAが被告人の意向に沿おうとする心情である状況の下,Aにキスを促す言動をして,Aをして,被告人の唇にキスをさせたといえるのであり,このような行為はAの性的自由を侵害するものと評価されるべきであるから,被告人としてはコミュニケーションを図るつもりであったとしても,わいせつ性を否定する事情とは言えない。
   また,本件キスの前に被告人とAらが談笑する場面もあったと認められ,また,被告人の言動が唇にキスをするように明示的に強制したものとまではいえないかもしれないが,そうであったとしても,被告人がAに唇にキスをさせたとの評価に変わりはなく,わいせつ性を否定する事情とはならない。
   さらに,これまでの被告人と女子団員らとのスキンシップについては,そのような環境があるからといって,被告人の行為が性的な意味合いに乏しいスキンシップとして許されてしまえば,そうした環境に違和感を感じる児童がいても,それを受け入れざるを得なくなるのであり,被害者の性的自由が保護法益となっている観点からは,採用しがたい主張である。性的な意味合いに乏しいスキンシップと評価されるかどうかは,あくまでも被告人とAとの関係をもとに考えるべきである。本件では,被告人が自らAに対してキスを促したものであり,Aが勝手に被告人にキスをした事案ではなく,また,Aが従前から被告人に対してスキンシップとしてキスをするという親密な関係にあったとも認められないから,被告人のAに対する行為が問題となっている本件においては,上記の環境があったことはわいせつ性を否定する事情とはならない。
   したがって,弁護人の主張にはいずれも理由がない。
 (7) 以上より,被告人の行為は,唇と唇が触れあうキスという行為自体がもつ性的性質に加え,被告人とAの関係性や本件キスに至る具体的な状況をも考慮すると,性的な意味合いの乏しいスキンシップではなく,Aの性的自由を侵害する性的な意味合いの強い行為とみるべきであるから,刑法176条にいう「わいせつな行為」にあたる。
(法令の適用)
 罰条       刑法176条後段
 刑の執行猶予   刑法25条1項
 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件は13歳未満の児童に対するものである上,被害者は内心嫌であったにもかかわらず,このような被害を受けたものであるから,その被害結果は決して軽いものではない。また,被告人は,本件少年団女子チームの監督として,女子団員らの健全な成長を促す立場にありながら,教え子にキスをさせたものである。被告人としてはスキンシップとして許される範囲であると思ったのかもしれないが,児童への性的行為に対する近年の社会の受け止め方も考慮すれば,甘い考えであったと言わざるを得ず,責任非難の程度も軽くみることはできない。
 もっとも,本件犯行は暴行や脅迫を用いたものではなく,キスの態様も唇と唇が短時間触れる程度のもので,わいせつ行為の中ではわいせつ性の程度が高いものではないことからすると,本件は同種事案の中では軽い部類に位置付けられる。
 以上に加え,被告人に前科がないことも踏まえると,被告人に対しては,法定刑の下限に近い主文の刑を科した上で,その刑の執行を3年間猶予するのが相当である。
(求刑 懲役1年)
  令和元年10月23日
    札幌地方裁判所刑事第2部
        裁判長裁判官  中川正隆
           裁判官  向井志穂

提供目的製造罪で製造された媒体を供用物件(刑法19条1項2号)として没収した事例(大阪地裁r02.11.04)

 westlawで回ってきました。

 生成物件(3号)ですよね
 https://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/06/19/000000

「ノート型パーソナルコンピュータ(大阪地方検察庁平成31年領第1710号符号6)に記録させて保存し,」というのも媒体の特定としてちょい甘い

裁判年月日 令和 2年11月 4日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,福井県少年愛護条例違反,強制性交等未遂,強制性交等,青少年の健全な育成に関する条例(昭和56年京都府条例第2号)違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例違反被告事件
文献番号 2020WLJPCA11046011
 
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,福井県少年愛護条例違反,強制性交等未遂,強制性交等,青少年の健全な育成に関する条例(昭和56年京都府条例第2号)違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例違反被告事件について,当裁判所は,検察官野村すみれ,私選弁護人乾彰夫各出席の上審理し,次のとおり判決する。 

主文
 大阪地方検察庁で保管中の外付けハードディスク1点(平成31年領第1710号符号5),ノート型パーソナルコンピュータ1点(同領号符号6)を没収する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。
 
 
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
第3 平成30年5月2日付起訴状記載公訴事実
 1 別紙記載のE(当時14歳)が18歳に達しない者であることを知りながら,平成29年8月20日午前8時17分頃から同日午後4時17分頃までの間に,福井市〈以下省略〉eホテル505号室において,単に自己の性的欲望を満たすために同人と性交し,もって青少年に対し,みだらな性行為をした。
 2 同人が18歳に満たない者であることを知りながら,不特定又は多数の者に提供する目的で,前記1の日時頃,同所において,同人に,被告人と性交する姿態をとらせ,これを被告人のビデオカメラで撮影し,その動画データを同ビデオカメラに挿入したSDカードに記録させて保存した上,平成30年2月14日頃,北九州市〈以下省略〉当時の被告人方において,前記動画データを編集した動画データ1点を,パーソナルコンピュータに接続した電磁的記録媒体である外付けハードディスク(大阪地方検察庁平成31年領第1710号符号5)に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。

第4 平成30年12月13日付起訴状記載公訴事実
 1 別紙記載のF(当時13歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,平成29年8月22日午前10時21分頃から同日午後2時50分頃までの間に,京都府久世郡〈以下省略〉fホテル216号室において,性的な道徳観が十分確立していない同人の精神的,知的未熟に乗じ,自己の性欲を満たす目的で同人と性交し,もって青少年に対し淫行した。
 2 同人が18歳に満たない者であることを知りながら,不特定又は多数の者に提供する目的で,前記1の日時頃,同所において,同人に,胸部を露出する姿態をとらせ,これを被告人のビデオカメラで撮影し,その動画データを同ビデオカメラに挿入したSDカードに記録させて保存した上,平成30年2月10日頃,北九州市〈以下省略〉当時の被告人方において,前記動画データ1点を,電磁的記録媒体であるノート型パーソナルコンピュータ(大阪地方検察庁平成31年領第1710号符号6)に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。

 (法令の適用)
 没収 刑法19条1項2号,2項本文〔主文の外付けハードディスク1点(大阪地方検察庁平成31年領第1710号符号5)は判示第3の2の犯行の用に供した物で,主文のノート型パーソナルコンピュータ1点(同領号符号6)は判示第4の2の犯行の用に供した物で,いずれも犯人以外の者に属しない〕
 令和2年11月9日
 大阪地方裁判所第5刑事部
 (裁判長裁判官 長瀨敬昭 裁判官 松田克之 裁判官 平山裕也)

「わいせつな行為とは、個人の身体に向けられた重大な性的干渉をいう」松原芳博刑法各論[第2版]

「わいせつな行為とは、個人の身体に向けられた重大な性的干渉をいう」松原芳博刑法各論[第2版]
 初版とは違う説明になっています
 単なる撮影行為は、わいせつ行為とは言えないそうです。

刑法各論(初犯)
2016年3月20日第1版第1刷発行
著者一松原芳博
判例によれば、本罪の「わいせつな行為」とは、公然わいせつ罪のそれと同じく、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」行為である(名古屋高金沢支判昭和36年5月2日下刑集3巻5=6号399頁)。もっとも、本罪では個人の性的自由が保護法益であるから、第三者からみた行為の意味ではなく被害者からみた行為の意味が重要となるため、「わいせつな行為」の範囲は公然わいせつ罪よりも広くなる。したがって、唇にキスする行為は公然わいせつには当たらないとしても強制わいせつ罪には当たりうる。もっとも、現在の性意識に照らせば、頬にキスする行為(東京地判昭和56年4月30日判時1028号145頁はこれも本罪に当たるとする)に性的意味は認め難いであろう。このほか、「わいせつな行為」の例としては、乳房や陰部に触れる行為(名古屋高金沢支判昭和38年5月2日下刑集3巻5=6号399頁)、裸にして写真を撮る行為(東京高判昭和29年5月29日判特40号138頁)、肛門に異物を挿入する行為(東京高判昭和59年6月13日刑月16巻5=6号414頁)がある。

松原芳博刑法各論[第2版](法セミLAWCLASSシリーズ)2021年3月23日
p91
2強制わいせつ罪
13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処せられる。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も同様である(176条)。
これらの未遂も罰せられる(180条)。
わいせつな行為とは、個人の身体に向けられた重大な性的干渉をいう。29)30)

29) 判例・通説(団藤490頁など)は、本罪の「わいせつな行為」を、公然わいせつ罪のそれと同じく、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」行為(名古屋高金沢支判昭和36年5月2日下刑集3巻5=6号399頁)と定義してきた。
しかし、本罪では、第三者からみた行為の意味ではなく被害者からみた行為の意味を問題とすべきであり、また、被害者の身体に向けた加害性が要求されるべきである。
30) わいせつな行為の諸類型につき、嘉門優「強制わいせつ罪におけるわいせつ概念」立命375=376号(2017年)116頁以下参照。
わいせつな行為の判断基準につき、佐藤陽子「強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について」法時88巻11号(2016年)62頁以下参照。
身体の接触のないわいせつな行為の類型につき、橋爪隆「非接触型のわいせつ行為について」研修860号(2020年)3頁以下参照。

その典型は、陰部や乳房などの性的部位に直接触れる行為(最決平成23年9月14日刑集65巻6号949頁、さいたま地判平成26年5月21日LEX/DB25504089など)である。
唇(東京高判昭和32年1月22日高刑特4巻l~3号16頁)や頬(東京地判昭和56年4月30日判時1028号145頁)に無理やり接吻する行為も本罪に当たるとされるが、現在の社会の意識に照らせば、少なくとも後者に性的な意味は認め難いように思われる。
着衣の上から性的部位に触れる行為は、性的干渉の重大性の見地から、乳房を操む行為(函館地判平成27年5月18日LEX/DB25447301)や霄部を撫で回す行為(京都地判平成26年5月21日LEX/DB25504092)のような執拘な態様のものに限って本罪を構成し、そうでないものは、本罪の予定する不法内容に達しないことから、卑わい行為として迷惑防止条例で罰せられる。
被害者に行為者の性的部位、特に性器を直接さわらせる行為(熊本地判平成27年6月12日LEX/DB25540876)も、本罪に当たる。被害者に自慰行為をさせる行為(神戸地尼崎支判平成26年7月30日「LEX/DB25504574)や女性を無理やり裸にして写真撮影する行為(東京地判昭和62年9月16日判タ670号254頁)は、身体的接触を伴わないものの、性的な意味をもつ身体的態度を被害者に強いていることから、被害者の身体の重大な性的収奪として本罪を構成しうる。

32) 裁判例には、医師が診療中に性的意図をもって女児の胸を盗撮した聿案で児童ポルノ製造罪とともに強制わいせつ罪の成立を認めたもの(広島高判平成23年5月26日LEX/DB25471443)がある。しかし、非接触型のわいせつ行為については、何らかの強制的契機を伴うか、または少なくとも行為を被害者が認識していることを要すると解すべきであろう。そうでなければ、迷惑防止条例軽犯罪法で罰せられている覗きや盗撮も準強制わいせつ罪に当たることになってしまう。

行為者の自慰行為を被害者に見せつける行為(大津地判平成24年6月1日LEX/DB25481694)については、被害者の身体への侵襲性がさらに希薄になるが、行為者との性交類似行為への参加を被害者に強いていると評価しうる限度で本罪の成立を認めうるように思われる。


判例は、かつて、本罪の成立には性欲を刺戟興奮させまたは満足させる意図(性的意図)を要するとし、報復のために女性を裸にして写真を撮った被告人を本罪ではなく強要罪に処した(最決昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁)が、近時、被害者の受けた性的被害を重視すべきとの見地から、行為者の性的意図は本罪の必須の成立要件ではないとする立場に転じ、〔事例8〕金を借りようとした相手の要求に応じ、7歳の女児に自己の男性器を触らせたり口に畦えさせたりしている写真を送った事案で、本罪の成立を肯定した(最大判平成29年11月29日刑集71巻9号467頁一強制性交等罪新設前の事件)。
性的意図は、もともと、性犯罪を淫らな性欲の発散として捉える立場から、行為の背徳性を基礎づける事情として要求されたものと考えられる。
これに対して、性犯罪を被害者の性的自由の侵害とみる立場からは、行為者に性的意図はなくとも、被害者にとって性的意味をもつ行為を受忍させれば性犯罪の不法内容は充足されよう。
また、段棄罪との区別のために利用・処分意思(第10章Ⅳ2)が要求される領得罪とは異なり、性犯罪については、特別の責任要素がなくても、不法内容の相違によって強要罪との刑の違いを説明しうる。
それゆえ、性的意図を本罪の必須の成立要件から外した点で平成29年判決は支持することができる。
もっとも、平成29年判決は、行為の性的な意味が明確ではない場合において性的意図を含めた行為者の主観面を考慮する余地を認めている。
この場合の性的意図は、さしあたり、構成要件要素としての「わいせつな行為」の認定における考盧事項とされているが、性的意図と行為の法益侵害性や行為者の責任との関連性は明らかではない。
また、客観的にみて稀薄な性的性質を性的意図によって補うことによって意思処罰に陥ってはならない。
性的意図の補充的な考盧は、それが被害者に認識されることを通じて被害者にとっての性的侵襲度を高めるような場合に限って許されるべきではないだろうか。
また、外形的にみて被害者の立場に置かれた通常人にとって性的意味を有し34)ない行為について、性的意図の存在を理由に本罪の成立を認めるべきではないであろう。

大阪府内におけるデリヘル盗撮の行為には、軽犯罪法違反(窃視罪)が適用され、迷惑防止条例は適用されない

こういう経緯があって
「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解釈及び運用について」の全部改正についてh29版 - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)
大阪府迷惑条例は対応していないようですね。

警察によりますと、20日夕方、大阪・中央区のホテルの部屋で、性的サービスを受けていた際、女性の姿をかばんに隠したスマートフォンで撮影したとして軽犯罪法違反の疑いがもたれています。女性が被害に気づき、スマートフォンの中からは撮影された動画が見つかったということです。警察の調べに対し容疑を認め、「あとで見ようと思った」と話しているということです。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210321/2000042764.html

軽犯罪法1条[軽犯罪]
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
場所」をのぞいたのではなし、から本号に該当しない。
・・・・
実務のための軽犯罪法解説
「ひそかに」とは,見られないことについて利益を有する者の承諾ないし推定的承諾なしにという意味である。現に見られないことの利益を有する者又はそれ以外の第三者に知られているかどうかを問わない。例えば,公衆便所の壁の隙間などからのぞき見すれば,その直前,用便中の者に対して,のぞき見ることを予告したとしても,その承諾を得ていない限り本号に該当する。また,不特定多数人の面前で行っても,見られる者の承諾なしに行えば,本号に該当する。例えば,公衆浴場内に入浴客として入り,カメラをタオルで隠、して他の入浴客の裸体を撮影すれば,本号に当たると解する。
(6) 「のぞき見る」とは,物かげや隙間などから見ることをいう。何の作為もしないのに,自然に見えてしまった場合は,「のぞき見る」には当たらない。望遠鏡で見たり,カメラを用いてひそかに写真撮影する場合も,「のぞき見る」に当たる。なお,カメラを用いる場合には,カメラのシャッターを押してフィルムに露光させた時点で既遂になるものと解する(判例①)。また,ビデオカメラを用いて便所内の女性の姿態等を「盗み撮り」する行為も「のぞき見る」に当たり,その撮影内容を見ていなくても録画した時点で既遂に達する(判例②)。しかし,夫婦生活の状況を盗聴し,あるいは録音しでも,「見る」ことにならないから本号には該当しない

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
昭和37年12月24日 条例第44号
(平成29年6月30日施行)
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001067.html
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
二 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。
三 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。
四 前三号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。
2 何人も、みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態を撮影してはならない。
3 何人も、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、教室、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)における衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影してはならない。
4 何人も、第一項第二号若しくは第三号又は前二項の規定による撮影の目的で、人に写真機等を向け、又は設置してはならない。
(平一四条例一〇六・追加、平二九条例五八・一部改正)

大阪府警の解説
第2項関係
(1) 軽犯罪法(昭和23年法律第39号)第1条第23号において、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服を着けないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為を禁止しているの
に対し、この項は、公衆が利用することができる公衆浴場等における衣服の全部又は一部を着けない状態にある人を撮影する行為を対象として禁止している。
(2) 「公衆浴場」とは、公衆浴場法(昭和28年法律第139号)第1条に規定する公衆浴場をいう。
(3) 「公衆便所」とは、公園内、道路端等に設四されている公衆の用に供する便所をいう。
(4) 「公衆が利用することができる更衣室」とは、悔水浴場、公衆の遊泳に供するプール等に設置された更衣室をいう。
(5) 「その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所」とは、旅館、ホテル等に設置された宿泊客用の大浴場、百貨店、スーパーマーケット等に設附された来客用の便所等をいう。
(6) 「当該状態にある人の姿態」とは、公衆浴場等で衣服を脱ぎつつある人若しくは着装しつつある人又は裸体でいる人の姿態をいう。
8 第3項関係
(1) この項は、公共の場所又は公共の乗物以外の不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物におけるのぞき見行為及び盗撮行為を規制するものである。
(2) 「不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)」とは、不特定又は多数の者が、出入りし、又は利用しようとする場所等の所有者、管理者等の承認(黙示のものを含む。)の下に、当該場所等の本来の用途に従って出入りし、又は利用するような場所等をいう。したがって、例示されたもののほか、例えば、ネットカフェ(インターターネットを利用することができる端末装附を設附して客の利用に供する施設をいう。)の個室、病院の診察室、貸切バス等がこれに当たる。
なお、■■■■■■■■■■■■■■■■は、「不特定又は多又は利用するような場所」に含まれない。
9 第4項関係
(1) この項は、第1項第2号及び第3号、第2項並びに第3項の規定により規制している撮影行為の目的で、人に写真機等を向け、又は設四する行為を規制するものである。
(2) 「撮影の目的」とは、下着等又は衣服の全部若しくは一部を着けない状態にある人の姿態を盗撮する目的のことをいい、その有無は、行為者の供述又は向けられ、若しくは設四された写真機等による撮影状況等を総合的に勘案して判断する。
(3) 「人に写真機等を向け」とは、下着等又は衣服の全部若しくは一部を珀けない状態でいる人の姿態が撮影できる状態に写真機等のレンズを向ける行為をいう。
(4) 「設置し」とは、下着等又は衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる人の姿態が撮影できる状態に写真機等を設置することをいう。

判示の一連の被告人の行為(特に,自己の股間を被害者の顔に押し付けようとする行為)が性的意味合いを有する行為であることは明白であり,医師である被告人と製薬会社のMRである被害者の関係性なども踏まえると,強制わいせつ罪としての処罰に値しないほど軽微な行為といえないことは明らかである。(津地裁R2.12.4)

判示の一連の被告人の行為(特に,自己の股間を被害者の顔に押し付けようとする行為)が性的意味合いを有する行為であることは明白であり,医師である被告人と製薬会社のMRである被害者の関係性なども踏まえると,強制わいせつ罪としての処罰に値しないほど軽微な行為といえないことは明らかである。(津地裁R2.12.4)
 「わいせつ=ある程度の強度をもつ性的意味合いを有する行為」という定義でしょうか。

職業 医師
事件名 強制わいせつ致傷
公判出席検察官 辻雄介
同 喜多村思穂
公判出席弁護人 西澤博(主任)
同 飯田真也
同 辻井拓夫
同 岩田和恵


       主   文

被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成27年3月24日午後1頃から同日午後1時30分頃までの間,三重県松阪市 整形外科診察室において,別紙の1記載の製薬会社のMRである被害者甲(当時30歳。以下,単に「被害者」という。)に対し,椅子に座っていた被害者の乳房を着衣の上から触り,被害者の額にキスをした上,被害者甲の顔に自己の股間を押し付けようとし,もって強いてわいせつな行為をし,その際,これを避けようとした被害者を椅子から転落させてその顔面を床に打ち付けさせ,よって,被害者に全治不能の外傷性視神経損傷の傷害を負わせた。
(証拠の標目)《略》
(争点に対する判断)
1 争点
 本件の主たる争点は,〔1〕被告人が被害者の乳房を着衣の上から触り,被害者の顔に自己の股間を押し付けようとする行為を行ったか否か,〔2〕被告人のした行為が強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」に当たると評価できるか否か,〔3〕被告人において,被害者が被告人の行為について容認(同意)していると誤信していたという(合理的な)疑いはないか,の3点である。なお,その他,〔4〕強制わいせつ致傷罪が成立するためには,被告人が被害者の傷害結果について予見できていたという要件が必要か否かも争われている。
2 争点〔1〕についての判断
 まず,被告人が被害者に対して行った行為の内容(争点〔1〕)について検討する。
(1)被害者及び被告人の供述内容
 被害者は,当公判廷において,〔ア〕「被告人は,自分の胸目掛けて,上から,下から,横から,ランダムに手を伸ばしてきた。『やめて』とか『やめてください』と言いながら,自分の手で被告人の手を払いのけたり,両腕をクロスさせる形で胸をガードした。被告人の手が当たらないこともあったが,複数回は実際に胸に当たった」,〔イ〕「被告人が椅子から立ち上がって,キャスターの付いた丸椅子に座っていた自分に近付いてきて,背伸びをするような姿勢をとりながら腰を前に突き出して股間を強調し,自分の顔に向けて股間を突き上げるような動きをしてきた。すごく驚いて,『やめて』とか『やめてください』と言いながら,身体をよじり,椅子に座ったまま後ろに下がった。椅子から落ちそうになって,被告人から『危ない,怪我したら』と言われた。このとき,被告人が股間を強調する仕草をしてきたことについて,『何でそんなに大きくなろうとするんですか』と言った」,〔ウ〕「その後もう一度,被告人が椅子から立ち上がって,丸椅子に座っていた自分に向かって近づいてきて,自分の顔に向けて股間を近づけてきた。すぐ近くには被告人がいてすぐ後ろには診察室入口のドアがあったので逃げ場がないと感じて,とっさによけようとして椅子から転落し,顔を床にぶつけた」などと供述している。
 これに対し,被告人は,当公判廷において,〔ア〕「被害者甲の上半身に向けて手を伸ばしたことはあったが,被害者甲の胸を触るつもりはなく,当たらない距離で上半身に手を伸ばして,触るふりをしただけである。被害者甲から胸をガードされていたこともあって,被害者甲の胸に手は当たらなかった」,〔イ〕「股間を強調する仕草をしたとされる1回目の行為については,被害者甲から離れた場所で,自分の身体の正面を被害者甲に対して横に向けた状態で,股間を強調する動作をしただけであって,被害者甲の顔に股間を近付けることはしていない。なお,『危ない,怪我したら』という発言はしたが,その直前に被害者甲の膝をつつく動作をしたときに,被害者甲が大きく椅子を引いてバックして,後ろの診察室の入口にぶつかりそうになったことを受けてしたものであって,股間を強調する動作とは関係がない」,〔ウ〕「被害者甲が椅子から転落するきっかけとなった行為については,椅子から立ち上がって,向かい合って座っていた被害者甲の胸元に向けて手を伸ばしてつつこうとしたところ,被害者甲が体をひねってよけたために,バランスを崩して転倒したものであって,このときに股間を強調するような動作はしていない」旨供述している。
(2)検討の前提となる事実関係
 関係証拠によれば,これら供述の信用性を検討する前提となる事実関係として,次のとおりの事実が明らかに認められる。
ア 犯行時の状況
 被害者甲は,被告人から上半身に向けて手を伸ばされるなどした時点(前記〔ア〕の時点)においては,「やめてください」などと言いながら被告人の手を払いのけるなどして受け流していたのに対し,被告人から股間を強調する仕草をされたとされる時点(前記〔イ〕〔ウ〕の時点)においては,被告人の行為を避けようとして,被告人から「危ない,怪我したら」と声をかけられたり,現にバランスを崩して椅子から転落するに至っており,後者の時点(前記〔イ〕〔ウ〕の時点)においては,被告人の行為を真剣に避ける必要を感じさせるような切迫した状況があったことが如実にうかがわれる。
イ 犯行直後の被害申告状況
 被害者甲は,本件犯行当日の夕方に,職場の同僚(女性)から左目の上にけががあるのを見とがめられて,その理由を問いただされる中で,「被告人に股間を顔に押し当てられた。これを避けようとしてバランスを崩し,床で左目をうった」旨の説明をし,さらに,本件犯行翌日にも,上記の同僚から報告を受けた職場の責任者(男性)から事情を聴かれて,「被告人に,胸を揉まれたり,顔をなめられたり,股間を顔に押し付けられたりした」旨の説明をした。
 しかも,これらの被害申告をした際,被害者甲は,非常に混乱した精神状態の中で,涙を浮かべながら,職場の同僚や責任者から問われるままに,絞り出すようにして被害状況を話したと認められるし,警察への通報を頑なに拒否し,MRとして被告人の医院の担当を継続することを希望していたと認められる。このように被害申告時の状況は,一定の思惑をもって殊更な虚偽・誇張を述べる余裕があったとは考えにくいだけでなく,被告人を貶めるような殊更な意図をもって被害申告を始めたとは考え難いものであった。
(3)被害者甲及び被告人の供述の信用性
 被害者甲供述は,その内容において殊更な虚偽や誇張を疑わせるような不自然な点はなく,本件時の状況を録音した音声データ等の他の証拠と明らかに齟齬する点もない上,前認定の犯行時の状況や犯行直後の被害申告状況によって強力に裏打ちされているから,十分に信用することができる(なお,被害者甲供述は,事件直後に被害申告を受けた職場の同僚や責任者の供述との間で,(a)被告人から胸を揉まれたのか,触られたにとどまるのか,(b)被告人から股間を顔に押し付けられそうになった際,被告人が椅子の上に立っていたのか,床に立っていたのかなどの点につき,若干の食い違いが認められるが,非常に混乱した精神状態の中で断片的に語られる被害者甲の話を,聞き手の側が想像で補いながら被害状況を認識したことによって,若干の食い違いが生じたものと理解できるから,被害者甲供述の信用性を揺るがすほどの問題とは見なかった。)。
 これに対し,被告人の供述は,前認定の犯行時の状況や犯行直後の被害申告状況と整合性がなく,信用することができない。すなわち,被告人の言うような軽微な行為がなされたにとどまっていたのなら,被害者甲が椅子から転落するほどの事態になるとは考え難いし(前記(2)ア),被害者甲が大変な精神的ショックを受けるとも考え難い上(前記(2)イ),被害者甲が本件の直後に一定の思惑をもって殊更な虚偽・誇張を述べたということになるが,本件においてそのような可能性を現実的な問題として考慮する余地がないことは前に述べたとおりである(前記(2)イ)。
(4)結語
 以上の次第で,被害者甲証言に依拠して,判示のとおりの行為を被告人が行ったものと認定した。
3 争点〔2〕についての判断
 次に,被告人の行為が強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」に当たるといえるか否か(争点〔2〕)について検討するに,判示の一連の被告人の行為(特に,自己の股間を被害者甲の顔に押し付けようとする行為)が性的意味合いを有する行為であることは明白であり,医師である被告人と製薬会社のMRである被害者甲の関係性なども踏まえると,強制わいせつ罪としての処罰に値しないほど軽微な行為といえないことは明らかである。
4 争点〔3〕についての判断
 さらに,被告人において被害者甲が容認(同意)していると誤信していたという(合理的な)疑いはないか(争点〔3〕)について検討すると,関係証拠によれば,〔1〕被告人と被害者甲の間には,医師と製薬会社のMRという関係があるだけでプライベートの付き合いはなく,常識的に見て,被害者甲が被告人の性的な行為を受入れる素地は全くなかったこと,〔2〕被害者甲は,被告人から胸を触られそうになった際,何度も「やめて」などと言って拒絶の意思を表示したり,自己の手で胸をガードし,自己の手で被告人の手を払いのける行為を行っており,被告人も,被害者甲が身体を触られたくなくてこのような言動をとっていることを分かっていたことが認められる。これらの事実を踏まえると,被告人において,被害者甲が嫌がっていることを認識していたことは明らかであって,被告人において被害者甲が容認(同意)していると誤信していたという疑いを差し挟む余地はない。
5 争点〔4〕についての判断
 なお,弁護人は,被告人において,被害者甲がけがをするということが全く予想できなかったとして,被害者甲の負傷結果を被告人に帰責することは許されない旨主張するが,結果的加重犯において,基本犯についての故意があり,基本犯に内在する危険が現実化した以上は,結果についての予見可能性を改めて検討するまでもなく,結果を被告人に帰責することができるものと解される(このように解するのが確立した判例である)から,弁護人の主張は採用できない(そもそも本件においては,被害者甲がけがをしたことについて被告人に過失があったことは明白であり,弁護人の主張は前提においても失当というほかない。)。
(法令の適用)
罰条 平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法181条1項(176条前段)
刑種の選択 有期懲役刑を選択
刑の執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の負担 刑事訴訟法181条1項本文
(量刑の理由)
1 本件は,見るべき前科のない被告人が,単独で,凶器を用いないで実行した強制わいせつ致傷1件の事案(なお,他に併合されている主要な罪がなく,13歳以上の被害者甲に対するものであって,わいせつ行為が既遂に達しており,傷害の程度が2週間以内~全治不能であって,犯行態様が「路上型」でも「侵入型」でもないもの。以下「本件類型」という。)である。
2 犯罪行為そのものに関する事情(犯情)に着目して,本件類型の量刑傾向を踏まえて,本件の量刑について検討する。
 本件の結果は極めて重大である。被害者甲は,顔の左目付近を床に打ち付け,左視束管骨折をし,左目に全治不能の外傷性視神経損傷の傷害を負い,十分な矯正視力が得られず,視野も狭くなるなどして,日常生活や就労に大きな支障が出ているだけでなく,容貌にも変化が生じている。多大な精神的苦痛を被っているものと認められ,被害者甲が被告人に対して厳罰を求めるのも当然のことと理解できる。本件類型中の他の事案に比べても,極めて重大な結果が生じていることが明らかである。
 しかも,被告人は,被害者甲が嫌がっていることを認識していたものの,製薬会社のMRである被害者甲が,大口顧客である被告人の機嫌を損ねるような強い拒絶の態度をとることが難しいことに乗じて,また,被告人から軽微なわいせつ行為をされても大事にすることはないものと高をくくって,被害者甲に対する軽微なわいせつ行為を常習的にしつこく繰り返す中で,行動をエスカレートさせて本件犯行に至ったものと認められる。明確な脅迫文言は用いられておらず,わいせつ行為に向けられた暴行の程度も強度とはいえないが,殊更に強度の圧力を加えなくとも被害者甲の抵抗をある程度封じることができる関係性の中で行われた常習的犯行であるから,かなり悪質といわなければならない。
 しかしながら,被告人は,強姦(強制性交等)と境を接するような苛烈な行為に及んでいないことはもとより,被害者甲の胸や性器を直接触る等の典型的なわいせつ行為にも及んでおらず,比較的軽微なわいせつ行為にとどめていたとうかがわれる上,被害者甲から「やめて」と言われると強引に行為を継続することはしないで行為を一時中断することもあったと認められる。常習的にしつこくわいせつ行為に及んでいたとはいえ,被害者甲の性的自由(保護法益)を蔑ろにした度合いという観点では,典型的な強制わいせつ事案と同列に扱うことはできないと考えられる。
 また,被害者甲が重大なけがを負ったこととの関係で,被害者甲の身体の安全を蔑ろにした度合いという観点で本件を見ると,被告人のした行為は,相手の抵抗を排除するために強度の暴力を加えたような事案とは異なり,ここまで大きなけがを招いたのも当然であると評価できるような凶悪な態様のものではなかった。被告人としても、本件犯行の際,被害者甲に対し,「危ない,怪我したら」と言っており,被害者甲が負傷する可能性を認識していなかったわけではないものの,ここまでの重大な結果が生じることを想定していなかったことは否定し難い。したがって,本件の重大な傷害結果に見合うほどに被害者甲の身体の安全(保護法益)を蔑ろにした度合いが高いとはいえないから,本件の重大な傷害結果を量刑上考慮するにも一定の限度があるといわなければならない。
 これらの事情を踏まえると,本件は,本件類型の中で,実刑以外の選択は考えられないというほどに重い事案とまではいえず,執行猶予を視野に入れて量刑を検討するべき事案といえる。 
3 以上を前提に,犯罪行為以外の事情(一般情状)を含めて更に検討すると,被告人が被害弁償として2500万円という高額の供託をした(なお供託金取戻請求権は放棄した)事実が重要であり,この事実は,被害者甲に対する慰謝の措置を講じたものとして,量刑上相応に考慮されるべきであり,この事実も加味して考えれば,本件については,酌量減軽までするのは相当でないが,刑の執行を猶予して社会内で更生する機会を与えるのが相当である。
 なお,他に,〔1〕被告人が謝罪文を被害者甲に送付したこと,〔2〕被告人が不合理な弁解をして反省が十分でないと見られる面があること,〔3〕被告人の妻が被告人の今後の監督を約束しているだけでなく,被告人も再発防止策を具体的に講じている上,被告人自身相当に懲りたとうかがわれるから,再犯のおそれが高いとはいえないことなどの事実も認められるが,これらは,純粋な一般情状であって,具体的に刑を左右するほどの事情とは評価しなかった。
4 以上の次第で,当裁判所は,主文の刑が相当であると判断した。
(求刑 懲役3年)
令和2年12月14日
津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 柴田誠 裁判官 濱口紗織 裁判官 山本健太

児童買春罪4罪で罰金80万円(横浜地裁r02.11.5 求刑80万円)

児童買春罪4罪で罰金80万円(横浜地裁r02.11.5)

横浜地裁令和 2年11月 5日
主文

 被告人を罰金80万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。
 
 
理由

 (犯罪事実)
 被告人は
 第1 甲(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
  1 令和元年5月21日午後2時40分頃から同日午後7時1分頃までの間に,静岡市〈以下省略〉 ○○・310号室において,同児童に対し,現金1万円の対償を供与する約束をして,同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって,児童買春をした。
  2 同年6月4日午後3時41分頃から同日午後6時51分頃までの間に,○○・301号室において,同児童に対し,現金の対償を供与する約束をして,同児童と性交し,もって,児童買春をした。
 第2 同年11月23日午前0時29分頃から同日午前1時10分頃までの間に,東京都〈以下省略〉 △△に駐車中の自動車内において,乙(当時15歳)及び丙(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童らに対し,現金合計3万円の対償を供与する約束をして
  1 乙に自己の陰茎を手淫及び口淫させる性交類似行為をし,もって,児童買春をした。
  2 丙と性交し,もって,児童買春した。
 (証拠)かっこ内の甲乙の番号は検察官請求証拠の番号を示す。
 〈中略〉
 (法令の適用)
 罰条(第1,第2,第3の1,2) いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条
 刑種の選択(第1,第2,第3の1,2) いずれも罰金刑
 併合罪の処理 刑法45条前段,48条2項
 労役場留置 刑法18条
 訴訟費用の負担 刑事訴訟法181条1項本文
 (量刑の理由)
 本件は,被告人が,●●●当時15歳から17歳までの児童3名との間で,対償供与の約束をして性交又は性交類似行為をしたという児童買春の事案であるところ,児童の心身に有害な影響を及ぼす犯行内容は悪質であり,自身の性欲の赴くままに各犯行に至った被告人の行状に酌むべきところはない。したがって,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。
 他方,被告人が本件各犯行を認め,反省の態度を示していること,被害児童1名●●●との関係で示談が成立していること,被告人に前科がないこと,妻が今後の被告人の更生に協力する旨証言していることなど,被告人のために酌量すべき事情もある。
 そこで,これらの事情を総合考慮して,被告人を主文の罰金刑に処することとした。
 (求刑―罰金80万円)
 横浜地方裁判所第1刑事部
 (裁判官 橋本健)

「撮影」「差し向け「設置」」岡山県迷惑行為防止条例

「撮影」「差し向け「設置」」岡山県迷惑行為防止条例
 岡山のトイレ盗撮の略式命令を閲覧しました。
 設置して撮影した場合は、撮影罪のみのようです。
 設置して数人撮影した場合はAB特定されても撮影罪単純一罪のようです。


岡山県迷惑行為防止条例解説2017
条例13条
3何人も、正当な理由がないのに、事務所、学校、病院、公衆浴場その他の多数の者が集まり、又は利用する施設のうち、人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所にいる者の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影し、若しくは撮影する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置してはならない。
・・・
撮影する」
写真機等を使用して、被写体をフイルム又は電磁的記録媒体に記録する行為をいう。
撮影する方法は、秘匿、公然を問わず、撮影した時点で既遂となる。
※「撮影する」行為の解釈上の既遂時期
既遂時期は、
.光学カメラは、フィルムを感光させたとき
ポラロイドカメラは、印画紙を感光させたとき
デジタルカメラ、ピデオカメラ及びデジタルカメラ付き携帯電話は、光の強弱等を電気的に変換し、記憶装置(メモリ)又は外部記録媒体に保存(一時的な保存を含む。)したとき
である。
なお、「一時的な保存を含む。」とした理由は、デジタルカメラ付き携帯電話や一部のデジタルカメラには、撮影のスイッチを押した時点では、本体内の記憶装置(メモリ)に一時的に保存されるにすぎず、その後、保存又は登録等した場合に再生可能となる型式の物があるが、一時的に保存した場合であっても、そのまま電源を切ったり又は保存しないを選択しない限り、長期にわたり本体内の記憶装置(メモリ)に留め置き、閲覧することが可能であり、再生可能な状態の保存と同等の効果があるからである。
光学カメラでフイルムが入っていない場合やポラロイドカメラで印画紙が入っていない場合は、フィルム等を感光させることができず撮影には当たらないが、撮影しようとした行為が、性的差恥心を著しく害し、不安を覚えさせるような方法で行っていれば、本項第3号の「卑わいな言動」に該当するか否かを検討することとなる。また、デジタルカメラ等にあっては、外部記録媒体がない場合であっても、本体内の記憶装置(メモリ)等に保存できる型式であれば、前述のとおり「撮影する」と解する。
(力)「撮影する目的」
人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影する目的、つまり盗撮目的のことをいう。
(キ)「差し向け」『設置」
「差し向け」とは、写真機等をスカートに差し入れる行為等をいう。
「設置」とは、写真機等を撮影可能な状態で設置することをいう。
現実に録画中でなくても撮影可能な状態の写真機等を差し向け又は設置した時点で既遂となり、その時点で犯罪は完了する。
つまり、撮影する目的で、撮影可能な状態の写真機等を「差し向け」又は「設置」すれば、画像が撮影されなかった(できなかった)としても、第2号違反となる。
※実務上における「撮影」「設置」「差し向け」の判断基準
○「撮影」とは、人の下着等を撮影した画像が保存(一時的な保存を含む。)されている場合
○「差し向け」とは、撮影可能な状態のカメラを人の下着等に向けたが、撮影した画像が保存されていない(できなかった)場合
○「設置」とは、人の下着等を撮影する目的で撮影可能な状態のカメラを置いた場合

数回の児童ポルノ公然陳列行為は併合罪(大阪高裁R03.3.10弁護人上告) ちなみに包括一罪説は大阪高裁h15.9.18、東京高裁h16.6.23、名古屋高裁h23.8.3

数回の児童ポルノ公然陳列行為は併合罪(大阪高裁R03.3.10)
 わいせつかつ児童ポルノであれば科刑上一罪になて処断刑期は5年ですが、(⑤と⑥の間)4分差で、わいせつではない児童ポルノを1個陳列すると、2個の行為になって、併合罪加重されて、処断刑期は7年6月になるというのです。

陳列日時 児童ポルノの号数 わいせつ性 検察官主張 弁護人主張 阪高
2021/2/23 11:34 2号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/3/5 11:26 3号 わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/3/5 11:27 3号 わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/3/5 11:30 3号 わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/4/27 7:33 3号 該当無し 第1行為 第1行為 第2行為
2021/4/27 7:37 該当無し わいせつ 第1行為 第1行為 第1行為
2021/5/11 5:16 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/5/11 5:17 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/5/13 10:36 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/5/23 11:06 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
2021/6/11 4:31 3号 わいせつ 第2行為 第1行為 第1行為
処断刑 7.6年 5年 7.6年
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陳列行為

阪高裁令和3年3月10日
(2)公然陳列の罪数に関する所論について
 ア 所論〔主任弁護人〕は,原判決は原判示第1の児童ポルノ公然陳列罪と原判示第2の児童ポルノ公然陳列罪とを併合罪としているが,被告人のこれらの行為は,令和年月6日から同年月22日にかけて,自宅で,反復して児童の裸体画像を公然陳列するところにあり,しかも,陳列したのは1個のサーバコンピュータであり,公然陳列行為の個数はサーバの個数で決まると解するべきであるから,公然陳列行為は1個の行為であって単純一罪ないし包括一罪と評価されるべきであり(1個の公然陳列行為によって,わいせつ物公然陳列罪と児童ポルノ公然陳列罪を充たすので,両罪の観念的競合となる。),原判決には法令適用の誤りがある旨主張する。
 イ この点,原判決は,法令適用の罰条において「判示第1の1の所為のうち,児童ポルノ公然陳列の点及び判示第2の所為につき,各画像データごとにそれぞれ児童ポルノ法7条6項前段(2条3項2号,3号)に該当する」としているところ,児童ポルノ法は,児童を性欲の対象とする風潮を防止するという面で児童一般を保護する目的がある一方で,同法1条の目的規定や各個別規定による児童ポルノ規制のあり方に照らすと,当該児童ポルノに描写された個別児童の権利保護をも目的としていると解される。そうすると,被害児童ごとに法益を別個独立に評価して各画像データごとにそれぞれ児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めている原判決の罰条適用は正当なものである。所論は(児童ポルノ)公然陳列行為の個数はサーバの個数で決まるというが,同罪の個人的法益に対する罪としての性格を軽視するものであって賛同できない。
 その上で,原判決は「判示第1の1の所為は,1個の行為が10個の罪名(わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の包括一罪と9個の児童ポルノ公然陳列)に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条により,判示第1の2のわいせつ電磁的記録記録媒体陳列を含め,1罪として刑及び犯情の最も重い別表1番号4の画像についての児童ポルノ公然陳列の罪の刑で処断する」と科刑上一罪の処理をしているところ,これは,複数のわいせつ電磁的記録記録媒体陳列は,社会的法益に対する罪である同罪の罪質に照らし,同一の意思のもとに行われる限り包括一罪として処断され,さらに,児童ポルノであり,かつ,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列したときは,児童ポルノ公然陳列罪とわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪との観念的競合になることから,結局,原判示第1の各罪を包括一罪(刑及び犯情の最も重い別表1番号4の画像についての児童ポルノ公然陳列の罪の刑)で処断したものと考えられるのであり,そのような原判決の法令適用に誤りはない。
 ウ もっとも,そのように包括一罪とされる原判示第1のうちの同2のわいせつ電磁的記録記録媒体の公然陳列行為と,原判示第2の児童ポルノの公然陳列行為とは,同じ日の僅か4分の間に続けて行われたものであるから,これらをも包括一罪とする考えもあり得るところで,現に原審検察官の起訴はそのようなものであったが,しかし,児童ポルノ公然陳列罪の個人的法益に対する罪としての性格を重視し,あえてそのような処理をせず,原判示第1の罪と原判示第2の罪とを併合罪の関係にあるとした原判決の法令適用に誤りがあるとはいえない。
 公然陳列の罪数に関する所論も採用できない。
 論旨は理由がない。

 判例タイムズの裁判官研究会は併合罪

判例タイムズ1432号
第10 児童ポルノの公然陳列
1機会の複数
陳列の機会が複数の場合に,包括一罪とすることも考えられる64)。
しかし,前記児童ポルノの提供と同様に,日時や方法が異なる陳列は,通常,行為が別で,犯意も別と評価すべきであるほか,全く同じ被害児童の児童ポルノを陳列する訳でもなく,陳列行為ごとに当該被害児童に児童ポルノを流通に置かれて心身に悪影響を与えられた新たな法益侵害が生じていることなどから,多くの場合は数罪となり併合罪とするのが相当である。
64)包括一罪とした例に,大阪高判平成l5年9月l8日裁判所ウェブサイト掲載。複数回かは判決文上必ずしも明らかでないが一定期間に合計16画像を送信して記憶蔵置させた行為を包括一罪とした例に,名古屋地判平成18年1月l6日情報ネットワーク・ローレビュー7号43頁掲載の第1.
65)被害児童が複数かなどは不明であるが,画像データが複数の場合で単純一罪とした例に,東京地判平成l5年IO月23日裁判所ウェブサイト掲載。なお,複数の児童ポルノ画像データがサーバコンピュータ上に記憶。蔵置されていたことを利用して,識別番号(URL)をホームページ上で明らかにすることで公然陳列した場合に,単純一罪とした例に,大阪地判平成21年1月l6日公刊物未掲載(最決平成24年7月9日判タl383号l54頁の第1審)。


 昔、植村コートで「サーバーが1個の場合は1罪」だという判決をもらったことがあります。判例違反になると思います。

東京高裁h16.6.23
2 所論は,要するに,原判決は,被害児童ごとに法7条1項に違反する罪(児童ポルノ公然陳列罪)が成立し,結局これらは観念的競合の関係にあるとして,その罪数処理を行っているが,本罪については,被害児童の数にかかわらず一つの罪が成立するというのが従来の判例であるから,原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第16)。
そこで,本件に即して検討すると,法7条1項は,児童ポルノを公然と陳列することを犯罪としているから,同罪の罪数も,陳列行為の数によって決せられるものと解するのが相当である。確かに,所論もいうように,児童個人の保護を図ることも法の立法趣旨に含まれているが,そうであるからといって,本罪が,児童個人に着目し,児童ごとに限定した形で児童ポルノの公然陳列行為を規制しているものと解すべき根拠は見当たらず,被害児童の数によって,犯罪の個数が異なってくると解するのは相当でない。
そして,本件では,被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎないものと解される。したがって,この点に関する所論は正当であって,被害児童ごとに本罪が成立するとした原判決の法令解釈は誤りである。しかし,原判決は,成立した各本罪全体について,科刑上一罪の処理をした上で,全体を一罪として処断刑を算出しているから,その処断刑期の範囲は,当裁判所のそれと同一である。そうすると,この点に関する原判決の法令適用の誤りは,判決に影響を及ばすものとはいえない。
論旨は,結局理由がない。


 大阪高裁h15.9.18も包括一罪です。
 ダウンロード販売行為が販売罪とならないという高裁判例で、児童ポルノ法改正で「提供罪」を設けるきっかけになった判例です。

【文献種別】 判決/大阪高等裁判所控訴審
【裁判年月日】 平成15年 9月18日
【掲載文献】 高等裁判所刑事判例集56巻3号1頁(裁判所ウェブサイト掲載)
裁判所ウェブサイト
       主   文

原判決を破棄する。
被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
 そこで,刑事訴訟法397条1項,380条により原判決を破棄するが,原審において被告人は事実関係をすべて認めて公訴事実を争っておらず,上記のとおり当審において追加された予備的訴因は主位的訴因である当初の公訴事実と基本的事実を同じくするものであって、その事実調べも尽くされていることが明らかであるから,直ちに判決することができるものと認め,同法400条ただし書により,当審において追加された予備的訴因に従い,更に次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第2 児童ポルノ画像を不特定多数のインターネット利用者に閲覧させようと企て,神戸市i区jk番lの当時の被告人方において,被告人所有のパーソナルコンピューターを操作し,
1 同年11月20日ころ,東京都千代田区a町b丁目c番地d所在の株式会社E管理のサーバーコンピューターに対し,ホームページを開設し,児童を相手方とする性交に係る児童の姿態を露骨に撮影した9画像,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態を露骨に撮影した4画像及び衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出した児童の姿態を露骨に撮影した22画像の各画像データを送信し,同サーバーコンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた上,被告人が別に開設したホームページにアクセスした不特定多数のインターネット利用者に対し,電話回線等を使用し,上記各画像データを受信して再生閲覧することが可能な状況を設定し,同月21日ころ,上記ホームページにアクセスしてきた京都市m区n町o番地所在のBら不特定多数の者に対して,上記画像データ35画像が蔵置されたホームページのアドレス及びパスワードを教示するなどし,そのころ,Bをして,上記児童ポルノの画像を同人方に設置されたパーソナルコンピューターに受信させて再生閲覧させるなどし,
2 同月27日ころ,上記株式会社E管理のサーバーコンピューターに対し,上記ホームページとは別のホームページを開設して,上記1の画像データ35画像並びに18歳未満の児童である第1記載のAを相手方とする性交又は性交類似行為に係る同児童の姿態を露骨に撮影した13画像及び衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出した同児童の姿態を露骨に撮影した12画像の各画像データを順次送信し,同サーバーコンピューターの記憶装置であるディスクアレイ内に記憶,蔵置させた上,前同様の不特定多数のインターネット利用者に対し,前同様に再生閲覧することが可能な状況を設定し,同日ころ,前同様にアクセスしてきた名古屋市p区q町r丁目s番t号所在のC及び静岡県湖西市uv番地w所在のDら不特定多数の者に対して,上記各画像データが蔵置されたホームページのアドレスを教示するなどし,そのころ,C及びDをして,Cには上記1と同様の児童ポルノの画像(ただし,衣服の全部又は一部を着けないで性器等を露出した児童の姿態を露骨に撮影した児童ポルノについては21画像)を,Dには上記児童2名のすべての画像をそれぞれの自宅に設置されたパーソナルコンピューターに受信させて再生閲覧させるなどし,
 もって,児童ポルノを公然と陳列したものである。 
(証拠の標目)省 略
(法令の適用)
罰条
 第2の所為 包括して同法7条1項
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第2の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項

名古屋高裁平成23年8月3日
1 控訴理由④について
 論旨は,本件各画像の被写体となっている児童は3名であるから,本件は児
童ポルノ公然陳列罪3罪の併合罪とされるべきであるにもかかわらず,これら
を混然と1罪とした本件起訴状は訴因の特定を欠くものであって,この不備を
補正させることなく,また公訴を棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続に
は法令違反があり,さらに,本件を1罪とした原判決には法令適用の誤りがあ
る,というのである。
 しかしながら,本件犯行は,児童3名が1名ずつ撮影された本件各画像(4
点の画像のうち2点は同一の児童が撮影されたものと認められる。)のデータ
を,約5分間の間に,インターネットのサーバコンピュータに記憶,蔵置させ
た上,本件各画像の所在を特定する識別番号(URL)をインターネットの掲示
内に掲示して児童ポルノを公然と陳列したというものであり,本件各画像が上
掲示板内の「ロリ画」と題する同一カテゴリ内に掲示されているなど,各陳
列行為の間に密接な関係が認められることからすれば,各児童に係る児童ポル
ノ公然陳列罪の包括一罪であると解するのが相当である。
したがって,本件起訴状は訴因の特定を欠くものではないから,原審の訴訟手
続の法令違反をいう論旨は理由がない。なお,原判決は本件を単純―罪と判断
したものと解されるが,処断刑期の範囲が包括一罪と同一であるから,原判決
には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはないというべきであ
る。