児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

女性による男性に対する青少年条例違反事件

 量刑的にはちょい軽くなっています。
 青少年が主体という場合は、青少年条例違反は立たないんでしょうかね。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4005271.htm
男子中学生を自宅に招き入れ、みだらな行為をしたとして40歳の女が逮捕されました。女の自宅は、以前から近所の少年たちのたまり場になっていたということです。

 逮捕されたのは、横浜市の会社員容疑者で、14日朝、自宅で、中学3年の男子生徒にみだらな行為をした疑いが持たれています。
 警察によりますと、容疑者の自宅は数人の少年が出入りするたまり場となっていて、近所の人から相談を受けた警察が、以前、容疑者を注意していました。

神奈川県青少年保護育成条例の解説 平成25年3月
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な上記を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
[趣旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をすることを禁止したものである。また、ごれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
※罰則
第1項違反2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第53条第1項)
第2項違反1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第53条第2項第2号)
[解説]
本条は、青少年を対象としだ性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様のほか、当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
I 第1項関係
1 「みだらな性行為」の意義については、第3項で規定されている。その解釈は、象徴的には「人格的交流のない性交」を言うものであり、具体的には、次のものが例として挙げられる。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うもの
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなもの
③ 行きずりの青少年を相手方とするもの、あるいは多数人を相手方とし、又はこれらを互いに相手方とするもの等
2 「わいせつな行為」についても第3項で規定されているが、その解釈は前記①、②、③と同様な態様による性交類似行為等であり、具体的には、いわゆる素股や尺八等はもちろん、陰部を手などで触れる(又は触れさせる)行為、また、単なる性欲の目的を達するためにのみ行う接吻、乳房を撫でること等が該当する。
なお、本条は青少年に対する行為そのものを禁止する規定であり、刑法第174条に規定する公然わいせつ罪とは異なり、行為の公然性は不要である。
3本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交した場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女聞の性行為は、該当しないものである。

糞便送付による威力業務妨害事件(広島高裁R02.2.18)

裁判年月日 令和 2年 2月18日 裁判所名 広島高裁 裁判区分 判決
事件名 威力業務妨害、わいせつ文書頒布被告事件
裁判結果 棄却 文献番号 2020WLJPCA02189002
理由
第1 控訴趣意
 本件控訴の趣意は,弁護人岩西廣典作成の控訴趣意書に記載されているとおりであるから,これを引用する。
 論旨は,封筒に人糞等を入れて大使館等に送付した被告人の行為は,公館の関係職員を不快な気持ちや侮辱された気持ちにさせることはあっても,畏怖させるに足りる状態にまでは至らせてはいないのに,人糞を危険物との意を込めて「人糞ようの不審物」と証拠に基づかない認定をし,このような物が在中しているとの不安を抱かせたなどとして威力業務妨害罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があり,刑法234条の「威力を用いて」の解釈適用を誤った法令適用の誤りがあるというのである。
 そこで,記録を調査して検討する。
第2 検討
 1 原判決が認定した罪となるべき事実の要旨
 原判決が認定した本件威力業務妨害罪の要旨は,被告人が,文書(後記①ないし③は「日本人が拉致されているのに北朝鮮に援助は拒否する。韓国とは国交断絶へ。日本の金はとるな。泥棒。出て行け。韓国にはうんこをプレゼントします。」と記載したもの,後記④は「日本人拉致者を巻き込んて金正恩朝鮮労働党委員長を支援することははっきりと断ります。」と記載したもの,後記⑤は「日本人拉致者を巻き込んで文在寅韓国大統領が金正恩朝鮮労働党委員長を支援することは断じてゆるせん。韓国とは国交断絶へ。出て行け。SK Materials Japan!」と記載したもの)及びビニール袋入りの人糞を封入した封筒を,①平成31年1月20日ころ駐新潟大韓民国総領事館(原判示第1の1)及び②駐広島大韓民国総領事館(同第1の2)に,③同月22日ころ駐日本国大韓民国大使館(同第1の3)に,④同年2月17日(同第1の4)及び⑤同年3月22日に駐広島大韓民国総領事館(同第1の5)にそれぞれ宛てて投函し,いずれも到達させて(以下,被告人が文書と糞便の入った封筒を各総領事館等に郵送し,配達人を介して各総領事館等まで到達させた行為を,まとめて「本件郵送行為」といい,郵送先となった各総領事館等を「本件各公館」という。),本件各公館の関係職員らに人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせるなどし,これにより,警察への通報等の対応を余儀なくさせて,その正常な業務の遂行を困難にさせたというものである。
 2 原判決の(争点に対する判断)の項の説示の要旨
  ⑴ 本件各犯行の経緯と本件各公館の対応については,原判決が(争点に対する判断)の項の2で説示するとおりである。このうち,同2⑷の本件各公館の対応は,要するに,前記①,③では開封して内容物を確認した上で警察への通報等を行ったが,前記②,④,⑤では封筒の外観等から不審物と判断し,警察への通報等を行った後,警察官立会の下で開封して内容物を確認したというものである。
  ⑵ 原判決は,この事実関係を前提にして,被告人の本件郵送行為が「威力を用いて」に該当することについて,(争点に対する判断)の項の3⑵において,次のとおり説示している。
 「本件封筒は,宛先だけで差出人の記入がなく,その外からは内容物が分からない体裁のものであった。開封前から異臭がするものもあったが,開封して初めて人糞ようの汚物が入っていることが確認できた。人糞はそれ自体が直ちに有害なものではないとしても,一般に,他人の糞便には,汚物として嫌悪感を抱き,糞便が入った封筒が一般の郵便物として郵送されてくることなどは誰も思いもよらない異常な出来事であって,そのような汚物が入った封筒を目にしたりするだけでも不快で,予期せずに手に取ったりすれば強い嫌悪感を感じるものである。そして,そのような異常な行動に出る送り主の強い悪意を窺わせる点でも不安を高じさせる。また,公館はその外国を代表する施設であり,公館に糞便を送りつけることは,その国への侮辱を意味するから,公館の職員としては,公館の安寧や尊厳を守るためにも,このような行為の目的,政治的,組織的な背景の有無を考察し,前述したようなさらなる加害行為にエスカレートするおそれも警戒して,警察への通報や,本国の上級機関等の関係各機関への報告等を行うか否かの検討を差し迫って求められることになる。さらに,一見人糞のように見えても,人体に有害な物質が仮装されていないかどうかは,科学的な分析を経ないと確定できないから,公館の職員は,『アメリ炭疽菌事件』のように,公館を攻撃するために危険物が送られてきたのではないかとの不安や危険を感じることもあろう。このように,公館に糞便を送り付ける行為は,これを受け取った公館の職員が強い嫌悪感を抱いたり,危険物が送られてきたのではないかと不安を覚えたり,あるいは,公館の関係職員は,他の業務を差し置いても,このような不審物に対する警察や関係機関へのしかるべき対応を余儀なくされることになる。このような意味で,公館に糞便を送付した本件行為は,公館の関係職員らの自由な意思を著しく制約するに足りるものであり,威力に該当する。」
 この原判決の説示に,論理則,経験則等に照らし不合理な点はない。
  ⑶ この説示に関し補足すると,本件郵送行為は,開封後,その内容物を確認した本件各公館の関係職員に対し,著しい不快・嫌悪の情を抱かせて心理的動揺を生じさせ得るとともに,人糞を封入するという異様さと同封の文書の内容等とが相まって,氏名不詳の送り主が当該国に対する強い敵意を有する人物であり,今後公館の関係者らに対する加害行為へと行動を発展させるのではないかという不安を抱かせる性質のものであったといえる。また,その外見・臭気等から人糞である蓋然性が高いと当時考えられたとしても,病原菌等の人体に有害なものが混入している可能性も否定できず,危険物であるという不安を抱かせるものであったともいえる。被告人の行為は,客観的に見て本件各公館の関係職員に対し上記のような心理的威圧感を与えて事実上業務遂行に支障を生じさせる性質のものであり,人の自由意思を制圧するに足る作用を有するものとして「威力を用いて」に該当するというべきである。なお,本件郵送行為後,因果の流れとして開封に至る蓋然性は高いとはいえるものの,犯罪が成立するのは現実に本件各公館の関係職員が開封して内容物を確認した時点と解するのが相当である。この点について,原判決の(罪となるべき事実)では,本件各公館の関係職員に開封させたことを明示してはいないが,実体としては,前記のとおり,いずれの犯行でも,警察への通報の前後において,本件各公館の関係職員により開封されており,原判決の(罪となるべき事実)中の「到達させて」の文言には,「到達させ,公館の関係職員に開封させて」との趣旨を含むものと解するのが相当である。
 3 所論の検討
 所論は,原判決が,本件各公訴事実中の「人糞ようの汚物その他の危険物が在中している旨の不安を抱かせるなどし」との記載部分について,(罪となるべき事実)で「人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせるなどし」との表現に変えて認定したのは,(争点に対する判断)の項の3⑵の前記説示内容と合わせて見れば,「不審物」に危険物との意を込めた趣旨であると指摘した上で,実際には危険物は入っておらず,関係職員らがそのような不安を抱いていたという証拠もない(控訴趣意書によると,原審において,弁護人は,人糞以外に危険な物が入っている可能性があるという危機意識があった旨の記載部分は全て不同意としたと主張している。)から,前記認定は事実誤認であるという。
 しかし,弁護人が不同意にしたという部分を除いた関係証拠によっても,本件各公館の関係職員が不審物であるとの不安を抱いたと推認することは,論理則,経験則等に照らし不合理とはいえず,原判決に所論がいうような事実の誤認はない。本件郵送行為により到達した封筒を本件各公館の関係職員に開封させて内容物を認識させることが「威力を用いて」に該当するかどうかは,行為の態様,当時の客観的状況,妨害の対象となる業務の性質・内容等からして当該業務を妨害するに足りるような性質・程度のものであるかという観点から客観的に判断すべきものである(弁護人が控訴趣意書7頁で,威力の認定は社会通念に基づいて行うものであると主張しているのも,同趣旨と解される。)。原判決の(争点に対する判断)の項の3⑵の前記説示は,本件郵送行為の「威力を用いて」の該当性の客観的判断として経験則等に基づく評価を示したものであって,実際に本件各公館の関係職員が説示にあるような不安を抱いたことを認定した趣旨のものでないことは明らかである。
 これに対し,原判決の(罪となるべき事実)は,被告人の行為により実際に生じた前記職員の自由意思の制圧と正常な業務の遂行の阻害という具体的事実を認定することにより,本件について危険犯である威力業務妨害罪の該当性を示すとともに,その危険が現実化したことを情状事実として摘示したものと解するのが相当である。
 なお,この点に関し,所論は,原判決の(罪となるべき事実)中の「人糞ようの不審物が在中している旨の不安を抱かせ」との認定部分と,(争点に対する判断)中の「一見人糞のように見えても,人体に有害な物質が仮装されていないかどうかは,科学的な分析を経ないと確定できないから,公館の職員は『アメリ炭疽菌事件』のように公館を攻撃するために危険物が送られてきたのではないかとの不安や危険を感じることもあろう」との記載部分を対比すると,そこにいう不安の内実は別物といえるから,威力該当性の判断について,刑訴法378条4号後段の「理由にくいちがいがある」場合に当たるとも主張する。しかし,実質的に両者の「不安」の内実が異なっているとはいい難い上,(罪となるべき事実)の項における認定の意義と,(争点に対する判断)の項における「威力を用いて」該当性判断の説示の趣旨は既に指摘したとおりであって,その間に論理的な矛盾・くいちがいはないというべきであるから,この点の所論も失当である(もっとも,所論が指摘するとおり,原審で取調べた証拠に現れておらず,検察官も主張していない「アメリ炭疽菌事件」を引用して本件の危険性を論ずる原判決の説示部分は,やや適切さを欠くことは否めない。)。
 論旨は理由がない。
第3 結論
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
 令和2年2月18日
 広島高等裁判所第1部
 (裁判長裁判官 多和田隆史 裁判官 水落桃子 裁判官 廣瀬裕亮)

木村光江「強制わいせつ罪における『性的意図』」判例時報 736号18頁

 わいせつの定義は非常に流動的なんだそうで、木村説の定義はありません。

拙稿1頁って17年前の論稿
強姦罪の理解の変化--性的自由に対する罪とすることの問題性
雑誌記事 木村 光江
掲載誌 法曹時報 55(9) 2003.9 p.2343~2360

木村光江・判評 736号18頁
6 わいせつな行為の意義
(1)大法廷判決の意図
 性的意図の位置づけは、平成29年判例により、犯罪の成立要件からわいせつ行為の判断基準の一要素へと移った(ただし、なお一定の独立の主観的要件は必要であるとする見解として、成瀬幸典・法学82巻6号113頁以下。客観的事実を超えた「人をその意思に反して自己又は第三者の性的衝動・性的欲求の対象として扱う意図」を強制わいせつ罪の主観的要件として認めるべきであるとする)。問題は、現代社会においてどのような行為が「わいせつな行為」、大法廷の文言でいえば「性的な意味のある行為」に当たるかである。「わいせつ」の定義としては、わいせつ物頒布等罪175条)に関する最判昭26・5・10(刑集5巻6号1026頁)の「性欲を刺激、興奮または満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」が、強制わいせつ罪においてもそのまま用いられてきたが、大法廷はこの定義に言及していない。
 学説上も、175条の定義を強制わいせつ罪に用いることへの批判は強く、性的自由に対する侵害行為がわいせつ行為であると理解する見解が多数である(山口厚『刑法各論〔第2版〕』(有斐閣、2010年)107頁、佐久間修『刑法各論〔第2版〕』(成文堂、2012年)115頁)。しかし、大法廷は、「性的自由を侵害する行為」という定義も用いていない。現在では、性的自己決定権の侵害といった保護法益の捉え方では、重大な被害を十分に捉えることができないとして、例えば、「性的不可侵性」(山中敬一・研修817号10頁)、被害者の性的尊厳・人格権の侵害(辰井聡子『町野古稀(上)』(信山社、2014年)425頁)といった理解も有力であり、わいせつ行為の定義自体は非常に流動的な状況にある(拙稿・前掲1頁以下参照)。大法廷が敢えて定義を示さなかったのは、現時点での一義的な定義が困難だという面もあるが、強制わいせつ罪の保護法益がかつてのように「性的自由に対する罪」だけでは説明できない状況にあるからである(本件のように児童に対するわいせつ行為も、自由に対する罪というよりは児童保護の観点が重要である)。
 一般的な定義を示す代わりに、大法廷は前述の通り、「わいせつな行為」を①性的な意味が明確な行為と②それが不明確な行為に分けて論じている。ただ、規範的構成要件要素の解釈に困難が伴うことは「わいせつ性」の判断に限らない。それにもかかわらず、敢えて大法廷がこのような区別を示して説明した理由に着目すべきであろう。おそらく「性的な意図」を独立の成立要件から外すに当たり、およそ行為者の主観を考慮しないとする趣旨ではないことを強調したかったものと思われる。「わいせつ」のような規範的判断において主観的事情を考盧しないことは非現実的だからである。そこで、「性的意図をおよそ要しない行為類型(①)」を取り出して、この部分については「性的意図」を成立要件としないことを明確にし、その上で、なお行為者の主観を考慮して判断すべき「限界事例」があることも見据えていると考えられる。本判決が「性的意図を独立の成立要件としない」ことを宣言した意義は大きいが、上述5(2)で述べたように、実質的な判断基準において昭和45年判例と決定的な違いがあるわけではない
(2)わいせつな行為の判断基準
 平成29年判例によれば、「わいせつな行為」の具体的な判断は、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて」なされ、「そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」とされている。
 社会通念により判断する以上、当該被害者の個別具体的な被害感情そのものは基準となり得ず(それも判断材料の一つとはなり得ようが)、その時代の一般的な社会常識によらざるを得ない。より具体的には、当該行為の性質、被害者との関係、被害者の同意の有無、四囲の状況等(馬渡・前掲87頁)のほか、事案によっては医療上の必要性といった事情も考慮して判断されることになろう(たとえ衣服を脱がせる行為が診察上必要であっても、それを撮影することの必要性がなければわいせつ行為に当たる。広島高判平23・5・26、後掲表15参照)。
 身体的接触があれば「性的に意味のある行為」に当たることが多いであろうが、昭和45年判例で問題となった「裸にして写真を撮る行為」は、既に昭和62年の時点で(性的意図の有無にかかわらず)客観的には「わいせつな行為」に該当するとされていた。
(3)主観的事情の考慮
 では、行為者の性的意図を考慮しなければ判断し得ない場合とはどのような行為か。昭和45年以降の裁判例で、公刊物等で確認できるもののうち、行為自体のわいせつ性や性的意図が争点となった主なものについて、客観的なわいせつ性の程度と、性的意図の有無の観点から整理したのが本稿末尾の表である。
 客観的にわいせつ行為であることが明確な行為(表(ⅰ))については、昭和45年判例を除き全て有罪(●)となっているが、敢えて「性的意図は不要である」と明示したのが19、26(本件大法廷判決)である。これらを含む「I’」の分類は、被告人が性的意図以外の目的を主張した事案につき、性的意図との併存を認定したものである。
 それに対し、客観的にわいせつ行為性が認められないとされた例が(ⅲ)の6及び10であり、性的意図があることを認定しつつ強制わいせつ罪に当たらないとした。10は、嘔吐させることに性的満足を覚える者が、性的意図を持って女子高校生の口内に指を差し入れ嘔吐させる行為につき、客観的に「わいせつ行為」に当たらず暴行罪にとどまるとした。また、6は性的意図をもって女性の定期券を奪った行為について、窃取であってわいせつ行為ではないとした(東京高判昭62・7・9、豊田健・法学研究61巻2号267頁参照。不法領得の意思は認められる)。
 問題となりうるのが(ⅱ)の客観的に見てわいせつ性が必ずしも明確ではない類型であり、直接的な身体的接触がない場合や、近年は被害者自身に自画撮りさせて送信させる行為等が含まれる(非接触型のわいせつ行為につき、橋爪隆・研修860号3頁以下参照)。もっとも、成人女性・男性に対し意思に反して裸体を撮影する行為は、現在では性的意図を考慮することなく社会通念上わいせつ行為に当たるとされよう。それに対し、27判例(最決平30・9・10により維持された)は、ベビーシッターが乳幼児(男児)の陰茎を露出させて撮影した等の行為について、「日常でも目にするような全裸又は半裸の乳幼児の姿態を写真撮影するという態様」の行為のわいせつ性判断に当たり、被告人の性的意図の有無を考慮することは妥当であるとしている。
 さらに、最高裁が考慮すべきとする「行為者の主観的事情」は、「行為者自身の性欲を満たす性的意図に限られない」と指摘されている。性的屈辱感を感じさせる復讐目的や、第三者らの性欲を満たすための性産業に提供する目的も含むと考えられるからである(馬渡・前掲88頁)。ただ、このような目的は「一般人からみて性的意図があると考えられる事情」とほぼ同義であり、そのような意味での主観的事情であれば、わいせつ性の認識(故意)とほぼ重なることになろう。実質的にみれば、29年判例のいう「主観的事情」は「故意」とほぼ同義といえるのである。したがって、故意以外に主観的事情を考慮する必要がある事例は限定的となろう。
 7 まとめにかえて
 29年大法廷判決以降、強制わいせつ罪の議論の中心は、「性的意図の要否」から「わいせつ行為とは何か」に移った。わいせつ行為を、「性的性質を有する一定の重大な侵襲」とし、より具体的に検討する試みもなされている(佐藤・前掲法時60頁以下)。
 ただ、翻ってみると、昭和45年判例と平成29年大法廷判例との実質的な相違は、「性的意図の要否」の問題ではなかったように思われる。昭和40年刊行の注釈刑法では、単なる抱擁や、男が女の上に馬乗りになる行為、着衣の上から臀部を撫でる行為等はわいせつ行為ではないといった記述が見られる(同(4)293-294頁(所一彦執筆分))。もちろん状況にもよるが、現在ではこれらの行為については、わいせつ行為に当たるとされる場合も多いといえよう(なお、迷惑防止条例との関係については、嘉門優・季刊刑事弁護93号147頁以下参照)。昭和45年、平成29年の両判例の相違は、処罰範囲の違いであると考えるべきである。
 その処罰範囲の違いは、大法廷のいうように「社会の一般的な受け止め方」の変化によるものに他ならない。さらに、昭和45年判例が「通説にしたがって」性的意図を必要であるとしたのに対し、平成29年大法廷判例は「社会の一般的な受け止め方」にしたがって性的意図を成立要件とすることを否定した。両判例の違いには、学説と判例の関係の変化も現れているのである。

ダークウエブの単純所持容疑で書類送検の報道

 タナー法の児童性立証を争うしか無いなあ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/959085981f5bb702daf2acf81923d434c9391768
ネットからダウンロードし「保存」…児童ポルノを所持した疑いで男4人を書類送検
6/8(月) 19:24配信
警察の調べに4人は容疑を認めている「違法だと知りながら捨てることが出来なかった」
インターネット上で幼い少女の裸の動画などをダウンロードし、所持した疑いで、京都や三重に住む男4人が書類送検されました。
児童ポルノ禁止法違反の疑いで書類送検された京都府三重県に住む男4人は、去年、ネット上で4歳から13歳の少女が裸でダンスを踊る動画などをダウンロードし、パソコンなどに保存した疑いが持たれています。
警察の調べに対し、4人は容疑を認めていて「違法だと知りながら捨てることが出来なかった」などと話しているということです。
全国33都道府県の警察の合同捜査で、同じサイトから少女の裸の動画や写真などが約4400回ダウンロードされたことがわかっていて、これまでに4人を含む合わせて60人が書類送検されています。
警察は、違法に18歳未満の少女の裸の動画や写真などを投稿していた人物の特定を急いでいます。

強制わいせつ罪と姿態をとらせて製造罪を観念的競合とした判例・裁判例 最新版

 脱がして、撮影するだけのは観念的競合になってます。
 触ったり、ダビングしたりすると、併合罪


名古屋地裁一宮H17.10.13
東京 地裁H18.3.24
東京 地裁H19.2.1
東京 地裁H19.6.21
横浜 地裁H19.8.3
長野 地裁H19.10.30
札幌 地裁H19.11.7
東京 地裁H19.12.3
高松 地裁H19.12.10
山口 地裁H20.1.22
福島 地裁白河H20.10.15
那覇 地裁H20.10.27
金沢 地裁H20.12.12
金沢 地裁H21.1.20
那覇 地裁H21.1.28
山口 地裁H21.2.4
佐賀 地裁唐津H21.2.12
仙台高裁H21.3.3
那覇 地裁沖縄H21.5.20
千葉 地裁H21.9.9
札幌 地裁H21.9.18
名古屋高裁H22.3.4
松山 地裁H22.3.30
那覇 地裁沖縄H22.5.13
さいたま地裁川越H22.5.31
横浜 地裁H22.7.30
福岡 地裁飯塚H22.8.5
高松 高裁H22.9.7
高知 地裁H22.9.14
水戸 地裁H22.10.6
さいたま地裁越谷H22.11.24
松山 地裁大洲H22.11.26
名古屋地裁H23.1.7
広島 地裁H23.1.19
広島 高裁H23.5.26
高松 地裁H23.7.11
広島 高裁H23.12.21
秋田 地裁H23.12.26
横浜 地裁川崎H24.1.19
福岡 地裁H24.3.2
横浜 地裁H24.7.23
福岡 地裁H24.11.9
松山 地裁H25.3.6
横浜 地裁H25.4.30
阪高裁H25.6.21
横浜 地裁H25.6.27
福島 地裁いわきH26.1.15
松山 地裁H26.1.22
福岡 地裁H26.5.12
神戸 地裁尼崎H26.7.29
神戸 地裁尼崎H26.7.30
横浜 地裁H26.9.1
津地裁H26.10.14
名古屋地裁H27.2.3
岡山 地裁H27.2.16
長野 地裁飯田H27.6.19
横浜 地裁H27.7.15
広島 地裁福山H27.10.14
千葉 地裁松戸H28.1.13
高松 地裁H28.6.2
横浜 地裁H28.7.20
名古屋地裁岡崎H28.12.20
東京 地裁H29.7.14
名古屋地裁一宮H29.12.5
東京 高裁H30.1.30
高松高裁H30.6.7
広島 地裁H30.7.19
広島 地裁H30.8.10

「A(当時15歳)が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため、同人と性交し、もって、青少年に対しみだらな性行為をした」という青少年健全育成条例違反罪の罪となるべき事実(仙台地裁R01.12.19)

青少年= 六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)という条例の定義なわけだから、「六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)であることを知りながら」を認定しないと、理由不備になるんじゃないかなあ。。


https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/729011.pdf
(定義)
第十四条 この章から第六章までにおいて、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 青少年 六歳以上十八歳未満の者(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。)をいう。

仙台地方裁判所
令和01年12月19日
主文
被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 インターネットのアプリを通じて知り合ったA(当時15歳)が未成年であることを知りながら、同人に家出願望があることを利用して同人を誘拐しようと考え、令和元年8月23日頃、C市(以下略)の当時の被告人方において、宮城県内で両親と居住していた前記Aに対し、携帯電話機を利用して、自己の車に寝泊まりすることを了承する旨のメッセージを送信し、家出をして自己の下に来るように誘惑し、前記Aにその旨決意させ、同月24日午後1時30分頃、同市(以下略)付近路上において、同人と合流し、同人を同所付近に駐車中の自動車に乗車させて同車を発進させ、親権者に無断で前記Aを連れ去り、以後、同年9月3日午後9時50分頃までの間、同人を同車内で寝泊まりさせるなどして自己の支配下に置き、もって、未成年者を誘拐し、
第2 同年8月26日午前8時過ぎ頃、当時の前記被告人方において、前記A(当時15歳)が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため、同人と性交し、もって、青少年に対しみだらな性行為をした。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
  判示第1の行為 刑法224条
  判示第2の行為 青少年健全育成条例(昭和35年宮城県条例第13号)41条1項、31条1項
刑種の選択 判示第2の罪につき懲役刑を選択
併合罪の加重 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重)
刑の全部執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件において、被告人は、被害者が中学生であることを知りながら、その家出願望を利用して家出するようにそそのかすなどして被害者を誘拐し、さらに、被害者をその性的欲望を満足させる対象としており、被害者の年齢を考慮すると、被告人の行為が今後被害者の健全な育成に悪影響を与える可能性も否定できず、その態様は巧妙かつ悪質で、その結果も軽視できない。
 また、突如、中学生の娘を誘拐された被害者の両親らの動揺や不安は察するに余りあり、被害者の母親が被告人の厳重な処罰を望むのも当然である。
 以上によれば、被告人の刑責は重大である。
 しかしながら、被告人は、本件各犯行時21歳であり、これまで前科、前歴がなく、また、本件各犯行を認め、今後犯罪行為は一切しない旨誓約し、捜査や裁判の手続を経て、現段階においては、内省が深まりつつあることに加え、被告人の母親が今後同居しながら、父親とともに、被告人を指導監督する旨誓約していることなどを考慮し、被告人に対しては、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(検察官上田勇樹、弁護人伊藤佑紀各出席)
(求刑 懲役2年)
第2刑事部
 (裁判官 江口和伸)

「わいせつな行為」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」~司法研修所検察教官室著「捜査実例中心刑法各論解説」

 この定義には「性欲興奮」が入ってるので、使わないですよ。
 女児については、検察教官室は性的羞恥心説でしょうかね。0歳児は羞恥心害されないから無罪でいいですね。

強制わいせつ罪(刑法176条)の「わいせつな行為」
1 「わいせつな行為」について
「わいせつな行為」とは、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的蓋恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」と解されている。
具体的には、陰部や乳房、臂部への接触行為など身体的接触行為のほか、裸にして写真を撮影する行為など直接体に触れなくてもわいせつ行為に当たり得る。
2わいせつな行為に当たるか否かの判断について
最大判平29.11.29 (刑集71-9-467)は、「刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味合いがあるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。
したがって、そのような個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。
しかし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当ではない。」旨判示した。
この事案は、被告人が、当時7歳の女児に対し、自己の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、同児の陰部を触るなどした事案である。
裁判所は、「知人から金を借りる際、金を貸す条件として被害児童とわいせつな行為をしてこれを撮影し、その画像データを送信するよう要求されたため行ったものであり、性的意図はなかった。」旨の被告人の主張は排斥できないとしつつ、上記行為について、「当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから、その他の事情を考慮するまでもなく、性的な意味合いの強い行為として、客観的にわいせつな行為であることは明らかである。」旨判示した。
上記判例は、わいせつ性の判断において一律に性的意図は不要としたものではなく、「個別具体的な事情の一つとして行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。」としつつ、行為者の主観を考盧するまでもなく客観的行為のわいせつ性が明白な場合には、行為者の性的意図が欠けていても強制わいせつ罪は成立し得るとしたものであることに留意する必要がある。
なお、上記判例について、前田雅英「最新刑事判例研究(第45回)」(捜査研究66-12-2)を参照されたい。
3年少者に対するわいせつ行為について
乳房への接触行為について、乳房が発達していない年少者であっても、性的意識が全く発達していないとはいえず、社会通念上も性的感情の侵害があると見られることから、乳房が未発達というだけではわいせつ行為にならないとはいえないと解されている。
4参考裁判例(新潟地判昭63.8.26判時1299-152)
被告人が、小学校のグラウンドで遊んでいた女児(当時7歳) を認め、同児に甘言を用いて誘い出し、同児を籾殻袋の上に座らせ、ポロシャツの前ボタンを外した上、そこから手を差し入れてその右乳部を多数回撫で回し、さらに、スカート内に手を差し入れてパンツの上からその臂部を撫でた事案。
なお、被告人には、5歳から9歳の女児の陰部を手指で弄ぶなどした強制わいせつ罪等の複数の前科があった。
公判で、弁護人は、「乳部も臂部も未だ何ら男児と異なるところはなく、その身体的発達段階と社会一般の通念からして、本件行為はわいせつ行為ということはできない。」旨主張した。
しかし、裁判所は、「被害児童は、性的に未熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臂部を触られて蓋恥心と嫌悪感を抱き、被告人から逃げ出したかったが、同人を恐れてこれができずにいたものであり、……一方、被告人は、同児の乳部や臂部を触ることにより性的に興奮をしており、そもそも被告人は当初からその目的で本件行為に出たものであって、この種犯行を繰り返す傾向も顕著であり、そうすると、被告人の行為は、強制わいせつ罪のわいせつ行為に当たるといえる。」旨判示した。
捜査のポイント
年少者に対するわいせつ行為について、
前記参考裁判例では、7歳の女児の乳部を撫で回すなどの行為がわいせつ行為と認定されたが、これは、被告人の性的傾向や、本件犯行時に陰茎が勃起するなど性的興奮状態にあったことのほか、被害児童は、「乳部を触られた際、気持ちが悪く、恐ろしくて泣き出したくなった。」旨供述し、被害後、祖母に「あのおじさん、エッチなおじさんなんよ・」などと言った言動なども考慮して判断したものと思われる。
このように、特に年少者に対する行為がわいせつ行為に当たるかどうかは判断が困難な場合もあることから、形式的に判断することなく、被疑者の性的傾向、当該行為に至る経緯、当該行為の態様、被疑者の性的興奮の程度、犯行後の被疑者の言動、被害児童の被害時の心情や、被害後の周囲への言動なども十分捜査をし、適切に判断する必要がある。
また、性的意図の有無について、前述のとおり、判例は、強制わいせつ罪において一律に性的意図を不要としたものではなく、客観的に見てわいせつな行為であることが明らかとまでは言い難い行為(例えば、単に接吻する行為や、裸体を写真撮影するにとどまる行為など)の場合には、被疑者の性的意図の有無が問題となるものと考えられることから、従前のとおり、被疑者の性的意図の立証も意識した捜査を行う必要があると思われる。

12歳との児童買春罪・強制性交の猶予判決(名古屋地裁R011205)

 755万円で示談して酌量減軽
 援助交際型というのは強制性交罪の科刑状況としては一番軽い部類になります。
 対償供与約束が児童買春罪の実行行為とすると、部分的にしか重なり合って居ませんが、観念的競合とされます

名古屋地裁令和元年12月 5日
事件名 強制性交等、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
主文
 被告人を懲役3年に処する。
 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,A(別紙記載。当時12歳)が13歳に満たない児童であることを知りながら,平成31年3月9日午前2時15分頃から同日午前3時13分頃までの間に,愛知県大府市〈以下省略〉aホテル217号室において,Aに対し,約1万3000円相当のチケット代金等の支払を対償として供与する約束をして,Aと性交及び口腔性交をし,もって児童買春をするとともに,13歳未満の者に対し,性交等をしたものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 児童買春の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
 強制性交等の点 刑法177条後段
 科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるので,1罪として重い強制性交等罪の刑で処断)
 酌量減軽 刑法66条,71条,68条3号
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 本件は,LINEを通じて知り合った被害者に対する犯行であるところ,被害者が小学6年生であることを確定的に認識した上で敢行している点,性交と口腔性交に及んでいる点で,悪質である。被害者は,本件後,通学に支障を生じるなど,本件により心身に悪影響を受けている。被害者の母親が,被告人との示談成立後も,心情の意見陳述として,本件が忘れたくても忘れられない出来事であって,被告人に対し,裁判が終わった後も,本件犯行を一生かけて償ってほしいなどと述べるのは当然である。
 以上の事情によれば,被告人の刑事責任は軽いものではない。
 しかしながら,被告人が被害者に対して暴行や脅迫を加えていないこと,被告人が示談金として755万円の支払義務を認めるといった内容で,被害者らとの間で示談が成立し,約束どおり500万円を支払済みであること,示談書において,被害者とその母親が被告人に対する実刑判決を望まない旨を表明していることが認められ,これらの事情は量刑上相応に考慮する必要がある。その他,被告人に前科がないこと,被告人が本件犯行を認めて反省の態度を示していること,被告人の母親が出廷して被告人の監督を誓約していること等を考慮し,刑法改正後の同種事犯の量刑傾向を踏まえると,本件については,酌量減軽の上で刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
 (検察官吉川剛史,同庭野永基,私選弁護人春田藤麿各出席)
 (求刑 懲役5年)
 令和元年12月6日
 名古屋地方裁判所刑事第5部
 (裁判長裁判官 板津正道 裁判官 西脇真由子 裁判官 新田浩志)

不特定又は多数の者に提供する目的製造行為(7条7項)を姿態をとらせて製造罪(4項)で起訴したら不成立無罪になるよ

児童ポルノ画像を送らせて売ってる人について

公訴事実
被告人はA(15歳)が18歳未満であることを知りながら,令和2年6月1日,大阪府内のA方において,被告人が,Aに乳房,陰部等を露出した姿態等をとらせ,これを同人の携帯電話機で動画撮影させた上,それらの動画データ11点を同携帯電話機から前記「」を使用して被告人の携帯電話機に送信させ,その頃,兵庫県内又はその周辺において,同動画データ11点を同携帯電話機で受信して同機に記録させて保存し,もって,衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

という起訴状がある。

 4項製造罪は「4前項に規定するもののほか」とされていて、提供目的がある場合には成立しないから、この訴因では不成立無罪になる。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 こういうと、不特定又は多数の者に提供する目的製造は7項だから、「4前項に規定するもののほか」に含まれないという反論が予想される。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
 しかし「提供目的」には、不特定又は多数の者に提供する目的も含む。不特定又は多数の者に提供する目的であっても、「提供する目的」であるからである。
 島戸判事もそういう。
 h26改正で項がずれたので島戸論文の「第3項」が姿態をとらせて製造罪(4項)となっている。島戸判事のいう、「第2項」が提供目的製造罪(現行法の3項製造罪)、「第5項」が不特定又は多数の者に提供する目的製造罪(現行法の7項製造罪)である。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである

 改正経緯からみても、制定時点では販売目的製造罪だけだったものが、H16で、提供目的製造罪と、不特定又は多数の者に提供する目的製造罪が新設され、さらに、目的が無い場合にも広げて姿態をとらせて製造罪も置いた経緯からは、目的製造罪が優先的に成立する趣旨が読み取れる。

 ということで、不特定又は多数の者に提供する目的製造罪(7項)が成立するときは、姿態をとらせて製造罪は不成立だ。



 なお公然陳列目的製造行為(7項)については、提供目的ではないので、姿態をとらせて製造罪で起訴してもいいみたいだ。なんかお粗末な立法だ。

■■■■■■■■■■についての立証責任は検察官にあること


 青少年条例の「婚姻していない18歳未満の者」とか、4項製造罪の「前項に規定するもののほか」とか、5項製造罪の「前二項に規定するもののほか」について、立証責任は検察官にあるよねと、か、罪となるべき事実に記載しないと理由不備じゃないかとか主張してみるために、文献をまとめてみた。





3 立証責任は検察官にあること 10
①条解刑事訴訟法 11
②新・判例コンメンタール刑事訴訟法4:第一審〔2〕317条~350条 11
③大コンメンタール刑事訴訟法第2版第07巻 11
④逐条実務刑事訴訟法 13
⑤石井一正 刑事実務証拠法第5版 13
⑥田宮裕「刑事訴訟法[新版]」 14
松尾浩也刑事訴訟法 新版補正第2版 下」1999 15
⑧三井誠「挙証責任と推定(3)」法学教室 第218号 18
⑨田宮裕「挙証責任・推定」季刊現代警察22(1)(71) 19
⑩安富潔「挙証責任と推定」月刊アーティクル191号 20
平野龍一 法律学全集 43 刑事訴訟法 21

刑集73巻5号登載予定 ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否 判例タイムズ1471号p18

姿態をとらせて製造罪の場合は、複製時点で姿態とらせてないという問題でしたが、ひそかに製造罪の場合は、複製時点でも被害児童からみて「ひそかに」であることは間違いないわけで、構成要件に欠けるという問題はないのですが、複製をひそかに製造罪だとすると、不可罰とされていたはずの単純複製行為が全部ひそかに製造罪になってしまい、処罰範囲が広すぎるという問題が出てきて、最高裁が「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が, 当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は, 同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」という判示をして穴をふさいだ感じです。立法ミスじゃないかなあ。

ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を
別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否 判例タイムズ1471号p18
対象事件|
令和元年11月12日決定
最高裁判所第一小法廷
平成31年(あ)第506号
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件
裁判結果|
上告棄却
原審|
名古屋高等裁判所平成30年(う)第383号
平成31年3月4日判決
第1審|
名古屋地方裁判所平成30年(わ)第579号,
平成30年(わ)第888号
平成30年11月5日判決
公刊物|
刑集73巻5号登載予定
参照条文|
児童買春児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項, 7条2項, 5項





3  5項製造罪と同じように製造手段が限定されている児童ポルノ法7条4項の製造罪(児童に全裸姿態等をとらせ, これを記録媒体等に描写することにより児童ポルノを製造する罪。以下「4項製造罪」という。)においても,本件と同様二次的製造行為について同罪が成立するか否かという問題があり, 4項製造罪に関する立法関与者の解説では,複製は除外されるとの見解が示されていた(森山眞弓ほか編著「よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法』100頁, 島戸純「「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律』について」譽察学論集57巻8号96頁)が,最高裁第三小法廷平成18年2月20日決定・刑集60巻2号216頁,判タ1206号93頁は, 「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ, これを電磁的記録にかかる記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たる」として, 3項(現4項)製造罪の成立を認める判断を示した。
5項製造罪においても, 4項製造罪と同様,複製の問題が生ずることが予想されたところ,立法関与者の解説を見ると, 5項製造罪は,手段の限定がされているため,盗撮により製造された児童ポルノを後に複製する行為は,基本的に本条項の処罰対象ではないと考えられるが,少なくとも,撮影者本人による「製造」として予定される一連の行為までもが5項製造罪の対象から除外されるものではないと考えられるとの見解が示され,平成18年判例が紹介されている(坪井麻友美「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」法曹時報66巻11号57頁)。
4本決定は, 「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は,同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」と判示し,原判決の判断を是認しているが,平成18年判例と同じような表現を用いていることから,同判例と|司様,盗撮をして製造を行った者が, その電磁的記録を別の記録媒体に複写するなどして二次的製造行為に及んだ場合には,「ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造した」と法的に評価できるとして,5項製造罪の成立を認めたものと思われる。
5 5項製造罪は,平成18年判例後の法改正で新設されたものであるが, 4項製造罪と同様の論点が残る形で立法がなされていることからすると, 5項製造罪に関する法令解釈を示した本決定は,実務上重要なものと考えられる。

「児童ポルノ豪州に大量持ち込み 実刑判決」という報道

 1000本といっても、きょうび映画フィルムではないので、スマホかHDDに納まるので、ビックリするほどではありません。
 日本法でも外国への輸出が児童ポルノ法(5年)、関税法(10年)で禁止されていますが、ネットで国境を越えるデータには適用されないので、出番がありません。
 そんな話を外郵の税関の人に聞いたことがあります。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
。。。
関税法
(輸出してはならない貨物)
第六十九条の二
1 次に掲げる貨物は、輸出してはならない。
るところにより輸出するものを除く。
二 児童ポルノ児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第二条第三項(定義)に規定する児童ポルノをいう。)

第百八条の四
2 第六十九条の二第一項第二号から第四号までに掲げる貨物を輸出した者(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻し(同項第三号及び第四号に掲げる物品であつて他の法令の規定により当該物品を積み戻すことができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより行うもの及び第六十九条の十一第二項の規定により命じられて行うものを除く。)をした者を含む。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する

https://au.news.yahoo.com/tourist-jailed-australia-1000-child-porn-videos-042441422.html
Tourist jailed after arriving in Australia with 1000 child abuse videos
Yahoo News Australia Australian Associated PressYahoo News Australia27 May 2020
A Japanese tourist has been jailed for 16 months in a Western Australian prison for possessing more than 1000 child exploitation videos on his phone.

, , pleaded guilty to attempting to import child abuse material and was sentenced in the WA District Court on Tuesday.

Judge Fiona Vernon heard he had 1091 videos in his possession.

Japanese tourist Masahiro has his phone viewed by Australian Border Force at Perth airport.


He was sentenced to 16 months' jail with a $5000 good behaviour bond for a further eight months following his release.

His tourist visa was cancelled the day of his arrest and he will be deported when released from prison.

After arriving from Tokyo, the Japanese national was arrested at Perth International Airport in November after Australian Border Force officers initially found about 200 videos and pictures depicting child abuse.

Further examinations found hundreds more videos were saved in an app on his mobile.

The maximum penalty for importing or exporting child abuse material is 10 years’ imprisonment and/or a fine of up to $525,000.

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200527/k10012447681000.html
児童ポルノ豪州に大量持ち込み 東京電力子会社社員に実刑判決
2020年5月27日 21時19分

大量の児童ポルノの動画などをオーストラリア国内に持ち込もうとしたとして、関税法違反の罪に問われている日本人の男に対し、現地の裁判所は、禁錮1年4か月の実刑判決を言い渡しました。

裁判記録などによりますと、東京電力ホールディングスの子会社、東京電力パワーグリッドの社員、被告(31)は、去年11月、オーストラリア西部のパース国際空港に到着した際、荷物検査で、所持していたスマートフォンから児童ポルノの動画などが見つかり逮捕され、その後わかったものを含めて、児童ポルノの動画や画像1000本余りを持ち込もうとしたとして、関税法違反の罪に問われています。

これまでの裁判で、被告は罪を認めていて、26日開かれた裁判で、パースの地方裁判所は、禁錮1年4か月の実刑判決を言い渡しました。

オーストラリアでは、国境警備隊児童ポルノなど子どもを搾取の対象とする犯罪の取締りを強化しています。

一方、東京電力ホールディングスは、NHKの取材に対し、「当社社員が有罪判決を受けたことは誠に遺憾であり、大変申し訳ない。今後、事実関係を調査の上、厳正に対処する」とコメントしています。

国民生活安定緊急措置法施行令2条の「購入価格を超える価格」とは?

 結果的に3510円で仕入れて、3500円で売ったことになるが、譲渡時=仕入れ額が確定してない時点では「衛生マスクの譲渡(・・・当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)」とはならないので、譲渡はあるけど譲渡罪は成立してないということですよね。刑法的にはどう説明しますかね?
 
 犯罪収益仮装罪で問題になったことがあって、事前収賄罪では法的位置付けについては,構成要件には属さない「客観的処罰条件」とする見解と,構成要件要素であるとする見解が対立している。という解説があるようです。
 譲渡の時点で備わってることが予定されているので構成要件ですよね。

判例番号】 L06310091
       児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷決定/平成20年(あ)第865号
【判決日付】 平成20年11月4日
【出  典】 判例タイムズ1285号80頁
 (1) 判示事項1の点に関する前記①の主張は,一見もっともらしいが(秋山実「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項の犯罪収益等隠匿罪を積極的に適用した一事例」研修662号123頁にも同旨の問題提起がある。),犯罪行為の対価として前払いで得た財産が「犯罪行為により得た財産」に含まれることは,実務上も学説上も当然のこととされてきたのであるし,実質論からしても,前払い代金が「犯罪収益」となり得ないなどという解釈は明らかに不合理である。そして,法文の「犯罪行為により得た」というのは「犯罪行為を原因として」と解することができるから,文理上も特段支障はないと解される。なお,本件では,前提犯罪である児童ポルノ提供罪は,犯罪収益取得事実仮装罪の実行行為の終了後に行われており,同罪は前提犯罪の成立を待って完成すると考えられるが,このように後の事情により犯罪が完成するという事象は,「公務員になろうとする者が,その担当すべき職務に関し,請託を受けて,賄賂を収受し,又はその要求若しくは約束をしたときは,公務員となった場合において,5年以下の懲役に処する。」とする刑法197条2項の事前収賄罪でも発生する。すなわち,同罪に係る収賄行為は当該賄賂を収受した時点で終了しており,その後,その者が公務員になることにより犯罪が完成するのであるが,本件の犯罪収益取得事実仮装罪についても,これと同じように考えることができるのであれば,不合理とはいえないと思われる(このほか,破産手続開始前に債権者詐害行為をした後,破産手続開始決定が確定したときに同行為を処罰する破産法265条1項の詐欺破産罪等も同様である。ただし,事前収賄罪の「公務員になったこと」等の法的位置付けについては,構成要件には属さない「客観的処罰条件」とする見解と,構成要件要素であるとする見解が対立している。)。

 

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200523-OYT1T50226/
 中国のネット通販サイトで購入したマスクを転売したとして、大阪府警淀川署が、30歳代の夫婦を国民生活安定緊急措置法違反容疑で書類送検していたことがわかった。書類送検は20日付。新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄になったことを受け、同法では、小売業者から仕入れたマスクを高値で転売することを禁止している。
 捜査関係者によると、夫婦は3月16日、大阪市淀川区のJR塚本駅のロータリーで、通行人に対し、50枚入りの使い捨てマスク1箱を3500円で販売した疑い。止めた車にマスクの箱を積んで購入を呼びかけており、他にも数人に売ったという。

 夫婦は3月初旬、クレジットカードを使い、中国の通販サイトでマスク数十箱を米ドルで購入。その日の為替レートで利益が出るように転売額を設定したが、カード決済は後日だったため、レートの変動で転売額の方が1箱数十円安くなった。夫婦は転売後、損失が出ていたことに気付いたという。

 夫婦は任意の調べに対し、「転売は違法だと認識していた」と供述したが、同法は高値での転売を規制しており、同署は起訴を求めない「しかるべき処分」の意見を付けた。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=349CO0000000004
国民生活安定緊急措置法施行令
施行日: 令和二年三月十五日
最終更新: 令和二年三月十一日公布(令和二年政令第四十二号)改正
(法第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等)
第一条 国民生活安定緊急措置法(以下「法」という。)第二十六条第一項の政令で指定する生活関連物資等は、衛生マスクとする。
(衛生マスクの転売の禁止)
第二条 衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。

附 則 (令和二年三月一一日政令第四二号) 抄
(施行期日)
1 この政令は、公布の日から起算して四日を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 改正後の第二条の規定は、同条に規定する譲渡のうちこの政令の施行の日前に締結された売買契約によるものについては、適用しない。

姿態をとらせて製造罪をひそかに製造罪として有罪にしている可能性がある事件~障害者施設通う女子高生 シャワーシーン盗撮し胸触る…「ネズミ確認のため」と一部争う"元代表"有罪判決(札幌地裁R02.5.22)

 弁護人・被告人から連絡が欲しいところですが、「女子高校生にシャワーを浴びるように指示。女子高校生は、被告が事前にカメラを設置した仮設シャワー室で裸になりシャワーを浴びました。」という場合は、姿態をとらせて製造罪であって、ひそかに製造罪は成立しません。判例を提供しますので、確認してください。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ac48d6163a6102cb98c3581fb6179c9bfbad00ec
障害者施設通う女子高生 シャワーシーン盗撮し胸触る…「ネズミ確認のため」と一部争う"元代表"有罪判決
5/22(金) 22:15配信

北海道ニュースUHB
男に有罪判決を言い渡した札幌地方裁判所
 女子高校生(当時16)の身体を撮影したうえで、いかがわしい行為をしたとして、児童買春や強制わいせつなどの罪に問われている男の判決公判で、札幌地裁は5月22日、男に懲役2年執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。
 判決によりますと、被告は2019年6月、自身が代表を務めていた障害自立支援施設で、デイサービスに通う女子高校生にシャワーを浴びるように指示。女子高校生は、被告が事前にカメラを設置した仮設シャワー室で裸になりシャワーを浴びました。
 カメラには女子高校生の胸や下半身がうつっていて、その後動画を保存しました。

撮影型強制わいせつ罪と姿態をとらせて製造罪が併合罪となっている事例(富山地裁R011203)

 「同児童(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,手でその下衣及び下着を脱がせた上,両足を大きく広げさせて陰部を露出する姿態をとらせ,同陰部付近を自己の携帯電話機付属のカメラで接写し」と「前記第2のとおり同児童に性器等を露出させる姿態をとらせ,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影して,同携帯電話機に内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,」とが、社会的見解上2個の行為だというのですよ。
 判例は「撮影」と「保存」とが違うとかいいますけど、デジカメで保存できてなかったら「撮影失敗」「撮影できてない」っていいますよね


強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,暴行被告事件
富山地方裁判所判決令和元年12月3日
(罪となるべき事実)
 被告人は
第2 平成29年1月9日午後2時21分頃から同日午後2時22分頃までの間,前記場所において,同児童(当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,手でその下衣及び下着を脱がせた上,両足を大きく広げさせて陰部を露出する姿態をとらせ,同陰部付近を自己の携帯電話機付属のカメラで接写し,もって13歳未満の児童に対してわいせつな行為をした。
第3 同児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第2の日時頃,前記第2の場所において,前記第2のとおり同児童に性器等を露出させる姿態をとらせ,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影して,同携帯電話機に内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,もって衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第4 平成30年3月14日午後9時3分頃から同日午後9時4分頃までの間,前記当時の被告人方において,前記児童(当時12歳)が13歳未満であることを知りながら,同児童にその胸部及び性器等を露出させる姿態をとらせ,その陰部を指で広げるなどした上,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影し,もって13歳未満の児童に対してわいせつな行為をした。
第5 同児童が18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第4の日時頃,前記第4の場所において,前記第4のとおり同児童にその胸部及び性器等を露出させる姿態をとらせ,これを自己の携帯電話機付属のカメラで撮影して,同携帯電話機に内蔵の電磁的記録媒体に記録させて保存し,もって衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
 罰条
  判示第1,第2の各所為
   各平成29年法律72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
  判示第3,第5の各所為
   各児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
  判示第4の所為
   刑法176条後段
  判示第6の所為
   刑法208条
 刑種の選択     判示第3,第5,第6につきいずれも懲役刑
 併合罪の処理    刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 訴訟費用の不負担  刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
(出席した検察官 武藤絢子)
(出頭した国選弁護人 脇徹)
(求刑 懲役7年)
  令和元年12月6日
    富山地方裁判所刑事部
           裁判官  小林礼子