児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事記録の目的外使用~辻裕教「刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)について1」法曹時報第57巻7号

 こういうときは辻論文。
複製等=複製その他証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面
ということなので、要約すればいいかな。

刑事訴訟法
第二八一条の三[開示証拠の適正管理等]
 弁護人は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等(複製その他証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。以下同じ。)を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない。
〔平一六法六二本条追加〕

第二八一条の四[開示証拠の目的外使用禁止等]
 被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一 当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理
二 当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続
ロ 第三百四十九条第一項の請求があつた場合の手続
ハ 第三百五十条の請求があつた場合の手続
ニ 上訴権回復の請求の手続
ホ 再審の請求の手続
ヘ 非常上告の手続
ト 第五百条第一項の申立ての手続
チ 第五百二条の申立ての手続
リ 刑事補償法の規定による補償の請求の手続
②前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。
〔平一六法六二本条追加〕
第二八一条の五[開示証拠目的外使用の罰則]
 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第一項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
②弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。以下この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。
〔平一六法六二本条追加〕

辻裕教「刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)について1」法曹時報 第57巻7号目的外使用
民事訴訟における利用
開示証拠の復製等を民事訴訟において使用することは,本項の目的外使用に当たり,許されない。
刑事事件の証拠の複製等を民事訴訟で使用するためには,民事訴訟における文書送付嘱託,刑事確定訴訟記録法による閲覧など、法律上別途,その使用を可能とする制度が設けられている。そして,それぞれの制度において,例えば,送付の必要性及び相当性が判断されるなど,所定の要件及び手続に従って,送付ないし関覧等の可否が決せられるものとされている。(注9)
そのような制度によらずに,開示証拠を目的外使用することは. 法がそれらの制度を設けた趣旨に反するものであり,相当ではないと考えられたことによる。民事訴訟での利用が許されるものとすると,開示の必要性と弊害とを比較衡量して証拠開示の要否が決されるに当たり,そのような民事訴訟での利用の可能性をも考慮して(特に,民事訴訟手続においては,民事訴訟法第91条により,原則として,何人も,訴訟記録の閲覧を請求することができるものとされている。).判断されることになり,かえって,証拠開示の範囲が狭くなると考えられ,相当ではない。(注10)
(注9)
確定前の刑事事件の証拠を民事訴訟で利用する方策は,以下のとおりである。
① 当該証拠が公判廷で取り調べられていない場合(不提出記録,不起訴記録)には,民事訴訟を審理する裁判所(民事裁判所)の文書送付属託(民事訴訟法第226条)を受け,当該証拠の原本を保管する検察官が,第47条ただし書の「公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合」 に該当すると判断した場合に.当該文書送付嘱託に応じる。
② 当該証拠が公判廷で取り調べられている場合には,当該証拠の原本を保管する刑事事件の受訴裁判所(刑事裁判所)が,民事裁判所の文書送付嘱託を受け,これに応ずるか否かを判断している。
なお,実務の運用としては,刑事裁判所は,関係者の名誉・プライパシ侵害のおそれ,刑事公判の円滑な進行の阻害等の文書送付に伴う弊害と,文書送付の必要性を比較衡量して,当該文書送付嘱託に応じるか否かを判断しており,嘱託に応じないこともあるようである。
③ 犯罪被害者等については,犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第3条に基づき,刑事裁判所が, 一定の要件の下に,訴訟記録の閲覧又は謄写を許可している。
確定後においては,確定記録の保管検察官が,刑事候定訴訟記録法第4条に基づき,関係者の名誉等を侵害するおそれの有無,犯人の改善更生を妨げるおそれの有無等を検討した上で,閲覧の許否を決するものとされており,検察官の判断に不服申立てがなされた場合には.同法第8条により,準抗告裁判所が,これを決するものとされている。
(注10)
 このほか,例えば,無罪事例集のような執務資料集に,開示証拠の複製等を掲載することは,使用が許される場合に該当するものではないが,開示証拠の複製等をそのまま掲載することなく.「複製」等に当たらない概要を記載した資料を作成・出版することは,本項により禁止されない。

理由不備の判決

 証拠上は1号ポルノ16画像、3号ポルノ5画像を製造したことになっているのに、地裁判決では「性交する姿態等をとらせ」「1号・3号に該当する」「撮影データ21点」を製造したという認定になっています。
 性交する姿態は1号ポルノに該当しますが、「等」では3号ポルノに該当する記載がないことになります。
 これは理由不備であって、原判決は破棄されます。
 1号ポルノは16なのに、21点というのも事実誤認と言えるかも知れない。
 実務的な話なので、研修所の刑事判決起案の手引とか、検察講義案とかを引用して、主張しています。

刑訴法
第三七八条[同前━絶対的]
 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
一 不法に管轄又は管轄違を認めたこと。
二 不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。
三 審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。
四 判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。

第三九七条[原判決破棄の判決━一項破棄と二項破棄]
 第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。

原判決
(罪となるべき事実)
被告人は,
A子(16)が18歳に満たない児童であることを知りながら,
令和2年2月21日午後6時45分頃から同日午後7時31分頃までの間,
西天満ホテル201号室において,
同児童に,被告人と性交する姿態等をとらせ,
これを被告人のスマートフォンの撮影機能を用いて撮影し,
その撮影データ21点を,同スマートフォン本体に内蔵された記録装置に記録させて保存し,
もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び
衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの
を視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
ものである。

(法令の適用)
罰条
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条4項,2項,2条3項1号,3号

奈良県生駒市の学校内のスカート内撮影行為につき、牧野和夫弁護士「いたずらでは済まされません。犯罪として裁かれる可能性があります。盗撮の場合、都道府県の迷惑行為防止条例違反(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)にあたる可能性があります。」というのだが、奈良県条例は、公共の場所以外でのスカート内盗撮を処罰してませんよね。

奈良県生駒市の学校内のスカート内撮影行為につき、牧野和夫弁護士「いたずらでは済まされません。犯罪として裁かれる可能性があります。盗撮の場合、都道府県の迷惑行為防止条例違反(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)にあたる可能性があります。」というのだが、奈良県条例は、公共の場所以外でのスカート内盗撮を処罰してませんよね。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200211/k10012280681000.html
校内で女子生徒少なくとも十数人のスカートの中や着替えの様子を繰り返し盗撮していた

 校内でのスカート内撮影(逆さ撮)については、奈良県条例は、公共の場所以外でのスカート内盗撮を処罰してませんよね。
 公共の場所以外での盗撮については、条例12条2項2号で「写真機等を使用して、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(公共の場所及び公共の乗物を除く。)」での盗撮を規制しているので、教室・廊下でのスカート内盗撮は含みません。
 校内着替え盗撮については、条例12条2項2号の罪もありますが、児童ポルノひそかに製造罪(7条 3年)とか、7項製造罪(5年)が考えられます。
 販売については6項提供罪(5年)、リベンジポルノ公表罪(3年)が検討されます。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
1 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

奈良県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
(卑わいな行為の禁止)
第十二条 
1何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しくしゆう恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、みだりに次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 他人の胸部、 臀でん 部、下腹部、大 腿たい 部等(以下「胸部等」という。)の身体に触れる行為(着衣その他の身に着ける物(以下「着衣等」という。)の上から触れる行為を含む。)であつて卑わいなもの
二 着衣等の全部若しくは一部を着けないでいる他人の姿態若しくは着衣で覆われている他人の下着若しくは胸部等の身体をのぞき見し、又は写真機等を使用して、その映像を記録する行為であつて卑わいなもの
三 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動
2 何人も、みだりに卑わいな行為であつて次の各号に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所及び公共の乗物以外の場所から、写真機等を使用して、透視する方法により、公共の場所にいる他人若しくは公共の乗物に乗つている他人の下着若しくは胸部等の身体を見、又はその映像を記録すること。
二 写真機等を使用して、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所(公共の場所及び公共の乗物を除く。)に当該状態でいる他人の姿態の映像を記録すること。
(平一二条例七・追加、平二〇条例三八・一部改正)

迷惑防止条例」 逐条解説
奈良県警察本部生活環境課
5 解説
(1) 「公共の場所」「公共の乗物」とは、本条例第2条第,項と同様、道路公園、広場、駅、興行場、遊園地、観光施設、飲食店、公衆便所その他公衆が出入りすることのできる場所又は汽車、電車、乗合自動車その他公衆が利用することのできる乗物をいう。

(28) 「写真機等」とは、前記(16)に同じ。
(29) 「住居」とは、人の起臥寝食の用に供せられている建物をいう。住居の一部であれば、玄関、台所等のように通常着衣等を着けない状態でいることが予想されない場所であっても、ここにいう「住居」に当たる。
(30) 「浴場」とは、浴室のみならず脱衣場も含む。個人の住居における浴場は、通常、住居の一部として「住居」に当たる。また、公衆浴場は、公共の場所に当たることから、ここにいう浴場は、公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第1条に規定する公衆浴場以外の浴場であり、会社、旅館、スポーツジム、病院等の浴場をいう。
よって、公衆浴場における盗撮行為は、本項を適用せず、本条第1項第2号を適一用することになる。
※旅館等の浴場は、原則として公衆浴場法の規制対象外であるが、日帰り温泉等として、同法第2条に基づく許可を受け一般客に開放している場合は、公衆浴場となる。
(31) 「更衣室」とは、人が着衣等を着替える場所のことであり、会社、学校、病院、スポーツジム等の更衣室をいう。営業時間中のプールの更衣室やデパート、衣料品店等の簡易の試着室は、公衆が利用する更衣室として公共の場所に当たることから同所における盗撮行為は、本項を適用せず、本条第1項第2号を適用することにな
る。
(32) 「便所」とは、会社の便所、営業時間外の興行場、遊園地、観光施設、飲食店等の便所、執務時間外の官公庁の便所等公衆が利用できない便所をいうが、その全体を指すのではなく、その中の個別に扉で仕切られた部分及び男子が小用を足すための一画が、ここにいう「便所」にあたる。
公衆便所における盗撮行為は、本項を適用せず、本条第1項第2号を適用することになる。
(33) 「その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」とは、住居、浴場、更衣室、便所のほか、人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいる可能性のある場所をいう。
例示したもののほか、旅館又はホテルの客室、病院の診療室又は処置室、列車の寝台、キャンプ中のテント、キャンピングカー、救急車等がこれに当たる。
(34) 「公共の場所及び公共の乗物を除く。」とは、住居、浴場、更衣室、便所その他の人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所であっても、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用する更衣室等の公共の場所又は公共の乗物に該当する場所は、本項が適用されないということを規定したものである。
よって、公共の場所又は公共の乗物における盗撮行為は、本条第1項第2号を適用することになる。
(35) 「当該状態でいる他人の姿態」とは、人が着衣等の全部又は一部を着けない状態でいる可能性のある場所において、全裸若しくは半裸、又は通常、着衣等で隠している胸部、臂部、下腹部、大腿部等の身体の一部を露出している状態でいる人の姿や形をいう。
(36) 「映像を記録する」とは、前記(17)に同じ。ただし、透視映像にあっては、通常、着衣等で隠している胸部、臂部、下腹部、大腿部等の身体の一部を露出している状態、いわゆるを半裸等の姿態を透視した映像を記録する場合に限る。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200221-00059888-otonans-soci
大人であれば、間違いなく法的責任を問われる内容ですが、今回のケースではどうなるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
盗撮は迷惑行為防止条例違反の可能性
Q.今回、男子生徒が女子生徒の着替え中の姿やスカート内を盗撮し、LINEで画像を共有、売買したことは「いたずら」で済まされるのでしょうか。あるいは「犯罪」になるのでしょうか。
牧野さん「いたずらでは済まされません。犯罪として裁かれる可能性があります。盗撮の場合、都道府県の迷惑行為防止条例違反(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)にあたる可能性があります。
また、盗撮した画像をLINEで共有、売買したことは、児童買春・児童ポルノ禁止法の『子どものわいせつな画像の所持や製造、配布等』(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)にあたる可能性があります」

東京都青少年の健全な育成に関する条例の自撮り規制の解説

 青少年が送ってしまった場合は、条例は出番ないですよね
 奥村も都庁に呼ばれましてね。

東京都青少年の健全な育成に関する条例及び同施行規則の解説R01
(青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第18条の7
1 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行ってはならない。
一青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成1 1年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ(以下単に「児童ポルノ」という。)又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。次号において同じ。)の提供を行うように求めること。
二青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
【要旨】
本条は、すべての者に対して、青少年に、自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を、当該青少年に不当に求める行為を禁止した規定である。
【解説】
本条は、近年のスマートフォンの急激な普及や、インターネット利用の低年齢化が進み、判断能力の未成熟な青少年が多くネット上で活動し始めたことを背景に、脅されたり、だまされたりするなどして、青少年が自分の裸体等をスマートフォン等で撮影させられた上、メール等で送らされる被害、いわゆる「自画撮り被害」が社会問題化したことから、平成29年の条例改正において、不当に求める行為に限り罰則をもって禁止することとしたものである。
青少年の自画撮り被害の防止に関する現行法令は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、単に「児童ポルノ禁止法」とする。)第7条において、児童ポルノの電磁的記録の所持、保管、提供、製造等を禁止している。しかし、自画撮り被害が生じた場合、加害者には製造罪が適用されるケースが多いが、未遂罪の規定はなく、自画撮り被害に繋がる働きかけ行為自体を処罰する規定はなかった。また、自画撮り被害に繋がる働きかけ行為自体が刑法第222条(脅迫罪)や、第223条(強要罪)の未遂に該当すれば罰せられるが、加害者が青少年の判断能力の未成熟さに付け込む方法で働きかけを行う場合、働きかけ行為自体がこれらに該当しないことが多く、現行法令による自画撮り被害の未然防止は十分ではなかった。
このため、本条例において提供を求める行為について処罰対象とし、自画撮り被害に繋がる働きかけ行為自体を罰することで、加害者による「青少年に対する画像提供の働きかけ行為」の抑止や防止、「青少年の画像提供の未然防止」等を図る目的で改正を行ったものである。
本規定は、刑法の属地主義の原則により、構成要件該当事実の一部が東京都内で発生した場合に適用される。すなわち、要求を行う者又は要求を受ける者(青少年)のいずれかが東京都内に所在する場合などに適用される。また、判例によれば、要求を行う者において『要求を受ける者(青少年)が東京都に所在すること』の認識は原則として必要ない。ただし、青少年が都外にいるという積極的な認識がある場合には、慎重に判断すべきである。(参考判例:高松高判昭和61年12月2日高裁判例集第39巻4号507頁(条例の罰則が当該地方公共団体の区域外にある者に対して適用された事例))
本規定は、年齢の知情性がなくとも処罰可能とする条例第28条の対象外である。すなわち、要求を行う者に、要求の相手が青少年だという認識がなかったと認められる場合は、処罰できないこととなる。
また、本規定は、「当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること」を禁止するものであり、相手方が青少年であると認識できるような事実が全くない場合には適用できない。これは、「自画撮り被害」が相手を直接確認できないインターネット上のやりとりの中で行われることが想定され、やりとりの相手が青少年だと認識していない者にまで本規定を適用することは過剰な規制と考えられるためである。
「何人も」とは、国籍、住所、年齢、性別を問わず、全ての人(自然人)を指すことから、青少年が本条に定める行為を行った場合は、本条の違反が成立する。
ただし、この条例の本旨は、罪を犯した青少年を罰することを目的としたものではなく、青少年の健全な育成を図るため、青少年を好ましくない社会環境から守る義務を青少年以外の者に負わせたものである。
そのため、この条例に違反した者が青少年であるときは、条例第30条(青少年についての免責)により、罰則は適用しない。
「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等ということである。したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
どのような表現が「児童ポルノ」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童ポルノ禁止法第2条第3項に該当する児童ポルノが提供されることが社会通念上明らかに認められることが必要であると考える。
「提供を行うように求める」とは、児童ポルノ禁止法第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するよう求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
また、「求める」とは、青少年に対して、要求するのみならず、勧誘するなども含めた広い概念である。
「拒まれたにもかかわらず」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めた被疑者が、それを拒否されたと認識しているにもかかわらずということになる。したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが被疑者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。
「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しないが、単に「威勢を示す」(軽犯罪法第1条第13号) というよりは強度のものを指す。暴力行為等処罰に関する法律第2条、公職選挙法第225条第3号に用例がある。
なお、「威力」との差異に関し、公職選挙法第225条第1号の「威力」とは「人の意思を制圧するに足りる勢力」、同3号の「威迫」とは「人の不安を抱かせるに足りる行為」をいい、両者の違いは、人の意思を制圧するに足りる程度の行為であるかどうかにあるものと解すべき」であると判示している(昭和42. 2.4最高裁第2小法廷判決)。
「欺く」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることである。真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。軽犯罪法第1条第34号、売春防止法第7条第1項に用例がある。
「困惑させる」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。相手
方に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、恩顧愛執の情義その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢・知能・性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。特定商取引法第6条第3項、売春防止法第7条第1項に用例がある。
「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
【本条に違反した者】
第26条第7号により30万円以下の罰金(直罰)

強姦罪の既遂時期につき,陰茎の先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態となっただけでは,未だ姦淫の既遂には至っていないとされた事例(仙台高裁h28.5.24)

 仙台地検で強姦の量刑を調べていて、この事件に当たりました。閲覧内容は他言できませんが、医師の供述などで被害児童の「陰部約3.5センチメートル程度の深さまで陰茎を挿入された。」という供述の信用性を否定しています。

高等裁判所刑事裁判速報集 平成28年
法務省大臣官房司法法制部
速報番号28年2号
【事件名】
強姦被告事件
【事件番号等】
平成28年(う)36号,平成28年5月24日
仙台高等裁判所第1刑事部判決,
原判決破棄・自判(確定)
【控訴申立人】被告人
【第一審】仙台地方裁判所
○判示事項
強姦罪の既遂時期につき,陰茎の先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態となっただけでは,未だ姦淫の既遂には至っていないとされた事例
○判決要旨
強姦罪における姦淫は,交接作用すなわち陰茎の没入によって既遂に達するとされている(大審院大正2年11月19日判決参照)ところ,その字義に照らせば,単に陰茎の先端部を女性の陰部の入口に押し付けたというだけでは既遂に達したとはいえず,これを超えて陰茎の少なくとも一部が女性の陰部に没する必要があることは明らかである。
そして,陰茎の先端部が凸型の曲面状で女性の陰部が凹型であるという形状や,いずれも弾力を有するという性質からすれば,陰茎を女性の陰部の入ロに押し付けるだけでも先端部が数ミリメートル程度陰部に食い込むような状態とはなり得るが,これは陰茎を押し付ける行為に必然的に伴うものであって,かかる状態をもって陰茎が没入したとは評価し難いから,このような状態では未だ姦淫の既遂には至っていないものと解すべきである。
○参照条文
刑法第177条
○ 備考
本判決は,原判決が,被害女児(当時9歳)の「陰部約3.5センチメートル程度の深さまで陰茎を挿入された。」旨の証言の信用性を否定した上で,被告人の「陰茎の先が数ミリメートル程度Vの陰部に入ったが,それ以上は先に進まなかった。」,「陰茎をVの陰部に押しつけ,先が膣の入口を塞ぐようになった。大人の女性と性交するときのようには入らなかったが,陰茎の先が1~2ミリメートルは入っていたと思う。少し食い込むぐらいでそれ以上進まなかったから没入はしていない。」旨の公判供述に基づき,姦淫の既遂を認めたのに対し,同一の事実関係を前提としつつ,上記判決要旨記載の理由により,姦淫の既遂には至っていないと判断したものである。
なお,弁護人は,「被告人にはそもそも強姦の故意がないから強姦未遂罪も成立しない。」と主張したが,本判決は,「被害女児の陰部に陰茎を押し付けるという行為態様に照らして,陰茎を没入させるつもりが全くなかったとは考え難い上,被告人は,原審公判で,陰茎を没入させるつもりはなかったと述べる一方で,検察官に,より深く陰茎が入っても構わないと考えていたのか,その前にとどめる意識があったのかと尋ねられた際には,押し当てるという行為をしたら入ってしまうことになると考えていたと述べており,少なくとも,陰茎が陰部に没入する可能性を認識した上で,それでも構わないと考えて陰茎を押し付けたと認められ,姦淫に至る可能性を認識しつつそれでも構わないという意思,すなわち姦淫の未必の故意があったと認定できる。」と判示して同主張を排斥しており,原審検察官の適切な被告人質問により故意の認定が得られたという点でも,参考になる事例であると思われる。

橋爪隆「非接触型のわいせつ行為について」研修860号

 脅迫して裸画像を送らせる行為について、奥村は、昔から強制わいせつ罪説を唱えていましたが、独自の見解とされ、各高裁は強要罪説でしたよね。付いてきてよ。

I .はじめに
周知のとおり,最大判平成29. 11. 29 (刑集71巻9号467頁)は,強制わいせつ罪の成立要件として一律に性的意図を要求することは妥当ではないとした上で, わいせつ行為の判断基準について具体的な検討を加えている。すなわち,①行為そのものが持つ性的性質が明確な場合には,その他の事情を考慮するまでもなく, 直ちにわいせつな行為と評価できるが,②行為そのものが持つ性的性質やその程度が明確ではない場合には,行為者の主観的事情を含めた具体的状況を考慮した上で, わいせつ行為に該当するか否かを判断する必要がある。

上記①②の限界は必ずしも明確ではないが(注' ) ,本決定の理解を前提とした場合,被害者の身体に対する接触を伴う行為については,対象となった身体の部位や接触の態様(直接性執勧性など)によって行為それ自体の有する性的性質を判断した上で, さらに必要に応じて,行為者と被害者の関係性,当該行為に至る経緯行為者の性的意図・目的などの事情を考慮して, 強制わいせつ罪の成否が判断されることになろう(注2)。

・・・・
これらの事情をすべて踏まえて,本罪のわいせつ行為性を定義しようとすると,結局のところ, 「性的性質を有する一定の重大な侵襲」(注'2)という抽象的な内容になってしまう。もちろん,本罪を重大な性的侵害として把握する方向性自体は適切な方向にあると思われるが,論者も認めるとおり, この定義から解釈論を導くためには,具体的な適用基準を示すことが不可欠となる。そして, 「性的性質」, 「重大な侵襲」という概念だけからは,非接触型の類型について明確な指針を導くことができず,非接触型の類型に固有の侵害性を明らかにする必要がある, というのが,本稿の問題意識である。まずは議論の前提として,本罪のわいせつ行為の理解において重要な視点を示すことにしたい。

なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。(大法廷h29.11.29)~判例変更と憲法31条,39条との関係

 大法廷h29.11.29の「なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。」という一文には下記のような意味があるそうです。
 被告人に不利益な判例変更の動きは、上告趣意書提出後に出てきたので、上告理由では主張できず、弁論で主張することになったので、不適法な主張です。わかった上でやってます

馬渡調査官 ジュリスト1517強制猥褻大法廷調査官強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
Ⅵ.判例変更と憲法31条,39条との関係
 ところで,本件の弁論において,弁護人は,判例を被告人に不利に変更して実刑に処すことは,憲法31条の定める適正手続違反であるし,遡及処罰を禁じた憲法39条に違反するから,本件において,上告審として,判例を変更して被告人に強制わいせつ罪の成立を認めることは許されないと主張した。
 判例変更と憲法39条との関係については,最高裁判例があり,行為当時の最高裁判所の示す法解釈に従えば無罪となるような行為であっても,これを処罰することは憲法39条に違反しないとされている(最二小判平成8・ll・18刑集50巻10号745頁)。また,憲法31条にいう「法律」は制定法を指すと解されるから,罪刑法定主義との関係においても,判例の不利益変更が憲法31条に違反することはないと解される(平成8年判例最高裁判所調査官解説・今崎幸彦・平成8年度最判解刑事篇157頁参照)。もっとも,事案によっては,判例を信頼し,これに基づき処罰されないと信じて行動した者を判例変更によって処罰することは,国民の判例に対する信頼の保護の観点から問題があり得ることも指摘されている(今崎・前掲163頁参照。なお,平成8年判例に付された河合伸一裁判官の補足意見は,故意を欠くとする余地があるとする。他方,佐伯仁志「判例変更と適正手続」日本法学82巻2号324頁は,これを憲法31条の定める適正手続の問題と捉え,判例変更に際しては,適正手続に反しないような方法によるべきであるとする)。しかし,本件においては,被告人は,本件強制わいせつ行為における行為の様子等を撮影して児童ポルノを製造した罪,その児童ポルノを提供した罪,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反でも起訴されて,強制わいせつ罪と併合して有罪認定されており,本件宣告刑(懲役3年6月)は,児童ポルノ製造罪の法定刑(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金・児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条3項)に併合罪加重をした懲役刑の刑期(4年6月以下)を超えるものではないこと,本件の被告人が,昭和45年判例を特に信頼して,違法性の意識を欠いていたなどの事情はうかがわれず,適正手続や故意に疑問を生じさせるような状況はおよそ認められないことからすれば,判例を被告人に不利益に変更し,強制わいせつ罪について有罪とした第1審判決を是認した原判決を維持することは,どのような観点からみても,問題がないと考えられる。このようなことから,本判決は,昭和45年判例違反をいう所論が原判決破棄の理由にならないことを判示した上で,念のため,「なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。」との結論のみを示したものと思われる。

向井香津子「最高裁判例解説 強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」 法曹時報第72巻第1号
 イ 憲法31条,39条との関係
(ア)ところで,弁護人は,本件弁論期日において,判例変更の可能性を予測し,判例を被告人に不利に変更して実刑に処すことは,憲法31条の定める適正手続違反であるし,遡及処罰を禁じた憲法39条に違反するから,本件において,上告審として,判例を変更して被告人に強制わいせつ罪の成立を認めることは許されないと主張した。なお,この主張は,上告審において判例変更をした場合に予想される上告審の判断に対する違憲の主張をするものであって,原判決の瑕疵を主張するものではないから,刑訴法405条1号事由の主張をしているものではないと解される(上告趣意書差出期間経過後の主張であることから,原判決に対する論難として主張されていると解することはできない。)。
(イ)判例変更と憲法39条との関係については,当審判例があり,行為当時の最高裁判所の示す法解釈に従えば無罪となるような行為であっても,これを処罰することは憲法39条に違反しないとされている(最二小判平成8年11月18日・刑集50巻11号745頁。以下「平成8年判例」という。)。判例法主義を採らない我が国での判例は,それ自体として制定法と同じような拘束力を持つものとは理解されておらず,「事実上の拘束力」を有するにすぎないことが前提とされており,学説上も,判例は,裁判官を法律上拘束するものではないというのが通説である(平成8年判例最高裁判所調査官解説・今崎幸彦・平成8年度最高裁判所判例解説刑事篇156頁,金築誠志判例について」中央ロー・ジャーナル12巻4号7頁〔2016年〕参照)。
 したがって,行為当時の最高裁判例の示す法解釈に従えば,強制わいせつ罪が成立しないが,判例変更後の解釈によれば強制わいせつ罪が成立すると認められる本件行為について,強制わいせつ罪として処罰することは憲法39条に反しない(安田拓人・判例の不利益変更と遡及処罰の禁止・大野眞義先生古稀祝賀・刑事法学の潮流と展望45頁〔2000年〕も参照)。また,憲法31条が罪刑法定主義をも定めたものとして解したとしても,同条にいう「法律」が制定法を指すことは当然であると解され,判例の不利益変更が憲法31条に違反するものではないと解される(前掲今崎157頁参照。なお,平成8年判例には、憲法31条との関係についての判断は示されていない。)。
 もっとも,事案によっては,判例を信頼し,これに基づき処罰されないと信じて行動した者を処罰することは、国民の判例に対する信頼の保護の観点から問題があり得るとも指摘されている(前掲今崎163頁,前掲金築10頁参照。なお,平成8年判例に付された河合伸一裁判官の補足意見は,故意を欠くとする余地があると述べられている。他方,佐伯仁志「判例変更と適正手続」日本法学82巻2号92頁〔2016年〕は,これを憲法31条の定める適正手続の問題と捉え,判例変更に際しては,適正手続に反しないような方法によるべきであるとする。)。
 しかし,本件の被告人が,昭和45年判例を特に信頼して、違法性の意識を欠いていたなどの事情は一切うかがわれず,本件においては,国民の判例に対する信頼の保護の観点からみても,適正手続や故意に疑問を生じさせるような状況は,およそ認められない。
 なお,本件では,被告人は,本件強制わいせつ罪のほかに,本件強制わいせつ行為における行為の様子等を撮影して児童ポルノを製造した罪,その児童ポルノを提供した罪,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反でも起訴され,これらが併合罪として有罪認定されており,本件宣告刑(懲役3年6月)は,児童ポルノ製造罪の法定刑(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金・児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条3項)に併合罪加重をした懲役刑の刑期(4年6月以下)を超えていない。
(ウ)以上のとおり,本件において,昭和45年判例を被告人に不利益に変更し,強制わいせつ罪について有罪とした第1審判決を是認した原判決を維持することについて,何ら憲法上の問題はないと考えられるところ,本判決は,昭和45年判例違反をいう所論が原判決破棄の理由にならないことを判示した上で,「なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。」との結論のみを示している。
 この憲法違反の主張は,前述のとおり,刑訴法405条の定める上告申立て理由ではないから,適法な上告理由には当たらず,当審において,その判断を示す必要はないと解されるが(近藤和義「刑事裁判における上告理由としての違憲の主張」中野次雄判事還暦祝賀・刑事裁判の課題369頁〔1972年〕,最二小判昭和30年5月20日裁判集刑事105号703頁,大コンメンタール刑事訴訟法第2版第9巻549頁〔2011年〕参照),判例変更に際して,判例を信頼して行動した者の処罰に関し,上記のような指摘もされていることから,その結論部分のみを判示するのが相当と考えられたものと思われる。

北海道青少年健全育成条例の自撮り規制

 これは結局、全国に適用されるようです。全国には公布されてません。

 要求行為は、児童ポルノ法の児童ポルノを送ってもらうわけですが、自画撮りの場合は、まだ存在しないわけですから、「3号に該当するやつ送れ」と言われれば該当しますが、「エッチじゃない胸の画像送れ」とかになると該当しないんでしょうね。
 わいせつ頒布罪等で、片面的処罰になってるから買い主は処罰されませんよね、児童ポルノ提供罪もそうなんですけど、ましては、要求行為は処罰されませんが、条例で処罰することはどうなんですかね。

北海道青少年健全育成条例の解説
(20) 令和元年10月16日公布
青少年の健全な育成を図る環境が変化している現状に鑑み、青少年に対して児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止するとともに、ゲームソフトについて包括的な有害図書類の指定を行うため、所要の改正を行った。
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止(新設)
青少年に対して不当な手段等により、当該青少年の児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止する規定を設けた。
・・・・・
児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第38条の2 何人も、青少年に対し、次の各号のいずれかに該当して当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。第1号において同じ。)の提供を求めてはならない。
(1) 当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を拒まれたとき。
(2) 当該青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は当該青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をしたとき。
(3) 当該青少年が13歳未満の者であるとき。
【趣旨】
本条は、青少年に、当該青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ又はその情報を記録した電磁的記録その他の記録の提供を不当に求めることを禁止した規定である。
【解説】
1 本条は、青少年の健全な育成を阻害するおそれのあるものとして、社会通念上非難を受けるべき性質のものを禁止したものであり、その認定にあたっては、行為の外形だけによることなく、動機、手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断しなければならない。
2 「当該青少年に係る児童ポルノ等」とは、求める相手方である青少年自身の姿態が描写された児童ポルノ等ということである。したがって、他の青少年の姿態が描写された児童ポルノ等を求めた場合については、該当しない。
3 「提供を求める」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条第2項に規定する「提供」を行うように求めることであり、当該児童ポルノ等を相手方において利用し得べき状態に置く法律上・事実上の一切の行為をいい、具体的には、有体物としての児童ポルノを交付するように求めたり、電磁的記録を電子メールで送信するよう求める行為がこれに当たる。
また、「求める」とは、青少年に対して、要求するのみならず、勧誘するなども含めた広い概念である。
どのような表現が「児童ポルノ」に該当するかについては、要求文言とその前後のやりとりを総合的に判断し、該当性の判断を行うこととなるが、その要求に青少年が応じてしまった場合、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第3項に規定する児童ポルノが提供されると社会通念上明らかに認められることが必要である。
4 「提供を拒まれたとき」とは、青少年に対して当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた被疑者が、それを拒否されたと認識しているということである。したがって、やりとりの記録などから拒否されたと認識していることが明らかである場合のほか、社会通念上、青少年の意思表示が拒否したと認められるものであり、かつ、それが被疑者に到達していることが明らかである場合には、拒否されたと認識していたということができる。
5 「威迫」とは、他人に対して言語挙動をもって気勢を示し、不安の感を生じさせることをいう。
「脅迫」と異なり、他人に恐怖心を生じさせる程度のものであることを要しないが、単に「威勢を示す」(他人に不安感を抱かせるような態度をとる)というよりは強度のものを指す。
6 「欺く」とは、他人を錯誤に陥れ、虚偽の事実を真実と誤認させることである。真実でないことを真実であるとして表示する行為で、虚偽の事実を摘示する場合と真実の事実を隠ぺいする場合とが含まれる。
7 「困惑させる」とは、困り戸惑わせることをいい、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意思を拘束することによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいう。
相手方に威力を示す場合、義理人情の機微につけ込む場合、恩顧愛執の情義その他相手方を心理的に拘束し得るような問題を持ち込む場合などが考えられるが、いずれにしても、相手方に対する言動のほか、相手方の年齢、知能、性格、置かれた環境、前後の事情などを総合して判定する。
8 「対償を供与し、若しくはその供与の約束をする」とは、児童ポルノ等の提供に対する反対給付としての経済的な利益を供与、又はその約束をすることをいう。
「対償」は、現金のみならず、物品、債務の免除も含まれ、金額の多寡は問わない。
「約束」とは、相手に対し、又は互いに、取り決めを行うことである。
9 常習とは
一定の犯罪行為を反複する習癖をいい、反復される犯罪は同質のもであることを要する。常習性の有無の判断は、裁判官の自由なる心証によってなされ、その判断資料に制限はない。「常習」の認定については、人間の内面に起因するものであることから、一定の基準を定めることは不可能であり、個々具体的に判断するよりほかはないが、行為の回数、期間、同種の前科、反復累行の事実、行為の性質方法その他の資料から認定することとなる。常習は、行為の属性ではなく行為者の属性であることから、常習犯は一種の身分犯である。

【罰則】
本条に違反した者は、30 万円以下の罰金に処せられる。(第61 条第4号)
常習として本条に違反した者は、6月以下の懲役又は50 万円以下の罰金に処せられる。(第59 条第3号)

第59条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(3) 常習として第38条の2の規定に違反した者
第61条
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(4) 第38条の2の規定に違反した者(前条に該当する場合を除く。)
第65条
第34条、第38条又は第39条の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第57条、第58条、第60条又は第61条(第3号に係る部分に限る。)の規定による処罰を免れることができない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

【関係法令】
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条(定義)、
第7条(児童ポルノ所持、提供等)
【関係判例
高松高裁判決(昭和61年12月2日)要旨
本件は、被告人が数回にわたり徳島県所在の自宅から香川県にあるA方に電話をして、同人の妻Bに対し「あんたが好きです。会ってほしい。」などと反覆して申向け、もって同女に著しく不安又は迷惑を覚えさせるようなことをしたという事案であるところ、原審は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年12月23日香川県条例50号)10条、11条1項は香川県の区域内における行為に対して適用されるのが原則であって、区域外の行為に本件条例を適用するには特段の根拠の存在することが必要であるが、本件被告人の行為は区域外でなされたものであり、本件条例を適用する特段の根拠はないとして、被告人は無罪としたのであるが、条例は当該地方公共団体の区域内の行為に適用されるのが原則であるものの、本件のように当該地方公共団体の区域外から区域内に向けて内容が犯罪となる電話をかける行為に及んだ場合には、電話をかけた場所のみならず、電話を受けた場所である結果発生地も犯罪地と認められるのであり、このように犯罪の結果発生地が香川県にあるとされる以上、行為者は直接かつ現実的に香川県に関わりを持ったものというべく、香川県民及び滞在者と同様に本件条例が適用されるものと解すべきである。なお、本件条例12条は本件条例が適用される通常の場合の行為者として「県民及び滞在者」を挙げて適用上の注意を示しているに過ぎないと解すべく、同条を根拠として本件条例が適用される行為者の範囲を直ちに限定することは相当でない。
また、原審は、香川県民及び滞在者以外の者に本件条例を適用し処罰すると、本件条例の存在、内容を了知することが不可能若しくは著しく困難なことから、行為に際し違法性の認識すら持ち得ない者が処罰される結果を招くというが、故意の内容に違法性の認識は必要がないのみならず、本件被告人は、一般通常人におけると同様、本件違法性の認識に欠くる所はなかったものと認められるから、右の結果が不合理であるとはいえない

教諭淫行で生徒が自殺未遂、大分

因果関係と損害が立証されると高額になりえます。

https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2020/02/14/JD0058964051
元県立高教諭のみだらな行為、生徒の自殺未遂で発覚 寝たきり、重度障害に
2020/02/14 03:01
 女子生徒(18)にみだらな行為をしたとして昨年7月に懲戒免職処分となった元県立高教諭の男性(33)について、問題の行為は生徒の自殺未遂で発覚したことが13日、生徒の保護者らへの取材で分かった。生徒は一命を取り留めたものの、寝たきりで意思疎

https://www.nishinippon.co.jp/item/o/584162/
教諭淫行で生徒が自殺未遂、大分
2020/2/14 18:08 (2020/2/14 18:11 更新)
共同通信
 大分県立高に勤務していた男性教諭(33)が、女子生徒(18)にみだらな行為をしたとして懲戒免職処分になった問題があり、女子生徒が関係に悩んだ末に自殺を図り、重度障害が残ったとして、保護者が県に約1億3千万円の賠償を求め、大分地裁に提訴したことが14日分かった。1月14日付。

 訴状や代理人弁護士などによると、生徒は19年1月に自殺を図って昏睡状態となり、回復の見込みがないという。

 元教諭は18年10月ごろから、生徒にみだらな行為をし、生徒は妻子がいる教諭との関係に悩んでいた。元教諭が立場を利用し精神的に追い詰め、県は安全配慮義務を怠ったと訴えている。

単純所持罪の無罪判決 佐賀地裁「判定に疑い」(佐賀地裁R02.2.12)

 当職も協力しました。
 タナー法という立証方法を批判したようですが、タナー法に一定の信用性を認めた上で、本件の画像不鮮明を理由として、本件鑑定の信用性を認めないという判断だったもようです。
 画像不鮮明による無罪判決は津地裁伊勢支部でも観測しています。

https://www.saga-s.co.jp/articles/-/488043
児童ポルノ巡り一部無罪 佐賀地裁「判定に疑い」
 県迷惑防止条例違反(盗撮)と児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の罪に問われた長崎県佐世保市、無職の被告(39)に、佐賀地裁は12日、懲役8月(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。児童ポルノの所持については「動画データの女性が児童であると立証されているとは言えない」として無罪とした。

 盗撮行為を巡っては検察側、弁護側で争いはなく、被告のノート型パソコンに保存されていた動画データの女性が18歳未満の児童と立証できているかどうかが争点だった。

 杉原崇夫裁判官は判決理由で、検察側の医師が用いた年齢判定の手法について「統計学的な数字による手法として十分に信用できる」とした一方、「動画データは画質がかなり荒く、判定資料としての品質がよくない。判定が正確にできるかについて、常識的にみて疑いが残る」と述べた。

 判決によると、被告は昨年6月23日、佐賀市の大型商業施設2カ所で、氏名不詳の女性ら3人に、靴に装着した小型カメラのレンズをスカート内に差し入れて撮影するなどした。

 一部無罪を受け、弁護人は「結論としては納得のいくものだった」と話し、佐賀地検の奥野博次席検事は「判決を精査し、適切に対処する」とコメントした。

異なる古物店又は質店計8店舗に対し,偽物のプランド腕時計を売却等して換金し,現金を得るとともに,商標権及び専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った詐欺,商標法違反の事案において,原判決が各所為につき, 1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるとして科刑上一罪の処理を行ったことは正当であるが,本件の事実関係の下では, 商標法違反につき被告人の全行為を包括して一罪と解すべきではなく,各行為ごとに別個の商標法違反の罪の成立を認めるべきものである(広島高裁R01.11.21)

前田雅英刑法各論講義7版にはわいせつ行為(刑法176条)の定義がなくなった

 6版では、「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」って書いてたけどな。

前田雅英刑法各論講義6版
強制わいせつ罪
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮・刺激させ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為をいう(名古屋高金沢支判昭36.5.2下刑集3.5=6.399)。
被害者の性的自由の侵害が本罪の中核であり、性的風俗を保護法益とする公然わいせつ罪、わいせつ物頒布罪における「わいせつ」の観念とは異なることがある。例えば、相手方の意思に反する接吻(東京高判昭32・1 .22高刑集10. 1 ・10)は、公然わいせつ罪の意味における「わいせつ」行為ではないが、強制わいせつ罪にいう「わいせつ」行為である。判例において本罪のわいせつ行為とされたものとして、陰部への接触(大判大13・10.22刑集3.749等)、乳房への接触(大阪地堺支判昭36.4. 12下刑集3・3=4・319)、少年の肛門に異物を挿入する行為(東京高判昭59.6. 13判時1143. 155)などがあり、着衣の上から若い女性の替部を手のひらでなで回す行為もわいせつ行為にあたる(名古屋高判平15・6・2判時1834.161)。そのほか、直接身体に接触しなくても、裸にして写真を撮る行為(東京高判昭29.5.29高刑特40・138)、男女に強いて性交させる行為(釧路地北見支判昭53. 10・6判夕374. 162) もわいせつ行為にあたる。
性的に未熟な7歳の女児に対してその乳部および替部を触れる行為を行った場合、わいせつ行為といえるか。判例は、その女児は、「性的に末熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臂部を触られて差恥心と嫌悪感を抱」いているのであって、わいせつ行為であるとする(新潟地判昭63.8.26判時1299・152)。しかし、性的に未熟な児童に対しても、客観的にみてわいせつと感じられるような行為をすればわいせつにあたるのであって、被害者の性的蓋恥心・嫌悪感の有無は、本罪の成否に影響しない。例えば、植物状態に陥った者の性的自由ないし不可侵性も侵害されうるのであり、少なくとも準強制わいせつ罪によって保護されるべきだからである。
本罪は、いわゆる傾向犯であり、わいせつ行為は、わいせつな主観的傾向の発現として行われることを要するとされる(大塚100頁)。しかし、このような主観的傾向は、構成要件の主観的要素とされていない、行為者の主観的傾向によって被害者の性的自由の保護が左右されるべきではない、それが余りにも漠然とした無意識の世界にまで立ち入って判断せざるをえないものであるといった理由で、これを否定する見解も有力である(平野180頁、大谷118頁以下、中森58頁、西田90頁、前田152頁)。

前田雅英刑法各論講義7版
1) 22章の罪全体をすべて個人法益に還元しようとする動きがあったが‘ そもそも, 保護法益は「複合的」なものであり, また, 多数の国民の共有する性的感情を「倫理・風俗」と呼んで保護することも合理性がある(424頁)
・・・・・・・
刑法上のわいせつの意義は, 徒らに性欲を興奮または刺激せしめ, かつ普通人の性的差恥心を害し, 善良な性的道義観念に反することとされるが(最判昭26・5・10刑集'6・102 424頁), この定義は,公然わいせつ罪(174条) , わいせつ物頒布罪(175条)に関するもので,本罪は個人の性的人格・身体を直接侵害する以上別異に考えられ, キスする行為もわいせつ行為である(東京高判昭32・1・22高刑集10・1・10).着衣の上からであっても.女性の臂部を手のひらでなで回す行為も「わいせつ行為」に当たる(名古屋高判平15・6・2判時1834・161)
いわゆる痴漢行為は、本条の要件に該当する場合がある(態様により, 条例による処罰にとどまることもある) .必ずしも被害者の身体に触れる必要はない.裸にして写真を撮る行為も含む(最判昭45' 1 '29刑集24・l ・1E,99頁)9) ~ 「性交あるいは肛門性交・口腔性交」も典型的なわいせつ行為であるが,現在は177条の強制性交等罪によって処罰される.現在でも,少年の肛門に異物を挿入する行為はわいせつ行為に当たる(東京高判昭59.6. 13判時1143・155参照) ~
「わいせつな行為」か否かは,行為自体から客観的に判断し得る場合も多いが,行為自体の性的性質が不明確なため,行為時の具体的状況(行為者と被害者の関係,各属性, 周囲の状況や,行為者の目的等の主観的事情など)を考慮しなければわいせつ性を判断しえない場合もある(最大判平29. 11 .29刑集71 ・9・467-99頁)~
9) 性欲を満足させる意図で男女を裸にし性交の動作をとらせる行為も176条に該当する(釧路地北見支判昭53. 10.6判タ374・162).
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傾向犯に関する判例変更かつて,本罪は傾向犯であり, わいせつな主観的傾向すなわち行為者の性欲を刺激,興奮,満足させる性的意図が必要であるとする見解が有力であった(注釈(4)295頁)~ 判例も, 女性を脅迫して裸にし,撮影した事案につき,専ら報復,侮辱, 虐待の目的に出たのであれば,性的意図(傾向)を欠き, 本罪は成立しないとしてきた(最判昭45. 1 .29刑集24. 1 . 1) . しかし, 法文に「わいせつ傾向」は規定されておらず, 強制的にわいせつな行為をし, そのことを認識していればl4)本罪が成立し得るとも解し得る(東京高判平26.2. ,3高検速報26.45,大阪高判平28・10・27裁判所Web) ~
たしかに,「わいせつ傾向を欠く強制わいせつ行為」は希で, わいせつ傾向の認められる場合のみを禁圧すれば足りるという評価も,一定の説得性があった. しかし,被害者の性的差恥心は行為者の動機のいかんにかかわらず害されている. 国民の意識の主流も.性被害を重視する方向に転換していった.
そのような中で, 最大判平29.11 .29(刑集71・9・467)が,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は, その後の社会(意識)の変化を踏まえればもはや維持しがたいとし, 「故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく, 昭和45年判例の解釈は変更されるべきである」としたのである.

青少年から「結婚したい」と言われても真剣交際の主張が排斥された事例(大阪高裁H29.1.29)

 真剣交際の主張の主張をして負けた事件がたくさんあります。
 青少年から「結婚したい」と言われても、それだけでは真剣交際の主張は通りません。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,青少年愛護条例(県条例第 17号)違反被告事件
 2  原判示第 2に関する法令適用の誤りの主張について
 一審判決が,原判示第 2の事実について,児童(当時 14歳)に対する青少年愛護条例(昭和 38年兵庫県条例第 17号)違反の罪(青少年に対するみだらな性行為の罪)の成立を認めたことに誤りはない。
 弁護人は,被告人は児童との結婚を検討し,児童も被告人と結婚する意思があるなど,真剣な交際に基づく性交であったから,本条例 21条 1項がいう「みだらな性行為」,すなわち,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させるなどその心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為,あるいは,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為には当たらない旨主張する。
しかし,被告人と児童との関係,児童が裸の画像データを送信するようになった経緯(前記 1(3))のほか,被告人は,自らもちかけて児童と初めて会うと,その機会に,車でホテルに連れて行って児童と性交に及んでおり,その後児童と会って,車でホテルに行って性的な関係をもち,車で送って別れるという同様の行為を複数回重ねていたところ,原判示第 2の事実はその一環のものである。被告人は,ほぼ同じ時期に,別の女子児童( 1 7歳)ともインターネット上で同様のやり取りをしてホテルで性的な関係をもつなどしていた上,平成 26年3月下旬頃,被告人との関係が母に発覚して警察にも話をした旨児童から聞くと,その後は児童からのメールに返信しなくなったというのであり,以上のような経緯等に鑑みれば,被告人と児童は真剣に交際していたという所論の前提自体が採用の限りではなく,被告人の原判示性交行為は,同条例 21条 1項の「みだらな性行為」に当たるというべきである。
一審判決の判断に誤りは認められない(なお,一審判決は,被告人と児童が複数回会った際,いずれも児童と性的関係をもった旨認定しているところ,弁護人が主張するとおり両者は性交せずに会ったこともなかったわけではないと認められ,一審判決の説示はこの点でやや不正確ではあるが,いずれにせよ前記判断に影響するような問題ではない。)。
 弁護人は,平成 26年 10月以降も,児童が幾通か被告人にメールを送信してきており,中には結婚の意思があることを示すものがあったことを指摘するが,前記の検討によれば,それも児童の判断能力の未成熟さゆえのことと考えられるから,その指摘も採用できない。
 その他の弁護人の主張にも採用できるものはない。原判示第 2の事実について本条例違反の罪の成立を認めた一審判決の判断に誤りはない。
 平成28年 1月 29日
 大阪高等裁判所第 2刑事部
      裁判長裁判官  横 田 信 之
         裁判官  坂 田 正 史
         裁判官  向 井 亜 紀 子

準強姦1審無罪判決(久留米支部r01.3.12)の検察官控訴で、「被告人質問を実施したが, 被告人は終始黙秘したため,当審で取り調べた実質的証拠は存在しない」のに、破棄自判して有罪とした事案(福岡高裁r02.2.5)

詐欺の意思を除く事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した1審判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴第400条但書の規定に違反しない。(最判s33.5.1)
という判例がある
 

判例番号】 L01310138
       欺被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和31年(あ)第4239号
【判決日付】 昭和33年5月1日
【判示事項】 刑訴第400条但書に違反しない事例
【判決要旨】 本件の第1審判決説示のごとく、詐欺の意思を除く事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した1審判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴第400条但書の規定に違反しない。
【参照条文】 刑事訴訟法400
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集12巻7号1243頁
       最高裁判所裁判集刑事125号17頁
       裁判所時報259号95頁
       判例時報150号35頁
【評釈論文】 研修136号69頁
       主   文
 本件上告を棄却する。
 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由
 同第三点についてo
 所論は憲法三一条違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張に過ぎず適法な上告理由にあたらない。のみならず記録によれば、原審は被告人に対し昭和三一年九月二〇日原審第二回公判期日に出頭を命じ(二五〇丁)、該公判廷において被告人を、公訴犯罪事実その他について詳細にわたつて質問している(二五三丁以下)のであるから、その余の証拠については法廷において直接これが取調をなしていないことは所論のとおりであるが、原判決が、被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した一審福島地方裁判所の判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴四〇〇条但書の規定に違反しないことは当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二四三六号同三一年七月一八日大法廷判決、判例集一〇巻七号一一四七頁以下)の趣旨に徴し明らかである。(本件の第一審判決説示のごとく、詐欺の意思を除く以外の事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、原控訴審における事実の取調として充分であると見るのが相当である。
そして、原控訴審では本件につき前述のごとく被告人の質問をした上原控訴判決は、当審における事実取調の結果、すなわち、被告人の当審公判廷における供述によると、「被告人は本件各犯行の当時土工をして月収平均七、〇〇〇円乃至九、〇〇〇円であつたが、その内三分の一は母に出し、残りで身廻り品等を購入し、所謂飲代は三、〇〇〇円位で、平均して一〇口に一度位飲食していたことが認められると」判示し、さらに、「本件の各場合におけるが如く一回に二、〇〇〇円余りから四、〇〇〇円程度の飲食をすれば、他に特別の収入又はその見込のない限り直ちにその支払に窮することは明らかである。而して被告人に当時右代金支払に充てる収入があつたことはこれを認める資料が存しない。然らば、被告人の右代金支払の意思があつたという弁解は疑わしいものといわなければならない」と説示している。されば、原審には事実の取調をしない違法は認められない。)それ故論旨は理由がない。
 被告人の上告趣意は単なる事実誤認の主張であつて適法なる上告理由にあたらない。

条解刑事訴訟法
必要な事実の取調は,事件の核心についてしたことが必要である(判例⑭(c)参照)。第一審が事実の一部のみを認定せず他を認定しているときは認定しなかった部分のみに関するものでたりる(判例⑮(a)参照)。自判に必要な事実の取調は,必ずしも新証拠の証拠調でなくとも核心についての証拠を新たに取り調べればたり,証拠調の結果が第一審で取り調べた証拠以上に出なくともよい(判例⑮(跡参照。その他,十分とされた例として判例⑮(c)(d)参照)。
・・・・
【破棄自判が許される事例】
(a)第一審判決が詐欺の意思を除くすべての事実を認定している場合に,被告人を公判廷で質問し,被告人の検察官に対する供述調書を措信するべきか否か等につき取調をし,犯罪事実の存在を確定せず無罪を言い渡した第一審判決を破棄し,被告人に有罪の判決を言い渡すこと(最判昭33.5.1集12-7-1243)。

(b)犯意について証明がないことを理由とする第一審の無罪判決に対し,控訴裁判所が, 自ら事実の取調として,証人を取り調べたが,その結果が争点に直接触れるところにおいて第一審で取り調べた証拠以上に出ない場合,右事実取調の結果と訴訟記録および第一審で取り調べた証拠とによって破棄自判し,有罪の判決をすること(最判昭36.1.1礫15-1-113)。
(c)第一審の無罪判決に対し検察官から控訴の申立てがあった場合に,控訴審が事実誤認を理由として右第一審判決を破棄し,自ら犯行現場の検証等証拠の取調をした上,右検証調書と訴訟記録ならびに第一審裁判所において取り調べた証拠によって被告人に対し有罪の判決をする
こと(最決昭34.3.19集13-3-361)。
(d)犯罪の証明がないことを理由とする第一審の無罪判決に対し検察官から控訴の申立てがあった場合において,控訴審が自ら証人の取調をした上, これと訴訟記録ならびに第一審裁判所において取り調べた証拠とによって破棄自判し,有罪の判決をすること(最判昭32.3.15集11-3-1085)。

番組では性犯罪事件に詳しいという奥村徹弁護士が、条例の改正案を作った人の立場になって分析。「恐らく真剣な交際とは映画館、美術館とかデートを重ねて、1日で(性行為を)やったらダメですよ」「家族にも紹介して、最終的に性行為に至る」と見解をコメントした。→ 「放送事故では?」と衝撃走る

 真剣交際については、

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

という判例があるが事案は

宮崎礼壹「青少年保護育成条例による『いん行』処罰の合憲性ー最高裁(大法廷)昭和60年10月23日判決ー」法律のひろば 第39巻1号
本件にかかわる生の事実を、公判記録や原審認定にもとづいて少しく具体的にみると、次のようである。
被告人(昭和三○年六月一二日生、独身)は、当時、複数の女性をドライブに誘っては山中に連れ込承強姦・同未遂を敢行したかどで懲役四年の実刑を言い渡され二年八か月服役したのち仮出獄中の身であったが、昭和五六年三月下旬ころ、路上で行き会ったA子(昭和四○年七月一日生、当時一五歳、のち一六歳)が中学校を卒業したばかりで高校入学前の女生徒であるのを知りながら、その場でドライブに誘い、海岸で駐車させた自動車の中で「俺の女にならんか」と言っていきなり性交をしたのを手始めに、同年九月ころまで主に車の中、ときに被告人方で同女と約二○回余の性交関係を重ねたが、二人が会っている問は専ら性交に終始し、中には高校通学途上のA子を被告人が車で待ち伏せ、制服のままそそくさと車中性交を済ませてそのまま登校させるという態様のものが少なくなかったほか、結婚の話などは全くしたことがなかった。
この間被告人は、A子と知り合い性交渉をもった当時平行的にB子なる一四歳の青少年とも継続的な性交渉を有していたところ、同年七月二日右B子との件で警察に逮捕され、同月一三日、本件と同じ福岡県青少年保護育成条例違反により罰金三万円の略式命令(これはそのまま未確定)を受け同日釈放されたが、その当日も被告人はA子を電話で呼出し、福岡市内のホテルで同女と性交をしている。
被告人は同年九月二九日、右A子の供述から、右七月一三日の性交の件で福岡県青少年保護育成条例違反として通常逮捕され、同年一○月八日、次の公訴事実をもって、小倉区検から小倉簡易裁判所に略式請求された結果、同裁判所は即日、当該事実により罰金五万円に処する旨の略式命令を発付した。
「被告人(昭和三○年月日生、当時二六歳)は、A子(昭和四○年月日生、当時一六歳)が一八歳に満たない青少年であることを知りながら、昭和五六年七月一三日午後三時ころ、福岡県遠賀郡内ホテルヨンゼル」の客室において右A子と性交し、もって青少年に対し淫行をしたものである。」

という真剣交際にならないものだった。

 真剣交際の主張で無罪になったのは2件だけ。
  神戸地裁尼崎支部h29.8.23
  名古屋簡裁H19.5.23
 裁判所はこれが真剣交際だというんですよ。
 間違った解説をすると誰かが捕まるわけだから、そう解説するしかないじゃないですか。

名古屋簡裁H19.5.23

金井翔検事 青少年保護育成条例違反事件について,みだらな性行為(淫行)の該当性が問題となった事例 捜査研究816号 p31
第2 事案の概要等
1 A及びVの身上関係等
Aは,本件当時38歳の男性であった。
Aに婚姻歴はなく,本件当時, V以外に交際している女性はいなかった。
Vは,本件当時17歳の女性であり,高校3年生であったが,約2か月後が18歳の誕生日であった。
Vは,本件以前にも男性と交際した経験はあったが,本件当時, A以外に交際している男性はいなかった。
2 A及びVが交際に至る経緯及び交際開始後の状況等A及びVは,本件性行為に及んだ当時,交際関係にあったところ,両名が交際に至った経緯及び交際開始後の状況等は以下のとおりである。
(1) Aは,平成27年5月頃から,警備員として働き始め,その勤務先でアルバイトをしていたVと知り合った。
Aは, Vと知り合って以降休憩時間等にVと話をするようになり, Vからは家庭内の事情や進学先等について相談を受けるなどしていた。
(2) Aは,平成28年5月末日に前記勤務先を退職することとなり,その旨をVに伝えていた。
Aは, 同日,仕事を終えると, Aの仕事が終わるのを待っていたVと合流し, 2人で飲食するなどしたが,その際Vから手紙とクッキーを渡され, さらに, Vと連絡先を交換した。
VがAに渡した手紙には, これまで相談に乗ってもらったことへの謝辞のほか, 「(Aのことが)大好きです。」などと書かれていた。
(3) Aは,連絡先を交換して以降, Vとの間で連絡を取り合っていたが, 同年6月上旬,再びVと2人で会うことになった。
Aは, 同日, Vと合流すると, インターネットカフェに入店し,その個室内でVに抱き付くなどした。
Aは, Vと同インターネットカフェを出たが, Vから「セフレ(セックスフレンド)の関係になりたくない。」などと言われたため,それだったら付き合おうなどと述べて交際を申し込み, vがこれを承諾したため,両名は交際することとなった。
④Aは, Vとの交際開始後,週2, 3回の頻度でVと会い, 同年6月下旬ないし同年7月上旬頃, ラブホテルにおいて初めて性行為に及び,以降,何度かVと性行為に及んだ。
Aは, Vとの交際開始後, Vを介して, Vの交際相手としてVの姉やVの友人に紹介されたことがあった。
他方で, Aは, Vといる際にVの実母と何度か会う機会があったが, 同人に挨拶をすることはなかった。
3 本件性行為時の状況等A及びVは,前記の経緯で交際を開始し,その後,本件性行為に及んだものであるが,その状況等は以下のとおりである。
(1) Aは,平成28年9月中旬, Vと会うと,一緒にカラオケ店に入店した。
A及びVは,前記カラオケ店の個室内でカラオケをしていたが, Aは,しばらくして, Vの胸を触るなどした上, Vと性交し,本件性行為に及んだ。
(2) 前記カラオケ店の店員は店内の巡回を行っていたところ, A及びVの個室内の歌詞等を表示するモニター画面の電源が切れていたことから不審に思い,個室内に立ち入った。
すると,前記店員は, Vが上半身裸の状態で座っている状況を認めたため,警察に通報した。
(3) Aは,本件発覚後もVとの交際を継続しており, Vの18歳の誕生日も2人で過ごすなどしたが,交際開始から約6か月後の同年12月頃, Vから交際解消を申し込まれたため, Vとの交際を解消した。

https://sirabee.com/2020/02/04/20162250261/
■弁護士の見解
番組では性犯罪事件に詳しいという奥村徹弁護士が、条例の改正案を作った人の立場になって分析。「恐らく真剣な交際とは映画館、美術館とかデートを重ねて、1日で(性行為を)やったらダメですよ」「家族にも紹介して、最終的に性行為に至る」と見解をコメントした。
■首を傾げる視聴者続出
「1日でやったらダメ」という直接的すぎるワードを受け、視聴者からは「朝からとんでもないフレーズを聞いたな」「この時間帯に大丈夫? 放送事故じゃない?」といった声が多数上がっている。

その他の喩えにも首を傾げた人が多いようで、「家族に紹介しないと真剣交際じゃないってこと?」「デートの数は少なくとも、真剣に付き合ってる人だっているだろうに」などのコメントも見られた。

青少年たちの安全を守るための条例ではあるが、潔癖であることが真の健全さや安全さに繋がるか疑問に感じた人は多いだろう。