児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

宮城県青少年健全育成条例違反につき「二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告

宮城県青少年健全育成条例違反につき「二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告人や被害者のような年齢層の若者が交際する中で、性的な行為に至ることを期待したり、自然に性衝動などが生じることは通常のことであるし、被告人は、「彼氏がいい。」との被害者の言葉で性的な行為を止めていて、被害者の意向にも配慮している。このような事情にも照らすと、被告人は、専ら自己の性欲を優先したとまではいい難い。加えて、捜査段階において、被害者と被告人の従前の関係性について十分な捜査がされておらず、交際状況に関する証拠が欠けている。」という無罪理由(仙台地裁H30.2.8)


 強制わいせつ罪を無罪にした説明が主で、青少年条例違反については、理由が短めです。
 「第31条1項何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。」という法文の「わいせつな行為」が起訴された場合にも、
「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)
判例を意識して、「単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められない」かを検討しています。
 真剣な交際でなかったことについて検察官に立証責任があります。
 こういう交際関係にあっても、強制わいせつ罪で検挙されることがあることに注意しましょう。

仙台地方裁判所平成30年02月08日
 上記の者に対する強制わいせつ(予備的訴因 宮城県青少年健全育成条例違反)被告事件について、当裁判所は、検察官矢部良二及び髙山由子並びに私選弁護人薄井淳(主任)及び同草場裕之各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人は無罪。

理由
第1 公訴事実及び争点等
 1 本件各公訴事実
  本件公訴事実のうち、主位的訴因は、「被告人は、A(当時17歳。以下「被害者」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え、平成28年11月8日午後6時30分頃(以下、年号はいずれも平成28年である。)、宮城県(以下略)E店屋上駐車場(以下「本件駐車場」という。)に駐車中の自動車(以下「本件車両」という。)内において、助手席に座っていた被害者に対し、いきなり覆いかぶさって助手席シートを倒し、その両乳房をもみ、乳首をなめ、更に下着の中に手を差し入れて陰部に指を挿入して弄ぶなどし、もって強いてわいせつな行為をした。」というものであり、予備的訴因は、「被告人は、11月8日午後6時30分頃、本件駐車場に駐車中の本件車両内において、被害者が18歳未満の者であることを知りながら、単に自己の性的欲望を満足させるため被害者の両乳房をもみ、乳首をなめ、更に下着の中に手を差し入れて陰部に指を挿入して弄ぶなどし、もって青少年に対しわいせつな行為をした。」というものである。
 2 争点等
  主位的訴因については、被告人が被害者に対して行ったわいせつ行為の内容のほか、〈1〉被害者がわいせつ行為に同意したか、〈2〉被告人がその同意があると誤信したかが争われ、予備的訴因については、〈3〉年齢の知情性及び〈4〉淫行行為の該当性が争われており、被害者の供述の信用性の評価が大きく対立している。
  (1) 検察官は、11月8日午後6時40分に被害者が友人のBに「助けて」というメッセージをFで送り、Bに会うなどして本件被害を打ち明け、同日午後9時15分にBが被害者の携帯電話機を使って警察に本件被害を伝え、その後被害者が警察署で事情聴取を受け、他方、被告人が同日午後10時48分以降に被害者に謝罪するメッセージを繰り返し送信するなどしているから、被告人が被害者に対し意に反する重大なことをしたことが合理的に推認でき、そうした事実等とも整合する被害者供述が信用できるとし、これに依拠して、被告人が主位的訴因のとおりのわいせつ行為を行ったことのほか、被害者は「やめてください。」と言うなど被告人による性的な接触を明確に拒む態度を示していたから、被害者の同意も、被告人に被害者の同意があるとの誤信もないと主張し、また、予備的訴因について、被害者は、本件以前に被告人に年齢などを伝え、本件時に被告人が被害者に対し、お金をあげるなどと伝えているから、被害者が18歳未満の者であることを知りつつ、被告人が単に自己の性的欲望を満足させるために本件を行ったことは明らかであると主張する。
  (2) 他方、弁護人は、被害者の供述には大きな変遷があり、供述内容も不自然不合理で全く信用性がないとして、その供述に沿うわいせつ行為の存在を争うほか、主位的訴因に対し、性的行為に至る経緯や心理的経過を含め具体的かつ自然に述べる被告人の供述は信用できるとして、〈1〉被害者は、被告人と性的な接触をすることについて同意していた、〈2〉仮に被害者の同意がなかったとしても、被害者は、当初は被告人との性的な接触を拒否する態度を示しておらず、その途中で「やっぱり彼氏がいい。」と言い出し、それ以降は性的な接触をしていないため、被告人には被害者の同意があるとの誤信があったと評価すべきであると指摘し、また、予備的訴因に対しても、被告人は、〈3〉被害者が18歳未満であることを知らなかった、〈4〉被害者に対する真摯な恋愛感情があり、それに基づき性的行為に及んでいるから、単に自己の性的欲望を満足させるための行為ではなかったと指摘して、被告人はいずれも無罪であると主張し、被告人も公判でこれに沿う供述をする。
  (3) 当裁判所は、概要、主位的訴因について、被害者の供述には、不自然な部分や自己に不都合な事実を隠そうとする供述経過等があるため、これに符合するようなメッセージ送信などの事実やBの供述があることに照らしても、被害者の供述を全面的に信用するのは難しく、被害者が被告人と性的な接触をした時点で、被害者の同意がなかったと認めるのはためらわれる上、少なくとも、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて同意していたと認識していた可能性が排斥できず、被害者の同意に関し誤信があった合理的な疑いが残ること、予備的訴因については、交際状況に関する捜査が十分ではない上、捜査段階では年齢の知情性に関し何ら捜査がされていないところ、本件の証拠関係に照らすと、被告人が、被害者が18歳未満であることを知っていたと認めるには合理的な疑いが残り、さらに本件の性的な行為が条例が禁じる淫行行為に当たると認めるには合理的な疑いが残ることから、被告人はいずれも無罪と判断したので、以下、その理由を説明する。

第2 主位的訴因に対する当裁判所の判断
 1 前提事実
  証拠によれば、以下の前提事実が認められる。
  (1) 被告人と被害者は、3月頃、被告人がSNSを通じて被害者に対し連絡したことをきっかけに、Fでやり取りをするようになり、二人は本件以前に少なくとも5月頃及び夏頃(6月後半から7月中旬までの間)の2回会った。二人が会った際には、いずれも、被告人が運転する本件車両に被害者が乗り込み、被告人が被害者を自宅付近まで送り届けていた。なお、被告人と被害者は、本件に至るまで、被告人を「Y」と、被害者を「A’」と呼び合い、お互いの本名を教え合っていなかった。また、夏頃に会ってから本件当日までの間に、被告人と被害者が会うことはなかったが、その間、被告人と被害者のFでのやり取りは断続的に行われていた。
  (2) 被告人と被害者は、Fでのやり取りで本件当日に会うこととなり、二人は、11月8日午後6時頃、本件駐車場で待ち合わせた。その頃、被害者は、本件車両に乗り込み、被害者の用事を済ませるため付近の武道館まで本件車両で移動し、その用事を済ませた後、再度本件車両の助手席に乗り込み、被告人の運転で本件駐車場に戻った。
  (3) 被害者は、同日午後6時40分頃、Bに対し、「たすけて」というメッセージをFで送信したほか、同日午後7時4分頃にBと通話し(甲10)、その後、B宅に行き、Bに対し、本件車両内で被告人と性的な接触をしたことなどを相談した。また、被害者とBは、同日、警察に対し、被告人から強制わいせつの被害を受けた旨通報し、被害者は、同日午後9時50分頃から行われた本件駐車場の実況見分に立ち会うなどした(甲3)。
  他方、被告人は、同日午後10時48分頃以降、被害者に対し、「嫌な気持ちにさせてほんとに申し訳ありません。」「死刑でも何でもうけます。家族だけは助けてください。」などの内容のメッセージをFで送信し(甲10)、また、本件車両内に遺留された被害者の自宅のかぎの返還などに関し、被害者とメッセージのやり取りをした(甲11)。
 2 被害者の同意の有無等について
  以上を前提に争点について検討を加える。本件ではわいせつ行為の態様にも争いがあるが、より重要な争点である被害者の同意の有無等(前記〈1〉、〈2〉)を中心に検討を加えることとする。
  (1) 被害者供述の信用性
  ア 被害者は、公判において、概要、本件当日に本件駐車場に戻った後、本件車両から降りようとしたが、ドアが施錠されていたので、被告人に対し降りないのかと聞いたところ、被告人は被害者が座っていた助手席のシートをいきなり倒し、被害者に覆いかぶさり、被害者の両乳房を直接もみ、乳首をなめたため、被告人に「やめてください」と言ったり、被告人の手を払ったりした、被告人は行為を止めなかったので、自身の左脇に置いていたバッグの中で携帯電話機を操作して、Bに対し「たすけて」というメッセージをFで送信した、被害者は、被告人の手を払おうとしたが、被告人に手や足を使って押さえ付けられ、陰部に指を挿入された、被告人は被害者に対し陰茎をなめるよう言ったが、これに応じなかった、被告人が被害者の身体から離れた隙に、ドアのかぎを開けて降車し、走って逃げた、などと供述する。
  イ この点、性的な行為があったとされる時間帯に「たすけて」というメッセージをBに送信したことは、意に反する性的な行為を受けたとの供述をよく裏付けており、被害者が供述するような体勢でも、「たすけて」との単純なメッセージを送信する動作をすることは不可能ではないから、これ自体としても、被害者の意に反して被告人が性的な接触をしたことを一定程度推認させるものである。もっとも、突然被告人から助手席のシートを倒され、乳首をなめられるなどの性的被害を受け、振り払った手を被告人の手や足で押さえられたりする中で、バッグの中にあった携帯電話機を操作して、Fアプリを作動させて特定の者を選択してメッセージを送信する余裕があったかという点や、二人の体勢も含め性交渉のやり取りを具体的に述べる被告人の供述に比して、被害者は、必死に助けを求めた際の被害者と被告人の位置関係・姿勢や送信時の性行為の内容などについてあいまいな供述しかしていない点など、被害者の供述は、やや不自然さがぬぐえない。
  また、被害者は、Bに上記メッセージを送信したことに加えて、その送信から24分後に、Bに対し電話をかけ、その後同人と会って被告人との性的な接触があったことを相談し、同日中にBと共に警察に強制わいせつの被害を申告し、同日午後9時50分から警察の実況見分に立ち会うなどしている。Bは、この点、被害者が泣きながら電話をかけてきて、陰部を触られるなどの被害を訴えた旨供述しており(Bの供述は、このようなやり取りがあった限度では疑うべきところはない。)、犯行直後にBに被害を打ち明け、さほど時間を置かずに警察に被害申告した経過も、被害者の意に反する性的な接触があったこととよく整合する事実である。しかし、被害者の供述によると、シートを倒されて以降さほど長い時間被告人による性的な接触を受けていないとうかがわれる(被告人は駐車していた時間が10分か15分と述べる。)が、上記メッセージの送信時点では既に性的な接触があったはずであるから、その時点から電話をかけるまで24分もの時間を要したのは、当初の両乳房をもまれるなどしてから陰部に指を入れられるまでの一連の行為が意に反していたとすると、経過としてやや不自然さがある。一方、この点は、被告人が弁解するように、被害者が当初は被告人との性的な接触について拒絶の態度を示していなかったものの、途中から「やっぱり彼氏がいい。」と考えて、被告人との性的な接触を嫌がった被害者が動転し、本件車両を降りる前後にメッセージを送ったとしても、説明が付かないわけではないと思われる。また、後記エのとおり、被害申告しながら、ほぼ同時に被害者が被告人との関係性を隠すような行動をしたことは無視できない。
  ウ さらに、被害者は、本件以前の5月頃に被告人と会った際、被告人と車内で性交した旨供述する。この事実は、被害者に相当不利なものであるから、虚偽供述する理由はなく、被告人と被害者は5月頃に本件車両内で性交をしたと認められる(被告人は乳首をなめたりしたのにとどまるとして性交の事実を否定しており、この点が一致しないのは理解困難であるが、被告人の供述等を踏まえても、比較的濃厚な身体接触があったことに変わりはなく、性交したと認定することを妨げない。)。このほか、被告人と被害者が夏頃会った際、二人がキスした事実は被告人と被害者が一致した供述をしている上、被告人はその機会にも被害者の胸をなめたり、陰部に指を入れた旨供述するが、交際が浅い5月頃には被害者が被告人との性交を許したことに照らすと、この供述を排斥するのは困難である。このように、二人は過去2回会う度に本件車両内で性的な接触をした関係にあるから、本件当日も被告人が性的な接触に及ぶことは十分予想できる状況にある。そのような状況で被害者が本件車両に乗ったことや、シートに座っていた被害者のズボンを下げるには被害者の腰を上げるなどの動作を伴う方が容易であること、被害者は隙をついて逃げたというのに本件車両から降りた時点で膝まで下がったズボンを多分はいていたと述べていることも、被害者が被告人から性的な接触をされて嫌だったとの供述の信用性に疑いを生じさせる方向に働く事情である。
  この点、被害者は、5月頃の性交の際は彼氏がおらず、被告人と性交してもいいかなと思っていたのに対し、本件当時は、好きな人がいたので嫌だった旨供述する。被害者が当時17歳と若年であることや、被告人と最後に会ってから数か月が経過していることからすれば、被害者に既に好きな人がいたために、過去2回とは異なり、本件当時はそれに応じる意思を欠いたとしても不自然ではなく、その供述が不合理とはいえない。しかし、そのような被害者の心情を踏まえても、二人の従前の関係性等を考慮すると、本件当日において被害者が被告人との性的な接触を当初は受け入れ、途中から気持ちが変わって、被告人との性的な接触を嫌がったとの疑いが払拭できるわけではない。
  エ 加えて、被害者供述の信用性に疑問を差し挟むべき事情として、被害者が、本件直後に被告人との従前のFメッセージのデータを削除した点が挙げられる。一部が復元されたデータ(甲22)によれば、削除したデータの中には、知り合って以降の被告人との親密なやり取りが推認されるものがある。そして、被害者は、捜査段階において、夏頃に会って以降、被告人とFでのやり取りはなかったと述べ(弁24)、5月頃に被告人と性交した事実も供述していなかったところ、これらの事実を公判段階で初めて明らかにした。被告人は、捜査の早い段階で被害者と2回くらい性的な接触をした旨述べていたというのであり、従前の被害者と被告人との関係性は重要な事実であるから、被害者に対しても捜査官は必ずこれに関連する質問をするはずである。したがって、捜査段階では、被害者があえてこれを供述せず、また、被告人との良好な関係性を示すデータを消去したとしか考えられない。これらの事情からすれば、被害者は、本件直後や捜査段階において、何らかの自己に不利な事実を隠そうとしていたと認められる。そして、本件当日に警察に被害申告するのと並行してデータ消去等をしたことは、上記イの被害申告等の事実を、被害者供述を補強するものと扱うことにも疑問を生じさせる。
  オ その他、Bの公判供述によれば、被害者は、被告人の陰茎をなめた事実がないのに、本件当日及び翌日に、Bに対し、被告人の陰茎をなめさせられたと述べているから、Bが聞いた被害者の供述には、被害内容を誇張する部分があったとみる余地がある。また、被害者は、本件後に手首と足に痣があったと供述し、Bも、被害者から痣を見せられた上、痣の写真データをもらった旨供述しており、この点の両者の供述は一致するものの、これらの供述を裏付ける客観証拠はないほか、通常、被害者が警察に被害申告しながらその裏付けとなる痣について申告しないことは考えられないところ、12月18日の取調べで供述(弁28)するまで、被害者が捜査機関に痣を見せたり写真を提出したりした形跡はなく、痣に関する被害者供述にも不自然な面がある。
  カ そうすると、被害者供述の全体の信用性には疑問が残るといわざるを得ない。
  なお、検察官は、Bの公判供述は信用でき、これと一致する被害者の供述も信用できると主張する。しかし、Bと被害者の供述が一致するのは本件当日の出来事の一部にすぎない上、B供述の主要部分はBが被害者自身から聴取したことを基にしている。したがって、Bの供述は、独自に被害者供述を裏付けるようなものではなく、その聴取の仕方も、Bが誘導的な質問をして被害者が肯定か否定をするようなものであったとうかがわれるから、被害者供述の信用性を大きく支えるものではない。なお、B自身、被害者が本件前に被告人と性交していたことを知っていたら、被害者にそこまで協力しなかったと端的に述べているが、これも被害者が大げさに被告人との出来事を伝えたことをうかがわせる事情といえる。
  また、検察官は、被害者には虚偽供述をする理由がない旨も主張する。確かに、検察官が主張するとおり、被告人と被害者の本件以降のFでのやり取りの状況からすると、示談目的での虚偽供述の可能性は考えにくいものの、他方で、好きな人がいるのに被告人と性的な接触をした言い訳などとして、虚偽供述をする事態も全く考えられないわけではない。
  よって、検察官の指摘を踏まえても、被害者の供述の信用性に関する上記評価は変わらない。
  (2) 被告人供述の信用性
  ア 被告人は、公判において、概要、本件駐車場に戻った後、本件車両内において、被害者に対し、「好きな人いるの」と聞くと、被害者が「いないよ」と言ったので、被害者にキスをして、被害者の胸をもんだり胸をなめたりし、更にズボンの上から被害者の陰部を触ってから、ズボンを膝辺りまで脱がせて被害者の下着の中に手を入れ、直接陰部を触ったこと、すると、陰部を直接触り始めて少ししてから、突然、被害者が「彼氏がいい。」と言ったこと、そのため、びっくりして被害者のズボンをはかせ、被害者から「帰る。」と言われたので、「送っていくよ。」と言うと、被害者が「母親が迎えに来るからいい。」と言って降車し、被害者と別れたことなどを供述する。
  イ この点、被告人は、同日午後10時48分以降、被害者に対し謝罪するFメッセージを多数回送信しており、その中には「死刑でも何でもうけます。」との相当重大な事態が生じ、それに責任を感じなければ書かないような文面もある上、被告人と証人Cとのやり取りの中でも、「俺やっぱ生きていけないわ」などと重大な事態が生じた旨の認識を有しているかのようなFメッセージを送信しており、これらの事実からすると、被告人は、本件に関し、相当に罪の意識を感じていた様子がうかがえる。この点、被告人が述べるとおりであれば、交際相手がいないと考えていた女性と性的な接触をしたにすぎず、被告人のこれまでの交際状況等に照らし、常識的にはそれほど強い罪の意識を感じる必要はないから、これらの客観証拠は、被告人が供述する状況と矛盾するように見え、その供述の信用性に疑いを生じさせる。
  もっとも、被告人の供述を前提にしても、被害者に好きな人がいたから、性的な接触が実際には被害者の意思に反していて、これを重く受け止めたとの説明は一応可能である。すなわち、被告人の年齢や社会経験の乏しさに加えて、被告人が被害者の周辺人物や交遊関係を警戒していた心理状態も踏まえると、被告人が、結果的に被害者の意思に反する性的な接触を行ったことについて、結婚式を控えた自己の家族に迷惑がかかることも含め、強い焦りや罪悪感などを感じたことも、あながち理解できないわけではない。かえって、被告人は、本件当時、被害者から「彼氏がいい。」と言われた旨供述するが、この点は、被告人が被害者に送信したFメッセージの中に、「彼氏いたことも知らなくてすいません。彼氏いたからいないからとかの問題じゃないと思ってます。」との内容のものがあることと整合しないわけではない。
  そうすると、被害者とのメッセージのやり取りに関する心理描写を含め、詳しく述べる被告人の供述全体を信用できないとして完全に排斥することはできない。
 3 強制わいせつ罪の成否についての評価
  (1) 以上の検討からすると、被害者の供述を全面的に信用するのはためらわれ、被害者の供述から、被告人が被害者の陰部に指を挿入するなどした事実や、被害者が被告人から胸をなめられるなどした際に、「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
  (2) さらに、被告人と被害者の関係をみると、被告人は、本件以前に被害者と2回会った際、いずれも被害者に拒否されずに性的な行為に及び、5月頃には性交にも及んでいる。そうすると、被告人は、本件当時も、被害者が性的な接触に応じることに強い期待があったと合理的に推認できる。この点、検察官は、被告人と被害者は性的な行為に及ぶことが当たり前の関係にはなかったと主張するが、少なくとも、二人が会った際に性的な接触に及ぶ可能性は相応にある関係にあったといえ、被告人としても、被害者と再び会えば性的な接触に至ることは当然期待していた状況にある。
  また、被告人と被害者は約半年間会っていなかったものの、Fでのやり取りを継続しており、それには日常生活に関する些細な内容も含まれているなど、ある程度親密な関係にあったと認められる。そして、本件以前の性的な接触は、いずれも被害者が被告人の車両に乗り、被告人が被害者を自宅付近まで送り届けるなどした際に、本件車両内において生じたものであるところ、本件も被害者が本件車両に乗り、被害者の用事のために被告人が送迎した後に、その車内で性的な接触が行われており、これらの事実経過はほぼ共通する。一方で、今回に限り、被害者と性的な接触を図るという被告人の強い期待感が解消されていたような特別の事情は証拠上うかがえない。
  さらに、被害者は、警察に被害申告しながらも、しばらくの間被告人に対し、処罰を求めるというよりは謝ってくれればよいというメッセージのやり取りを繰り返している。このことは、意に反して陰部に指を入れられたりする性的被害に遭ったことと矛盾はしないものの、一方で、被告人がいうように、被害者が性的な行為を受け入れている最中に彼氏がいることを思い出し、嫌悪感や躊躇を感じて性的な行為をやめたとしても、彼氏がいるのに性的な行為をしてしまったことの謝罪が問題になっているものとして、自然に理解できる。
  (3) 以上の事情からすれば、本件後の被告人の罪悪感の感じ方にはやや不自然さが残るにしても、本件当時、被告人は、被害者が被告人と性的な接触をすることについて、同意していると信じていたとしても、特に不合理であるとはいえない。
  したがって、被告人に対し、被害者に対する強制わいせつ罪が成立すると認めるには、合理的な疑いが残る。
第3 予備的訴因に対する当裁判所の判断
 1 被告人は、本件当時、被害者を大学生と思っており、被害者が18歳未満であるとは知らなかった旨供述する。一方、被害者は、5月頃に会った際に自分の誕生日の話になったことや、被告人から何歳かと聞かれて年齢を答えたことを供述する。
  確かに、被害者は5月が誕生月であるが、上記第2のとおり、被害者の供述は全体として信用性に疑問の余地がある上、SNSを通じて知り合い、本名も教え合っていない若者同士の関係性において、お互いの誕生日や年齢の話をすることについての明確な経験則など存在せず、その裏付けもないのに、被告人に年齢を教えたとの被害者の供述を直ちに信用することはできない。
 2 また、被害者は、3月頃に、被害者が制服を着用している写真(甲11)を掲載するSNSを見た被告人から連絡があった旨供述し、検察官もこの点を年齢知情の根拠として指摘する。しかし、被告人がSNSで被害者の写真を見たことがあったとしても、被告人が見た写真が甲11号証そのものであることに関する被害者供述には裏付けがないし、その写真がいつ撮影されたもので、どの程度の期間掲載されていたかの被害者の説明もない。また、その写真は、それ自体として18歳未満という認識を生じるような内容でもない。
  さらに、被害者は、本件以前に高校まで被告人に迎えに来てもらい、制服姿で会ったことがある旨供述し、他方、被告人は、3月頃、D大学の門の前へ行って被害者と会ったが、その際、被害者がコートを着ていて中に何を着ていたか分からなかったと供述する。この点、その敷地内には大学と付属高校が存在し、門の前だけでは被害者がどちらの学校に所属しているか直ちに判別できないし、前年度である3月頃の時点で被告人が制服姿の被害者を門の前まで迎えに行ったとしても、翌年度である本件当時の時点で、被害者が18歳未満であったとの認識を被告人が有していたことには当然にはならない。
  なお、被告人は、本件後に被害者から「高校にも行けない」旨のFメッセージを受け取ったのに対し、大学生ではないのかなどと聞き返したり驚いたりした形跡はなく、この点は被害者が高校生であることを被告人が認識していたとうかがわせる事情ではあるが、こうした事後のやり取りの状況のみから被告人が被害者の年齢を具体的に認識していたと推認するのは適当ではないと考える。
 3 そもそも、本件当時、被告人が被害者の年齢を知っていたかどうかについては、捜査段階において何ら捜査がされていないどころか、被害者と被告人との従前の関係性について、被害者側の供述を重視してこれを疑う姿勢が欠け、被害者が捜査官に示した以外に従前のFでのやり取りがあるかどうかを確認したり、削除されたFでのやり取りを復元することなどもしていない結果、本件以前のFでのやり取りなどの、二人の交際状況や年齢の認識に関する重要な資料となるはずの証拠が欠ける事態となっている。
  しかるに、この点に関する被告人と被害者の供述は対立していて、被告人が被害者の年齢を知っていたことを示す明確な証拠がない以上、被告人が被害者の年齢を認識していたとの事実を認定するには合理的な疑いが残るといわなければならない。
 4 もっとも、宮城県青少年健全育成条例41条6項は、当該青少年の年齢を知らないことに過失のないときを除き、年齢を知らないことを理由として、同条1項の規定による処罰を免れることはできない旨定めている。そこで、〈4〉の争点である「みだらな性行為又はわいせつな行為」の該当性についても以下検討する。
  宮城県青少年健全育成条例における「みだらな性行為又はわいせつな行為」とは、青少年を対象とした性行為やわいせつな行為を広く対象とするものではなく、(1)「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不正な手段により行う性交又は性交類似行為」、(2)「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」をいうと解される(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決参照)。そして、これに該当するか否かは、行為当時の両者の年齢、性交渉に至る経緯、その他両者間の付合いの態様等の諸事情を考慮し、健全な常識を有する一般社会人の立場から決せられることになる。
  上記第2のとおり、被害者の供述は、全体として信用性に疑問の余地があり、被害者が供述するように、被告人が嫌がる被害者の手や足を押さえ付けるなどしたり、お金をあげるからと言った上で性的な行為に及んだりしたと認定することには合理的な疑いが残る。そして、被告人と被害者の年齢差、本件に至るまでのやり取りや関係性に照らして、その心身の未成熟に乗じた不正な手段(上記(1))により性的な行為に及んだと認めることは困難である。次に、(2)の点についてみると、被告人は4月に大学を卒業したばかりの23歳、被害者は5月に17歳になった高校2年生であり、交遊関係等が発展して交際することになっても不自然ではない年齢差である。被告人は、友人の交際相手を探す過程で被害者とSNSを通じて会うこととなったが、出会い系サイトなどを通じて交際を始めたわけではなく、知り合った際には、既に被害者には性行為の経験があったと解される。また、性交に至る経緯や付合いの状況についてみると、3月中旬に被告人と被害者が初めて会った際には(その頃に会ったとする被告人供述を排斥できない。)、車に乗せて世間話をした程度にすぎなかったが、その後はFでのやり取りを続け、5月頃に会った際には、二人は車に乗ってGで飲み物を買い、どういう人が好きかを被告人が被害者に聞き、被害者が年上の人が好きなどという会話をし、信号待ちの際には被害者が被告人に寄り添うこともあった。そして、被告人は、被害者方の近くまで送り届けた車内で、好きと言いながら被害者にキスをし、性交に至っている。また、二人は、また遊ぼうと約束して別れ、その後も、Fでのやり取りを続けた。夏頃にも二人は午後9時頃に会い、スーパーに寄るなどした後、車で被害者方の近くまで送り届け、その車内で、被告人が被害者にキスをし、胸をなめたり、陰部に指を入れるなどしたが、性交まではしなかった。その後、被告人と被害者は、Fで日常生活に関わるやり取りなどを繰り返した。本件の際も、Fでのメッセージを通じて午後6時に会うこととなったが、被害者の希望で、本件車両で武道館に行き、被害者の用事を済ませ、その後、本件駐車場に戻り、性的な行為に至っている。性的な行為の際には、被害者から積極的な性行為に及んでいないものの、当初は被告人の行為に特に拒絶的な態度を示しておらず(上記第2のとおり、被害者が当初から「やめてください」と言うなどして拒否する態度を示した事実を認定するには合理的な疑いが残る。)、被害者が「彼氏がいい。」と言うと、被告人は直ちに性的な行為を止めている。
  以上を踏まえて検討すると、二人は2回目に会った際に自動車内で性交に及び、かつ、3回目に会った際にも性的な行為に及んでおり、これらに照らすと、被告人が性交渉を目的として被害者と会っていた疑いは否定できない。しかしながら、二人は、5月頃や夏頃以降もFで日常的なやり取りを行っており、その後本件に至るまでの間に被告人が積極的に性的な行為を求めたようなところもなく、会った際には性的な行為以外のやり取りもしている。その上、被害者に対し本件当時に好意を抱いていたという被告人の供述を排斥することはできない。被告人や被害者のような年齢層の若者が交際する中で、性的な行為に至ることを期待したり、自然に性衝動などが生じることは通常のことであるし、被告人は、「彼氏がいい。」との被害者の言葉で性的な行為を止めていて、被害者の意向にも配慮している。このような事情にも照らすと、被告人は、専ら自己の性欲を優先したとまではいい難い。加えて、捜査段階において、被害者と被告人の従前の関係性について十分な捜査がされておらず、交際状況に関する証拠が欠けている。
  そうすると、本件の性的な行為について、被告人が被害者を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような行為をしたと認めるには、合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
 5 以上によれば、予備的訴因の立証が尽くされたとは認められない。
第4 結論
  結局、本件各公訴事実については、主位的訴因及び予備的訴因のいずれについても犯罪の証明がないことに帰するから、刑事訴訟法336条により、被告人に無罪の言渡しをする。
(求刑 主位的訴因につき懲役2年、予備的訴因につき罰金30万円)
第2刑事部
 (裁判長裁判官 小池健治 裁判官 内田曉 裁判官 西村有紗

「投手は2017年12月にインターネットを介して知り合った女子高校生と関係を持った」という報道

 報道は夏休み前に持って来られますね。
 事件が古いので逮捕されないでしょう。

 弁解としては、
  18歳未満とは知らなかったとか
  真剣交際だったとか
  実害がない罪だとか
  わいせつの定義がない
  児童買春罪ができたので青少年条例は存在意義を失った
とか言ってみて。
 保護法益を理解した反省文とかも有効

最高裁判所判例解説刑事篇
昭和60年度201頁
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件昭和60年10月23日
高橋省吾
前掲各裁判例が説示するように、刑法の強姦罪等は主として個人の性的自由を保護法益とし、その処罰の対象となる性行為も自由意思の制圧ないしこれに準ずる場合としているのに対し、本条例の淫行罪は青少年の特質にかんがみてその健全な育成を図る見地から、青少年の育成を阻害するおそれのある淫行を禁じ、たとえそれが青少年の同意に基づくものであったとしてもその相手方を処罰することにしたものであるから、両者は処罰の趣旨・目的、内容(対象となる性行為の態様)等を異にするというべきである。そして、本条例の淫行処罰規定の保護法益を右のように解する以上、右規定違反の行為について必要な捜査が行われ公訴の提起がなされたとしても、そのことが直ちに青少年の保護育成上有害であるとはいえないのであって、親告罪とするか否かは右規定のもたらす現実的影響、地方的特性等をも考慮した立法政策上の問題というべきものと思われる。
また、刑法一八〇条一項は、被害者の感情を考慮して強姦罪等を親告罪としているが、二人以上の者によって現場において強姦罪等が犯された場合(同条二項)や被害者に致死傷の結果を生じた場合(同法一八一条)には、被害者の感情を尊重すること以上に犯人を処罰することの必要性が大きいと考えられるところから、もはや親告罪とされていない。本条例の淫行罪は、前叙のとおり、強姦罪等とは罪質・保護法益を異にしている上(注一五)、青少年が合意の上で淫行をしたときには、その青少年が強姦罪等のそれと同様の被害者とはいえないと思われること、また、親告罪としたのでは、合意の上での淫行の場合、規制目的を達しえないことも考えられることなどに徴すると、本条例の淫行罪が青少年の告訴を要件としていないとしても、必ずしも刑法との整合性を欠いて不合理であるとはいえないと思われる。因みに、児童福祉法の淫行罪(同法三四条一項六号、六〇条一項)は非親告罪である。
(注一五)
本条例の淫行罪は、淫行は青少年にとってはそれ自体で健全育成に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、青少年以外の者に対して、このような危険を回避すべき義務を課し、右義務違反に違法性を認めているものと解することもできよう(亀山継夫「児童に淫行をさせる罪(その二 研修三四七号六〇頁参照)
・・・
亀山継夫法務省刑事局青少年課長「判例研究 児童に淫行をさせる罪 その2」(研修347号60頁)
児童福祉法の淫行罪についての以上のような理解を前提とすると、条例の淫行罪の性格は、おのずから明らかになるといえよう。両者は、共に児童の健全な成長を保護法益とするものであるが、条例の性質上、後者は、前者に対する補充法的性格を有するものであること、後者が単に児童の淫行の相手方となることを構成要件としていること等からみれば、前者が「淫行」と「させる」の2要件によって、児童の健全な成長に対する現実の侵害ないしはそれに対する具体的危険を対象とするのに対して、後者は、児童が淫行をすることによる抽象的な危険を対象とするものと解する。
児童を相手方とする全く任意の性的交渉は、もし相手方が成人であれば単に不道徳な行為というにとどまるものであり、まして児童の側からの誘いかけがあったような場合には、その誘いに応じたというだけで処罰の対象となる点において広きに過ぎるという感があることは免れないが、これを前掲13ないし15の裁判例のように、構成要件的に限定しようとすると、児童福祉法の淫行罪との違いが明らかでなくなってしまい、ことに、15ないし18のような限定をすると、淫行を「させる」ということと同じになる。(自己が淫行の相手方となるか、第三者を相手方にさせるかという点に違いがあるという考え方もないではないが、これについては後述する。〉条例の補充的性格、青少年保護育成条例の趣旨、目的、条例の淫行罪の体裁等を総合して考えると、条例の淫行罪は、性道徳上社会的に是認されないような性的交渉は、おとなにとってはともかく、児童にとってはそれ自体で健全成長に対する抽象的危険を招くものであるという認識に立った上で、成人に対して、このような危険を回避すべき義務を課したものと解するのが最もすなおな見方であろう。

神奈川県青少年保護育成条例の解説h10
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第 19条
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せではならない。
3 第 1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、文は興奮させ、かつ、健全な常識を有する 般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
一部改正(昭和 53年条例 38号)、一部改正(平成 8年条例 31号)

〔要旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為若しくは、わいせつな行為をすること又はこれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
解説
本条は、青少年を対象とした性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
第 1項関係
(1) 「何人も」 とは、条例第 5条の解説のとおりである。
(2) 「みだらな性行為」については、条文の中でも規定されているが、 「結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交」の解釈としては、 「人格的交流のない性交」 を象徴するものであり、これをさらに詳しくいうと次の場合を指すものである。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺商し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為
( 3 )本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交じた場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女間の性行為は、該当しないものである。

https://news.livedoor.com/article/detail/16781369/
DeNA・投手が無期限の謹慎処分 女子高生と関係 青少年保護育成条例に抵触か
2019年7月16日 16時53分 デイリースポーツ
 DeNAは16日、投手(22)が神奈川県の青少年保護育成条例に抵触する可能性があるとして、同投手を無期限の謹慎処分にしたと発表した。
 球団によると、投手は2017年12月にインターネットを介して知り合った女子高校生と関係を持ったといい、本人も相手が高校生と認識していたと話しているという。

 投手は2015年秋のドラフトでDeNAから5位指名を受け、茨城・霞ケ浦高校から入団。17年10月3日の中日戦(横浜)でプロ初登板初先発し、5回を4安打無失点でプロ初勝利をマーク。将来を嘱望されたが、18年は右肩手術の影響から1軍での登板はなかった。
・・・
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2019/07/16/kiji/20190716s00001173286000c.html
DeNA・が無期限謹慎処分 当時未成年の女性と関係 「本人は非常に反省」
[ 2019年7月16日 16:59 ]
 DeNAの三原一晃球団代表は16日、投手が17年12月に当時未成年の女性と関係を持っていたことが発覚し、条例違反で無期限謹慎処分を課したと発表した。「この場をお借りして、お相手の方、ご家族、ファンの皆さまに深くお詫び申し上げたいと思います」と謝罪した。
 7月14日に、投手が週刊誌の取材を受けたことで、球団に報告。複数回のヒアリングを重ね、事実と認めて発覚に至った。三原代表によれば、インターネットを介して知り合った女性で、当時高校生だったことを認識していたという。金銭面のやりとりはなかった。三原代表は「本人は非常に反省しており、事実関係も誠実に答えてくれました」と様子を明かした。

 謹慎中は自宅謹慎処分となり、練習にも参加しない。

 は茨城・霞ケ浦高から15年のドラフトでDeNAから5位指名を受け入団。17年10月3日にの中日戦ではプロ初登板初先発で初勝利をマーク。18年4月には右肩のクリーニング手術を受けた。1軍登板は1試合で1勝0敗、防御率0.00、今シーズンの1軍登板はない。

大阪府青少年健全育成条例を本年度中に改正する意向

 事件にならないので、大阪にも詳しい弁護士もいないわけですが、奥村は、困惑による大阪府条例違反の公判請求事件を2件担当しています。
 大阪府は、大法廷の第2類型は曖昧だから処罰しないという立法判断だったんだけどなあ。
 学説には、児童買春罪を国法で処罰するようになったのだから青少年条例は廃止すべきという立場もありますよね
 国法で議論すべきですね。

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、
①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、
②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

https://jp.reuters.com/article/idJP2019071001001769
大阪府の吉村洋文知事は10日の定例記者会見で、府青少年健全育成条例を本年度中に改正する意向を示した。18歳未満との性交渉などわいせつな行為を禁じた同条例の適用条件が、他都道府県に比べて厳しすぎるとの指摘を踏まえた。青少年健全育成審議会の提言を受けた上で来年2月の定例議会での改正案提出を目指す。

 大阪府によると、府青少年健全育成条例の該当部分は1984年の制定以来改正されていない。他の都道府県では、同意があっても18歳未満と真剣な交際以外でわいせつ行為をすることを禁じているが、府条例は脅したり、だましたりするなどの行為がないと処罰できない。

大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000487.html
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
(平三条例四二・旧第十八条繰下、平一五条例一八・旧第二十三条繰下・一部改正、平一七条例一一〇・旧第二十五条繰下、平二〇条例八五・旧第二十八条繰下、平二三条例一〇・旧第三十五条繰上・一部改正、平二六条例一三八・平二八条例七三・一部改正、平三〇条例六・旧第三十四条繰下)

出会い系アプリの自称「18歳」(実は16歳)との児童買春事件で逮捕されて、対償供与約束時点では児童と知らなかったと弁解して、起訴猶予になった事例

 この主張は、基本的な刑法理論だし、判例で否定されてないので、使えると思うんですよ。
 会ってからの見かけの年齢とかをきちんと説明して。

H26からの強制わいせつ罪多数(被害者3名)につき、弁償2300万円・懲役9年(岡崎支部r01.6.3)

 求刑12年に弁護人は執行猶予を求めたようです。
 児童ポルノ製造罪は公訴時効なので起訴されていません。
 3歳4歳からの被害者からは供述は取れませんが、証拠の標目に画像が出てきますので、撮影されていたことがわかります。

名古屋地方裁判所岡崎支部令和01年06月03日
主文
被告人を懲役9年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、後記のE園に保育士として勤務していたものであるが、
第1 別紙記載のD(当時4歳。以下「D」という。)が13歳未満の女子であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、平成26年2月27日午後2時12分頃から同日午後2時24分頃までの間、愛知県E園丙組において、同人に露出した自己の陰茎を口でくわえさせるなどし、もって13歳未満の女子に対し、わいせつな行為をした
第2 別紙記載のA(当時3歳。以下「A」という。)が13歳未満の女子であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、平成28年5月20日午後2時16分頃から同日午後2時27分頃までの間、前記E園乙組において、同人に露出した自己の陰茎を手で触らせ、口でなめさせるなどし、その陰部に直接自己の陰茎をこすりつけるなどし、もって13歳未満の女子に対し、わいせつな行為をした
第3 別紙記載のB(当時3歳。以下「B」という。)、A(当時4歳)及び別紙記載のC(当時4歳。以下「C」という。)がいずれも13歳未満の女子であることを知りながら、これらの者らにわいせつな行為をしようと考え、平成28年9月上旬頃、前記乙組において、
  1 Bに露出した自己の陰茎を手で触らせるなどし、
  2 Aに露出した自己の陰茎を手で触らせるなどし、
  3 Cに露出した自己の陰茎を手で触らせるなどし、
  もって13歳未満の女子に対し、それぞれわいせつな行為をした
第4 Bが13歳未満の女子であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、
  1 平成28年12月16日午後1時40分頃、前記乙組において、同人(当時3歳)の口に自己の陰茎をくわえさせるなどし、
  2 平成29年1月10日午後1時30分頃、前記乙組において、同人(前同)の口に自己の陰茎をくわえさせるなどし、
  もって13歳未満の女子に対し、いずれもわいせつな行為をした
第5 A(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、平成30年3月16日午後2時20分頃、前記E園●●●倉庫において、同人の身体を同倉庫内の段ボールの上に仰向けに寝かせた上、そのパンツをずらして陰部を直接なめるなどし、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした
第6 A(当時5歳)が13歳未満の者であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、平成30年5月18日午後6時20分頃、前記E園甲組において、同人の身体を同組内の畳の上に仰向けに寝かせた上、そのパンツをずらして陰部を直接なめるなどし、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした
ものである。
(証拠)(括弧内の番号は、証拠等関係カード中の検察官請求証拠の番号を示す。)
判示事実全部について
 被告人の公判供述
 写真撮影報告書(甲2)
 捜査報告書(甲3)
判示冒頭事実について
 ●●●の警察官調書(甲10)
判示第1の事実について
 被告人の警察官調書(乙26ないし28)
 ●●●の警察官調書(甲87)
 写真撮影報告書(甲81、85、90)
 捜査報告書(甲82、86、89、93)、捜査報告書謄本(甲80)、捜査報告書抄本(甲83、84)
 「これらの写真に写っている女の子は間違いなく私の娘●●●です。」と題する書面抄本(甲88)
判示第2、第3の2、第5、第6の各事実について
 捜査報告書(甲95)
判示第2ないし第4の各事実について
 写真撮影報告書(甲21)
判示第2の事実について
 被告人の警察官調書(乙19、20)
 写真撮影報告書(甲61)
 捜査報告書(甲52、53、56、57、62)、捜査報告書抄本(甲54、55、58)
 「これらの写真にうつっているのは娘の●●●にまちがいありません」と題する書面抄本(甲60)
判示第3の事実全部について
 被告人の検察官調書(乙25)、警察官調書(乙22ないし24)
 捜査報告書(甲63、71、79)、捜査報告書抄本(甲64ないし70)
判示第3の1の事実について
 ●●●の警察官調書抄本(甲72)
 捜査報告書抄本(甲73)
判示第3の2の事実について
 ●●●の警察官調書(甲74)
 捜査報告書抄本(甲75)
判示第3の3の事実について
 ●●●の警察官調書(甲76)
 捜査報告書抄本(甲77)
判示第4ないし第6の各事実について
 捜査報告書(甲7)
判示第4の事実全部について
 捜査報告書(甲22、51)、捜査報告書抄本(甲46)
 動画の切り抜き画像が添付された書面等の抄本(甲47)
判示第4の1の事実について
 被告人の警察官調書(乙14、15)
 捜査報告書(甲37、39、41、43ないし45)、捜査報告書抄本(甲36、38、40、42)
判示第4の2の事実について
 被告人の警察官調書(乙16、17)
 報告書(甲31)、捜査報告書(甲24、26、28、30、33、35)、捜査報告書抄本(甲23、25、27、29、32、34)
判示第5、第6の各事実について
 捜査報告書(甲20)
判示第5の事実について
 被告人の検察官調書(乙11)、警察官調書(乙9、10)
 写真撮影報告書(甲17、18)
 捜査報告書(甲11、13)、捜査報告書抄本(甲12、19)
判示第6の事実について
 被告人の検察官調書(乙7)警察官調書(乙2ないし4)、警察官調書抄本(乙6)
 写真撮影報告書(甲9)
 捜査報告書(甲4、5)、捜査報告書抄本(甲6、8)
(適用法令)
1 罰条
  判示第1ないし第4の各所為 各行為ごと(判示第3の各事実については各被害者ごと、判示第4の各事実については各行為ごと)にいずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
  判示第5、第6の各所為 いずれも刑法176条後段
2 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
3 未決勾留日数の算入 刑法21条
4 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件各犯行は、被告人が、E園の保育士という立場にありながら、被害者である園児らが被告人に懐いていることに乗じて、その歪んだともいえる性欲を満たすため、性的行為の意味すら理解していない被害者らに対して行った極めて卑劣な行為であるところ、一連の犯行が、中断した時期を挟んで4年間余りの期間にわたって行われている上、犯行態様をみても、自己の陰茎を被害者の陰部に押しつけたり、被害者らの口にくわえさせたり、被害者らの陰部をなめたりするなどの強度のわいせつ行為に及んでいる点で、その犯情は相当に悪質というほかはない。
 幼児に対する性的被害に関する研究を行っている専門家は本件のような性的被害が被害者らの今後の健全な生育に悪影響を及ぼす高い可能性を指摘していることを踏まえると、本件各犯行が被害者らの今後の成長に与える悪影響も強く懸念されるところであり、保育士として信頼していた被告人により自分の子どもが被害を受けたことを知った各被害者の親の処罰感情も極めて厳しい。
 以上によれば、被告人の刑事責任は相当に重く、本件が刑の執行を猶予するのが相当な事案とは到底認め難く、被告人に対しては長期の実刑をもって臨むことが相当である。
 他方、被告人は、被害者らに対して総額2300万円●●●の金銭弁償を行い、うち●●●との間では民事的示談も成立させた上で、本件各犯行につき事実関係を全て認め、反省の情を示していること、被告人の妻が今後の監督を約束しているほか、被告人が社会復帰後において精神科医師による治療等を受けることが予定されていることで、被告人の今後の更生に結び付く事情もうかがえること、被告人にこれまで前科前歴がないことなどの事情も認められるので、これらの被告人のために酌むべき事情も考慮して量定した。
 よって、主文のとおり判決する。
(検察官●●●弁護人●●●各出席)
(求刑 懲役12年)
刑事部
 (裁判官 鵜飼祐充)

奈良県は、子どもポルノ単純所持罪を廃止して、児童ポルノ要求行為を禁止する青少年条例改正を行うようです

 
 子どもポルノ所持罪はH27にひっそり削除されていました。あとのきは、全国に先駆けて所持罪を作ったのに、要求行為への対応は遅れています。

児童ポルノ:画像要求に罰金 県、条例改正目指す /奈良
2019.07.02 毎日新聞社
 子どもが脅された上、自分の裸を撮影してスマートフォンなどで送信してしまう「自画撮り」の被害を防ぐため、県は画像の提供を要求する行為に罰金を科す方針を決めた。県議会9月定例会に、条項を盛り込んだ青少年健全育成条例の改正案を提出し、来年4月の施行を目指す。

 児童買春・児童ポルノ禁止法は、18歳未満の裸が写ったわいせつ画像や動画の製造・提供などを禁じているが、画像などを求める行為までは禁止していない。条例改正案では、要求する行為を取り締まり、被害を未然に防ごうと「何人も青少年に対し、児童ポルノ等の提供を求めることを禁止する」の条文を盛り込む。罰金は30万円以下。同様の条例は既に
 全国19都府県で導入されている。

 県によると、2018年に児童ポルノ被害に遭った子どもは7人(前年比3人減)。被害実態の内訳は明らかにしていないが、自画撮りの被害者はここ数年、毎年出ているという。

 被害者の多くが、SNS上で知り合っており、保護者の目も届きにくい上、一度拡散した画像や動画の削除は難しい。そうした現状を踏まえ、県は子どもが画像を送る前に容疑者の取り締まりが可能な態勢が不可欠と判断した。

 ◇深夜外出も規制を強化

 また、改正案では深夜外出に関しても規制を強化する。保護者以外の人が子どもを深夜に正当な理由なく連れ出したり、
 家などに滞在させたりした場合に30万円以下の罰金を科す。従来は、成人から呼び出されたが行動を共にしていなかったり、自分から出かけて他人の家に滞在したりするケースに対応できなかったため、規制を拡大するという。
 県青少年・社会活動推進課の池口潤課長補佐は「未成年を守る法整備がまだ追い付いていないことから、改正案の提出を決めた。改正を機に社会全体で子どもを守る意識が高まればと願う」と話す。【加藤佑輔】

 改正の広報

http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:y-6zzAYAghoJ:www.police.pref.nara.jp/sp/category/1-2-11-0-0.html+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
子どもを犯罪の被害から守る条例 [2015年7月15日]
平成26年6月「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が改正され「自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等」の罰則が設けられ、平成27年7月15日に施行されました。この改正に伴い、平成27年7月15日に「子どもを犯罪の被害から守る条例の一部を改正する条例」が施行され「子どもを犯罪の被害から守る条例」のうち「子どもポルノの単純所持」に関する規定が削除されました。

子どもを犯罪の被害から守る条例の一部を改正する条例をここに公布する。
平成二十七年三月二十五日
奈良県知事
奈良県条例第六十六号
子どもを犯罪の被害から守る条例の一部を改正する条例
子どもを犯罪の被害から守る条例(平成十七年七月奈良県条例第九号)の一部を次のように改正する。
第十四条第一項中「第十一条又は第十二条」を「前二条」に改め、同条第二項を削り、第十三条を削る。
第二条第四号を削る。
目次中「第十四条」を「第十三条」に、「第十五条」を「第十四条」に改める。
同条を第十三条とする。
第十五条第一項中「又は第十三条」を削り、同
条第二項を削り、同条を第十四条とす
る。
附則
(施行期日)
1この条例は、平成二十七年七月十五日から施行する。
(経過措置)
2この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による

改正前
(子どもポルノの所持等の禁止)
第13条何人も、正当な理由なく、子どもポルノを所持し、又は第2条第4号アから
ウまでのいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。

https://www1.g-reiki.net/pref.nara/reiki_honbun/k401RG00001081.html
○子どもを犯罪の被害から守る条例
平成十七年七月一日
奈良県条例第九号
子どもを犯罪の被害から守る条例をここに公布する。
子どもを犯罪の被害から守る条例

目次

第一章 総則(第一条―第六条)

第二章 子どもの安全確保に関する施策(第七条―第十条)

第三章 子どもに対する犯罪を助長する行為の規制等(第十一条―第十三条)

第四章 罰則(第十四条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、子どもの生命又は身体に危害を及ぼす犯罪の被害を未然に防止するため、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、必要な施策及び規制する行為を定め、もって子どもの安全を確保することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 子ども 十三歳に満たない者をいう。

二 学校等 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設であって、現に子どもが在籍又は在所するものをいう。

三 保護監督者 親権者、未成年後見人、学校等の職員その他の者で子どもを現に保護監督するものをいう。

(平一八条例一二・平一九条例二五・平二七条例六六・一部改正)

(適用上の注意)

第三条 この条例の適用に当たっては、県民及び滞在者の自由と権利を不当に制限しないように留意しなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、子どもの安全を確保するための必要な施策を実施する責務を有する。

2 県は、前項の施策の実施に当たっては、国及び市町村との連絡調整を緊密に行うよう努めるものとする。

(県民の責務)

第五条 県民は、子どもの安全を確保するため、自らが積極的に活動するとともに、県及び市町村が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第六条 事業者は、子どもの安全を確保するため、自らが積極的に活動するとともに、その所有し、又は管理する施設及び事業活動に関し、県及び市町村が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

第二章 子どもの安全確保に関する施策

(推進体制の整備等)

第七条 県は、市町村、県民及び事業者と連携し、相互に協力して子どもの安全確保を推進するための体制の整備に努めるものとする。

2 県は、子どもの安全を確保するために、第十一条又は第十二条に規定する行為を行う者その他子どもに危害を加えるおそれのある者に関する情報を収集し、活用するものとする。

(助言その他の必要な支援)

第八条 県は、県民及び事業者が実施する子どもの安全を確保するための自主的な活動を促進するため、技術的な助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

2 県は、子どもの安全を確保するために市町村が果たす役割の重要性にかんがみ、市町村が子どもの安全を確保するための施策を実施する場合には、技術的な助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

(学校等における安全の確保)

第九条 学校等を設置し、又は管理する者は、当該学校等の施設内において、子どもの安全を確保するよう努めるものとする。

2 学校等を設置し、又は管理する者は、子どもが犯罪被害に遭わないようにするための教育を充実するよう努めるものとする。

(通学路等における安全の確保)

第十条 子どもが通学、通園等の用に供している道路及び日常的に利用している公園、広場等(以下「通学路等」という。)を設置し、又は管理する者は、子どもの安全を確保するため、当該通学路等の環境整備に努めるものとする。

2 親権者、未成年後見人、学校等の管理者及び職員、地域住民並びに通学路等の所在する地域を管轄する警察署長は、連携して、通学路等における子どもの安全を確保するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第三章 子どもに対する犯罪を助長する行為の規制等

(子どもに不安を与える行為の禁止)

第十一条 何人も、道路、公園、広場、駅、興行場、遊園地、観光施設、飲食店、公衆便所その他公衆が出入りすることのできる場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車その他公衆が利用できる乗物(以下「公共の乗物」という。)において、保護監督者が直ちに危害を排除できない状態にある子どもに対し、正当な理由なく、甘言を用いて惑わし、又は虚言を用いて欺いてはならない。

(子どもを威迫する行為の禁止)

第十二条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、保護監督者が直ちに危害を排除できない状態にある子どもに対し、正当な理由なく、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 言い掛かりをつけ、すごみ、又は卑わいな事項を告げること。

二 身体又は衣服等を捕らえ、進路に立ちふさがり、又はつきまとうこと。

(禁止行為に係る通報)

十三条 前二条の規定に違反したと認められる者を発見した者は、保護監督者又は警察官に通報するよう努めなければならない。この場合において、通報を受けた保護監督者は、警察官に通報するよう努めなければならない。

(平二七条例六六・旧第十四条繰上・一部改正)

第四章 罰則

第十四条 第十二条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

(平二七条例六六・旧第十五条繰上・一部改正)

附 則

この条例は、公布の日から施行する。ただし、第十一条から第十五条までの規定は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。

附 則(平成一八年条例第一二号)

この条例は、平成十八年十月一日から施行する。

附 則(平成一九年条例第二五号)

この条例は、平成十九年十二月二十六日から施行する。

附 則(平成二七年条例第六六号)

(施行期日)

1 この条例は、平成二十七年七月十五日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

観念的競合説によれば二重起訴になる事案(秋田地裁H30.12.19)

 観念的競合の高裁判例はたくさんありますが、
強制わいせつ罪・児童ポルノ製造罪を観念的競合とする裁判例65 - 児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)


 東京高裁h30に従えば「その着衣を脱がせて,その陰部を手指でもてあそぶなどし、被告人が同児童の陰部等を手指で触る姿態,陰部等を露出させる姿態をとらせ,これらを前記第2のスマートフォンで撮影し」という一個の行為について、9/14に誘拐・強制わいせつ罪で起訴して、10/19に製造罪で起訴しているので、後の起訴が二重起訴で違法です。一審で指摘すると修正されちゃうので、控訴審で指摘して下さい・

 第3 平成30年7月25日午後5時頃,秋田市●●●付近路上において,●●●(●●●以下「被害者B」という。)を認めるや,同人が13歳未満であることを知りながら,同人を誘拐してわいせつな行為をしようと考え,同人に対し,警察官を装い,「警察です。車に乗って,検査します。」旨うそを言い,同人をしてその旨誤信させて,同人を自己が運転する自動車に乗車させた上,同車を発進させて,同所から同市●●●駐車場に連行し,同人を自己の支配下に置き,もってわいせつの目的で同人を誘拐した上,同所に駐車中の前記自動車内において,同人に対し,その着衣を脱がせて,その陰部を手指でもてあそぶなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。(平成30年9月14日付け起訴状記載の公訴事実)
 第4 被害者Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第3の日時に,前記第3の駐車場に駐車中の自動車内において,同児童に,被告人が同児童の陰部等を手指で触る姿態,陰部等を露出させる姿態をとらせ,これらを前記第2のスマートフォンで撮影し,同日午後5時45分頃,同市内又はその周辺において,その動画データ1点を前記第2の「○○」を使用して同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。(平成30年10月19日付け起訴状記載の公訴事実第3)

裁判年月日 平成30年12月19日 裁判所名 秋田地裁 裁判区分 判決
事件名 わいせつ誘拐、強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2018WLJPCA12196005
 上記の者に対するわいせつ誘拐,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官辻有希子及び国選弁護人笈川正典各出席の上審理し,次のとおり判決する。
 

主文

 被告人を懲役3年6月に処する。
 未決勾留日数中50日をその刑に算入する。
 
 
理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1 平成30年2月28日午後3時39分頃,秋田市●●●方敷地内に駐車中の自動車内において,●●●(●●●以下「被害者A」という。)が13歳未満であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,その着衣を脱がせて,その陰部を手指でもてあそぶなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。(平成30年10月19日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 第2 被害者Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第1の日時場所において,同児童に,被告人が同児童の陰部を手指で触る姿態,陰部等を露出させる姿態をとらせ,これらを被告人の撮影機能付きスマートフォンで撮影し,同日午後3時49分頃,同市内又はその周辺において,その動画データ1点及び静止画データ1点をアプリケーションソフト「○○」を使用して同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。(平成30年10月19日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 第3 平成30年7月25日午後5時頃,秋田市●●●付近路上において,●●●(●●●以下「被害者B」という。)を認めるや,同人が13歳未満であることを知りながら,同人を誘拐してわいせつな行為をしようと考え,同人に対し,警察官を装い,「警察です。車に乗って,検査します。」旨うそを言い,同人をしてその旨誤信させて,同人を自己が運転する自動車に乗車させた上,同車を発進させて,同所から同市●●●駐車場に連行し,同人を自己の支配下に置き,もってわいせつの目的で同人を誘拐した上,同所に駐車中の前記自動車内において,同人に対し,その着衣を脱がせて,その陰部を手指でもてあそぶなどし,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした。(平成30年9月14日付け起訴状記載の公訴事実)
 第4 被害者Bが18歳に満たない児童であることを知りながら,前記第3の日時に,前記第3の駐車場に駐車中の自動車内において,同児童に,被告人が同児童の陰部等を手指で触る姿態,陰部等を露出させる姿態をとらせ,これらを前記第2のスマートフォンで撮影し,同日午後5時45分頃,同市内又はその周辺において,その動画データ1点を前記第2の「○○」を使用して同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体に記録して保存し,もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。(平成30年10月19日付け起訴状記載の公訴事実第3)
 (証拠の標目)
 括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カード中の検察官請求証拠の番号を示す。
 判示事実全部について
 ・被告人の公判供述
 ・被告人の検察官調書(乙6),警察官調書(乙3)
 ・検証調書(甲8)
 ・捜査報告書(甲7),捜査報告書抄本(甲15,16)
 判示第1,第2,第4の各事実について
 ・被告人の検察官調書(乙11)
 判示第1,第2の各事実について
 ・被告人の警察官調書(乙8,9)
 ・被害者Aの警察官調書抄本(甲10)
 ・●●●の警察官調書抄本(甲12)
 ・実況見分調書(甲13)
 ・捜査報告書(甲14,17)
 判示第3,第4の各事実について
 ・被告人の警察官調書(乙4,5,10)
 ・●●●の警察官調書抄本(甲2,3)
 ・写真撮影報告書抄本(甲5)
 ・捜査報告書(甲4,9),捜査報告書抄本(甲1)
 ・電話用紙(甲6)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の所為
 刑法176条後段
 判示第2,第4の各所為
 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項2号,3号
 判示第3の所為のうち
 わいせつ誘拐の点 刑法225条
 強制わいせつの点 刑法176条後段
 科刑上一罪の処理
 判示第3について
 刑法54条1項後段,10条(重いわいせつ誘拐罪の刑で処断)
 刑種の選択
 判示第2,第4について
 各懲役刑を選択
 併合罪の処理
 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入
 刑法21条
 訴訟費用の不負担
 刑訴法181条1項ただし書
 なお,弁護人は,判示第1の強制わいせつ罪と判示第2の児童ポルノ製造罪は観念的競合となるから,両罪を科刑上一罪とすべきであり,また,判示第3のわいせつ誘拐罪と強制わいせつ罪は牽連関係にあり,判示第3のわいせつ誘拐罪と判示第4の児童ポルノ製造罪は牽連関係にある上,判示第3の強制わいせつ罪と判示第4の児童ポルノ製造罪は観念的競合となって,結局,判示第3,第4について,わいせつ誘拐罪,強制わいせつ罪,児童ポルノ製造罪を科刑上一罪とすべきであると主張する。
 しかしながら,本件において,判示第1の強制わいせつの行為と判示第2の児童ポルノ製造の行為との間には,一部重なりあう点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるといえないことや,両行為の性質等にかんがみると,両行為は社会的意味合いを異にする別個のものと認められるから,両罪について併合罪とするのが相当である。また,判示第3のわいせつ誘拐罪と強制わいせつ罪とは,弁護人が指摘するとおり牽連関係にあると認められるところ,判示第3の強制わいせつの行為と判示第4の児童ポルノ製造の行為とは,前同様,社会的意味合いを異にする別個のものと認められ,観念的競合とするのは相当でなく,また,判示第3のわいせつ誘拐罪と判示第4の児童ポルノ製造罪との間には,その罪質上,通例その一方が他方の手段又は結果となる関係があるとはいえないから,牽連関係にあるとは認められず,判示第3について科刑上一罪の処理によるわいせつ誘拐罪と判示第4の児童ポルノ製造罪について併合罪とするのが相当である。
 (量刑の理由)
 被告人は,警察官を装って被害者Aに声をかけると,同人の自宅駐車場内の被告人車両において,その陰部を手指でもてあそぶなどのわいせつな行為に及んだ上,被害者Aの陰部等を露出させる姿態等をスマートフォンで撮影,保存するなどして児童ポルノを製造し,判示第1,第2の各犯行に及び,さらに,その約5か月後に,警察官を装って被害者Bに声をかけ,被告人車両に乗せるなどしてわいせつの目的で被害者Bを誘拐するとともに,その陰部を手指でもてあそぶなどのわいせつな行為に及んだ上,前同様に児童ポルノを製造し,判示第3,第4の各犯行に及んだのであって,その犯行態様は,思慮浅薄な幼い女児を狙って警察官を装い声をかけてなされた卑劣で悪質なものである。各被害者やその保護者らの精神的苦痛には大きなものがあり,各被害者の健全な成長に与えるであろう影響も懸念されるところであって,その処罰感情が厳しいのも当然である。被告人は自己の性欲を満たすために本件各犯行に及んだもので,強い非難に値する。被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。
 他方,被告人が,本件各犯行を認め,二度と同じ犯罪を繰り返さないため,カウンセリングに通う意向を示すなど反省の態度を示していること,被害者Bに対して200万円を支払い,宥恕はされなかったものの慰謝の措置を講じていること,被告人には前科がないこと,被告人の父が,当公判廷において,被告人の更生に助力する意向を示していることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
 以上の事情を総合すれば,被告人に対して,主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。
 よって,主文のとおり判決する。
 (検察官の求刑意見:懲役5年,弁護人の科刑意見:懲役1年)
 平成30年12月20日
 秋田地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 杉山正明 裁判官 板東純 裁判官 藤枝健太)

観念的競合説によれば、二重起訴の疑いがある事件(山形地裁H31.3.12)

 製造罪1と強制わいせつ罪1の場合は、併合罪説だと処断刑期が13年、観念的競合説だと処断刑期が10年ということで観念的競合説には実益があるんですが、たくさんやってると処断刑期に影響がなく、どっちでもよくなりますよね。
 ところが、二重起訴になることもあります。観念的競合説によると、「h29.4.8 15:40A(当時7歳)に対し、その陰部等を手指で弄び、その陰部に自己の陰茎を押し当て、被告人がAの乳首等を触る姿態及びAの陰部等を露出させる姿態をとらせ、これらを自己の動画撮影機能付き携帯電話機で撮影し、」という一個の行為を、6/19と、5/29に起訴してるから、あとの起訴(6/19の強制わいせつ罪)は公訴棄却になる。控訴してるのであれば、こういうところも見てほしいなあ。

刑訴法 第三三八条[公訴棄却の判決]
 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。
三 公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。

D1-Law.com判例体系
山形地方裁判所
平成31年03月12日
上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強姦未遂、強制性交等、強制わいせつ、強制性交等未遂被告事件について、当裁判所は、検察官佐藤浩由及び弁護人安孫子英彦(私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第3(平成30年6月19日付け起訴状記載の公訴事実第1関係)
  ●●●(以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら、Aにわいせつな行為をしようと考え、平成29年4月8日午後3時27分頃から同日午後3時40分頃までの間、(住所略)所在の被告人が経営する「株式会社H」(以下「本件会社」という。)の当時の事務所において、A(当時7歳)に対し、その陰部等を手指で弄び、その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどし、もって13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした。
第4(平成30年5月29日付け起訴状記載の公訴事実関係)
  Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第3記載の日時、場所において、Aに、被告人が自己の陰茎をAの陰部に押し当てる姿態、被告人がAの乳首等を触る姿態及びAの陰部等を露出させる姿態をとらせ、これらを自己の動画撮影機能付き携帯電話機(山形地方検察庁平成30年領第252号符号1の1。以下「本件スマホ〈1〉」という。)で撮影し、それら動画データ2点を電磁的記録媒体である本件スマホ〈1〉の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。

(求刑 懲役15年、主文同旨の没収)
刑事部
 (裁判長裁判官 兒島光夫 裁判官 馬場崇 裁判官 小野寺俊樹)


 控訴が棄却されています。二重起訴は主張すらされていませんでした。
 併合罪とした理由が「被害児の陰部等を手指で弄び,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどのわいせつ行為とそれらの行為等に係る被害児の姿態をスマホ等で撮影して保存する行為について,両者が同一の機会に行われ,時間と場所が重なり合うことがあったとしても,両者は通常伴う関係にあるとはいえないし,それぞれの行為の意味合いは相当異なり,社会通念上別個のものというべきである」というんですが、撮影行為をわいせつ行為として起訴するときは、「被害児の陰部等を手指で弄び,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどのわいせつ行為とそれらの行為等に係る被害児の姿態をスマホ等で撮影して保存する行為」を一個のわいせつ行為と評価するので、理由になってないですね。

LEX/DB
【文献番号】25564143
仙台高等裁判所
令和元年8月20日第1刑事部判決

       判   決

無職 a 昭和58年○月○日生
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強姦未遂,強制性交等,強制わいせつ,強制性交等未遂被告事件について,平成31年3月12日山形地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官有水基幸出席の上審理し,次のとおり判決する。
       理   由
1 本件控訴の趣意は、主任弁護人藤田紀子及び弁護人藤田祐子連名作成の控訴趣意書に記載されたとおりであるから,これを引用する。論旨は,法令適用の誤り及び量刑不当の主張である。
2 法令適用の誤りの論旨について
 論旨は,要するに,原判決は,第3の強制わいせつ行為(平成29年4月8日,被害者Aに対するもの)と第4の児童ポルノ製造行為(同一日時場所,Aの姿態を撮影,保存したもの)との関係について,観念的競合による一罪ではなく,数罪であるとした。第5・第6,第7・第8,第9・第10,第11・第12,第13・第14,第15・第16,第17・第18,第21・第22,第23・第24,第25・第26の各関係についても同様である。強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,それぞれ行為の全部が完全に重なっており,いずれも観念的競合の関係にあると解すべきであるから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。 
 そこで検討すると,被害児の陰部等を手指で弄び,その陰部に自己の陰茎を押し当てるなどのわいせつ行為とそれらの行為等に係る被害児の姿態をスマホ等で撮影して保存する行為について,両者が同一の機会に行われ,時間と場所が重なり合うことがあったとしても,両者は通常伴う関係にあるとはいえないし,それぞれの行為の意味合いは相当異なり,社会通念上別個のものというべきであるから,両者は観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあると解するのが相当である。
 本件において,上記各罪の関係について,いずれも併合罪であるとした原判決の法令の適用は正当であり,論旨は理由がない。
令和元年8月20日
仙台高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 秋山敬 裁判官 中島真一郎 裁判官 井筒径子

強制わいせつ罪・児童ポルノ製造罪を観念的競合とする裁判例65

 東京高裁H30.1.30の影響でてるかも。
 同一機会の触って撮影する行為が強制わいせつ罪で起訴されて、製造罪で追起訴されている事案だと二重起訴の論点も出てきます

名古屋地裁一宮 H17.10.13
東京地裁 H18.3.24
東京地裁 H19.2.1
東京地裁 H19.6.21
横浜地裁 H19.8.3
長野地裁 H19.10.30
7 札幌地裁 H19.11.7
東京地裁 H19.12.3
高松地裁 H19.12.10
10 山口地裁 H20.1.22
11 福島地裁白河支部 H20.10.15
12 那覇地裁 H20.10.27
13 金沢地裁 H20.12.12
14 金沢地裁 H21.1.20
15 那覇地裁 H21.1.28
16 山口地裁 H21.2.4
17 佐賀地裁唐津支部 H21.2.12
18 仙台高裁 H21.3.3
19 那覇地裁沖縄支部 H21.5.20
20 千葉地裁 H21.9.9
21 札幌地裁 H21.9.18
22 名古屋高裁 H22.3.4
23 松山地裁 H22.3.30
25 那覇地裁沖縄 H22.5.13
24 さいたま地裁川越支部 H22.5.31
26 横浜地裁 H22.7.30
27 福岡地裁飯塚 H22.8.5
28 高松高裁 H22.9.7
29 高知地裁 H22.9.14
30 水戸地裁 H22.10.6
31 さいたま地裁越谷支部 H22.11.24
32 松山地裁大洲支部 H22.11.26
33 名古屋地裁 H23.1.7
34 広島地裁 H23.1.19
35 広島高裁 H23.5.26
36 高松地裁 H23.7.11
37 大阪高裁 H23.12.21
38 秋田地裁 H23.12.26
39 横浜地裁川崎支部 H24.1.19
40 福岡地裁 H24.3.2
41 横浜地裁 H24.7.23
42 福岡地裁 H24.11.9
43 松山地裁 H25.3.6
44 横浜地裁横須賀 H25.4.30
45 大阪高裁 H25.6.21
46 横浜地裁 H25.6.27
47 福島地裁いわき支部 H26.1.15
48 松山地裁 H26.1.22
49 福岡地裁 H26.5.12
50 神戸地裁尼崎 H26.7.29
51 神戸地裁尼崎 H26.7.30
52 横浜地裁 H26.9.1
53 津地裁 H26.10.14
54 名古屋地裁 H27.2.3
55 岡山地裁 H27.2.16
56 長野地裁飯田 H27.6.19
48 横浜地裁 H27.7.15
57 広島地裁福山 H27.10.14
58 千葉地裁松戸 H28.1.13
59 高松地裁 H28.6.2
60 横浜地裁 H28.7.20
61 名古屋地裁岡﨑 H28.12.20
62 東京地裁 H29.7.14
63 東京高裁 H30.1.30
64 広島地裁 H30.7.19
65 広島地裁 64事件の分離共犯

ハメ撮り(姿態をとらせて製造行為)を、ひそかに製造罪で起訴した事案

 性犯罪・福祉犯罪の機会の盗撮行為について、ひそかに製造罪(7条5項)で起訴される例があります。

誤ったまま判決となったもの
 札幌地裁H29.2.23実刑
 新潟地裁H28.11.4実刑
 神戸地裁尼崎支部H28.9.7
 奈良地裁葛城支部H29.3.16
 大分簡裁H28.4.8略式命令(罰金)
 東京地裁r2.3.2実刑
 名古屋地裁R1.8.21

起訴後に修正されたもの
 神戸地裁姫路支部H28.5.20
 神戸地裁R01.6.28

誤った事例の公訴事実
公 訴 事 実
 被告人は、A子(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら
第1 令和元年6月27日午後3時44分頃から同日午後5時22分頃までの間、HOTEL天満201号室において、同児童に対し、対償として現金1万3000円を供与し、同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし、もって児童買春をし
第2 前記日時頃、前記記載の場所において、ひそかに同児童が被告人の陰茎を口淫する姿態を、被告人が使用する携帯電話機で撮影し、その画像データを同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
たものである。
罪名及び罰条
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
第1 同法律第4条、第2条第2項第1号
第2    同法律第7条第5項、第2条第3項第1号

 法文上も「前二項に規定するもののほか、」となっていて4項製造罪が成立する場合には5項は適用できない規定になっています。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 判例もあって、姿態をとらせていることになるので、姿態とらせて製造罪(7条4項)だけが成立して、ひそかに製造罪(7条5項)は成立しません。いずれも弁護人は奥村です。

札幌高裁H19.3.8(最決H21.10.21の控訴審判決)
児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人が警察官に対し,「(ビデオに撮影した)これらの場面はセックスの一連の行為の一場面であります」と述べているように,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。

阪高裁H28.10.26
強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
判決
原判決神戸地方裁判所姫路支部平成28年5月20日宣告
第10,第12及び第13の各2の事実における法令適用の誤りの主張について。
論旨は,第10,第12及び第13の各2の製造行為は,いずれも盗撮によるものであるから,法7条4項の製造罪ではなく,同条5項の製造罪が成立するのに,同条4項を適用した原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
しかしながら,法7条5項は「前2項に規定するもののほか」と規定されているから,同条4項の罪が成立する場合には同条5項の罪は成立しないことが,法文上明らかである。
所論は,法7条5項に「前2項に規定するもののほか」と規定されたのは立法のミスであってこの文言に特段の意味はないとした上で,法7条5項の罪と他の児童ポルノ製造の罪との関係は前者が後者の特別法の関係だと主張する。
しかし,法7条5項の罪が追加された法改正の趣旨を考慮しても所論のように「前2項に規定するもののほか」に意味がないと解する必要はなく,法7条5項の罪が特別法の関係にあるとの所論は,独自の見解であって,採用できない。
いずれも法7条4項の罪が成立しているとした原判決の法令適用に誤りはない。

 見つけたら奥村に連絡して下さい。

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合とした判例・裁判例63選

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪を観念的競合とした判例・裁判例
 東京高裁H30で観念的競合説がちょっと持ち直した感じ。

名古屋地裁一宮 H17.10.13
東京地裁 H18.3.24
東京地裁 H19.2.1
東京地裁 H19.6.21
横浜地裁 H19.8.3
長野地裁 H19.10.30
7 札幌地裁 H19.11.7
東京地裁 H19.12.3
高松地裁 H19.12.10
10 山口地裁 H20.1.22
11 福島地裁白河支部 H20.10.15
12 那覇地裁 H20.10.27
13 金沢地裁 H20.12.12
14 金沢地裁 H21.1.20
15 那覇地裁 H21.1.28
16 山口地裁 H21.2.4
17 佐賀地裁唐津支部 H21.2.12
18 仙台高裁 H21.3.3
19 那覇地裁沖縄支部 H21.5.20
20 千葉地裁 H21.9.9
21 札幌地裁 H21.9.18
22 名古屋高裁 H22.3.4
23 松山地裁 H22.3.30
25 那覇地裁沖縄 H22.5.13
24 さいたま地裁川越支部 H22.5.31
26 横浜地裁 H22.7.30
27 福岡地裁飯塚 H22.8.5
28 高松高裁 H22.9.7
29 高知地裁 H22.9.14
30 水戸地裁 H22.10.6
31 さいたま地裁越谷支部 H22.11.24
32 松山地裁大洲支部 H22.11.26
33 名古屋地裁 H23.1.7
34 広島地裁 H23.1.19
35 広島高裁 H23.5.26
36 高松地裁 H23.7.11
37 大阪高裁 H23.12.21
38 秋田地裁 H23.12.26
39 横浜地裁川崎支部 H24.1.19
40 福岡地裁 H24.3.2
41 横浜地裁 H24.7.23
42 福岡地裁 H24.11.9
43 松山地裁 H25.3.6
44 横浜地裁横須賀 H25.4.30
45 大阪高裁 H25.6.21
46 横浜地裁 H25.6.27
47 福島地裁いわき支部 H26.1.15
48 松山地裁 H26.1.22
49 福岡地裁 H26.5.12
50 神戸地裁尼崎 H26.7.29
51 神戸地裁尼崎 H26.7.30
52 横浜地裁 H26.9.1
53 津地裁 H26.10.14
54 名古屋地裁 H27.2.3
55 岡山地裁 H27.2.16
56 長野地裁飯田 H27.6.19
48 横浜地裁 H27.7.15
57 広島地裁福山 H27.10.14
58 千葉地裁松戸 H28.1.13
59 高松地裁 H28.6.2
60 横浜地裁 H28.7.20
61名古屋地裁岡﨑 H28.12.20
62 東京地裁 H29.7.14
63 東京高裁 H30.1.30

女性に対するAEDについて「強制わいせつ罪に該当するかどうかは、性的意図のもとに行われるという事が必要でして、AEDを使用する状況は、目的は救命ですので性的意図というのは認定されない」という弁護士のコメント

 最高裁大法廷h29.11.29(2017.11.29)が「行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は,その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず,もはや維持し難い。」「故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。」というので、現時点ので判例は「性的意図のもとに行われるという事が必要でして」ということではありません
 大法廷判決以降、わいせつの定義もはっきりしなくなっていて、判例は「刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」という説明をするだけですので、女性へのAED使用については、「刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,~~主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」ので、真に救命目的であって、AEDの使用方法に従い、行為自体も救命のために必要な範囲で着衣を脱がす程度であれば、わいせつな行為に当たらないということになるでしょう。
 考慮する要素を抽象的に挙げるだけでわいせつの定義がないので、実務家としては、結局、「刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,~~主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」というフレーズをマジックワードとして、希望の結論へ説明することになります。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件
最高裁判所大法廷判決平成29年11月29日
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集71巻9号467頁
       裁判所時報1688号245頁
       判例タイムズ1452号57頁
       判例時報2383号115頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 警察公論73巻8号88頁
       論究ジュリスト25号113頁
       ジュリスト1517号78頁
       上智法学論集62巻1~2号177頁
       捜査研究66巻12号2頁
       法学教室449号129頁
       法学教室450号51頁
       法学セミナー63巻2号123頁

       主   文

 本件上告を棄却する。
 当審における未決勾留日数中280日を本刑に算入する。

       理   由

 1 弁護人松木俊明,同園田寿の各上告趣意,同奥村徹の上告趣意のうち最高裁昭和43年(あ)第95号同45年1月29日第一小法廷判決・刑集24巻1号1頁(以下「昭和45年判例」という。)を引用して判例違反,法令違反をいう点について
 (1) 第1審判決判示第1の1の犯罪事実の要旨は,「被告人は,被害者が13歳未満の女子であることを知りながら,被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。」というものである。
 原判決は,自己の性欲を刺激興奮させ,満足させる意図はなく,金銭目的であったという被告人の弁解が排斥できず,被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした第1審判決の事実認定を是認した上で,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして,昭和45年判例を現時点において維持するのは相当でないと説示し,上記第1の1の犯罪事実を認定した第1審判決を是認した。
 (2) 所論は,原判決が,平成29年法律第72号による改正前の刑法176条(以下単に「刑法176条」という。)の解釈適用を誤り,強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和45年判例と相反する判断をしたと主張するので,この点について,検討する。
 (3) 昭和45年判例は,被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで,脅迫により畏怖している被害者を裸体にさせて写真撮影をしたとの事実につき,平成7年法律第91号による改正前の刑法176条前段の強制わいせつ罪に当たるとした第1審判決を是認した原判決に対する上告事件において,「刑法176条前段のいわゆる強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要し,婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても,これが専らその婦女に報復し,または,これを侮辱し,虐待する目的に出たときは,強要罪その他の罪を構成するのは格別,強制わいせつの罪は成立しないものというべきである」と判示し,「性欲を刺戟興奮させ,または満足させる等の性的意図がなくても強制わいせつ罪が成立するとした第1審判決および原判決は,ともに刑法176条の解釈適用を誤ったものである」として,原判決を破棄したものである。
 (4) しかしながら,昭和45年判例の示した上記解釈は維持し難いというべきである。
 ア 現行刑法が制定されてから現在に至るまで,法文上強制わいせつ罪の成立要件として性的意図といった故意以外の行為者の主観的事情を求める趣旨の文言が規定されたことはなく,強制わいせつ罪について,行為者自身の性欲を刺激興奮させたか否かは何ら同罪の成立に影響を及ぼすものではないとの有力な見解も従前から主張されていた。これに対し,昭和45年判例は,強制わいせつ罪の成立に性的意図を要するとし,性的意図がない場合には,強要罪等の成立があり得る旨判示しているところ,性的意図の有無によって,強制わいせつ罪(当時の法定刑は6月以上7年以下の懲役)が成立するか,法定刑の軽い強要罪(法定刑は3年以下の懲役)等が成立するにとどまるかの結論を異にすべき理由を明らかにしていない。また,同判例は,強制わいせつ罪の加重類型と解される強姦罪の成立には故意以外の行為者の主観的事情を要しないと一貫して解されてきたこととの整合性に関する説明も特段付していない。
 元来,性的な被害に係る犯罪規定あるいはその解釈には,社会の受け止め方を踏まえなければ,処罰対象を適切に決することができないという特質があると考えられる。諸外国においても,昭和45年(1970年)以降,性的な被害に係る犯罪規定の改正が各国の実情に応じて行われており,我が国の昭和45年当時の学説に影響を与えていたと指摘されることがあるドイツにおいても,累次の法改正により,既に構成要件の基本部分が改められるなどしている。こうした立法の動きは,性的な被害に係る犯罪規定がその時代の各国における性的な被害の実態とそれに対する社会の意識の変化に対応していることを示すものといえる。
 これらのことからすると,昭和45年判例は,その当時の社会の受け止め方などを考慮しつつ,強制わいせつ罪の処罰範囲を画するものとして,同罪の成立要件として,行為の性質及び内容にかかわらず,犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを一律に求めたものと理解できるが,その解釈を確として揺るぎないものとみることはできない。
 イ そして,「刑法等の一部を改正する法律」(平成16年法律第156号)は,性的な被害に係る犯罪に対する国民の規範意識に合致させるため,強制わいせつ罪の法定刑を6月以上7年以下の懲役から6月以上10年以下の懲役に引き上げ,強姦罪の法定刑を2年以上の有期懲役から3年以上の有期懲役に引き上げるなどし,「刑法の一部を改正する法律」(平成29年法律第72号)は,性的な被害に係る犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処を可能とするため,それまで強制わいせつ罪による処罰対象とされてきた行為の一部を強姦罪とされてきた行為と併せ,男女いずれもが,その行為の客体あるいは主体となり得るとされる強制性交等罪を新設するとともに,その法定刑を5年以上の有期懲役に引き上げたほか,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設するなどしている。これらの法改正が,性的な被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映したものであることは明らかである。
 ウ 以上を踏まえると,今日では,強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべきであって,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は,その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず,もはや維持し難い。
 (5) もっとも,刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そして,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。
 そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。
 (6) そこで,本件についてみると,第1審判決判示第1の1の行為は,当該行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから,その他の事情を考慮するまでもなく,性的な意味の強い行為として,客観的にわいせつな行為であることが明らかであり,強制わいせつ罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の結論は相当である。
 以上によれば,刑訴法410条2項により,昭和45年判例を当裁判所の上記見解に反する限度で変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,同判例違反をいう所論は,原判決破棄の理由にならない。なお,このように原判決を維持することは憲法31条等に違反するものではない。
 2 弁護人奥村徹の上告趣意のうち,その余の判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって本件に適切でないか,引用の判例が所論のような趣旨を示したものではないから前提を欠くものであり,その余は,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 よって,刑訴法414条,396条,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官平光信隆,同中原亮一 公判出席
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官 山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 菅野博之 裁判官 山口 厚 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一)

 議論の出発点は、この辺から

薄井真由子強制わいせつ罪における「性的意図」(植村立郎「刑事事実認定重要判決50選 上 《第3版》」2020)
(ア) 治療行為
前記(2)のとおり,治療行為としての性器等への接触行為については。性的性質が否定されると解される。正当な治療行為である限り,行為者たる医師等が主観的には性的意図を有していたとしても, そのことだけで当罰性を肯定するのは不当であるから,主観的事情により治療行為が性的意味を帯びるものではない,16)。確かに医師等が性的意図を有していたと治療対象者が知れば, その性的差恥心は害され性的被害を受けたと感じることはあるだろうが,対象者が行為者の性的意図を知る場合には,客観的にも行為者の性的意図の発露を伴うのが通常であろう(当該行為の際にひわいな言動をするとか,当該行為の様子を秘密裡に撮影するといった客観的行為を伴うからこそ,対象者が行為者の性的意図を認識し’ また’犯罪として認知されるのが通常と思われる。)。こうした行為者の性的意図の発露を伴う行為については,客観的にみて正当な治療行為の枠から外れていると評価でき, それゆえに性的意味が認められると解される,17)から,上記解釈であっても不都合は生じないと思われる
なお,治療行為としての必要性の程度と関連させ,検査等として多少は有効ではあるものの必ずしも必要とはいえない行為をした場合で行為者に性的意図があった場合には, わいせつ行為性を肯定する余地を認めるのが妥当とする見解もある,18)が,外形的には行為者の性的意図が一切表れておらず’医学的に治療行為としての必要性が完全に否定できなければ, 当該行為に性的意味を肯定することは困難ではないかと思われる19)

公衆浴場の混浴見直し否定=「おおむね10歳以上」制限-政府答弁書

 児童ポルノ事件として上がってくる問題ですが、厚生労働や自治体の要綱があるので、男湯の女児とか、女児の沐浴シーンの「性欲を興奮させ又は刺激するもの」該当性が問題になることがあります。

横浜地裁h28.7.20
第8 児童ポルノ製造事件について
 甲228号証及び甲230号証の各画像中,一部の画像(甲228号証添付資料12の写真1ないし17,甲230号証添付資料2の写真1ないし5,同資料7の写真6ないし10,同資料10の写真1,2,同資料11の写真3,同資料15の写真1,2,8ないし13及び15)については,被害児童が衣服の全部又は一部を着けない状態にはあるものの,通常の沐浴をしている情景としか見られないなど,性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないと判断したため,これらの画像については児童ポルノ製造罪は成立しない。

阪高裁平成24年7月12日
2 控訴趣意中,その余の法令適用の誤りの主張について
 論旨は,(1)本件各画像は,児童の裸が撮影されているが,一般人を基準とすると「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから,児童ポルノ法7条2項の製造罪(以下「2項製造罪」という。)は成立しないのに,原判決は原判示罪となるべき事実に同法7条2項,1項,2条3項3号を適用しており,また,(2)本件は,公衆浴場内での4件の2項製造罪であって,常習的に撮影,提供がされていたのであるから,それらは包括一罪となり,また,被害児童が特定されているのは1件だけであり,3件は被害児童が特定されておらず,結局被害児童は1名としか認定できないから,その意味でも包括一罪とすべきであるのに,原判決は,併合罪として処理しており,以上の各点で,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。
 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。
 次に(2)の点は,被告人が3号ポルノを常習的に製造し,他人に提供していたとしても,関係証拠上,原判示各事実で被害者とされている児童は別人であって,被害児童が4名であることは明らかであり,それら4名の児童について,その記録された裸体画像を他人に見られないという個人的法益が現実に侵害されている上,撮影の日時場所も異なるのであるから,それらが併合罪となるのは明らかであり,原判決の判断は正当である。
 以上のとおりであるから,前記法令適用の誤りをいう論旨も理由がない。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062100709&g=pol
公衆浴場の混浴見直し否定=「おおむね10歳以上」制限-政府答弁書
2019年06月21日12時35分
 政府は21日の閣議で決定した答弁書で、公衆浴場での「おおむね10歳以上」の混浴を制限する厚生労働省要領の見直しに否定的な見解を示した。立憲民主党初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。
〔写真特集〕盗聴器・盗撮カメラ

 厚労省の衛生等管理要領は「おおむね10歳以上の男女を混浴させない」と規定。これについて初鹿氏は「父親と混浴している女児を狙った盗撮被害が相次いでいる」として、混浴可能な年齢を引き下げ、小学校就学前までとすることを提案。政府は「さまざまな意見は承知しているが、入浴者への影響などを踏まえる必要があり、要領を直ちに見直すことは考えていない」と回答した。

強制性交等(口腔性交)の事案の量刑に当り,改正前の強姦罪の量刑傾向を参酌した原判決を是認した事例(東京高裁H31.2.1)

 刑法改正前の口淫させる強制わいせつ罪の量刑は、手持ちの資料では実刑69:執行猶予46でしたが、改正後は強制口腔性交罪となったので5年以上の懲役(実刑)になります。
 強姦罪1罪だと、改正前は実刑188:執行猶予38だったので、まあ、実刑だったので、改正後も実刑なので、そう変わらないんですが、口腔性交行為の量刑が跳ね上がった感じです。

第一七六条(強制わいせつ)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第一七七条(強制性交等)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

速報番号3667号
強制性交等
東京高等裁判所平成3 1年2月1日
強制性交等(口腔性交)の事案の量刑に当り,改正前の強姦罪の量刑傾向を参酌した原判決を是認した事例,

裁判要旨
口腔性交も腟内性交も濃密な性的接触を強いられることによる性的自由(性的自己決定)の侵害性,悪質性においては同等であることから、これらを同じ強制性交等罪の行為類型とした平成29年の刑法の一部改正の趣旨に鑑み,本件(口腔性交)において,同改正前の強姦罪の量刑傾向を参酌し,行為責任の重さは,それらの中で典型的な事案と同程度と位置付けた原判決の量刑判断は不合理であるとはいえない。

免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるとき(刑事補償法25条1項)とされた事例(最決r01.7.4)

 同じ前例がなかったので、手間取りましたが、満額認容されました。
 控訴審の無罪判決が最高裁で追認されています。

刑事補償法
第二五条(免訴又は公訴棄却の場合における補償)
1 刑事訴訟法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができる。
2前項の規定による補償については、無罪の裁判を受けた者の補償に関する規定を準用する。補償決定の公示についても同様である。

平成31年(も)第○号
決   定
                請求人
代理人弁護士奥村徹
 上記の各請求人から刑事補償の請求があったので,当裁判所は,検察官及び各請求人の意見を聴き,次のとおり決定する。
主   文
 請求人に対し,金○○円を交付する。
理   由
 1 本件請求の趣旨は,請求人らは,~~~tは同事件につき,平成年月日当裁判所において公訴棄却の決定を受けたが,もし公訴棄却の決定をすべき事由がなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるから,tが同事件において受けた合計○日間の未決の抑留及び拘禁について,刑事補償法に基づく補償を求めるというのである。
 2 一件記録によれば,以下の事実が認められる。
~~~
 3 刑事補償法25条1項は,公訴棄却の裁判を受けた者は,もし公訴棄却の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは,抑留又は拘禁による補償を請求することができると規定するところ,一件記録によれば,上記控訴審判決の判断は不合理なものではなく,tが~~していなかったならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるものと認められる。
 4 以上によれば,請求人らに対しては,tが受けた未決の抑留及び拘禁全部につき刑事補償法25条,2条による補償をすべき場合に当たる。そこで,補償金額につき検討すると,以上の事実のほか,同法4条2項所定の諸般の事情を考慮して,同条1項所定の金額の範囲内で,tの受けた抑留及び拘禁の日数に応じ,1日金○○円の割合により,主文に記載した金額の補償金を交付するのが相当である。
 よって,刑事補償法16条前段により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
  令和元年7月4日
    最高裁判所第三小法廷
        裁判長裁判官 林 景一
           裁判官 山﨑敏充
           裁判官 戸倉三郎
           裁判官 宮崎裕子
           裁判官 宇賀克也