最決R01.11.12
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89039
の原判決名古屋高裁H31.3.4が参考になります。
弁護人は高裁で記録閲覧して、わいせつじゃないのもわいせつと認定しているし、だいたい、証拠のわいせつ画像と原判決が認定したわいせつ画像の枚数が合わないなどと主張してました。
甲39は、いずれも児童の裸で、陰裂が写っているんですが、名古屋高裁は、
2-1,2-3は陰部を斜めから撮影していて陰部を露骨に撮影したとまではいえないからわいせつではなく
2-2,2-4、2-5、2-6は、陰部を正面から撮影していて陰部を露骨に撮影しているから、わいせつだ
というのです。
1審は全部わいせつと認定してしまい、起訴状と枚数が合わなくなって、不告不理で破棄されました。
画像見ないとわからないのですが、名古屋地検に閲覧申請しても不許可になると思われます。
弁護人は(訴因変更後の)公訴事実は電磁的記録(「画像」)のうちどれが児童ポルノでどれがわいせつか分からず訴因不特定という。検察官は各画像の女性の推定年齢を小児科医の供述(甲39)で立証しているところ,同医師の検察官調書添付の画像を起訴していること明らか。その画像から児童ポルノ画像(陰部を露骨に撮影したとまではいえない。甲39添付資料2-1,2-3)と児童ポルノかつわいせつ画像(陰部を露骨に撮影。同2-2,2-4から2-6まで)を区別可。訴因不特定といえない。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
名古屋高等裁判所判決平成31年3月4日
主 文原判決を破棄する。
被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。理 由
第1 控訴趣意は控訴趣意書,控訴趣意補充書(弁護人作成)のとおり。論旨は理由不備,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,事実誤認,量刑不当(原判決懲役2年4年猶予付保護観察)
第2 職権判断
1 原判示第2に係る(訴因変更後の)公訴事実は要旨不特定多数の者に有償で頒布提供する目的で,平成30年2月20日,被告人方において,記録媒体である外付けハードディスクに,児童ポルノである電磁的記録2点及び児童ポルノであり,かつ,わいせつな画像データを記録した電磁的記録4点を保管した(児童ポルノ禁止法違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管)。
原判示第2は要旨前記目的で,前記年月日,前記場所において,前記ハードディスクに「児童ポルノであり,かつ,わいせつな画像データを記録した電磁的記録2点及び児童ポルノであり,かつ,わいせつな画像データを記録した電磁的記録4点を保管した」旨
2 原判決は検察官がわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管で処罰を求めず,児童ポルノ禁止法違反のみで処罰を求めた電磁的記録2点につき前者の罪も成立するとした。審判の請求を受けない事件について判決をした。破棄を免れない(刑訴法397条1項,378条3号後段,400条ただし書適用)。
第3 自判
(原判示罪となるべき事実第2に代えて当裁判所が新たに認定した事実)
第2 被告人は,不特定多数の者に提供有償頒布目的で,平成30年2月20日,原判示第1被告人方において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した画像データ2点に係る電磁的記録及び前同様の画像データであり,かつ,女児の性器を露骨に撮影した画像データ4点に係る電磁的記録に係る児童ポルノであり(前記画像データ2点及び4点関係),かつ,わいせつ物である(前記画像データ4点関係)記録媒体たる外付けハードディスク1台を所持した(事実[訴因変更後の]公訴事実同旨。第1は原判示第1のとおり)。
(前記当裁判所が新たに認定した事実についての証拠)
原判決挙示の原判示全事実についての証拠,同第2の事実についての証拠と同一
(補足説明)
1 判示第1
(1) 原判決は「罪となるべき事実」第1として要旨共犯者と共謀の上平成28年4月9日温泉施設北側森林内で同温泉施設で入浴中の女児5名が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同児童らの全裸の姿態を望遠レンズを取り付けたビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録である動画データを同ビデオカメラの記録媒体等に記録した上,同年5月1日被告人方で同人が前記動画データを前記記録媒体等からパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録して保存し,もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造したとの事実(公訴事実同旨)を認定判示
(2) 弁護人は被害児童(5名)ごとに犯罪が成立するのに1罪1罪特定できず訴因不特定というけれども,被害児童らの姿態撮影と記載されており,訴因特定に欠けない。13歳未満の者の裸体撮影は強制わいせつにあたり公訴事実からは罪名特定できず訴因不特定というけれども,公訴事実,罪名及び罰条から強制わいせつ事実を起訴していないこと明らか(本件[認識不可能な遠方からの盗撮]は強制わいせつに当たらず弁護人の主張は前提においても失当)
(3) 弁護人は被告人ら撮影の大部分は老若女性で児童は一部であり公衆浴場での女児の入浴という普通の情景であって児童ポルノに当たらないというけれども,女児と見られる客が現れると即座に照準を定め,その後乳房や陰部を中心にズームアップして撮影されていることからすれば,殊更に児童の性的な部位が露出強調され性欲を興奮させ刺激するものたること明らか。児童ポルノ禁止法2条3項3号に当たる。
(4) 弁護人は被告人方での外付けハードディスクへの保存につき「ひそかに」児童の姿態を「描写」したといえないから児童ポルノ製造罪は不成立というけれども,ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる。
(5) 弁護人は児童ポルノ提供目的があった(同法7条3項該当)から同条5項罪は成立しないというけれども,訴因罪以外の罪の成立を主張して訴因罪の成否を争うもので,訴因制度の趣旨に反し許されない(その他種々いうけれども,後記「法令の適用」に係る罪数主張以外理由なきこと明らか)。
2 判示第2
(1) 同事実(被告人弁護人も争わない)は児童ポルノ禁止法7条7項,刑法175条2項の「所持」罪該当(検察官はこれらの「保管」罪該当をいうけれども,被告人は電磁的記録に係る記録媒体を所持したから「所持」該当。「保管」不該当。訴因変更不要)
(2) 弁護人は(訴因変更後の)公訴事実は電磁的記録(「画像」)のうちどれが児童ポルノでどれがわいせつか分からず訴因不特定という。検察官は各画像の女性の推定年齢を小児科医の供述(甲39)で立証しているところ,同医師の検察官調書添付の画像を起訴していること明らか。その画像から児童ポルノ画像(陰部を露骨に撮影したとまではいえない。甲39添付資料2-1,2-3)と児童ポルノかつわいせつ画像(陰部を露骨に撮影。同2-2,2-4から2-6まで)を区別可。訴因不特定といえない。
(法令の適用)
1 罰条
(1) 判示第1 各児童ごとに刑法60条,児童ポルノ禁止法7条5項,2項,2条3項3号(原判決は単純[又は包括]1罪。訂正)
(2) 判示第2のうち児童ポルノ所持の点は同法7条7項前段,6項,2条3項3号。わいせつ物所持の点は刑法175条2項
2 科刑上1罪の処理(判示第1,第2につき)
いずれも刑法54条1項前段,10条(判示第1は1個の行為が5個の罪名に触れる場合。1罪として犯情の最も重い甲39添付資料1-1の女児に係る罪の刑で処断。判示第2は1個の行為が2個の罪名に触れる場合。1罪として重い児童ポルノ所持罪の刑で処断)
3 刑種の選択 いずれも懲役刑
4 併合罪加重 刑法45前段,47条本文,10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
5 刑の執行猶予 刑法25条1項
6 保護観察 刑法25条の2第1項前段
7 訴訟費用(原審)の処理 刑訴法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
①共犯者と共謀の上の入浴中の女児5名の盗撮に係る児童ポルノ製造(判示第1),②不特定多数の者に提供有償頒布目的で児童ポルノ,わいせつ画像データ計6点に係る電磁的記録に係る記録媒体の所持(児童ポルノ不特定多数提供目的所持。わいせつ物有償頒布目的所持。判示第2)
(検察官溝口貴之出席。原審求刑懲役2年)
平成31年3月4日
名古屋高等裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 山口裕之
裁判官 出口博章
裁判官 山田順子