児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「2018年春、前夫は、勤務する会社のイベントに娘を連れて行き、その帰りに車の中で体を触るなどの行為を行った。かずみさんが離婚したのは今から9年前。娘と実父が会ったのは、このときが7年ぶりだった。」場合の罰条

 
 警察は重い罰条から検討していくもので、
 国法から見ていくと、わいせつ行為があったとしても、暴行脅迫がないということなので、強制わいせつ罪は不成立。
 「現に監護する者」ではないので、監護者わいせつ罪は不成立
 児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)は、性交・性交類似行為がないと不成立。
 国法の罪がないので、青少年条例違反(わいせつ行為)が検討されることになります。青少年条例には国法の性犯罪規定の補充的性格があるので、国法に漏れたのをここにひっかけるという構造です。

今井検事「刑法の一部を改正する法律の概要」警察公論72巻12号
3 捜査上の留意点
ア「現に監讓する者」の要件について
監護者わいせつ罪岐び監護者性交等罪の主体は. 18歳未満の者を「現に監護する者」に限定されており.教師やスポーツのコーチ等の指導者などについては.個別の具体的事例ごとに判断されるべき事柄ではあるが,一般的に, その者の生活全般にわたって.依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められるとはいえないことから、通常は.監護者には該当しないと考えられる。
もっとも、こうした教員等による性的行為が監護昔性交等罪等の適用対象とならないとしても,強制性交等罪等や準強制'性交等罪等が成立し得るのであり.教師等の立場や影響力の有無無・程度は.強制性交等罪等の暴行・脅迫要件や準強制性交等罪等の抗拒不能の要件を判断する際の重要な要素となり得ると考えられる。
したがって. こうした事案においても,犯罪の成否について.行為者と被害者との関係具体的な影響力の内容や程度.被害者の意思決定の過程などについて十分な捜査を尽くし,適切な判断をすることに留意する必要がある。
イ「影響力があることに乗じて」の要件について
被疑者からは, 18歳未満の者が積極的に(あるいは喜んで)性的行為に応じたから.影響力があることに乗じて行ったものではなく,影響力と無関係に行われたものであるとの主張がなされることが考えられる。
しかし, 18歳未満の者がそのような行動をとる例として.例えば、幼年のころから継続的に.監護音による性的行為を受け続け, そのような行為が当然のことであると思い込んでいる場合や.監護者を喜ばせ, あるいは監護者の機嫌を損なわないようにするために、積極的に応じるような場合が考えられるところ, いずれも. 「現に監護者であることによる影響力」によって18歳未満の者がそのような行動に至っていると一般的に考えられることから, このような行動が認められたとしても。「影響力があることに乗じて」行ったものではないとはいえないことに留意する必要がある。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20191027-00147991/
離婚で離れた実父からの性被害
「実父が娘に性的な行為をすること自体がおかしい。議員さんたち、自分の家族がもし同じ目に遭ったら、絶対に法律を変えていると思います」

 かずみさん(仮名)は、取材に対して落ち着いた声でそう話した。彼女の娘は昨年、離れて暮らしていた実父からわいせつな被害に遭った。事件当時13歳だった。

 2018年春、前夫は、勤務する会社のイベントに娘を連れて行き、その帰りに車の中で体を触るなどの行為を行った。かずみさんが離婚したのは今から9年前。娘と実父が会ったのは、このときが7年ぶりだった。

 かずみさんが被害を知ったのは秋。その後、年が明けてから警察に相談した。最初は生活安全課が対応したが、しばらくして刑事課の担当に。強制わいせつや、監護者わいせつでの立件を視野に入れてのことだったと思われる。

 しかし捜査中の今年3月から4月にかけて、性犯罪の無罪判決が相次いで報じられると、「刑事課の刑事さんたちがトーンダウンした」。無罪判決が出た裁判所の一つは、かずみさんたちが暮らす街の近くだった。

■娘の一言を「同意」と誤解?
 現在の性犯罪刑法における「性交同意年齢」は13歳。事件当時13歳だった娘に行われた行為について、強制わいせつに問うためには「暴行もしくは脅迫」があったことが必要となる。

 父親から殴る蹴るの暴行や「殺すぞ」といった脅しはなかったが、実父の行動に動揺した娘は、目に見える形で抵抗したり、逃げたりすることができなかった。

 一方、2017年の刑法改正で新設された監護者わいせつ罪では、被害者が18歳未満で、加害者が「監護者(実親や養親など子どもを監護する立場の人)」である場合、「暴行・脅迫」の有無は問われない。

 しかし、離婚した実父は「監護者」に当たらないと判断された。

4月11日に行われたフラワーデモで「暴行・脅迫要件」の撤廃を求めるプラカードを持つ参加者もいた(筆者撮影)
「前夫は息子とは会っていたのですが、娘は会いたがらなかったので会っていませんでした。養育費の支払いもなかった。だから『監護者』ではないと刑事課の刑事さんに説明されました」

 その後、担当が生活安全課に戻り、父親は条例違反(淫行)で在宅起訴。罰金刑のみとなる可能性が高いと説明を受けた。

 取り調べに対して父親は、娘が「パパ、ちゃんと話をしようよ」と言ったことを「行為の同意」と思ったと話したという。娘からすれば、父親の行動を異常だと感じ、やめさせようとして言った言葉だった。

 起訴後、お互いの弁護士を通じて示談に。示談を選んだ理由は、「今後、娘に会わない」という取り決めを結ぶために、ほかに手段がなかったからだ。元夫は示談金を分割で支払うことを提案。初回以降、弁護士を通じて催促する状況となっている

 かずみさんは言う。

「生活安全課の方は親切に話を聞いてくれて、何とか条例違反にはしてくれました。こちら側の代理人となってくれた弁護士さんも、強制わいせつにならないのかと意見書を書いてくれました。それでもやはりダメだった