児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。(2015受験月報SA問題集)

次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。(2015受験月報SA問題集)
 だいたい奥村弁護士が関与した判例を昇任試験で警察官が暗記しているようです。ころころ変わるからな。

2015受験月報SA問題集警察研修社白表紙
次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。
(1) 刑法におけるわいせつの定義とは異なり、「徒に」ではなくても、「性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であれば、児童ポルノに当たる。
(2) 児童ポルノの対象となる児童が特定できなくても、証拠等により、裁判官に合理的な疑いを容れない程度の確実な心証を抱かせることで「児童が18歳に満たない者」であることを証明できる。
(3) バックアップ用の電磁的記録媒体も、そのデータから児童ポルノ・わいせつ物が製造・販売される場合には、「販売目的(提供目的、有償で頒布する目的)の所持」とされる。
(4) 児童に、児童買春・児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせて、携帯電話内蔵カメラで撮影し、そのデータを電磁的記録媒体に保存した場合、撮影と保存の行為それぞれが児童ポルノの「製造」に当たり、それらは併合罪とされる。
(5) インターネット・オークションに児童ポルノを出品して、落札者に当該児童ポルノを送付した場合には、「不特定の者に提供する目的」があるといえる。

◆解説
平成19年9月4日札幌高裁判決は、「…児童ポルノ製造においては、「撮影して写真を作成する』といった、社会通念的に一つの固まりとみられそうな行為であっても、その過程で児童ポルノに当たる物が順次作成されるごとに製造行為が観念でき、当初から意図されていた物が製造されるまでに複数の製造行為が連なっているとみられる場合が少なくない。そして、同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行ったような場合には、その全体として包括一罪となると解するのが相当である」とした(高刑速報平19~522)。
正解は(4) 誤り。
(1) 正しい。平成12年7月17日京都地裁判決は、「…性欲を興奮又は刺激せしめる点は必要であるが、しかし『徒に」興奮又は刺激しなくても処罰の対象とし、…」と判示し、さらに、「児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる『普通人の正常な性的蓋恥心を害し』という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人』又は『一般人』を基準として判断するのが相当である」とした(判タ1064.249)。
(2) 正しい。平成12年10月24日大阪高裁判決は、「…刑事訴訟法における証明は、医学等の自然科学における証明と異なり、裁判官に合理的な疑いを容れない程度に確実であるとの心証を抱かせれば足りるものである」と判示し、さらに「…児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、更に進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまで必要ない」とした(高判速報平12. 146)。
(3) 正しい。平成18年5月16日最高裁決定では、「被告人は、本件光磁気ディスク自体を販売する目的はなかったけれども、…必要が生じた場合には、本件光磁気ディスクに保存された画像データを使用し、…販売用のコンパクトディスクを作成し、これを販売する意思であったものである。…そうすると、本件光磁気ディスクの製造、所持は、法第7条第2項にいう『前項に掲げる行為の目的』のうちの児童ポルノを販売する目的で行われたものであり、その所持は、刑法第175条後段にいう「販売の目的』で行われたものということができる」とした(刑集60.5.413)。
(5) 正しい。平成20年3月4日最高裁決定では、「…被告人は、児童ポルノであるDVDをインターネットオークションに出品して不特定の者から入札を募り、入札期間の終了時点で最高値の入札者を自動的に落札者とし、その後当該落札者にあてて落札されたDVDを送付したものであって、…買受人の募集及び決定並びに買受人への送付という不特定の者に販売する一連の行為の一部であるから、被告人において不特定の者に提供する目的で児童ポルノを外国から輸出したものというを妨げない」とした(刑集623.85)。