児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件 熊本地裁h30.10.26


 強制わいせつ罪(176条後段)と製造が立件されています。撮っちゃうから全部立件されて実刑です。

 わいせつ行為の程度の軽重については、「被告人の肛門に被害児童の手指を挿入させたり,被告人の陰茎を被害児童に触らせたりするというものであるが,肛門の内部や性器との身体的接触を伴う点で,性交等を伴わないわいせつ行為の中では,濃厚な身体的接触により,相手に強い嫌悪感や羞恥心をもよおさせる態様である。各わいせつ行為の態様は,犯行がいずれも比較的短時間で終わっていることを踏まえても,それ自体として悪質であり,被害者を全裸にしたり,その陰部を触るなど弁護人が指摘する事案と比較しても軽微な態様であるとは到底いえない。」とされています。

強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
熊本地方裁判所平成30年10月26日
 被告人を懲役3年に処する。
 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
       理   由
(罪となるべき事実) -被害者の氏名等は,別表1記載のとおり
第1 被告人は,平成27年10月頃,別表2記載の場所において,被害者が13歳未満であることを知りながら,同人に対し,その手指や陰茎をかたどった性具等を被告人の肛門に挿入させ,さらに,被告人の陰茎を握らせるなどし,もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第2 被告人は,同年12月頃,同所において,被害者が13歳未満であることを知りながら,同人に対し,その手指や陰茎をかたどった性具を被告人の肛門に挿人させるなどし,もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第3 被告人は,同月頃から平成28年1月頃までの間に,同所において,被害者が13歳未満であることを知りながら,同人に対し,その手指や陰茎をかたどった性具等を被告人の肛門に挿入させ,さらに,被告人の陰茎を握らせるなどし,もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第4 被告人は,同年3月頃,同所において,被害者が13歳未満であることを知りながら,同人に対し,その手指や陰茎をかたどった性具等を被告人の肛門に挿入させ,さらに,被告人の陰茎を握らせるなどし,もって,13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第5 被告人は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,別表3番号1から4のとおり,平成27年10月頃から平成28年3月頃にかけて同表「撮影場所」欄記載の場所において,被害者に同表「撮影内容亅欄記載の姿態をとらせ,これをデジタルカメラで動画撮影した上,いずれもその頃,同表「記録保存場所」欄記載の場所において,同表「保存点数」欄記載の点数の動画データを外付けハードディスクに記録させて保存し,もって,児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)(括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求証拠番号を示す。
判示事実全部について
・ 被告人の公判供述
・ 写真撮影報告書(甲第19号証)
・ 捜査報告書(甲第3号証,同第5号証,同第21号証)
・ 戸籍全部事項証明書(甲第20号証)
判示第3,第4及び第5(別表3番号3及び4)の事実について
・ 被告人の検察官調書(乙第6号証)
判示第1及び判示第5(別表3番号1)の事実について
・ 被告人の警察官調書(乙第4号証)
・ 写真撮影報告書(甲第7号証)
・ 捜査報告書(甲第6号証)
判示第2及び判示第5(別表3番号2)の事実について
・ 被告人の警察官調書(乙第5号証)
・ 写真撮影報告書(甲第9号証)
・ 捜査報告書(甲第8号証)
判示第3及び判示第5(別表3番号3)の事実について
・ 写真撮影報告書(甲第11号証,同第13号証,同第16号証)
・ 捜査報告書(甲第10号証,同第12号証,同第15号証)
判示第4及び判示第5(別表3番号4)の事実について
・ 写真撮影報告書(甲第18号証)
・ 捜査報告書(甲第17号証)
(法令の適用)
罰条
 判示第1から第4の各行為
  いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段
 判示第5の各行為(別表3番号1から4)
  いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項2号
刑種の選択
 判示第5(別表3番号1から4) いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理           刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入        刑法21条
(量刑の理由)
 本件は,小学校の教員であった被告人が,担任を務めていた学級の生徒である9歳の被害児童1名に対し,約半年間で4回にわたり,強制わいせつ行為に及び(判示第1から第4),その際の被害児章の姿態をデジタルカメラで動画撮影して児童ポルノを製造した(判示第5)事案である。
 被告人によるわいせつ行為の態様は,いずれも被告人の肛門に被害児童の手指を挿入させたり,被告人の陰茎を被害児童に触らせたりするというものであるが,肛門の内部や性器との身体的接触を伴う点で,性交等を伴わないわいせつ行為の中では,濃厚な身体的接触により,相手に強い嫌悪感や羞恥心をもよおさせる態様である。各わいせつ行為の態様は,犯行がいずれも比較的短時間で終わっていることを踏まえても,それ自体として悪質であり,被害者を全裸にしたり,その陰部を触るなど弁護人が指摘する事案と比較しても軽微な態様であるとは到底いえない。しかも,被告人は,担任教師として,日頃から被害児童の指導に当たり,その健全な成長を促す立場にあった。被告人は,自らの立場を悪用し,性的知識に乏しい被害児童の信頼につけ込んだというほかない。そうすると,被告人には,このような立場にない者と比較してより強い非難が妥当するし,常習性があることも明らかである。
 そして,信頼を寄せた相手から,繰り返しわいせつ行為を受けた被害児童の精神的被害も大きい。本件は,被害児童の健全な成長に深刻な悪影響を及ぼすことが懸念されるし,現に被害児童は,本件後,心身の不調を訴えており,上記懸念が現実のものになっていることもうかがわれる。本件の結果が重いことはいうまでもない。
 以上によると,本件の各強制わいせつは,同種前科など量刑上考慮すべき前科がない者による,13歳未満の者に対する強制わいせつの事案の中では悪質な部類に属するというべきである。また,被告人が,わいせつ行為に及んだ状況を撮影して児童ポルノを製造した点も見逃せない。被告人の刑事責任は重く,本件は,実刑に処すべき事案である。
 一方,本件では,被告人が罪を認めた上,両親の援助も受けて被害弁償を行う旨述べるなどして反省の態度を示していることや,妻がその監督を誓約していることなど被告人のために酌むべき事情も認められるが,いずれも一般情状に過ぎず,量刑に大きな影響を及ぼすものではない。
 したがって,これらの事情を考慮しても,被告人を主文程度の実刑に処することはやむを得ない。
(求刑 懲役3年6月)
  平成30年10月26日
    熊本地方裁判所刑事部
           裁判官  鈴木 悠