児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被疑者に「Eカップでした」「ボインでした」などと説明させて、青少年条例(淫行・わいせつ)の過失処罰条項の適用に反対して、起訴猶予となった事例。

 条例解説などではあらゆる方法での確認義務があるとして、青少年だと分かってしまうから、淫行しないでねという趣旨なんでしょうが、もともと営業者・使用者に対する義務なので、行きずりの淫行にはそこまできたいできません。
 検察官の著作でも、年齢確認義務については疑問が出ています。

栗原雄一「児童買春の罪と青少年育成条例の関係について」研修644号*1
そのため,形式的には,全ての行為者につき年齢の調査確認の手段を尽くしたことの挙証責任が課せられているようにみえる。 しかし,淫行しようとする者は当然にその相手方の年齢を調査確認すべき義務があるといえるかどうかは微妙である。 したがって,実務的には,年齢知情に関する規定の適用を前提として,淫行罪により処罰しようとする場合には, 「使用者性」に匹敵する事情を別途立証するのが相当であるろう。すなわち,当該青少年と知り合った経緯,当該青少年の体格,服装,言葉遣い等から,当該行為者において,当該青少年が18歳未満ではないかとの疑いを持ち得る客観的状況があったことを示す証拠を収集しておくべきこととなる。
(法務総合研究所教官)
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藤宗和香(東京地方検察庁検事(当時))「青少年保護育成条例」風俗・性犯罪シリーズ捜査実務全書9第3版*2P336
このような例では、結局は、客が既に青少年と話をする機会などがあってその身上を知り得る関係にあったとか、当該応には18 歳未満の女子ばかりを世いているなどの噌があって、容の来応理由になっていたと認められるなど、個別具体的に、淫行の相手が18 歳未満であることについて客観的に知り得る状況があったことを明らかにしなければ、過失を認めるべきではないと考える。

 そこで、被疑者から体格等(Eカップとかボインだったかとか)を細かく聴き取って、青少年とは見えない点を強調していけば、年齢知情条項があっても起訴猶予になる可能性が出てきます。

新潟県青少年健全育成条例の解説H11
5 過失犯規定の適用
第29条第6項の規定により、青少年の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることはできない。
「ただし、過失がないとき」とは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行われているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体の外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。

第29条
1 第20条第1項又は第2項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。


6 第15条の9第1項若しくは第2項又は第20条第l項、第2項若しくは第3項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第l項又は第3項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

【要旨】
本条は、条例違反者に対する制裁規定であり、この条例が関係者によって確実に守られ、その目的が達成されることを確保するために罰則を規定したものである。
【解説】
第6項の規定は、青少年の健全な育成を阻害するおそれが強く、当然社会的にも非難されるべき行為について、青少年の年齢を知らなかったとしても、そのことを理由に処罰を免れることができない旨を規定しているもので、青少年保護の実効性を確保しようとするものであるo
「ただし、過失がないときjとは、社会通念に照らし、通常可能な確認が適切に行われているか否かによって判断される。
具体的には、単に青少年の年齢、生年月日を尋ねただけ、あるいは身体を外観等からの判断だけでは足りず、自動車運転免許証、住民票等の公信力のある書面で確認するか、又は、保護者に問い合わせるなど客観的に通常可能とされるあらゆる方法を用いて確認している場合をいう。