児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

わいせつ行為とは「社会通念に照らし,それ自体性的な意味合いが強い行為」(福岡地裁H30.10.31)

 控訴審判決が出てから1審判決が公開される。
 「社会通念に照らし,それ自体性的な意味合いが強い行為」という定義は初耳です。
 大法廷H29はわいせつの定義を回避しているので、大法廷判決を引っ張ってきてもわいせつの定義は出てこないんですよ。

裁判年月日 平成30年10月31日 裁判所名 福岡地裁 
文献番号 2018WLJPCA10316002
出典
エストロー・ジャパン
裁判官
太田寅彦、 松村一成、 池上恒太
訴訟代理人
被告人側訴訟代理人
田豊,武寛兼,税所知久,今西眞

第3 強制わいせつ罪の成否について
 1 刑法176条前段の「わいせつな行為」に当たるかどうか
 刑法176条前段にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断すべきである(最高裁平成28年(あ)第1731号同29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照)。
 そこで,本件についてみると,被告人Y2は,Aの両足を両手で掴んで広げて持ち上げた上で,Aの足の間に自己の腰を入れ,腰を数回振ったり,Aの身体に覆い被さったりしたのであり,AやCらも証言するように,その行為は,明らかに性交(正常位)を模したものであるところ,それは被告人Y2とAの股間同士が近接する体勢で行われただけでなく,被告人Y2の股間付近とAの陰部付近を複数回接触させているのであって,これらの行為が,社会通念に照らし,それ自体性的な意味合いが強い行為であることは明らかである。
 この点について,被告人両名の弁護人らは,被告人両名にとって宴会の最中の悪ふざけやいたずらにすぎず,実際に周囲に被告人両名の行為を制止するものもいなかったなどと主張する。しかし,被告人Y2の前記一連の行為の性的な意味合いの強さに照らせば,被告人両名としては,あくまで宴会の中での悪ふざけ,あるいはAに対する嫌がらせなどといった認識の下に行ったすぎないとしても,そのような主観的な事情は,本件においては,「わいせつな行為」に当たるか否かの判断に影響を及ぼすものではない。
 したがって,被告人Y2の前記一連の行為は,刑法176条前段の「わいせつな行為」に当たる。