児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

大法廷h29.11.29の警察の理解  強制わいせつ罪における「性的意図」の要否KOSUZO 試験に出る・実務に役立つ 昇試サブノート 。

 被害者との関係出ちゃってます。
 判決では一言も触れてないのに。

KOSUZO 試験に出る・実務に役立つ 昇試サブノート SeasonⅤ 2018年 5月号 Vol.9 No.098
判例カード
強制わいせつ罪における「性的意図」の要否
刑法
[最判平29.11‘29]
、事案
I甲は、金に困って、インターネットを通じて知り合ったAから金を借りようとしたところ、金を貸すための条件として被害者(当時7歳■■■■■■■■■■■■■■■■)とわいせつな行為をしてこれを撮影し、その画像データを送信するように要求された。
Ⅱそこで、甲は、被害者が13歳未満の女子であることを知りながら、全裸の被害者に対し、被告人の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をして、強制わいせつ罪(刑法176条)に問われた。
◎論点
強制わいせつ罪が成立するためには、行為者の性的意図が必要か。
判例の考え方
従来の判例は、強制わいせつ罪の成立要件として、行為の性質及び内容にかかわらず、犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを一律に求めていた(最判昭45.1.29)。
↓しかし
①性犯罪に対する社会の受け止め方が変化した今日では、本罪の成立要件を解釈するに当たっては、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべきであり、行為者の性的意図を一律に成立要件とする解釈は維持できない。
②本罪のわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには、行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断する。
③そのような個別具体的な事情の1つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定しない。
↓これを本件についてみると
甲の行為は、行為そのものが持つ性的性質が明確な行為であるから、その他の事情(性的意図等)を考慮するまでもなく、性的な意味合いの強い行為として、客観的にわいせつな行為であることが明らかである。よって、甲に強制わいせつ罪が成立する。

Q&A
Q1本判例は、強制わいせつ罪の成立には、行為者の性的意図を考慮する必要は一切ないとするものである。
Q2本判例は、強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」と評価されるべき行為には、「行為そのものが持つ性的性質が明確な行為」と「行為そのものが持つ性的性質が不明確で、具体的状況等を考慮しなければならない行為」があるとする。
Q3本判例による判例変更は、純粋に法理論の進展によるものであり、性犯罪に対する社会の受け止め方の変化を反映したものではない。
Q4本事案の甲の行為は、児童買春等処罰法の提供目的児童ポルノ製造罪及び児童ポルノ提供罪にも該当する。
・・・
A1×本判例は、本罪の成立に性的意図が常に不要であるとはしていない。行為そのものの性的性質が不明確である場合には、行為の客観面のみからわいせつ行為性を判断することは容易でなく、具体的な諸般の事情の1つとして行為者の主観的事情(性的意図)を判断要素として考慮しつつ、総合的にわいせつ行為性を判断する。
A2○本判例は、「わいせつな行為」には、「行為そのものが持つ性的性質が明確」ゆえに「当該行為が行われた際の具体的状況等いかんにかかわらず当然に性的な意味があると認められる」行為と、「行為そのものが持つ性的性質が不明確」ゆえに「当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難い」行為がある、と整理する。その上で、性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを判断するに当たって、「個別具体的な事情の1つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」としている。
A3×本判例は、最近の性犯罪に関する一連の法改正(性犯罪の厳罰化、強制性交等罪の新設、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設等)につき、性的な被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映したものであるとした上で、それを踏まえて判例変更したものである。
A4○本判例の原審において、甲には提供目的児童ポルノ製造罪(児童買春等処罰法7条3項前段)及び児童ポルノ提供罪(同条2項)も成立し、強制わいせつ罪とは併合罪となるとしている(大阪高判平28.10.27)。